説明

車両における搭載自転車の固定構造

【課題】簡単な手順で自動車の荷室に自転車を固定することができる車両における搭載自転車の固定構造を提供する。
【解決手段】シートクッション3の下面7の前側と後側に、前記シートクッション3を車体側の床面17に支持する前側シートレッグ9と後側シートレッグ11とをそれぞれ配設し、前記後側シートレッグ11に自転車41の車輪を保持する車輪保持手段15を設け、前記前側シートレッグを中心にしてシートクッション3を倒立させた状態で、前記車輪保持手段15に自転車41の車輪を保持させる搭載自転車の固定構造である。前記車輪保持手段15は、シートクッション3を倒立させた状態で後方側が凹状の保持部材27を有し、該保持部材27に自転車41の車輪が収容および保持される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両における搭載自転車の固定構造に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、自動車の室内後部に設けられた荷室にマウテンバイク等の自転車を搭載する技術が開発されている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
この特許文献1に記載された自転車固定装置は、自転車のハンドブレーキを引いた状態でブレーキ用固定ベルトを介して前記ハンドブレーキを締結すると共に、自転車のフレームをフレーム用固定ベルトを介して荷室の床面に取り付けている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】実用新案登録第3022254号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、前記特許文献1に記載の搭載自転車の固定構造においては、ブレーキ用固定ベルトとフレーム用固定ベルトを用いるため、自転車を車体側に固定する作業が面倒であるという問題があった。
【0006】
そこで、本発明は、簡単な手順で自動車の荷室に自転車を固定することができる車両における搭載自転車の固定構造を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明に係る車両における搭載自転車の固定構造では、シートクッションの下面の前側に設けた前側シートレッグを中心にシートクッションを前側に倒立させた状態で、後側シートレッグに設けた車輪保持手段を介して自転車の車輪を保持する。前記車輪保持手段は、シートクッションを倒立させた状態で後方側が凹状の保持部を有し、該保持部材に自転車の車輪が収容および保持される。
【発明の効果】
【0008】
本発明に係る車両における搭載自転車の固定構造によれば、自転車の車輪を車輪保持手段の保持部に収容および保持させるという簡単な手順で自転車を荷室に固定することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】本発明の実施形態によるリヤシートを示す斜視図である。
【図2】図1における車輪支持ブラケットの近傍を拡大した斜視図である。
【図3】本発明の実施形態による車両荷室に搭載自転車を固定した構造を示す斜視図である。
【図4】本発明の実施形態による車輪保持手段を示す分解斜視図である。
【図5】車輪保持手段において、支持ピンをスライドさせてシートレッグ本体に収容した状態を示す斜視図である。
【図6】車輪保持手段に自転車の車輪が保持されている状態を示す拡大斜視図である。
【図7】本発明の他の実施形態による車輪保持手段の分解斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の実施形態を図面と共に詳述する。なお、本実施形態では、後述の図3に示すように、自動車の室内後部に設けられた荷室に自転車を搭載および固定する形態について説明する。
【0011】
図1に示すように、本実施形態によるリヤシート1は、シートクッション3と、該シートクッション3に回動可能に支持されたシートバック5と、シートクッション3の下面7における前側に設けられた前側シートレッグ9と、シートクッション3の下面7における後側に設けられた後側シートレッグ11と、を備えている。
【0012】
前記後側シートレッグ11は、リヤシート1を使用する通常状態において正面視でコ字状に形成されている。大まかには、前記後側シートレッグ11は、シートクッション3の左右両側から下方に向けて延在したのち車幅方向に沿って延在する筒状のシートレッグ本体13と、該シートレッグ本体13の左右両側に左右一対に設けられた車輪保持手段15,15と、を備えている。
【0013】
図1,2に示すように、車体側の床面17には、取付ブラケット19を介して回動可能に支持されたハット状のストライカー21が設けられている。このストライカー21には、シートレッグ本体13に収容された支持ピン23が挿入されることによって、車輪保持手段15がストライカー21に係合されている。
【0014】
図3に示すように、シートクッション3の下面7における前側(図3の下側)には前記前側シートレッグ9が設けられ、該前側シートレッグ9は、床面17に固定された床面側レッグ25と、シートクッション3の下面7に固定されたシート側レッグ26とからなり、これらの床面側レッグ25およびシート側レッグ26はピン29を介して回動可能に軸支されている。
【0015】
図4に示すように、前記車輪保持手段15は、車幅方向に延在する複数の筒状体からなるシートレッグ本体13と、該シートレッグ本体13にスライド可能に収容された支持ピン23と、前記シートレッグ本体13からシートクッション3を倒立させた状態における前方側に突出する平面視コ字状の保持部材27(保持部)と、を有している。
【0016】
前記複数の筒状体は、図4では、シートクッションの左側に配置された第1の筒状体31と、該第1の筒状体31の右側に嵌合された第2の筒状体33と、該第2の筒状体33から車幅方向に所定間隔をおいて右側に離間配置された第3の筒状体35とが示されている。第1の筒状体31の右端部は、径が細く形成されてボルト穴37が穿設されており、第2の筒状体33の左端部に嵌合され、ボルト39を介して結合されている。また、第2の筒状体33と第3の筒状体35とが離間した部位は、自転車41の前輪43(図3参照)が挿入される導入部45となっている。第2の筒状体33と第3の筒状体35とは、平面視コ字状の保持部材27を介して連結されている。
【0017】
この保持部材27は、左右一対の円弧状の固定部51,51と、これらの固定部51,51からシートクッション3を倒立させた状態にける前方側(図1,2における上方側)に突出する一対の脚部53,53と、これらの脚部53,53の先端同士を車幅方向に繋ぐ橋渡部55とから一体に形成されている。前記固定部51は、第2の筒状体33の右端部および第3の筒状体35の左端部とに接合されている。
【0018】
そして、第2の筒状体33には、溝部57が形成されている。この溝部57は、車幅方向に沿った直線部59と、該直線部59の先端から第2の筒状体33の周方向に屈曲する留め部61とから一体に形成されている。第2の筒状体33には、支持ピン23がスライド可能に収容されている。該支持ピン23の一端63は、円錐状に尖っており、他端65にはボルト穴67が形成されている。支持ピン23を第2の筒状体33内に挿入したのち、ボルト71を前記ボルト穴67に螺合させている。これによって、ボルト71を把持して溝部57を移動させると、支持ピン23もボルト71と共にスライドし、ボルト71を留め部61に保持すると、支持ピン23の移動が阻止される。そして、支持ピン23の一端63が第3の筒状体35に挿入されると、前記導入部45が支持ピン23で封鎖される。
【0019】
次いで、本実施形態による車輪保持手段の使用手順を説明する。
【0020】
まず、通常状態では、図1に示すように、シートクッション3の後側シートレッグ11は、車輪保持手段15を介して車体側の床面17に保持されている。そして、図2に示すボルト71を把持したまま溝部57に沿って左側に移動させると支持ピン23も左側にスライドし、導入部45が開放される。なお、図1の右側に配置された車輪保持手段15については、ボルトを右側に移動させて支持ピン23をスライドさせる。この状態で、シートクッション3を前側シートレッグ9を中心にして倒立させると、リヤシート1は図3の状態となり、荷室70が拡大される。
【0021】
このとき、車輪保持手段15は、図5に示すように導入部45が開放される。よって、図6に示すように、この導入部45から自転車41の前輪43を挿入し、ボルト71を右側に移動させると支持ピン23も右にスライドして第3の筒状体35に挿入される。これによって、前輪43は保持部材27と支持ピン23によって囲まれるようにして保持される。
【0022】
なお、自転車41を降ろしてリヤシート1を元に戻す場合は、前述の手順と逆の手順に沿って行えば良い。
【0023】
次に、本発明による他の実施形態について図7を用いて説明する。なお、本実施形態と同一構造の部位には同一符号を付して説明を省略する。
【0024】
他の実施形態においては、第2の筒状体33内にスプリング81を収容しており、溝部83の形状も留め部85が直線部59の左端部に配置されている点が異なる。
【0025】
即ち、支持ピン23を第2の筒状体33に挿入したのち、スプリング81も挿入し、その後、第1の筒状体31の右端部を第2の筒状体33の左端部にボルト39を介して締結する。従って、ボルト39を溝部83の留め部85に係止させると、スプリング81が縮んで付勢された状態となり、支持ピン23の他端65を常時押している。
【0026】
そして、自転車41の前輪43を導入部45から保持部材27に挿入させたのち、ボルト71を留め部85から直線部59まで移動させると前記スプリング81の付勢力によって支持ピン23が自動的に右側にスライドして第3の筒状体35に挿入される。これによって、支持ピン23で導入部45が自動的に封鎖される。
【0027】
なお、本発明は前述した実施形態に限定されず、種々の変更および変形が可能である。例えば、実施形態では、自転車41の前輪43を車輪保持手段15を介して保持させたが、自転車41の前後の向きを変えて、後輪72を保持させるようにしても良い。
【0028】
次いで、本実施形態による作用効果を説明する。
【0029】
(1)シートクッション3の下面7の前側と後側に、前記シートクッション3を車体側の床面17に支持する前側シートレッグ9と後側シートレッグ11とをそれぞれ配設し、前記後側シートレッグ11に自転車41の車輪(前輪43,後輪72)を保持する車輪保持手段15を設け、前記前側シートレッグを中心にしてシートクッション3を倒立させた状態で、前記車輪保持手段15に自転車41の車輪を保持させる車両における搭載自転車の固定構造である。前記車輪保持手段15は、シートクッション3を倒立させた状態で後方側が凹状の保持部材27を有し、該保持部材27に自転車41の車輪が収容および保持される。
【0030】
従って、自転車41の車輪を車輪保持手段15の保持部材27に収容および保持させることにより、容易に自転車41を荷室に固定することができる。また、保持部材27の後方側が凹状に形成されているため、車輪の位置決めを容易にすることができる。さらに、別途の専用治具等を用いないため、安価なコストで自転車41の車輪を保持することができる。
【0031】
(2)前記車輪保持手段15は、車幅方向に延在する複数の筒状体からなるシートレッグ本体13と、該シートレッグ本体13にスライド可能に収容された支持ピン23と、前記シートレッグ本体13からシートクッション3を倒立させた状態における前方側に突出する平面視コ字状の前記保持部材27と、を有している。前記複数の筒状体を車幅方向に沿って所定間隔をおいて離間配置し、隣接する第2の筒状体33と第3の筒状体35を前記保持部材27を介して連結することにより、前記シートレッグ本体13に、自転車41の車輪を挿入する導入部45を形成し、自転車41の車輪を前記導入部45から挿入して保持部材27に収容したのち、前記支持ピン23をスライドさせて前記導入部45を支持ピン23によって封鎖することによって、前記車輪を保持部材27と支持ピン23とで囲むように保持する。
【0032】
従って、自転車41の車輪を導入部45から保持部材27に収容させたのち、支持ピン23で導入部45を封鎖するという簡単な手順で自転車41を固定することができる。
【0033】
(3)床面17にストライカー21を設け、前記シートクッション3の後側シートレッグ11における前記車輪保持手段15を前記ストライカー21に係合させるように構成している。
【0034】
従って、車輪保持手段15は、自転車41の車輪を保持させる機能に加えて、シートクッション3を床面17に保持させる機能も持たせることができる。
【0035】
(4)前記シートレッグ本体13内に、前記支持ピン23をスライド方向に付勢させるスプリング81を収容させている。
【0036】
従って、支持ピン23を付勢したスプリング81によって自動的にスライドさせることができる。
【符号の説明】
【0037】
3…シートクッション
9…前側シートレッグ
11…後側シートレッグ
13…シートレッグ本体
15…車輪保持手段
17…床面
21…ストライカー
23…支持ピン
27…保持部材(保持部)
31…第1の筒状体(筒状体)
33…第2の筒状体(筒状体)
35…第3の筒状体(筒状体)
41…自転車
43…前輪(車輪)
45…導入部
70…荷室
72…後輪(車輪)
81…スプリング

【特許請求の範囲】
【請求項1】
シートクッションの下面の前側と後側に、前記シートクッションを車体側の床面に支持する前側シートレッグと後側シートレッグとをそれぞれ配設し、前記後側シートレッグに自転車の車輪を保持する車輪保持手段を設け、前記前側シートレッグを中心にしてシートクッションを倒立させた状態で、前記車輪保持手段に自転車の車輪を保持させる車両における搭載自転車の固定構造であって、
前記車輪保持手段は、シートクッションを倒立させた状態で後方側が凹状の保持部を有し、該保持部材に自転車の車輪が収容および保持されることを特徴とする車両における搭載自転車の固定構造。
【請求項2】
前記車輪保持手段は、車幅方向に延在する複数の筒状体からなるシートレッグ本体と、該シートレッグ本体にスライド可能に収容された支持ピンと、前記シートレッグ本体からシートクッションを倒立させた状態における前方側に突出する平面視コ字状の前記保持部材と、を有し、
前記複数の筒状体を車幅方向に沿って所定間隔をおいて離間配置し、隣接する前記筒状体同士を前記保持部材を介して連結することにより、前記シートレッグ本体に、自転車の車輪を挿入する導入部を形成し、
自転車の車輪を前記導入部から挿入して保持部材に収容したのち、前記支持ピンをスライドさせて前記導入部を支持ピンによって封鎖することによって、前記車輪を保持部材と支持ピンとで囲むように保持することを特徴とする請求項1に記載の車両における搭載自転車の固定構造。
【請求項3】
床面にストライカーを設け、前記シートクッションの後側シートレッグにおける前記車輪保持手段を前記ストライカーに係合させるように構成したことを特徴とする請求項1または2に記載の車両における搭載自転車の固定構造。
【請求項4】
前記シートレッグ本体内に、前記支持ピンをスライド方向に付勢させるスプリングを収容させたことを特徴とする請求項2または3に記載の車両における搭載自転車の固定構造。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate


【公開番号】特開2012−236505(P2012−236505A)
【公開日】平成24年12月6日(2012.12.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−106867(P2011−106867)
【出願日】平成23年5月12日(2011.5.12)
【出願人】(000003997)日産自動車株式会社 (16,386)
【Fターム(参考)】