車いす用エスカレータ
【課題】 車いす利用者25の待ち時間を短くし、延いては一般利用者26の利用不可時間を短縮することができる車いす用エスカレータを提供することを目的とする。
【解決手段】 一般利用者26を搬送する通常運転から車いす運転に切り替えられると、車いす利用者25が待機する一方の乗場1dに対する側の他方の乗場1u部分まで車いす用踏段7が巡回すると、一般利用者26の乗込みを阻止し、更に他方の乗場1u部分から一方の乗場1d部分まで略半周分巡回させることによって乗込みを阻止した時点で踏段6上に残留している一般利用者26を他方の乗場1uまで搬送すると共に、一方の乗場1dまで巡回した車いす用踏段7を通常形態から車いす搬送形態に変態させて車いす利用者25を搬送し、他方の乗場1u部分に繰り込まれる手前で車いす搬送形態に変態した車いす用踏段7を通常形態に復帰させるようにしたものである。
【解決手段】 一般利用者26を搬送する通常運転から車いす運転に切り替えられると、車いす利用者25が待機する一方の乗場1dに対する側の他方の乗場1u部分まで車いす用踏段7が巡回すると、一般利用者26の乗込みを阻止し、更に他方の乗場1u部分から一方の乗場1d部分まで略半周分巡回させることによって乗込みを阻止した時点で踏段6上に残留している一般利用者26を他方の乗場1uまで搬送すると共に、一方の乗場1dまで巡回した車いす用踏段7を通常形態から車いす搬送形態に変態させて車いす利用者25を搬送し、他方の乗場1u部分に繰り込まれる手前で車いす搬送形態に変態した車いす用踏段7を通常形態に復帰させるようにしたものである。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、一般利用者を搬送する通常運転から車いす利用者を搬送する車いす運転に円滑に切替えできるようにした車いす用エスカレータに係るものである。
【背景技術】
【0002】
従来の車いす用エスカレータの通常運転と車いす運転の相互切替えは、図10にも示したとおり、先ず車いす利用者が、自分が待機している車いす用エスカレータの所まで係員を呼び出す。係員は、一般利用者の通行を遮断した後、踏段上の残留者の搬送が完了するのを待って通常運転から車いす運転に切り替える。車いす用踏段を車いすを搬送することができる形態に変態させた後、その車いす用踏段に車いす利用者を乗せる。車いす運転を始動させて搬送し、先方の乗場に到着したならば、車いす利用者を降す。事後処理として、車いす用踏段を通常の形態に復帰させ、更に一般利用者の通行遮断を解いた後、通常運転に切り替えて再開させる。
従って、車いす利用者がエスカレータに乗るまでに、{(係員が来るまでの時間)+(一般利用者の通行を遮断する時間)+(車いす踏段が到着するまでの時間)+(車いす用踏段の形態を変態させる時間)}という長い時間がかかる。
【0003】
また、係員を呼び出したり待ち時間等の余分な時間を省き、車いす利用者の社会的自立を目指す趣旨から、案内放送で誘導することにより、車いす利用者が独自で運転する車いす用エスカレータも開示されている(例えば、特許文献1参照)。
【0004】
【特許文献1】特開平8−192981号公報(段落番号14)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
従来の車いす用エスカレータは、上記のとおり構成されており、係員が到着して始めて車いす運転のための処理が開始されるため、車いす利用者がエスカレータに乗るまでに長い時間がかかる、という問題があった。
また、車いすが積載されるスペースは極めて限られたものにならざるを得ない。車いす利用者が、独自で運転する場合は、その限定されたスペースに車いすを確実に積載するために、相当の装備がエスカレータに必要となる、という問題があった。
【0006】
この発明は、上記問題点を解決するためになされたものであり、車いす利用者の待ち時間を短くし、延いては一般利用者の利用不可時間を短縮することができる車いす用エスカレータを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
この発明に係る車いす用エスカレータは、一般利用者を搬送する通常形態の踏段の間に、上記通常形態から車いす搬送形態に変態する車いす用踏段が介在配置されて無端状に連結された踏段群を上部及び下部の乗場部分で反転させて循環させるようにしたエスカレータであって、本体部分に付置された運転切替え手段に加えて、管理室にも設置された運転切替え手段によって通常運転から車いす運転に切り替えられると、車いす利用者が待機する一方の乗場に対する側の他方の乗場部分まで車いす用踏段が巡回すると、一般利用者の乗込みを阻止し、更に他方の乗場部分から一方の乗場部分まで略半周分巡回させることによって乗込みを阻止した時点で踏段上に残留している一般利用者を他方の乗場まで搬送すると共に、一方の乗場まで巡回した車いす用踏段を通常形態から車いす搬送形態に変態させて車いす利用者を搬送し、他方の乗場部分に繰り込まれる手前で車いす搬送形態に変態した車いす用踏段を通常形態に復帰させるようにしたものである。
【発明の効果】
【0008】
この発明は上記のとおり構成されているので、以下の効果を奏する。
通常運転から車いす運転に切り替える操作は、通常、係員が常駐する管理室の運転切替え手段によって遠隔操作で行われ、係員が到着するまでの間に車いす運転に切り替わっている。また、車いす利用者が待機する一方の乗場に対する側の他方の乗場部分まで車いす用踏段が巡回したときに、一般利用者の乗込みを阻止し、更に略半周分巡回させるようにしたので、乗込みを阻止した時点で踏段上に残留している一般利用者を、他方の乗場まで搬送することができると共に、車いす用踏段を車いす利用者が待機している乗場まで巡回させて車いす搬送形態に変態させることができる。
このため、係員が対象とするエスカレータの所へ到着したときには、車いす運転を開始できるようになっているので、車いす利用者の待ち時間を短縮することができる、という効果も奏する。
また、車いす用踏段を車いす搬送形態に変態させる時点では、一般利用者を他方の乗場部分まで搬送し終えており、一般利用者に与える負担を軽減でき、かつ可能な限り長い時間一般利用者を搬送することができ、一般利用者の利用不可時間を低減させることができる、という効果を奏する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
以下、図面を参照して、この発明の実施の形態について説明する。なお、各図中、同一又は相当する部分には同一符号を付し、説明の重複を省いた。また、以下の説明において、下階又は下部に設置される装置類には、符号の末尾に「d」を付し、上階又は上部に設置される装置類には、符号の末尾に「u」を付して区別した。なお、両者を総称する場合は上記「d」及び「u」を省略する。
実施の形態1.
図1から図10は、この発明の実施の形態1を示す。この実施の形態1は、通常運転と車いす運転の運転方向が同じ場合、即ち、車いす運転が順方向の場合を示す。
図1は、車いす用エスカレータ(以下、単に「エスカレータ」ともいう。)の要部を示す概略の側断面図で、通常運転されている場合を示す。図において、下階1dと上階1uの間に主枠2が跨設されている。主枠2の両側には欄干3が立設されており、その頂部には移動手摺4が張設されている。また、主枠2には、一般利用者26を搬送する通常形態の踏段6の間に、通常形態から車いす搬送形態に変態する車いす用踏段7が介在配置されて無端状に連結された踏段群が内設されている。
【0010】
踏段6及び車いす用踏段7は、下階1dでは下部乗場5dに潜入し、上階1uでは上部乗場5uに潜入して、それぞれ反転して循環し、往路側で露呈して一般利用者26を搬送し、通常運転から車いす運転に切り替えられると、車いす用踏段7を変態させて車いす利用者25を搬送する。
また、車いす用踏段7は、車止めが装着された踏段7cと、この踏段7cと連結されて2連の踏段を構成する踏段7bと、車いすとの干渉を避けるために傾斜する踏段7aからなる。動作は図4から図6によって説明する。
車いす用踏段7の下階1d側直近の踏段6の下面には下部カム8dが、また、上階1u側直近の踏段6の下面には上部カム8uが、それぞれ取り付けられている。
【0011】
下部乗場5d及び上部乗場5uにはそれぞれ乗込み阻止手段10d及び10uが立設されており、インターホン11d及び11uも取り付けられている。管理室14には、運転切替え手段16が設けられており、車いす利用者25からインターホン11で管理室14のインターホン15に搬送の要請があると、号機選択スイッチ16aで該当する車いす用エスカレータを選択し、更に、乗場選択スイッチ16bによってエスカレータの下階1dか上階1uかを選択した後、車いす運転スイッチ16cをONにセットした後、キーを抜脱する。指定された号機の車いす用踏段7が指定された乗場5に到着する。図1では、通常運転であり、車いす運転スイッチ16cはOFFになっている。
【0012】
また、欄干3の両端部にも、運転切替え手段17d及び17uが配設されおり、詳細を図8に示したとおり、通常運転と車いす運転の切替えができるようになっており、車いす運転にすると操作された運転切替え手段17が設置されている乗場5に車いす用踏段7が到着するようになっている。
更に、欄干3の両端部には、車いす運転操作盤18d及び18uも設置されており、詳細を図8に示したとおり、車いす利用者25を車いす用踏段7に乗せて始動させるときに操作する。運転切替え手段16、17及び車いす運転操作盤18の操作信号は、エスカレータ制御盤21へ伝えられ、駆動機22によって踏段6及び7が駆動される。
【0013】
踏段6、7の循環路の上部反転部には、踏段6が復路側にあるときに上部カム8uに係合して作動する踏段センサL1uと、車いす用踏段7が上昇して上部踏段形態変換装置9uとの係合部位に先立って上部カム8uに係合して作動する踏段センサL3uと、車いす用踏段7が往路側へ反転して上部乗場5uから繰り出されて上部踏段形態変換装置9uとの係合部位に先立って下部カム8dと係合して作動する踏段センサL2dが、それぞれ配設されている。
下部反転部も同様に、踏段6が復路側にあるときに下部カム8dに係合して作動する踏段センサL1dと、車いす用踏段7が下降して下部踏段形態変換装置9dとの係合部位に先立って下部カム8dに係合して作動する踏段センサL3dと、車いす用踏段7が往路側へ反転して下部乗場5dから繰り出されて下部踏段形態変換装置9dとの係合部位に先立って上部カム8uと係合して作動する踏段センサL2uが、それぞれ配設されている。
【0014】
図2は、車いす用エスカレータの要部を示す概略の側断面図で、乗込み阻止手段10が作動した時点の状態を示す。
即ち、図1の状態で車いす利用者25からのインターホン11dによる要請があり、その後直ちに管理室14の車いす運転スイッチ16cがONに設定されて通常運転から車いす運転に切り替えられたとする。車いす用エスカレータは、その後も通常運転を継続して上部カム8uが踏段センサL1uに係合し、乗込み阻止手段10が作動した場合を示す。乗込み阻止手段10dを境として一般利用者26bは下階1dで待機しなければならない。乗込み阻止手段10dを通過した一般利用者26aは、通常運転を継続している車いす用エスカレータによって上階1uへ到達することができる。一般利用者26aが上階1uへ到達したときは、図2の状態から踏段6、7は略半周して図3(a)に示す状態になっている。
【0015】
図3は、車いす運転によって車いす利用者25を下階1dから上階1uへ搬送する過程を示す側断面図である。
図3(a)に示す状態に先立って、図2の状態から巡回して上部カム8uが踏段センサL2uに係合して作動すると、それまで通常運転されていた踏段6、7が毎分30mの速度から減速されて低速度になると共に、下部踏段形態変換装置9dが作動して踏段7a及び7bを通常形態から車いす搬送形態に変態させる。踏段センサL2uが作動してから回転計23の信号によって踏段6の移動距離を検出して所定の位置で停止する。図3(a)は、その停止状態を示す。エスカレータに到着した係員27は停止した踏段7b及び7cに車いす利用者を乗り込ませた後、車いす運転操作盤18dを操作する。踏段6、7は徐々に加速し、途中で踏段7cが下部踏段形態変換装置9dと係合して車止めが突出する。
図3(b)は、搬送中を示し、車いす利用者25は係員27の介添えの下に搬送される。
【0016】
図3(c)は、車いす利用者25が上部乗場5u部分に到着した状態を示す。図3(c)に示す状態に先立って、図3(b)の状態から巡回して上部カム8uが踏段センサL3uに係合して作動すると、それまで通常運転されていた踏段6、7が毎分30mの速度から減速されて低速度になると共に、上部踏段形態変換装置9uが作動して踏段7a及び7bを車いす搬送形態から通常形態に復帰させる。踏段センサL3uが作動してから回転計23の信号によって踏段6の移動距離を検出して所定の位置で停止する。図3(c)は、その停止状態を示す。
図3(d)は、車いす運転から通常運転への切替えを示す。即ち、停止した車いす用エスカレータから車いす利用者25を降ろした後、係員27は、図8に示した運転切替え手段17uの車いす運転スイッチ17auを一旦OFFにして戻す。これにより、乗込み阻止手段10は復帰して車いす利用者の搬送を終了する。キーを抜脱して運転スイッチ17buをUP又はDOWNにして通常運転に切り替える。
【0017】
図4は、車いす用踏段7のうち、踏段7cと連結されて2連の踏段を構成する踏段7bについて、下部踏段形態変換装置9dとの係合の概要を図5と共に示す説明用図である。
即ち、踏段センサL2uが上部カム8uに係合すると、それまで通常運転されていた踏段6、7は減速されて低速度になると共に、下部踏段形態変換装置9dの昇降機構91dが作動して誘導レール92を押し上げる。誘導ローラ93は、誘導レール92に係合し、踏段7bが図5に示したとおり(a)(b)(c)と移動するのに伴って、ラック94が中央部へ寄せられてピニオン95を回動させる。この回動によってピニオン95と噛合するラックが形成されたフォーク96が進出して隣接する踏段7cの下面に挿入される。このため、踏段7bと踏段7cは変態し、連動して上下動して同一平面を形成する。車いすは踏段7bと踏段7c上に載置される。
逆に、踏段6、7が下降する場合は、図5において、(c)(b)(a)と推移して踏段7bが下部踏段形態変換装置9dに係合することによって、フォーク96が退行して踏段7cとの連動が解除されて元の状態に復帰する。
【0018】
図6は、踏段7bが上部踏段形態変換装置9uと係合する場合を示す。即ち、踏段6、7が上昇する場合は、下部踏段形態変換装置9dに係合して変態した踏段7bが、上部踏段形態変換装置9uと係合することによってフォーク96が退行して踏段7cとの連動が解除されて通常形態に復帰する。
逆に、踏段6、7が下降する場合は、(c)(b)(a)と推移して踏段7bが上部踏段形態変換装置9uに係合することによって、フォーク96が進出して隣接する踏段7cの下面に挿入される。このため、踏段7bと踏段7cは変態し、連動して上下動して同一平面を形成する。車いすは踏段7bと踏段7c上に載置される。この変態は、下部踏段形態変換装置9dとの係合によって復帰することは上記のとおりである。
なお、他の踏段7a及び車止め97を備えた踏段7cを含めて車いす用踏段7については、特開平3−128885号公報によって開示され、公知されているので詳細は省略する。
【0019】
図7は、踏段6、7と踏段センサL1、L2及びL3の動作点の関係を示す説明用図である。
図7(a)は、通常運転が上昇方向であるときに、車いす運転も上昇方向である、いわゆる順方向の上昇運転の場合を示す。図7(c)を参照して説明する。
即ち、車いす運転スイッチ16c又は運転切替え手段17dの車いす運転スイッチ17adが操作されて車いす運転に切り替えられた後も、車いす用エスカレータは通常運転の速度で運転を継続する。
上部カム8uが位置L1uで踏段センサL1uと係合すると、乗込み阻止手段10u及び10dが作動する。その後も通常運転と同様の速度で運転が継続される。
上部カム8uが位置L2uで踏段センサL2uと係合すると、車いす用エスカレータは減速すると共に、下部踏段形態変換装置9dが作動して車いす用踏段7と係合可能な状態となる。また、踏段センサL2uが作動すると、回転計23によって踏段6の移動距離を計数して上部カム8uが位置Lsuに達した点で停止させる。途中で、踏段7a、7bは下部踏段形態変換装置9dと係合して変態するが、踏段7cは変態していない。車いす利用者25が乗り込んで、車いす運転が始動すると踏段7cも変態する。以後下部踏段形態変換装置9dが復帰すると共に、踏段6、7は徐々に増速する。
【0020】
上部カム8uが位置L3uで踏段センサL3uと係合すると、車いす用エスカレータは減速すると共に、上部踏段形態変換装置9uが作動して車いす用踏段7と係合可能な状態となる。また、踏段センサL3uが作動すると、回転計23によって踏段6の移動距離を計数して上部カム8uが位置Lfuに達した点で停止させる。途中で、踏段7a、7bは上部踏段形態変換装置9uと係合して通常形態に復帰するが、踏段7cは変態した状態である。車いす利用者25を降ろして運転切替え手段17uの運転スイッチ17buをUPにすると始動して踏段7cも復帰する。以後上部踏段形態変換装置9uが復帰すると共に、踏段6、7は徐々に増速して通常運転が再開される。
従って、踏段6、7は乗込み阻止手段10が作動した位置L1uから位置Lsuまで進んで停止する。この距離は、下部乗込み阻止手段10dから上部乗場5uの踏段6の潜入点までの距離Duuよりも長い。従って、乗込み阻止手段10が作動する以前に下部乗込み阻止手段10dを通過した一般利用客26は、上部カム8uが位置Lsuに達して車いす用エスカレータが停止したとき、踏段6上に取り残されることはない。
【0021】
図7(b)は、通常運転が下降方向であるときに、車いす運転も下降する、いわゆる順方向の下降運転の場合を示す。上記図7(a)と同様であって、図7(c)を参照して説明する。
即ち、車いす運転スイッチ16c又は運転切替え手段17uの車いす運転スイッチ17auが操作されて車いす運転に切り替えられた後も、車いす用エスカレータは通常運転の速度で運転を継続する。
下部カム8dが位置L1dで踏段センサL1dと係合すると、乗込み阻止手段10u及び10dが作動する。その後も通常運転と同様の速度で運転が継続される。
下部カム8dが位置L2dで踏段センサL2dと係合すると、車いす用エスカレータは減速すると共に、上部踏段形態変換装置9uが作動して車いす用踏段7と係合可能な状態となる。また、踏段センサL2dが作動すると、回転計23によって踏段6の移動距離を計数して下部カム8dが位置Lsdに達した点で停止させる。途中で、踏段7a、7bは上部踏段形態変換装置9uと係合して変態するが、踏段7aは変態していない。車いす利用者25が乗込んで、車いす運転が始動すると踏段7cも変態する。以後上部踏段形態変換装置9uが復帰すると共に、踏段6、7は徐々に増速する。
【0022】
下部カム8dが位置L3dで踏段センサL3dと係合すると、車いす用エスカレータは減速すると共に、下部踏段形態変換装置9dが作動して車いす用踏段7と係合可能な状態となる。また、踏段センサL3dが作動すると、回転計23によって踏段6の移動距離を計数して下部カム8dが位置Lfdに達した点で停止させる。途中で、踏段7c、7bは下部踏段形態変換装置9dと係合して通常形態に復帰するが、踏段7cは変態した状態である。車いす利用者25を降ろして運転切替え手段17dの運転スイッチ17bdをUPにすると始動して踏段7cも復帰する。以後下部踏段形態変換装置9dが復帰すると共に、踏段6、7は徐々に増速して通常運転が再開される。
従って、踏段6、7は乗込み阻止手段10が作動した位置L1dから位置Lsdまで進んで停止する。この距離は、上部乗込み阻止手段10uから下部乗場5dの踏段6の潜入点までの距離Dddよりも長い。従って、乗込み阻止手段10が作動する以前に上部乗込み阻止手段10uを通過した一般利用客26は、下部カム8dが位置Lsdに達して車いす用エスカレータが停止したとき、踏段6上に取り残されることはない。
【0023】
図8は、電気回路を示すブロック図である。ここで、運転切替え手段17は、車いす運転スイッチ17aと、通常運転のための運転スイッチ17bと、非常停止釦17cとからなる。車いす運転スイッチ17aは、中立位置でキーを挿入してONの位置まで回した後、再び中立位置に戻してキーを抜脱して車いす運転に切り替える。運転スイッチ17bは、各位置へ回して抜脱して切り替える。運転切替え手段17は、上部と下部にそれぞれ設けられていて、車いす運転スイッチ17aは操作された部位へ車いす用踏段7が寄せられる。エスカレータ制御盤21は、マイコンで構成されており、CPU21aと、各種のプログラムが格納されたROM21bと、一時的なデータが記録されるRAM21cと、外部装置との信号の授受を行う入出力装置21dと、駆動機22を制御する電動機制御回路21eとからなる。電動機制御回路21eは速度制御のための速度パーンが格納されており、徐々に加速して毎分30mの高速に達し、減速点から減速して低速になり、停止点で制動機(図示しない。)を作動させて駆動機22を制止する。安全回路21fには、踏段チェーン安全装置及びスカートガード安全装置等が含まれる。
【0024】
図9は、ROM21bに格納された制御プログラムを示す流れ図である。エスカレータは通常運転されているものとする。手順S11で、各乗場5に設置されたインターホン11から管理室14のインターホン15へ車いす運転の依頼があると、手順S12で、依頼に基いて運転切替え手段16が操作される。その操作は、号機選択スイッチ16aによって該当するエスカレータの選択と、乗場選択スイッチ16bによって該当する乗場の選択と、車いす運転スイッチ16cをONにして戻してキーを抜脱し、通常運転から車いす運転へ切り替える。手順S13で車いす運転の運転方向をチェックする。この実施の形態1では、上記のとおり、順方向、即ち、通常運転と同方向であるから手順S14へ進む。ここで、踏段センサL1が作動するのを待つ。即ち、図7に示したとおり、上昇運転の場合は、踏段センサL1uが、下降運転の場合は踏段センサL1dが作動すると、手順S15へ進み、乗込み阻止手段10が作動して一般利用者26の利用を禁止する。ここでは、その旨を表示装置に表示するものとする。
【0025】
手順S16で踏段センサL2が作動するのを待つ。即ち、図7に示したとおり、上昇運転の場合は、踏段センサL2uが、下降運転の場合は踏段センサL2dが作動すると、手順S17へ進む。ここで、エスカレータを高速運転から減速して低速運転にすると共に、手順S18で踏段形態変換装置9の誘導レール92(図4に示す。)を上昇させ、車いす用踏段7と係合して車いす搬送形態に変態させる。手順S19で、踏段センサL2が作動してからの踏段6の移動距離を回転計23で計測し、停止点Lsu又はLsdでエスカレータを停止させる。車いす利用者25を乗り込ませた後、手順S20で、係員27は手元の車いす運転操作盤18の運転釦18au又は18adを押すと、車いす運転が開始される。
【0026】
手順S21で、踏段センサL3が作動するのを待つ。即ち、図7に示したとおり、上昇運転の場合は、踏段センサL3uが、下降運転の場合は踏段センサL3dが作動すると、手順S22へ進む。ここで、エスカレータを高速運転から減速して低速運転にすると共に、手順S23で踏段形態変換装置9の誘導レール92(図4)を上昇させ、車いす用踏段7と係合して車いす搬送形態から通常形態に復帰させる。手順S24で、踏段センサL3が作動してからの踏段6の移動距離を回転計23で計測し、停止点Lfu又はLfdでエスカレータを停止させる。係員27は車いす利用者25をエスカレータから降ろした後、手順S25で、運転切替え手段17の車いす運転スイッチ17aをOFFにしてキーを抜脱すると共に、運転スイッチ17bをUP又はDOWNに回してキーを抜脱する。これによって、乗込み阻止手段10による阻止表示は消えて一般利用者26の利用が可能となる。手順S26で、エスカレータは徐々に加速して通常運転が再開されて、車いす利用者25の搬送は終了する。
【0027】
図10は、上記実施の形態1に示す車いす運転と従来例とを対比したタイムチャートである。
従来例では、時刻t0で係員を呼び出し、時刻t4で係員が到着すると、この時点から車いす運転の準備が開始される。即ち、時刻t7で一般利用者の乗込みを阻止し、時刻t9で車いす運転に切り替え、時刻t10で車いす用踏段を変態させる操作を行う。更に、時刻t13で車いす利用者をエスカレータに乗せ、時刻t14で始動させる。目的階に到着すると時刻t15で車いす利用者を降ろした後、時刻t16で車いす用踏段を復帰させる操作を行うと共に、時刻t17で一般利用者の利用を再開させる措置をとり、時刻t18で通常運転へ切替える。
【0028】
これに対して、本願発明のタイムチャートは図9の流れ図に基いたものである。時刻t0で係員を呼び出すと、時刻t1で管理室14の運転切替え手段16が操作される。暫く通常運転が継続されるが、時刻t2で手順S15に示す一般利用者26の利用停止の措置がなされる。時刻t3で手順S18に示す車いす用踏段7が到着して変態する。時刻t4で係員27が到着する。時刻t5で車いす利用者25の乗込みが行われ、時刻t6で車いす運転が始動される。時刻t8で車いす用踏段7が目的階への到着と共に踏段形態が通常形態に復帰する。時刻t11で車いす利用者25を降ろし、時刻t12で、通常運転へ切り替える。この切替えによって一般利用者26による利用が再開される。
【0029】
上記実施の形態1によれば、エスカレータは毎分30mの速度で循環しており、行程にもよるが、時刻t1から時刻t3まで通常60秒程度と推定される。従って、係員27が到着する時刻t4以前に車いす用踏段7が到着して車いす運転の開始を待つ状態となる。即ち、時刻t1から時刻t3までの処理と、係員27の行動とは並行して進行することになる。このため、車いす運転が開始される時刻t6が早くなり、車いす利用者の待ち時間を短くすることができる。延いては、一般利用者の利用不可時間を短縮することができる。
また、図7に示したとおり、通常運転から車いす運転に切り替える操作が行われると、車いす利用者25が待機する一方の乗場5d又は5uに対する側の他方の乗場5u又は5d部分まで車いす用踏段7が巡回したときに、一般利用者26の乗込みを阻止し、更に略半周分巡回させるようにしたので、乗込みを阻止した時点で踏段6上に残留している一般利用者26を、車いす用踏段7が車いす利用者25が待機する一方の乗場5まで巡回するまでに他方の乗場5u又は5dまで搬送することができる。
起動停止のときは、電動機制御回路21eによって徐々に加減速をするようにしたので、踏段6、7上の利用者に不安を与えることがない。
【0030】
実施の形態2.
図11から図16は、この発明の実施の形態2を示す。この実施の形態2は、通常運転と車いす運転の運転方向が逆の場合、即ち、車いす運転が、それまで運転されていた通常運転に対して逆方向の場合を示す。ここでは、通常運転で上昇しているエスカレータに乗って、車いす利用者25が上階1uから下階1dへ下降する場合を示す。
図11は、車いす用エスカレータの要部を示す図2相当の側断面図で、乗込み阻止手段10が作動した時点の状態を示す。即ち、車いす利用者25からのインターホン11uによる要請により、管理室14の車いす運転スイッチ16cがONに設定されて通常運転から車いす運転に切り替えられる。更に下部カム8dが踏段センサL1dに係合して乗込み阻止手段10が作動した場合を示す。乗込み阻止手段10dを境として一般利用者26bは下階1dで待機し、乗込み阻止手段10dを通過した最後の一般利用者26aは車いす用エスカレータに乗る。
【0031】
図12は、踏段センサL1d及びL2dの動作点を示す図7相当の説明用図である。
下部カム8dが位置L1dで踏段センサL1dと係合して乗込み阻止手段10が作動した後も通常運転と同様の速度で運転が継続される。
下部カム8dが位置L2dで踏段センサL2dと係合すると、車いす用エスカレータは徐々に減速して停止する。従って、停止位置L2d′は踏段センサL2dの作動点を通過しており、車いす用踏段7は全て上部乗場5uに潜入した状態になっている。
また、位置L1dから停止位置L2d′までの踏段6、7の移動距離Dduは、下部乗込み阻止手段10dから上部乗場5uの踏段6の潜入点までの距離Duuよりも長い。従って、乗込み阻止手段10が作動する以前に下部乗込み阻止手段10dを通過した一般利用客26aは、車いす用エスカレータが停止する以前に上部乗場5uに到着し、踏段6上に取り残されることはない。
【0032】
図13は、踏段6の反転動作を示す説明用図である。即ち、下部カム8dが停止位置L2d′から反転して位置L2dで踏段センサL2dと係合すると、回転計23によって踏段6の移動距離を計数して下部カム8dが位置Lsdに達した点で踏段6、7は停止して図14に示す状態になる。途中で、踏段7c、7bは上部踏段形態変換装置9uと係合して変態しているが、踏段7aは変態していない。
【0033】
図14は、車いす用エスカレータの側断面図であって、停止した踏段7b及び7cに車いす利用者25を乗り込ませた後、係員27が車いす運転操作盤18uを操作する状態を示す。踏段6、7は徐々に加速し、途中で踏段7aが下部踏段形態変換装置9dと係合し、搬送が開始される。
【0034】
図15は、ROM21bに格納された制御プログラムであって、車いす運転が、それまでの通常運転とは逆方向の場合の制御プログラムの流れ図である。
逆方向の場合は、図9の手順S13から分岐して図15の手順S14rへ移る。
図15において、手順S14rで踏段センサL1が作動すると手順S15rへ進み、乗込み阻止手段10が作動して一般利用者26の利用を禁止する。
手順S16rで踏段センサL2が作動すると手順S171rへ進む。ここで、エスカレータを高速運転から減速して停止させる。このため、図12に符号L2d′で示したとおり、カム8は踏段センサL2の作動点を通過して停止しており、車いす用踏段7は全て乗場5内に潜入した状態で停止する。手順S172rへ進み、エスカレータを逆転させ、低速で運転する。車いす用踏段7は乗場5から繰り出され、手順S173rで踏段センサL2が再作動するのを待って手順S18rへ移り、踏段形態変換装置9を作動させて車いす用踏段7と係合可能な状態にする。
以下、手順S19rから手順S26rは、図9の手順S19から手順S26と同じであり、説明を省略する。
【0035】
図16は、上記実施の形態2に示す車いす運転と従来例とを対比したタイムチャートである。
従来例は、係員による手動操作によるものであり、車いす運転が通常運転と逆方向であっても時間的には変らない、と考えられる。従って、図10に示す内容と同じであり、説明を省略する。
【0036】
これに対して、実施の形態2における本願発明のタイムチャートは図15の流れ図に基くものであるが、図15は図9に対して手順S171r、172r及び173r部分が異なるのみである。この部分に対応して図16で時刻t23でエスカレータが逆転して低速で戻る動作が加わる。
しかし、手順S171r、172r及び173r部分も、エスカレータ制御の一環として自動的に行われる動作であり、時刻t4の係員27の到着までに完了しているものと推定される。
【0037】
上記実施の形態2の場合も、上記実施の形態1と同様に、時刻t1から時刻t3までの処理と、係員27の行動とは並行して進行することになる。このため、車いす運転が開始される時刻t6が早くなり、車いす利用者の待ち時間を短くすることができる。延いては、一般利用者の利用不可時間を短縮することができる。
また、図12に示したとおり、通常運転から車いす運転に切り替えてから、略半周分巡回させた後に停止させて車いす利用者25を乗せるようにしたので、乗込みを阻止した時点では踏段6上に一般利用者26が存在していたとしても、車いす利用者25を乗せる時点では残留者はいない。このため、一般利用者26への負担を軽減することができる。
起動停止のときは、電動機制御回路21eによって徐々に加減速をするようにしたので、踏段6、7上の利用者に不安を与えることがない。
【図面の簡単な説明】
【0038】
【図1】この発明の実施の形態1における車いす用エスカレータの要部を示す概略の側断面図。
【図2】この発明の実施の形態1における車いす用エスカレータの乗込み阻止手段10が作動した時点の要部を示す概略の側断面図。
【図3】この発明の実施の形態1における車いす用エスカレータの車いすの搬送過程を示す側断面図。
【図4】車いす用踏段7と下部踏段形態変換装置9dとの係合の概要を示す説明用図。
【図5】図4のV−V線断面を矢視した断面図。
【図6】車いす用踏段7と上部踏段形態変換装置9uと係合を示す図4のV−V線断面相当の断面図。
【図7】この発明の実施の形態1における踏段センサL1、L2及びL3の動作点を示す説明用図。
【図8】この発明の実施の形態1における車いす用エスカレータの電気回路を示すブロック図。
【図9】この発明の実施の形態1における車いす用エスカレータの制御プログラムを示す流れ図。
【図10】この発明の実施の形態1に示す車いす運転と従来例とを対比したタイムチャート。
【図11】この発明の実施の形態2における車いす用エスカレータの要部を示す図2相当の側断面図。
【図12】この発明の実施の形態2における車いす用エスカレータの踏段センサL1d及びL2dの動作点を示す図7相当の説明用図。
【図13】この発明の実施の形態2における踏段6の反転動作を示す説明用図。
【図14】この発明の実施の形態2における踏段6の反転動作を示す説明用図。
【図15】この発明の実施の形態2における車いす用エスカレータの制御プログラムを示す流れ図。
【図16】この発明の実施の形態2における車いす運転と従来例とを対比したタイムチャート。
【符号の説明】
【0039】
1 階、 2 主枠、 3 欄干、 4 移動手摺、 5 乗場、 6 踏段、 7 車いす用踏段、 8 カム、 9 踏段形態変換装置、 10 乗込み阻止手段、 11 インターホン、 14 管理室、 15 インターホン、 16 運転切替え手段、 17 運転切替え手段、 18 車いす運転操作盤、 21 エスカレータ制御盤、 22 駆動機、 23 回転計、 25 車いす利用者、 26 一般利用者、 27 係員、 L1 踏段センサ、 L2 踏段センサ、 L3 踏段センサ。
【技術分野】
【0001】
この発明は、一般利用者を搬送する通常運転から車いす利用者を搬送する車いす運転に円滑に切替えできるようにした車いす用エスカレータに係るものである。
【背景技術】
【0002】
従来の車いす用エスカレータの通常運転と車いす運転の相互切替えは、図10にも示したとおり、先ず車いす利用者が、自分が待機している車いす用エスカレータの所まで係員を呼び出す。係員は、一般利用者の通行を遮断した後、踏段上の残留者の搬送が完了するのを待って通常運転から車いす運転に切り替える。車いす用踏段を車いすを搬送することができる形態に変態させた後、その車いす用踏段に車いす利用者を乗せる。車いす運転を始動させて搬送し、先方の乗場に到着したならば、車いす利用者を降す。事後処理として、車いす用踏段を通常の形態に復帰させ、更に一般利用者の通行遮断を解いた後、通常運転に切り替えて再開させる。
従って、車いす利用者がエスカレータに乗るまでに、{(係員が来るまでの時間)+(一般利用者の通行を遮断する時間)+(車いす踏段が到着するまでの時間)+(車いす用踏段の形態を変態させる時間)}という長い時間がかかる。
【0003】
また、係員を呼び出したり待ち時間等の余分な時間を省き、車いす利用者の社会的自立を目指す趣旨から、案内放送で誘導することにより、車いす利用者が独自で運転する車いす用エスカレータも開示されている(例えば、特許文献1参照)。
【0004】
【特許文献1】特開平8−192981号公報(段落番号14)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
従来の車いす用エスカレータは、上記のとおり構成されており、係員が到着して始めて車いす運転のための処理が開始されるため、車いす利用者がエスカレータに乗るまでに長い時間がかかる、という問題があった。
また、車いすが積載されるスペースは極めて限られたものにならざるを得ない。車いす利用者が、独自で運転する場合は、その限定されたスペースに車いすを確実に積載するために、相当の装備がエスカレータに必要となる、という問題があった。
【0006】
この発明は、上記問題点を解決するためになされたものであり、車いす利用者の待ち時間を短くし、延いては一般利用者の利用不可時間を短縮することができる車いす用エスカレータを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
この発明に係る車いす用エスカレータは、一般利用者を搬送する通常形態の踏段の間に、上記通常形態から車いす搬送形態に変態する車いす用踏段が介在配置されて無端状に連結された踏段群を上部及び下部の乗場部分で反転させて循環させるようにしたエスカレータであって、本体部分に付置された運転切替え手段に加えて、管理室にも設置された運転切替え手段によって通常運転から車いす運転に切り替えられると、車いす利用者が待機する一方の乗場に対する側の他方の乗場部分まで車いす用踏段が巡回すると、一般利用者の乗込みを阻止し、更に他方の乗場部分から一方の乗場部分まで略半周分巡回させることによって乗込みを阻止した時点で踏段上に残留している一般利用者を他方の乗場まで搬送すると共に、一方の乗場まで巡回した車いす用踏段を通常形態から車いす搬送形態に変態させて車いす利用者を搬送し、他方の乗場部分に繰り込まれる手前で車いす搬送形態に変態した車いす用踏段を通常形態に復帰させるようにしたものである。
【発明の効果】
【0008】
この発明は上記のとおり構成されているので、以下の効果を奏する。
通常運転から車いす運転に切り替える操作は、通常、係員が常駐する管理室の運転切替え手段によって遠隔操作で行われ、係員が到着するまでの間に車いす運転に切り替わっている。また、車いす利用者が待機する一方の乗場に対する側の他方の乗場部分まで車いす用踏段が巡回したときに、一般利用者の乗込みを阻止し、更に略半周分巡回させるようにしたので、乗込みを阻止した時点で踏段上に残留している一般利用者を、他方の乗場まで搬送することができると共に、車いす用踏段を車いす利用者が待機している乗場まで巡回させて車いす搬送形態に変態させることができる。
このため、係員が対象とするエスカレータの所へ到着したときには、車いす運転を開始できるようになっているので、車いす利用者の待ち時間を短縮することができる、という効果も奏する。
また、車いす用踏段を車いす搬送形態に変態させる時点では、一般利用者を他方の乗場部分まで搬送し終えており、一般利用者に与える負担を軽減でき、かつ可能な限り長い時間一般利用者を搬送することができ、一般利用者の利用不可時間を低減させることができる、という効果を奏する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
以下、図面を参照して、この発明の実施の形態について説明する。なお、各図中、同一又は相当する部分には同一符号を付し、説明の重複を省いた。また、以下の説明において、下階又は下部に設置される装置類には、符号の末尾に「d」を付し、上階又は上部に設置される装置類には、符号の末尾に「u」を付して区別した。なお、両者を総称する場合は上記「d」及び「u」を省略する。
実施の形態1.
図1から図10は、この発明の実施の形態1を示す。この実施の形態1は、通常運転と車いす運転の運転方向が同じ場合、即ち、車いす運転が順方向の場合を示す。
図1は、車いす用エスカレータ(以下、単に「エスカレータ」ともいう。)の要部を示す概略の側断面図で、通常運転されている場合を示す。図において、下階1dと上階1uの間に主枠2が跨設されている。主枠2の両側には欄干3が立設されており、その頂部には移動手摺4が張設されている。また、主枠2には、一般利用者26を搬送する通常形態の踏段6の間に、通常形態から車いす搬送形態に変態する車いす用踏段7が介在配置されて無端状に連結された踏段群が内設されている。
【0010】
踏段6及び車いす用踏段7は、下階1dでは下部乗場5dに潜入し、上階1uでは上部乗場5uに潜入して、それぞれ反転して循環し、往路側で露呈して一般利用者26を搬送し、通常運転から車いす運転に切り替えられると、車いす用踏段7を変態させて車いす利用者25を搬送する。
また、車いす用踏段7は、車止めが装着された踏段7cと、この踏段7cと連結されて2連の踏段を構成する踏段7bと、車いすとの干渉を避けるために傾斜する踏段7aからなる。動作は図4から図6によって説明する。
車いす用踏段7の下階1d側直近の踏段6の下面には下部カム8dが、また、上階1u側直近の踏段6の下面には上部カム8uが、それぞれ取り付けられている。
【0011】
下部乗場5d及び上部乗場5uにはそれぞれ乗込み阻止手段10d及び10uが立設されており、インターホン11d及び11uも取り付けられている。管理室14には、運転切替え手段16が設けられており、車いす利用者25からインターホン11で管理室14のインターホン15に搬送の要請があると、号機選択スイッチ16aで該当する車いす用エスカレータを選択し、更に、乗場選択スイッチ16bによってエスカレータの下階1dか上階1uかを選択した後、車いす運転スイッチ16cをONにセットした後、キーを抜脱する。指定された号機の車いす用踏段7が指定された乗場5に到着する。図1では、通常運転であり、車いす運転スイッチ16cはOFFになっている。
【0012】
また、欄干3の両端部にも、運転切替え手段17d及び17uが配設されおり、詳細を図8に示したとおり、通常運転と車いす運転の切替えができるようになっており、車いす運転にすると操作された運転切替え手段17が設置されている乗場5に車いす用踏段7が到着するようになっている。
更に、欄干3の両端部には、車いす運転操作盤18d及び18uも設置されており、詳細を図8に示したとおり、車いす利用者25を車いす用踏段7に乗せて始動させるときに操作する。運転切替え手段16、17及び車いす運転操作盤18の操作信号は、エスカレータ制御盤21へ伝えられ、駆動機22によって踏段6及び7が駆動される。
【0013】
踏段6、7の循環路の上部反転部には、踏段6が復路側にあるときに上部カム8uに係合して作動する踏段センサL1uと、車いす用踏段7が上昇して上部踏段形態変換装置9uとの係合部位に先立って上部カム8uに係合して作動する踏段センサL3uと、車いす用踏段7が往路側へ反転して上部乗場5uから繰り出されて上部踏段形態変換装置9uとの係合部位に先立って下部カム8dと係合して作動する踏段センサL2dが、それぞれ配設されている。
下部反転部も同様に、踏段6が復路側にあるときに下部カム8dに係合して作動する踏段センサL1dと、車いす用踏段7が下降して下部踏段形態変換装置9dとの係合部位に先立って下部カム8dに係合して作動する踏段センサL3dと、車いす用踏段7が往路側へ反転して下部乗場5dから繰り出されて下部踏段形態変換装置9dとの係合部位に先立って上部カム8uと係合して作動する踏段センサL2uが、それぞれ配設されている。
【0014】
図2は、車いす用エスカレータの要部を示す概略の側断面図で、乗込み阻止手段10が作動した時点の状態を示す。
即ち、図1の状態で車いす利用者25からのインターホン11dによる要請があり、その後直ちに管理室14の車いす運転スイッチ16cがONに設定されて通常運転から車いす運転に切り替えられたとする。車いす用エスカレータは、その後も通常運転を継続して上部カム8uが踏段センサL1uに係合し、乗込み阻止手段10が作動した場合を示す。乗込み阻止手段10dを境として一般利用者26bは下階1dで待機しなければならない。乗込み阻止手段10dを通過した一般利用者26aは、通常運転を継続している車いす用エスカレータによって上階1uへ到達することができる。一般利用者26aが上階1uへ到達したときは、図2の状態から踏段6、7は略半周して図3(a)に示す状態になっている。
【0015】
図3は、車いす運転によって車いす利用者25を下階1dから上階1uへ搬送する過程を示す側断面図である。
図3(a)に示す状態に先立って、図2の状態から巡回して上部カム8uが踏段センサL2uに係合して作動すると、それまで通常運転されていた踏段6、7が毎分30mの速度から減速されて低速度になると共に、下部踏段形態変換装置9dが作動して踏段7a及び7bを通常形態から車いす搬送形態に変態させる。踏段センサL2uが作動してから回転計23の信号によって踏段6の移動距離を検出して所定の位置で停止する。図3(a)は、その停止状態を示す。エスカレータに到着した係員27は停止した踏段7b及び7cに車いす利用者を乗り込ませた後、車いす運転操作盤18dを操作する。踏段6、7は徐々に加速し、途中で踏段7cが下部踏段形態変換装置9dと係合して車止めが突出する。
図3(b)は、搬送中を示し、車いす利用者25は係員27の介添えの下に搬送される。
【0016】
図3(c)は、車いす利用者25が上部乗場5u部分に到着した状態を示す。図3(c)に示す状態に先立って、図3(b)の状態から巡回して上部カム8uが踏段センサL3uに係合して作動すると、それまで通常運転されていた踏段6、7が毎分30mの速度から減速されて低速度になると共に、上部踏段形態変換装置9uが作動して踏段7a及び7bを車いす搬送形態から通常形態に復帰させる。踏段センサL3uが作動してから回転計23の信号によって踏段6の移動距離を検出して所定の位置で停止する。図3(c)は、その停止状態を示す。
図3(d)は、車いす運転から通常運転への切替えを示す。即ち、停止した車いす用エスカレータから車いす利用者25を降ろした後、係員27は、図8に示した運転切替え手段17uの車いす運転スイッチ17auを一旦OFFにして戻す。これにより、乗込み阻止手段10は復帰して車いす利用者の搬送を終了する。キーを抜脱して運転スイッチ17buをUP又はDOWNにして通常運転に切り替える。
【0017】
図4は、車いす用踏段7のうち、踏段7cと連結されて2連の踏段を構成する踏段7bについて、下部踏段形態変換装置9dとの係合の概要を図5と共に示す説明用図である。
即ち、踏段センサL2uが上部カム8uに係合すると、それまで通常運転されていた踏段6、7は減速されて低速度になると共に、下部踏段形態変換装置9dの昇降機構91dが作動して誘導レール92を押し上げる。誘導ローラ93は、誘導レール92に係合し、踏段7bが図5に示したとおり(a)(b)(c)と移動するのに伴って、ラック94が中央部へ寄せられてピニオン95を回動させる。この回動によってピニオン95と噛合するラックが形成されたフォーク96が進出して隣接する踏段7cの下面に挿入される。このため、踏段7bと踏段7cは変態し、連動して上下動して同一平面を形成する。車いすは踏段7bと踏段7c上に載置される。
逆に、踏段6、7が下降する場合は、図5において、(c)(b)(a)と推移して踏段7bが下部踏段形態変換装置9dに係合することによって、フォーク96が退行して踏段7cとの連動が解除されて元の状態に復帰する。
【0018】
図6は、踏段7bが上部踏段形態変換装置9uと係合する場合を示す。即ち、踏段6、7が上昇する場合は、下部踏段形態変換装置9dに係合して変態した踏段7bが、上部踏段形態変換装置9uと係合することによってフォーク96が退行して踏段7cとの連動が解除されて通常形態に復帰する。
逆に、踏段6、7が下降する場合は、(c)(b)(a)と推移して踏段7bが上部踏段形態変換装置9uに係合することによって、フォーク96が進出して隣接する踏段7cの下面に挿入される。このため、踏段7bと踏段7cは変態し、連動して上下動して同一平面を形成する。車いすは踏段7bと踏段7c上に載置される。この変態は、下部踏段形態変換装置9dとの係合によって復帰することは上記のとおりである。
なお、他の踏段7a及び車止め97を備えた踏段7cを含めて車いす用踏段7については、特開平3−128885号公報によって開示され、公知されているので詳細は省略する。
【0019】
図7は、踏段6、7と踏段センサL1、L2及びL3の動作点の関係を示す説明用図である。
図7(a)は、通常運転が上昇方向であるときに、車いす運転も上昇方向である、いわゆる順方向の上昇運転の場合を示す。図7(c)を参照して説明する。
即ち、車いす運転スイッチ16c又は運転切替え手段17dの車いす運転スイッチ17adが操作されて車いす運転に切り替えられた後も、車いす用エスカレータは通常運転の速度で運転を継続する。
上部カム8uが位置L1uで踏段センサL1uと係合すると、乗込み阻止手段10u及び10dが作動する。その後も通常運転と同様の速度で運転が継続される。
上部カム8uが位置L2uで踏段センサL2uと係合すると、車いす用エスカレータは減速すると共に、下部踏段形態変換装置9dが作動して車いす用踏段7と係合可能な状態となる。また、踏段センサL2uが作動すると、回転計23によって踏段6の移動距離を計数して上部カム8uが位置Lsuに達した点で停止させる。途中で、踏段7a、7bは下部踏段形態変換装置9dと係合して変態するが、踏段7cは変態していない。車いす利用者25が乗り込んで、車いす運転が始動すると踏段7cも変態する。以後下部踏段形態変換装置9dが復帰すると共に、踏段6、7は徐々に増速する。
【0020】
上部カム8uが位置L3uで踏段センサL3uと係合すると、車いす用エスカレータは減速すると共に、上部踏段形態変換装置9uが作動して車いす用踏段7と係合可能な状態となる。また、踏段センサL3uが作動すると、回転計23によって踏段6の移動距離を計数して上部カム8uが位置Lfuに達した点で停止させる。途中で、踏段7a、7bは上部踏段形態変換装置9uと係合して通常形態に復帰するが、踏段7cは変態した状態である。車いす利用者25を降ろして運転切替え手段17uの運転スイッチ17buをUPにすると始動して踏段7cも復帰する。以後上部踏段形態変換装置9uが復帰すると共に、踏段6、7は徐々に増速して通常運転が再開される。
従って、踏段6、7は乗込み阻止手段10が作動した位置L1uから位置Lsuまで進んで停止する。この距離は、下部乗込み阻止手段10dから上部乗場5uの踏段6の潜入点までの距離Duuよりも長い。従って、乗込み阻止手段10が作動する以前に下部乗込み阻止手段10dを通過した一般利用客26は、上部カム8uが位置Lsuに達して車いす用エスカレータが停止したとき、踏段6上に取り残されることはない。
【0021】
図7(b)は、通常運転が下降方向であるときに、車いす運転も下降する、いわゆる順方向の下降運転の場合を示す。上記図7(a)と同様であって、図7(c)を参照して説明する。
即ち、車いす運転スイッチ16c又は運転切替え手段17uの車いす運転スイッチ17auが操作されて車いす運転に切り替えられた後も、車いす用エスカレータは通常運転の速度で運転を継続する。
下部カム8dが位置L1dで踏段センサL1dと係合すると、乗込み阻止手段10u及び10dが作動する。その後も通常運転と同様の速度で運転が継続される。
下部カム8dが位置L2dで踏段センサL2dと係合すると、車いす用エスカレータは減速すると共に、上部踏段形態変換装置9uが作動して車いす用踏段7と係合可能な状態となる。また、踏段センサL2dが作動すると、回転計23によって踏段6の移動距離を計数して下部カム8dが位置Lsdに達した点で停止させる。途中で、踏段7a、7bは上部踏段形態変換装置9uと係合して変態するが、踏段7aは変態していない。車いす利用者25が乗込んで、車いす運転が始動すると踏段7cも変態する。以後上部踏段形態変換装置9uが復帰すると共に、踏段6、7は徐々に増速する。
【0022】
下部カム8dが位置L3dで踏段センサL3dと係合すると、車いす用エスカレータは減速すると共に、下部踏段形態変換装置9dが作動して車いす用踏段7と係合可能な状態となる。また、踏段センサL3dが作動すると、回転計23によって踏段6の移動距離を計数して下部カム8dが位置Lfdに達した点で停止させる。途中で、踏段7c、7bは下部踏段形態変換装置9dと係合して通常形態に復帰するが、踏段7cは変態した状態である。車いす利用者25を降ろして運転切替え手段17dの運転スイッチ17bdをUPにすると始動して踏段7cも復帰する。以後下部踏段形態変換装置9dが復帰すると共に、踏段6、7は徐々に増速して通常運転が再開される。
従って、踏段6、7は乗込み阻止手段10が作動した位置L1dから位置Lsdまで進んで停止する。この距離は、上部乗込み阻止手段10uから下部乗場5dの踏段6の潜入点までの距離Dddよりも長い。従って、乗込み阻止手段10が作動する以前に上部乗込み阻止手段10uを通過した一般利用客26は、下部カム8dが位置Lsdに達して車いす用エスカレータが停止したとき、踏段6上に取り残されることはない。
【0023】
図8は、電気回路を示すブロック図である。ここで、運転切替え手段17は、車いす運転スイッチ17aと、通常運転のための運転スイッチ17bと、非常停止釦17cとからなる。車いす運転スイッチ17aは、中立位置でキーを挿入してONの位置まで回した後、再び中立位置に戻してキーを抜脱して車いす運転に切り替える。運転スイッチ17bは、各位置へ回して抜脱して切り替える。運転切替え手段17は、上部と下部にそれぞれ設けられていて、車いす運転スイッチ17aは操作された部位へ車いす用踏段7が寄せられる。エスカレータ制御盤21は、マイコンで構成されており、CPU21aと、各種のプログラムが格納されたROM21bと、一時的なデータが記録されるRAM21cと、外部装置との信号の授受を行う入出力装置21dと、駆動機22を制御する電動機制御回路21eとからなる。電動機制御回路21eは速度制御のための速度パーンが格納されており、徐々に加速して毎分30mの高速に達し、減速点から減速して低速になり、停止点で制動機(図示しない。)を作動させて駆動機22を制止する。安全回路21fには、踏段チェーン安全装置及びスカートガード安全装置等が含まれる。
【0024】
図9は、ROM21bに格納された制御プログラムを示す流れ図である。エスカレータは通常運転されているものとする。手順S11で、各乗場5に設置されたインターホン11から管理室14のインターホン15へ車いす運転の依頼があると、手順S12で、依頼に基いて運転切替え手段16が操作される。その操作は、号機選択スイッチ16aによって該当するエスカレータの選択と、乗場選択スイッチ16bによって該当する乗場の選択と、車いす運転スイッチ16cをONにして戻してキーを抜脱し、通常運転から車いす運転へ切り替える。手順S13で車いす運転の運転方向をチェックする。この実施の形態1では、上記のとおり、順方向、即ち、通常運転と同方向であるから手順S14へ進む。ここで、踏段センサL1が作動するのを待つ。即ち、図7に示したとおり、上昇運転の場合は、踏段センサL1uが、下降運転の場合は踏段センサL1dが作動すると、手順S15へ進み、乗込み阻止手段10が作動して一般利用者26の利用を禁止する。ここでは、その旨を表示装置に表示するものとする。
【0025】
手順S16で踏段センサL2が作動するのを待つ。即ち、図7に示したとおり、上昇運転の場合は、踏段センサL2uが、下降運転の場合は踏段センサL2dが作動すると、手順S17へ進む。ここで、エスカレータを高速運転から減速して低速運転にすると共に、手順S18で踏段形態変換装置9の誘導レール92(図4に示す。)を上昇させ、車いす用踏段7と係合して車いす搬送形態に変態させる。手順S19で、踏段センサL2が作動してからの踏段6の移動距離を回転計23で計測し、停止点Lsu又はLsdでエスカレータを停止させる。車いす利用者25を乗り込ませた後、手順S20で、係員27は手元の車いす運転操作盤18の運転釦18au又は18adを押すと、車いす運転が開始される。
【0026】
手順S21で、踏段センサL3が作動するのを待つ。即ち、図7に示したとおり、上昇運転の場合は、踏段センサL3uが、下降運転の場合は踏段センサL3dが作動すると、手順S22へ進む。ここで、エスカレータを高速運転から減速して低速運転にすると共に、手順S23で踏段形態変換装置9の誘導レール92(図4)を上昇させ、車いす用踏段7と係合して車いす搬送形態から通常形態に復帰させる。手順S24で、踏段センサL3が作動してからの踏段6の移動距離を回転計23で計測し、停止点Lfu又はLfdでエスカレータを停止させる。係員27は車いす利用者25をエスカレータから降ろした後、手順S25で、運転切替え手段17の車いす運転スイッチ17aをOFFにしてキーを抜脱すると共に、運転スイッチ17bをUP又はDOWNに回してキーを抜脱する。これによって、乗込み阻止手段10による阻止表示は消えて一般利用者26の利用が可能となる。手順S26で、エスカレータは徐々に加速して通常運転が再開されて、車いす利用者25の搬送は終了する。
【0027】
図10は、上記実施の形態1に示す車いす運転と従来例とを対比したタイムチャートである。
従来例では、時刻t0で係員を呼び出し、時刻t4で係員が到着すると、この時点から車いす運転の準備が開始される。即ち、時刻t7で一般利用者の乗込みを阻止し、時刻t9で車いす運転に切り替え、時刻t10で車いす用踏段を変態させる操作を行う。更に、時刻t13で車いす利用者をエスカレータに乗せ、時刻t14で始動させる。目的階に到着すると時刻t15で車いす利用者を降ろした後、時刻t16で車いす用踏段を復帰させる操作を行うと共に、時刻t17で一般利用者の利用を再開させる措置をとり、時刻t18で通常運転へ切替える。
【0028】
これに対して、本願発明のタイムチャートは図9の流れ図に基いたものである。時刻t0で係員を呼び出すと、時刻t1で管理室14の運転切替え手段16が操作される。暫く通常運転が継続されるが、時刻t2で手順S15に示す一般利用者26の利用停止の措置がなされる。時刻t3で手順S18に示す車いす用踏段7が到着して変態する。時刻t4で係員27が到着する。時刻t5で車いす利用者25の乗込みが行われ、時刻t6で車いす運転が始動される。時刻t8で車いす用踏段7が目的階への到着と共に踏段形態が通常形態に復帰する。時刻t11で車いす利用者25を降ろし、時刻t12で、通常運転へ切り替える。この切替えによって一般利用者26による利用が再開される。
【0029】
上記実施の形態1によれば、エスカレータは毎分30mの速度で循環しており、行程にもよるが、時刻t1から時刻t3まで通常60秒程度と推定される。従って、係員27が到着する時刻t4以前に車いす用踏段7が到着して車いす運転の開始を待つ状態となる。即ち、時刻t1から時刻t3までの処理と、係員27の行動とは並行して進行することになる。このため、車いす運転が開始される時刻t6が早くなり、車いす利用者の待ち時間を短くすることができる。延いては、一般利用者の利用不可時間を短縮することができる。
また、図7に示したとおり、通常運転から車いす運転に切り替える操作が行われると、車いす利用者25が待機する一方の乗場5d又は5uに対する側の他方の乗場5u又は5d部分まで車いす用踏段7が巡回したときに、一般利用者26の乗込みを阻止し、更に略半周分巡回させるようにしたので、乗込みを阻止した時点で踏段6上に残留している一般利用者26を、車いす用踏段7が車いす利用者25が待機する一方の乗場5まで巡回するまでに他方の乗場5u又は5dまで搬送することができる。
起動停止のときは、電動機制御回路21eによって徐々に加減速をするようにしたので、踏段6、7上の利用者に不安を与えることがない。
【0030】
実施の形態2.
図11から図16は、この発明の実施の形態2を示す。この実施の形態2は、通常運転と車いす運転の運転方向が逆の場合、即ち、車いす運転が、それまで運転されていた通常運転に対して逆方向の場合を示す。ここでは、通常運転で上昇しているエスカレータに乗って、車いす利用者25が上階1uから下階1dへ下降する場合を示す。
図11は、車いす用エスカレータの要部を示す図2相当の側断面図で、乗込み阻止手段10が作動した時点の状態を示す。即ち、車いす利用者25からのインターホン11uによる要請により、管理室14の車いす運転スイッチ16cがONに設定されて通常運転から車いす運転に切り替えられる。更に下部カム8dが踏段センサL1dに係合して乗込み阻止手段10が作動した場合を示す。乗込み阻止手段10dを境として一般利用者26bは下階1dで待機し、乗込み阻止手段10dを通過した最後の一般利用者26aは車いす用エスカレータに乗る。
【0031】
図12は、踏段センサL1d及びL2dの動作点を示す図7相当の説明用図である。
下部カム8dが位置L1dで踏段センサL1dと係合して乗込み阻止手段10が作動した後も通常運転と同様の速度で運転が継続される。
下部カム8dが位置L2dで踏段センサL2dと係合すると、車いす用エスカレータは徐々に減速して停止する。従って、停止位置L2d′は踏段センサL2dの作動点を通過しており、車いす用踏段7は全て上部乗場5uに潜入した状態になっている。
また、位置L1dから停止位置L2d′までの踏段6、7の移動距離Dduは、下部乗込み阻止手段10dから上部乗場5uの踏段6の潜入点までの距離Duuよりも長い。従って、乗込み阻止手段10が作動する以前に下部乗込み阻止手段10dを通過した一般利用客26aは、車いす用エスカレータが停止する以前に上部乗場5uに到着し、踏段6上に取り残されることはない。
【0032】
図13は、踏段6の反転動作を示す説明用図である。即ち、下部カム8dが停止位置L2d′から反転して位置L2dで踏段センサL2dと係合すると、回転計23によって踏段6の移動距離を計数して下部カム8dが位置Lsdに達した点で踏段6、7は停止して図14に示す状態になる。途中で、踏段7c、7bは上部踏段形態変換装置9uと係合して変態しているが、踏段7aは変態していない。
【0033】
図14は、車いす用エスカレータの側断面図であって、停止した踏段7b及び7cに車いす利用者25を乗り込ませた後、係員27が車いす運転操作盤18uを操作する状態を示す。踏段6、7は徐々に加速し、途中で踏段7aが下部踏段形態変換装置9dと係合し、搬送が開始される。
【0034】
図15は、ROM21bに格納された制御プログラムであって、車いす運転が、それまでの通常運転とは逆方向の場合の制御プログラムの流れ図である。
逆方向の場合は、図9の手順S13から分岐して図15の手順S14rへ移る。
図15において、手順S14rで踏段センサL1が作動すると手順S15rへ進み、乗込み阻止手段10が作動して一般利用者26の利用を禁止する。
手順S16rで踏段センサL2が作動すると手順S171rへ進む。ここで、エスカレータを高速運転から減速して停止させる。このため、図12に符号L2d′で示したとおり、カム8は踏段センサL2の作動点を通過して停止しており、車いす用踏段7は全て乗場5内に潜入した状態で停止する。手順S172rへ進み、エスカレータを逆転させ、低速で運転する。車いす用踏段7は乗場5から繰り出され、手順S173rで踏段センサL2が再作動するのを待って手順S18rへ移り、踏段形態変換装置9を作動させて車いす用踏段7と係合可能な状態にする。
以下、手順S19rから手順S26rは、図9の手順S19から手順S26と同じであり、説明を省略する。
【0035】
図16は、上記実施の形態2に示す車いす運転と従来例とを対比したタイムチャートである。
従来例は、係員による手動操作によるものであり、車いす運転が通常運転と逆方向であっても時間的には変らない、と考えられる。従って、図10に示す内容と同じであり、説明を省略する。
【0036】
これに対して、実施の形態2における本願発明のタイムチャートは図15の流れ図に基くものであるが、図15は図9に対して手順S171r、172r及び173r部分が異なるのみである。この部分に対応して図16で時刻t23でエスカレータが逆転して低速で戻る動作が加わる。
しかし、手順S171r、172r及び173r部分も、エスカレータ制御の一環として自動的に行われる動作であり、時刻t4の係員27の到着までに完了しているものと推定される。
【0037】
上記実施の形態2の場合も、上記実施の形態1と同様に、時刻t1から時刻t3までの処理と、係員27の行動とは並行して進行することになる。このため、車いす運転が開始される時刻t6が早くなり、車いす利用者の待ち時間を短くすることができる。延いては、一般利用者の利用不可時間を短縮することができる。
また、図12に示したとおり、通常運転から車いす運転に切り替えてから、略半周分巡回させた後に停止させて車いす利用者25を乗せるようにしたので、乗込みを阻止した時点では踏段6上に一般利用者26が存在していたとしても、車いす利用者25を乗せる時点では残留者はいない。このため、一般利用者26への負担を軽減することができる。
起動停止のときは、電動機制御回路21eによって徐々に加減速をするようにしたので、踏段6、7上の利用者に不安を与えることがない。
【図面の簡単な説明】
【0038】
【図1】この発明の実施の形態1における車いす用エスカレータの要部を示す概略の側断面図。
【図2】この発明の実施の形態1における車いす用エスカレータの乗込み阻止手段10が作動した時点の要部を示す概略の側断面図。
【図3】この発明の実施の形態1における車いす用エスカレータの車いすの搬送過程を示す側断面図。
【図4】車いす用踏段7と下部踏段形態変換装置9dとの係合の概要を示す説明用図。
【図5】図4のV−V線断面を矢視した断面図。
【図6】車いす用踏段7と上部踏段形態変換装置9uと係合を示す図4のV−V線断面相当の断面図。
【図7】この発明の実施の形態1における踏段センサL1、L2及びL3の動作点を示す説明用図。
【図8】この発明の実施の形態1における車いす用エスカレータの電気回路を示すブロック図。
【図9】この発明の実施の形態1における車いす用エスカレータの制御プログラムを示す流れ図。
【図10】この発明の実施の形態1に示す車いす運転と従来例とを対比したタイムチャート。
【図11】この発明の実施の形態2における車いす用エスカレータの要部を示す図2相当の側断面図。
【図12】この発明の実施の形態2における車いす用エスカレータの踏段センサL1d及びL2dの動作点を示す図7相当の説明用図。
【図13】この発明の実施の形態2における踏段6の反転動作を示す説明用図。
【図14】この発明の実施の形態2における踏段6の反転動作を示す説明用図。
【図15】この発明の実施の形態2における車いす用エスカレータの制御プログラムを示す流れ図。
【図16】この発明の実施の形態2における車いす運転と従来例とを対比したタイムチャート。
【符号の説明】
【0039】
1 階、 2 主枠、 3 欄干、 4 移動手摺、 5 乗場、 6 踏段、 7 車いす用踏段、 8 カム、 9 踏段形態変換装置、 10 乗込み阻止手段、 11 インターホン、 14 管理室、 15 インターホン、 16 運転切替え手段、 17 運転切替え手段、 18 車いす運転操作盤、 21 エスカレータ制御盤、 22 駆動機、 23 回転計、 25 車いす利用者、 26 一般利用者、 27 係員、 L1 踏段センサ、 L2 踏段センサ、 L3 踏段センサ。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
一般利用者を搬送する通常形態の踏段の間に、上記通常形態から車いす搬送形態に変態する車いす用踏段が介在配置されて無端状に連結された踏段群を上部及び下部の乗場部分で反転させて循環させ、往路側で露呈させて上記一般利用者を搬送し、通常運転から車いす運転に切り替えられると、上記車いす用踏段を変態させて車いす利用者を搬送する車いす用エスカレータにおいて、
本体部分に付置されると共に係員の管理室にも設置されて遠隔からも通常運転と上記車いす運転に切替え可能な運転切替え手段と、
上記車いす用踏段が上記各乗場部分にあるときに個別に作動する上部及び下部の踏段センサと、
上記車いす利用者を一方の上記乗場から他方の上記乗場まで搬送するために車いす運転に切り替えられた状態で他方の上記踏段センサが作動すると上記乗場への一般利用者の乗込みを阻止する乗込み阻止手段と、
乗込み阻止手段が作動している状態で上記車いす用踏段が一方の上記乗場部分から上記往路側へ繰り出されたときに係合して通常形態から車いす搬送形態に変態させて上記車いす利用者を搬送し、他方の上記乗場部分に繰り込まれる手前で再び係合して上記車いす搬送形態に変態した上記車いす用踏段を上記通常形態に復帰させる上部及び下部の踏段形態変換装置とを備えた車いす用エスカレータ。
【請求項2】
車いす利用者は、通常運転時と同方向へ搬送されるものとし、上記車いす用踏段は乗込み阻止手段が作動した後も通常運転時と同じ速度で継続して上記車いす利用者が待機する一方の上記乗場部分まで運転された後、減速されて往路側へ繰り出されて一方の踏段形態変換装置と係合して通常形態から車いす搬送形態に変態して停止し、係員の操作によって起動して車いすを搬送して他方の踏段形態変換装置に係合して通常形態に復帰して停止するものとした請求項1に記載の車いす用エスカレータ。
【請求項3】
車いす利用者は、通常運転時と逆方向へ搬送されるものとし、車いす用踏段は、乗込み阻止手段が作動した後も通常運転時と同じ速度で継続して上記車いす利用者が待機する一方の乗場部分まで運転されて一方の上記踏段形態変換装置を通過して停止した後、反転して低速度で往路側へ繰り出されて一方の上記踏段形態変換装置と係合して通常形態から車いす搬送形態に変態して停止し、係員の操作によって起動して車いすを搬送して他方の上記踏段形態変換装置と係合して通常形態に復帰して停止するものとした請求項1に記載の車いす用エスカレータ。
【請求項4】
車いす用踏段は、一方の上記踏段形態変換装置を通過して停止した後、係員の操作によって反転して低速度で往路側へ繰り出されるものとした請求項3に記載の車いす用エスカレータ。
【請求項5】
踏段は、徐々に加速して起動し、かつ、徐々に減速して停止するものとした請求項2又は請求項3に記載の車いす用エスカレータ。
【請求項6】
踏段センサは、この踏段センサが作動してから車いす用踏段が車いす搬送形態に変態するまでに踏段が移動する距離が、乗込み阻止手段から先方の乗場部分に上記踏段が繰り込まれる点までの距離よりも長くなる位置に取り付けられて上記乗込み阻止手段を作動させるものとした請求項1に記載の車いす用エスカレータ。
【請求項1】
一般利用者を搬送する通常形態の踏段の間に、上記通常形態から車いす搬送形態に変態する車いす用踏段が介在配置されて無端状に連結された踏段群を上部及び下部の乗場部分で反転させて循環させ、往路側で露呈させて上記一般利用者を搬送し、通常運転から車いす運転に切り替えられると、上記車いす用踏段を変態させて車いす利用者を搬送する車いす用エスカレータにおいて、
本体部分に付置されると共に係員の管理室にも設置されて遠隔からも通常運転と上記車いす運転に切替え可能な運転切替え手段と、
上記車いす用踏段が上記各乗場部分にあるときに個別に作動する上部及び下部の踏段センサと、
上記車いす利用者を一方の上記乗場から他方の上記乗場まで搬送するために車いす運転に切り替えられた状態で他方の上記踏段センサが作動すると上記乗場への一般利用者の乗込みを阻止する乗込み阻止手段と、
乗込み阻止手段が作動している状態で上記車いす用踏段が一方の上記乗場部分から上記往路側へ繰り出されたときに係合して通常形態から車いす搬送形態に変態させて上記車いす利用者を搬送し、他方の上記乗場部分に繰り込まれる手前で再び係合して上記車いす搬送形態に変態した上記車いす用踏段を上記通常形態に復帰させる上部及び下部の踏段形態変換装置とを備えた車いす用エスカレータ。
【請求項2】
車いす利用者は、通常運転時と同方向へ搬送されるものとし、上記車いす用踏段は乗込み阻止手段が作動した後も通常運転時と同じ速度で継続して上記車いす利用者が待機する一方の上記乗場部分まで運転された後、減速されて往路側へ繰り出されて一方の踏段形態変換装置と係合して通常形態から車いす搬送形態に変態して停止し、係員の操作によって起動して車いすを搬送して他方の踏段形態変換装置に係合して通常形態に復帰して停止するものとした請求項1に記載の車いす用エスカレータ。
【請求項3】
車いす利用者は、通常運転時と逆方向へ搬送されるものとし、車いす用踏段は、乗込み阻止手段が作動した後も通常運転時と同じ速度で継続して上記車いす利用者が待機する一方の乗場部分まで運転されて一方の上記踏段形態変換装置を通過して停止した後、反転して低速度で往路側へ繰り出されて一方の上記踏段形態変換装置と係合して通常形態から車いす搬送形態に変態して停止し、係員の操作によって起動して車いすを搬送して他方の上記踏段形態変換装置と係合して通常形態に復帰して停止するものとした請求項1に記載の車いす用エスカレータ。
【請求項4】
車いす用踏段は、一方の上記踏段形態変換装置を通過して停止した後、係員の操作によって反転して低速度で往路側へ繰り出されるものとした請求項3に記載の車いす用エスカレータ。
【請求項5】
踏段は、徐々に加速して起動し、かつ、徐々に減速して停止するものとした請求項2又は請求項3に記載の車いす用エスカレータ。
【請求項6】
踏段センサは、この踏段センサが作動してから車いす用踏段が車いす搬送形態に変態するまでに踏段が移動する距離が、乗込み阻止手段から先方の乗場部分に上記踏段が繰り込まれる点までの距離よりも長くなる位置に取り付けられて上記乗込み阻止手段を作動させるものとした請求項1に記載の車いす用エスカレータ。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
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【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【公開番号】特開2006−16185(P2006−16185A)
【公開日】平成18年1月19日(2006.1.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−198008(P2004−198008)
【出願日】平成16年7月5日(2004.7.5)
【出願人】(000006013)三菱電機株式会社 (33,312)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成18年1月19日(2006.1.19)
【国際特許分類】
【出願日】平成16年7月5日(2004.7.5)
【出願人】(000006013)三菱電機株式会社 (33,312)
【Fターム(参考)】
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