説明

足揉み装置を備えたマッサージ椅子

【課題】簡便な機構でありながら足揉み装置が上下に移動可能であって当該足揉み装置を収納可能な構成となっているマッサージ椅子を提供することを目的とする。
【解決手段】本発明のマッサージ椅子1は、座部2と背もたれ部4と座部2の前部に設置された足揉み装置5とを有し、座部2の下方に足揉み装置5と連接する進退機構7が設けられ、進退機構7が前方に進出すると、足揉み装置5は座部2の前方の使用位置に進み、進退機構7が後方に退行すると、足揉み装置5は座部2の下方の収納位置Pに収納され、進退機構7は、使用位置において、足揉み装置5をその先端部が下方となる下方使用位置U1と、その先端部が上方となる上方使用位置U2との2つの位置で切換自在とするように構成されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、足揉み装置を備えたマッサージ椅子に関する。
【背景技術】
【0002】
足揉み装置が備えられたマッサージ椅子としては、例えば、特許文献1に開示されたものがある。
このマッサージ椅子は、座部の後部に背もたれ部、前部に足揉み装置をそれぞれ有しており、背もたれ部には使用者の背部をマッサージするマッサージ機構が備えられ、足揉み装置には、使用者の下肢をマッサージする下肢マッサージ機構が内蔵されている。また、背もたれ部は前後にリクライニング可能とされ、足揉み装置は支持部材を介して座部の前方に揺動可能に設けられている。
【0003】
このようなマッサージ椅子は、マッサージを行うために利用されるだけでなく、単なる椅子として利用されることも多い。特に、この種のマッサージ椅子では、座部等に柔らかいクッションを内蔵している場合が多く、また、背もたれ部にリクライニング機能を有していることからソファとしての利用にも適したものとなっている。
しかしながら、特許文献1の足揉み装置については、その前面に保持溝を形成したものとなっているため、マッサージ機能を使わない場合でも保持溝に下肢を嵌め込まなければならず、これによって足の自由な動きが制限され、楽な体勢をとることが困難となっていた。また、椅子の見栄えを損ねる一因ともなっていた。
【0004】
そこで、このような不都合を回避すべく、特許文献2のような技術を本願出願人は既に開発している。
このマッサージ椅子は、足揉み装置を使用位置と座部の下方に位置する内蔵位置とに移動可能な押引機構を有しており、この押引機構は、マッサージ椅子の両側に設置されているガイドレール、ガイドレールに沿って出入りする押引ロッド、押引ロッドに連結されたキャリッジ板を有し、このキャリッジ板に足揉み装置がピン接続されている。
そのため、足揉み装置を使用位置に位置させた上で、足揉み装置の前面(マッサージ面)と後面(フットレスト面)とを回転切換自在としている。
【特許文献1】特開2002−238963号公報
【特許文献2】特開2007−75590号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、マッサージ椅子の使用者からの要求は多岐に亘り、「足揉み装置の前面・後面の反転切換は不要である」等の要求も挙がってきている。一方で、「足揉み装置に下肢を差し入れつつ、その下肢を前方に高く上げた楽な姿勢を取りたい」という使用者の要求も多く挙がってきている。当然、足揉み装置を使用しないときに「邪魔にならない位置に格納して欲しい」という要求は依然としてある。
そこで、本発明は、上記問題点に鑑み、簡便な機構でありながら足揉み装置が上下に移動可能であって当該足揉み装置を収納可能な構成となっているマッサージ椅子を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記目的を達成するため、本発明においては以下の技術的手段を講じた。
すなわち、本発明に係る足揉み装置を備えたマッサージ椅子は、座部と該座部の後部に設けられた背もたれ部と前記座部の前部に設置された足揉み装置とを有するマッサージ椅子において、前記座部の下方に足揉み装置と連接する進退機構が設けられ、前記進退機構が前方に進出すると、足揉み装置は座部の前方であって使用者の下肢をマッサージ可能な位置である使用位置に進み、前記進退機構が後方に退行すると、足揉み装置は座部の下方に形成された収納位置に収納され、前記進退機構は、前記使用位置における足揉み装置を、その先端部が下方となる下方使用位置とその先端部が上方となる上方使用位置との2つの位置で切換自在としていることを特徴とする。
【0007】
詳しくは、前記下方使用位置にある足揉み装置は、その底面が床面と対面し且つ下肢をマッサージする面が前方を向く状態となっており、前記上方使用位置にある足揉み装置は、下肢をマッサージする面が斜め上方を向く状態となっており、前記収納位置にある足揉み装置は、その底面が前方を向くと共に座部の前縁部と面一となり且つ下肢をマッサージする面が上方を向く状態となっている。
好ましくは、前記進退機構は、座部の下方に設置され後部側に水平部分を有し且つ前部側に上反り状の円弧部分を備えた第1ガイドレールと、該第1ガイドレールに沿って移動可能な走行機構と、この走行機構に対し前方突出状に取り付けられた第1ロッド体と、前記足揉み装置の後部に配備されたリンク機構と、を有しており、前記第1ロッド体の前端部及びリンク機構の上端部は、足揉み装置の後部側上部に左右軸回りに回動自在に同軸で連結されていて、前記走行機構が第1ガイドレールの水平部分に移動すると、足揉み装置が収納位置に位置し、前記走行機構が第1ガイドレールの円弧部分であってその後部側に移動すると、足揉み装置が下方使用位置に位置し、前記走行機構が第1ガイドレールの円弧部分であってその前部側に移動すると、前記リンク機構が作動し足揉み装置を上方使用位置とするように構成されているとよい。
【0008】
また、前記リンク機構は、下端部に転動輪が設けられ上端部が足揉み装置の後部側上部に前記第1ロッド体と同軸状に回動自在に連結された支持部材と、前記支持部材の中途部に左右軸回り回動自在に設けられ、且つ前端部が足揉み装置の後面を押し上げるようになっている作動リンクと、前記作動リンクの後端部に前端部が連結された連結リンクと、前記連結リンクの後端部が左右軸回り回動自在に連結され且つ座部の下方を前後方向に移動する移動体と、を有しており、前記走行機構が第1ガイドレールの円弧部分であってその前部側に移動した際に、前記移動体の前方移動が規制され、前記連結リンクを介して作動リンクの後端部が後方に引っ張られ、当該作動リンクが支持部材に対して回動し、作動リンクの前端部が足揉み装置の後部を押し上げ動作するように、前記移動体と連結リンクと作動リンクとが連結されている構成であるとよい。
【0009】
さらに好ましくは、前記走行機構は、左右方向を向き第1ロッド体の基端側に回動自在に枢支され且つ両端部に歯車を備えた走行軸と、この走行軸を回転駆動する駆動装置と、を有し、前記第1ガイドレールの上辺には、前記走行軸の歯車が噛合するラック歯が設けられ、前記駆動装置が走行軸を回転駆動することで、歯車がラック歯上を移動し前記走行機構が第1ガイドレールに沿って前後方向に移動自在となっているとよい。
また、前記走行機構は、前記走行軸に平行に配置され第1ロッド体の基端側に回動自在に枢支され且つ両端が第1ガイドレールに沿って移動するガイド軸を有していてもよい。
【0010】
最も好ましくは、前記進退機構は、足揉み装置の下方使用位置と上方使用位置との切換をスムーズにする切換補助機構を有し、この切換補助機構は、座部の下方に設置されると共に後部側に水平部分を有し前部側に凸状の円弧部分を備えた第2ガイドレールと、後端部が前記第2ガイドレールに沿って移動可能で前端部が前記支持部材の上部に係合する第2ロッド体と、を有し、前記足揉み装置が下方使用位置から上方使用位置へ切り替わる際に、前記第2ロッド体の後端部が第2ガイドレールの円弧部の前部側を前方に向けて摺動するに伴って、当該第2ロッド体の前端部又は中途部が前記支持部材を下方に押圧するように構成されているとよい。
【0011】
また、前記足揉み装置の後部側上部には係合部材が設けられ、該係合部材には上下方向を向く円弧状の係合溝が設けられ、該係合溝には前記第2ロッド体の中途部に設けられたピン部材が摺動自在に嵌り込むものとなっており、前記第2ロッド体の後端部が第2ガイドレールの円弧部の前部側を前方に向けて摺動するに伴って、前記ピン部材が係合溝の下端部を押し、支持部材が下方に押圧されるよう構成されているよい。
また、前記座部は当該座部を左右から支持する一対の座部支持部を有し、前記第1ガイドレール及び第2ガードレールは、足揉み装置の外側面と前記座部支持部の内側面との間に設けられている構成は好ましい。
【0012】
前記第2ガイドレールは第1ガイドレールの上方に設けられているとよい。
さらに、前記足揉み装置が収納位置に移動する際に当該足揉み装置内に使用者の下肢が存在することを検出するセンサ手段が、前記座部の前部及び/又は足揉み装置に設けられている構成であるとよい。
【発明の効果】
【0013】
本発明に係るマッサージ椅子によれば、足揉み装置が上下に移動可能であって、使用者は下肢をマッサージしつつ当該下肢を高く差し上げ楽な姿勢をとることができるようになる。加えて、本発明に係るマッサージ椅子によれば、足揉み装置を収納可能となり、マッサージ機能を使わない場合でも、使用者の足の自由な動きが可能で、使用者は楽な体勢をとることができるようになる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
以下、本発明の実施形態を、図を基に説明する。
[第1実施形態]
図1〜図4,図9は、本発明に係る足揉み装置5を内蔵可能なマッサージ椅子の第1実施形態を示したものである。
マッサージ椅子1は、座部2と、この座部2を所定の高さに支持する左右一対の脚部3,3(座部支持部)とを有している。座部2の後部には背もたれ部4が設けられている。さらに座部2の前部に、使用者の下肢(特にふくらはぎ)を揉みマッサージする足揉み装置5が備えられている。
【0015】
なお、以下の説明において、図1の左右方向を実際の装置での前後方向と呼び、図1の上下方向を実際の装置における上下方向と呼ぶ。図1の紙面貫通方向を実際の装置での左右方向又は幅方向と呼ぶ。これらの方向は、マッサージ椅子1に座った使用者から見たものと一致する。
座部2は、使用者の臀部を下方から支持するに十分な広さを有しており、左右一対の脚部3,3の間に設けられたベース部材上に架け渡すように配設されている。背もたれ部4は、その下端部と座部2の後部とが前後方向に揺動自在に枢支されており、座部2の下面右側に配設されたリクライニング機構38(リニアアクチュエータ機構)によってリクライニング可能となっている。背もたれ部4の内部には、揉み又は叩きマッサージ等を行う背部用のマッサージ機構が上下移動自在に内蔵されている。
【0016】
座部2の前側には足揉み装置5が設けられるものとなっている。足揉み装置5は、正面視略四角形状、側面視ブーツ形状に形成されている。足揉み装置5の前面は、マッサージ面5aとなっており、下肢を嵌め込んで保持する左右一対の保持溝6,6が形成されている。保持溝6内の対向面(下肢の両側)には、下肢に対して揉みマッサージを行う下肢用マッサージ装置が内蔵されている。
下肢用マッサージ装置としては、足の長さ方向に長い板材を左右に揺動させることによって揉みを施す構成としたり、空気の給排によって膨張収縮する空気袋で揉みを施す構成とすることもできる。
【0017】
この足揉み装置5は、座部2の前方であって使用者の下肢をマッサージ可能な位置である使用位置(下方使用位置U1,上方使用位置U2)と、座部2の下方に形成された空間部(収納位置P)との間を移動可能である。
すなわち、座部2の下方に進退機構7が設けられ、この進退機構7は足揉み装置5に連結される構成となっている。この進退機構7が前方に進出すると、足揉み装置5は使用位置U1,U2に進み、進退機構7が後方に退行すると、足揉み装置5は収納位置Pに収納されるものとなっている。
【0018】
進退機構7は、座部2の下方で前後方向を向くように設置されている第1ガイドレール8と、第1ガイドレール8に沿って移動可能な走行機構9と、この走行機構9に前方突出状に取り付けられた第1ロッド体10とを有している。
詳しくは、左右一対の脚部3,3のそれぞれの幅方向内側面に板状のガイドレール形成部11が取り付けられている。ガイドレール形成部11には、後部側〜中途部側に水平部分を有し、前部側に上反り状の円弧部分を備えている凹状の溝部(第1ガイドレール8)が形成されている。第1ガイドレール8の上辺又は下辺の一方側(本実施形態の場合、上辺)の前方端から後方端に亘ってラック歯が形成されている。第1ガイドレール8は、足揉み装置5の外側面部と脚部3の内側面との間に位置している。
【0019】
図1,図3にあるように、走行機構9は、左右方向を向き且つ両端部に歯車12を備えた走行軸13を有している。
この走行軸13の左右方向中途部には、当該走行軸13を正逆回転駆動する駆動装置14が備えられている。駆動装置14は電動モータとウォームギア機構とを有し、電動モータの回転駆動力が走行軸13に伝達される構成となっている。
走行軸13は左右方向を向くように座部2の下方に架け渡され、走行軸13の両端に設けられた歯車12が第1ガイドレール8に嵌り込むと共に上側のラック歯に噛合するようになっている。駆動装置14の電動モータが回転し走行軸13を駆動することで、歯車12がラック歯上を移動し走行機構9が第1ガイドレール8に沿って前後方向に移動自在となる。
【0020】
また、走行機構9は、走行軸13に平行に配置され第1ロッド体10の基端側に回動自在に枢支され且つ両端が第1ガイドレール8内をスライド自在に移動するガイド軸15を有している。ガイド軸15の端部は、第1ガイドレール8の上辺又は下辺の他方側(本実施形態の場合、下辺)をスライドするようになっている。
左右一対のガイドレール形成部11,11のそれぞれ内側には、長尺の第1ロッド体10が前後方向を向くように配設され、この第1ロッド体10の基端部に前述した走行軸13、ガイド軸15の両端部が回動自在に枢支されるものとなっている。
【0021】
このように、第1ガイドレール8に走行軸13、ガイド軸15すなわち2本の棒体が入り込み、それら走行軸13、ガイド軸15が第1ロッド体10の基端に嵌り込んでいるために、当該第1ロッド体10は、第1ガイドレール8に沿って振れたり揺動したりせず移動できるようになる。また、ラック歯が第1ガイドレール8の上辺に形成されているため、歯車12とラック歯との噛合状態が常に良好となり、足揉み装置5の出し入れがスムーズに行える。もし、ラック歯が第1ガイドレール8の下辺に形成されていたら、足揉み装置5の荷重により、歯車12がラック歯に食い込み回転しなくなる可能性があるが、かかる状況は確実に回避できるものとなっている。
【0022】
一方、それぞれの第1ロッド体10の前端部は足揉み装置5の後部側上部に左右軸(枢支軸16)回りに回動自在に連結されている。
また、足揉み装置5の後面5b(マッサージ面5aとは反対側)には、当該後面5bに沿って足揉み装置5を支える支持部材17が設けられている。この支持部材17は4つの角鋼材を矩形状に組み上げて構成されている。この支持部材17の下部には、床面F上を転動する転動輪18,18が左右一対に設けられている。転動輪18は、マッサージ椅子1が設置される床面F上を転動可能となっている。支持部材17の上端部には、足揉み装置5の後部側上部が左右軸回りに回動自在に枢支されている。
【0023】
本実施形態の場合、支持部材17の上端部に、足揉み装置5の後部側上部と第1ロッド体10の前端部とが枢支軸16回りに同軸状に枢支されている。
支持部材17の上下中途部には、左右方向を向く支持軸19が設けられ、この支持軸19に前後方向を向く作動リンク20の中途部が枢支されている。作動リンク20は支持軸19回りに回動自在となっている。
作動リンク20は、少なくとも4つの角鋼材を矩形状に組み上げて構成されていて、支持部材17内に嵌り込む大きさとなっている。
【0024】
作動リンク20の前端部(作動リンク20を構成する縦部材20a,20a間に架け渡された横部材であって前側にある横部材20b)は、足揉み装置5の後面5bに接するようになっている。この部分には、作動リンク20に対する足揉み装置5の摺動をスムーズにすべく、コロ部材21が設けられている。
作動リンク20の後端部(作動リンク20を構成する縦部材20a,20a間に架け渡された横部材であって後側にある横部材20c)には、連結リンク22の前端部が回動自在に連結している。連結リンク22は、前後方向を向くように配備されている。
【0025】
一方、座部2の下方には前後方向を向くレール体23が固定部26の上に設けられている。このレール体23の前端部は座部2の前部下方に位置し、レール体23の後端部は座部2の後部下方に位置している。レール体23には、当該レール体23上を摺動する移動体24が設けられている。
移動体24は外形が直方体形状であってその上部側には、前述の連結リンク22の後端部が左右軸回り回動自在に連結されている。
上述した機構を備えた足揉み装置5の作動態様を説明する。
【0026】
まず、図4に示すように、足揉み装置5が収納位置Pにある場合には、足揉み装置5は、その底面5cが前方を向くと共に座部2の前縁部と面一となり且つ下肢をマッサージする面5aが上方を向く状態となっている。その状態では走行機構9は、第1ガイドレール8の後部側すなわち水平部分に位置し、枢支軸16は足揉み装置5の中央部より低位置にある。
その状態から、駆動装置14の電動モータが正転し走行軸13を駆動することで、歯車12がラック歯上を移動するようになり、走行機構9が第1ガイドレール8に沿って前方向に移動し、第1ロッド体10を介して足揉み装置5を座部2の前方へ押し出すようにする(図4(a)の状態から図4(b)の状態へとなる)。この際、転動輪18が床面F上を転動するため、足揉み装置5はスムーズに移動することとなる。
【0027】
その後、図4(c)のように、走行機構9が第1ガイドレール8の円弧部の後部側(後円弧部25bと呼ぶこともある)に移動すると、足揉み装置5が使用位置(下方使用位置U1)に位置する。足揉み装置5が下方使用位置U1に位置する場合には、第1ロッド体10は前方斜め上向きに傾斜し、枢支軸16は足揉み装置5の中央部より高位置にある。下方使用位置U1にある足揉み装置5は、その底面5cが床面Fと対面すると共に下肢をマッサージする面5aが前方を向く状態となっている。この位置にある足揉み装置5の左右一対の保持溝6,6に、使用者は下肢を差し入れ、下肢用のマッサージ機構によりマッサージを受けることができる。
【0028】
図4(d)のように、走行機構9が第1ガイドレール8の円弧部の前部側(前円弧部25aと呼ぶこともある)に移動すると、支持部材17の上端部及び足揉み装置5の上端部はさらに前方に押し出されるようになる。それにつれ、支持部材17の下端部に設けられた転動輪18は床面F上を転がり、当該支持部材17の下端部も前へ迫り出るようになる。
この際に、移動体24はレール体23の最も前端に位置しており、それ以上前には移動不能となっている。そのため、移動体24に回動自在に枢支されている連結リンク22も前には移動しない。そこで、前述の支持部材17の前移動に伴って、連結リンク22に繋がる作動リンク20が後ろ側に引っ張られ水平方向を向くように回動し、作動リンク20の前端部がコロ部材21を介して足揉み装置5の後面5bを上方に押し上げるようになる。
【0029】
作動リンク20による押し上げ動作により、足揉み装置5は下方使用位置U1から上方使用位置U2にその位置が切り替わるようになる。足揉み装置5が上方使用位置U2に位置する場合には、足揉み装置5の底面5cが下方使用位置U1より高い位置に移動することとなる。この位置にある足揉み装置5の左右一対の保持溝6,6に使用者は下肢を差し入れることで、より楽な姿勢で下肢のマッサージを受けることができる。
足揉み装置5を格納する場合、電動モータを逆転させ、走行機構9を第1ガイドレール8に沿って後方向に移動させることで、図4(d)→図4(c)→図4(b)→図4(a)の如く、第1ロッド体10を介して足揉み装置5を座部2の下方に設けられた収納スペースに収納可能となる。足揉み装置5を収納位置Pに持ってきた際には、座部2の前端部より足揉み装置5の底面5cが突出しないようになっているため、マッサージ椅子1に座った「マッサージを受けない使用者」は楽な体勢をとることできると共に、マッサージ椅子1の見栄えも非常にいいものとなっている。
【0030】
この際、リクライニング機構38は座面の下面右側に設けられているため、いずれか一方の保持溝6(右側の保持溝)内に入り込むようになり、駆動装置14は、走行軸13上であって左側に位置しているため、足揉み装置5が収納位置Pに移動した際に、リクライニング機構38、足揉み装置5、駆動装置14が互いに干渉せず、足揉み装置5は確実に座部2の下方に格納されることとなる。
なお、足揉み装置5の姿勢を上方使用位置U2と下方使用位置U1との間で切り換える際には、電動モータを正転又は逆転させ、図4(d)〜図4(c)の如く、走行機構9を第1ガイドレール8の前円弧部25aと後円弧部25bとの間で移動させるとよい。
【0031】
本実施形態のマッサージ椅子1においては、座部2の前端側や保持溝6内にリミットスイッチからなるセンサ手段27が設けられている。もし使用者が足揉み装置5に足を差し入れたまま、当該足揉み装置5を収納位置Pに収納したとしても、使用者の足が上記センサ手段27を反応させ、そのセンサ手段27からの信号を基に、足揉み装置5の引き込みを停止させることができる構成となっている。
これにより、使用者の下肢を痛める等の不都合な状況を確実に防ぐことができるものとなっている。
[第2実施形態]
図5〜図8は、本発明に係る足揉み装置を内蔵可能なマッサージ椅子の第2実施形態を示したものである。
【0032】
本実施形態が第1実施形態と異なる点は、進退機構7の一部として、座部2の下方に、足揉み装置5の下方使用位置U1と上方使用位置U2との切換をスムーズにする切換補助機構30を有していることである。他の点においては、略同一の構成を有している。
第1実施形態において、本発明のマッサージ椅子1の作動態様を説明した。すなわち、図4(c)→図4(d)のように、支持部材17の下端部に設けられた転動輪18は床面F上を転がり、当該支持部材17の下端部も前へ迫り出て、作動リンク20の前端部がコロ部材21を介して足揉み装置5の後面5bを上方に押し上げ、足揉み装置5が上方使用位置U2に切り替わる旨を説明した。
【0033】
しかしながら、本マッサージ椅子1が実際に設置される床面Fは、畳敷きであったりカーペットが敷設されていたりと、転動輪18が転がりにくい状況下であることも多々ある。その場合、転動輪18が転がりづらいため、支持部材17が前方に移動せず、逆に座部2が上方に浮き上がるといった不都合が発生する可能性も否めない。
ところが、本実施形態では、切換補助機構30を採用しているために、支持部材17の転動輪18の転動をスムーズに行わせ、足揉み装置5の下方使用位置U1と上方使用位置U2との切換を確実に行わせることができる。
【0034】
切換補助機構30は、座部2の下方で前後方向を向くように設置された第2ガイドレール31を有している。この第2ガイドレール31は、右の脚部3に設けられたガイドレール形成部11の内側面に設けられており、第1ガイドレール8の上方に配備されている。第2ガイドレール31は、ガイドレール形成部11に形成された凹状の溝部であり、後側が水平部となっており、前側が上方に凸形状となっている。
この第2ガイドレール31には、三日月形状を呈し前後方向を向く第2ロッド体32の後端部が摺動自在に嵌り込んでいる。第2ロッド体32は、幅方向で第2ガイドレール31より内側(足揉み装置5に近い側)に配備され、第2ロッド体32の後端部には幅方向外側を向く突出ピン33が立設されていて、その突出ピン33が第2ガイドレール31内に摺動自在に嵌り込んでいる。
【0035】
第2ロッド体32の前端部は、第1ロッド体10の幅方向外側から枢支軸16に同軸状に回動自在に嵌り込んでいる。
一方、第1ロッド体10の前端部で幅方向内側(足揉み装置5と第1ロッド体10との間)には、板部材で構成された扇形形状の係合部材34が面で接しつつ互いに摺動回転自在となるように配備されている。この係合部材34は支持部材17の上部端に相対移動不能に取り付けられている。係合部材34の周縁部には、上下方向を向く円弧状の係合溝35が設けられている。この係合溝35には、第2ロッド体32の中途部に幅方向内側を向くように突設されたピン部材36が摺動自在に嵌り込んでいる。
【0036】
なお、突出ピン33とガイド軸15との間にはバネ体37が設けられ、両者33,15間に付勢力が付与されている。これにより、第2ガイドレール31に対する第2ロッド体32の摺動がスムーズなものとなる。
上述した機構を備えた足揉み装置5の作動態様を説明する。
まず、図7(a)に示すように、足揉み装置5が収納位置Pにある場合には、足揉み装置5は、その底面5cが前方を向くと共に座部2の前縁部と面一となり且つ下肢をマッサージする面5aが上方を向く状態となっている。その状態では走行機構9は、第1ガイドレール8の後部側すなわち水平部分に位置する。
【0037】
その状態から、駆動装置14の電動モータが正転し走行軸13を駆動することで、走行機構9が第1ガイドレール8に沿って前方向に移動し、第1ロッド体10を介して足揉み装置5を座部2の前方へ押し出すようにする(図7(a)→図7(b))。この際、第2ロッド体32の後端部も第2ガイドレール31に沿って前方に移動する。第2ロッド体32に備えられたピン部材36は、係合部材34の係合溝35の上端部にピン部材36が位置するものとなっている。
図7(c)のように、走行機構9が第1ガイドレール8の後円弧部25bに移動すると、足揉み装置5が下方使用位置U1に位置する。足揉み装置5が下方使用位置U1に位置する場合には、第2ロッド体32の前端部に備えられたピン部材36は、係合部材34の係合溝35の下端部にピン部材36が位置するものとなっている。第2ロッド体32の後端部が第2ガイドレール31の水平部から凸状の円弧部に移り変わる境界点Aにおいて、ピン部材36が係合溝35の上端部から下端部に摺動しつつ移動する。
【0038】
その後、図7(c)→図7(d)のように、走行機構9が第1ガイドレール8の前円弧部25aに移動すると、支持部材17の上端部及び足揉み装置5の上端部はさらに前方に押し出される。支持部材17の下端部に設けられた転動輪18は床面F上を転がり、当該支持部材17の下端部も前へ迫り出す。その際に、第2ロッド体32の後端部が第2ガードレールの円弧部を下方移動するように移動する(円弧部の頂点B→前側)。その動きに連動し、第2ロッド体32の中途部に備えられたピン部材36は、係合溝35を介して係合部材34を下方に押圧しつつ支持部材17の転動輪18を前側に移動させる。言い換えるならば、足揉み装置5が下方使用位置U1から上方使用位置U2へ切り替わる際には、第2ロッド体32の後端部が第2ガイドレール31の円弧部の前部側を前方に向けて摺動しつつ、当該第2ロッド体32、詳しくはピン部材36が係合溝35の下部側を押圧することで支持部材17が下方に押さえられ、座部2の浮き上がりが抑制される。
【0039】
これにより、支持部材17はスムーズに前方へ移動し、ひいては、足揉み装置5は、図7(c)から図7(d)の状態へ滞りなく遷移するようになる。
さらに、走行機構9が第1ガイドレール8の前円弧部25aの最前端部に移動すると、第2ロッド体32の後端部は、第2ガイドレール31の前円弧部25aの最前端まで進み、足揉み装置5は図7(d)→図7(e)のように移動し、上方使用位置U2へとその状態が変化する。
足揉み装置5を格納する場合、電動モータを逆転させ、走行機構9を第1ガイドレール8に沿って後方向に移動させることで、図7(e)→図7(d)→図7(c)→図7(b)→図7(a)の如く、第1ロッド体10を介して足揉み装置5を座部2の下方に設けられた収納スペースに収納可能となる。
【0040】
なお、第1実施形態と同様に足揉み装置5の姿勢を上方使用位置U2と下方使用位置U1との間で切り換える際には、電動モータを正転又は逆転させ、図7(e)〜図7(c)の如く、走行機構9を第1ガイドレール8の前円弧部25aと後円弧部25bとの間で移動させるとよい。
以上、本発明に係る足揉み装置を収納可能なマッサージ椅子は、上述した実施の形態に限定されるものではない。
第2実施形態において、切換補助機構30が右側の脚部3に配備された構成を例示したが、左側に配備されていてもよく、左右一対の脚部3,3のそれぞれに切換補助機構30を設けてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0041】
本発明は、マッサージ椅子に取り付けられる足揉み装置に適用することが可能であり、ソファや車両の座席等にも適用可能である。
【図面の簡単な説明】
【0042】
【図1】第1実施形態に係るマッサージ椅子の内部を示した左側面図である(収納位置)。
【図2】第1実施形態に係るマッサージ椅子の内部を示した正面図である。
【図3】第1実施形態に係るマッサージ椅子の内部を示した左側面図である(上方使用位置)。
【図4】第1実施形態に係る足揉み装置が収納位置から使用位置へ遷移する状況を示した図である。
【図5】第2実施形態に係るマッサージ椅子の内部を示した左側面図である(収納位置)。
【図6】第2実施形態に係るマッサージ椅子の内部を示した正面図である。
【図7】第2実施形態に係る足揉み装置が収納位置から使用位置へ遷移する状況を示した図である。
【図8】第2実施形態に係るマッサージ椅子の分解斜視図である。
【図9】マッサージ椅子の斜視図である。
【符号の説明】
【0043】
1 マッサージ椅子
2 座部
3 脚部(座部支持部)
4 背もたれ部
5 足揉み装置
7 進退機構
8 第1ガイドレール
9 走行機構
10 第1ロッド体
13 走行軸
17 支持部材
18 転動輪
20 作動リンク
21 コロ部材
22 連結リンク
23 レール体
24 移動体
27 センサ手段
30 切換補助機構
31 第2ガイドレール
32 第2ロッド体
33 突出ピン
34 係合部材
35 係合溝
36 ピン部材
F 床面
P 収納位置
U1 下方使用位置
U2 上方使用位置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
座部と該座部の後部に設けられた背もたれ部と前記座部の前部に設置された足揉み装置とを有するマッサージ椅子において、
前記座部の下方に足揉み装置と連接する進退機構が設けられ、
前記進退機構が前方に進出すると、足揉み装置は座部の前方であって使用者の下肢をマッサージ可能な位置である使用位置に進み、前記進退機構が後方に退行すると、足揉み装置は座部の下方に形成された収納位置に収納され、
前記進退機構は、前記使用位置における足揉み装置を、その先端部が下方となる下方使用位置とその先端部が上方となる上方使用位置との2つの位置で切換自在としていることを特徴とする足揉み装置を備えたマッサージ椅子。
【請求項2】
前記下方使用位置にある足揉み装置は、その底面が床面と対面し且つ下肢をマッサージする面が前方を向く状態となっており、
前記上方使用位置にある足揉み装置は、下肢をマッサージする面が斜め上方を向く状態となっており、
前記収納位置にある足揉み装置は、その底面が前方を向くと共に座部の前縁部と面一となり且つ下肢をマッサージする面が上方を向く状態となっていることを特徴とする請求項1に記載の足揉み装置を備えたマッサージ椅子。
【請求項3】
前記進退機構は、座部の下方に設置され後部側に水平部分を有し且つ前部側に上反り状の円弧部分を備えた第1ガイドレールと、該第1ガイドレールに沿って移動可能な走行機構と、この走行機構に対し前方突出状に取り付けられた第1ロッド体と、前記足揉み装置の後部に配備されたリンク機構と、を有しており、
前記第1ロッド体の前端部及びリンク機構の上端部は、足揉み装置の後部側上部に左右軸回りに回動自在に同軸で連結されていて、
前記走行機構が第1ガイドレールの水平部分に移動すると、足揉み装置が収納位置に位置し、
前記走行機構が第1ガイドレールの円弧部分であってその後部側に移動すると、足揉み装置が下方使用位置に位置し、
前記走行機構が第1ガイドレールの円弧部分であってその前部側に移動すると、前記リンク機構が作動し足揉み装置を上方使用位置とするように構成されていることを特徴とする請求項2に記載の足揉み装置を備えたマッサージ椅子。
【請求項4】
前記リンク機構は、下端部に転動輪が設けられ上端部が足揉み装置の後部側上部に前記第1ロッド体と同軸状に回動自在に連結された支持部材と、
前記支持部材の中途部に左右軸回り回動自在に設けられ、且つ前端部が足揉み装置の後面を押し上げるようになっている作動リンクと、
前記作動リンクの後端部に前端部が連結された連結リンクと、
前記連結リンクの後端部が左右軸回り回動自在に連結され且つ座部の下方を前後方向に移動する移動体と、を有しており、
前記走行機構が第1ガイドレールの円弧部分であってその前部側に移動した際に、前記移動体の前方移動が規制され、前記連結リンクを介して作動リンクの後端部が後方に引っ張られ、当該作動リンクが支持部材に対して回動し、作動リンクの前端部が足揉み装置の後部を押し上げ動作するように、前記移動体と連結リンクと作動リンクとが連結されていることを特徴とする請求項3に記載の足揉み装置を備えたマッサージ椅子。
【請求項5】
前記走行機構は、左右方向を向き第1ロッド体の基端側に回動自在に枢支され且つ両端部に歯車を備えた走行軸と、この走行軸を回転駆動する駆動装置と、を有し、
前記第1ガイドレールの上辺には、前記走行軸の歯車が噛合するラック歯が設けられ、
前記駆動装置が走行軸を回転駆動することで、歯車がラック歯上を移動し前記走行機構が第1ガイドレールに沿って前後方向に移動自在となっていることを特徴とする請求項3又は4に記載の足揉み装置を備えたマッサージ椅子。
【請求項6】
前記走行機構は、前記走行軸に平行に配置され第1ロッド体の基端側に回動自在に枢支され且つ両端が第1ガイドレールに沿って移動するガイド軸を有していることを特徴とする請求項5に記載の足揉み装置を備えたマッサージ椅子。
【請求項7】
前記進退機構は、足揉み装置の下方使用位置と上方使用位置との切換をスムーズにする切換補助機構を有し、
この切換補助機構は、座部の下方に設置されると共に後部側に水平部分を有し前部側に凸状の円弧部分を備えた第2ガイドレールと、後端部が前記第2ガイドレールに沿って移動可能で前端部が前記支持部材の上部に係合する第2ロッド体と、を有し、
前記足揉み装置が下方使用位置から上方使用位置へ切り替わる際に、前記第2ロッド体の後端部が第2ガイドレールの円弧部の前部側を前方に向けて摺動するに伴って、当該第2ロッド体の前端部又は中途部が前記支持部材を下方に押圧するように構成されていることを特徴とする請求項3〜6のいずれかに記載の足揉み装置を備えたマッサージ椅子。
【請求項8】
前記足揉み装置の後部側上部には係合部材が設けられ、該係合部材には上下方向を向く円弧状の係合溝が設けられ、該係合溝には前記第2ロッド体の中途部に設けられたピン部材が摺動自在に嵌り込むものとなっており、
前記第2ロッド体の後端部が第2ガイドレールの円弧部の前部側を前方に向けて摺動するに伴って、前記ピン部材が係合溝の下端部を押し、支持部材が下方に押圧されるよう構成されていることを特徴とする請求項7に記載の足揉み装置を備えたマッサージ椅子。
【請求項9】
前記座部は当該座部を左右から支持する一対の座部支持部を有し、
前記第1ガイドレール及び第2ガードレールは、足揉み装置の外側面と前記座部支持部の内側面との間に設けられていることを特徴とする請求項7又は8に記載の足揉み装置を備えたマッサージ椅子。
【請求項10】
前記第2ガイドレールは第1ガイドレールの上方に設けられていることを特徴とする請求項7〜9のいずれかに記載の足揉み装置を備えたマッサージ椅子。
【請求項11】
前記足揉み装置が収納位置に移動する際に当該足揉み装置内に使用者の下肢が存在することを検出するセンサ手段が、前記座部の前部及び/又は足揉み装置に設けられていることを特徴とする請求項1〜10のいずれかに記載の足揉み装置を備えたマッサージ椅子。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2009−82324(P2009−82324A)
【公開日】平成21年4月23日(2009.4.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−254195(P2007−254195)
【出願日】平成19年9月28日(2007.9.28)
【出願人】(592009214)大東電機工業株式会社 (106)
【Fターム(参考)】