説明

距離計測装置

【課題】レーザ光の照射により対象物までの距離を測定する距離計測装置において、受信信号のレベルがピーク値となる時刻に最も近いサンプリングクロックの特定を目的とした回路を単純化し消費電流を削減する。
【解決手段】基準クロックに対してNとおりの遅延時間のサンプリングクロックを発生する。測距対象物からの受信信号をコンパレータにより参照電圧と比較しながらコード化して保持し、各サンプリングしたデータ間で順次大小比較を行う。比較結果の大小遷移状態切り替わり検出により、ピークレベルが保持されたレジスタを割り出し、そのときまでの比較回数が直近の基準クロックの立上りからピーク値受信時刻までの時間を示すとする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、パルス状のレーザ光を測距対象物に対し照射した時刻と、反射による測距対象物からの信号を検知した時刻との時間差を検知することにより、測距対象物までの距離を測定する距離計測装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来のこの種の距離計測装置は、最初の基準クロックから、測距対象物からの受信信号のレベルがピーク値となる時刻に最も近いサンプリングを行うクロック信号までの間の時間を測距カウンタにおけるカウントにより知り、その時間に、前記時刻から受信信号のレベルがピーク値となる時刻までの時間を加えることによって、対象物までの距離を測定するようにしている。
【0003】
後者の加算時間は、距離分解能に応じた数のサンプルホールド回路が、クロック周期を等分に位相をずらされたサンプルクロックにより受信信号のレベルを保持し、アナログマルチプレクサがセレクトカウンタによりサンプルホールド回路の出力を順次に切り替えて出力し、アナログエンコーダがアナログマルチプレクサの出力に対して参照電圧発生抵抗網からの参照電圧列との比較において量子化ビット数のデジタルエンコード信号を発生し、このデジタルエンコード信号が受信信号のピーク値に対応するデータパターンに一致するときのセレクトカウンタのカウント値により求めるようにしている。
【0004】
そして、参照電圧発生抵抗網は参照電圧列対応の分圧抵抗から成る列の複数組で構成され、またアナログエンコーダは、参照電圧と1対1対応のスイッチングトランジスと共通バイアス抵抗と定電流源から成り参照電圧列の組に対応する数の回路で構成されている。
【0005】
【特許文献1】特開2005−345320号公報(第6頁−第9頁、図1)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上述した従来の距離計測装置では、受信信号のレベルがピーク値となる時刻に最も近いサンプリングを行うクロック信号を特定するために、サンプルホールド回路,アナログマルチプレクサおよびアナログエンコーダを使用し、アナログエンコーダに入力する参照電圧のパターンを逐一変更しながらエンコーダの出力パターンを比較する方式を採っているため、アナログ回路が煩雑、かつ回路の素子数が増大するという第1の問題点がある。
【0007】
また、アナログエンコーダの構成品であるスイッチングトランジスタおよびバイアス抵抗,参照電圧発生抵抗網で使用される抵抗が多く、更にトランジスタは定電流方式で使用されるためスタンバイ状態が作れず消費電力削減の手段が見出せないので、量子化ビット数が大きくなると定電流型トランジスタの数量が増え消費電流が増大するという第2の問題点もある。
【0008】
そこで、本発明の目的は、回路構成が簡易で、消費電力を削減した距離計測装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の距離計測装置は、パルス化したレーザ光を対象物に照射した時刻と、対象物からの反射による受信信号を検知した時刻との時間差を基準クロックで計数することにより対象物までの距離を測定する距離測定装置において、レーザ光発生タイミングを認識させるためのスタート信号から、受信信号の受信タイミングを知らせるためのストップ信号までの間における基準クロック毎にカウントを行う測距カウンタ(図1の19)と、測距カウンタにおけるカウント結果を保持する上位レジスタ(図1の20)と、受信信号に対するサンプリングデータの大小遷移状態切り替わり検出によって、ストップ信号により測距カウンタが計数をストップした最後の基準クロックから受信信号がピーク値となる時刻までの時間を測定する補正回路(図1の3,10〜18,30)とを備え、上位レジスタが保持するカウント結果を補正回路による補正によって対象物までの距離を測定することを特徴とする。
【0010】
好ましくは、上記補正回路は、基準クロックの周期を距離分解能に応じて定められる(N+1)等分だけ位相のずれたN個のサンプルクロックを発生するサンプルクロック発生器(図1の3,30)と、対象物からの受信信号の最大振幅レベルの電圧換算値を抵抗分割することにより所望の分解能に応じてM個の参照電圧を発生する参照電圧発生回路(図1の11)と、受信信号の振幅値を各参照電圧と比較するM個のコンパレータ(図1の10)と、それぞれが全てのコンパレータにおけるMとおりの比較結果をサンプルクロックに応答して保持し、サンプルクロックの間にM回発生するシフトクロックにより保持データを前段方向にシリアルにシフトさせる(N+1)個のシフトレジスタから成るシフトレジスタ群(図1の12)と、シフトクロックに応答してシフトレジスタ群の最前段のシフトレジスタの出力を保持するシフトレジスタ(図1の14)と、シフトクロックがM回発生する度に発生する比較制御信号に応答して最前段のシフトレジスタの出力とシフトレジスタの出力を比較する比較回路(図1の13)と、比較制御信号の回数をカウントし基準クロックでクリアされる比較回数カウンタ(図1の15)と、比較回路における大小関係が逆転したときの比較回数カウンタにおけるカウントを保持する下位レジスタ(図1の18)とで構成されることを特徴とする。
【0011】
サンプルクロック発生器を構成するディレイラインは、基準トリガ信号に同期した基準クロックに対してNとおりの遅延時間を発生させる。この遅延時間は、測距カウンタのクロック信号の周期を(N+1)分割した値を1ステップとしており、Nとおりの遅延時間を持たせたサンプルクロックが測距対象物からの受信信号をサンプリングしその結果を保持する。保持された、受信信号がピーク値となる時刻前後の振幅値は比較回路によりレベル比較が行われる。受信信号のピーク時に最も近い時刻は、各遅延時間を持ったクロックによるサンプリング結果を保持されたレジスタのデータが、ピークレベルを含む位置が特定されるまでに要した比較回数をもとに算出され、その結果が基準クロックの立上りからピーク値受信時刻までの時間を示す下位データを与える。
【発明の効果】
【0012】
本発明の第1の効果は消費電力を削減できるということである。その理由は、受信信号のコンパレータ入力以降は、アナログ信号を一切扱わないため、従来サンプリングによる量子化ビット数増加に伴い増大していたトランジスタが不要となるからである。
【0013】
また、第2の効果は測距カウンタがカウントするクロック信号の1周期以下の距離分解能を測定し下位データとする部分の回路が簡易化されるということである。その理由は、受信信号がピークレベルとなる時刻の検出を、受信信号のサンプリング結果およびその変化点の抽出により実現するという方式を採用したためである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
次に、本発明の全体構成について図面を参照して説明する。
【0015】
図1に、本発明の距離計測装置の実施の形態を示すブロック図である。この距離測定装置は、パルスレーザ光を発生して測距対象物0に向けて照射し、測距対象物0から反射されてくる光信号を受信する。そして、レーザ光を送信した時刻から受信信号を受信する時刻までの時間を検出することにより測距対象物0までの距離を測定するものである。
【0016】
上記距離測定を行なうために、本距離計測装置は、クロック発生器1,パルス発生部2,N個のディレイライン3-1〜3-N,論理ゲート30,レーザ発生部4,送信光学系5,受光光学系6,検知器7,アンプ8,ピーク検出器9,M個のコンパレータ10-1〜10-M,参照電圧発生回路11,(N+1)個のシフトレジスタ12-1〜12-(N+1),比較回路13,シフトレジスタ14,比較回数カウンタ15,2段のフリップフロップ(FF1とFF2)16,論理ゲート17,下位レジスタ18,測距カウンタ19および上位レジスタ20から構成される。
【0017】
クロック発生器1は、測距対象物0に向けてレーザ光を照射した時刻から受光信号の受信時刻までの時間を測定するための基準クロックを発生してパルス発生部2と測距カウンタ19へ出力する。
【0018】
パルス発生部2は、クロック発生器1からの基準クロックBCKを基に、レーザ発生部4でのレーザ光発生に必要なレーザ発射制御信号を生成すると同時に、レーザ光発生タイミングに同期した基準トリガ信号と、基準クロックBCKと位相の一致したサンプルクロックSCKと、レーザ光発生タイミングを認識させるためのスタート信号を発生する。基準トリガ信号はシフトレジスタ14、サンプルクロックSCKはディレイライン3-1〜3-Nおよび論理ゲート30、スタート信号は測距カウンタ19へ出力される。
【0019】
また、パルス発生部2は、基準クロックの周期をTとしたときT/(N+1)の間にM発のシフトクロックSFCKを発生し、M発のシフトクロックSFCKの発生毎には比較制御信号を発生する。シフトクロックSFCKはシフトレジスタ12-1〜12-(N+1)、比較制御信号は比較回路13および比較回数カウンタ15へ出力される。
【0020】
更に、パルス発生部2は、ピーク検出器9より入力されるピーク検出信号のタイミングでサンプル停止信号SSPおよびクリア信号CLRを発生する。サンプル停止信号SSPは論理ゲート30、クリア信号CLRはピーク検出器9,測距カウンタ19および上位レジスタ20へ出力される。
【0021】
ディレイライン3-1〜3-Nは、サンプルクロックSCKに応答してNとおりの遅延時間を与えるサンプルクロックSCK1〜SCKNを出力する。サンプルクロックSCK1〜SCKNは、基準クロックBCKの周期をTとすると、それぞれT×K/(N+1)[K=1,2・・・N]の遅延時間を持つ。ここでNは、装置に要求される距離分解能に応じて決定する。論理ゲート30は、サンプルクロックSCKそのままのサンプルクロックSCK0をシフトレジスタ12-1へ出力し、サンプルクロックSCK1〜SCKNをシフトレジスタ12-2〜12-(N+1)へ出力する。
【0022】
レーザ発生部4は、レーザ発射制御信号がパルス発生部2から入力されるとパルスレーザを発生し、このパルスレーザは送信光学系5を通って測距対象物0に向け照射される。受光光学系6は、測距対象物0から反射される信号を受信し検知器7に導く。検知器7は、光による微弱な入力信号を電気信号に変換した後、アンプ8に出力すると同時に受信信号の受信タイミングを知らせるストップ信号を測距カウンタ19へ出力する。
【0023】
アンプ8の出力は、ピーク検出器9およびコンパレータ10-1〜10-Mに出力される。ピーク検出器9は、アンプ出力がピークレベルに到達するとそのタイミングでパルス発生部2にピーク検出信号を出力する。ピーク検出器9は、パルス発生器2から入力するクリア信号CLRによりクリアされる。
【0024】
図2に、レーザ送受信タイミングと測距対象区間を示す。測距カウンタ19は、スタート信号の立上りからストップ信号の立下りまでの間、基準クロックの立上り毎にカウントを行い、その結果を上位レジスタ20に登録する。この時、レーザ発射制御信号および発射されるパルスレーザは基準クロックBCKに同期しており、レーザ送信パルスの中心(タイミングt0)から、最初の基準クロックBCK(タイミングt1)までの時間差は常に固定値となる。 また、最初の基準クロックBCK(タイミングt1)から最後の基準クロックBCK(タイミングt2)までの間の時間は測距カウンタ19におけるカウントにより知ることができる。測距カウンタ19と上位レジスタ20は、パルス発生器2から入力するクリア信号CLRによりクリアされる。
【0025】
本距離計測装置が求める測距対象距離は、レーザ送信時刻(タイミングt0)から受信信号がピークとなる時刻(タイミングt3)までであるので、ストップ信号により測距カウンタ19が計数をストップした最後の基準クロックBCKの立上り(タイミングt2)から受信信号がピーク値となる時刻(タイミングt3)までの時間を測定すれば知ることができる。以下に説明する参照番号10〜18の各構成要素がこの役目を担う。
【0026】
コンパレータ10-1〜10-Mは、アンプ8出力のアナログ信号入力レベルと参照電圧発生回路11からの参照レベルを高速比較するもので、入力レベルが参照レベルより大きい場合はデジタル信号“1”を、小さい場合は“0”を出力する。ここで、参照電圧の設定精度は、本距離計測装置に要求される検出精度に応じてMの値を決定することにより定められる。
【0027】
参照電圧発生回路11は、受信信号の最大振幅レベルを考慮し、その電圧換算値をM個の抵抗により分割することによりMとおりの参照電圧を発生するもので、これら参照電圧は、それぞれコンパレータ10-1〜10-Mに入力され、アンプ8から入力される受信信号の振幅値と比較される。振幅値により刻々変動するコンパレータのデジタル出力は、それぞれがMビットのシフトレジスタ12-1〜12-(N+1)に入力する。
【0028】
パルス発生部2が発生するサンプルクロックSCKはディレイライン3-1〜3-Nにそれぞれ入力し、論理ゲート30によりサンプル停止ゲートと「AND」論理がとられ、Nとおりの遅延時間を持ったサンプリングクロックSCK1〜SCKNとなる。SCK0はシフトレジスタ12-1に、SCK1〜SCKNはシフトレジスタ12-2〜12-(N+1)に入力される。これらのシフトレジスタ12-1〜12-(N+1)それぞれは、並列保持機能により、参照電圧の分解能に応じたMビットの幅を持ち、それぞれのサンプルタイミングでのMとおりの比較結果を保持する。図3はそのタイミングチャートである。
【0029】
この保持動作が終了すると、本距離計測装置は次サイクルの送信/受信に入る前に以下の動作を行う。パルス発生部2は、比較回路13に対して比較制御信号、シフトレジスタ12-1〜12-(N+1)に対してシフトクロックSFCKを出力する。Mビットのシフトレジスタ14は、比較回路13が比較を行うための初期値として、基準トリガ信号のタイミングでMビット全てが“0”にセットされ、以後はシフトクロックSFCKに同期してシフトレジスタ12-1の出力が入力される。比較回路13は、シフトレジスタ12-1の保持値がシフトレジスタ14の保持値より大きい場合は“1”を、小さい場合は“0”をフリップフロップFF1に出力する。
【0030】
シフトレジスタ12は、シフトクロックSFCKにより保持データを前段方向にシリアルにシフトさせ、以後シフトクロックSFCKのM発毎に比較制御信号が比較回路13に入力され比較動作が繰り替えされる。ここで、比較回路13は受信信号が増加している期間は“1”を出し続けるが、受信信号がピーク値に達し、減少が始まると“0”を出力開始する。
【0031】
フリップフロップFF2は、シフトクロックSFCKのタイミングでフリップフロップFF1からの入力を出力し、論理ゲート17はフリップフロップFF1,FF2の両出力の排他的論理をとり、その結果を下位レジスタ18に出力する。したがって、論理ゲート17は受信信号の出力レベルが増加から減少に転じたタイミングのみ“1(L→H)”を出力する。
【0032】
比較回数カウンタ15は、比較制御信号が入力される度に、その立上りを計数しその結果を下位レジスタ18に出力する。下位レジスタ18は、論理ゲート17が出力する保持信号が入力されると、比較回数カウンタ15から入力する計数結果を一時的に登録する。比較回数カウンタ15と下位レジスタ18は、パルス発生器2から入力する基準クロックによりクリアされる。
【0033】
下位レジスタ18に登録されるデータは、シフトレジスタ12-1〜12-(N+1)のいずれかに保持された受信信号のピークレベルデータが、比較対象となるシフトレジスタ14およびシフトレジスタ12-1までシフトにより移動するまで何回比較動作が行われたかを表す。このため、ディレイライン3-1〜3-Nにより、どれだけの遅延時間を与えられたサンプルクロックにより受信信号のピークレベルに最も近いデータがサンプルされたかを特定する。
【0034】
測距カウンタ19によりスタート信号からストップ信号までの時間を基準クロックBCK単位でカウントしたデータは、上位レジスタ20の登録データとなり、下位レジスタ18のデータと組合せられて測距データとなる。
【実施例】
【0035】
次に、本発明の実施例として、ディレイライン3が7個(測距データの下位部分は3ビット)で受信信号のピークレベルがディレイライン3-1のタイミングに最も近い位置に現れる場合について説明する。
【0036】
基準クロックの周波数を10MHz(1周期100nsec)とすると、ディレイライン3によりサンプルクロックに与えられる遅延時間はその1/8の12.5nsec単位で設定される。受信信号のサンプリング結果を比較する参照電圧の種類は16種類(16ビット)とする。基準クロックの周期をTとすると、ディレイライン3-1〜3-7はそれぞれ、T×K/8[K=1,2・・・7]つまり12.5nsec単位で遅延時間を設定する。
【0037】
参照電圧の設定精度は、距離計測システムに要求される検出精度に応じて設定するものであり、ここでは16段階とすると、アンプ8の出力は、ピーク検出器9およびコンパレータ10-1〜10-16に入力される。参照電圧発生回路11は、受信信号の最大振幅レベルを考慮しその電圧換算値を16個の抵抗により分割することにより16とおりの参照電圧を発生し、これら参照電圧はそれぞれコンパレータ10-1〜10-16に入力され、アンプ8から入力される振幅値と比較される。
【0038】
振幅値により刻々変動するコンパレータ10-1〜10-16のデジタル出力はシフトレジスタ12-1〜12-8に入る。パルス発生部2が発生するサンプルクロックSCKは論理ゲート30およびディレイライン3-1〜3-7に入力し、論理ゲート30によりサンプル停止信号と「AND」論理がとられる。この結果、8とおりの遅延時間を持ったサンプルクロックSCK0〜SCK7となり、SCK0はシフトレジスタ12-1に、SCK1〜SCK7はシフトレジスタ12-2〜12-8に入力される。
【0039】
シフトレジスタ12-1〜12-8は、並列保持機能により参照電圧の分解能に応じた16ビットの幅を持ち、それぞれのサンプルタイミングでの16とおりの比較結果を保持する。この保持動作が終了すると、本計測装置が次サイクルの送信/受信に入る前に、以下の動作を行う。
【0040】
パルス発生部2は、比較回路13に対して比較制御信号を、シフトレジスタ12-1〜12-8に対してシフトクロックSFCKを出力する。シフトレジスタ14には、比較回路13が比較を行う初期値として、基準トリガ信号のタイミングで16ビット全てが“0”にセットされる。比較回路13は、シフトレジスタ12-1の保持値がシフトレジスタ14の保持値より大きい場合は“1”を、小さい場合は“0”をフリップフロップFF1に出力する。
【0041】
シフトレジスタ12-1〜12-8は、シフトクロックSFCKにより保持データを前段方向にシリアルにシフトさせ、以後、M発のシフトクロックSFCK毎に比較制御信号が比較回路13に入力され比較動作が繰り替えされる。ここで、比較回路13は受信信号が増加している期間は“1”を出し続けるが、受信信号がピーク値に達し、減少が始まると“0”を出力開始する。
【0042】
フリップフロップFF2は、シフトクロックSFCKのタイミングでフリップフロップフリップフロップFF1の入力を出力し、論理ゲート17はフリップフロップFF1とFF2両出力の排他的論理をとり、その結果を下位レジスタに出力する。したがって、論理ゲートは受信出力レベルが増加から減少に転じたタイミングのみ“1(L→H)”を出力する。
【0043】
比較回数カウンタ15は、比較制御信号が入力される度にその立上りを計数しその結果を下位レジスタ18に出力する。下位レジスタ18は、論理ゲートが出力する保持信号が入力されるとその値を一時的に登録する。登録されるデータは、シフトレジスタ12-1〜12-8のいずれかに保持された受信信号のピークレベルデータが、比較対象となるシフトレジスタ14およびシフトレジスタ12-1までシフトにより移動するまで何回比較動作が行われたかを表すため、ディレイライン3-1〜3-7によりどれだけの遅延時間を与えられたサンプルクロックにより受信信号のピークレベルに最も近いデータがサンプルされたかを特定する。
【0044】
測距カウンタ19によりスタート信号からストップ信号までの時間を基準クロックBCK単位でカウントしたデータは、上位レジスタ20の登録データとなり、下位レジスタ18のデータと組合せられ測距データとなる。スタート信号からストップ信号までの時間を100nsec単位でカウントしたデータ(一例として、カウンタを完了したデータが“1000”であるとする)は前出の上位レジスタ20の登録データとなり、下位レジスタ18のデータと組合せられ測距データとなる。
【0045】
この場合、上位レジスタ20により実測された距離データは、3×10の8乗(光速)×100nsec(クロック周期)×1000(カウント値)÷2(往復補正)=15000mとなる。また、下位レジスタ18により実測された距離データは、冒頭の仮定により受信信号のピークレベルがディレイライン3-1のタイミングに最も近い位置に現れる場合としたため、3×10の8乗(光速)×12.5nsec(ディレイラインの設定単位)÷2(往復補正)=1.875mとなる。従って、求める測距対象距離は、15001.875mである。
【図面の簡単な説明】
【0046】
【図1】本発明の距離計測装置の実施の形態を示すブロック図
【図2】本発明におけるレーザ送受信タイミングと測距対象区間の説明図
【図3】本発明における受信信号のサンプリングとピークレベル後の保持状態を示す図
【符号の説明】
【0047】
0 測距対象物
1 クロック発生器
2 パルス発生部
3 ディレイライン
4 レーザ発生部
5 送信光学系
6 受光光学系
7 検知器
8 アンプ
9 ピーク検出器
10 コンパレータ
11 参照電圧発生回路
12 シフトレジスタ
13 比較回路
14 シフトレジスタ
15 比較回数カウンタ
16 フリップフロップ
17 論理ゲート
18 下位レジスタ
19 測距カウンタ
20 上位レジスタ
30 論理ゲート

【特許請求の範囲】
【請求項1】
パルス化したレーザ光を対象物に照射した時刻と、前記対象物からの反射による受信信号を検知した時刻との時間差を基準クロックで計数することにより前記対象物までの距離を測定する距離測定装置において、
レーザ光発生タイミングを認識させるためのスタート信号から、前記受信信号の受信タイミングを知らせるためのストップ信号までの間における前記基準クロック毎にカウントを行う測距カウンタと、
前記測距カウンタにおけるカウント結果を保持する上位レジスタと、
前記受信信号に対するサンプリングデータの大小遷移状態切り替わり検出によって、前記ストップ信号により前記測距カウンタが計数をストップした最後の基準クロックから前記受信信号がピーク値となる時刻までの時間を測定する補正回路とを備え、
前記上位レジスタが保持するカウント結果を前記補正回路による補正によって前記対象物までの距離を測定することを特徴とする距離測定装置。
【請求項2】
前記補正回路は、
前記基準クロックの周期を距離分解能に応じて定められる(N+1)等分だけ位相のずれたN個のサンプルクロックを発生するサンプルクロック発生器と、
前記対象物からの受信信号の最大振幅レベルの電圧換算値を抵抗分割することにより所望の分解能に応じてM個の参照電圧を発生する参照電圧発生回路と、
前記受信信号の振幅値を前記各参照電圧と比較するM個のコンパレータと、
それぞれが全ての前記コンパレータにおけるMとおりの比較結果を前記サンプルクロックに応答して保持し、前記サンプルクロックの間にM回発生するシフトクロックにより保持データを前段方向にシリアルにシフトさせる(N+1)個のシフトレジスタから成るシフトレジスタ群と、
前記シフトクロックに応答して前記シフトレジスタ群の最前段のシフトレジスタの出力を保持するシフトレジスタと、
前記シフトクロックがM回発生する度に発生する比較制御信号に応答して前記最前段のシフトレジスタの出力と前記シフトレジスタの出力を比較する比較回路と、
前記比較制御信号の回数をカウントし前記基準クロックでクリアされる比較回数カウンタと、
前記比較回路における大小関係が逆転したときの前記比較回数カウンタにおけるカウントを保持する下位レジスタとで構成されることを特徴とする請求項1記載の距離測定装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2008−145201(P2008−145201A)
【公開日】平成20年6月26日(2008.6.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−331096(P2006−331096)
【出願日】平成18年12月7日(2006.12.7)
【出願人】(303013763)NECエンジニアリング株式会社 (651)
【Fターム(参考)】