路上通信システム及び路上通信装置
【課題】車載装置に正確な信号情報を提供することができる路上通信システムを提供する。
【解決手段】交通信号制御機1aは、信号灯色の表示予定時間に関する信号情報を路上通信装置2宛に送信する。この場合の信号情報には現在表示している信号灯色の最短時間と最長時間と最小保証時間が含まれている。そして、この信号情報を受信した路上通信装置2の通信制御装置2bは、最短時間と最長時間をカウントダウン処理していく。この場合、通信制御装置2bは最短時間と最小保証時間が一致した時点で最短時間のカウントダウン処理を停止する。
【解決手段】交通信号制御機1aは、信号灯色の表示予定時間に関する信号情報を路上通信装置2宛に送信する。この場合の信号情報には現在表示している信号灯色の最短時間と最長時間と最小保証時間が含まれている。そして、この信号情報を受信した路上通信装置2の通信制御装置2bは、最短時間と最長時間をカウントダウン処理していく。この場合、通信制御装置2bは最短時間と最小保証時間が一致した時点で最短時間のカウントダウン処理を停止する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、路上装置と車載装置とが連携してドライバの安全運転を支援するシステムに関し、特に、このシステムに不可欠な信号灯色及びその継続時間などの信号情報を提供する路上通信システム及びこの路上通信システムに用いられる交通信号制御機並びに路上通信装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、交差点内及びその近傍での交通事故を防止する目的で、交差点に設けられている交通信号機の信号灯色及び継続時間などの信号情報を車両に対して提供し、車載装置がその信号情報に基づいて前記交差点の手前で停止すべきか通過可能かを判断し、車両の速度制御を行う、又はドライバに対して減速を促したり注意を喚起したりする安全運転支援システムが提唱されている(例えば特許文献1参照)。
【0003】
特許文献1に記載されている装置では、例えば、青信号を表示している信号灯器が赤信号になるまでの時間情報を、道路に設けた送信装置から車両へ送信し、車載装置側でこの時間情報とその際の走行速度とに基づいて演算を行い、交差点を安全に通過できる時間がないと判断した場合、つまり、交差点手前で停止すべきと判断した場合に、自動的にブレーキがかかり車両を減速、停止させる制御を行う。
【0004】
このような安全運転支援システムを実現するための路上通信システムは、通常、信号灯器の表示時間の予定に関する信号情報を作成する交通信号制御機と、当該信号情報を交通信号制御機から受信して車両側に提供する路上通信装置とを含むものとして構成されるが、この交通信号制御機と路上通信装置との間の通信の頻度を軽減すること等を目的として、交通信号制御機から路上通信装置に対して信号情報を送信する第一周期(例えば10秒)よりも短い第二周期(例えば1秒)で路上通信装置が信号情報を更新して、車両側に提供する、という方法が提案されている(例えば特許文献2参照)。
このような方法によれば、交通信号制御機と路上通信装置との間の通信の頻度を少なくした場合であっても、信号情報をきめ細かい情報(1秒単位の情報)として車両側に提供することが可能になるという利点がある。
【特許文献1】特許第2806801号公報
【特許文献2】特開2008−152680号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
前記路上通信システムの実現において、交通信号制御機が右折感応制御やジレンマ感応制御等の地点感応制御を実行する場合には、当該地点感応制御の対象となる信号灯色の継続時間が不確定なものとなり、確定した情報として車両に提供することができないという問題がある。
そこで、その継続時間を所定の幅を持つ範囲の情報として提供する方法がある。例えば、地点感応制御によって表示する青信号の継続時間が30秒以上50秒以下と決められている場合には、青信号の継続時間の最短時間を30秒、最長時間を50秒として信号情報に格納する方法を採用することができる。
単に、継続時間が不明である、という情報を提供する場合に比べて、車両側にとって有益な情報となる利点がある。
【0006】
ところで、一般的な交通信号制御では、信号の1サイクル(信号表示が一巡する期間)を複数の階梯に分割し、1サイクルの開始時点で各階梯において表示する信号灯色とその継続時間を決定する、という方法が用いられている。
例えば、2本の道路が交差する交差点においては、ある道路の車両用信号灯器と歩行者用信号灯器の両方が青信号である状態を「PG」として第1階梯と定義し、当該道路の車両用信号灯器が青信号のままで、歩行者用信号灯器が青点滅信号である状態を「PF」として第2階梯と定義し、当該道路の車両用信号灯器が青信号のままで、歩行者用信号灯器が赤信号である状態を「PR」として第3階梯と定義する、といった方法が用いられる。そして、交通状況等に応じて、それぞれの階梯に何秒割り当てるかが決定される。
【0007】
この交差点で地点感応制御を行う場合には、どの階梯で実行するかを予め交通信号制御機に設定しておき(例えば第1階梯でバス感応制御、第3階梯でジレンマ感応制御を実行等)、設定された階梯が実行され始めたら、車両感知器等の情報を参照して適切なタイミングで当該階梯を打ち切る処理を行う。この階梯を打ち切る処理は、通常、予め定められた時間範囲内(地点感応制御を実行する時間範囲のことを「感応幅」という。)において実行されることが一般的である。
この場合、地点感応を実行する階梯を可変階梯、地点感応等が実行されず実行時間が予め確定している階梯を固定階梯という。
例えば、可変階梯の実行時間が30秒から50秒の範囲(感応幅)と定められているのであれば、可変階梯を実行し始めてから30秒経過後は、打ち切りの条件が整った時点でいつでもこの可変階梯を打ち切ることができる(例えば、40秒経過時点等)。そして、打ち切りの条件が整わない場合であっても、50秒が経過した時点で強制的にこの可変階梯を終了させる。
【0008】
例えば、右折感応制御を実行する可変階梯(例えば、右折青矢印灯を表示する階梯)であれば、右折専用車線に設置された車両感知器で右折車線を監視し、右折車両の車列が途切れたと判断した時点から数秒経過後(例えば3秒後)、という条件に合致した時点でこの可変階梯が打ち切られる。
そして、感応幅の上限値まで経過しても右折車両の車列が途切れなかった場合には、まだ右折車両が存在していたとしても、その上限値でこの可変階梯を打ち切る、という動作を実行する。
【0009】
ところで、信号情報で提供される対象となる信号灯色が複数の階梯で構成されており(例えば車両用信号灯器の青信号がPG、PF、PRの3つの階梯で構成される場合等)、それらの階梯のうちの1つが可変階梯であった場合、この信号灯色の継続時間は全体としては不確定となるため、前述のように、信号情報に格納される各信号灯色の継続時間を、範囲の情報(例えば、車両用青信号は30秒以上50秒以下であるという情報)として提供することが好ましい。
例えば、PGが可変階梯でその範囲が20秒から40秒であり、PFとPRが固定階梯で共に5秒である場合、PGの実行を開始する時点の信号情報には、「車両用信号灯器の青信号の継続時間の最短時間は30秒で最長時間は50秒」という情報を格納して提供することが望ましい。
【0010】
この場合、特許文献2に開示された方法を用いて、交通信号制御機が10秒に1回ずつ信号情報を路上通信装置に送信し、当該路上通信装置が受信した信号情報を1秒毎に更新するとすれば、路上通信装置は、信号情報を受信してから1秒後には、車両用信号灯器の青信号の継続時間の最短時間は29秒で最長時間は49秒と、情報内容を更新して車両側に提供することができる。
すなわち、路上通信装置が受信した最新の信号情報に格納される情報のうち現在表示されている信号灯色の最短時間と最長時間を、受信時点を起点とした時間経過と共に減じていくことができる(このように路上通信装置側で信号情報の内容を更新する処理を「カウントダウン処理」という。)。
なお、可変階梯が打ち切られる時点の前後では、車両側に提供すべき信号情報の内容が不連続に変化するため、前回信号情報を送信してから10秒未満の時点であっても、即座に新しい内容の信号情報を送信することが好ましい。この可変階梯が打ち切られた時点で交通信号制御機から路上通信装置に対して送信される信号情報には、車両用信号灯器の青信号の継続時間の最短時間と最長時間は共に10秒(PFとPRが共に5秒であるため)である旨の情報が格納される。
【0011】
本出願人は、このようなカウントダウン処理を実行する場合に、以下のような課題があることを見出した。
前述の例で、例えば、可変階梯PGの感応幅に入った時点で路上通信装置が受け取る信号情報に含まれる車両用青信号の最短時間は10秒で最長時間は30秒となるが(可変階梯PGはいつ打ち切られるか分からないため、その最短時間は0秒であり最長時間は20秒である。また、PGの後で実行される2つの固定階梯(PFとPR)の最短時間と最長時間は共に5秒である。従って、PG乃至PRで構成される車両用信号灯器の青信号は10秒から30秒の範囲となる。)、この情報をそのままカウントダウン処理すると信号情報の正確性が低下する。
【0012】
例えば、この情報を受信した時点から3秒後には、通常であればカウントダウン処理により、最短時間は7秒で最長時間は27秒という内容に更新されるが、可変階梯PGを実行中であれば、車両用青信号が表示される時間は最低でも10秒(実行前であるPFとPRの2つの階梯の合計時間)存在するためである。
つまり、可変階梯を含む信号灯色の継続時間をカウントダウン処理する場合には、単純に時間経過と共に最短時間と最長時間を減じていく方法に対して、新たな工夫を加えることが望ましい、という新たな課題を見出したのである。
【0013】
本発明は、このような事情に鑑みてなされたものであり、車両に対してより正確性の高い信号情報を提供することができる路上通信システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0014】
第一の発明にかかる路上通信システムは、信号灯器の表示予定に関する情報を含む信号情報を作成する信号情報作成手段を備え所定の第一周期毎に前記信号情報を他の装置宛に送信する交通信号制御機と、前記信号情報を受信し該受信時点から前記第一周期よりも短い所定の第二周期毎に前記信号情報を更新すると共に更新した信号情報を車載装置に対して送信する路車間通信手段を有する路上通信装置とを含み、前記更新手段は、前記交通信号制御機からの更新条件情報に応じて、受信した信号情報の更新を停止する停止手段を備えている(請求項1)。
【0015】
本発明によれば、路上通信装置が無条件で信号情報を更新するのではなく、信号情報の作成元である交通信号制御機が当該更新に関する更新条件情報を作成して前記路上通信装置宛に送信し、路上通信装置による更新処理を停止できるようになるので、車載装置に対して信号情報を提供する場合のシステムの柔軟性が高まる。
特に、既述の通り、カウントダウン処理によって信号情報の正確性が低下する可能性のある場面でこの機能を適用すれば大変有用である。
なお、ここにいう更新条件情報とは、更新処理を開始・停止等するように指示する指示情報でも良いし、更新処理を許可する時間帯等に関する情報でも良いし、後述する最小保証時間のような情報であっても良い。
【0016】
このシステムにおいて、前記信号情報には現在表示されている第一信号灯色とその継続時間である第一表示予定時間の組み合わせが含まれ、当該第一表示予定時間は第一信号灯色の継続予定時間の上限値と下限値に当たる第一最短時間と第一最長時間とで構成されていて、前記更新手段は、受信した信号情報に含まれている第一最短時間と第一最長時間の双方を第二周期毎に減じる処理であるカウントダウン処理を行うものである場合、前記停止手段は、前記交通信号制御機からの更新条件情報に応じて、前記第一最短時間のカウントダウン処理を停止することが望ましい(請求項2)。
【0017】
例えば青信号の表示予定時間に関する情報を車両に提供する場合、青信号が最低でもあとどれくらい継続するのか、は車両の安全運転にとっては重要な情報の1つと考えられる。そのため、最短時間についてはその正確性を高めるために、交通信号制御機からの指示によってカウントダウン処理を適宜停止できるようにすることでシステムの柔軟性が高まり、より正確性の高い信号情報を提供できるようになる。
特に、既述のように、地点感応制御の可変階梯を含む信号灯色の表示予定時間を提供する場合には、単純なカウントダウン処理を実行するだけでは、その最短時間の正確性が低下する可能性があるため、この発明によってより正確性の高い信号情報を提供できるようになる。
【0018】
この場合、前記カウントダウン処理をどのようにして停止するかを適切に判断できるように、前記第一信号灯色が複数の階梯によって構成されている場合に、前記信号情報作成手段に、前記第一信号灯色を構成する複数の階梯のうち現在実行中の実行階梯よりも後の各階梯における最短時間の合計値を最小保証時間として算出し、その最小保証時間を前記更新条件情報に含める機能を持たせることが望ましい(請求項3)。
路上通信装置側では、この最小保証時間を考慮して、カウントダウン処理をどの時点で停止等すれば良いかを的確に判断できるようになる。
【0019】
そして、この場合、路上通信装置側の前記停止手段は、前記最小保証時間とカウントダウン処理に従って減じられる第一最短時間とが一致した時点で、当該第一最短時間のカウントダウン処理を停止すれば良い(請求項4)。
こうすることで、表示されている信号灯色についてのカウントダウン処理によって、実際に表示されるはずの時間よりも最短時間が短くなってしまうことを防止できるようになる。
【0020】
なお、上記のように交通信号制御機から路上通信装置に対して最小保証時間を送信する方法でなくても、前記交通信号制御機に、前記路上通信装置宛に送信する信号情報に含める第一最小時間と算出された最小保証時間とが一致した時点で、カウントダウン処理を停止するように指示する指示情報を前記更新条件情報に含める指示手段を備えさせておく方法を採用することも可能である(請求項5)。
例えば、交通信号制御機が路上通信装置に対して送信する信号情報の最短時間に関連付けた指示フラグを格納しておき、交通信号制御機がそのフラグをONした時点で、路上通信装置が最短時間のカウントダウンを中止する、といった仕組みを採用することができる。
【0021】
また、第二の発明にかかる路上通信システムは、信号灯器の表示予定に関する情報を含む信号情報を作成する信号情報作成手段を備え所定の第一周期毎に前記信号情報を他の装置宛に送信する交通信号制御機と、前記信号情報を受信し、該受信時点から前記第一周期よりも短い所定の第二周期毎に前記信号情報を更新すると共に、更新した信号情報を車載装置に対して送信する路車間通信手段を有する路上通信装置とを含み、前記信号情報には現在表示されている第一信号灯色とその継続時間である第一表示予定時間の組み合わせが含まれ、前記信号情報作成手段は前記第一信号灯色が複数の階梯によって構成されている場合に、前記第一表示予定時間を複数のサブ表示予定時間の組み合わせとして作成可能なように構成されている(請求項6)。
【0022】
このサブ表示時間を活用する方法によれば、同一の信号灯色の継続時間を複数のフィールドに分割して信号情報に格納させることが可能になる。例えば、車両用青信号が10秒継続した後に、車両用青信号が20秒継続する、といった信号情報を作成することが可能になる。例えば、車両用青信号が2つの階梯によって構成されているのであれば、単純にその階梯の継続時間をそのまま格納するだけで信号情報を作成できるようになるために、システム設計が容易になるという利点がある。
また、この第二の発明は、第一の発明とは異なる観点で信号情報の正確性を高めることができるという利点もある。例えば、青信号が可変階梯と固定階梯の2つの階梯で構成されているような場合、それぞれの階梯の継続時間をサブ表示予定時間として2つ格納しておけば、既述のようにカウントダウン処理によって青信号の最短時間が固定階梯によって確保されている時間を下回る心配もなくなる。
【0023】
このように、前記サブ表示時間を、現在実行中の実行階梯の継続時間である第一サブ表示予定時間と、前記実行階梯以降に実行される階梯の継続時間の合計値である第二サブ表示予定時間とによって構成すると良い(請求項7)。
第一サブ表示予定時間のカウントダウン処理を実行したとしても、その後に実行される階梯についてはカウントダウン処理がなされないために、カウントダウン処理によって最短時間が真の最短時間を下回る心配がなくなる。
【0024】
なお、このようなサブ表示時間を活用する方法は、第一信号灯色に含まれる階梯のうち少なくとも1つが可変階梯である場合にのみ適用するようにしても良い(請求項8)。
サブ表示時間を活用した信号情報は、同一の信号灯色についての情報量が大きくなるため、通信容量を必要限度とできるように、信号情報の正確性を高める効果が高い可変階梯を含む場合にのみ適用すると有利である。
【0025】
なお、この第一の発明および第二の発明に用いられる交通信号制御機(請求項9)や、第一の発明に用いられる路上通信装置(請求項10)も大変有用である。
【発明の効果】
【0026】
以上のように、本発明の路上通信システムによれば、車両に対してより正確性の高い信号情報を提供することが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0027】
(第1の実施形態)
〔システムの全体構成〕
以下、本発明の実施の形態を、添付図面を参照しながら詳細に説明する。図1は本発明に係る交通信号制御機を含む路上通信システムの概要を示す模式図である。
路上通信システムは、交通信号機1(交通信号制御機1aと複数の信号灯器1b、1c、1d等で構成)、路上通信装置2(通信アンテナ部2aと通信制御装置2b等で構成)、車載装置3、中央装置4などを含む。中央装置4は、交通信号機1の制御に関する指示を行う機能や、車両に対して提供する交通情報の生成・送信等を行う機能を備えた装置であり、交通管制センター内に設置されている。なお、中央装置4は、交通管制センター内に設置されず、道路上に設置されていても良い。
中央装置4は、複数の交差点のそれぞれに設置された交通信号機と電話回線などの通信回線やルータ等の通信装置を介して接続されている。交通信号機1は、道路R1と道路R2の交差点Aに流入する複数の道路のそれぞれに設置された路上装置と電話回線などの通信回線を介して接続されている。
【0028】
交通信号機1は、複数の信号灯器を制御する機能を備えており、道路R1を走行する車両に対する通行権は車両用信号灯器1bによって、道路R2を走行する車両に対する通行権は車両用信号灯器1dによって、それぞれ表示する。なお、この例では横断歩道Hは道路R2にのみ設けられており、この横断歩道Hを利用する歩行者に対しては歩行者用信号灯器1cが通行権を表示している。
交通信号制御機1aは、中央装置4から交通規制情報を含む交通情報や信号灯器の制御に関する指示である信号制御指令を受信する機能を備えており、指示に応じて信号灯器1b等の各信号灯器の点灯、消灯及び点滅を制御する。また、交通信号制御機1aは、後述する処理により、表示する信号灯色及びその継続時間等を含む信号情報を作成し、受信した交通情報とともに当該交通信号制御機1aに接続されている複数の路上通信装置2に送信することができる。
【0029】
図2は交通信号制御機1aの構成を示すブロック図である。制御部101は、1又は複数のマイクロコンピュータから構成されている。制御部101には、内部バスを介して灯器駆動部102、通信部103、記憶部104が接続されており、制御部101は、これらのハードウエア各部の動作を制御する。また、制御部101は、後述する信号情報作成処理により信号情報を作成する。
【0030】
灯器駆動部102は、半導体リレー(不図示)を備え、制御部101から入力された信号灯器出力指令に基づいて、複数の信号灯器1bの青色灯、黄色灯、赤色灯それぞれに対応して各色の信号灯に供給される交流電圧(AC100V)又は直流電圧をオン/オフする。
通信部103は、中央装置4との間の通信を行うための中央通信部1031を備えており、中央装置4から交通情報、信号制御指令を受信等することができる。また、通信部103は、所定の周期(例えば、100msecなど)で受信した交通情報、作成した信号情報を路上通信装置2へ送信する端末通信部1032を備えている。
記憶部104は、受信した交通情報及び信号制御指令、作成した信号情報、各階梯と各現示との関係を表す定数などの各種定数の情報などを記憶している。
【0031】
路上通信装置2は、光ビーコン、電波ビーコン、DSRC(Dedicated Short Range Communication : 専用狭域通信)やWiMAX(Worldwide interoperability for microwave access)等の通信方式で通信可能な無線通信装置等であり、車両10に搭載された車載装置3との間で各種情報を無線通信する機能を備えている。路上通信装置2は、車載装置3と各種情報の通信を行うための通信アンテナ部2aと、通信アンテナ部2aを制御する通信制御装置2bとを含んでいる。
図3は路上通信装置2の通信制御装置2bの構成を示すブロック図である。制御部201は、1又は複数のマイクロコンピュータから構成されている。制御部201には、内部バスを介して信号通信部203等が接続されており、制御部201は、これらのハードウエア各部の動作を制御する。
道路R1に設置された路上通信装置2の記憶部202には、当該路上通信装置2から交差点Aまでの距離や勾配等に関する道路形状情報や交差点Aを含む地域の情報等が予め記憶されている。なお、これらの情報は、予め記憶されている構成に限定されず、中央装置4等から取得して記憶する構成であっても良い。信号通信部203は、交通信号機1から交通情報及び信号情報を受信し、路車間通信部204がこれらの情報を、通信アンテナ部2aを介して車載装置3に送信する機能を備えている。
【0032】
中央装置4は、所定の周期で交通情報、信号制御指令を複数の交通信号機に送信する。図4は信号制御指令のフォーマットを示す図である。図4において、スプリット1は現示1のスプリットを、スプリット6は現示6のスプリットを示している。なお、本フォーマットの詳細については、社団法人新交通管理システム協会(以下、UTMS協会)から発行されている規格書に記載されている。
【0033】
車両10には、車載装置3が搭載されており、路上通信装置2との間で各種情報を無線通信する。車載装置3を搭載した車両10は、路上通信装置2の通信領域Q(図1の斜線部分)を通過する際に、路上通信装置2との間で無線通信を行い、交通情報、信号情報及び道路形状情報を取得する。
【0034】
〔車両10の動作の概要〕
車両10は、車載装置3により交通情報、信号情報及び道路形状情報を取得すると、これらに基づいて次のような安全運転支援制御処理を行う。すなわち、車両10は、交差点Aを青で安全に通過できるか否かを判断し、通過できると判断した場合には、現在の速度を保持して走行し、通過できないと判断した場合には、交差点A手前の停止線で安全に停止できるように減速する。その際、交通情報に道路R1に関する交通規制情報が含まれている場合には、その交通規制も考慮して速度制御を行う。例えば、道路R1について40km/hの速度規制があれば、車両10は40km/hを超えないように速度制御を行う。
【0035】
なお、車両10に搭載される車載装置3は、図10のような構成である。GPS処理部301は、GPS衛星からのGPS信号を受信し、GPS信号に含まれる時刻情報、GPS衛星の軌道、測位補正情報に基づいて、車両10の位置(緯度、経度及び高度)を計測する。方位センサ302は、光ファイバジャイロなどで構成されており、方位及び角速度を計測する。車速取得部303は、車速センサ1001が車輪の角速度を検出することにより計測した車両10の速度のデータを取得する。
【0036】
通信部304は、路上装置2から交通情報、信号情報及び距離情報を受信する。この信号情報には、進行方向の信号灯器の表示時間の予定に関する情報が含まれている。また、通信部304は、受信した交通情報、距離情報、処理部308が信号情報に基づいて算出した結果情報等を走行制御部1005に出力する。
【0037】
記憶部305は、道路地図データ、通信部304が受信した各種情報、処理部308が算出した結果情報等を記憶する。表示部306は、処理部308が探索した目的地までの誘導経路を道路地図データに重畳して描画した画像データをモニター1002に表示する。音声出力部307は、処理部308が作成した上記の誘導経路に沿った経路案内の音声データをスピーカー1003から出力する。
【0038】
処理部308は、1又は複数のマイクロコンピュータにより構成されており、GPS処理部301が計測した位置、方位センサ302が計測した方位及び角速度、車速取得部303が取得した速度の各データに基づいてマップマッチング処理を行い、記憶部305に記憶している道路地図データ上における車両の位置を求める。また、処理部308は、道路地図データ上の車両の位置から目的地までの誘導経路を探索するとともに、その誘導経路に沿った経路案内の音声データを作成する。また、処理部308は、通信部304が受信した信号情報や停止線までの道のりに関する情報を後述する走行制御部1005が処理しやすい形式に変換等する演算を行い、走行制御のための基礎的な情報を算出する。
【0039】
走行制御部1005は、1又は複数のマイクロコンピュータにより構成されており、通信部304から取得した交通情報、距離情報、処理部308の算出結果情報、車速センサ1001から取得した車両10の速度データに基づいて、安全運転支援制御処理を行う。すなわち、交差点Aを青で安全に通過できるか否かを判断し、通過できると判断した場合には、現在の速度を保持するように駆動部(エンジン)1006を制御する。通過できないと判断した場合には、制動部(ブレーキ)1007を制御し、交差点A手前の停止線Pで安全に停止できるように速度を減速し、停止線Pで停止させる。また、交通情報に道路Rに関する交通規制情報が含まれている場合には、その交通規制も考慮して駆動部1006及び制動部1007を制御する。
【0040】
〔信号情報作成手順〕
次に、交通信号制御機1aの信号情報作成処理の手順について説明する。交通信号制御機1aは、1サイクルの開始前の時点で、記憶部104に記憶された信号制御指令に含まれるスプリット1〜6の基準値、+変動値及び−変動値、サイクル長、各階梯と各現示との関係を表す定数などに基づいて当該1サイクルの信号制御プランを作成し、この信号制御プランに基づいて交差点Aに流入する各道路における各信号灯色の点灯時間を算出する。
【0041】
図5は、交通信号制御機1aがある1サイクルについて算出した信号制御プランの一例を示す図である。交通信号制御機1aの1サイクルは図5のように8つの階梯から構成されている。
1PGは道路R1側の車両用信号灯器1bと歩行者用信号灯器1cの双方が青信号の状態を指し、1PFは道路R1側の車両用信号灯器1bが青信号で歩行者用信号灯器1cが青点滅信号の状態を指し、1PRは道路R1側の車両用信号灯器1bが青信号で歩行者用信号灯器1cが赤信号の状態を指す。
【0042】
ここで、この8つの階梯のうち、1PGと1PRの継続時間は他の階梯とは異なり予め確定しておらず、ある範囲を持つ時間として算出されているが、これは、これらの階梯が可変階梯であることを示している。従って、この1PGと1PRは、車両感知器(図示せず)等からの情報に基づいて、この範囲のどこかで打ち切られることになる。
【0043】
この信号制御プランに基づいて1サイクルの信号制御を開始しようとする直後に作成されて出力される信号情報の一例を図6に示す。信号情報は、図6(a)にあるように、ヘッダ部、データ部、及びフッタ部によって構成される。(b)は情報内容の詳細を示す一例である。
ヘッダ部には、信号情報のサイズや、交通信号制御機1aが車両に対して情報提供する対象となる灯色数(3)が格納されており、後続の領域に各灯色の表示予定秒数が、前記灯色数分格納されている。そして、フッタ部には図示しないがCRCやSUM値等が格納される。
【0044】
データ部には、ヘッダ部に格納された前記灯色数分の灯色の表示予定秒数が格納される。この例では、まず現在道路R1に対して表示している車両用信号灯器の信号灯色は青信号である旨の情報(コード「01」)が格納されており、その表示予定秒数の最短時間として40秒(16進数で「28」)、最長時間として70秒(16進数で「46」)が格納されている。
なお、この次に格納されている最小保証時間の意義については後述するが、この最小保証時間は、現在実行中の階梯(1PG)以降の階梯で、車両用信号灯器として同一の表示を行うもの(車両用青信号)の最短時間の合計値を格納する。
ここでは、この条件に合致する1PFと1PRの最短時間の合計値として10秒(16進数で「0A」)が格納されている。
【0045】
そして、車両用青信号の次に表示するのは車両用黄信号(コード「02」)で、その表示予定秒数の最短時間と最長時間は共に5秒(16進数で「05」)である。なお、このように、最短時間と最長時間が一致している信号灯色の表示予定秒数は確定している。また、車両用黄信号の次に表示するのは車両用赤信号(コード「03」)で、その表示予定秒数は55秒(16進数で「37」)であることを示している。なお、表示予定秒数は、100msや10ms単位で表現しても良く、フォーマット自体もこのような形式には限られない。
【0046】
この実施の形態では、交通信号制御機1aと通信制御装置2bとの間の通信頻度を低減するために、信号情報を概ね10秒に1回程度の頻度で通信制御装置2bに対して送信するが、実行している階梯が進んだ時点や信号情報の表示予定秒数が不連続に変化する時点等においてはその時点で即座に信号情報を送出する。
【0047】
〔カウントダウン処理とその停止処理〕
信号情報を受信した通信制御装置2bは1秒に1回の割合でカウントダウン処理を実行する。
例えば、図6(b)の信号情報を受信した通信制御装置2bはカウントダウン処理を実行していき、例えば3秒経過後には、図6(c)のように、灯色(1)の表示予定秒数の最短時間を37秒(16進数で「25」)に、最長予定秒数を67秒(16進数で「43」)に、それぞれ更新して、通信領域Qに対して送信する。
そして、カウントダウン処理中に新たに交通信号制御機1aから信号情報を受信したら、自身の保持する信号情報を当該最新の信号情報に上書きし、その最新の信号情報をカウントダウン処理していく。
【0048】
ここで、このまま車両用信号灯器1bが青信号の表示を継続していき、感応幅に入る直前のタイミングで図7(a)のような信号情報が通信制御装置2bに送られたとする。このときの交通信号制御機1aでの制御の実行状態は、1PGを開始してから27秒が経過しており、1PGの継続秒数は、最短時間が3秒で最長時間が23秒である。従って、車両用青信号の継続時間は、最短時間が13秒(16進数で「0D」)で最長時間が43秒(16進数で「2B」)である。
【0049】
この信号情報を受信した時点から、通信制御装置2bは1秒毎にカウントダウン処理を実行していく。そして3秒経過後には、最短時間が10秒で最長時間が40秒となる。
ここで、信号情報に格納されている灯色(1)の最小保証時間が10秒であり、灯色(1)の最短時間と一致したから、この時点で、通信制御装置2bはこの最短時間に関するカウントダウン処理を停止する。
この最短時間に関するカウントダウン処理停止後さらに5秒経過した後の状態を図7(b)に示す。カウントダウン処理を停止したため、灯色(1)の最短時間は10秒(16進数で「0A」)のままであり、最長時間のみが5秒減じられて38秒(16進数で「26」)となっている。
【0050】
ここで、交通信号制御機1aが信号情報に前記最小保証時間を含めておき、通信制御装置2bのカウントダウン処理を停止する意義は、以下のようなことである。
現在実行中の階梯1PGの後ろには車両用青信号を表示する階梯である1PFと1PRの2つの階梯が存在しているので、1PGの感応幅の中で1PGが継続し続ける限り、これら2つの階梯によって「最低でも10秒間は車両用青信号が表示される(10秒の車両用青信号が保証される)」という状況が継続することになる。
【0051】
ところが、信号情報を受信する路上通信装置2側では、このような信号制御の詳細を把握できないために、交通信号制御機1a側から何の指示もなければ、そのままカウントダウン処理を進めて、灯色(1)の最短時間を10秒未満にしてしまい、車両側に提供される信号情報の正確性が低下することになる。
したがって、このように最小保証時間を格納して路上通信装置2側に知らせることで、カウントダウン処理が実際に保証される青信号の時間を下回ることのないように(車両用青信号の最短時間のカウントダウン処理を最小保証時間で停止させるように)させ、信号情報の正確性を高めることができるようになるのである。
【0052】
この時点で、交通信号制御機1aは1PGの感応幅の範囲内を実行中であるから、1PGをいつでも打ち切ることができる。そこで、交通信号制御機1aが1PGを打ち切って階梯が1PFに進んだとすると、この階梯が進んだ時点で、交通信号制御機1aは最新の信号情報を通信制御装置2bに対して送信する。送信される信号情報は図8に示す通りの内容である。
階梯が1PFに進んだとしても、車両用信号灯器は青信号のままであるから、信号灯色そのものの情報には変化がない。そして、この車両用青信号の最短時間は、1PFと1PRの最短時間の合計値である10秒(16進数で「0A」)となり、最長時間は、1PFと1PRの最長時間の合計値である20秒(16進数で「14」)となる。
そして、この時点で送られる最小保証時間は、現在実行中の階梯である1PFよりも後ろの1PRの最短時間である5秒(16進数で「05」)となる。
【0053】
そして、この信号情報を受信した通信制御装置2bは、その時点から1秒毎にカウントダウン処理を実行する。
この場合、さきほど停止していた最短時間のカウントダウン処理は再開することができる。というのも、受信した信号情報に格納される灯色(1)の最短時間(10秒)が、灯色(1)の最少保証時間(5秒)よりも長いためである。
【0054】
この後、通信制御装置2bは灯色(1)の最短時間と最長時間の双方をカウントダウン処理していき、最短時間が5秒で最長時間が15秒となった時点で、交通信号制御機1aの実行中の階梯が1PFから1PRに進むため、再度この時点で、交通信号制御機1aから通信制御装置2bに対して図8(b)の信号情報が送信される。
この信号情報では、最小保証時間は0秒となっている。車両用信号灯器が1PRと同じ青信号となる階梯は1PRの後ろには存在しないためである。
そして、この信号情報を受信した通信制御装置2bは灯色(1)の最短時間と最長時間の双方をカウントダウン処理していき、最短時間が0秒で最長時間が10秒となった時点で、再び灯色(1)の最短時間のカウントダウン処理を停止する。最短時間が最小保証時間と同じ0秒となったためである。なお、この時点で、交通信号制御機1aは1PRの感応幅に入るので、10秒の間であればいつでもこの1PRを終了させ、次の階梯1Yに進むことができる状態となる。
【0055】
なお、ここでは、カウントダウン処理を停止するための一例として、交通信号制御機1aから通信制御装置2bに対して現在表示している信号灯色の最小保証時間を送信する方法を示したが、最小保証時間をこれ以上カウントダウンすべきでないと判断されるタイミングで、交通信号制御機1aから通信制御装置2bに対してカウントダウン処理を停止する指示を送信するようにしても良い。
その指示は、例えば信号情報内に新たな領域を設けてそこにフラグ情報を格納しておき、そのフラグがONされた時点でカウントダウン処理の停止を促すという方法で与えても良いし、信号情報とは別のデータを作成して送信する方法でも良い。
【0056】
また、ここでは最短時間のカウントダウン処理のみを停止する方法を示したが、用途に応じて、最長時間のカウントダウン処理のみを停止しても良いし、双方のカウントダウン処理を停止しても良い。
例えば、路上通信システムから車載装置3側に提供する信号情報がそれほど正確でなくてもよく、おおよその目安の時間さえ分かれば十分という場合には、路上通信装置2における更新処理をする必要がない。例えば、道路が渋滞し、発進と停止を繰り返していて、路上通信装置2を受信してから停止線まで到達するまでに長い時間を要することが確実な交通状況等であれば、わざわざ細かい周期で更新処理をするまでもない。このような場合には更新処理を停止する代わりに、路上通信装置2の制御部201を別の処理に使用することが可能となる。
【0057】
また、路上通信装置2の制御部201の故障等により更新処理に何らかの異常が発生していると考えられる場合には、更新処理を行わずに受信した信号情報をそのまま車載装置3に送信させた方が良い場合もあるため、こういったケースではカウントダウン処理を停止させる方が望ましい。
【0058】
(第2の実施形態)
前記第1の実施形態では、カウントダウンを停止させることによって信号情報の正確性を高める方法について説明したが、この第2の実施形態では、同一の信号灯色(例えば道路R1に対する車両用青信号)について階梯が複数にわかれている場合に、階梯毎にフィールドをわけて表示予定時間を信号情報に格納する方法について説明する。
【0059】
図9はこの第2の実施形態を採用した場合の信号情報の一例を示す図である。
(a)および(b)は、いずれも図5の信号制御プランが決定された直後に送出される信号情報の内容を示している。
図9(a)では、現在表示中の信号灯色について、階梯毎に最短時間と最長時間を格納している。図にある通り、灯色(1)乃至灯色(3)の信号灯色はいずれも青信号(コード「01」)であり、それぞれ階梯1PG乃至1PRに対応している。つまり、灯色(1)は、1PGを示しており、最短時間30秒(16進数で「1E」)で最長時間が50秒(16進数で「32」)である。同様に灯色(2)は1PFを示しており最短時間と最長時間が共に5秒(16進数で「05」)であり、灯色(3)は1PRを示しており、最短時間5秒(16進数で「05」)で最長時間が15秒(16進数で「0F」)である。
【0060】
このような信号情報を受信した路上通信装置2では、第1の実施形態と同様にカウントダウン処理を実行し、灯色(1)の最短時間と最長時間を減じていく。そして、最短時間が0秒で最長時間が20秒になった時点で、以降は、交通信号制御機1aから階梯が進んだ旨の通知を受けない限り、最短時間を0秒にしたままで最長時間のみをカウントダウン処理する。
このようにすることで、同じ信号灯色(車両用青信号)は、灯色(2)と灯色(3)の2つの後続フィールドに格納された分だけ残余の時間が存在するという正確な情報を車載装置3側に通知することが可能となる。
【0061】
なお、図9(b)のように、現在実行中の階梯である1PGを灯色(1)に割当て、残りの1PFと1PRの2つの階梯を1つにまとめて灯色(2)として表現するようにしても良い。この場合、最短時間は10秒(16進数で「0A」)で最長時間は20秒(16進数で「14」)となる。
また、図示はしないが、現在表示している車両用青信号以降に表示する信号灯色(例えば車両用赤信号)についても、この時点で、複数の階梯分の情報に分割して送信するようにしても良い。
【0062】
なお、この第2の実施形態によると、階梯数が多いほど信号情報のサイズがその分大きくなってしまうため、通信データ量が大きくなってしまうという事情があるため、複数の階梯で構成される信号灯色であっても、全てが固定階梯であれば分割しないで送信する方が望ましい。
例えば、1PG乃至1PRが全て固定階梯であれば、階梯毎の情報として分割して送信しなくても良い。また、1PGのみが可変階梯で1PFと1PRが固定階梯なのであれば、1PGの最短時間と最長時間のみを別のフィールドに独立して格納し、残りは統合しておく図9(b)のような形式の方が望ましい。
【0063】
以上の2つの実施形態において、例えば、交通信号制御機1aと路上通信装置2との間の通信は無線通信でも有線通信でもよく、情報のやりとりを中継する装置が1つ又は複数この2つの装置の間に設けられている構成でも良い。
【0064】
上述の実施の形態においては、交通信号制御機1aと路上通信装置2は別々の筐体に収められている構成であったが、これに限定されるものではなく、交通信号制御機1aと路上通信装置2が1つの筐体に収められている構成であっても良い。この場合、交通信号制御機1aと路上通信装置2の間の情報のやり取りは、有線、無線、内部バス等のいずれを用いたものでも良い。
【0065】
今回開示された実施の形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は上記した説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【図面の簡単な説明】
【0066】
【図1】本発明に係る路上通信システムの概要を示す模式図である。
【図2】交通信号制御機1aの構成の一例を示すブロック図である。
【図3】路上通信装置2の通信制御装置2bの構成の一例を示すブロック図である。
【図4】信号制御指令のフォーマットを示す図である。
【図5】信号制御プランの一例を示す図である。
【図6】(a)は信号情報のフォーマットの概要の一例示す図であり、(b)および(c)はデータ内容の詳細の一例を示す図である。
【図7】(a)および(b)は信号情報のデータ内容の詳細の一例を示す図である。
【図8】(a)および(b)は信号情報のデータ内容の詳細の一例を示す図である。
【図9】(a)および(b)は信号情報のデータ内容の詳細の一例を示す図である。
【図10】車両に搭載されている車載装置及びその他装置の構成を示すブロック図である。
【符号の説明】
【0067】
1 交通信号機
1a 交通信号制御機
1b、1c、1d 信号灯器
101 制御部
102 灯器駆動部
103 通信部
1031 中央通信部
1032 端末通信部
104 記憶部
2 路上装置
2a 通信アンテナ部
2b 通信制御装置
201 制御部
202 記憶部
203 信号通信部
204 路車間通信部
3 車載装置
301 GPS処理部
302 方位センサ
303 車速取得部
304 通信部
305 記憶部
306 表示部
307 音声出力部
308 処理部
4 中央装置
5 ルータ
10 車両
1001 車速センサ
1002 モニター
1003 スピーカー
1005 走行制御部
1006 駆動部
1007 制動部
A 交差点
Q 通信領域
R1、R2 道路
【技術分野】
【0001】
本発明は、路上装置と車載装置とが連携してドライバの安全運転を支援するシステムに関し、特に、このシステムに不可欠な信号灯色及びその継続時間などの信号情報を提供する路上通信システム及びこの路上通信システムに用いられる交通信号制御機並びに路上通信装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、交差点内及びその近傍での交通事故を防止する目的で、交差点に設けられている交通信号機の信号灯色及び継続時間などの信号情報を車両に対して提供し、車載装置がその信号情報に基づいて前記交差点の手前で停止すべきか通過可能かを判断し、車両の速度制御を行う、又はドライバに対して減速を促したり注意を喚起したりする安全運転支援システムが提唱されている(例えば特許文献1参照)。
【0003】
特許文献1に記載されている装置では、例えば、青信号を表示している信号灯器が赤信号になるまでの時間情報を、道路に設けた送信装置から車両へ送信し、車載装置側でこの時間情報とその際の走行速度とに基づいて演算を行い、交差点を安全に通過できる時間がないと判断した場合、つまり、交差点手前で停止すべきと判断した場合に、自動的にブレーキがかかり車両を減速、停止させる制御を行う。
【0004】
このような安全運転支援システムを実現するための路上通信システムは、通常、信号灯器の表示時間の予定に関する信号情報を作成する交通信号制御機と、当該信号情報を交通信号制御機から受信して車両側に提供する路上通信装置とを含むものとして構成されるが、この交通信号制御機と路上通信装置との間の通信の頻度を軽減すること等を目的として、交通信号制御機から路上通信装置に対して信号情報を送信する第一周期(例えば10秒)よりも短い第二周期(例えば1秒)で路上通信装置が信号情報を更新して、車両側に提供する、という方法が提案されている(例えば特許文献2参照)。
このような方法によれば、交通信号制御機と路上通信装置との間の通信の頻度を少なくした場合であっても、信号情報をきめ細かい情報(1秒単位の情報)として車両側に提供することが可能になるという利点がある。
【特許文献1】特許第2806801号公報
【特許文献2】特開2008−152680号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
前記路上通信システムの実現において、交通信号制御機が右折感応制御やジレンマ感応制御等の地点感応制御を実行する場合には、当該地点感応制御の対象となる信号灯色の継続時間が不確定なものとなり、確定した情報として車両に提供することができないという問題がある。
そこで、その継続時間を所定の幅を持つ範囲の情報として提供する方法がある。例えば、地点感応制御によって表示する青信号の継続時間が30秒以上50秒以下と決められている場合には、青信号の継続時間の最短時間を30秒、最長時間を50秒として信号情報に格納する方法を採用することができる。
単に、継続時間が不明である、という情報を提供する場合に比べて、車両側にとって有益な情報となる利点がある。
【0006】
ところで、一般的な交通信号制御では、信号の1サイクル(信号表示が一巡する期間)を複数の階梯に分割し、1サイクルの開始時点で各階梯において表示する信号灯色とその継続時間を決定する、という方法が用いられている。
例えば、2本の道路が交差する交差点においては、ある道路の車両用信号灯器と歩行者用信号灯器の両方が青信号である状態を「PG」として第1階梯と定義し、当該道路の車両用信号灯器が青信号のままで、歩行者用信号灯器が青点滅信号である状態を「PF」として第2階梯と定義し、当該道路の車両用信号灯器が青信号のままで、歩行者用信号灯器が赤信号である状態を「PR」として第3階梯と定義する、といった方法が用いられる。そして、交通状況等に応じて、それぞれの階梯に何秒割り当てるかが決定される。
【0007】
この交差点で地点感応制御を行う場合には、どの階梯で実行するかを予め交通信号制御機に設定しておき(例えば第1階梯でバス感応制御、第3階梯でジレンマ感応制御を実行等)、設定された階梯が実行され始めたら、車両感知器等の情報を参照して適切なタイミングで当該階梯を打ち切る処理を行う。この階梯を打ち切る処理は、通常、予め定められた時間範囲内(地点感応制御を実行する時間範囲のことを「感応幅」という。)において実行されることが一般的である。
この場合、地点感応を実行する階梯を可変階梯、地点感応等が実行されず実行時間が予め確定している階梯を固定階梯という。
例えば、可変階梯の実行時間が30秒から50秒の範囲(感応幅)と定められているのであれば、可変階梯を実行し始めてから30秒経過後は、打ち切りの条件が整った時点でいつでもこの可変階梯を打ち切ることができる(例えば、40秒経過時点等)。そして、打ち切りの条件が整わない場合であっても、50秒が経過した時点で強制的にこの可変階梯を終了させる。
【0008】
例えば、右折感応制御を実行する可変階梯(例えば、右折青矢印灯を表示する階梯)であれば、右折専用車線に設置された車両感知器で右折車線を監視し、右折車両の車列が途切れたと判断した時点から数秒経過後(例えば3秒後)、という条件に合致した時点でこの可変階梯が打ち切られる。
そして、感応幅の上限値まで経過しても右折車両の車列が途切れなかった場合には、まだ右折車両が存在していたとしても、その上限値でこの可変階梯を打ち切る、という動作を実行する。
【0009】
ところで、信号情報で提供される対象となる信号灯色が複数の階梯で構成されており(例えば車両用信号灯器の青信号がPG、PF、PRの3つの階梯で構成される場合等)、それらの階梯のうちの1つが可変階梯であった場合、この信号灯色の継続時間は全体としては不確定となるため、前述のように、信号情報に格納される各信号灯色の継続時間を、範囲の情報(例えば、車両用青信号は30秒以上50秒以下であるという情報)として提供することが好ましい。
例えば、PGが可変階梯でその範囲が20秒から40秒であり、PFとPRが固定階梯で共に5秒である場合、PGの実行を開始する時点の信号情報には、「車両用信号灯器の青信号の継続時間の最短時間は30秒で最長時間は50秒」という情報を格納して提供することが望ましい。
【0010】
この場合、特許文献2に開示された方法を用いて、交通信号制御機が10秒に1回ずつ信号情報を路上通信装置に送信し、当該路上通信装置が受信した信号情報を1秒毎に更新するとすれば、路上通信装置は、信号情報を受信してから1秒後には、車両用信号灯器の青信号の継続時間の最短時間は29秒で最長時間は49秒と、情報内容を更新して車両側に提供することができる。
すなわち、路上通信装置が受信した最新の信号情報に格納される情報のうち現在表示されている信号灯色の最短時間と最長時間を、受信時点を起点とした時間経過と共に減じていくことができる(このように路上通信装置側で信号情報の内容を更新する処理を「カウントダウン処理」という。)。
なお、可変階梯が打ち切られる時点の前後では、車両側に提供すべき信号情報の内容が不連続に変化するため、前回信号情報を送信してから10秒未満の時点であっても、即座に新しい内容の信号情報を送信することが好ましい。この可変階梯が打ち切られた時点で交通信号制御機から路上通信装置に対して送信される信号情報には、車両用信号灯器の青信号の継続時間の最短時間と最長時間は共に10秒(PFとPRが共に5秒であるため)である旨の情報が格納される。
【0011】
本出願人は、このようなカウントダウン処理を実行する場合に、以下のような課題があることを見出した。
前述の例で、例えば、可変階梯PGの感応幅に入った時点で路上通信装置が受け取る信号情報に含まれる車両用青信号の最短時間は10秒で最長時間は30秒となるが(可変階梯PGはいつ打ち切られるか分からないため、その最短時間は0秒であり最長時間は20秒である。また、PGの後で実行される2つの固定階梯(PFとPR)の最短時間と最長時間は共に5秒である。従って、PG乃至PRで構成される車両用信号灯器の青信号は10秒から30秒の範囲となる。)、この情報をそのままカウントダウン処理すると信号情報の正確性が低下する。
【0012】
例えば、この情報を受信した時点から3秒後には、通常であればカウントダウン処理により、最短時間は7秒で最長時間は27秒という内容に更新されるが、可変階梯PGを実行中であれば、車両用青信号が表示される時間は最低でも10秒(実行前であるPFとPRの2つの階梯の合計時間)存在するためである。
つまり、可変階梯を含む信号灯色の継続時間をカウントダウン処理する場合には、単純に時間経過と共に最短時間と最長時間を減じていく方法に対して、新たな工夫を加えることが望ましい、という新たな課題を見出したのである。
【0013】
本発明は、このような事情に鑑みてなされたものであり、車両に対してより正確性の高い信号情報を提供することができる路上通信システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0014】
第一の発明にかかる路上通信システムは、信号灯器の表示予定に関する情報を含む信号情報を作成する信号情報作成手段を備え所定の第一周期毎に前記信号情報を他の装置宛に送信する交通信号制御機と、前記信号情報を受信し該受信時点から前記第一周期よりも短い所定の第二周期毎に前記信号情報を更新すると共に更新した信号情報を車載装置に対して送信する路車間通信手段を有する路上通信装置とを含み、前記更新手段は、前記交通信号制御機からの更新条件情報に応じて、受信した信号情報の更新を停止する停止手段を備えている(請求項1)。
【0015】
本発明によれば、路上通信装置が無条件で信号情報を更新するのではなく、信号情報の作成元である交通信号制御機が当該更新に関する更新条件情報を作成して前記路上通信装置宛に送信し、路上通信装置による更新処理を停止できるようになるので、車載装置に対して信号情報を提供する場合のシステムの柔軟性が高まる。
特に、既述の通り、カウントダウン処理によって信号情報の正確性が低下する可能性のある場面でこの機能を適用すれば大変有用である。
なお、ここにいう更新条件情報とは、更新処理を開始・停止等するように指示する指示情報でも良いし、更新処理を許可する時間帯等に関する情報でも良いし、後述する最小保証時間のような情報であっても良い。
【0016】
このシステムにおいて、前記信号情報には現在表示されている第一信号灯色とその継続時間である第一表示予定時間の組み合わせが含まれ、当該第一表示予定時間は第一信号灯色の継続予定時間の上限値と下限値に当たる第一最短時間と第一最長時間とで構成されていて、前記更新手段は、受信した信号情報に含まれている第一最短時間と第一最長時間の双方を第二周期毎に減じる処理であるカウントダウン処理を行うものである場合、前記停止手段は、前記交通信号制御機からの更新条件情報に応じて、前記第一最短時間のカウントダウン処理を停止することが望ましい(請求項2)。
【0017】
例えば青信号の表示予定時間に関する情報を車両に提供する場合、青信号が最低でもあとどれくらい継続するのか、は車両の安全運転にとっては重要な情報の1つと考えられる。そのため、最短時間についてはその正確性を高めるために、交通信号制御機からの指示によってカウントダウン処理を適宜停止できるようにすることでシステムの柔軟性が高まり、より正確性の高い信号情報を提供できるようになる。
特に、既述のように、地点感応制御の可変階梯を含む信号灯色の表示予定時間を提供する場合には、単純なカウントダウン処理を実行するだけでは、その最短時間の正確性が低下する可能性があるため、この発明によってより正確性の高い信号情報を提供できるようになる。
【0018】
この場合、前記カウントダウン処理をどのようにして停止するかを適切に判断できるように、前記第一信号灯色が複数の階梯によって構成されている場合に、前記信号情報作成手段に、前記第一信号灯色を構成する複数の階梯のうち現在実行中の実行階梯よりも後の各階梯における最短時間の合計値を最小保証時間として算出し、その最小保証時間を前記更新条件情報に含める機能を持たせることが望ましい(請求項3)。
路上通信装置側では、この最小保証時間を考慮して、カウントダウン処理をどの時点で停止等すれば良いかを的確に判断できるようになる。
【0019】
そして、この場合、路上通信装置側の前記停止手段は、前記最小保証時間とカウントダウン処理に従って減じられる第一最短時間とが一致した時点で、当該第一最短時間のカウントダウン処理を停止すれば良い(請求項4)。
こうすることで、表示されている信号灯色についてのカウントダウン処理によって、実際に表示されるはずの時間よりも最短時間が短くなってしまうことを防止できるようになる。
【0020】
なお、上記のように交通信号制御機から路上通信装置に対して最小保証時間を送信する方法でなくても、前記交通信号制御機に、前記路上通信装置宛に送信する信号情報に含める第一最小時間と算出された最小保証時間とが一致した時点で、カウントダウン処理を停止するように指示する指示情報を前記更新条件情報に含める指示手段を備えさせておく方法を採用することも可能である(請求項5)。
例えば、交通信号制御機が路上通信装置に対して送信する信号情報の最短時間に関連付けた指示フラグを格納しておき、交通信号制御機がそのフラグをONした時点で、路上通信装置が最短時間のカウントダウンを中止する、といった仕組みを採用することができる。
【0021】
また、第二の発明にかかる路上通信システムは、信号灯器の表示予定に関する情報を含む信号情報を作成する信号情報作成手段を備え所定の第一周期毎に前記信号情報を他の装置宛に送信する交通信号制御機と、前記信号情報を受信し、該受信時点から前記第一周期よりも短い所定の第二周期毎に前記信号情報を更新すると共に、更新した信号情報を車載装置に対して送信する路車間通信手段を有する路上通信装置とを含み、前記信号情報には現在表示されている第一信号灯色とその継続時間である第一表示予定時間の組み合わせが含まれ、前記信号情報作成手段は前記第一信号灯色が複数の階梯によって構成されている場合に、前記第一表示予定時間を複数のサブ表示予定時間の組み合わせとして作成可能なように構成されている(請求項6)。
【0022】
このサブ表示時間を活用する方法によれば、同一の信号灯色の継続時間を複数のフィールドに分割して信号情報に格納させることが可能になる。例えば、車両用青信号が10秒継続した後に、車両用青信号が20秒継続する、といった信号情報を作成することが可能になる。例えば、車両用青信号が2つの階梯によって構成されているのであれば、単純にその階梯の継続時間をそのまま格納するだけで信号情報を作成できるようになるために、システム設計が容易になるという利点がある。
また、この第二の発明は、第一の発明とは異なる観点で信号情報の正確性を高めることができるという利点もある。例えば、青信号が可変階梯と固定階梯の2つの階梯で構成されているような場合、それぞれの階梯の継続時間をサブ表示予定時間として2つ格納しておけば、既述のようにカウントダウン処理によって青信号の最短時間が固定階梯によって確保されている時間を下回る心配もなくなる。
【0023】
このように、前記サブ表示時間を、現在実行中の実行階梯の継続時間である第一サブ表示予定時間と、前記実行階梯以降に実行される階梯の継続時間の合計値である第二サブ表示予定時間とによって構成すると良い(請求項7)。
第一サブ表示予定時間のカウントダウン処理を実行したとしても、その後に実行される階梯についてはカウントダウン処理がなされないために、カウントダウン処理によって最短時間が真の最短時間を下回る心配がなくなる。
【0024】
なお、このようなサブ表示時間を活用する方法は、第一信号灯色に含まれる階梯のうち少なくとも1つが可変階梯である場合にのみ適用するようにしても良い(請求項8)。
サブ表示時間を活用した信号情報は、同一の信号灯色についての情報量が大きくなるため、通信容量を必要限度とできるように、信号情報の正確性を高める効果が高い可変階梯を含む場合にのみ適用すると有利である。
【0025】
なお、この第一の発明および第二の発明に用いられる交通信号制御機(請求項9)や、第一の発明に用いられる路上通信装置(請求項10)も大変有用である。
【発明の効果】
【0026】
以上のように、本発明の路上通信システムによれば、車両に対してより正確性の高い信号情報を提供することが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0027】
(第1の実施形態)
〔システムの全体構成〕
以下、本発明の実施の形態を、添付図面を参照しながら詳細に説明する。図1は本発明に係る交通信号制御機を含む路上通信システムの概要を示す模式図である。
路上通信システムは、交通信号機1(交通信号制御機1aと複数の信号灯器1b、1c、1d等で構成)、路上通信装置2(通信アンテナ部2aと通信制御装置2b等で構成)、車載装置3、中央装置4などを含む。中央装置4は、交通信号機1の制御に関する指示を行う機能や、車両に対して提供する交通情報の生成・送信等を行う機能を備えた装置であり、交通管制センター内に設置されている。なお、中央装置4は、交通管制センター内に設置されず、道路上に設置されていても良い。
中央装置4は、複数の交差点のそれぞれに設置された交通信号機と電話回線などの通信回線やルータ等の通信装置を介して接続されている。交通信号機1は、道路R1と道路R2の交差点Aに流入する複数の道路のそれぞれに設置された路上装置と電話回線などの通信回線を介して接続されている。
【0028】
交通信号機1は、複数の信号灯器を制御する機能を備えており、道路R1を走行する車両に対する通行権は車両用信号灯器1bによって、道路R2を走行する車両に対する通行権は車両用信号灯器1dによって、それぞれ表示する。なお、この例では横断歩道Hは道路R2にのみ設けられており、この横断歩道Hを利用する歩行者に対しては歩行者用信号灯器1cが通行権を表示している。
交通信号制御機1aは、中央装置4から交通規制情報を含む交通情報や信号灯器の制御に関する指示である信号制御指令を受信する機能を備えており、指示に応じて信号灯器1b等の各信号灯器の点灯、消灯及び点滅を制御する。また、交通信号制御機1aは、後述する処理により、表示する信号灯色及びその継続時間等を含む信号情報を作成し、受信した交通情報とともに当該交通信号制御機1aに接続されている複数の路上通信装置2に送信することができる。
【0029】
図2は交通信号制御機1aの構成を示すブロック図である。制御部101は、1又は複数のマイクロコンピュータから構成されている。制御部101には、内部バスを介して灯器駆動部102、通信部103、記憶部104が接続されており、制御部101は、これらのハードウエア各部の動作を制御する。また、制御部101は、後述する信号情報作成処理により信号情報を作成する。
【0030】
灯器駆動部102は、半導体リレー(不図示)を備え、制御部101から入力された信号灯器出力指令に基づいて、複数の信号灯器1bの青色灯、黄色灯、赤色灯それぞれに対応して各色の信号灯に供給される交流電圧(AC100V)又は直流電圧をオン/オフする。
通信部103は、中央装置4との間の通信を行うための中央通信部1031を備えており、中央装置4から交通情報、信号制御指令を受信等することができる。また、通信部103は、所定の周期(例えば、100msecなど)で受信した交通情報、作成した信号情報を路上通信装置2へ送信する端末通信部1032を備えている。
記憶部104は、受信した交通情報及び信号制御指令、作成した信号情報、各階梯と各現示との関係を表す定数などの各種定数の情報などを記憶している。
【0031】
路上通信装置2は、光ビーコン、電波ビーコン、DSRC(Dedicated Short Range Communication : 専用狭域通信)やWiMAX(Worldwide interoperability for microwave access)等の通信方式で通信可能な無線通信装置等であり、車両10に搭載された車載装置3との間で各種情報を無線通信する機能を備えている。路上通信装置2は、車載装置3と各種情報の通信を行うための通信アンテナ部2aと、通信アンテナ部2aを制御する通信制御装置2bとを含んでいる。
図3は路上通信装置2の通信制御装置2bの構成を示すブロック図である。制御部201は、1又は複数のマイクロコンピュータから構成されている。制御部201には、内部バスを介して信号通信部203等が接続されており、制御部201は、これらのハードウエア各部の動作を制御する。
道路R1に設置された路上通信装置2の記憶部202には、当該路上通信装置2から交差点Aまでの距離や勾配等に関する道路形状情報や交差点Aを含む地域の情報等が予め記憶されている。なお、これらの情報は、予め記憶されている構成に限定されず、中央装置4等から取得して記憶する構成であっても良い。信号通信部203は、交通信号機1から交通情報及び信号情報を受信し、路車間通信部204がこれらの情報を、通信アンテナ部2aを介して車載装置3に送信する機能を備えている。
【0032】
中央装置4は、所定の周期で交通情報、信号制御指令を複数の交通信号機に送信する。図4は信号制御指令のフォーマットを示す図である。図4において、スプリット1は現示1のスプリットを、スプリット6は現示6のスプリットを示している。なお、本フォーマットの詳細については、社団法人新交通管理システム協会(以下、UTMS協会)から発行されている規格書に記載されている。
【0033】
車両10には、車載装置3が搭載されており、路上通信装置2との間で各種情報を無線通信する。車載装置3を搭載した車両10は、路上通信装置2の通信領域Q(図1の斜線部分)を通過する際に、路上通信装置2との間で無線通信を行い、交通情報、信号情報及び道路形状情報を取得する。
【0034】
〔車両10の動作の概要〕
車両10は、車載装置3により交通情報、信号情報及び道路形状情報を取得すると、これらに基づいて次のような安全運転支援制御処理を行う。すなわち、車両10は、交差点Aを青で安全に通過できるか否かを判断し、通過できると判断した場合には、現在の速度を保持して走行し、通過できないと判断した場合には、交差点A手前の停止線で安全に停止できるように減速する。その際、交通情報に道路R1に関する交通規制情報が含まれている場合には、その交通規制も考慮して速度制御を行う。例えば、道路R1について40km/hの速度規制があれば、車両10は40km/hを超えないように速度制御を行う。
【0035】
なお、車両10に搭載される車載装置3は、図10のような構成である。GPS処理部301は、GPS衛星からのGPS信号を受信し、GPS信号に含まれる時刻情報、GPS衛星の軌道、測位補正情報に基づいて、車両10の位置(緯度、経度及び高度)を計測する。方位センサ302は、光ファイバジャイロなどで構成されており、方位及び角速度を計測する。車速取得部303は、車速センサ1001が車輪の角速度を検出することにより計測した車両10の速度のデータを取得する。
【0036】
通信部304は、路上装置2から交通情報、信号情報及び距離情報を受信する。この信号情報には、進行方向の信号灯器の表示時間の予定に関する情報が含まれている。また、通信部304は、受信した交通情報、距離情報、処理部308が信号情報に基づいて算出した結果情報等を走行制御部1005に出力する。
【0037】
記憶部305は、道路地図データ、通信部304が受信した各種情報、処理部308が算出した結果情報等を記憶する。表示部306は、処理部308が探索した目的地までの誘導経路を道路地図データに重畳して描画した画像データをモニター1002に表示する。音声出力部307は、処理部308が作成した上記の誘導経路に沿った経路案内の音声データをスピーカー1003から出力する。
【0038】
処理部308は、1又は複数のマイクロコンピュータにより構成されており、GPS処理部301が計測した位置、方位センサ302が計測した方位及び角速度、車速取得部303が取得した速度の各データに基づいてマップマッチング処理を行い、記憶部305に記憶している道路地図データ上における車両の位置を求める。また、処理部308は、道路地図データ上の車両の位置から目的地までの誘導経路を探索するとともに、その誘導経路に沿った経路案内の音声データを作成する。また、処理部308は、通信部304が受信した信号情報や停止線までの道のりに関する情報を後述する走行制御部1005が処理しやすい形式に変換等する演算を行い、走行制御のための基礎的な情報を算出する。
【0039】
走行制御部1005は、1又は複数のマイクロコンピュータにより構成されており、通信部304から取得した交通情報、距離情報、処理部308の算出結果情報、車速センサ1001から取得した車両10の速度データに基づいて、安全運転支援制御処理を行う。すなわち、交差点Aを青で安全に通過できるか否かを判断し、通過できると判断した場合には、現在の速度を保持するように駆動部(エンジン)1006を制御する。通過できないと判断した場合には、制動部(ブレーキ)1007を制御し、交差点A手前の停止線Pで安全に停止できるように速度を減速し、停止線Pで停止させる。また、交通情報に道路Rに関する交通規制情報が含まれている場合には、その交通規制も考慮して駆動部1006及び制動部1007を制御する。
【0040】
〔信号情報作成手順〕
次に、交通信号制御機1aの信号情報作成処理の手順について説明する。交通信号制御機1aは、1サイクルの開始前の時点で、記憶部104に記憶された信号制御指令に含まれるスプリット1〜6の基準値、+変動値及び−変動値、サイクル長、各階梯と各現示との関係を表す定数などに基づいて当該1サイクルの信号制御プランを作成し、この信号制御プランに基づいて交差点Aに流入する各道路における各信号灯色の点灯時間を算出する。
【0041】
図5は、交通信号制御機1aがある1サイクルについて算出した信号制御プランの一例を示す図である。交通信号制御機1aの1サイクルは図5のように8つの階梯から構成されている。
1PGは道路R1側の車両用信号灯器1bと歩行者用信号灯器1cの双方が青信号の状態を指し、1PFは道路R1側の車両用信号灯器1bが青信号で歩行者用信号灯器1cが青点滅信号の状態を指し、1PRは道路R1側の車両用信号灯器1bが青信号で歩行者用信号灯器1cが赤信号の状態を指す。
【0042】
ここで、この8つの階梯のうち、1PGと1PRの継続時間は他の階梯とは異なり予め確定しておらず、ある範囲を持つ時間として算出されているが、これは、これらの階梯が可変階梯であることを示している。従って、この1PGと1PRは、車両感知器(図示せず)等からの情報に基づいて、この範囲のどこかで打ち切られることになる。
【0043】
この信号制御プランに基づいて1サイクルの信号制御を開始しようとする直後に作成されて出力される信号情報の一例を図6に示す。信号情報は、図6(a)にあるように、ヘッダ部、データ部、及びフッタ部によって構成される。(b)は情報内容の詳細を示す一例である。
ヘッダ部には、信号情報のサイズや、交通信号制御機1aが車両に対して情報提供する対象となる灯色数(3)が格納されており、後続の領域に各灯色の表示予定秒数が、前記灯色数分格納されている。そして、フッタ部には図示しないがCRCやSUM値等が格納される。
【0044】
データ部には、ヘッダ部に格納された前記灯色数分の灯色の表示予定秒数が格納される。この例では、まず現在道路R1に対して表示している車両用信号灯器の信号灯色は青信号である旨の情報(コード「01」)が格納されており、その表示予定秒数の最短時間として40秒(16進数で「28」)、最長時間として70秒(16進数で「46」)が格納されている。
なお、この次に格納されている最小保証時間の意義については後述するが、この最小保証時間は、現在実行中の階梯(1PG)以降の階梯で、車両用信号灯器として同一の表示を行うもの(車両用青信号)の最短時間の合計値を格納する。
ここでは、この条件に合致する1PFと1PRの最短時間の合計値として10秒(16進数で「0A」)が格納されている。
【0045】
そして、車両用青信号の次に表示するのは車両用黄信号(コード「02」)で、その表示予定秒数の最短時間と最長時間は共に5秒(16進数で「05」)である。なお、このように、最短時間と最長時間が一致している信号灯色の表示予定秒数は確定している。また、車両用黄信号の次に表示するのは車両用赤信号(コード「03」)で、その表示予定秒数は55秒(16進数で「37」)であることを示している。なお、表示予定秒数は、100msや10ms単位で表現しても良く、フォーマット自体もこのような形式には限られない。
【0046】
この実施の形態では、交通信号制御機1aと通信制御装置2bとの間の通信頻度を低減するために、信号情報を概ね10秒に1回程度の頻度で通信制御装置2bに対して送信するが、実行している階梯が進んだ時点や信号情報の表示予定秒数が不連続に変化する時点等においてはその時点で即座に信号情報を送出する。
【0047】
〔カウントダウン処理とその停止処理〕
信号情報を受信した通信制御装置2bは1秒に1回の割合でカウントダウン処理を実行する。
例えば、図6(b)の信号情報を受信した通信制御装置2bはカウントダウン処理を実行していき、例えば3秒経過後には、図6(c)のように、灯色(1)の表示予定秒数の最短時間を37秒(16進数で「25」)に、最長予定秒数を67秒(16進数で「43」)に、それぞれ更新して、通信領域Qに対して送信する。
そして、カウントダウン処理中に新たに交通信号制御機1aから信号情報を受信したら、自身の保持する信号情報を当該最新の信号情報に上書きし、その最新の信号情報をカウントダウン処理していく。
【0048】
ここで、このまま車両用信号灯器1bが青信号の表示を継続していき、感応幅に入る直前のタイミングで図7(a)のような信号情報が通信制御装置2bに送られたとする。このときの交通信号制御機1aでの制御の実行状態は、1PGを開始してから27秒が経過しており、1PGの継続秒数は、最短時間が3秒で最長時間が23秒である。従って、車両用青信号の継続時間は、最短時間が13秒(16進数で「0D」)で最長時間が43秒(16進数で「2B」)である。
【0049】
この信号情報を受信した時点から、通信制御装置2bは1秒毎にカウントダウン処理を実行していく。そして3秒経過後には、最短時間が10秒で最長時間が40秒となる。
ここで、信号情報に格納されている灯色(1)の最小保証時間が10秒であり、灯色(1)の最短時間と一致したから、この時点で、通信制御装置2bはこの最短時間に関するカウントダウン処理を停止する。
この最短時間に関するカウントダウン処理停止後さらに5秒経過した後の状態を図7(b)に示す。カウントダウン処理を停止したため、灯色(1)の最短時間は10秒(16進数で「0A」)のままであり、最長時間のみが5秒減じられて38秒(16進数で「26」)となっている。
【0050】
ここで、交通信号制御機1aが信号情報に前記最小保証時間を含めておき、通信制御装置2bのカウントダウン処理を停止する意義は、以下のようなことである。
現在実行中の階梯1PGの後ろには車両用青信号を表示する階梯である1PFと1PRの2つの階梯が存在しているので、1PGの感応幅の中で1PGが継続し続ける限り、これら2つの階梯によって「最低でも10秒間は車両用青信号が表示される(10秒の車両用青信号が保証される)」という状況が継続することになる。
【0051】
ところが、信号情報を受信する路上通信装置2側では、このような信号制御の詳細を把握できないために、交通信号制御機1a側から何の指示もなければ、そのままカウントダウン処理を進めて、灯色(1)の最短時間を10秒未満にしてしまい、車両側に提供される信号情報の正確性が低下することになる。
したがって、このように最小保証時間を格納して路上通信装置2側に知らせることで、カウントダウン処理が実際に保証される青信号の時間を下回ることのないように(車両用青信号の最短時間のカウントダウン処理を最小保証時間で停止させるように)させ、信号情報の正確性を高めることができるようになるのである。
【0052】
この時点で、交通信号制御機1aは1PGの感応幅の範囲内を実行中であるから、1PGをいつでも打ち切ることができる。そこで、交通信号制御機1aが1PGを打ち切って階梯が1PFに進んだとすると、この階梯が進んだ時点で、交通信号制御機1aは最新の信号情報を通信制御装置2bに対して送信する。送信される信号情報は図8に示す通りの内容である。
階梯が1PFに進んだとしても、車両用信号灯器は青信号のままであるから、信号灯色そのものの情報には変化がない。そして、この車両用青信号の最短時間は、1PFと1PRの最短時間の合計値である10秒(16進数で「0A」)となり、最長時間は、1PFと1PRの最長時間の合計値である20秒(16進数で「14」)となる。
そして、この時点で送られる最小保証時間は、現在実行中の階梯である1PFよりも後ろの1PRの最短時間である5秒(16進数で「05」)となる。
【0053】
そして、この信号情報を受信した通信制御装置2bは、その時点から1秒毎にカウントダウン処理を実行する。
この場合、さきほど停止していた最短時間のカウントダウン処理は再開することができる。というのも、受信した信号情報に格納される灯色(1)の最短時間(10秒)が、灯色(1)の最少保証時間(5秒)よりも長いためである。
【0054】
この後、通信制御装置2bは灯色(1)の最短時間と最長時間の双方をカウントダウン処理していき、最短時間が5秒で最長時間が15秒となった時点で、交通信号制御機1aの実行中の階梯が1PFから1PRに進むため、再度この時点で、交通信号制御機1aから通信制御装置2bに対して図8(b)の信号情報が送信される。
この信号情報では、最小保証時間は0秒となっている。車両用信号灯器が1PRと同じ青信号となる階梯は1PRの後ろには存在しないためである。
そして、この信号情報を受信した通信制御装置2bは灯色(1)の最短時間と最長時間の双方をカウントダウン処理していき、最短時間が0秒で最長時間が10秒となった時点で、再び灯色(1)の最短時間のカウントダウン処理を停止する。最短時間が最小保証時間と同じ0秒となったためである。なお、この時点で、交通信号制御機1aは1PRの感応幅に入るので、10秒の間であればいつでもこの1PRを終了させ、次の階梯1Yに進むことができる状態となる。
【0055】
なお、ここでは、カウントダウン処理を停止するための一例として、交通信号制御機1aから通信制御装置2bに対して現在表示している信号灯色の最小保証時間を送信する方法を示したが、最小保証時間をこれ以上カウントダウンすべきでないと判断されるタイミングで、交通信号制御機1aから通信制御装置2bに対してカウントダウン処理を停止する指示を送信するようにしても良い。
その指示は、例えば信号情報内に新たな領域を設けてそこにフラグ情報を格納しておき、そのフラグがONされた時点でカウントダウン処理の停止を促すという方法で与えても良いし、信号情報とは別のデータを作成して送信する方法でも良い。
【0056】
また、ここでは最短時間のカウントダウン処理のみを停止する方法を示したが、用途に応じて、最長時間のカウントダウン処理のみを停止しても良いし、双方のカウントダウン処理を停止しても良い。
例えば、路上通信システムから車載装置3側に提供する信号情報がそれほど正確でなくてもよく、おおよその目安の時間さえ分かれば十分という場合には、路上通信装置2における更新処理をする必要がない。例えば、道路が渋滞し、発進と停止を繰り返していて、路上通信装置2を受信してから停止線まで到達するまでに長い時間を要することが確実な交通状況等であれば、わざわざ細かい周期で更新処理をするまでもない。このような場合には更新処理を停止する代わりに、路上通信装置2の制御部201を別の処理に使用することが可能となる。
【0057】
また、路上通信装置2の制御部201の故障等により更新処理に何らかの異常が発生していると考えられる場合には、更新処理を行わずに受信した信号情報をそのまま車載装置3に送信させた方が良い場合もあるため、こういったケースではカウントダウン処理を停止させる方が望ましい。
【0058】
(第2の実施形態)
前記第1の実施形態では、カウントダウンを停止させることによって信号情報の正確性を高める方法について説明したが、この第2の実施形態では、同一の信号灯色(例えば道路R1に対する車両用青信号)について階梯が複数にわかれている場合に、階梯毎にフィールドをわけて表示予定時間を信号情報に格納する方法について説明する。
【0059】
図9はこの第2の実施形態を採用した場合の信号情報の一例を示す図である。
(a)および(b)は、いずれも図5の信号制御プランが決定された直後に送出される信号情報の内容を示している。
図9(a)では、現在表示中の信号灯色について、階梯毎に最短時間と最長時間を格納している。図にある通り、灯色(1)乃至灯色(3)の信号灯色はいずれも青信号(コード「01」)であり、それぞれ階梯1PG乃至1PRに対応している。つまり、灯色(1)は、1PGを示しており、最短時間30秒(16進数で「1E」)で最長時間が50秒(16進数で「32」)である。同様に灯色(2)は1PFを示しており最短時間と最長時間が共に5秒(16進数で「05」)であり、灯色(3)は1PRを示しており、最短時間5秒(16進数で「05」)で最長時間が15秒(16進数で「0F」)である。
【0060】
このような信号情報を受信した路上通信装置2では、第1の実施形態と同様にカウントダウン処理を実行し、灯色(1)の最短時間と最長時間を減じていく。そして、最短時間が0秒で最長時間が20秒になった時点で、以降は、交通信号制御機1aから階梯が進んだ旨の通知を受けない限り、最短時間を0秒にしたままで最長時間のみをカウントダウン処理する。
このようにすることで、同じ信号灯色(車両用青信号)は、灯色(2)と灯色(3)の2つの後続フィールドに格納された分だけ残余の時間が存在するという正確な情報を車載装置3側に通知することが可能となる。
【0061】
なお、図9(b)のように、現在実行中の階梯である1PGを灯色(1)に割当て、残りの1PFと1PRの2つの階梯を1つにまとめて灯色(2)として表現するようにしても良い。この場合、最短時間は10秒(16進数で「0A」)で最長時間は20秒(16進数で「14」)となる。
また、図示はしないが、現在表示している車両用青信号以降に表示する信号灯色(例えば車両用赤信号)についても、この時点で、複数の階梯分の情報に分割して送信するようにしても良い。
【0062】
なお、この第2の実施形態によると、階梯数が多いほど信号情報のサイズがその分大きくなってしまうため、通信データ量が大きくなってしまうという事情があるため、複数の階梯で構成される信号灯色であっても、全てが固定階梯であれば分割しないで送信する方が望ましい。
例えば、1PG乃至1PRが全て固定階梯であれば、階梯毎の情報として分割して送信しなくても良い。また、1PGのみが可変階梯で1PFと1PRが固定階梯なのであれば、1PGの最短時間と最長時間のみを別のフィールドに独立して格納し、残りは統合しておく図9(b)のような形式の方が望ましい。
【0063】
以上の2つの実施形態において、例えば、交通信号制御機1aと路上通信装置2との間の通信は無線通信でも有線通信でもよく、情報のやりとりを中継する装置が1つ又は複数この2つの装置の間に設けられている構成でも良い。
【0064】
上述の実施の形態においては、交通信号制御機1aと路上通信装置2は別々の筐体に収められている構成であったが、これに限定されるものではなく、交通信号制御機1aと路上通信装置2が1つの筐体に収められている構成であっても良い。この場合、交通信号制御機1aと路上通信装置2の間の情報のやり取りは、有線、無線、内部バス等のいずれを用いたものでも良い。
【0065】
今回開示された実施の形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は上記した説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【図面の簡単な説明】
【0066】
【図1】本発明に係る路上通信システムの概要を示す模式図である。
【図2】交通信号制御機1aの構成の一例を示すブロック図である。
【図3】路上通信装置2の通信制御装置2bの構成の一例を示すブロック図である。
【図4】信号制御指令のフォーマットを示す図である。
【図5】信号制御プランの一例を示す図である。
【図6】(a)は信号情報のフォーマットの概要の一例示す図であり、(b)および(c)はデータ内容の詳細の一例を示す図である。
【図7】(a)および(b)は信号情報のデータ内容の詳細の一例を示す図である。
【図8】(a)および(b)は信号情報のデータ内容の詳細の一例を示す図である。
【図9】(a)および(b)は信号情報のデータ内容の詳細の一例を示す図である。
【図10】車両に搭載されている車載装置及びその他装置の構成を示すブロック図である。
【符号の説明】
【0067】
1 交通信号機
1a 交通信号制御機
1b、1c、1d 信号灯器
101 制御部
102 灯器駆動部
103 通信部
1031 中央通信部
1032 端末通信部
104 記憶部
2 路上装置
2a 通信アンテナ部
2b 通信制御装置
201 制御部
202 記憶部
203 信号通信部
204 路車間通信部
3 車載装置
301 GPS処理部
302 方位センサ
303 車速取得部
304 通信部
305 記憶部
306 表示部
307 音声出力部
308 処理部
4 中央装置
5 ルータ
10 車両
1001 車速センサ
1002 モニター
1003 スピーカー
1005 走行制御部
1006 駆動部
1007 制動部
A 交差点
Q 通信領域
R1、R2 道路
【特許請求の範囲】
【請求項1】
信号灯器の表示予定に関する情報を含む信号情報を作成する信号情報作成手段を備え、所定の第一周期毎に前記信号情報を他の装置宛に送信する交通信号制御機と、
前記信号情報を受信し、該受信時点から前記第一周期よりも短い所定の第二周期毎に前記信号情報を更新すると共に、更新した信号情報を車載装置に対して送信する路車間通信手段を有する路上通信装置とを含む路上通信システムであって、
前記更新手段は、前記交通信号制御機からの更新条件情報に応じて、受信した信号情報の更新を停止する停止手段を備えていること
を特徴とする路上通信システム。
【請求項2】
前記信号情報には、現在表示されている第一信号灯色とその継続時間である第一表示予定時間の組み合わせが含まれ、
当該第一表示予定時間は、第一信号灯色の継続予定時間の上限値と下限値に当たる第一最短時間と第一最長時間とで構成されており、
前記更新手段は、
受信した信号情報に含まれている第一最短時間と第一最長時間の双方を第二周期毎に減じる処理であるカウントダウン処理を行うものであり、
前記停止手段は、
前記交通信号制御機からの更新条件情報に応じて、前記第一最短時間のカウントダウン処理を停止すること
を特徴とする請求項1に記載の路上通信システム。
【請求項3】
前記信号情報作成手段は、
前記第一信号灯色が複数の階梯によって構成されている場合に、
前記第一信号灯色を構成する複数の階梯のうち、現在実行中の実行階梯よりも後の各階梯における最短時間の合計値を最小保証時間として算出し、その最小保証時間を前記更新条件情報に含めること
を特徴とする請求項1又は2に記載の路上通信システム。
【請求項4】
前記停止手段は、
前記最小保証時間とカウントダウン処理に従って減じられる第一最短時間とが一致した時点で、当該第一最短時間のカウントダウン処理を停止すること
を特徴とする請求項3に記載の路上通信システム。
【請求項5】
前記信号情報作成手段は、
前記第一信号灯色が複数の階梯によって構成されている場合に、
前記第一信号灯色を構成する複数の階梯のうち、現在実行中の実行階梯よりも後の各階梯における最短時間の合計値を最小保証時間として算出するように構成されており、
前記交通信号制御機は、
前記路上通信装置宛に送信する信号情報に含める第一最小時間と算出された最小保証時間とが一致した時点で、カウントダウン処理を停止するように指示する指示情報を前記更新条件情報に含める指示手段を備えること
を特徴とする請求項2に記載の路上通信システム。
【請求項6】
信号灯器の表示予定に関する情報を含む信号情報を作成する信号情報作成手段を備え、所定の第一周期毎に前記信号情報を他の装置宛に送信する交通信号制御機と、
前記信号情報を受信し、該受信時点から前記第一周期よりも短い所定の第二周期毎に前記信号情報を更新すると共に、更新した信号情報を車載装置に対して送信する路車間通信手段を有する路上通信装置とを含む路上通信システムであって、
前記信号情報には、現在表示されている第一信号灯色とその継続時間である第一表示予定時間の組み合わせが含まれ、
前記信号情報作成手段は、
前記第一信号灯色が複数の階梯によって構成されている場合に、前記第一表示予定時間を複数のサブ表示予定時間の組み合わせとして作成可能なように構成されていること
を特徴とする路上通信システム。
【請求項7】
前記サブ表示時間は、
現在実行中の実行階梯の継続時間である第一サブ表示予定時間と、前記実行階梯以降に実行される階梯の継続時間の合計値である第二サブ表示予定時間とによって構成されること
を特徴とする請求項6に記載の路上通信システム。
【請求項8】
前記信号情報作成手段は、
第一信号灯色に含まれる階梯のうち少なくとも1つが予め継続時間が確定していない可変階梯である場合にのみ、前記第一表示予定時間を複数のサブ表示予定時間の組み合わせとして作成すること
を特徴とする請求項6又は7に記載の路上通信システム。
【請求項9】
請求項1乃至8のいずれか1つに記載の路上通信システムに用いられることを特徴とする交通信号制御機。
【請求項10】
請求項1乃至5のいずれか1つに記載の路上通信システムに用いられることを特徴とする路上通信装置。
【請求項1】
信号灯器の表示予定に関する情報を含む信号情報を作成する信号情報作成手段を備え、所定の第一周期毎に前記信号情報を他の装置宛に送信する交通信号制御機と、
前記信号情報を受信し、該受信時点から前記第一周期よりも短い所定の第二周期毎に前記信号情報を更新すると共に、更新した信号情報を車載装置に対して送信する路車間通信手段を有する路上通信装置とを含む路上通信システムであって、
前記更新手段は、前記交通信号制御機からの更新条件情報に応じて、受信した信号情報の更新を停止する停止手段を備えていること
を特徴とする路上通信システム。
【請求項2】
前記信号情報には、現在表示されている第一信号灯色とその継続時間である第一表示予定時間の組み合わせが含まれ、
当該第一表示予定時間は、第一信号灯色の継続予定時間の上限値と下限値に当たる第一最短時間と第一最長時間とで構成されており、
前記更新手段は、
受信した信号情報に含まれている第一最短時間と第一最長時間の双方を第二周期毎に減じる処理であるカウントダウン処理を行うものであり、
前記停止手段は、
前記交通信号制御機からの更新条件情報に応じて、前記第一最短時間のカウントダウン処理を停止すること
を特徴とする請求項1に記載の路上通信システム。
【請求項3】
前記信号情報作成手段は、
前記第一信号灯色が複数の階梯によって構成されている場合に、
前記第一信号灯色を構成する複数の階梯のうち、現在実行中の実行階梯よりも後の各階梯における最短時間の合計値を最小保証時間として算出し、その最小保証時間を前記更新条件情報に含めること
を特徴とする請求項1又は2に記載の路上通信システム。
【請求項4】
前記停止手段は、
前記最小保証時間とカウントダウン処理に従って減じられる第一最短時間とが一致した時点で、当該第一最短時間のカウントダウン処理を停止すること
を特徴とする請求項3に記載の路上通信システム。
【請求項5】
前記信号情報作成手段は、
前記第一信号灯色が複数の階梯によって構成されている場合に、
前記第一信号灯色を構成する複数の階梯のうち、現在実行中の実行階梯よりも後の各階梯における最短時間の合計値を最小保証時間として算出するように構成されており、
前記交通信号制御機は、
前記路上通信装置宛に送信する信号情報に含める第一最小時間と算出された最小保証時間とが一致した時点で、カウントダウン処理を停止するように指示する指示情報を前記更新条件情報に含める指示手段を備えること
を特徴とする請求項2に記載の路上通信システム。
【請求項6】
信号灯器の表示予定に関する情報を含む信号情報を作成する信号情報作成手段を備え、所定の第一周期毎に前記信号情報を他の装置宛に送信する交通信号制御機と、
前記信号情報を受信し、該受信時点から前記第一周期よりも短い所定の第二周期毎に前記信号情報を更新すると共に、更新した信号情報を車載装置に対して送信する路車間通信手段を有する路上通信装置とを含む路上通信システムであって、
前記信号情報には、現在表示されている第一信号灯色とその継続時間である第一表示予定時間の組み合わせが含まれ、
前記信号情報作成手段は、
前記第一信号灯色が複数の階梯によって構成されている場合に、前記第一表示予定時間を複数のサブ表示予定時間の組み合わせとして作成可能なように構成されていること
を特徴とする路上通信システム。
【請求項7】
前記サブ表示時間は、
現在実行中の実行階梯の継続時間である第一サブ表示予定時間と、前記実行階梯以降に実行される階梯の継続時間の合計値である第二サブ表示予定時間とによって構成されること
を特徴とする請求項6に記載の路上通信システム。
【請求項8】
前記信号情報作成手段は、
第一信号灯色に含まれる階梯のうち少なくとも1つが予め継続時間が確定していない可変階梯である場合にのみ、前記第一表示予定時間を複数のサブ表示予定時間の組み合わせとして作成すること
を特徴とする請求項6又は7に記載の路上通信システム。
【請求項9】
請求項1乃至8のいずれか1つに記載の路上通信システムに用いられることを特徴とする交通信号制御機。
【請求項10】
請求項1乃至5のいずれか1つに記載の路上通信システムに用いられることを特徴とする路上通信装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【公開番号】特開2010−146133(P2010−146133A)
【公開日】平成22年7月1日(2010.7.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−320356(P2008−320356)
【出願日】平成20年12月17日(2008.12.17)
【出願人】(000002130)住友電気工業株式会社 (12,747)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成22年7月1日(2010.7.1)
【国際特許分類】
【出願日】平成20年12月17日(2008.12.17)
【出願人】(000002130)住友電気工業株式会社 (12,747)
【Fターム(参考)】
[ Back to top ]