説明

足跡鑑識用シート

【課題】簡単な構成により、転写シートと剥離シートの取り替えや立証措置欄の捏造を確実に防止でき、また剥離シートが反り曲がることのない足跡鑑識用シートを提供すること。
【解決手段】足跡を転写・採取する足跡鑑識用シート10において、基材1の裏面に粘着層2が形成される転写シート4と、転写シート4を繰り返し剥離又は貼付が可能な剥離シート5とを備え、前記基材1の表面は、立証措置欄印刷層3が形成され、剥離シート5は、剥離層6を有する樹脂フイルム7又は合成紙7からなることを特徴とする足跡鑑識用シート10。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、足跡を転写・採取するために用いる足跡鑑識用シートに関し、詳細には、足跡を転写する転写シートと足跡を特定する立証措置欄が一体化し、転写シートが貼付される剥離シートが反り曲がることのない足跡鑑識用シートに関する。
【背景技術】
【0002】
事件現場に残された被疑者の足跡は、犯罪を立証する証拠となるため、足跡の採取は事件の解決にとり重要な作業となる。足跡は、現場で採取する場合(以下、「現場足跡採取」という)と、被疑者から押収した履物の足跡を採取し作成する場合(以下、「対照足跡作成」という)とがあり、両者をそれぞれ透過光撮影した上、両者の足跡に現れる履物底のキズの有無、キズの形状、磨り減り具合など僅かな違いをも対比する照合作業が行われ、両者が一致すれば犯罪を立証する有力な証拠となる。足跡の採取には、粘着層を有する転写シートと転写シートが繰り返し剥離又は貼付が可能な剥離シートとからなる足跡鑑識用シートが用いられ、剥離シートから剥離させた転写シートに足跡を転写することにより行われる。
【0003】
従来、上記の足跡鑑識用シートは、採取された足跡を特定するための立証措置欄が剥離シートの紙面上に印刷され、所定事項を記入するようになっている。しかし、転写シートは、剥離シートから繰り返し剥離又は貼付が可能であるため、1の事件の転写シートを他の事件の転写シートと取り替える可能性や、1の事件の剥離シートを他の事件の剥離シートと取り替える可能性がある。また、1の事件の剥離シートを立証措置欄が捏造された剥離シートに取り替えることも可能である。このように、転写シートと立証措置欄で特定される剥離シートが一致しなくなる場合、足跡鑑識用シートの犯罪を立証する証拠としての価値は滅却され、事件の解決に大きな障害となる。
【0004】
そこで、上記の問題を解決するため、支持体の片面に粘着剤層を備えた粘着シート層と前記粘着剤層に再貼付可能に貼り合わせられた台紙層とからなる鑑識用粘着シート本体と、前記粘着シート層と前記台紙層とを貼り合わせた状態で両者を貼着固定する剥離判別用粘着テープとを備えたことを特徴とする鑑識用粘着シートの提案がある(特許文献1参照)。
【0005】
【特許文献1】特開2003−89776号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、上記の提案は、粘着シート層又は台紙層の貼り変えを一目瞭然に理解でき、また、保管時の剥離を回避させることができるものの、鑑識用粘着シートの部材が多くなり構成が複雑となる。また、従来と同様に台紙層に立証措置欄を印刷する関係上、台紙層の構成として紙が必要となるため、紙が湿気に左右されることに起因し台紙層が反り曲がることがあり、粘着シート層の剥離や貼付などの取り扱いに不具合を生じることがある。
【0007】
本発明は、上記の事情に鑑みなされたもので、簡単な構成により、転写シートと剥離シートの取り替えや立証措置欄の捏造を確実に防止でき、また剥離シートが反り曲がることのない足跡鑑識用シートを提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記の課題を解決するため、発明者等は検討を重ねた結果、本発明に想到した。本発明は、足跡を転写・採取する足跡鑑識用シートにおいて、基材の裏面に粘着層が形成される転写シートと、転写シートを繰り返し剥離又は貼付が可能な剥離シートとを備え、前記基材の表面は、立証措置欄印刷層が形成され、剥離シートは、剥離層を有する樹脂フイルム又は合成紙からなることを特徴とする足跡鑑識用シートを要旨とする。
【0009】
上記の構成の発明によれば、基材の表面に立証措置欄印刷層が形成されるので、転写シートと立証措置欄が一体化し、また、剥離シートの構成に紙が不要となる。立証措置欄とは、採取された足跡を特定するための欄で、警察署名、分類記号、採取年月日、採取者、立会人等の特定事項が記入される。
【0010】
上記の発明において、粘着層は粘着剤に帯電防止剤を混合したものを塗布したものであってもよい。この構成の発明によれば、剥離シートから転写シートを剥離する際の静電気の発生を抑制できる。
【0011】
また、上記の発明において、基材の外側に保護フイルムが積層してもよい。この構成の発明によれば、基材の表面を保護できる。
【発明の効果】
【0012】
請求項1に記載の発明は、転写シートと立証措置欄が一体化するので、簡単な構成で転写シートと立証措置欄で特定される剥離シートが一致しなくなることを確実に防止でき、足跡鑑識用シートの証拠能力を維持することができる。また、転写シートと立証措置欄を同時に透過光撮影できるので、特定された足跡の透過光撮影の作業が煩雑でなく容易となる。さらに、剥離シートの構成に紙が不要となるので、紙が湿気に左右されることに起因し剥離シートが反り曲がることなく平面性を維持でき、転写シートの剥離、貼付などの取扱いを円滑に行え使い勝手が向上する。
【0013】
請求項2に記載の発明は、上記の効果に加え、転写シート内に静電気によるチリやホコリなどの汚れが入り込むことを防止でき、転写シートの透過光撮影された影像に汚れが線上模様などとなって写ることがないので、現場足跡採取と対照足跡作成の照合作業をより正確に行うことができる。
【0014】
請求項3に記載の発明は、上記の効果に加え、基材の表面のキズや汚れを防止できるので、転写シートの透過光撮影された影像にキズや汚れが写ることがないので、現場足跡採取と対照足跡作成の照合作業をより正確に行うことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
本発明の足跡鑑識用シート10は、基材1の裏面に粘着層2が形成される転写シート4と、転写シート4を繰り返し剥離又は貼付が可能な剥離シート5とから構成される。
【0016】
足跡が転写される転写シート4は、基材1と基材1の裏面に形成される粘着層2とから構成される。基材1は透明樹脂フイルムを用い、ポリエチレンテレフタレートフイルム、ポリブチレンテレフタレートフイルム、ポリエチレンナフタレートフイルム、ポリエチレンフイルム、ポリプロピレンフイルム、セルロースジアセテートフイルム、セルローストリアセテートフイルム、ポリカーボネートフィルム、ポリスチレンフイルム、ポリビニルアルコール、軟質ポリ塩化ビニル等を例示できる。対照足跡作成の場合は、透明性の高いポリカーボネートフィルムが好ましい。また、現場足跡採取の場合は、透明性、コスト面などを考慮してポリエチレンテレフタレートフイルムが好ましい。
【0017】
基材1の裏面に形成される粘着層2は、粘着剤を塗布することにより形成される。粘着剤は、アクリル系粘着剤やウレタン系粘着剤等を例示できる。粘着層2には、粘着剤に帯電防止剤を混合することができ、帯電防止剤としては、アニオン性帯電防止剤、カチオン性帯電防止剤、ノニオン性帯電防止剤、両性イオン性帯電防止剤、高分子型帯電防止剤、イオン電導性帯電防止剤等を例示できる。
【0018】
基材1の表面には、立証措置欄印刷層3が形成される。立証措置欄印刷層3は、図2に示すように、足跡の転写の障害にならないよう、基材1の長手方向の一端に形成される。
立証措置欄印刷層3は、印刷用インキにより矩形状の印刷層が形成され、該印刷層に転写シート4に転写された足跡を特定するための既述の特定事項の欄が印刷され、足跡の採取に際して記入できるように構成されている。印刷用インキは、ポリエステル系印刷用インキ、アクリル系印刷用インキ、ポリオレフィン系印刷用インキ等を例示でき、基材1の素材に応じて適宜選択することができる。
【0019】
剥離シート5は、剥離層6を有する樹脂フイルム7又は合成紙7で形成される。樹脂フイルム7又は合成紙7は、黒色とすることが好ましい。樹脂フイルム7としてポリエチレンテレフタレートフイルム、ポリブチレンテレフタレートフイルム、ポリエチレンナフタレートフイルム、ポリエチレンフイルム、ポリプロピレンフイルム、セルロースジアセテートフイルム、セルローストリアセテートフイルム、ポリカーボネートフィルム、ポリスチレンフイルム、ポリビニルアルコール、軟質ポリ塩化ビニル等を例示できる。また、合成紙7として、フイルム法合成紙やファイバー合成紙を例示できる。剥離層6は、アルキル樹脂やシリコーン樹脂等により形成され、剥離シート5は該剥離層6により転写シート4を繰り返し剥離又は貼付が可能となる。
【0020】
保護フィルム8は、ポリエチレンフィルム、ポリプロピレンフイルム、ポリエチレンテレフタレートフイルム、ポリブチレンテレフタレートフイルム、ポリエチレンナフタレートフイルム、セルロースジアセテートフイルム、セルローストリアセテートフイルム、ポリスチレンフイルム、ポリビニルアルコール、軟質ポリ塩化ビニル等を例示できる。また、保護フイルム8は、本発明の足跡鑑識用シート10の必須の構成ではなく、基材1に積層しない構成とすることもできる。
【実施例】
【0021】
基材は、厚み100μmの透明なポリエチレンテレフタレートフイルム(東洋紡社製)を用い、裏面にアクリル系粘着剤(市販品)を固形分比で100重量部にカチオン性帯電防止剤(日本油脂社製)を固形分比で0.09重量部を混合した粘着剤を20μmの厚みで塗布した。基材の表面に、厚み10μmの立証措置欄印刷層をポリエステル系印刷用インキ((株)ミノグループ社製、U-PETサインホワイト)で形成し転写シートを得た。また、厚み90μmの黒色に着色されたポリエチレンテレフタレートフイルム(東洋紡社製)の表面にシリコン樹脂(市販品)を1μmの厚みで塗布し、剥離シートを得た。この剥離シート上に転写シートを貼付し、また転写シートの上に厚さ15μmの透明なポリエチレンフイルム(市販品)からなる保護フィルムを積層し足跡鑑識用シートを作製した。
【0022】
上記で作製した足跡鑑識用シートは、高湿度の状況下、あるいは乾燥した状況下に放置しても剥離シートが反り曲がることはなかった。また、剥離シートから剥離した転写シートを細かくちぎったティッシュに近づけ、帯電性試験を行ったところ、足跡鑑識用シートにティッシュが付着することはなく、静電気を帯びていなかった。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】実施の形態に係る足跡鑑識用シートの構成を示す説明図である。
【図2】実施の形態に係る保護フイルムを積層しない足跡鑑識用シートの平面図である。
【符号の説明】
【0024】
1 基材
2 粘着層
3 立証措置欄印刷層
4 転写シート
5 剥離シート
6 剥離層
7 樹脂フイルム又は合成紙
8 保護フイルム
10 足跡鑑識用シート

【特許請求の範囲】
【請求項1】
足跡を転写・採取する足跡鑑識用シートにおいて、基材の裏面に粘着層が形成される転写シートと、転写シートを繰り返し剥離又は貼付が可能な剥離シートとを備え、前記基材の表面は、立証措置欄印刷層が形成され、剥離シートは、剥離層を有する樹脂フイルム又は合成紙からなることを特徴とする足跡鑑識用シート。
【請求項2】
粘着層は、粘着剤に帯電防止剤を混合したものを塗布したものであることを特徴とする請求項1に記載の足跡鑑識用シート。
【請求項3】
基材の外側に保護フイルムが積層されてなる請求項1又は請求項2に記載の足跡鑑識用シート。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2009−208320(P2009−208320A)
【公開日】平成21年9月17日(2009.9.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−52753(P2008−52753)
【出願日】平成20年3月4日(2008.3.4)
【出願人】(594206244)株式会社エクシールコーポレーション (5)
【Fターム(参考)】