説明

路上作業用警備用具のセッティング方法及び路上作業用警備システム

【課題】交通事故発生時などにおいて、通行規制ゾーンと通行許容ゾーンとを分ける警戒線として路上に敷設される発光ホース状部材からなる警備用具を適宜位置に容易かつ迅速にセッティングできるようにする。
【解決手段】発光可能なホース状部材2、ホース状部材2を繰り出し自在にして巻き取るホースリール3、を装備した保安車両1を、通行規制ゾーンとする車線部分の後方部に停止させ、その保安車両1の後方に標識物4を設置する。標識物4に発光ホース状部材2の繰出端を係止させた状態で保安車両1を通行規制ゾーンとする車線部分の前方部まで走行移動させ、以って発光ホース状部材2をホースリール3から保安車両1の後方に繰り出して路上に敷設させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、交通事故処理・舗装工事等の路上作業に用いられる警備用具としての発光体を具備したホース部材のセッティング方法及び路上作業用警備システムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、高速道路等においては、交通事故等の災害が発生した場合、その付近を走行する一般車両による二次災害を防止するため、災害現場を含む車線後方に発炎筒、矢印板、あるいはコーン(パイロン)等を設置して、交通規制を行っている。
【0003】
上記警備用具のうち、用具が発光を伴うものは遠方からの視認性に優れ、夜間における警戒区域の確保に有効である。特にチューブライトのような筒状中空体の発光体は、敷設の自由度が高く、警戒区域全体を囲うことが可能である。
【0004】
しかしながら、事故現場等で急遽筒状中空体の敷設を行う場合、筒状中空体の敷設作業中において、その敷設作業者が事故に巻き込まれる危険性が高いという問題がある。
【0005】
例えば、高速道路で交通事故が発生した場合には、一般車両が高速で走行していることを考慮して筒状中空体を事故現場の後方50〜数百mまで引き伸ばさねばならないが、作業者が路上を歩行しながら筒状中空体を敷設するには相当の時間を要し、詰まるところ交通規制がされていない危険区域での滞在時間が長くなるから、二次災害の発生が懸念されるものである。
【0006】
加えて、長い区間に筒状中空体を敷設する作業は極めて重労働であり、しかも作業完了後に筒状中空体を回収することは容易でなく、その運搬や保管も至極困難である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2002−22574号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は以上のような事情に鑑みて成されたものであり、その目的は交通事故発生時などにおいて通行規制ゾーンと通行許容ゾーンとを分ける警戒線として路上に敷設される発光ホース状部材による警備用具を適宜位置に容易かつ迅速にセッティングできるようにすることにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は上記目的を達成するため、交通事故処理、又は道路工事などが行われる路上作業現場を含む車線部分を通行規制ゾーンとして警備するための警備用具をセッティングする方法であり、
前記警備用具として、前記通行規制ゾーンと一般車両の通行を許容する通行許容ゾーンとを分ける警戒線として路上、乃至路上に設置されたコーン(パイロン)に接続されることにより敷設されて前記通行規制ゾーンを形成する発光体を具備したホース状部材と、
そのホース状部材を繰り出し自在にして巻き取るホースリールとを装備した保安車両を前記通行規制ゾーンとする車線部分の後方部に停止させ、その保安車両の後方に所定の標識物(コーン等)を設置し、
その標識物に前記ホース状部材の繰出端を係止させた状態で前記保安車両を前記通行規制ゾーンとする車線部分の前方部まで走行移動させることにより、前記ホース状部材を前記ホースリールから前記保安車両の後方に繰り出して路上に敷設することを特徴とする路上作業用警備用具のセッティング方法を提供する。
【0010】
又、本発明は、交通事故処理、又は道路工事などが行われる路上作業現場を含む車線部分を通行規制ゾーンとして警備するための警備システムであり、
所定の警備用具を装備した車両と、前記警備用具とは別体として前記車両に搭載される路上設置用の標識物からなり、
前記警備用具として、前記通行規制ゾーンと一般車両の通行を許容する通行許容ゾーンとを分ける警戒線として路上に敷設乃至コーン上に設置される発光ホース状部材を備えることを特徴とする路上作業用警備システムを提供するものである。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、路上の長い区間に対しても長尺なホース状部材を容易かつ迅速に敷設することができるので、交通規制がされていない危険帯域に敷設作業者が滞在する時間を短縮して二次災害の発生を抑制することができる。
【0012】
加えて、発光ホース状部材がホースリールに繰り出し自在に巻き取られることから、路上に敷設した発光ホース状部材の巻き取り回収も容易かつ迅速に行えることから、それらの運搬、設置、撤去が極めて容易で、交通事故現場に速やかに出動して周辺の警備に当たることができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明に係る路上作業用警備システムを示す側面図
【図2】同警備システムを示すブロック図
【図3】警備用具の交通事故現場周辺へのセッティング例を示す説明図
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、図面に基づいて本発明を詳しく説明する。先ず、図1により本発明に係る路上作業用警備システムについて説明するならば、1は保安車両であり、この保安車両1には路上作業現場周辺の警備に必要な警備用具として、発光機能を有する、路上に敷設するための発光ホース状部材2、その発光ホース状部材2を繰り出し自在にして巻き取るホースリール3が装備されている。
【0015】
発光ホース状部材2は、透光性のホースにLED、電球、ELなどの光源を内蔵したものを用いることができる。
【0016】
尚、係る発光ホース状部材2は、発光機能を損なわない限りは継手により複数本を連結した構成でも良い。又、発光ホース状部材2におけるホースの材質として、熱可塑性樹脂類(塩化ビニル樹脂、ポリエチレン、ポリプロピレン、ブタジエン樹脂、ABS樹脂、アクリル樹脂、PET樹脂、フッ素樹脂、ポリウレタン樹脂、ナイロン樹脂等)、ゴム類(スチレン・ブタジエン、エチレン・プロピレン・ジエン類ゴム、ブタジエンゴム、イソピレンゴム、クロロピレンゴム、ブチルゴム、ウレタンゴム、シリコーンゴム、フッ素ゴム、多硫化ゴム、水素化ニトリルゴム、アクリルゴム、クロロスルホン化ポリエチレンゴム、エピクロロヒドリンゴム、エチレン・アクリルゴム等)、あるいは熱可塑性エラストマー(塩ビ系、オレフィン系、ウレタン系、ポリエステル系、ポリアミド系、フッ素系等)が挙げられるが、これに限定されるものでなく、発光ホース状部材2は、全体に可撓性を有するものであればよい。具体例として、係る発光ホース状部材には市販のポリ塩化ビニル製LED発光ホース(外径13mm、全長50m)が用いられる。
【0017】
ここに、上記のような発光ホース状部材2は、電源端子を有する一端がホースリール3の巻胴部31の外周部に接続され、ホースリールの接続部から電源供給先、例えば上記の保安車両1のバッテリなどからなる電源部5と導電接続されている。
【0018】
図1において、4は発光ホース状部材2の繰出端を係止した路上設置用の標識物であり、この標識物4は発光ホース状部材2などの警備用具とは別体として保安車両1に搭載され、使用に際し保安車両1から降ろされて路上に設置される。尚、図示例において、標識物4はその下部を鍵付の座板41とした円錐状のパイロン(コーン)とされているが、係る標識物4として、折り畳み式のA型バリケード、三角表示板、あるいは「事故発生」などの文字を記した立て看板などを用いてもよい。
【0019】
一方、ホースリール3は、両端にフランジを有する巻胴部31、この巻胴部31を回転自在に支持する左右一対の軸部32a,32b、及びその両軸部32a,32bを保持するブラケット部33などから構成される公知のものである。例えば、係るホースリール部3として、HATAYA製ホースリール(UCL−503B)を用いることができる。ここに、巻胴部31内には屈曲管34(エルボ)が固設されており、その一端が発光ホース状部材2の一端を通す34aとして巻胴部31の外周に突出されている。又、上記屈曲管34の他の一端は中空状とされる一方の軸部32aの一端部にシール材を介して回転自在に結合され、軸部32aの他の一端は電線6を介して電源部5に導電接続されている。尚、電線6は可撓線でも剛性線でもよい。又、ホースリール3の巻き取り方式は、手動式あるいは電動式のいずれでもよい。
【0020】
そして、係るホースリール3は、その軸部32a,32bを保安車両1の車幅方向に向けて当該保安車両1の荷台後部に固定され、巻胴部31に巻き取られた発光ホース状部材2を保安車両1の後方に繰り出すことが可能とされている。
【0021】
次に、以上のような警備システムを構成する警備用具のセッティング方法について説明すれば、係る方法は、交通事故処理、又は道路工事などが行われる路上作業現場において、その路上作業現場を含む車線変更部分を通行規制ゾーンとして警備するための警備用具をセッティングする方法である。
【0022】
一例として、図3に片側2車線L1,L2の道路で発生した交通事故現場を示す。尚、図3において、Cは事故車であり、矢印は一般車両の通行方向を示す。ここに、車線L1上にて1台ないし複数台の車両を事故車Cとする交通事故が発生した場合、その車線L1内では緊急救命隊による負傷者の救出、警察官による現場検証、ならびに事故車Cの撤去といった路上作業が行われるが、この時その作業現場を含む車線L1部分を通行規制ゾーンZaとして一般車両の通行を規制しないと、一般車両が作業現場に誤って進入して事故車Cに追突してしまったり、作業者を跳ね飛ばしてしまったりする二次災害を発生しかねない。
【0023】
そこで、上記のような路上作業を行うに際し、先ず図3(a)のように上記警備用具を装着した保安車両1を通行規制ゾーンZaとする車線部分の後方部(事故車Cから50〜100m後方)に停止させ、その保安車両1に搭載しておいた標識物4を当該保安車両1の荷台から降ろし、これを保安車両1の後方で路上に設置する。尚、その標識物4には、発光ホース状部材2の繰出端を予め係止しておくか、あるいは路上設置後に発光ホース状部材2の繰出端を係止する。
【0024】
しかして、図3(b)のように保安車両1を通行規制ゾーンZaとする車線部分の前方部(事故車Cの前方10m以内程度)まで走行移動させ、これにより発光ホース状部材2をホースリール3から保安車両1の後方に繰り出して路上に敷設する。つまり、発光ホース状部材2の繰出端を標識物4に係止させた状態で保安車両1が前進すると、標識物4を支点として発光ホース状部材2がホースリール3から自動的に繰り出され、これが保安車両1の移動経路に沿って路上に敷設されることとなる。
【0025】
尚、舗装工事等の長期間の作業においては、発光ホース状部材2により規制ゾーンを形成したまま、保安車両1のみを移送することとなる。そこで、ホースリール3は保安車両1から取り外し自由とする、乃至、発光ホース状部材2は繰出端側で取り外し自在とする、としてもよい。
【符号の説明】
【0026】
1 保安車両
2 発光ホース状部材
3 ホースリール
4 標識物
5 電源部
6 電線
Za 通行規制ゾーン
Zb 通行許容ゾーン

【特許請求の範囲】
【請求項1】
交通事故処理、又は道路工事などが行われる路上作業現場を含む車線部分を通行規制ゾーンとして警備するための警備用具をセッティングする方法であり、
前記警備用具として、前記通行規制ゾーンと一般車両の通行を許容する通行許容ゾーンとを分ける警戒線として、
路上に敷設されて前記通行規制ゾーンを形成する
発光体ホース状部材と、
そのホース状部材を繰り出し自在にして巻き取るホースリールと、
を装備した保安車両を前記通行規制ゾーンとする車線部分の後方部に停止させ、
その保安車両の後方に所定の標識物を設置し、その標識物に前記ホース状部材の繰出端を係止させた状態で前記保安車両を前記通行規制ゾーンとする車線部分の前方部まで走行移動させることにより、
前記ホース状部材を前記ホースリールから前記保安車両の後方に繰り出して路上に敷設することを特徴とする路上作業用警備用具のセッティング方法。
【請求項2】
交通事故処理、又は道路工事などが行われる路上作業現場を含む車線部分を通行規制ゾーンとして警備するための警備システムであり、
所定の警備用具を装備した保安車両と、前記警備用具とは別体として前記保安車両に搭載される路上設置用の標識物からなり、
前記警備用具として、前記通行規制ゾーンと一般車両の通行を許容する通行許容ゾーンとを分ける警戒線として
発光ホース状部材
を備えることを特徴とする路上作業用警備システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2012−136909(P2012−136909A)
【公開日】平成24年7月19日(2012.7.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−291406(P2010−291406)
【出願日】平成22年12月28日(2010.12.28)
【出願人】(000228349)日本カーリット株式会社 (269)
【Fターム(参考)】