説明

路面情報収集システム及びそれに用いる車載装置とサーバ

【課題】限られた監視地域の路面情報を、一般仕様車を使用して効率良く少ない通信費用で収集する。
【解決手段】自車位置検出手段と通信手段と路面情報を収集するための検出装置群と制御手段とを備える1乃至複数の車載装置を、通信ネットワークを介して情報センターのサーバに接続する。サーバは、車載装置に対して路面情報の収集項目と条件及び収集地域を送信して情報収集を指示する。車載装置の制御手段は送信された情報を受信して記憶し、自車が指示された収集地域に入ったならば指示された情報収集を検出装置群を使用して行ない、集めた情報をサーバに送信する。サーバは送られた情報を受信して路面状況の分析に供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、一般車両に搭載された各種センサを利用して監視区域内の路面情報を収集する技術に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、車両の搭乗者に対しては、例えば道路交通情報システム(VICS)などにより渋滞情報、所要時間情報、交通障害情報、路面情報等の道路交通情報が提供される。これら情報提供に必要な情報は、路側に設置されたセンサ等を用いて収集されるのが一般的であるが、種々の情報(渋滞、事故、排気ガス濃度等)を取得するセンサを備えた車(プローブカー)を走行させて収集する方式も採用されている。
【0003】
また、このような一般車両に対する情報提供目的の他に、道路管理会社は補修必要個所の発見、除雪作業等のメンテナンスを行なうための路面情報の収集も行なっている。この路面情報の収集は、固定設置されたセンサの他、路面状況を計測する専用の計測器を搭載したメンテナンス車両の巡回により実施されている。
しかし、このような特殊仕様車を走行、巡回させて情報収集するシステムでは、広い道路範囲に渡り、頻繁な情報収集を行なうことは難しい。この問題を解決するために、カーナビゲーション装置を搭載しているトラック、タクシー等の一般仕様車に委託して、搭載したセンサにより検出した信号を位置情報と共に情報センターに送信してもらい収集するシステムが考えられている。この方法では、委託する車両の数を増せば、頻繁な情報収集が可能となる。しかし、委託車両の数を増すと情報センターとの通信量が多くなりすぎ、通信料金が多額になるという問題が生ずる。
【0004】
特に、道路のメンテナンスやユーザ車両に対する路面危険情報の提供等を目的とする情報収集の場合には、監視を必要とする区域は過去の経緯、経験からおおよそ推測できるものである。それにも関わらず、監視をそれほど必要としない地域の情報も大量に送信されたのでは通信量が多くなりすぎる上に、それら情報を受け取る情報センターの情報処理に必要以上の能力が要求されるという問題を生ずる。
【特許文献1】特開2002−342874号公報
【特許文献2】特開平11−025130号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、このような背景からなされたもので、その課題は、道路のメンテナンスや車両に対する路面情報の提供等を目的として、限られた監視区域の路面情報を特殊仕様車を使用することなく少ない通信費用で効率良く収集する路面情報収集システム、及びそのための車載装置と情報センター用サーバを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記課題を達成するための請求項1に記載の発明は、自車位置検出手段と通信ネットワークに接続するための通信手段と路面情報を収集するための検出装置群と制御手段とを備える1乃至複数の車載装置と、前記通信ネットワークに接続したサーバとからなる路面情報収集システムであって、前記制御手段は、前記サーバより路面情報の収集項目と条件及び収集地域を指示する情報を受信して記憶しておき、自車が前記収集地域に入ったならば前記収集項目と条件に合致した情報収集を前記検出装置群を使用して行なって収集情報を前記サーバに送信し、前記サーバは、前記1乃至複数の車載装置に対して前記路面情報の収集項目と条件及び収集地域を送信して情報収集を指示し、該指示に対して送られてきた収集情報を受信して蓄積することを特徴とする路面情報収集システムである。
【0007】
一般車両が備える検出装置群を使用することを前提にこのようなシステムを構成すれば、特殊仕様のメンテナンス車両に頼ることなく路面の凸凹の程度、路面凍結の程度等の路面状況を判断するための情報収集を行なうことができる。また、多数の一般車の協力を得て実施できることから情報収集頻度が高まる効果がある。更に、情報収集地域を限定して収集を行なうために無駄な情報収集を省くことができ、効率的な情報収集を行なうことができる。
【0008】
また、請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の路面情報収集システムにおいて、前記収集項目には、アンチスキッド制御装置の作動の有無、アンチスキッド制御装置が作動時の前後一定時間内の一定時間間隔でサンプリングする各車輪速度と操舵角、車両の旋回時の角速度、上下方向加速度、前後方向加速度、各センサの所定値以上のピーク値の内の何れか一つ以上の項目を含むことを特徴とする。
【0009】
アンチスキッド制御装置やヨーレート、加速度センサは、最近では多くの一般車両に備えられている。そして、それらの検出信号を分析することで路面の凸凹の程度、滑り安さの程度を把握することができる。従って、一般車両のこのような装置やセンサを利用して路面状況を把握する本システムの構成によれば、監視地域の路面状況を把握できると共にその情報収集頻度を高めることができる効果も奏する。
【0010】
また、請求項3に記載の発明は、請求項1又は2に記載の路面情報収集システムにおいて、前記サーバは、前記路面情報の収集に協力してくれる各車両の前記車載装置が備える前記検出装置群のリストと通信アドレスとを記憶した協力車両データベースを備え、その中から前記路面情報の収集項目と条件に合致した情報収集を行なうことの可能な車両を選択し、選択した車両の前記車載装置に対して前記情報収集を指示することを特徴とする。
車両が備える検出装置の種類や仕様は車両によって異なる。従って、それらをデータベースに記憶しておき、目的とする情報収集に適した検出装置を備えた車両を選択して依頼するようにすれば情報収集の効率を高めることができる。
【0011】
また、請求項4に記載の発明は、請求項1乃至3の何れかに記載の路面情報収集システムにおいて、前記収集情報には、収集を行なった時の自車位置とその時刻の情報を含むことを特徴とする。
収集情報にその時の車両位置と時刻を含めることにより、異常のある路面位置や異常発生の時刻を把握することが可能となる。
【0012】
また、請求項5に記載の発明は、請求項1乃至4の何れかに記載の路面情報収集システムにおいて、前記制御手段は、前記収集情報を収集の都度、又は定期的に、又は収集量が所定量を超えた時、又は前記収集地域を外れた時の何れかの時に送信することを特徴とする。
収集した情報はその都度、送信してもよいが、情報を蓄積しておいて定期的、又は収集量が所定量を超えた時、又は収集地域を外れた時にまとめて送信するようにすれば、通信頻度が少なくなって通信費用を少なくすることができる。
【0013】
また、請求項6に記載の発明は、自車位置検出手段と、通信ネットワークに接続するための通信手段と、路面情報を収集するための検出装置群と、制御手段とを備える車載装置であって、前記制御手段は、路面情報の収集を行なうサーバより路面情報の収集項目と条件及び収集地域を指示する情報を受信して記憶しておき、自車が該収集地域に入ったならば前記収集項目と条件に合致した情報収集を前記検出装置群を使用して行なって収集情報を前記サーバに送信することを特徴とする車載装置である。
【0014】
一般車両が備える検出装置によっても、路面状況把握のために役立つ情報を収集することが可能である。従って、上記のような車載装置を使用し、その検出装置群で検出した情報をサーバに提供すれば、特殊仕様の車両を使用することなく路面状況把握に役立つ情報をサーバに集めることが可能となる。
【0015】
また、請求項7に記載の発明は、請求項6に記載の車載装置において、前記収集項目には、アンチスキッド制御装置の作動の有無、アンチスキッド制御装置が作動時の前後一定時間内の一定時間間隔でサンプリングする各車輪速度と操舵角、車両の旋回時の角速度、上下方向加速度、前後方向加速度、各センサの所定値以上のピーク値の内の何れか一つ以上の項目を含むことを特徴とする。
【0016】
アンチスキッド制御装置やヨーレート、加速度センサは、最近では多くの一般車両に備えられている。そして、これらの装置やセンサで検出した情報は、それを分析することで路面状況の把握に役立てることができる。従って、一般車両が備えるこのような装置やセンサにより測定した情報をサーバに提供すれば、特殊仕様の車両を使用することなく路面状況把握に役立つ情報をサーバに集めることが可能となる。
【0017】
また、請求項8に記載の発明は、請求項6又は7に記載の車載装置において、前記収集情報には、前記路面情報の収集項目と条件に合致した収集を行なった時の自車位置とその時刻の情報を含むことを特徴とする。
収集情報にその時の車両位置と時刻を含めることにより、異常のある路面位置や異常発生の時刻を把握することが可能となる。
【0018】
また、請求項9に記載の発明は、請求項6乃至8の何れかに記載の車載装置において、前記制御手段は、前記収集情報を収集の都度、又は定期的に、又は収集量が所定量を超えた時、又は前記収集地域を外れた時の何れかの時に送信することを特徴とする。
収集した情報はその都度、送信してもよいが、情報を蓄積しておいて定期的、又は収集量が所定量を超えた時、又は収集地域を外れた時にまとめて送信するようにすれば、通信頻度が少なくなって通信費用を少なくすることができる。
【0019】
また、請求項10に記載の発明は、路面情報収集に使用するサーバであって、1乃至複数の車載装置に対して路面情報の収集項目と条件及び収集地域を送信して収集を指示し、該指示に対して送られてきた収集情報を受信して蓄積することを特徴とするサーバである。
このように収集項目と条件及び収集地域を限定して情報収集を指示すれば、無駄な情報収集を避けることができ、また通信費用を少なくすることができる。
【0020】
また、請求項11に記載の発明は、請求項10に記載のサーバであって、前記収集項目には、アンチスキッド制御装置の作動の有無、アンチスキッド制御装置が作動時の前後一定時間内の一定時間間隔でサンプリングする各車輪速度と操舵角、車両の旋回時の角速度、上下方向加速度、前後方向加速度、各センサの所定値以上のピーク値の内の何れか一つ以上の項目を含むことを特徴とする。
【0021】
アンチスキッド制御装置やヨーレート、加速度センサは、最近では多くの一般車両に備えられている。そして、これらの装置やセンサで検出した情報は、それを分析することで路面状況の把握に役立てることができる。従って、一般車両が備えるこのような装置やセンサによる情報収集を指示すれば、特殊仕様の車両を使用することなく路面情報把握に役立つ情報を集めることが可能となる。
【0022】
また、請求項12に記載の発明は、請求項10又は11に記載のサーバであって、前記サーバは、前記路面情報の収集に協力してくれる各車両が備える前記検出装置群のリストと通信アドレスとを記憶した協力車両データベースを備え、その中から前記路面情報の収集項目と条件に合致した情報収集を行なうことの可能な車両を選択し、選択した車両の前記車載装置に対して前記情報収集を指示することを特徴とする。
【0023】
車両が備える検出装置の種類や仕様は車両によって異なる。従って、それらをデータベースに記憶しておき、目的とする情報収集に適した検出装置を備えた車両を選択して依頼するようにすれば、情報収集の効率を高めることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0024】
以下、本発明の一実施の形態について図面を参照して詳しく説明する。図1は本発明に係る路面情報収集システムの全体構成を示したものである。路面情報収集システム1は、車載装置としてのカーナビゲーション装置2と情報センター用サーバ3とを備えて構成される。カーナビゲーション装置は図中には1式しか描かれていないが通常、複数存在する。
【0025】
情報センター用サーバ3とカーナビゲーション装置2とは通信ネットワーク4を介して通信可能に接続されている。通信ネットワーク4として、本実施形態では携帯電話網31とこれにつながるインターネット32とを利用している。
カーナビゲーション装置2は、制御回路5、GPS受信機6、検出装置群7、通信装置8、操作スイッチ群9、表示装置10、磁気ディスク装置(以下、HDDという。)11を備えて構成される。
【0026】
制御回路5は、カーナビゲーション装置2の動作全般を制御する機能を有するものでマイクロコンピュータを主体に構成されており、内部には図示しないCPU、RAM、ROM、I/Oインターフェース、それらを接続するバス、電源装置などを備える。
GPS受信機6は複数のGPS用人工衛星からの信号を受信して制御回路5に伝達するもので、その情報に基づいて制御回路5内で必要な演算処理が行なわれ車両の現在位置が算出される。通信装置8は、情報センター用サーバ3と無線交信するためのもので、アンテナ12、携帯電話網の基地局33、携帯電話網31、これとつながるインターネット32を介して交信を行なう。
【0027】
操作スイッチ群9は、制御回路5への各種情報入力のための手段で、例えばカラー液晶ディスプレイ上に形成されたタッチスイッチやリモコンスイッチ等で構成される。表示装置10は、道路地図、車両の現在位置、案内経路等を表示するためのもので、例えばカラー液晶ディスプレイで構成される。
HDD11内には、本カーナビゲーション装置2を動作させるための各種プログラムが予め格納されている。このプログラムには、後述する本発明の機能を発揮させるためのプログラムの他に一般的なカーナビゲーション機能を実行するためのプログラム、例えばGPS受信機6からの信号に基づいて現在位置を算出する機能、算出した現在位置を地図上に位置付けるマップマッチング処理機能、目的地や経由地の指定を受けて現在位置から目的地までの経路を探索する経路探索機能、その経路探索結果に応じた案内ルートを地図画面上に表示して案内する経路案内機能、VICS(Vehicle Information & Communication System)からの道路交通情報を受信して運転者に知らせる機能などを実行するためのプログラムが含まれる。
【0028】
検出装置群7は、車両の動作状態を検出する検出装置(センサ)を集めたものである。後述するように、検出装置群7で検出された信号は情報センター用サーバ3に送られ、路面状況の分析と把握に利用される。このうちヨーレートセンサ7aは、車体の旋回角速度を検出するセンサである。加速度センサ7bは、車両の上下/前後方向の加速度を検出するものである。車輪速センサ7cは、各車輪の回転速度を検出するもので、その車輪速度は積分されて走行距離の検出にも使用される。操舵角センサ7dは、ステアリングの操舵角を検出するセンサである。
【0029】
また、アンチスキッド制御装置(ABS装置)7eは、ブレーキペダルの踏み込みによる制動時に角車輪における制動力を十分に発揮させるため、車輪のスリップ率が所定の範囲となるように各車輪のホイールシリンダに加えるブレーキ油圧を調節して車輪速度を制御するものである。
以上のような装置の他にもカーナビゲーション装置2には、アクセル開度を検出するアクセル開度センサ、各車輪速の代わりに車体速度を検出する車速センサ等が必要により取り付けられる。
【0030】
情報センター用サーバ3は、制御装置21とHDD22を備えて構成される。HDD22内には、路面情報の収集に協力してくれる各車両が備える前記検出装置群7のリストと通信アドレスとを記憶した協力車両データベース、各カーナビゲーション装置から送られてくる路面状況に関する収集情報を蓄積する路面データベース、地図情報、コンピュータで構成される制御装置21に後述する機能を発揮させるためのプログラム等が収納されている。
【0031】
次に、以上のような装置構成の下で路面状況に関する情報収集を行なう際にカーナビゲーション装置2の制御回路5と情報センター用サーバ3の制御装置21が行なう処理について、図2に示したフローを参照して説明する。
本実施形態では、監視地域についての路面状況を特殊なメンテナンス車両を使用することなく、一般車両の協力の下にそれらの車両が備える設備を利用して簡便且つ効率的に収集することを主目的としている。そこで、最初に情報センター用サーバ3側において、カーナビゲーション装置2を搭載する一般車両に対して要求する内容を管理者が決定し、サーバ3に入力する(ステップS1)。ステップS1の枠外の指差しマークは、人の判断又は操作であることを表わしている。
【0032】
管理者が決定して入力する項目には、路面状況についての収集項目とその収集条件、収集地域を含む。これに加えて、収集時間帯を限定する場合にはその時間帯も入力する。路面状況についての収集項目としては、例えば、車両の上下方向の加速度がある。上下方向の加速度は加速度センサ7bによって検出できる。そして、その大きさが判れば路面の凸凹の程度を推定することができ路面補修の必要性を判断することができる。
【0033】
また、アンチスキッド制御装置7eの作動の有無、アンチスキッド制御装置が作動時の前後一定時間内の一定時間間隔でサンプリングした各車輪速度と操舵角、車両の旋回時の角速度、上下方向加速度、前後方向加速度、各センサの所定値以上のピーク値等の収集項目を加えておけば、それらの情報を分析することで路面の滑り易さや凸凹の状態を推定することができる。そしてその推定から、例えば路面凍結の程度を判断し、融雪材の散布、除雪車両の出動、路面補修等の必要性を判断することができる。
【0034】
また、収集項目の収集条件とは、例えば上下方向の加速度が所定値を超えた場合のみ、そのピーク値を検出して報告するといった場合におけるその所定値のような、収集項目毎の測定条件をいう。管理者は、その情報収集の目的に応じて収集項目とその収集条件を決定して入力する。
更に、管理者は、指定した収集項目の情報収集を行なう収集地域を決定して入力する。例えば、路面凍結の状態を把握するのが目的である場合には、過去のデータや経験から監視範囲は自ずと明らかである。また、特定の道路の補修必要性を判断するのが目的である場合にも監視範囲は明らかである。管理者は、目的に合わせて監視範囲を決定し、その範囲を収集地域としてサーバ3に入力する。収集地域の指定方法は、中心座標(緯度と経度)と半径を指定した円地域で指定してもよいし、対角線上の2点の座標を指定した矩形地域で指定してもよい。
【0035】
このような情報が入力がされるとサーバ3はステップS2に移り、それらの情報収集を依頼する車両を決定する。依頼する車両を決定するためにサーバ3はHDD22内に協力車両データベースを持っている。協力車両データベースは、情報収集に協力してくれる車両のデータを収録したもので、図3に示す協力車両テーブルと図4に示す協力車両毎の車両仕様ファイルから構成されている。
【0036】
協力車両テーブルは、協力してくれる車両を特定するID(インデックス)を登録する「車両ID」フィールド、搭載されたカーナビゲーション装置の通信アドレスを登録する「通信アドレス」フィールドと、各センサの取り付け有無を登録する「加速度センサ」、「車輪速センサ」、「操舵角センサ」、「アンチスキッド制御装置(ABS制御装置)」のフィールドと、各車両のその他の仕様を記録したファイル名称を登録する「車両仕様ファイル名称」フィールドを有する。車両仕様ファイルには、図4に例示するようにその車両の「車種」、「所有者」、「型式」、「排気量」、「車体重量」等のデータが登録されている。サーバ3は、ステップS1で入力された収集項目の情報収集を実行するために必要なセンサを備えた協力車両を、この協力車両データベースに基づいて決定する(ステップS2)。
【0037】
協力車両が決定したならばステップS3に移り、決定した車両にステップS1で入力された収集項目とその収集条件を送信して情報収集を依頼する。依頼内容は、協力車両テーブルの「通信アドレス」フィールドに登録された通信アドレス宛に通信ネットワーク4を介して伝達される。
依頼を受けた車両のカーナビゲーション装置2側では、依頼情報を受信してHDD11に記憶する(ステップT1)。ステップT2では自車の位置を検出する。自車位置は、GPS受信機6の受信信号に基づいて制御回路5内で演算して求める。続くステップT3では、自車位置がステップT1で受信した依頼情報の中で指定された収集地域内にあるか否かを判定する。収集地域内に位置しない場合は、情報収集をしないでステップT2に戻る。
【0038】
収集地域内に位置する場合にはステップT4に移り、依頼情報の中の収集項目とその収集条件に従った情報収集を実行する。この情報収集は前述したように、例えば収集項目として車両の上下方向の加速度が含まれていた場合には、加速度センサ7bの検出値が所定値以上であるピーク値を、アンチスキッド制御装置7eの作動有無が収集項目に含まれている場合にはその作動有無を、アンチスキッド制御装置7eが作動した時の各車輪速、操舵角の測定が収集項目に含まれている場合には、車輪速センサ7c、操舵角センサ7dの検出値をそれぞれ記録することにより行なう。これらの検出値を記録する際には、同時にその時の車両位置と時刻も記録しておく。
【0039】
このようにして収集した収集情報は、ステップT5において自車の車両IDを添付してサーバ3に送信する。サーバ3側では、送信された収集情報を受け取り路面データベース内に記憶する(ステップS4)。集められた情報は、情報収集目的に沿った解析に供され、路面の凸凹の程度、路面凍結の程度等の路面状況が把握される。
なお、ステップT5におけるサーバ3への収集情報の送信は、情報(検出値)を収集する度に送信する代わりに、情報を一時記憶しておいて定期的に、あるいは情報量が所定量を超えた時に、あるいは自車位置が情報収集地域を外れた時にまとめて送信するようにしてもよい。
【0040】
このように本実施形態の路面情報収集システム1によれば、特殊仕様のメンテナンス車両を使用することなく一般仕様の自家用車、営業車等を使用して路面の凸凹の程度、路面凍結の程度等の路面状況を判断するための情報収集を行なうことができる。また、多数の一般車の協力を得て実施できることから情報収集頻度が高まる効果がある。更に、情報収集地域を限定して収集を行なうために無駄な情報収集が無くなり効率的な情報収集を行なうことができる。その結果として情報センターのサーバとの通信頻度も少なくなって通信費用が削減する効果も奏する。
【0041】
なお、本実施形態では車載装置としてカーナビゲーション装置を使用したが、自車位置検出機能と通信機能を備えた車載装置であればよく、例えば高機能のテレマティクス装置などでもよい。
また、路面情報を収集するための検出装置群は、図1に示した検出装置(センサ)に限られるものではなくその他のセンサを利用してもよい。
【0042】
また、使用する車両には一般車の他に排気ガス分析計などの特別の検出装置を備えたメンテナンス車両を含めてもよい。
なお、特許請求の範囲に記載した自車位置検出手段は、上記実施形態ではGPS受信機6、制御回路5、及びGPS受信機6の検出信号に基づいて自車位置を算出するプログラムにより実現されている。また、通信手段は通信装置8、アンテナ12により実現されている。また、制御手段は、制御回路5と図2中のカーナビゲーション装置側のフローを実行するプログラムにより実現されている。
【図面の簡単な説明】
【0043】
【図1】路面情報収集システム1の全体構成を示す図である。
【図2】カーナビゲーション装置2とサーバ3の処理フローである。
【図3】協力車両データベース内の協力車両テーブルの構成例である。
【図4】協力車両毎の車両仕様ファイルの例である。
【符号の説明】
【0044】
図面中、1は路面情報収集システム、2はカーナビゲーション装置(車載装置)、3はサーバ、4は通信ネットワーク、5は制御回路、6はGPS受信機、7は検出装置群、8は通信装置、21は制御装置を示す。


【特許請求の範囲】
【請求項1】
自車位置検出手段と通信ネットワークに接続するための通信手段と路面情報を収集するための検出装置群と制御手段とを備える1乃至複数の車載装置と、前記通信ネットワークに接続したサーバとからなる路面情報収集システムであって、
前記制御手段は、前記サーバより路面情報の収集項目と条件及び収集地域を指示する情報を受信して記憶しておき、自車が前記収集地域に入ったならば前記収集項目と条件に合致した情報収集を前記検出装置群を使用して行なって収集情報を前記サーバに送信し、
前記サーバは、前記1乃至複数の車載装置に対して前記路面情報の収集項目と条件及び収集地域を送信して情報収集を指示し、該指示に対して送られてきた収集情報を受信して蓄積することを特徴とする路面情報収集システム。
【請求項2】
前記収集項目には、アンチスキッド制御装置の作動の有無、アンチスキッド制御装置が作動時の前後一定時間内の一定時間間隔でサンプリングする各車輪速度と操舵角、車両の旋回時の角速度、上下方向加速度、前後方向加速度、各センサの所定値以上のピーク値の内の何れか一つ以上の項目を含むことを特徴とする請求項1に記載の路面情報収集システム。
【請求項3】
前記サーバは、前記路面情報の収集に協力してくれる各車両の前記車載装置が備える前記検出装置群のリストと通信アドレスとを記憶した協力車両データベースを備え、その中から前記路面情報の収集項目と条件に合致した情報収集を行なうことの可能な車両を選択し、選択した車両の前記車載装置に対して前記情報収集を指示することを特徴とする請求項1又は2に記載の路面情報収集システム。
【請求項4】
前記収集情報には、収集を行なった時の自車位置とその時刻の情報を含むことを特徴とする請求項1乃至3の何れかに記載の路面情報収集システム。
【請求項5】
前記制御手段は、前記収集情報を収集の都度、又は定期的に、又は収集量が所定量を超えた時、又は前記収集地域を外れた時の何れかの時に送信することを特徴とする請求項1乃至4の何れかに記載の路面情報収集システム。
【請求項6】
自車位置検出手段と、通信ネットワークに接続するための通信手段と、路面情報を収集するための検出装置群と、制御手段とを備える車載装置であって、
前記制御手段は、路面情報の収集を行なうサーバより路面情報の収集項目と条件及び収集地域を指示する情報を受信して記憶しておき、自車が該収集地域に入ったならば前記収集項目と条件に合致した情報収集を前記検出装置群を使用して行なって収集情報を前記サーバに送信することを特徴とする車載装置。
【請求項7】
前記収集項目には、アンチスキッド制御装置の作動の有無、アンチスキッド制御装置が作動時の前後一定時間内の一定時間間隔でサンプリングする各車輪速度と操舵角、車両の旋回時の角速度、上下方向加速度、前後方向加速度、各センサの所定値以上のピーク値の内の何れか一つ以上の項目を含むことを特徴とする請求項6に記載の車載装置。
【請求項8】
前記収集情報には、収集を行なった時の自車位置とその時刻の情報を含むことを特徴とする請求項6又は7に記載の車載装置。
【請求項9】
前記制御手段は、前記収集情報を収集の都度、又は定期的に、又は収集量が所定量を超えた時、又は前記収集地域を外れた時の何れかの時に送信することを特徴とする請求項6乃至8の何れかに記載の車載装置。
【請求項10】
路面情報収集に使用するサーバであって、1乃至複数の車載装置に対して路面情報の収集項目と条件及び収集地域を送信して収集を指示し、該指示に対して送られてきた収集情報を受信して蓄積することを特徴とするサーバ。
【請求項11】
前記収集項目には、アンチスキッド制御装置の作動の有無、アンチスキッド制御装置が作動時の前後一定時間内の一定時間間隔でサンプリングする各車輪速度と操舵角、車両の旋回時の角速度、上下方向加速度、前後方向加速度、各センサの所定値以上のピーク値の内の何れか一つ以上の項目を含むことを特徴とする請求項10に記載のサーバ。
【請求項12】
前記サーバは、前記路面情報の収集に協力してくれる各車両が備える前記検出装置群のリストと通信アドレスとを記憶した協力車両データベースを備え、その中から前記路面情報の収集項目と条件に合致した情報収集を行なうことの可能な車両を選択し、選択した車両の前記車載装置に対して前記情報収集を指示することを特徴とする請求項10又は11に記載のサーバ。


【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate


【公開番号】特開2006−48501(P2006−48501A)
【公開日】平成18年2月16日(2006.2.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−230812(P2004−230812)
【出願日】平成16年8月6日(2004.8.6)
【出願人】(000004260)株式会社デンソー (27,639)
【Fターム(参考)】