説明

跳ね当て面を備えたミキサ

本出願は、マス、特にチョコレートマスを混合しかつ混練するための装置(1)ならびにマス、特にチョコレートマスを混合しかつ混練するための方法に関する。当該装置は、少なくとも部分的に1つの回転体の外面を成す内壁(3)を備えた槽(2)と、シャフト(11)と、該シャフト(11)に取り付けられた少なくとも1つの工具(10,13)とを有している。槽(2)内には、少なくとも1つの、特に平坦な跳ね当て面(8)が配置されており、該跳ね当て面(8)が、軸方向に延びている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、マス、特にチョコレートマスを混合しかつ混練するための装置ならびにマス、特にチョコレートマスを混合しかつ混練するための方法に関する。
【0002】
特にチョコレートのような油脂マスを製造しかつ加工する場合、マスの成分はまず互いに混合され、ベースマスは混合時および場合によっては混練時に均質でかつ可塑性となる。マスの成分は固形および/または液体の成分、つまりカカオパウダ、粒状の精製糖または粉ミルクのような乾燥成分、液体および/またはペースト状のマスである。
【0003】
刊行物ドイツ連邦共和国特許第1782585号明細書、欧州特許第565887号明細書およびドイツ連邦共和国特許第19637098号明細書に基づき、たとえば混合のための装置が公知である。この公知の装置は、駆動されるシャフトを備えた槽を有している。このシャフトには、工具(ツール)、特に混合工具、均質化工具、剪断工具、掻取り工具および/または搬送工具が配置されている。
【0004】
混合のための装置は一般に、少なくとも部分的に、1つの仮想回転体の外面を成す内壁を備えた槽を有している。回転体の外面とは、特に円筒体外周面である。しかし、この内壁は円錐形の物体、たとえばコーンに相当していてもよい。その場合、回転する工具は槽の内壁の大部分に沿ってこの内壁を擦過することができる。混紡および混練は一般に、軸平行に回転する2つのシャフトを備えた二重円筒体形トロフ(Doppelzylindertrog)内で実施される。
【0005】
槽もしくは回転体の軸線およびシャフトは水平方向に配置され得ると有利である。しかし槽は傾けられて、またはそれどころか垂直に配置されていてもよいので、マスは重力によって助成されて、槽軸線に沿って駆動される。ほぼ水平方向に配置されたシャフトを備えた混合器を、以下において「水平ミキサ」と呼ぶ。
【0006】
一般に、槽はマスを装入するために上側の範囲に装入開口を有しており、それに対して槽の最も低い地点には、流出部が配置されている。
【0007】
このミキサ内で、マスは工具によってシャフトの周りを巡るように駆動される。水平ミキサでは、マスが工具によって、上昇方向に持ち上げられ、上部に到達して工具から離れて、重力に基づいて、工具とシャフトとの間の間隙を通って槽の内壁の下側の部分へ落下し、この下側の部分からマスは再び工具によって受け取られる。このときにマスの成分は混合し合い、マスは均質化される。
【0008】
上記公知先行技術から出発して、本発明の根底を成す課題は、混合過程および/または混練過程が一層効果的に行われ、加工されたマスが一層良好にかつ一層迅速に、後続のプロセスのために準備され得るような装置および方法を提供することである。
【0009】
この課題は、マス、特にチョコレートマスを混合しかつ混練するための装置により解決される。当該装置は、規定通りの使用時に有利には水平方向に配置されるべき、内壁を備えた槽(Kessel)を有しており、この内壁は、少なくとも部分的に、有利にはその面の50〜90%、さらに有利には60〜85%、さらに特に有利には70〜80%が、1つの仮想回転体の外面、特に円筒体周面を成している。
【0010】
当該装置はさらに、槽内に配置されたシャフト、特に正確に1つのシャフトと、該シャフトに取り付けられた少なくとも1つのツールもしくは工具とを有している。混合および混練のためには、剪断工具が使用されると有利である。この剪断工具は、たとえばコンチェにおいて使用される掻取り工具とは異なり、槽壁に対して大きな間隔を有しており、したがって工具と壁との間でのマスの剪断を可能にする。
【0011】
本発明によれば、槽内に少なくとも1つの、特に平坦なバッフル面もしくは跳ね当て面が配置されており、該跳ね当て面が、軸方向に、有利には前記工具または槽の軸方向の全長に沿って延びている。跳ね当て面はシャフトに対して平行に配置されていると有利である。
【0012】
跳ね当て面は、特に仮想回転体の外面よりも外側および/または内側に位置している。すなわち、跳ね当て面は前記回転体の外面の一部ではなく、特に1つの仮想回転体の輪郭を有する槽の内壁の一部ではない。
【0013】
このような装置では、マスの成分が運動させられ、これによって混合され得るだけではない。本発明における跳ね当て面では、マス全体またはその一部が圧縮を受けるようになっている。この圧縮は、槽の内壁の下側の部分への落下時におけるマスの衝突を超えるものである。こうして、マスに混練過程を施すことができる。
【0014】
跳ね当て面が前記回転体の内側に配置されていると、回転する工具の軌道は跳ね当て面を迂回して案内されなければならず、このためには工具が、たとえば偏心的に設けられた軸線によって駆動され、かつ/またはばね弾性的に支承されていてよい。
【0015】
本発明の有利な実施態様では、シャフトが、前記回転体の軸線と同軸的に配置されている。このことは、剛性的な工具が使用される場合には、跳ね当て面が前記回転体の外側に配置されていることを意味する。
【0016】
跳ね当て面は、回転体と跳ね当て面との間の移行部において、前記回転体の接線方向平面に対して90°よりも小さな角度を成している。
【0017】
跳ね当て面は、槽が水平方向に向けられている状態で垂直に配置されていると有利である。これにより、面法線は水平線の方向に向いている。その場合、遠心力により跳ね当て面へ投げ付けられたマスは重力に基づき、跳ね当て面から離れ落ちるか、または落下することができる。
【0018】
混練効果を促進するためには、槽が、前記工具により加速されたマス、特に前記内壁から接線方向に加速されたマスの自由な飛翔軌道、特に放物線軌道のための空間もしくはスペースを提供していると有利である。その場合、跳ね当て面は、マスが、自由な飛翔軌道のための前記スペースを通って当該面へ遠心力により投げ付けられるように設けられていてよい。槽の内室が前記回転体を越えて拡張していると有利である。これにより、剥離縁が形成され、この剥離縁からは、マスが前記回転体の断面に対して接線方向に加速される。
【0019】
ほぼ水平方向に配置された混合器もしくはミキサの場合、前記飛翔軌道のためのスペースは上側の半部に位置するので、加速されたマスはほぼ放物線軌道を描いて飛翔する。その後に、適当なスタート速度で、マスは跳ね当て面に衝突することができる。
【0020】
剥離縁と跳ね当て面との間の間隔は、前記回転体の直径よりも大きくはない。
【0021】
前記スペースは、槽が、前記回転体の軸線に対してほぼ平行に配置されたネック状の開口を有していて、該開口が、少なくとも1つのショルダ面を備えていることにより与えられていてよい。この開口はさらに、槽の充填および/または通気および/またはクリーニングおよび/または工具の交換のためにも利用され得る。
【0022】
さらに上記課題は、特に上で説明したような混合器もしくはミキサであって、規定通りの使用時では有利には水平方向に配置されるべき、少なくとも部分的に円筒形である内壁を備えた槽と、シャフト、特に正確に1つのシャフトと、該シャフトに取り付けられた少なくとも1つの工具、特に掻取り工具とが設けられている形式のものにおいて、槽が、前記回転体の軸線に対して平行に配置されたネック状の開口を有しており、該開口が、少なくとも1つのショルダ面を備えており、該開口が、槽のほぼ全長にわたって延びていることを特徴とするミキサにより解決される。
【0023】
水平ミキサにおいて槽の上半部に配置された開口は、一方では槽の充填および/または通気および/またはクリーニングおよび/または工具の交換のためにも利用され得るが、この開口は、ミキサにより加速されたマスの飛翔軌道のためのスペースを与えることもできる。
【0024】
前記開口の少なくとも1つのショルダ面が、跳ね当て面を形成していると有利である。ネック状の開口は、該開口が、それぞれ跳ね当て面を形成する2つのショルダ面を有するように形成されていてもよい。これにより、マスは工具の両回転方向で跳ね当て面に向かって遠心力により投げ付けられ得る。規定通りの使用時に槽が水平方向に配置される場合、跳ね当て面は垂直方向に向けられていると有利である。
【0025】
軸方向に延びる開口の開き角度、すなわちシャフト軸線と剥離縁との間を結ぶ結合線と、シャフト軸線と、槽壁と跳ね当て面との間の移行部とを結ぶ結合線との間の角度は、混合したいマスの広いスペクトルに関して、一方ではマスがミキサから噴き出さないように、他方ではマスが跳ね当て面に到達するように設定されている。この開き角度は有利には120°よりも小さく設定されており、特に短軸式の装置では90°よりも小さく、さらに有利には60°よりも小さく設定されている。
【0026】
前記開口のためのカバー、たとえばフラップカバーが設けられていてよい。
【0027】
本発明のさらに別の有利な構成では、工具が、リボンブレンダを形成するリボン状のつる巻き羽根(Schneckenband)として構成されている。このリボン状のつる巻き羽根は、一方ではマスを回転させて、マスを跳ね当て面に向かって遠心力により投げ付け、他方ではマスがミキサによって軸方向に駆動される。搬送方向は、回転方向が逆転されると反転され得るので、回転方向が切り換えられると、軸方向においてマスを往復運動させることができる。
【0028】
本発明のさらに別の有利な構成では、当該装置が、前記シャフトの回転速度を制御するための開ループ式の速度制御部および/または閉ループ式の速度制御器を有している。この開ループ式の速度制御部および/または閉ループ式の速度制御器は、特に前記飛翔軌道または前記放物線軌道をマスの特性に適合させるために働く。マスの特性は、たとえば組成、量、固有重量もしくは比重、コンシステンシ等によって与えられている。
【0029】
速度の調節によって、与えられた跳ね当て面配置において、マスがたとえば一方では槽から飛び出ないように、他方ではマスの大部分が跳ね当て面に衝突するように配慮することができる。このためには、内壁からの剥離の際の、シャフトの回転数およびマスの特性に関連した接線方向速度が、適当な値範囲内になければならない。所要の速度もしくは所要の回転数は、定期試験によって簡単に求めることができる。
【0030】
択一的には、跳ね当て面は可変に設定されていてもよい。たとえば跳ね当て面の位置が移動可能であり、かつ/または高さおよび/または面積が可変であってよく、かつ/または装入されたマスと、調節可能な回転速度とに関連して、どのような衝突面が望ましいのかに応じて、跳ね当て面全体が交換可能であってよい。択一的には、付加的な構成部分、たとえば挿入されたくさび体を用いてマスの飛翔軌道を制限することができる。
【0031】
さらに、本発明の根底を成す課題は、上で説明したような、油脂マス、特にチョコレートマスを混合しかつ混練するための装置であって、該装置が、少なくとも部分的に円筒形である内壁を備えた、規定通りの使用時に有利には水平方向に配置されるべき槽を有しており、該槽が、シャフトと、該シャフトに取り付けられた少なくとも1つの工具とを有している形式の装置によって解決される。前記工具は、特に剪断工具である。本発明の構成では、前記シャフトに、逆向き回転式の2つのリボン状のつる巻き羽根または逆向き回転式のリボン状のつる巻き羽根の一部が取り付けられており、該リボン状のつる巻き羽根が、有利には少なくとも部分的にオーバラップしている。リボン状のつる巻き羽根は、槽の中央部に位置する、槽の流出部の近傍でオーバラップしていると有利である。
【0032】
リボン状のつる巻き羽根またはリボン状のつる巻き羽根部分は、特にこれらが同時に剪断工具としても働くように構成されている。
【0033】
その場合、シャフト駆動は一方の方向でしか行われ得ず、マスは右巻きのリボン状のつる巻き羽根と左巻きのリボン状のつる巻き羽根とによって、互いに逆向きの方向で駆動される。
【0034】
同一の回転方向のリボン状のつる巻き羽根が連繋して構成されているか、または個別部品として提供されていてもよい。個別部品はそれぞれリボン状のつる巻き羽根の一部である。個別部品は互いに間隔を置いて配置されていてよい。個別部品相互を結ぶ仮想結合線は、一貫した1つのリボン状のつる巻き羽根の形を有していてよい。
【0035】
流出部の近傍、たとえば槽の中央部において、互いにオーバラップした、互いに逆向きのリボン状のつる巻き羽根は、マスが、オーバラップした範囲に向かって駆動されるように配置されていると有利である。この範囲に、有利には槽の流出部が位置しているので、きれいな排出を行うことができる。
【0036】
付加的に、シャフトには、少なくとも1つの攪拌パドルが配置されていてよい。攪拌パドルは混合効果を増幅させる。
【0037】
攪拌パドルは工具よりも短く形成されていてよい。なぜならば、混合は、特に低い回転速度において、つまり重力に比べて遠心力の影響が小さくなり、かつマスが主として槽の下側の半部に位置するようになる速度において重要になるからである。
【0038】
本発明のさらに別の有利な構成では、当該装置が調温装置を有している。調温装置を用いて、槽および/または内壁および/または装入されたマスを加熱し、かつ/または冷却することができる。このことは、マスをしなやかにするために最初は加熱され、そしてあとの段階で機械的なエネルギがマスに導入された後に、マスが場合によってはさらに冷却され得るようなチョコレートマスの加工の際に特に好都合となる。
【0039】
チョコレートマスは、35〜50℃の温度で加工されると有利である。
【0040】
さらに、本発明の根底を成す課題は、マス、特にチョコレートマスを混合しかつ混練するための方法において、ミキサ、特に上で説明したようなミキサ内で、工具、特に掻取り工具によってマスを跳ね当て面に向かって遠心力により投げ付けることを特徴とする、マスを混合しかつ混練するための方法によって解決される。
【0041】
遠心力による投げ付け過程と、跳ね当て面への衝突時における圧縮とにより、マスには混練過程が施される。この混練過程は、たとえば剪断力をマスに加える工具を用いたマスの加工または重力に基づいたマスの落下を凌駕する。なぜならば、遠心力による投げ付け方向における速度成分、特に接線方向速度が一緒に利用されるからである。
【0042】
水平ミキサにおいてマスはシャフトを一回りする際に2回の圧縮を受ける。すなわち、第1には跳ね当て面への衝突時に、第2には槽の下面への落下時に圧縮を受ける。すなわち、マスは極めて効果的に混練される。なぜならば、1回転当たり1回よりも多い圧縮が行われるからである。そして、この圧縮が種々の方向で行われるので、さらに捏粉状のマスの折畳みも生じる。このことは混練プロセスを一層促進する。
【0043】
本発明による方法の有利な実施態様では、部分的に円筒形である少なくとも1つの内壁を有する槽を有するミキサ、特に水平ミキサ内で、前記円筒形の内壁に対して接線方向でマスが加速される。次いで、このマスは、該マスが跳ね当て面に衝突する前に、斜めの投げ出しによる飛翔軌道を進行する。
【0044】
この装置では、回転速度を、槽内の特性、特にマスの特性に最適に適合させることができるので、マスの大部分が、高い速度で跳ね当て面に衝突し、そしてこの跳ね当て面において圧縮を受けるようになる。
【0045】
本発明の有利な実施態様では、前記少なくとも1つの工具の速度が、特に飛翔軌道または放物線軌道をマスの特性、たとえば組成、量、比重、コンシステンシ、温度等に適合させるために、開ループ式または閉ループ式に制御される。
【0046】
マスの配合に応じて、適当な回転数が経験により決定されると有利である。
【0047】
マスが、水平ミキサ内でまず第1の速度で運動させられると有利であり、この場合、マスの成分は主として混合される。マスは、引き続き第2の速度で運動させられ、この場合、マスは跳ね当て面へ向かって遠心力により投げ付けられ、主として混練される。
【0048】
速度は、理論的な衝突点が跳ね当て面の中央部に位置するように製品に関連して調節され得ると有利である。
【0049】
プロセスもしくは混合物の品質は、消費トルクおよび/または消費出力によって閉ループ式に制御され得る。
【0050】
付加的に、マスは加工中に温度調節、すなわち調温され得る。
【0051】
以下に、本発明の実施形態を図面につき詳しく説明する。
【図面の簡単な説明】
【0052】
【図1】本発明による装置の概略的な断面図である。
【図2】本発明による装置の平面図である。
【図3】第1の工具と第2の工具とを備えたシャフトの平面図である。
【0053】
図1には、本発明による混合・混練のための装置1の概略的な断面図が示されている。図示の水平ミキサ1は槽2を有している。槽2の内壁3は少なくとも部分的に、1つの仮想円筒体の円筒体外周面4に相当している。
【0054】
槽2はネック状の開口5を有している。開口5の側方の壁6はショルダ面7aとして形成されており、このショルダ面7aはバッフル面もしくは跳ね当て面8として働く。この跳ね当て面8は、仮想の円筒体外周面4の外側に位置している。跳ね当て面8は図示の実施形態では、垂直線に沿って配置されているが、択一的には水平線に対して45°〜90°の比較的小さな角度を成していてもよい。
【0055】
開口5の、跳ね当て面8に向かい合って位置するショルダ面7bは、挿入されたくさび体9によって最適化されている。このくさび体9は、典型的に調温された槽2からの熱の放出およびマスの跳ね溢れを阻止する。
【0056】
くさび体9は前記装置1の固定の構成要素であってよいか、または当該装置1から取外し可能であってよい。その場合、くさび体9は、たとえばクリーニングのために取り外されるか、または加工したいマスに応じて全く使用されずに済む。
【0057】
図示の実施形態では、ミキサ1が、短軸式の混合装置によって運転される。この場合、シャフト11は仮想の円筒体外周面4に対して同軸的に配置されている。混合装置は2つまたはそれ以上のリボン状のつる巻き羽根(Schneckenband)10から成っており、これらのリボン状のつる巻き羽根10はシャフト11によって内壁3に沿って駆動される。
【0058】
リボン状のつる巻き羽根10はミキサ1内でマス(図示しない)を巡回駆動し、そして壁に対してマスを剪断する。
【0059】
回転数が十分に高いと、マスの遠心力は重力よりも大きくなる。この場合、フルード数FROUDE−Zahl=Dπ/gは1よりも大きい(ただし、Dは槽の内径であり、nは混合装置の回転数であり、gは重力加速度であり、πは円周率である)。
【0060】
くさび体9は、ネック状の開口5の内側に、工具によって加速されたマスの自由な飛翔軌道のためのスペース15が提供されるように形成されている。
【0061】
開口5に設けられた剥離縁16にマスが到達すると、このマスは、斜めの投げ出しによる飛翔軌道を進むようになる。この場合、マスは接線方向12における初速度を有する。この接線方向速度が十分な大きさであると(このことはシャフトの回転速度およびマスの特性に関連する)、マスは跳ね当て面8に向かって遠心力により投げ付けられる。
【0062】
跳ね当て面8に衝突すると、マスは圧縮され、引き続き落下および再収容の際に折り畳まれる。こうして、マスには混練過程が施される。
【0063】
速度は、理論的な衝突点がショルダ面7の所定の高さに位置するように、すなわちこの場合には槽2の半径、有利には槽半径の1/2、さらに有利には槽半径の1/4にほぼ相当するショルダ面7の高さに位置するように製品に関連して調節され得る。
【0064】
調節された衝突点が低すぎると、マスの過大部分がショルダ面に全く衝突せずに、槽容積内に留まったままになる恐れがある。その場合、この部分は跳ね当て面8において圧縮されない。
【0065】
跳ね当て面への衝突後に、マスは重力に基づいて槽2内へ落下して、リボン状のつる巻き羽根10によって再び収容されかつ連行される。
【0066】
図2には、本発明による水平ミキサ1の平面図が示されている。
【0067】
シャフト11には、右巻きおよび左巻きの2つのリボン状のつる巻き羽根10が取り付けられている。両リボン状のつる巻き羽根10は槽中央部19において、つまり流出部18において、オーバラップしている。リボン状のつる巻き羽根10はマスを槽中央部19へ駆動する。このことは、きれいな排出をもたらす。
【0068】
リボン状のつる巻き羽根10のピッチは、槽長さの約0.6倍であると有利である。
【0069】
リボン状のつる巻き羽根10は方形の横断面を有している。ネック状の開口5は回転体の軸線17に対して平行に、実質的に水平ミキサ1の全長14にわたって延びている。
【0070】
図3には、第1の工具10と第2の工具13とを備えたシャフト11の平面図が示されている。第1の工具であるリボン状のつる巻き羽根10に対して付加的に、シャフト11には、第2の工具である、斜めに設置された攪拌パドル13が取り付けられていてよい。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
マス、特にチョコレートマスを混合しかつ混練するための装置であって、
−内壁(3)を備えた、有利には水平方向に配置されるべき槽(2)が設けられており、
−該槽(2)の内壁(3)が、少なくとも部分的に、有利にはその面の60〜90%が、1つの回転体の外面、特に円筒体外周面(4)を成しており、
シャフト(11)、特に正確に1つのシャフト(11)と、該シャフト(11)に取り付けられた少なくとも1つの工具(10,13)、特に剪断工具とが設けられている、
形式の装置において、
槽(2)内に、少なくとも1つの、特に平坦な跳ね当て面(8)が配置されており、該跳ね当て面(8)が、軸方向に延びていて、特に前記回転体の外面の外側および/または内側に位置している
ことを特徴とする、マスを混合しかつ混練するための装置。
【請求項2】
シャフト(11)が、前記回転体の軸線と同軸的に配置されている、請求項1記載の装置。
【請求項3】
槽(2)が、前記工具(10,13)により加速されたマス、特に前記内壁(3)から接線方向に加速されたマスの自由な飛翔軌道、特に放物線軌道のためのスペース(15)を提供している、請求項1または2記載の装置。
【請求項4】
槽(2)が、前記回転体の軸線(17)に対して平行に配置されたネック状の開口(5)を有しており、該開口(5)が、少なくとも1つのショルダ面(7a,7b)を備えている、請求項1から3までのいずれか1項記載の装置。
【請求項5】
特に請求項1から4までのいずれか1項記載の、マス、特にチョコレートマスを混合しかつ混練するための装置であって、少なくとも部分的に円筒形である内壁(3)を備えた、有利には水平方向に配置されるべき槽(2)と、シャフト(11)、特に正確に1つのシャフト(11)と、該シャフト(11)に取り付けられた少なくとも1つの工具(10,13)、特に剪断工具とが設けられている形式の装置において、槽(2)が、円筒体の軸線(17)に対して平行に配置されたネック状の開口(5)を有しており、該開口(5)が、少なくとも1つのショルダ面(7a,7b)を備えており、該開口(5)が、槽(2)のほぼ全長(14)にわたって延びていることを特徴とする、マスを混合しかつ混練するための装置。
【請求項6】
前記開口の少なくとも1つのショルダ面(7a,7b)が、跳ね当て面(8)を形成している、請求項4または5記載の装置。
【請求項7】
前記工具が、リボン状のつる巻き羽根(10)である、請求項1から6までのいずれか1項記載の装置。
【請求項8】
当該装置が、特に前記飛翔軌道または前記放物線軌道をマスの特性に適合させるための、前記シャフトの回転速度を制御するための開ループ式の速度制御部および/または閉ループ式の速度制御器を有している、請求項1から7までのいずれか1項記載の装置。
【請求項9】
特に請求項1から8までのいずれか1項記載の、油脂マス、特にチョコレートマスを混合しかつ混練するための装置であって、少なくとも部分的に円筒形である内壁(3)を備えた、有利には水平方向に配置されるべき槽(2)と、シャフト(11)、特に正確に1つのシャフト(11)と、該シャフト(11)に取り付けられた少なくとも1つの工具(10,13)、特に剪断工具とが設けられている形式の装置において、前記シャフト(11)に、逆向き回転式の2つのリボン状のつる巻き羽根(10)または逆向き回転式のリボン状のつる巻き羽根(10)の一部が取り付けられており、該リボン状のつる巻き羽根(10)が、有利には少なくとも部分的にオーバラップしており、有利には槽(2)の流出部の近傍でオーバラップしていることを特徴とする、油脂マスを混合しかつ混練するための装置。
【請求項10】
前記シャフト(11)に少なくとも1つの攪拌パドル(13)が配置されている、請求項1から9までのいずれか1項記載の装置。
【請求項11】
当該装置が、槽および/または内壁および/またはマスの加熱および/または冷却のための調温装置を有している、請求項1から10までのいずれか1項記載の装置。
【請求項12】
マス、特にチョコレートマスを混合しかつ混練するための方法において、マスを混合しかつ混練するための装置、特に請求項1から11までのいずれか1項記載の装置内で、少なくとも1つの工具(10,13)、特に剪断工具によってマスを跳ね当て面(8)に向かって遠心力により投げ付けることを特徴とする、マスを混合しかつ混練するための方法。
【請求項13】
部分的に円筒形である少なくとも1つの内壁(3)を有する槽(2)を備えた、マスを混合しかつ混練するための装置、特に水平ミキサ(1)内で、前記円筒形の内壁(3)に対して接線方向でマスを加速させ、マスが跳ね当て面(8)に衝突する前に、斜めの投げ出しによる飛翔軌道を進行させる、請求項12記載の方法。
【請求項14】
前記少なくとも1つの工具(10,13)の速度を、特に飛翔軌道または放物線軌道をマスの特性に適合させるために、開ループ式または閉ループ式に制御する、請求項12または13記載の方法。
【請求項15】
マスを水平ミキサ(1)内でまず第1の速度で運動させ、この場合、マスの成分を主として混合し、引き続きマスを第2の速度で運動させ、この場合、マスを跳ね当て面(8)へ向かって遠心力により投げ付け、かつ主として混練する、請求項12から14までのいずれか1項記載の方法。
【請求項16】
マスを加工中に調温する、請求項12から15までのいずれか1項記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公表番号】特表2013−517933(P2013−517933A)
【公表日】平成25年5月20日(2013.5.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−550435(P2012−550435)
【出願日】平成23年1月27日(2011.1.27)
【国際出願番号】PCT/EP2011/051104
【国際公開番号】WO2011/092230
【国際公開日】平成23年8月4日(2011.8.4)
【出願人】(501003320)ビューラー・アクチエンゲゼルシャフト (23)
【氏名又は名称原語表記】Buehler AG
【住所又は居所原語表記】Gupfenstrasse 5, CH−9240 Uzwil, Switzerland
【Fターム(参考)】