説明

身体組織の分化転換方法

【課題】細胞退化、損傷または切断後に器官または身体部分を再生するのに必要な特殊な型の細胞を生成するために用いられ得る身体組織の分化転換方法を提供する。
【解決手段】(a)細胞の脱分化を引き起こす、脱分化のための有効量の剤と、細胞を接触させて、脱分化細胞を産生する工程、(b)脱分化細胞を、脱分化細胞の分化転換を引き起こす、分化転換のための有効量の剤と接触させる工程、(c)工程(b)からの細胞を、工程(b)で産生された細胞の安定化を生じさせる、安定化のための有効量の剤と接触させる工程、および(d)安定化分化転換細胞を回収する工程を包含する方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
[発明の背景]
多数の無脊椎動物およびいくつかの脊椎動物種は失われた身体部分を再生する能力を有することが知られている(Goss, Clin. Orhtop., 1980, 151:270-282; Kawamura and Fujiwara, Sem. Cell Biol., 1995, 6:117-126; Tsonis, Devel. Biol., 2000, 221:273-284)。したがって、無脊椎動物は小片から全身体を再構築し得る(Kawamura and Fujiwara、同上)。脊椎動物における再生の例としては、(i)その耳にあけられた穴を塞ぎ得るウサギおよびコウモリ、(ii)切断後に完全肢を再生し得る成体サンショウウオ、ならびに(iii)最終関節の遠位で切断された場合に前肢指の先端を元に戻し得るマウスが挙げられる(Goss and Grimes, Am. Zool., 1972, 12:151; Neufeld and Zhao, pp.243-252, In:Limb Development and Regeneration, Fallon ed., John Wiley and Sons, 1993)。
【0002】
ヒトにおいては、幼児の指も最終関節の遠位で切断後に再成長することが示されている(Goss、同上;Illingworth, J. Ped. Surg., 1974, 9:853-858)。2つの因子がこの再生のために重要であることが示されている:即ち(1)切断部位の縁から生じる表皮性上皮に覆われ得る新しい創傷の開存表面(Stocum, pp.32-53, In:Regulation of Vertebrate Limb Regeneration, Sicard ed., Oxford Univ. Press, 1985)と(2)創傷表面での適切な神経供給(Singer et al., Anat. Embryol., 1987, 177:29-36)である。
【0003】
再生の基礎を成す細胞メカニズムは長年研究されており、種間にいくつかの保存された特徴が存在すると思われる。脊椎動物では、再生が起こる2つの方向が存在する。いくつかの組織においては、多能性静止性幹細胞は損害により活性化されて、いくつかの異なる最終的分化表現型の新規の細胞を産生するようになる。あるいは、それらが多数のその分化特徴を失い、他の表現型の新規の完全分化細胞を生成するために増殖し得るよう、機能的完全分化細胞の表現型の変化が存在し得る。この後者の過程が、「分化転換(transdifferentiation)」と呼ばれてきた(Okada, pp.349-380, In:Current Topics in Developmental Biology, Denis-Donini et al. eds., Acad. Press, 1980; Okada, Trans-differentiation, Oxford Sci. Publ., 1991)。
【0004】
網膜再生は、種によって、幹細胞によりまたは分化転換を介して起こり得る再生過程の一例を示す。したがって、真骨上目魚類は、損害後の新規の網膜ニューロンの供給源として作用し得る網膜前駆幹細胞の集団を含有する(Hitchcock and Raymond, Trends Neurosci., 1992, 15:103-108)。これに対比して、両生類および鶏胚は、神経網膜前駆への色素上皮(RPE)中の細胞の分化転換を包含する過程によりそれらの網膜を再生し得る(Reh and Pittack, Sem, Cell Biol., 1995, 6:137-142)。
【0005】
分化転換による再生の存在は、その存在が、分化の古典的見解と一致しなかったので、長い間、疑問視されており、その分化の古典的見解によれば、いったん獲得された細胞表現型は遺伝子発現パターンにおける不可逆的変化のために固定されると考えられていた。しかしながら、in vitro細胞培養系の開発は、分化転換による再生の明白な実験的実証を可能にした。したがって、成体イモリ虹彩の培養完全分化色素上皮細胞が分化し、増殖して新しい組織である水晶体を生成する能力を有することが示されている(Eguchi et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA 1974, 70:5052-5056; Abe and Eguchi, Dev. Growth Diff., 1977, 19:309-317)。
【0006】
in vivoおよびin vitro研究はともに、成長因子と、細胞外マトリックスの構成成分との相互作用により引き起こされる遺伝子発現(例えば選択的遺伝子活性化および/または無症状化)における細胞質シグナルおよび変化が細胞分化転換の制御において重要であることを実証している(Kodama and Eguchi, Sem. Cell Biol., 1995, 6:143-149; Rao and Reddy, 同書151-156)。したがって、ラットにおける銅欠乏は膵臓の腺房細胞の細胞−細胞相互作用の損失、微細環境変化および全体的アポトーシスを生じ、これが次に卵形および管状膵臓細胞を活発に増殖させて、その結果肝臓肝細胞へのそれらの分化転換を引き起こすことが示された(Rao and Reddy、同上)。アホロートル(メキシコサンショウウオAmbystoma mexicanum)の神経堤由来色素皮膚細胞(色素胞)を用いて実行された別のシリーズの実験において、グアノシンの添加はこれらの細胞を色素細胞型から別の型への分化転換させ得ることが示された(Frost et al., Pigm. Cell Res., 1987, 1:37-43; Thibaudeau and Holder, Pigm. Cell Res., 1998, 11:38-44)。
【0007】
下等脊椎動物における切断後の複雑な付属器官の復位(即ち真再生性再生)も分化転換により起こると考えられる(Goss、同上)。したがって、真再生性再生中、表皮損傷治癒の後には、創傷表皮下の脱分化再生芽細胞の蓄積が起こる。これらの再生芽細胞は、断端組織の間葉細胞およびシュワン細胞の脱分化により生じ(Brockes, Science, 1984, 225:1280-1287)、これが次に再分化して肢組織を再構築する(Singer et al., Anat. Embyol., 1987, 177:29-36)と思われる。
【発明の概要】
【0008】
[発明の概要]
本発明は、分化転換するように哺乳類細胞を誘導するための方法、そしてこのような細胞の使用に向けられる。最終的分化に代表的な形態学的および機能的特徴を示す細胞は、他の細胞型に変化するよう誘導される。これらの細胞は、複数の生物体から、そしてあらゆる身体組織から得られる。
【0009】
一態様において、本発明は、哺乳類細胞を分化転換する方法であって:
(a)細胞の脱分化を引き起こす、脱分化のための有効量の剤と、細胞を接触させて、脱分化細胞を産生する工程、
(b)工程(a)の脱分化細胞を、脱分化細胞の分化転換を引き起こす、分化転換のための有効量の剤と接触させる工程、
(c)工程(b)からの細胞を、工程(b)で産生された細胞の安定化を生じさせる、安定化のための有効量の剤と接触させる工程、および
(d)安定化分化転換細胞を回収する工程
を包含する、前記方法を提供する。
【0010】
別の態様において、本発明は、哺乳類における部分的に破壊されていた構造のレムナント中に発生領域を再生または作製するための方法であって:
(a)構造のレムナントを脱分化する工程、
(b)工程(a)の構造のレムナントを分化転換する工程、および
(c)工程(b)の構造のレムナントを安定化し、それによりレムナント中に発生領域を作製する工程
を包含する、前記方法を提供する。
【0011】
さらに別の態様では、本発明は、哺乳類における癌の治療方法であって、良性細胞への癌の分化転換を引き起こすのに有効な量の剤と癌を接触させることを包含する、前記方法を提供する。
【0012】
さらなる態様では、本発明は、患者における抗体介在性自己免疫疾患の進行の抑制方法であって:
(a)自己免疫襲撃下にある型の患者から細胞を得る工程、
(b)細胞を正常表現型に変換するのに有効な量の分化転換剤と細胞を接触させる工程、
(c)変換細胞をin vitroで培養して細胞を増幅させる工程、
(d)血液は進入させるが細胞を保持する膜上に細胞を固定する工程、および
(e)固定化細胞を患者の血液と接触させ、それにより患者の血液から抗体を除去する工程
を包含する、前記方法を提供する。
【0013】
さらに別の態様では、本発明は、損傷により傷害を受けるか、または失われている哺乳類の身体中の組織または器官を再生する方法であって:
(a)脱分化有効量の脱分化剤を投与することにより損傷部位での細胞を脱分化する工程、
(b)分化転換有効量の分化転換剤と細胞を接触させることにより工程(a)の脱分化細胞を分化転換する工程、および
(c)安定化有効量の安定剤と細胞を接触させることにより工程(b)の分化転換細胞を安定化する工程
を包含する、前記方法を提供する。
【0014】
さらに別の態様では、本発明は、幹細胞を産生する方法であって
(a)患者の皮膚細胞からメラノサイトを得る工程、
(b)分化転換を引き起こす剤とメラノサイトを接触させる工程、および
(c)幹細胞を回収する工程
を包含する、前記方法を提供する。
【0015】
さらに別の態様では、本発明は、幹細胞を産生する方法であって:
(a)患者の皮膚細胞からメラノサイトを得る工程、
(b)幹細胞を産生するのに有効な時間および濃度で分化転換を引き起こす剤とメラノサイトを接触させる工程、および
(c)幹細胞を回収する工程
を包含する、前記方法を提供する。
本発明のこれらの態様およびその他の態様は、本発明の説明および特許請求の範囲に鑑みて、当業者には明らかであろう。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】GMPを取り込んだアホロートル(Axolotl)から得られた電子顕微鏡写真である(例5Bに記載)。左側には黄色素胞の突起が存在する。右側には、黒色素胞の突起が存在する。pt=プテリノソーム;m=メラノソーム;p=プレメラノソーム;*印はプラスチック中の裂け目のための人工物を示す。メラノソームは、内部格子上に作り上げられる卵形または円形の構造物であり、顕著なプレメラノソームに認められるように一部は多数の小円形体で構成される。プテリノソームは、小さい束状のまたは同心円上の繊維性物質を有する空胞のように見える。
【図2】図1と同一動物の写真である。プテリノソームおよびメラノソームが同一細胞中に観察される。さらにハイブリッド細胞小器官が写真の底部に認められる。この細胞は、以下の判定規準に基づいて、分化転換中であると判定される:(a)同一細胞中の多数のプテリノソームおよびメラノソームの存在、ならびに(b)メラノソームおよびプテリノソームの両方を示唆する特徴を有するいくつかの細胞小器官の存在。
【図3】図2の底部に認められたハイブリッド細胞小器官の拡大図である。
【図4】GMPを取り込んだアホロートルのゴモリトリクローム染色切片の写真である(例5Bに記載)。E=表皮;C=基底膜直下の真皮中のコラーゲン帯;M=メラノサイト。2つの矢印は、メラノサイトから黄色素胞に分化転換中の細胞を示す。小矢印は、メラノソームを示す。大矢印はプテリノソームを指し、これは白色空胞のように見える。
【0017】
[発明の詳細な説明]
本明細書中に引用した特許出願、特許および参考文献はすべて、それらの記載内容が参照により本明細書中に援用される。一致しない場合は、定義を含めた本発明の説明が統制する。
【0018】
定義
本明細書中で用いる場合、以下の用語は本発明の目的のために定義される。
【0019】
「分化転換」とは、確認されている特徴を失い、そしてそれらの表現型を他の完全分化細胞のものに変えるある型の分化細胞の能力を指す。
【0020】
「細胞脱安定化」または「脱分化」とは、遺伝子または代謝経路を活性化または脱活性化することによる分化細胞の表現型特徴の損失を指す。
【0021】
「細胞安定化」とは、遺伝子または代謝経路を保持、活性化または脱活性化することによる分化細胞の表現型特徴の保持を指す。
【0022】
「形態形成領域」とは、胚形成またはその後の再生中に特定の器官(例えば膵臓、肝臓)または付属器官(例えば肢、尾)を生じる能力を有する細胞の一群を指す。形態形成領域はあるいは、「発生領域」または「真再生領域」または「始原領域」と呼ばれ得る(Hopper and Hart, Foundations of Animal Development, Oxford Univ. Press, 1980, p.314)。
【0023】
「毒素」とは、細胞に有害な物質を指す。毒素は、タンパク質であり得るし、またはそうでないこともある。毒素の例としては以下のもの:(a)重金属、例えばカドミウム、銅および亜鉛、(b)強酸または塩基、例えば塩酸(<pH5)または水酸化ナトリウム(>pH8)、(c)ATP阻害剤、例えばATPアーゼ、ならびに(d)膜を脱安定化する毒素、例えば洗剤が挙げられるが、これらに限定されない。
【0024】
「神経堤」とは、胚の発生中に、神経管および外胚葉間に挟まれて見出される外胚葉由来細胞を指す(LeDouarin, The Neural Crest, Cambridge Univ. Press, 1982)。胚神経堤の細胞は広範な組織を生じ、その例としては、以下のものが挙げられる:(a)末梢神経系の細胞、(b)皮骨、(c)頭部結合組織、(d)色素細胞、(e)カルシトニン分泌細胞、(f)髄膜、(g)シュワン細胞、(h)象牙芽細胞、ならびに(i)副腎髄質。
【0025】
「色素胞」とは、通常は神経堤起源のものである動物色素沈着のための特殊化細胞を指す。色素胞の各々は、小胞体由来の色素含有細胞小器官を有する。これらの細胞小器官内に含入される色素の種類に基づいて定義される3種類の色素胞、即ち、黒色素胞、黄色素胞および虹色素胞が存在する(Ide, Curr. Topics Dev. Biol., 1986, 20:79-87; Bagnara, The Neural Crest as a Source of Stem Cells, pp.57-87, In:Developmental and Evolutionary Aspects of the Neural Crest, Maderson ed., John Wiley and Sons, 1987)。
【0026】
「黒色素胞」とは、メラニン色素を含有する色素胞である。メラニンは、メラノソームと呼ばれる細胞小器官に含入される。
【0027】
「黄色素胞」とは、黄色、橙色または赤色色素胞である。黄色素胞の色素は、プテリジンと呼ばれる環式化合物の一種である。グアノシントリホスフェートに由来するプテリジンは、プテリノソームと呼ばれる細胞小器官中に含入される。黄色素胞は、カロチノイド小滴と呼ばれる細胞小器官も含有することがある。
【0028】
「虹色素胞」は、プリンの結晶堆積物で構成される色素を含有する。結晶堆積物は、細胞小器官が光を散乱し、反射するためにそう名付けられた反射小板と呼ばれる細胞小器官中に含入される。
【0029】
「レムナント(remnant)」とは、切断術、疾患またはその他の因子による損害後に残存する構造の一部である。
【0030】
「部分的に破壊された」とは、(a)あるパーセンテージの構造塊が除去されるか、または(b)構造を構成する細胞の内部パターンおよび数が損害されるかまたは殺害される一方、いくつかの痕跡細胞および/またはパターンが残存する構造(例えば組織器官または付属器官、例えば肢)を指す。
【0031】
[好適な実施形態の詳細な説明]
本発明は、外傷、年齢、代謝的または毒性損傷、疾患、特発性損失または任意のその他の原因のために失われているかあるいは損害された身体組織、器官、構成成分または構造の復位のために分化転換により細胞を産生するのに用いられるということが意図される。
【0032】
別の態様では、分化転換は、外部構造、例えば指、足指またはこのような構造の一部を再生するために用いられる。
【0033】
さらに別の態様では、分化転換は、癌細胞に非悪性表現型をとらせることにより癌の治療のために用いられる。
【0034】
最後に、本発明によれば分化転換は、有害な自己抗体の除去のための自系細胞を提供するために用いられる。
【0035】
理論に結びつけずに考えると、(1)身体部分の再生、および(2)組織/細胞の分化転換に関して詳述した本方法は、「形態形成領域」と呼ばれる生物学的存在物の2つの相補的な、絡み合った、そして不可欠な態様を示す。本明細書中に記載した方法は、形態形成領域の再構成、ならびにいくつかの場合には、創造を生じる。
【0036】
形態形成領域は、それらの性質により、(1)損失身体部分の再生および(2)組織学的、細胞化学的、微細構造的および分子的表現型の分化転換だけでなく、(3)それらの適正位置における部分の内在的認識および復元を可能にする。言い換えれば、形態形成領域は、肢を再生するための本来の前方/後方、腹側/背側および右/左軸を保存する。「位置情報」または時としては「利き手(handedness)」といったように様々に呼ばれるこの特性は、特定の形態形成領域を支配する適切な遺伝プログラムの発現の一機能である(French et al., Science, 1976, 193:969-981; Wolpert, J. Theor. Biol., 1969, 23:1-47)。選択的遺伝子活性化に関するプログラムの進行を示す前記の(1)および(2)に関して本明細書中に記載した方法は、特定の形態形成領域(例えば右前肢)に充当し、したがってその構成成分の正確な位置情報による構造の(3)復元も内在的に成し遂げる。例えば、肢が右前肢の遠位上腕骨で切断される場合、再生する橈骨および尺骨は、右前肢に関しては適切な位置にあるが、左前肢に関してはそうではない。
【0037】
したがって本明細書中に記載した方法は、形態形成領域の再構成(例えば肢再生)、そしていくつかの情況においては、創生(creation)(例えば膵臓レムナントから肝臓)を提供する。
【0038】
本発明によれば、分化転換による再生は、その場で(例えば外傷または損傷の位置で)実施され得る。
【0039】
あるいは、器官または組織はin vitroで分化転換/再生され、次に身体に戻される。したがって、好ましい一実施形態では、7日間供給培地を含入する自己分解性プラスチック容器中に平板培養した細胞培養物中で種々の剤で処理し、次に肝血管に隣接して縫い合わされるとこれが新組織を血管形成し、肝臓にそれを組み入れることにより、ヒト膵臓細胞が再生され、肝細胞に分化転換される。
【0040】
組織および器官の再生のためのin vitro分化転換の使用は移植片の自系性を確保し、そして、医療に用いられる場合には、免疫抑制の必要性をなくし、移植片拒絶の機会を低減することにより、多大の利益を提供する。
【0041】
本発明の好ましい実施形態では、分化転換の方法は、(a)細胞を脱安定化または脱分化する工程、(b)脱安定化細胞を分化転換する工程、および(c)分化転換細胞を安定化して、それらを分化させる工程を包含する。
【0042】
本発明の実行に際しては、分化転換/再生される組織は、外胚葉、中胚葉、内胚葉、神経堤または外胚膜から得られる。
【0043】
脱安定化/脱分化は、以下により成し遂げられ得るが、これらに限定されない:
1.損傷部位のまたは培養中の細胞への剤の投与。
脱安定化を誘導するための剤としては、レチノイド(例えばレチノイン酸)、12−O−テトラデカノイルホルボール−13アセテート(TPA)、0.1M塩酸(pH<5)、高張食塩水(飽和NaCl)、銅キレート化剤(例えばトリエチレンテトラミンテトラヒドロクロリド)および重金属、例えば銅、亜鉛またはカドミウムが挙げられるが、これらに限定されない。投与される毒素の量は、毒素によって変わるが、しかし一般には1〜100μg/細胞培養物1mlである。
2.細胞外マトリックスの崩壊(例えばヒアルロニダーゼまたはコラゲナーゼの投与による)。
3.機械的または酵素的方法(例えばトリプシン処理、EDTA処理または反復的針外傷)による細胞の物理的分離。
4.外傷(下記参照)。
【0044】
脱安定化の好ましい方法は、標的組織の許容可能性、細胞外マトリックス構造の性質およびそれを一緒に保持する構成成分に依存している。例えば、皮膚細胞の脱安定化を実施する場合、基底膜のトリプシン処理がしばしば選択される方法である。
【0045】
手術、レーザー、貫通(例えば針)、化学的、熱、可視的または非可視的(例えばUVA)光、X線照射、感染、毒素または免疫応答により引き起こされる損傷を含めたあらゆる種類の外傷は、多数の組織において脱安定化を引き起こすのに非常に有効である傾向がある。実際、外傷は、器官および身体部分を自然に再生し得る動物における最も一般的な天然脱安定化因子である(例えばトカゲの尾または両生類の肢を切断する捕食者)。したがって、外傷は、再生過程の出発段階として用いられ得る。外傷が脱安定化を刺激する様式のいくつかを以下に挙げる:
(1)上皮の外傷は、通常は基底膜を崩壊させて、フィブロネクチンおよびラミニンのような基底膜構成成分の変化を生じる。これらの変化は次に、タンパク質、mRNAおよびDNAの合成に影響を及ぼすことが知られている(Cell Biology of Extracellular Matrix, Hay ed., Plenum Press, 1981)。
(2)外傷は、成長因子、サイトカイン、免疫グロブリンまたは検討中の細胞の分化状態に影響を及ぼすその他の物質を分泌する隣接細胞に影響を及ぼすことにより、細胞のミクロ環境における変化を生じ、そしてそれを分化させて、おそらくは正常レベルのこれらの因子の非存在下で増殖させ得る。さらに外傷は、それらが普通は接触するようにならない種類の細胞または体液と接触するようにさせ得るが、これは脱安定化も引き起こし得る。細胞のミクロ環境に及ぼすこれらの作用はすべて、細胞内シグナル伝達経路の変化を生じて、タンパク質合成および遺伝子発現における変化を引き起こす。
(3)外傷は、細胞ミクロ環境の変化により、細胞形状の変化(例えば平坦化対円形化)をもたらして、タンパク質および核酸合成の変化を引き起こし(Cell Biology of Extracellular Matrix、同上)、したがって細胞の分化状態に影響を及ぼす。細胞形状の変化は、表面(例えば細胞膜、細胞外マトリックス、その他の周囲細胞)の接着特徴といった因子に依存し得る。
(4)外傷は、脱安定化を引き起こし得る「創傷ホルモン」と呼ばれる物質の放出を生じ得る。
【0046】
外傷が哺乳類における脱安定化を刺激するために用いられ得る方法のいくつかの例は、下記の例18において提供される
【0047】
本発明によれば、脱安定化後、細胞は有効量の分化転換剤と接触させられる。分化転換剤の例としては、グアノシン、フェニルチオウレアまたはTPAが挙げられるが、これらに限定されない。
【0048】
最後に、細胞は有効量の安定剤および分化剤と接触させられる。例としては、β−カロチン、レチノイド、リボフラビンおよびプテリジンが挙げられるが、これらに限定されない。
【0049】
前記の脱安定化、分化転換および安定化試薬は、商業的に入手可能である(例えばSigma Chemical, St. Louis, MOから)。
【0050】
本発明によれば、これらの試薬の有効量は、細胞ミクロ環境(例えば細胞培地)中で約1〜約100μg/mlまたはレシピエント動物の体重当たりで約0.5〜約1,000mg/kgの広範な範囲である。
【0051】
in vitroでの細胞の分化転換のための試薬はすべて、それらの培地に直接添加されるということに留意すべきである。その場で再生を受ける哺乳類においては、脱安定化および分化転換剤の好ましい投与経路は、局所的である。処置される器官または組織が内部にある場合、直接投与は、針またはカテーテルにより、あるいは全身的になされる。
【0052】
安定化/分化剤は、好ましくは全身的に、最も好ましくは経口的、経腸的に、吸入により、エアゾールにより、直腸的などの形で投与される。
【0053】
本発明の代替的な実施形態では、分化転換剤および安定化/分化剤は、逐次的の変わりに実質的に同時に投与され、例えばグアノシンはβ−カロチンと一緒に投与される。好ましくは2つの剤は、数時間または数日間の間投与される。
【0054】
本発明の別の代替的な実施形態では、同一化合物が、分化転換工程および安定化工程のために用いられる(例えば、相対的に多量のレチノイン酸[細胞培養物中10−4M])。この実施形態では、脱分化工程(例えば機械的外傷、刃または針突刺しによる切断)は、分化転換/安定化剤の添加に先行する。
【0055】
分化転換/再生の過程における各工程は、用いられる剤、その用量、投与方法および標的組織に依存して、完了までに数時間〜数日を要する。例えば、哺乳類における肢再生を刺激するために、イモリ用にRoseにより開発された高張食塩水レジメン(J. Exp. Zool., 1944, 95:149-170)または25ゲージ針による反復突刺したがって、切断後3日間、1日3回用いられる。
【0056】
本発明によれば、細胞脱安定化期((例えば光学顕微鏡を用いて)組織学的に、および/または生化学的にモニタリングされ得る)は、細胞が、それらの表現型を限定する形態学的および生化学的特徴を失った時に完了すると考えられる。これらの細胞は、再生芽細胞に似てくる(即ち、それらは高い核対細胞質比を有し、および/または分化細胞の形態学的特徴を欠く)。例えば、切断肢の基部では、このような細胞は、イモリTriturus viridescensでは切断後約2週間観察される。
【0057】
分化転換期は、細胞が、それらの新しい表現型を限定する形態学的および生化学的特徴のいくつかを獲得したときに完了すると考えられる。例えば、特徴的縞表現型が推定筋肉細胞中に認められた時、または軸索および樹状突起が推定ニューロン中に認められた時である。
【0058】
安定化/分化期は、細胞が、それらの最終的に分化した形態学的および生化学的特徴のすべてを獲得した時に(例えば顕微鏡的および/または生化学的に、安定化/分化剤、例えばカロチノイド小滴、リボフラビンの堆積物を含有する内部貯蔵細胞小器官、またはプテリノソーム中のプテリジンを検出し得た時)、完了すると考えられる。
【0059】
さらに別の実施の形態では、本発明は、分化転換および/または安定化能力を有する新規の化合物の同定方法を提供する。候補化合物に関する好ましいスクリーニング系としては以下のものが挙げられるが、これらに限定されない:(a)水晶体に分化転換するイモリまたは哺乳類の眼の眼杯由来網膜色素上皮(RPE)細胞、(b)網膜ニューロンに分化転換するイモリまたは哺乳類眼のRPE、(c)肝細胞に分化転換する膵臓細胞、(d)別の色素沈着細胞型に分化転換する神経堤由来アホロートル色素胞、および(e)別の種類の神経堤誘導体に分化転換する哺乳類最終的分化神経堤由来細胞(例えばニューロンへのメラノサイト、骨への頭部結合組織、ニューロンまたは骨へのシュワン細胞等)。アホロートルを用いる好ましいスクリーニング系は、下記の例5に示される。
【0060】
種々の系における普遍的分化転換剤として作用するいくつかの前に同定された化合物(例えばアホロートル色素胞系における、イモリにおけるおよび哺乳類RPE系におけるグアノシン;哺乳類膵臓−肝細胞および哺乳類RPE系における銅枯渇)の能力に基づいて、任意の実験系における分化転換および/または再生を引き起こす任意の剤が、他の組織および他の動物における分化転換および再生を引き起こすための候補である。さらに、細胞(例えば神経堤細胞)を胚形成中の特定の経路に沿って分化させる剤は、成体における分化転換剤の候補である。
【0061】
したがって一実施形態では、ステージI候補化合物は、成熟成人皮膚メラノサイトを神経幹細胞に変換するそれらの能力に関して検査される。用量応答曲線は、別個のバイアル中で、約10−3μg/ml〜約100μg/mlの範囲の濃度(半対数単位濃度増大)で培養細胞を被験物質とともに同時にインキュベートすることにより生成される。細胞は、1〜21日間、被験化合物とともにインキュベートされる。用いられる幹細胞および所望の新細胞型に応じて分化転換の判定規準を用いて、光学および電子顕微鏡、生化学的試験および免疫学的ラベリングにより、細胞は分化転換の証拠に関して検査される。例えば、神経堤幹細胞へのメラノサイトの分化転換は、メラノソームおよびメラニンの損失として観察される。
【0062】
さらに別の実施形態では、ステージIに起因する細胞を最終的分化表現型、例えばニューロン、シュワン細胞、軟骨細胞および繊維芽細胞に変換するそれらの能力に関してステージII候補化合物が試験される。用量応答曲線は、別個のバイアル中で約10−3μg/ml〜約100μg/mlの範囲の濃度(半対数単位濃度増大)で、先に分化転換された培養細胞を第二の被験物質とともに同時にインキュベートすることにより生成される。細胞は、1〜21日間、被験化合物とともにインキュベートされる。用いられる幹細胞および所望の新細胞型に応じて分化転換の判定規準を用いて、光学および電子顕微鏡、生化学的試験および免疫学的ラベリングにより、細胞は再分化の証拠に関して検査される。
【0063】
前記の方法によりスクリーニングされ得る化学物質の例としては、プリンおよびピリミジン、ヌクレオシドおよびそれらの誘導体、レチノイド、カロチノイド、ラミニン、フィブロネクチン、成長因子、サイトカイン、オモクロム、チオウレア、キレート化剤および金属(例えば亜鉛、銅、カドミウム)が挙げられる。培地中に普通に存在する物質の枯渇または補給も、前記の方法によりスクリーニングされ得る(Brent et al., Am. J. Pathol., 1999, 137:1121-1142)。
【0064】
種々の分化転換系からの前記の実験的証拠、低毒性および良好な溶解性特性に基づいて、グアノシンは、本発明における分化転換剤として用いるための特に好ましい化合物である。したがって、アレチネズミにおいて、下記の例1に示すように、水晶体の外科的除去後のグアノシン(分化転換剤)とその後のβ−カロチン(安定剤)の経口投与は、RPEからの水晶体の再生をもたらした。この場合、脱安定化/脱分化因子は、水晶体を除去するために用いた手術により引き起こされた外傷であった、ということに留意すべきである。
【0065】
さらに別の代替的な実施形態では、グアノシンは、グアノシンモノホスフェート(GMP)、グアノシンジホスフェート(GDP)、グアノシントリホスフェート(GTP)、アデノシン、シトシン、チミジン、ウリジンおよびそれらのリン酸塩、あるいはカテコールアミン(例えばノルエピネフリンおよびエピネフリン)に置換され得る。
【0066】
前記の実験的証拠に鑑みて、銅は、本発明における分化転換剤として用いるためのもう一つの好ましい化合物である。したがって身体中(および特定組織中)の銅レベルに影響を及ぼす剤は、分化転換剤としての活性も有し得る。銅レベルの変化を引き起こす物質のいくつかの例としては、以下のものが挙げられる:
(I)金属、例えば亜鉛、カドミウムおよび鉄(Linder and Hazegh-Azam, Am. J. Clin. Nutr, 1996, 63:797S-811S)、
(II)銅キレート化剤、例えばトリエン(Rao and Reddy、同上)、ペニシラミン(Brewer, Copper Transport and Its Disorders, Leone and Mercer eds., Plenum Publishers, 1999)、
(III)酢酸亜鉛のような銅の吸収に影響を及ぼす剤(Brewer、同上)、
(IV)銅の代謝および/またはそれらの補因子としての銅の使用に影響を及ぼす酵素(例えばチロシナーゼ、スーパーオキシドジスムターゼ、ヒアルロニダーゼ);銅結合タンパク質(例えばセルロプラスミンまたはメタロチエイン)(Linder and Hazegh-Azam、同上)、
(V)銅結合タンパク質/酵素の合成または分解に影響を及ぼす物質(例えばレチノイン酸(Song and Levenson, Int. J. Vitam. Nutr. Res., 1997, 67:141-144))、
(VI)銅結合非タンパク質様化合物(例えばアスコルベート(Itoh and Eguchi, Dev. Biol., 1986, 115:353-362; Droudin et al., Free Radic Biol Med, 1996, 21:261-273))、種々のチオウレア(Masuda and Eguchi, Cell Structure and Function, 1984, 9:25-35)、グアノシン、アデノシン(Masuda and Eguchi, Inorganic Chemistry, 1990, 29:3631)、シトシン(Palaniandavar et al., J. Chemical Soc., 1996, 7:1333)およびそれらのリン酸塩。
【0067】
銅欠乏食(Yoshida et al., J. Neurooncol., 1993, 17:91-97)および細胞用の銅枯渇培地(Percival and Layden-Patrice, J. Nutr., 1992, 122:2424-2429)は、銅レベルを変えるための他の方法である。
【0068】
銅の脱分化および分化転換作用が引き出されると考えられる一方法は、最終的分化細胞に特徴的な物質を生成する酵素(例えば、メラニンの産生を導くチロシナーゼ)の補因子としてのその作用による。銅は、遊離グアノシンの量に影響を及ぼすことにより(Tu and Friederich, Biochem., 1968, 7:4367-4372; Maskos, Acta Biochemica Polonica, 1978, 2:101-111)、DNAおよびRNAに直接結合し(Iyengar, Acta Anat., 1983, 115:357-360; Wong et al., Can. J. Biochem., 1974, 52:950-958; Sorokin et al., J. Inorg. Biochem., 1996, 63:79-98)、これがそれらの分解をもたらす(即ち、鎖切断および断片化;Yamafuji et al., Enzymologia, 1971, 40:107-119; Dowjar et al., BioMetals, 1996, 9:327-335)ことにより分化転換を引き起こすとも考えられる。最後に、銅は血管形成性であり(Brem et al., Am. J. Pathol., 1990, 137:1121-1142; Yoshida et al., Neurosurgery, 1995, 37:287-293)、したがって銅の補給は組織の成長および分化を促進する。したがって、銅と同様の方式で作用する他の物質は分化転換剤の候補であると結論づけられる。
【0069】
本発明の分化転換剤として用いるための好ましい化合物の別の群としては、色素(例えばメラニン、オモクロム、ヘモシアニン、カロチノイド、フラボノイドおよびプテリジン)を生成する生化学的経路に関与する物質が挙げられる。本発明によれば、これらの化合物を試験するための好ましい実験系は、アホロートル色素胞系、または幹細胞が神経堤誘導体の完全系統に分化するクッパー(Kupffer)幹細胞系である(Nozue, Acta Anat., 1990, 107:188-197; Labat et al., Biomed. Pharmacother., 2000, 54:146-162)。
【0070】
本明細書中に開示した方法により同定される新規の脱分化、分化転換および安定化化合物は、それらの有効性および薬学的許容可能性に関してさらに検査され得る。好ましい剤は、以下の判定規準を満たす:
1.元のものとほとんど同様に機能する、反復毒性または外傷性損傷から組織/器官を生成または再生する能力(例えばアレチネズミにおける水晶体の再生で、これは透明性、幾何学的形状、光を集束し、調節する能力において元のものとほとんど同様である)、
2.最少局所性および全身性毒性(例えばグアノシンおよびβ−カロチン)、
3.迅速に、かつ相対的に少量で作用する能力、
4.易投与性医薬組成物に製造される能力。
【0071】
理論と結びつけずに考えると、動物の再生能力は、それらの食餌に決定的に依存している。大量のプリン、プテリジンおよびカロチノイドまたはこれらの化合物の各々の前駆体を含む食物を摂取する生物体は、分化転換をより容易に受け得る多能性細胞を保持する。分化転換に及ぼす食餌の影響は、幼生(草食)から成体(肉食)への両生類の成熟のような再生能力の損失により、そしてカロチノイド含有食物を欠いた食餌を摂る脊椎動物の損失した身体部分を再生する能力の大幅な低減により例示される。
【0072】
したがって、本発明によれば、脊椎動物、特に哺乳類における再生のための最適条件としては、以下のものが挙げられる:
6.損傷前に1か月間、9シス異性体、ならびにその他のカロチノイド、例えばルテイン、およびゼアキサンチンを含むβ−カロチン(1000mg/kg)を補充した食餌。これらの条件下で、高カロテン蓄積体である哺乳類(例えばアレチネズミおよびヒト)において、最適再生が観察される。大量のカロチノイド含有野菜を消費するヒト患者は、本明細書中に開示した方法のための特に良好な候補である。
7.電気的特性を促すための飽和HCl溶液の創傷表面への限局的局所適用による(例えば、1日2回、1時間の高張食塩水中への指基部の浸漬による)再生の部位の調製、
8.再分化工程中のUVスペクトルを含む天然光源を用いた、組織および種に応じて24時間当たり8〜16時間の光期間。
【0073】
前記の条件を用いた場合、最適再生は、中手骨−指節骨関節を含めた任意のレベルで事故により切断された幼児の指または足指のような、高密度の色素胞を有する小構造物において観察される。
【0074】
特定の種類の細胞を産生するためには、特定の剤、用量および以下の時期:脱安定化、脱分化、分化転換、安定化の間の各剤の曝露時間を選択する必要がある。
【0075】
適切な処置を選択するために、前記の各因子を系統的に変えることにより、作用のマトリックスが作製される。例えば、特定の種類の脊髄運動ニューロンを生成したい場合には、分化転換のための剤としてレチノイン酸を用いる。レチノイン酸が異なる半対数増分濃度で、例えば10−9モル〜10−4モルの範囲で試験され、他の因子は一定に保持されるマトリックスが設定される。これらの培養試験管の各々に関して、安定化期から生じた細胞は、脊髄運動周囲の特徴に関して組織化学的に検査される。このようにして特定濃度のレチノイン酸が選択されれば、本方法は、系統的に増大される曝露時間、例えば1日増分での1日から7日までの用量の曝露時間を有するマトリックスを設定することにより微調整される。脱安定化および安定化期中の剤は、特定の種類の細胞を生じるための真に適正の剤、その用量および曝露時間を選択するよう同様に変えられる。
【0076】
用量の範囲に関して使用するための出発点は、以下のように確定され得る:剤が何らかの種類の細胞培養中で用いられると報告されたことがあった場合、出発容量は文献に報告された用量とほぼ同じである。剤が細胞培養に用いられたことがない場合には、この出発用量は、細胞培養に用いられた文献中に報告された任意の同様の化学物質の用量である。剤が報告されたことがない場合、系統的増分範囲は、モル濃度でまたは重量で、選択される。細胞が特定用量で死亡した場合には、用量が高すぎる。
【0077】
細胞が特定用量で全く作用を示さない場合には、用量が低すぎるので、この方式での結果を一括し、手順を反復することにより、適正用量が選択される。
【0078】
因子が化学物質でない場合、因子は試験過程中は依然として系統的に変更される。例えば、因子がメスの使用により作られた外傷である場合、切開のサイズはマトリックス中で系統的に変更され、他の因子は一定に保持され、その結果生じる細胞型が組織化学的または免疫細胞化学的に同定され、分類される。
【0079】
別の実施形態では、本発明は、良性の最終的な分化細胞への癌細胞(例えば黒色腫細胞)の分化転換を誘導するそれらの能力を試験することにより抗癌剤をスクリーニングするための方法を提供する。好ましい実施形態では、特定患者由来のin vitro培養癌細胞を用いて、最少毒性および最高効率分化転換剤が先ず選択される。次に選定剤は患者に投与され、標準技法により癌の退行がモニタリングされる。このようにして、最適個別化抗癌治療が達成される。
【0080】
さらに別の実施形態では、本発明は、抗体依存性自己免疫疾患(例えば狼瘡および重症筋無力症)の進行の抑制方法を提供する。前記の方法は、これらの抗体に反応性のマトリックス含有固定化患者細胞による血液の定期的透析により、自己免疫疾患に罹患した患者の血中に存在する自己反応性抗体の力価を低下させることを包含する。本発明によれば、このような固定化細胞の非限定的供給は、同一患者由来の培養細胞のin vitro分化転換により得られる。これらは患者自身の細胞であるため、新規の望ましくない抗体は生成されず、副作用は最小限にされる。
【0081】
以下の作業例で本発明をさらに説明するが、それらは説明するよう意図されており、本発明の範囲を限定するものではない。
【0082】
例1:アレチネズミにおける水晶体の再生の刺激
材料および方法
切断レンズの再生の刺激に及ぼすグアノシンおよびβ−カロチンの作用を、モンゴルネズミ(Meriones unguiculatus)で調べた。
動物:4週齢モンゴルネズミ(Charles River Laboratories, Wilmington,MA)
一般条件
温度:
1〜23日目: 22℃
24日目: 26℃
25日目: 29℃
26日目: 32℃
27〜61日目: 35℃
光期間:12時間明期;12時間暗期
【0083】
表1.アレチネズミプロトコール群
【0084】
【表1】

【0085】
A=AIN93G(Dyets, Inc., Bethlehem, PAから入手可能な標準齧歯類餌)、C=正常銅の30%を含有する銅欠乏餌(正常銅=6mg/餌1kg;銅欠乏=30%正常=1.8mg銅/餌1kg)、T=0.5%トリエチレンテトラミンテトラヒドロクロリド(トリエン)、B=通常量の2倍のビタミンKを含有する1%Dunaliellaβ−カロチン(正常Vit.K=0.75mgVit.K/餌1kg;二倍Vit.K=1.5mg/餌1kg)、G=1%グアノシン。
【0086】
食餌(Dyets, Inc., Bethlehem, PA製造):
通常の食物摂取量に基づいて、動物が摂取するおよその量の化学物質を、以下のように概算する。グアノシンを含有する食餌に関しては、1000mg/kg/日のグアノシンを各動物に消費させた。β−カロチンを含有する食餌に関しては、1000mg/kg/日のβ−カロチンを各動物に消費させた。
動物実験室場所:PSL, East Brunswick, NJ
組織学実験室:Colorado Histo-Prep, Inc., Fort Collins, CO
【0087】
実験動物に前記の餌を摂食させて、虹彩上皮の脱分化を強化し、その後、水晶体への虹彩上皮の分化転換を導いた。標準AIN餌を摂食した対照群を含めた。実験を通して、毎日、免許取得獣医が動物を検査した。
【0088】
温度を4日間毎日3度漸増的に上げた後、水晶体の再生を助けると考えられる35℃の温度に達した時点で手術をした。各群から1匹の動物を27日目に屠殺して、ホルマリン中に保存した。
【0089】
以下の手術プロトコールを各生存動物に関して、28日目に追跡調査した:
1.1%トロピカミド(Bausch & Lomb, Tampa, FL)1滴を右目に滴下した。
2.ケタミンをキシラジンとともにIP注射することにより、動物を麻酔した。
3.ダイアモンドナイフ(Accutome, Malvern, PA)を用いて、右眼の角膜中で切断を実行し、これをVanas鋏(Miltex, Bethpage, NY)を用いて拡張し、切開周縁を約180〜270°にした。
9.手袋をはめた指で眼球上を静かに押して、Tyrell Loop(Miltex, Bethpage, NY)で水晶体を取り出した。
10.取り出した水晶体をホルマリン中に保持した。
【0090】
手術後、動物餌を標準AIN餌に変えたが、但し、AGBを摂取していた群は、AB餌を介してβ−カロチンの摂取を続けた。手術後、動物が餌をとるためにワイヤケージの蓋まで来なくてもよいように、いくつかのペレットをケージに入れた。
【0091】
毎週、麻酔をせずに、拡大鏡を用いて動物の眼を検査した。しかしながら、この動物は暗色眼を有するため、詳細はほとんど確かめ得なかった。
【0092】
61日目に、COにより動物を麻酔して、この動物を断頭した。頭部をデビッドソン固定液中に18時間入れた後、中性緩衝化ホルマリンに切り換えた。体部を中性緩衝化ホルマリン中で固定した。
【0093】
61日目に固定した施術眼すべてを、写真撮影した。実験の最後まで生き残った50匹の動物からの全頭部をColorado Histoprepに送った。施術眼を切断し、およそ中矢状平面までの連続5μ矢状切片を回転ミクロトームで切断した。全検体に関して、中矢状面積からの少なくとも50の5μ連続切片を調製した。組織学検査のためにルーチンにスライドを処理し、ヘマトキシリンおよびエオシンで染色した。
【0094】
結果及び結論
施術眼は、術後は平坦であった。いくつかの動物の眼は部分的にまたは完全に翌月にわたって閉じられたままであった。しかしながら、いくつかの動物の目は次第に平坦でなくなり、いくつかはほぼ正常に突出するように見えた。
【0095】
注目すべきことに、約40%の実験眼が、明らかに再生された水晶体を示した。これらはしばしば、虹彩色素上皮にそれらを連結する柄(イモリ水晶体再生で観察されるような)、ならびに明らかにメラノソームを含入した個々の水晶体細胞を示したが、これは、それらが色素上皮に由来したと同定する。多数の組織学的切片にわたって拡張されたこれらの水晶体は、発生学的に観察されるような、繊維形成の種々の段階における組織化水晶体細胞を含有する十分に形成された水晶体を示した。それらは一般に、嚢胞性または壊死性物質を伴わなかった。抽出ホルマリン固定全水晶体を検査し、各動物に関する再生水晶体の組織学的知見と比較した場合、実際にすべての場合において、少量の水晶体上皮以外はおそらくほとんど全水晶体が除去されており、再生水晶体は増殖していた残存物質に因るとは考えられなかった。虹彩色素上皮に対する柄、ならびに色素上皮からの誘導を示すメラノソームを含有する個々の細胞は、再生を確証した。
【0096】
施術眼のいくつかは、少しの水晶体物質も全く示さなかった(下記参照)。他のものは、術後に明らかに保持されていた水晶体物質を示した(水晶体上皮の2〜3の細胞でさえ残存しないよう全水晶体を取り出すのはしばしば不可能であるということは、ヒト白内障手術、ならびに実験モデルから周知である。これは、残存水晶体上皮が増殖し、水晶体移植片の機能を複雑にすることが知られているため、臨床的に問題である)。残存水晶体物質は、それが一般的に壊死性、嚢胞性であり、成熟水晶体繊維を示し、虹彩色素上皮との連結を有さず、2〜3枚の連続切片に及ぶだけであったため、そして他の組織学的判定規準により、組織学的に同定され得た。ホルマリン固定抽出水晶体の顕微鏡検査および写真は、ほとんどが全体的に無傷で取り出されたものの、すべてが少なくとも小上皮欠損を有することを示し、このことは、いくつかの上皮組織が後に残されていたことを示唆する。
【0097】
表2.生存動物に関する組織学的観察
【0098】
【表2】

【0099】
前記の表から分かるように、6つの生存対照動物(群101)はどれも再生水晶体を示さなかったが、4つは、増殖していた小残存上皮を示した。
【0100】
合計44匹の生存実験動物(群102〜108)のうちの18匹が、再生水晶体を示した(41%)。
【0101】
再生水晶体の質における群間の明らかな差は認められず、一般的に最も良好(全体的構築および細胞学において最大で、最も正常な外見)であったのは、群106(初期グアノシン餌)および群107(初期グアノシンおよびβ−カロチン餌)からであった。
【0102】
例2:アレチネズミにおける水晶体の再生を刺激するための強化プロトコール
1.アレチネズミにおける水晶体の再生を刺激するための改良プロトコール
アレチネズミにおける水晶体再生に関する以下の実験を実行して、すべてのさらなる試験のための実験プロトコールを改良し、組織学的および微細構造分析のためのさらなる検体を得た。
【0103】
36匹の3週齢モンゴルネズミをCharles River Laboratories(Wilmington,MA)から入手し、Product Safety Laboratories(East Brunswick, NJ)動物管理施設で1週間順化させる。高温(35℃)は不必要であると目下考えられているため、温度は、実験中はずっと22℃に保持する。それらを12時間明期/暗期の光期間に保持し、1週間の順化期間中、Purina Rat Chowを摂食させる。各々12匹の3群を用いる。
【0104】
食餌1 食餌2
(1) 0.1%酢酸亜鉛 AIN
(2) 1%グアノシン+1%β−カロチン 1%β−カロチン
(3) 対照AIN餌 AIN
【0105】
前記のトリエンを有する30%銅餌ではなく、酢酸亜鉛を使用する根本理由を以下に示す。酢酸亜鉛は、処方薬(ガルジン、Lemmon Co., Sellersville, PA)として入手可能である。さらにそれは副作用が少なく、したがってトリエンを有する銅欠乏餌から観察された死亡率が回避されるはずである。酢酸亜鉛の用量は、全身の銅を低下させるための齧歯類におけるその使用に関して発表済みの研究に基づいて選択される(Approved Package for NDA 02458 Galzin Capsules, 1997, FDA, Rockville, MD)。
【0106】
動物に食餌1を2週間与えて、RPEの脱分化を促す。アレチネズミにおける最も安全で、かつ最も望ましい麻酔であるメトキシフルランを用いて動物を麻酔する(Norris, Lab. Anim., 1981, 15:153-155)。例1に記載した手法を用いて、水晶体除去術を実施した。動物に食餌2を6週間与える。これは、前記のプロトコールより2週間長く、前記で実証された水晶体再生法の達成を可能にするはずである。
【0107】
食餌1の終了時に、2匹を電子顕微鏡(EM)用に、そして2匹を組織学検査用に、各群から屠殺する。食餌2の終了時に、EM用に4匹を、組織学用に4匹を、各群から屠殺する。
【0108】
固定方法は、前記と同様である。
【0109】
屠殺動物を断頭する。その検体を組織学実験所に送り、そこで眼を切除する。これは、固定するまでの眼の取扱いを最小限にするので、すぐに眼の切除をするより好ましく、組織学者がブロック上に眼を適正に配向するのに役立つ。
【0110】
2.水晶体再生に用いられる活性化合物の用量調整および投与方式
48匹の3週齢モンゴルネズミをCharles River Laboratoriesから入手し、各々6匹の以下の群に分けた。
【0111】
レジメン
1. 対照 AIN餌
2. グアノシン 餌中0.05%
3. グアノシン 餌中0.10%
4. グアノシン 餌中0.50%
5. グアノシン 餌中1.00%
6. グアノシン AIN餌;水晶体切除術後に注射されるグアノ
シンの飽和溶液
7. グアノシン AIN餌;水晶体切除術後に注射されるグアノ
シンの半飽和溶液
8. グアノシン AIN餌;水晶体切除術後に挿入されるグアノ
シンの結晶
【0112】
群1〜5は、前に用いられた容量より少ない用量が水晶体再生を刺激するのに適しているか否かを研究者に確定させ得る。実験群6〜8は、餌中に提供するのではなく、水晶体切除眼中にグアノシンを単にしみ込ませるのが水晶体再生を刺激するのに適切であるか否かを確定させる。これらの条件は、イモリにおける水晶体への腹側虹彩のグアノシン誘導体媒介性分化転換に関して発表済みのレジメンと同様である(Eguchi and Watanabe, J. Embryol. Exp. Morphol., 1973, 30:63-71)。残りのプロトコール(即ち、光期間、食餌1の長さ、水晶体切除術等)は、前記(パート1)と同一である。食餌2は、常にこの実験用のAINである。
【0113】
3.水晶体再生実験の標準化
本実験の目的は、将来的研究のための段階の標準化シリーズを作製することである。
【0114】
98匹の動物をCharles River Laboratoriesから入手し、2つの等群に分ける。
【0115】
食餌1 食餌2
(1) 対照(AIN) AIN
(2) 1%グアノシン+1%β−カロチン 1%β−カロチン
【0116】
動物に食餌1を2週間、次に食餌2を6週間与える。食餌1期間中、3日毎に、各群から3匹を屠殺する。食餌2の最初の4週間は、3日毎に3匹を各群から屠殺する。
【0117】
食餌2の最後の2週間、毎週、各群から3匹を屠殺する。他の条件は前記と同様である。検体を前記と同様に組織分析用に調製する。
【0118】
例3:マウスおよびラットにおける水晶体再生
Jackson LabsからのREJマウスの24匹の3週齢系統を入手する。それらを2つの等群に分ける。
【0119】
食餌1 食餌2
(1) 1%グアノシン+1%β−カロチン 1%β−カロチン
(2) 対照AIN餌 AIN
【0120】
温度は、実験中はずっと22℃に保持する。光期間は、12時間明期/暗期である。動物には食餌1を2週間与える。次にケタミンおよびキシラジンで動物を麻酔した後、アレチネズミに関して前記したのと同様に水晶体切除術を実施する。次に動物に食餌2を6週間与える。食餌1の終了時に、EM用に2匹および組織学用に2匹を、各群から屠殺する。食餌2の終了時に、EM用に4匹および組織学用に4匹を屠殺する。
【0121】
Sprague Dawleyラットを用いて、同一プロトコールを反復する。
【0122】
例4:哺乳類(アレチネズミ)における網膜再生の刺激
イモリおよびその他の両生類は、外傷または実験的網膜剥離後、網膜色素沈着上皮(RPE)から神経網膜を再生することができる(Reyer, pp.309-390, In:Handbook of Sensory Physiology VII, Crescitelli ed., Springer-Verlag, 1977)。水晶体を再生できないいくつかの両生類でも、網膜は再生することができる(Reyer、同上)。水晶体再生を可能にした同一プロトコールは、網膜(神経網膜、光受容器)再生も可能にすると考えられる。
【0123】
68匹の5週齢モンゴルネズミをCharles River Laboratoriesから入手し、2つの等群に分けた。
【0124】
食餌1 食餌2
(1) 1%グアノシン+ 1%β−カロチン
(2) 対照AIN餌 対照AIN餌
【0125】
β−カロチンの好ましい供給源は、例えばHenkel Corp., La Grange, ILから市販されている緑藻類のDunalielaである。前記のプロトコールと同様に、食餌1を19日間、食餌2を6週間用いる。15日目に、両生類(例えば、Hasegawa, Embryologia, 1958, 4:1-32; Stone, J. Exp. Zool., 1950, 113:9-32; Keefe, J. Exp. Zool., 1973, 184:185-206)または哺乳類(例えば、Mervin et al., Am. J. Ophthalmol., 1999, 128:155-164; Chon et al., Retina, 1996, 16:139-44; Takeuchi et al., Invest. Ophthalmol. Vis. Sci., 1995, 36:1298-305)に関して発表済みの技法あるいはこれらの技法の変法を用いて、実験的網膜剥離を右目に施す。
【0126】
剥離をもたらした後1日目に4匹を屠殺し、次に4週間、毎週4匹を屠殺する。6週間の終了時に、残りの動物すべてを屠殺する。右目を組織学的分析用に調製する。
【0127】
例5:分化転換剤に関するアホロートルアッセイ系
一連の分化転換実験をアホロートルで実行した。これらの実験は、分化転換および/または安定剤を発見し、比較するためのアッセイとしてのこの方法の実用性を実証した。
【0128】
この両生類皮膚アッセイ系において分化転換因子として銅枯渇が作用することを示す、本明細書中に提示した証拠は(ラット膵臓における肝細胞分化転換系への分化転換因子であると終結的に実証されているのと同様に)、(1)分化転換因子は脊椎動物では普遍的である傾向があり、(2)あるアッセイ系で同定された因子がすべての脊椎動物において、ならびにいくつかの異なる器官系において作用すると思われる、という以前に標示された記述を補強する。
【0129】
このアッセイ法は、下記のように、GMP(グアノシン5’−モノホスフェート)、cGMP(グアノシン3’,5’−環状モノホスフェート)ならびに酢酸亜鉛およびイノシトールの分化転換剤としての同定をもたらした。
【0130】
幼生アホロートルは、薄い基底膜上に表皮を有し、その下には厚いコラーゲン層(光学顕微鏡用にゴモリトリクロームで染色した場合は緑色)が存在する。3種類の細胞のみが真下に存在し、コラーゲン層中にわずかに埋まっている−(a)繊維芽細胞、これは一般に紡錘形であり、特徴的光学および電子顕微鏡的外観を有し、(b)黒色素胞、これは、多数の円形または卵形黒色メラノソーム、ならびにいくつかのプレメラノソームを含有し、そして(c)黄色素胞、これはプテリノソームとして知られている細胞小器官を含有する。これらは、光学顕微鏡では空胞のように見え、電子顕微鏡では小束状または集束性層化物質を有する空胞のように見える。概して、メラノソームは通常は黒色素胞中にのみ見出され、プテリノソームは黄色素胞中にのみ見出される。Frostが提示し、Bagnaraが再検討した証拠は、グアノシンは、幼生アホロートルに与えると、分化転移剤として作用して、微細構造研究により示されているように、黒色素胞を黄色素胞に変換させる、ということを示した。
【0131】
アホロートルはすべて、実験開始時には体長3〜5cmであって、Indiana University Axolotl Colony, Bloonington, INから入手した。それらをウシ肝臓(下記の例A)または魚ペレット(Indiana University Axolotl Colony, Bloonington, IN )(下記の例BおよびC)で保持した。
【0132】
温度は22℃で、12時間明期/12時間暗期の光期間を用いた。水は、給餌前に毎日取り換え、給餌の1時間後に動物を取り出した。それらにはほぼ毎日給餌した。1日おきに、実験物質をウシまたは魚ペレットの上にまき散らした。実験試薬はすべて、Sigma(St. Louis, MO)から入手した。例Aでは、動物を、底が中央で平坦に盛り上がった0.75クォートステンレススチール皿中に保持した。給餌のために、ウシ肝臓を、一部水中で一部水から出た盛り上がった底に置いた。これにより、水中の餌を動物に感知させるが、ウシ肝臓上に撒かれたcGMPが洗い落とされないようにさせる。例BおよびCに関しては、動物を、個々の280mlプラスチック容器中に保持し、これを週2回取り換えた。給餌のために、動物を、一側に勾配を有する小型プラスチック容器(計量カヌー)に移した。ペレットを、一部は水中で一部は水から出ている勾配上に置いた。これにより、水中の餌を動物に感知させるが、ペレット上に撒かれたcGMPが洗い落とされないようにさせる。専ら、Deer Park Spring Water(Breingsville, PA)を用いた。
【0133】
オリンパスSZ立体顕微鏡下でほぼ毎週、動物を観察し、屠殺前または死亡後すぐに(数時間)、そのほとんどを写真撮影した。10%ホルマリン中で動物を固定し、皮膚の4mmパンチ生検を、Charles River Laboratories(Wilmington, MA)が組織学検査用にルーチンに処理した(ゴモリトリクローム)。オリンパス(Woodbury, NY)BX40顕微鏡でスライドを検査した。
【0134】
3匹の動物(対照1匹およびGMP摂取動物2匹)を2mmパンチで生検し、Trump固定液で24時間固定し、電子顕微鏡用にルーチンに処理した。それらを2%四酸化オスミウム中で後固定し、アルコールシリーズで脱水して、エポン−アラルダイト(1:1)中に包埋した。処理および写真撮影は、Electron Imaging Facility, Rutger’s University, Piscataway, NJで実施した。
【0135】
例A
前記の方法により22日間、1匹のアホロートルにcGMPを給餌し、その後それは死亡した。ゴモリトリクローム染色皮膚の検査は、いくつかの細胞中でメラノソームおよびプテリノソームの存在を示した。これは、黄色素胞への黒色素胞のcGMPにより引き起こされた分化転換の証拠である。動物は、検査によって、より明色であることもあった。約1週間後に屠殺した対照動物は、両細胞小器官を有するいかなる細胞も示さなかった。
【0136】
例B
2匹のアホロートルに67日間、前記と同様にGMPを給餌した。1匹の皮膚の電子顕微鏡検査は、メラノソームおよびプテリノソームの両方が存在する多数の細胞を示した(図1)。いくつかの細胞は、メラノソームとプテリノソームのハイブリッドと思われる細胞小器官を示した(例えば、不規則な空胞構造はプテリノソームと類似するが、しかしメラノソーム中に認められるような暗色物質が存在した)(図2および図3)。このような細胞小器官は、細胞小器官レベルでの分化転換を実証すると考えられる。第2の動物は、ゴモリトリクローム染色光学顕微鏡切片において、プテリノソームとメラノソームの両方を含有する細胞の存在により分化転換の明らかな証拠を示した(図4)。これらの動物は、検査によって顕著により明るく、黄色の色相を有した。やはり67日目に屠殺した対照動物は、概して、ハイブリッド細胞小器官を有する細胞または両型の細胞小器官を含有する細胞は伴わなかった。
【0137】
例C
2匹の動物に、前記と同様に酢酸亜鉛を給餌した。1匹は7日後に死亡し、1匹は12日後に死亡した。対照動物は、2匹目の亜鉛供給動物死亡から1週間後に屠殺した。ゴモリトリクローム染色スライドは、メラノソームおよびプテリノソームの両方を有する細胞を明示し、したがって酢酸亜鉛が黒色素胞の黄色素胞への分化転換を引き起こしたという証拠を提供した。対照動物は、概して、ハイブリッド細胞小器官を有する細胞または両型の細胞小器官を含有する細胞は伴わなかった。
【0138】
動物にミオ−イノシトール、トリエン(トリエチレンテトラミンテトラヒドロクロリド)、グアノシンおよびシトシンを給餌する同様の実験を実施した。肉眼的観察および動物全体の写真に基づいて、グアノシン(Frostにより前に報告されたように)、トリエンおよびミオ−イノシトールは黒色素胞を黄色素胞に分化転換する剤であるが、一方シトシンは黄色素胞を黒色素胞に分化転換すると思われる。
【0139】
例6:網膜再生の刺激による網膜変性により盲目になったイヌにおける視覚の回復
イヌ(雄ミニチュアシュナウザー、暦年齢4歳、体重約10kg)がしばしば対象物に衝突することに飼い主は気づいた。経験を積んだ眼科獣医は、以下の検査において以下の観察を行った後、突発性網膜変性との診断を下した(O’Toole et al., Veterinary Record, 1992, 130:157-161; Miller et al., J. Vet Res., 1998, 59:149-152)。イヌは全盲として振る舞った。瞳孔は完全に拡張した。緑内障、損傷または代謝性疾患の適応症は認められなかった。犬にグアノシン(Sigma; St. Louis, MO)を茶さじ1/2杯/日(2.5g/日、約250mg/体重1kg/日)およびベタテン(Henkel、7.5%Dunaliellaβ−カロチン)茶さじ1/2杯/日(2.5g/日、約18.75mg/体重1kg/日)の投与を開始した。
【0140】
2週間後の検査は、イヌは依然として臨床的には盲目であるが、しかし瞳孔は、明るい集束光で刺激するとわずかに収縮することを明示した。グアノシンおよびベタテンの投与を続けた。
【0141】
4週間後、イヌを再び検査した。瞳孔反射は前の検査で認められたのと同様であった。眼科医がイヌの2〜3フィート前に綿の小片を落とすと、イヌはほとんどの場合それらが床に落ちるのを目で追った。綿は音も臭いもせず、感知もできないので、イヌがそれを見ることができたのは明らかだった。
【0142】
SARDの原因は未知であり、予測的に成功した治療は発表されていない。組織学的には、棒細胞および円錐細胞外部セグメントの急速な損失とその後の網膜層の変性が認められる。文献に出現した多くの遺伝的イヌ網膜変性に対比して、網膜の異なる帯域は同様には影響を受けない。
【0143】
SARDのほとんど見込みのない予後のために、そしてこのイヌの視力の明らかな改善のために、本明細書中に前記した分化転換プロトコールがこのイヌの視力の実証可能な改善に関与したと、眼科獣医は結論した。この例では、網膜の変性は(SARDの最終的病因であるものは何でも)、脱安定化(脱分化)因子として働いた。グアノシンは神経網膜へのRPEの分化転換剤として、そしてβ−カロチン(ベタテン7.5%として)は安定剤として働いた。
したがって、前記の方法は、神経網膜への網膜色素上皮の分化転換を導き、網膜を再生し、網膜変性により盲目になったイヌに、測定可能程度に視力を回復した。
【0144】
4週間後に再びイヌを検査した。明るい光より弱い光でより良好に明らかに見ることができる、と飼い主は確信した。眼科獣医はイヌを検査し、同意した。イヌの前に綿片を落とすと、イヌはほとんどの場合に綿を目で追った。イヌは、標準検査室の光では、弱い光の場合のように高頻度に綿を眼で追うことはなかった。
【0145】
イヌは経口β−カロチンをより高用量で継続することを眼科獣医は示唆した。視覚機能は以前の検査より目に見えて良好になった、と眼科獣医は結論した。
【0146】
例7:ヒト膵臓における島細胞の再生
ヒト膵臓からの島細胞を再生させる。ヒト膵臓の一部(10gまたはそれ以上)を個体から切除する。Githens等(In Vitro Cell. Dev. Biol., 1994, 30A:622-635)と同様の培養方法を用いて、細胞をin vitroで培養する。次に、レチノイン酸(1〜10μg/ml)の添加により、細胞を脱安定化する。グアノシン(1〜100μg/ml)の添加により、分化転換を成し遂げる。次に安定剤としてカロチノイドを投与する(テトラヒドロフラン中1〜30μg/ml)。その結果生じた島細胞を培養物中で増殖させる。次に、血流または膵臓血管への注射により、島細胞を患者の身体中に再移植する。島細胞の自系性は、免疫抑制の必要性を無くす。好ましくは、5歳以下の併発疾患を有さない幼児または小児が、この手法のための対象である。
【0147】
例8:ヒト肝臓肝細胞の再生
肝細胞をヒト膵臓から再生する。ヒト肝臓の一部(例えば1〜100g)を個体から切除する。細胞をin vitroで培養する。次に、レチノイン酸(1〜100μg/ml)の添加により、細胞を脱安定化する。グアノシン(1〜100μg/ml)の添加により、分化転換を成し遂げる。次に安定剤としてカロチノイドを投与する(β−カロチン1〜100μg/ml)。その結果生じた肝細胞を培養物中で増殖させる。次に、肝細胞を患者の身体中に再移植する。肝細胞の自系性は、免疫抑制の必要性を無くす。好ましくは、5歳以下の併発疾患を有さない幼児または小児が、この手法のための対象である。
【0148】
例9:
肝臓中のクッパー幹細胞または器官中の他のマクロファージをin vitroで培養し、種々の剤で処理して、他の細胞型、例えばメラノサイト、骨、結合組織、ニューロンへのそれらの分化転換を促す(Sichel et al., Pigm. Cell Res., 1997, 10:271-289; Labat et al., 2000、同上)。
【0149】
例10:神経堤由来細胞の分化転換
神経堤由来の最終的分化細胞の、1または2段階法による、幹細胞またはその他の神経堤由来最終的分化細胞への分化転換を誘導する。好ましい例としては、メラノサイトまたは松果体細胞のニューロン、骨または筋肉への、頭部結合組織の骨への、シュワン細胞のニューロンまたは骨への分化転換等が挙げられる。
【0150】
細胞を先ずin vitroで分化転換剤、例えばグアノシン、フェニルチオウレアまたはTPA(1〜100μg/ml)と接触させる。次に細胞を分化剤、例えばβ−カロチン、レチノイド、リボフラビンまたはプテリジン(0.1〜100μg/ml)と接触させる。
【0151】
1.ニューロンへのメラノサイトの分化転換によるパーキンソン病の治療
パーキンソン病患者を、患者自身のメラノサイトからin vitroで分化転換させた神経細胞の脳移植片を用いて治療する。メラノサイトを収穫し、患者の背中から採取した成人ヒト皮膚の生検から培養する。環状グアノシンモノホスフェート(cGMP)を20μg/mlの濃度で含有する培地中で1週間のインキュベーションにより、細胞を脱分化させる。1週間の終了時に、細胞はメラノソームおよびメラニンの損失を含めた脱色素沈着の証拠を示す。塩基性繊維芽細胞増殖因子(30ng/ml;Sigma, St. Louis, MO)を含有する培地中でのインキュベーションにより、細胞を分化転換させ、安定化させる。1週間後、培養中の神経および神経膠細胞の外観を顕微鏡的および/または生化学的および/または免疫学的に確証する。次に神経細胞を収穫し、胚細胞移植片に関して実証された方法(Brundin et al., Brain, 2000, 123:1380-1390)を用いて、パーキンソン病患者における自系脳移植片のために用いる。
【0152】
2.水晶体へのメラノサイトの分化転換による白内障の治療
白内障患者の水晶体細胞を、培養物中で増殖させた分化転換細胞を用いて取り換える。メラノサイトを収穫し、患者の背中から採取した成人ヒト皮膚の生検から培養する。銅枯渇培地中で1週間のインキュベーションにより、細胞を脱分化させる。次に細胞を、アスコルビン酸0.2mMを含有する培地中で1週間のインキュベーションにより、水晶体細胞に分化転換させる。培養中の水晶体細胞の外観をクリスタリンに関して免疫染色により同定する。新しい水晶体細胞を収穫し、白内障のために眼内レンズを必要とする患者における自系移植片のために用いる。
【0153】
3.軟骨細胞へのメラノサイトの分化転換による膝損傷の治療
膝軟骨損傷患者の組織を、培養物中で増殖させた分化転換細胞を用いて取り換える。メラノサイトを収穫し、患者の腕から採取した皮膚生検から培養する。細胞を先ず、トリエチレンテトラミンテトラヒドロクロリド1〜100μM/lの存在下でそれらを1週間培養することにより、神経堤幹細胞に脱分化させる。次に、トランスフォーミング増殖因子β(TGF−β;Sigma, St. Louis, MO)を含有する培地中でのインキュベーションにより、細胞を軟骨細胞に分化転換させる。新しい自系軟骨組織を患者に移植する。
【0154】
4.虹色素胞への黒色素胞の分化転換
細胞培養中に多量(30〜100μg/ml)のグアノシンを用いる1段階法により、あるいは皮膚への局所適用により、または食餌により、黒色素胞の虹色素胞への形質転換を誘導する。
【0155】
5.ニューロンへの黒色素胞の分化転換
中枢神経系のメラノソーム含有色素細胞の分化転換は、中枢神経系における損傷神経の再生を可能にする。グアノシン(1〜100μg/ml)を用いてメラノソーム含有色素細胞を先ず黄色素胞に、次にレチノイン酸(供給組織、培養条件および所望のニューロンの種類によって、10−9〜10−3M)を用いてニューロンに分化転換させる。
【0156】
例11:良性細胞への悪性細胞の分化転換による癌の治療
2段階法により、患者において、悪性細胞の良性の最終的分化細胞への分化転換を誘導することにより、癌(例えば黒色腫または肉腫)を治療する。患者から得た培養癌細胞を用いて、一群の標準分化転換剤をスクリーニングして、悪性細胞を良性細胞に(例えば黒色腫細胞を良性黄色素胞に)転換するのにどの剤が最低毒性かつ最も効率的であるか否かを確定する。好ましい方式で、分化転換剤、例えばグアノシン(およびその他のプリン)、銅枯渇剤、フェニルチオウレアまたはTPAを、分化剤、例えばカロチノイド(例えばβ−カロチン、カンタキサンチン)、レチノイド、リボフラビンまたはプテリジンとともに、癌細胞を分化転換し、増殖停止を引き起こすそれらの能力に関して試験する。その結果生じる分化転換細胞の良性表現型を、生化学的および免疫学的方法により、ならびに有糸分裂活性、増殖および転移能力の接触抑制を検定することにより、確証する。次に選定分化転換剤(単数または複数)を患者の腫瘍に局所的に、注射により、または全身的に適用する。個々の患者の黒色腫はin vitroスクリーニングのために用いられるため、腫瘍の治療は最適化される。
【0157】
例12:哺乳類における肢再生の誘導
1.哺乳類の子孫における再生能力を増大するための方法
哺乳類新生仔(例えば、齧歯類、ウサギ)における高再生能力は、妊娠雌が高レベル(4〜1,000mg/kg)の分化転換および安定化剤、例えばそれぞれグアノシンおよびβ−カロチン(各物質に関して4〜1,000mg/食餌1kgまたは食餌の1%)を摂取することにより誘導される。子孫は、それらの再生能力増大を反映する多数の分化転換化またはハイブリッド色素胞を有すると予測される。前記の子孫の再生能力増大を、前記例に記載したその場および/またはin vitro組織再生アッセイ(単数または複数)を用いて検査し、分化転換および安定化剤を摂取しなかった妊娠雌由来の子孫の再生能力と比較する。
【0158】
2.アレチネズミまたはフェレットにおける切断指の再生
主にβ−カロチンをレチノールに転化するよりむしろそれを多量に貯蔵するアレチネズミまたはフェレットでは、1%Dunaliellaβ−カロチン(Henkel Corp., La Grange, IL)を有する銅欠乏食餌を1ヶ月間、その後それらの食餌の2%のβ−カロチンを含有する銅正常食餌を3ヶ月間、動物に給餌することにより、切断指は再生される。指(好ましくは、他の疾患を伴わない動物の)を切断すると、数ヶ月内に再成長する。
【0159】
3.小児における切断指の再生
切断された指を有した12歳未満の小児(最適には他の疾患を有さない幼児)は、4mg/kgのβ−カロチンを毎日3ヶ月間消費することにより、失った指を再生する。指基部の先端を先ず局部麻酔下で外科的に切開し(脱安定化/分化因子として機能する外傷)、指を小室中に35〜40℃で終日保持する。出血を止める。指は6か月で再生する。
【0160】
4.成人における切断付属器官の再生
手首で切断された手を有する成人(好ましくは青年で、他の疾患、例えば糖尿病を有さない)は、失った付属器官を再生する。ウォルフの単細胞皮脂腺を、患者の手掌から採取した生検から単離し、in vitroで培養する。これらは、プレメラノソームおよび皮脂小滴の両方を含有する手掌、足裏および瞼の皮膚の基底板中の細胞である(Wolff, Lancet, 1951, 888-889; Pelfin et al., G. It. di Derm., 1970, 165:1-5)。適切な分裂促進剤(例えば表皮増殖因子)の培地への添加により、細胞を集密増殖させる。グアノシンを軟膏基剤中で腕基部に局所的に適用し、3ヶ月間閉鎖包帯をする。これらの3ヶ月間、患者は300mg/日のβ−カロチンを摂取する。局所麻酔下で再切開した創傷表面に、培養細胞を定期的に高密度で適用する。手が再生する。
【0161】
例13:自己免疫疾患の進行の予防方法
重症筋無力症(患者の筋肉に対する損害を引き起こすアセチルコリン受容体に対して向けられる血中の抗体の存在により特性化される)の進行は、筋細胞への患者のメラノサイトのin vitro分化転換と、その後の患者の血液から自己抗体を取り除くためのこれら新規生成自系筋細胞の使用により防止される。新しい筋細胞を先ず、血液は進入させるが、細胞を残存させる膜またはメッシュ中に置く。これらの固定化細胞を次に、透析機と同様の滅菌装置に入れる。週1回、患者は透析を受ける。有害抗体は体外筋細胞に付着し、身体に戻らない。このようにして、疾患の進行を防止する。
【0162】
例14:良性表現型への細胞の分化転換による黒色腫の治療
材料および方法
ヒト黒色腫細胞株G−361を、アメリカ培養細胞コレクション(ATCCカタログ番号CRL−1424、Manassas, VA)から凍結保存状態で購入した。受理時に、凍結細胞を含入する試験管を、2分未満の間、試験管の底1/3を渦巻かせて、37℃水浴中で急速解氷した。その後の過程はすべて、滅菌技法の標準的方法を用いて実行した。細胞を、5mlの予備加温McCoyの5A変法培地(Life Technologies, Rockville, MD)を含入するT−25フラスコに移し、加湿COインキュベーター中で37℃でインキュベートした。約24時間後、元の培地を除去し、新鮮な培地と取り換えて、細胞を約70〜80%集密度に達するまで増殖させ、必要な場合は培地を2〜3日毎に取り換えた。この時点で、周知のトリプシン−EDTA継代培養法を用いて、低細胞密度でLeighton管中で細胞を継代培養した。継代培養後、細胞の増殖を48時間再確立させた後、薬剤を投与した。
【0163】
初期ヒト黒色腫培養の顕微鏡観察は、異質細胞集団を明示した。少数の細胞が正常メラノサイト表現型に類似した。検出可能量のメラニンを細胞内に示す細胞は非常に少なかった。大多数の細胞は、形態的に上皮であると思われた。しかしながら、その他の細胞表現型が、繊維芽細胞型細胞、三角形細胞および多核を有する大型細胞を含む少数で観察された。観察された顕微鏡的表現型異質性は、染色体数に関して異質集団を示すATCCにより示された核型分析に匹敵した。
【0164】
その後、テトラヒドロフラン中のβ−カロチンをMcCoyの5A変法培地に添加して、最終濃度を約33mg/ml(最終濃度0.5%THF)とした。非補充培地の除去後、この補充培地をLeighton管に添加し、7日間の実験期間中、2日毎に取り換えた。7日の終了時に、培養物をメタノール中で固定し、カバーガラスをギムザ染色した。
【0165】
結果
β−カロチンは、ヒト黒色腫細胞培養に劇的作用を及ぼした。対照培養との比較において、出発集団の多数のセグメントが実験期間中に死んだ。残存した細胞のうち、ほとんどが三角形形態および多数の核を有し、神経細胞と一致し、あるいは紡錘形で、神経膠細胞または神経線維鞘(シュワン)細胞と一致した。広範な細胞死は、7日の実験期間の初期に起こり、残存細胞は分裂するように見えなかった。残存細胞集団中に有糸分裂像は観察されなかった。
【0166】
結論
β−カロチンは、形態学的に良性のニューロンおよび神経膠/神経線維鞘細胞表現型への黒色腫細胞の分化転換および安定化を引き起こすと考えられる。良性表現型に分化転換されなかった悪性細胞は、殺害された。
【0167】
例15:幹細胞の作製ならびにニューロンおよび神経膠または神経線維鞘細胞への分化転換
実験I:幹細胞の作製
方法:前記の例14に記載した黒色腫細胞株G−361を用いて、グアノシンをMcCoyの5A変法培地に添加して、最終濃度を3mcg/mlとした。この補充培地を、非補充培地の除去後、Leighton管に添加し、7日間の実験期間中、2日毎に取り換えた。7日の終了時に、培養物をメタノール中で固定し、カバーガラスをギムザ染色した。
【0168】
結果:7日の実験期間中、グアノシンは、多数の細胞が核対細胞質比増大を示すような全体的集団における表現型変化を誘導した。神経表現型と一致する三角形細胞、ならびに形態学的に種々の神経膠または神経線維鞘細胞に類似する細胞の数の増大が認められた。2つの樹状「角」を細胞の一端に、そして長い軸索様突起を他端に有する神経的形態を示す多数の細胞が観察された。7日の実験期間終了までに、これらの細胞は数が増え、容易に観察された。初期培養中に存在するすべての表現型のいくつかの例は、この用量レベルでのグアノシン処理後にも存在した。
【0169】
意義:グアノシンは幹細胞の生成を誘導し、そしてそれはさらに、ニューロンおよび神経膠または神経線維鞘細胞になるようこれらの細胞のいくつかを刺激したと考えられる。幹細胞が作製されたという事実を支持する因子としては、高核対細胞質比を示す細胞数の増大、そして下記のように、グアノシンに、その後β−カロチンに曝露された細胞は形態学的および行動的に、β−カロチンに曝露されただけの細胞とは(そして対照黒色腫細胞と比較して)多少異なる応答を示したことが挙げられる。
【0170】
実験II:ニューロンおよび神経膠または神経線維鞘細胞への分化転換
方法:前記の例14に記載した黒色腫細胞株G−361を用いて、グアノシンをMcCoyの5A変法培地に添加して、最終濃度を3mcg/mlとした。この補充培地を、非補充培地の除去後、Leighton管に添加し、7日間中、2日毎に取り換えた。THF中のβ−カロチンをMcCoyの5A変法培地に添加して、最終濃度を33mcg/ml(最終濃度0.5%THF)とした。グアノシン補充培地の除去後、この補充培地をLeighton管に添加し、さらに7日間の実験期間中、2日毎に取り換えた。14日の終了時に、培養物をメタノール中で固定し、カバーガラスをギムザ染色した。
【0171】
結果:最初の7日間、グアノシンは、前記の実験Iに記載した作用を生じた。しかしながら、その後のβ−カロチン処理は、前記の例14においてβ−カロチン単独で起きたような広範な細胞死を引き起こさなかった。むしろより多数の細胞が残存し、それらのほとんどが神経形態を有し、大核、三角形細胞体ならびに樹状細胞および軸索と一致する突起を有した。厳密な観察は、三角形細胞上に存在する細胞突起がしばしば隣接細胞に対して向けられるか隣接細胞に接触し、神経網目構造に類似する細胞間の緩やかな網目構造のように見えるものを形成することを明示した。
【0172】
意義:グアノシンは幹細胞へのメラノサイト細胞の分化転換を引き起こしたと考えられる。これは、それらの形態的変化だけでなく、より多くの生存に関するその後のβ−カロチンに対するこれらの細胞の応答が、それらの表現型が変化したことを示唆することによっても裏付けられる。理論と結びつけずに考えると、β−カロチンはさらに、ニューロンならびに神経膠および神経線維鞘細胞に幹細胞を分化転換させ、次に、これらの細胞が神経網目構造に類似した相互連結突起の緩い網目構造を確立するよう、これらの表現型を安定化させたことが確信される。
【0173】
例16:ニューロンならびに神経膠および神経線維鞘細胞への正常メラノサイトの分化転換
Dupin等(Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 2000,97:7882-7887)は、エンドテリン3が膠細胞へのメラノサイトの転換を誘導し得ることを示した。本例では、培養中の正常(良性)ヒトメラノサイトを市販供給元(Clonetics, Walkersville, MD)から入手する。前記の例14に用いた方法を適用して、ニューロンおよび神経膠または神経線維鞘細胞を得る。その結果生じる細胞の表現型を、電子顕微鏡および免疫細胞化学的方法により確証する。
【0174】
例17:自己移植のための自系ニューロンおよび神経膠または神経線維鞘細胞への正常メラノサイトの分化転換
標準的方法を用いて、正常メラノサイトをヒト皮膚生検から単離する。前記例15の手法を適用して、ニューロンおよび神経膠細胞を産生する。その結果生じた細胞の培養物を、注射のための薬理学的に適切なビヒクル中に入れる。その結果生じた細胞を、生検を採取したのと同一個体に注射する。移植は、腰椎穿刺または鞘内による注射(脊髄内)、あるいは神経組織中の外科的移植による。これらの細胞は、神経堤由来細胞が非常に運動型であるため、ニューロンまたは神経膠またはシュワン細胞を欠く領域に移動し得る。細胞の自系性は免疫学的拒絶を回避し、薬剤またはその他の手段による免疫抑制のいかなる必要性もなくする。この方法は、パーキンソン病およびアルツハイマー病のような疾患を有する哺乳類(ヒトを含む)の治療に適用可能で、破壊されたニューロンを取り換え、また、多発性硬化症のような脱髄性疾患においては、シュワン細胞および神経膠を取り換える。
【0175】
例18:発生領域の作製および再生
I.発生領域の再生のための過程
発生領域の再生のための普遍的過程は脱安定化、分化転換および安定化である。
【0176】
ある構造が再生を要する場合、それはその構造が(1)部分的または(2)全体的に除去されたためである。
【0177】
(1)前記の(1)の場合、腕が肘で切断された場合には、肘の遠位の全素子(基部にある)は再生されねばならない。腕が手首で切断された場合には、手全体が再生されねばならない。
【0178】
発生領域の一部を再生するために、基部組織は、例えば新規の外傷により、または化学物質によって脱安定化されねばならない。次に、例えば銅枯渇剤または食餌の局所的または全身的適用により、基部組織の分化転換が成し遂げられねばならない。最後に、例えばβ−カロチンの局所的または全身的適用により、安定化が達成される。
【0179】
基部組織が脱安定化されれば、発生領域は、その性質により、内在的に切断のレベルの遠位性を感知する。それは増殖し、次に、分化転換と共在して、完全発生領域(例えば足)を回復するのにすべてのレベルに関して適した失われた構造を提供する。
【0180】
(2)前記の(2)の場合、眼の水晶体が一例として用いられる。水晶体の完全抽出は、全水晶体が置換され得る同様の組織の基部として役立ち得る水晶体物質を全く残さない。その構造およびその発生領域は、完全に欠けている。しかしながら、水晶体発生領域は眼の発生領域の一構成成分である。この情況では、眼の発生領域は、その形成が水晶体発生領域の形成に経時的に先行し、それが水晶体発生領域を発生学的に生じるため、「母」発生領域と考えられ得る。眼(およびその発生領域)の残り部分は、無傷のままである。
【0181】
この情況では、水晶体発生領域の再生は、母発生領域からの組織の脱安定化、分化転換および安定化により成し遂げられる。したがって、眼(母)発生領域の一部である虹彩の組織は、脱安定化、水晶体細胞への分化転換および水晶体表現型の安定化の過程を受ける。
【0182】
II.発生領域の作製の過程
発生領域を作製するのが望ましい一連の情況が存在する。例えば、小児がある器官または特定の身体構造を伴わずに生まれた場合、その構造を作製するのが望ましい。例えば、ある小児は小脳形成不全で生まれ、協調を制御する脳の小脳を欠く。小脳を生じる発生領域は、脳発生領域の一構成成分である。この場合、前記で引用した全発生領域が再生されねばならない場合と同様に、脳領域は母発生領域である。
【0183】
小脳発生領域の作製のための過程は、同様に、脱安定化および分化転換および安定化である。本適用では、脳の後方(背部)を外科的に曝露させ、少量の組織に外傷を負わせるかまたは脱安定化化学物質に曝露する。次に、分化転換誘導化学薬品を局所的に適用する。最後に、安定化剤、例えばβ−カロチンを食餌中に含入する。
【0184】
この情況は、構造が個体中に元来存在しないため、前記で引用した完全発生領域の再生とは異なる。
【0185】
発生領域を作製するのが望ましい別の情況は、哺乳類における補足的肢の作製の場合である。このような構造は、両生類のような下等動物では容易に誘導し得る(Goss, 1969)。例えば結紮がイモリの肢の周囲に配置される場合、機能的であると考えられる完全形成付加的肢は、結紮の位置で出芽する。
【0186】
その過剰構造の形成を誘導するための過程は、母発生領域(例えば肢が延びる側腹部)の、またはイモリ結紮により生じるような構造自体の発生領域からの組織の脱安定化、分化転換および安定化である。
【0187】
機能的補足構造、例えば器官または四肢の利点は明らかであり、即ち、既存の天然構造に付加的機能的能力を提供する。
【0188】
例19:哺乳類における脱安定化を刺激するための外傷の使用
1.飼い主が部分的盲目であるらしいと気づいた遺伝性網膜変性を有するイヌが、獣医の診断を受けた。獣医は、RPEの小レーザー熱焼処置を施した。これは、RPE細胞の脱分化および増殖を刺激することが知られている。次にグアノシンモノホスフェート(GMP)を1か月間、1g/kg/日で(分化転換剤として)食物に添加した。GMPを中断した時に、ベタテン(Henkel, La Grange, IL、7.5%)を13.5g/日で食物に添加した。
【0189】
2.未知の病因の網膜変性を有するイヌを、グアノシン1g/kg/日で1か月(RPEのための脱安定化および分化転換剤として)、ならびに1g/kg/日のβ−カロチン(安定剤として)で治療した。盲目に変化は認められなかった。次にイヌにRPEのレーザー熱焼を施し、グアノシンおよびβ−カロチンによる治療を継続した。1か月後、グアノシンを中止した。2か月後、視力は徐々に戻っていることが認められた。
【0190】
3.あるいは、30ゲージ針を角膜縁の真後ろに導入して、RPEに外傷を負わせた(そして脱安定化した)。
【0191】
4.あるいは、既知のRPE毒素であるヨウ化ナトリウム(The Retinal Pigment Epithelium, Function and Disease, Wolfensberger and Marmor eds., 1998, Oxford Univ. Press)を30mg/kgで静注した。RPEへのこの毒性注射はRPEの脱安定化および増殖を引き起こした。
【0192】
5.分化状態の基部繊維芽細胞、神経、シュワン細胞およびケラチノサイトの脱安定化を刺激するために、肢切断患者は、前記の分化転換および安定化剤の使用の前に、外科的に切開された肢基部を有する。
【0193】
6.あるいは、20分間、1日2回で5日間の肢基部の飽和高張食塩水浸漬を、表皮およびコラーゲン瘢痕が最初に創面切除された後に実施する。
[開示情報]
2つの過去の出願が存在する:
1.米国特許仮出願第60/146,272号(1999年7月29日提出)および
2.米国特許仮出願第60/168,555号(1999年12月2日提出)。
添付の国際出願は、前記の出願の両方の主題を含む。付加的主題も本出願には付加されており、本明細書を通して見出される。
外国通達ライセンスは、本出願の提出と同時に要請されており、35U.S.C.184および37CFR5.11の規定に従う。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
哺乳類細胞を分化転換する方法であって:
(a)細胞の脱分化を引き起こす、脱分化のための有効量の剤と、細胞を接触させて、脱分化細胞を産生する工程、
(b)工程(a)の脱分化細胞を、脱分化細胞の分化転換を引き起こす、分化転換のための有効量の剤と接触させる工程、
(c)工程(b)からの細胞を、工程(b)で産生された細胞の安定化を生じさせる、安定化のための有効量の剤と接触させる工程、および
(d)安定化分化転換細胞を回収する工程
を包含する、前記方法。
【請求項2】
脱分化工程(a)が、レチノイドの投与、毒素の投与、細胞外マトリックスの崩壊、機械的または酵素的方法による細胞の物理的分離、および外傷生成からなる群から選択される方法により成し遂げられる、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
分化転換を引き起こす剤が、グアノシン、フェニルチオウレア、12−0−テトラデカノイル−13−ホルボールアセテート、グアノシンモノホスフェート、グアノシンジホスフェート、グアノシントリホスフェート、アデノシン、アデノシンモノホスフェート、アデノシンジホスフェート、アデノシントリホスフェート、ウリジン、ウリジンモノホスフェート、ウリジンジホスフェート、ウリジントリホスフェート、チミジン、チミジンモノホスフェート、チミジンジホスフェート、チミジントリホスフェート、エピネフリンおよびノルエピネフリンからなる群から選択される、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
安定化を生じさせる剤が、β−カロチン、レチノイド、リボフラビンおよびプテリジンからなる群から選択される請求項1に記載の方法。
【請求項5】
哺乳類における部分的に破壊されていた構造のレムナント中に発生領域を再生または作製するための方法であって:
(a)構造のレムナントを脱分化する工程、
(b)工程(a)の構造のレムナントを分化転換する工程、および
(c)工程(b)の構造のレムナントを安定化し、それによりレムナント中に発生領域を作製する工程
を包含する、前記方法。
【請求項6】
脱分化が、レチノイドの投与、毒素の投与、細胞外マトリックスの崩壊、機械的または酵素的方法による細胞の物理的分離、および外傷生成からなる群から選択される方法により成し遂げられる、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
分化転換を引き起こす剤が、グアノシン、フェニルチオウレア、12−0−テトラデカノイル−13−ホルボールアセテート ホルバールグアノシンモノホスフェート、グアノシンジホスフェート、グアノシントリホスフェート、アデノシン、アデノシンモノホスフェート、アデノシンジホスフェート、アデノシントリホスフェート、ウリジン、ウリジンモノホスフェート、ウリジンジホスフェート、ウリジントリホスフェート、チミジン、チミジンモノホスフェート、チミジンジホスフェート、チミジントリホスフェート、エピネフリンおよびノルエピネフリンからなる群から選択される、請求項5に記載の方法。
【請求項8】
安定化を生じさせる剤が、β−カロチン、レチノイド、リボフラビンおよびプテリジンからなる群から選択される、請求項5に記載の方法。
【請求項9】
哺乳類における癌の治療方法であって、良性細胞への癌の分化転換を引き起こすのに有効な量の剤と癌を接触させることを包含する、前記方法。
【請求項10】
患者における抗体介在性自己免疫疾患の進行を抑制する方法であって:
(a)自己免疫襲撃下にある型の患者から細胞を得る工程と、
(b)細胞を正常表現型に変換するのに有効な量の分化転換剤と細胞を接触させる工程、
(c)変換細胞をin vitroで培養して細胞を増幅させる工程、
(d)血液は進入させるが細胞を保持する膜上に細胞を固定する工程、および
(e)固定化細胞を患者の血液と接触させ、それにより患者の血液から抗体を除去する工程
を包含する、前記方法。
【請求項11】
損傷により傷害を受けるか、または失われている哺乳類の身体中の組織または器官を再生する方法であって:
(a)脱分化有効量の脱分化剤を投与することにより損傷部位での細胞を脱分化する工程、
(b)分化転換有効量の分化転換剤と細胞を接触させることにより工程(a)の脱分化細胞を分化転換する工程、および
(c)安定化有効量の安定剤と細胞を接触させることにより工程(b)の分化転換細胞を安定化する工程
を包含する、前記方法。
【請求項12】
脱分化が、レチノイドの投与、毒素の投与、細胞外マトリックスの崩壊、機械的または酵素的方法による細胞の物理的分離および外傷生成からなる群から選択される方法によりなされる、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
分化転換を引き起こす剤が、グアノシン、フェニルチオウレア、TPA、グアノシンモノホスフェート、グアノシンジホスフェート、グアノシントリホスフェート、アデノシン、アデノシンモノホスフェート、アデノシンジホスフェート、アデノシントリホスフェート、ウリジン、ウリジンモノホスフェート、ウリジンジホスフェート、ウリジントリホスフェート、チミジン、チミジンモノホスフェート、チミジンジホスフェート、チミジントリホスフェート、エピネフリンおよびノルエピネフリンからなる群から選択される、請求項11に記載の方法。
【請求項14】
安定化を生じさせる剤が、β−カロチン、レチノイド、リボフラビンおよびプテリジンからなる群から選択される請求項11に記載の方法。
【請求項15】
幹細胞を産生する方法であって:
(a)患者の皮膚細胞からメラノサイトを得る工程、
(b)産生に有効な時間および濃度で分化転換を引き起こす剤とメラノサイトを接触させる工程、および
(c)幹細胞を回収する工程
を包含する、前記方法。
【請求項16】
幹細胞が、クッパー細胞である、請求項15に記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2011−139705(P2011−139705A)
【公開日】平成23年7月21日(2011.7.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−21729(P2011−21729)
【出願日】平成23年2月3日(2011.2.3)
【分割の表示】特願2001−513421(P2001−513421)の分割
【原出願日】平成12年7月31日(2000.7.31)
【出願人】(502034279)
【Fターム(参考)】