説明

車両のエアバッグ配設構造

【課題】衝突時に乗員がインストルメントパネルに衝突することを防止して、乗員の安全性向上を図ると共に、インパネエアバッグをインパネ中央部の近傍に展開させることで、エアバッグの大きさを最小限に抑えて、質量およびコスト的に有利で、かつ、衝突時にエアバッグを的確な速度で展開する車両のエアバッグ配設構造を提供する。
【解決手段】インストルメントパネル20は、その車幅方向の中央付近から下方に延びて車載機器の操作部27,28を有するインパネ中央部22を備え、車両衝突時にインパネ中央部22に近接してインパネ中央部22の略全体を後方から覆うように展開するインパネエアバッグ61が設けられたことを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、フロントウインドの左右側部に配設されたフロントピラーと、車室内に配設された運転席および助手席に対応する前方位置に設けられたインストルメントパネルと、車両衝突時に展開して乗員を保護するエアバッグと、を備えたような車両のエアバッグ配設構造に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、上述例の車両のエアバッグ配設構造としては、図17に示す構造のものがある。
すなわち、車室内の上部を構成するルーフと、該ルーフ前端のフロントヘッダ81から下方に傾斜して配設されたフロントウインド82と、該フロントウインド82の左右側部に配設されたフロントピラー83と、車室内に配設されたドライバーズシート(運転席)84およびパッセンジャーズシート(助手席)85に対向する前方位置に設けられたインストルメントパネル86と、を備えた車両において、ステアリングホイール87から後方に展開する運転席エアバッグ88と、上記インストルメントパネル86の助手席に対応する位置から後方に展開する助手席エアバッグ89とを備えたものである。
【0003】
上述のドライバーズシート84およびパッセンジャーズシート85から成る前席の後方に後席90が設けられた場合、近年においては後席の乗員についてもシートベルトの装着が義務化されており、より一層の安全性が重要視されている。
しかしながら、後席乗員(特に、リヤ中央席乗員)がシートベルトを装着していても、適切な座り方でない場合には、車両衝突時に後席乗員の身体がシートベルトから擦り抜けてしまうため、その際にはインストルメントパネル86やフロントウインド82への衝突を防止することが望まれる。
【0004】
このような問題点を解決するために、運転席エアバッグ88および助手席エアバッグ89を大きくすることが考えられるが、これらの各エアバッグ88,89は格納スペースおよび展開速度の関係上、その大きさに必然的に限界があるので、単に運転席エアバッグ88、助手席エアバッグ89を大きくするのみでは、充分な安全性を確保することができない。
【0005】
ところで、特許文献1には、助手席側においてインストルメントパネルから後方に展開する助手席胸部用エアバッグと、助手席側において助手席と対応するルーフ前端部から下方に展開する助手席頭部用エアバッグと、を備えた乗員保護装置が開示されているが、上記各エアバッグは助手席乗員を保護するものであって、インストルメントパネル中央部をその後方から覆うように展開するものではない。
【0006】
また、特許文献2には、車両衝突時に後席乗員を保護する目的で、運転席シートと助手席シートとの間のフロアパネルにインフレータを設けて、衝突時にサブエアバッグをフロアパネルから上方に向けて展開する構造と、前席左右シート間の後部上方に位置するルーフパネルの所定部位にインフレータを設けて、衝突時にサブエアバッグをルーフパネルから下方に向けて展開する構造とが開示されている。
この特許文献2の前者の構造においては、インフレータにより足元スペースが阻害され、後者の構造においては、ルーフパネルに設けたインフレータによりヘッドクリアランスが阻害される問題点がある。また、前者および後者の何れにおいても、サブエアバッグが展開して後席乗員を保護する時、このサブエアバッグをバックアップする部材が存在しないので、後席乗員の充分な保護性能が確保できない問題点があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2003−335206号公報
【特許文献2】特開平3−281458号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
そこで、この発明は、車両衝突時にインパネ中央部に近接して該インパネ中央部の略全体を後方から覆うように展開するインパネエアバッグを設けることで、衝突時に乗員がインストルメントパネルに衝突することを防止して、乗員の安全性向上を図ると共に、インパネエアバッグをインパネ中央部の近傍に展開させることにより、エアバッグの大きさを最小限に抑えて、質量およびコスト的に有利で、かつ、衝突時にエアバッグを的確な速度で展開させることができる車両のエアバッグ配設構造の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
この発明による車両のエアバッグ配設構造は、車室内前方に配設されたフロントウインドと、該フロントウインドの左右側部に配設されたフロントピラーと、車室内に配設された運転席および助手席に対向する前方位置に設けられたインストルメントパネルと、を備えた車両のエアバッグ配設構造であって、上記インストルメントパネルは、その車幅方向の中央付近から下方に延びて車載機器の操作部を有するインパネ中央部を備え、車両衝突時に上記インパネ中央部に近接して該インパネ中央部の略全体を後方から覆うように展開するインパネエアバッグが設けられたものである。
上記構成によれば、車両衝突時に上記インパネエアバッグが展開し、このインパネエアバッグがインパネ中央部の略全体を後方から覆うので、このインパネエアバッグにより乗員がインストルメントパネルや車載機器の操作部に衝突することを防止し、乗員安全性の向上を図ることができる。
【0010】
また、展開したインパネエアバッグはインパネ中央部にてバックアップされるため、乗員がインパネエアバッグを乗り越えてインパネ中央部へ干渉することを防止でき、乗員を確実に保護することができる。
さらに、上記インパネエアバッグをインパネ中央部の近傍に展開させるので、エアバッグの大きさを最小限に抑えて、質量およびコスト的に有利であり、かつ、衝突時に、エアバッグを的確な速度で展開させることができる。
【0011】
この発明の一実施態様においては、上記インパネエアバッグは、上記フロントウインドを車室側から覆うフロントウインドエアバッグを有するものである。
上記構成によれば、インパネエアバッグに加えて、フロントウインドを車室側から覆うフロントウインドエアバッグを有するので、このフロントウインドエアバッグにより、乗員がフロントウインドと干渉することを防止し、さらなる安全性の向上を図ることができる。
【0012】
この発明の一実施態様においては、上記フロントウインドエアバッグと上記インパネエアバッグとが一体形成された補助エアバッグを設け、該補助エアバッグは上記フロントウインドの上部に配設されたフロントヘッダ部から下方に展開するものである。
上記構成によれば、補助エアバッグを上方のフロントヘッダ部から下方に向けて展開するので、補助エアバッグの自重を有効利用することができ、該補助エアバッグをより一層早く展開させることができる。
また、補助エアバッグを展開させるインフレータをフロントヘッダ部に配設できるので、乗員のヘッドクリアランスを阻害することがなく、安全性と快適性とを両立するレイアウトを確保することができる。
【0013】
この発明の一実施態様においては、上記インパネエアバッグは、上記運転席側に突出することなく、インパネ中央部から助手席側に突出して展開するものである。
上記構成によれば、次の如き効果がある。
つまり、乗員の安全性を考慮するとエアバッグをできるだけ大きくしたいため、通常ならば運転席、助手席共にインパネエアバッグを大きくしたい。しかし、運転席乗員の着座姿勢を崩さないようにするために、助手席側のみを大きくすることで、運転席乗員と助手席乗員との両方の安全性を確保することができる。
【0014】
この発明の一実施態様においては、上記インパネエアバッグは、上記運転席と助手席との間に配設されるセンタコンソールから車室内部空間に突出する突出部を覆う位置まで展開するものである。
上述の突出部は、シフトレバーのノブ、つまりシフトノブやパーキングブレーキの操作レバーに設定してもよい。
上記構成によれば、インパネエアバッグで上記突出部を覆うので、乗員の安全性をより一層向上させることができる。
【0015】
この発明の一実施態様においては、上記運転席と助手席との後方には、これら両席間に対応して後席乗員が着座するリヤ中央席を有する後席が配設されたものである。
上記構成によれば、リヤ中央席に着座する後席乗員の安全性を確保することができる。
【発明の効果】
【0016】
この発明によれば、車両衝突時にインパネ中央部に近接して該インパネ中央部の略全体を後方から覆うように展開するインパネエアバッグを設けたので、衝突時に乗員がインストルメントパネルに衝突することを防止して、乗員の安全性向上を図ると共に、インパネエアバッグをインパネ中央部の近傍に展開させることにより、エアバッグの大きさを最小限に抑えることで、衝突時にエアバッグを的確な速度で展開させつつ、インパネ中央部でインパネエアバッグを後方からバックアップされるので、乗員を確実に保護できる効果がある。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明のエアバッグ配設構造を備えた車両の側面図
【図2】図1の要部拡大図
【図3】エアバッグおよびインフレータの配設構造を示す底面図
【図4】エアバッグを展開させた状態で示す車両の平面図
【図5】エアバッグを展開させた状態で示す助手席側の側面図
【図6】エアバッグを展開させた状態で示す運転席側の側面図
【図7】図4のA−A線矢視図
【図8】補助エアバッグの展開時の該エアバッグ単体の斜視図
【図9】エアバッグ展開時の斜視図
【図10】車両のエアバッグ配設構造の他の実施例を示す要部拡大側面図
【図11】エアバッグを展開させた状態で示す車両の平面図
【図12】エアバッグを展開させた状態で示す助手席側の側面図
【図13】エアバッグを展開させた状態で示す運転席側の側面図
【図14】図11のB−B線矢視図
【図15】補助エアバッグの展開時の該エアバッグ単体の斜視図
【図16】車両のエアバッグ配設構造のさらに他の実施例を示す背面図
【図17】従来の運転席エアバッグおよび助手席エアバッグを展開した状態で示す斜視図
【発明を実施するための形態】
【0018】
衝突時に乗員がインストルメントパネルに衝突することを防止して、乗員の安全性向上を図り、エアバッグの大きさを最小限に抑えて、質量およびコスト的に有利で、かつ、衝突時に、エアバッグを的確な速度で展開させるという目的を、車室内前方に配設されたフロントウインドと、該フロントウインドの左右側部に配設されたフロントピラーと、車室内に配設された運転席および助手席に対向する前方位置に設けられたインストルメントパネルと、を備えたものにおいて、上記インストルメントパネルは、その車幅方向の中央付近から下方に延びて車載機器の操作部を有するインパネ中央部を備え、車両衝突時に上記インパネ中央部に近接して該インパネ中央部の略全体を後方から覆うように展開するインパネエアバッグを設けるという構成にて実現した。
【実施例1】
【0019】
この発明の一実施例を以下図面に基づいて詳述する。
図面は車両のエアバッグ配設構造を示すが、まず、図1〜図4、図9を参照して車体構造およびシート配設構造について説明する。
【0020】
図1に示すように、エンジンルーム1(但し、ハイブリッドカーにおいては2元原動機室)と、車室2とを前後方向に仕切るダッシュロアパネル3(ダッシュパネルを設け、このダッシュロアパネル3の下端には、後方に向けて略水平に延びるフロアパネル4を一体または一体的に連設している。
【0021】
上述のフロアパネル4の後部には、キックアップ部5を介してリヤフロア6(フロアパネル)を一体連設している。
上述のエンジンルーム1の上部は、ボンネット7で開閉可能に覆われる一方、車室2の上部を構成するルーフパネル8を設け、このルーフパネル8の前端部下面にはフロントヘッダ9(ルーフヘッダと同意)を接合して、ルーフパネル8とフロントヘッダ9との間には車幅方向に延びるヘッダ閉断面10を構成している。
上述のフロントヘッダ9の下面を含むルーフパネル8の下面は車室内装部材としてのトップシーリング11で覆われている。
【0022】
また、上述のルーフパネル8の前端部から下方に傾斜して配設されたフロントウインド12を設け、このフロントウインド12の左右両側部にはフロントピラー13,13(図3、図9参照)を配設している。このフロントピラー13はフロントピラーアウタとフロントピラーインナとを接合固定した閉断面構造の車体強度部材である。
【0023】
図3はトップシーリング11を取外した状態で示す底面図であって、左右一対のフロントピラー13,13と車両前後方向に連続するようにルーフパネル8の左右両側部にはルーフサイドパネル14,14が設けられており、ルーフパネル8とルーフサイドパネル14との間には、車両の前後方向に延びる閉断面が形成されている。なお、図3において、15はフロントドアに設けられたサイドガラスである。
【0024】
図1、図4に示すように、車室2内においてフロアパネル4上には、フロントシートとしてのドライバーズシート16(運転席)とパッセンジャーズシート17(助手席)とが配設されている。
【0025】
ドライバーズシート16は、前席乗員の着座面を構成するシートクッション16Cと、前席乗員の背もたれ面を構成するシートバック16Bと、前席乗員の頭部を支持するヘッドレスト16Hとを備えたセパレートシートである。
同様に、パッセンジャーズシート17は、前席乗員の着座面を構成するシートクッション17Cと、前席乗員の背もたれ面を構成するシートバック17Bと、前席乗員の頭部を支持するヘッドレスト17Hとを備えたセパレートシートである。
【0026】
また、図1、図4に示すように、車室2内におけるリヤフロア6上で、かつドライバーズシート16とパッセンジャーズシート17との後方には、これら両シート16,17間に対応して後席乗員が着座するリヤ中央席18をもったリヤシート19が配設されている。
このリヤシート19は、後席乗員の着座面を構成するシートクッション19Cと、後席乗員の背もたれ面を構成するシートバック19Bと、後席乗員の頭部を支持する複数のヘッドレスト19H…とを備えたベンチシートであるが、このリヤシート19はベンチシートに代えて、セパレートシートで構成してもよい。
【0027】
車室2内に配設されたドライバーズシート16およびパッセンジャーズシート17に対向する前方位置には、インパネメンバ(図示せず)で支持されたインストルメントパネル20が配置されている。
このインストルメントパネル20は、図1、図4に示すように車幅方向に延びるもので、その運転席側にはメータフード21が一体的に形成されると共に、車幅方向の中央付近から下方に延びて車載機器の操作部を有するインパネ中央部22を備えている。
【0028】
上述のインパネ中央部22の下部には、フロアパネル4上部を後方に向けて延びるセンタコンソール23が形成され、このセンタコンソール23は、ドライバーズシート16とパッセンジャーズシート17との間に位置すると共に、該センタコンソール23の後部には、そのリッド部が前席乗員のアームレストを兼ねるコンソールボックス24が上方に突出するように形成されている。
【0029】
図1、図4に示すように、上述のセンタコンソール23には、該センタコンソール23から車室2内部空間に突出する突出部としてのシフトノブ25が設けられている。
ここで、上述のインパネ中央部22には、図9に示すように、ディスプレイ装置の表示部26と、オーディオユニットのスイッチ、つまりオーディオスイッチ27と、空調装置のスイッチ、つまりエアコンスイッチ28とが設けられており、オーディオスイッチ27およびエアコンスイッチ28は上記車載機器の操作部を構成するものである。
【0030】
一方、図1に示すように、ドライバーズシート16の前方にはインパネメンバにステアリングコラムを介して支持されたステアリングホイール29が配設されると共に、ドライバーズシート16に着座したドライバの足元部には、図4に示すようにインパネ中央部22側にドライバ(前席乗員)の足を載せるフットレスト30が配設されている。
【0031】
次に、車両のエアバッグ配設構造について詳述する。
図4、図5、図6、図9は、図示の便宜上、エアバッグを展開した状態で示しており、これら各図に示すように、運転席側には、ステアリングホイール29から後方に展開する運転席エアバッグ40を設け、車両衝突時に該エアバッグ40が展開することで、ドライバを保護するように構成している。
【0032】
また、インストルメントパネル20のパッセンジャーズシート17に対応するインパネ所定位置から後方に展開する助手席エアバッグ50を設け、車両衝突時に該助手席エアバッグ50が展開することで、パッセンジャを保護するように構成している。
しかも、この実施例では、図4〜図6、図9に示すように、上述の運転席エアバッグ40と助手席エアバッグ50との間に展開する補助エアバッグ60を設け、この補助エアバッグ60をフロントヘッダ部、すなわち、該フロントヘッダ9を含むその周辺部(この実施例では、フロントヘッダ9の前側接合フランジ部)から下方に向けて展開すべく構成している。
【0033】
上述の補助エアバッグ60は、図4〜図7に示すように、車両衝突時にドライバーズシート16およびパッセンジャーズシート17間前方のインパネ中央部22に近接して、該インパネ中央部22の略全体を車室2後方から覆うように展開するインパネエアバッグ61と、左右のフロントピラー13,13間に車幅方向の略全幅にわたって展開されフロントウインド12を車室2内側から覆うフロントウインドエアバッグ62と、を一体形成したものである。
【0034】
図8は補助エアバッグ60を展開させた状態で示す斜視図であって、同図に示すように、補助エアバッグ60は上下方向に延びるインパネエアバッグ61と、該インパネエアバッグ61の上部において車幅方向に延びるフロントウインドエアバッグ62とを一体形成したものであって、図8に示すように、該補助エアバッグ60は車室2後方から見て略T字状に展開されるものである。
この補助エアバッグ60をフロントヘッダ部から下方に向けて展開するように構成することで、補助エアバッグ60の自重を有効利用して、該補助エアバッグ60をより一層早く展開させるように構成している。
【0035】
また、補助エアバッグ60のインパネエアバッグ61で、図9に示すように、車載機器の操作部としてのオーディオスイッチ27およびエアコンスイッチ28を有するインパネ中央部22の略全体を後方から覆うように展開することで、リヤ中央席18に着座した後席乗員が、衝突時の慣性力により前方へ移動して、インパネ中央部22に干渉するのを防止すると共に、ドライバおよびパッセンジャの2次衝突を防止するように構成している。
さらに、上述のインパネエアバッグ61は、図5、図6に示すように、ドライバーズシート16とパッセンジャーズシート17との間に配設されるセンタコンソール23から車室内部空間へ突出する突出部としてのシフトノブ25を覆う位置まで展開するように構成されており、乗員とシフトノブ25との干渉を防止して、乗員の安全性向上を図るように構成している。
【0036】
このため、図8に示すように、インパネエアバッグ61の下部前側には、シフトノブ25を回避する凹部61aが形成されており、また、該凹部61aから展開状態の補助エアバッグ60の中央上端部にわたって車両前側へ突出する膨出部61bが一体形成されており、この膨出部61bにより補助エアバッグ60による乗員保持力の向上を図るように構成している。
【0037】
図2、図3は展開前の補助エアバッグ60を折畳んで配置したエアバッグ配設構造を示し、該補助エアバッグ60は、図2、図3に示すようにフロントヘッダ9の前側接合フランジ部9aの下面に車幅方向に沿うように取付けられている。
【0038】
また、フロントヘッダ9の後側接合フランジ部9b下部のデッドスペースには、上記補助エアバッグ60を展開させるインフレータ31を、該フロントヘッダ9の車幅方向に沿って配設している。
そして、インフレータ31と、折畳まれた補助エアバッグ60との間を、フロントヘッダ9下方を車両の前後方向に延びる連結パイプ32で連結し、インフレータ31作動時に、該インフレータ31の発生ガスを連結パイプ32を介して補助エアバッグ60内に供給すべく構成している。
【0039】
さらに、図2に示すように、補助エアバッグ60の展開を阻害しない目的で、補助エアバッグ60配設位置の下方に対応するトップシーリング11の所定部には、脆弱部の一例として薄肉部11aを形成し、図2に仮想線aで示すように補助エアバッグ60が展開する時、トップシーリング11の薄肉部11aが破損し、該トップシーリング11が同図に仮想線b,cで示すように変形すべく構成している。
【0040】
ところで、上述の補助エアバッグ60は、運転席エアバッグ40と助手席エアバッグ50の展開した後に展開されるように構成されており、運転席エアバッグ40と助手席エアバッグ50の展開を妨げることなく、補助エアバッグ60が展開するように構成して、乗員の安全性を確保すべく構成している。
この展開条件を満たすためには、エアバッグCPUに運転席エアバッグ40展開用の第1インフレータドライバと、助手席エアバッグ50展開用の第2インフレータドライバと、補助エアバッグ60展開用の第3インフレータドライバとを接続し、車両減速度が所定値を超えた衝突時に、エアバッグCPUで第1インフレータドライバと第2インフレータドライバとを同時に駆動して、まず、運転席エアバッグ40および助手席エアバッグ50を展開し、第1、第2の各インフレータドライバの駆動後に所定タイムラグをもって第3インフレータドライバを駆動して、補助エアバッグ60を展開するように構成するとよい。
【0041】
このように構成した車両のエアバッグ配設構造の作用について、以下に説明する。
車両が衝突すると、まずステアリングホイール29から後方に向けて運転席エアバッグ40が展開すると同時に、助手席側のインストルメントパネル20から後方に向けて助手席エアバッグ50が展開し、これらの各エアバッグ40,50の展開した後に補助エアバッグ60が展開する。
【0042】
上述の運転席エアバッグ40はドライバを保護し、助手席エアバッグ50はパッセンジャを保護し、これら両エアバッグ40,50間に展開される補助エアバッグ60はそのインパネエアバッグ61がインパネ中央部22に近接して該インパネ中央部22の略全体を車室2後方から覆うと共に、シフトノブ25を覆う位置まで展開するので、インパネエアバッグ61がその後方に配設されたインパネ中央部22によってバックアップ、つまり後方から支持されるため、リヤ中央席18に着座した乗員が衝突時の慣性力で前方へ移動して、シフトノブ25やインパネ中央部22と干渉するのを確実に防止する。
【0043】
併せて、運転席エアバッグ40、助手席エアバッグ50でその上体が受け止められた後に、前席乗員が車幅方向に挙動しても、補助エアバッグ60で保護することができるので、前席乗員の2次衝突をも該補助エアバッグ60にて防止することができる。
また、上述の補助エアバッグ60はそのフロントエアバッグ62が、フロントウインド12を車室2内側からその車幅方向の略全幅にわたって覆うので、乗員とフロントウインド12との干渉を防止して、乗員の安全性を確保することができる。
【0044】
このように、図1〜図9で示した実施例の車両のエアバッグ配設構造は、車室内前方に配設されたフロントウインド12と、該フロントウインド12の左右側部に配設されたフロントピラー13,13と、車室2内に配設された運転席(ドライバーズシート16参照)および助手席(パッセンジャーズシート17参照)に対向する前方位置に設けられたインストルメントパネル20と、を備えた車両のエアバッグ配設構造であって、上記インストルメントパネル20は、その車幅方向の中央付近から下方に延びて車載機器の操作部(オーディオスイッチ27、エアコンスイッチ28参照)を有するインパネ中央部22を備え、車両衝突時に上記インパネ中央部22に近接して該インパネ中央部22の略全体を後方から覆うように展開するインパネエアバッグ61が設けられたものである(図3〜図9参照)。
この構成によれば、車両衝突時に上記インパネエアバッグ61が展開し、このインパネエアバッグ61がインパネ中央部22の略全体を後方から覆うので、このインパネエアバッグ61により乗員がインストルメントパネル20や車載機器の操作部(オーディオスイッチ27、エアコンスイッチ28参照)に衝突することを防止し、乗員安全性の向上を図ることができる。
【0045】
また、展開したインパネエアバッグ61はインパネ中央部22にてバックアップされるので、乗員がインパネエアバッグ61を乗り越えてインパネ中央部22に干渉することがないため、乗員を確実に保護することができる。
さらに、上記インパネエアバッグ61をインパネ中央部22の近傍に展開させるので、エアバッグ61の大きさを最小限に抑えて、質量およびコスト的に有利であり、かつ、衝突時に、エアバッグ61を的確な速度で展開させることができる。
【0046】
加えて、上記インパネエアバッグ61は、上記フロントウインド12を車室側から覆うフロントウインドエアバッグ62を有するものである(図9参照)。
この構成によれば、インパネエアバッグ61に加えて、フロントウインド12を車室2側から覆うフロントウインドエアバッグ62を有するので、このフロントウインドエアバッグ62により、乗員がフロントウインド12と干渉することを防止し、さらなる安全性の向上を図ることができる。
【0047】
また、上記フロントウインドエアバッグ62と上記インパネエアバッグ61とが一体形成された補助エアバッグ60を設け、該補助エアバッグ60は上記フロントウインド12の上部に配設されたフロントヘッダ部(フロントヘッダ9の前部参照)から下方に展開するものである(図5、図6、図7参照)。
この構成によれば、補助エアバッグ60を上方のフロントヘッダ部(フロントヘッダ9の前部参照)から下方に向けて展開するので、補助エアバッグ60の自重を有効利用することができ、該補助エアバッグ60をより一層早く展開させることができる。
また、補助エアバッグ60を展開させるインフレータ31をフロントヘッダ部(フロントヘッダ9の後部参照)に配設できるので、乗員のヘッドクリアランスを阻害することがなく、安全性と快適性とを両立するレイアウトを確保することができる。
【0048】
さらに、上記インパネエアバッグ61は、上記運転席(ドライバーズシート16参照)と助手席(パッセンジャーズシート17参照)との間に配設されるセンタコンソール23から車室2の内部空間に突出する突出部(シフトノブ25参照)を覆う位置まで展開するものである(図5、図6参照)。
この構成によれば、インパネエアバッグ61で上記突出部(シフトノブ25参照)を覆うので、乗員の安全性をより一層向上させることができる。
【0049】
加えて、上記運転席(ドライバーズシート16参照)と助手席(パッセンジャーズシート17参照)との後方には、これら両席16,17間に対応して後席乗員が着座するリヤ中央席18を有する後席(リヤシート19参照)が配設されたものである(図4参照)。
この構成によれば、リヤ中央席18に着座する後席乗員の安全性を確保することができる。
【実施例2】
【0050】
図10〜図15は車両のエアバッグ配設構造の他の実施例を示し、図10は補助エアバッグおよびインフレータの配設構造を示す展開前の要部拡大側面図、図11は各エアバッグを展開した状態で示す平面図、図12は図11の助手席側の側面図、図13は図11の運転席側の側面図、図14は図11のB−B線矢視断面図、図15は補助エアバッグを展開させた状態で示す該補助エアバッグ単体の斜視図である。
【0051】
この実施例2においては、補助エアバッグ60のフロントウインドエアバッグ62を、展開した運転席エアバッグ40および助手席エアバッグ50と、フロントウインド12との間のスペースに展開するように構成したものである。
【0052】
すなわち、図15に補助エアバッグ60を展開させて単体で示し、また図12、図13にそれぞれ側面図で示すように、上記フロントウインドエアバッグ62は、フロントヘッダ9と運転席側のインストルメントパネル20の上側前端部との間をフロントウインド12の車室2内面形状に沿って覆うドライバーズ側のフロントウインドエアバッグ62Dと、フロントヘッダ9と助手席側のインストルメントパネル20の上側前端部との間をフロントウインド12の車室2内面形状に沿って覆うパッセンジャーズ側のフロントウインドエアバッグ62Pと、フロントヘッダ9と運転席、助手席間のインストルメントパネル20の上側前端部との間をフロントウインド12の車室2内面形状に沿って覆う車幅方向中央側のフロントウインドエアバッグ62Cと、を備えている。
【0053】
また、インパネエアバッグ61は、上述の車幅方向中央側のフロントウインドエアバッグ62Cと略直交するように一体形成されており、該フロントウインドエアバッグ62Cから分岐して展開されて、図11、図12、図13に示すように斜め下方に向けて展開され、インパネ中央部22乃至センタコンソール23から車室2内部空間に突出する突出部としてのシフトノブ25を覆う位置まで展開するように構成されている。
【0054】
このように、補助エアバッグ60におけるフロントウインドエアバッグ62を、展開した上記運転席エアバッグ40とフロントウインド12との間のスペースに展開するように構成すると、補助エアバッグ60のフロントウインドエアバッグ62を、運転席エアバッグ40に対して車幅方向および前後方向にオーバラップさせることができるので、このオーバラップ構造によりフロントウインドエアバッグ62と運転席エアバッグ40との隙を埋めることができ、乗員がエアバッグ衝突時にフロントウインド12に干渉するのを確実に防止することができる。
【0055】
この場合、図10に仮想線dで示すように補助エアバッグ60はフロントウインド12の車室2内側上部から該フロントウインド12の傾斜に沿うように斜め前方下方に向けて展開されるので、トップシーリング11の展開前の補助エアバッグ60の配設位置と対応する部位には、ルーフパネル8側へ突出するリブ11bが一体形成されており、図10に仮想線dで示すように補助エアバッグ60が展開する時、トップシーリング11は上記リブ11bを起点としてその前側が同図に仮想線eで示すように変形し、補助エアバッグ60の展開を阻害しないように構成されている。
図10〜図15で示したこの実施例2においても、その他の構成、作用、効果については、先の実施例1と略同様であるから、図10〜図15において、前図と同一の部分には同一符号を付して、その詳しい説明を省略する。
【実施例3】
【0056】
図16は車両のエアバッグ配設構造のさらに他の実施例を示し、ドラバーズシート16側の足元部位には、上述のインパネ中央部22側に乗員(ドライバ)が足を載せるフットレスト30(図4参照)が配設されており、補助エアバッグ60におけるインパネエアバッグ61は、図16に示すように、ドライバーズシート16側に突出することなく、インパネ中央部22からパッセンジャーズシート17側に突出して展開するように構成されている。
【0057】
すなわち、インパネエアバッグ61の運転席側の側端面61dは、ドライバーズシート16のシートバック16Bの車幅方向中央側の端部に対して、距離L1だけ車両中央側にオフセットした位置に展開され、インパネエアバッグ61の助手席側の側端面61pは、パッセンジャーズシート17のシートバック17Bの車幅方向中央側の端部に対して、距離L2だけオーバラップした位置に展開されるように構成されており、これにより、インパネエアバッグ61がドライバーズシート16側に突出することなく、インパネ中央部22からパッセンジャーズシート17側に突出して展開するように構成されたものである。
【0058】
このように、図16で示した実施例3の車両のエアバッグ配設構造においては、上記インパネエアバッグ61は、上記運転席(ドライバーズシート16)側に突出することなく、インパネ中央部22から助手席(パッセンジャーズシート17参照)側に突出して展開するものである(図16参照)。
この構成によれば、次の如き効果がある。
つまり、乗員の安全性を考慮するとエアバッグをできるだけ大きくしたいため、通常ならば運転席、助手席共にインパネエアバッグを大きくしたい。しかし、運転席乗員の着座姿勢を崩さないようにするために、助手席側のみを大きくすることで、運転席乗員と助手席乗員との両方の安全性を確保することができる。
【0059】
また、実施例に示したように、ドライバーズシート16の足元に、インパネ中央部22側に乗員の足を載せるフットレスト30(図4参照)を配設した場合、運転席乗員は、アクセルペダル(ブレーキペダル)を踏んでいる足と反対側の足をフロアやフットレスト30に置いていることが多く、とっさの衝撃時でもその足で体を支えることができる。そのため、エアバッグを大きくした場合、反って運転席乗員の安全性を阻害してしまう恐れがある。また助手席乗員は、比較的自由な姿勢をとっておりとっさの衝突時に対応することができないことがあるため、助手席側のみのエアバッグを大きくすることで運転席、助手席の乗員の両方の安全性を確保できる。
【0060】
図16で示したこの実施例3においても、その他の構成、作用、効果については、先の実施例1と略同様であるから、図16において、前図と同一の部分には同一符号を付して、その詳しい説明を省略するが、インパネエアバッグ61がドライバーズシート16側に突出することなく、インパネ中央部22からパッセンジャーズシート17側に突出して展開する構成は、先の実施例2にも採用することができる。
【0061】
この発明の構成と、上述の実施例との対応において、
この発明のフロントヘッダ部は、実施例のフロントヘッダ9を含むその前部および後部に対応し、
以下同様に、
運転席は、ドライバーズシート16に対応し、
助手席は、パッセンジャーズシート17に対応し、
後席は、リヤシート19に対応し、
突出部は、シフトノブ25に対応し、
車載機器の操作部は、オーディオスイッチ27、エアコンスイッチ28に対応するも、
この発明は、上述の実施例の構成のみに限定されるものではない。
例えば、上述の突出部は、シフトノブ25とパーキングブレーキの操作レバーとの双方を含んでもよく、また、上記構成の車両のエアバッグ配設構造をオープンカーに採用してもよい。この場合、インフレータ31はフロントヘッダ9のヘッダ閉断面10内に配設するとよい。
【符号の説明】
【0062】
2…車室
9…フロントヘッダ(フロントヘッダ部)
12…フロントウインド
13…フロントピラー
16…ドライバーズシート(運転席)
17…パッセンジャーズシート(助手席)
18…リヤ中央席
19…リヤシート(後席)
20…インストルメントパネル
22…インパネ中央部
23…センタコンソール
25…シフトノブ(突出部)
27…オーディオスイッチ(操作部)
28…エアコンスイッチ(操作部)
30…フットレスト
60…補助エアバッグ
61…インパネエアバッグ
62…フロントウインドエアバッグ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車室内前方に配設されたフロントウインドと、
該フロントウインドの左右側部に配設されたフロントピラーと、
車室内に配設された運転席および助手席に対向する前方位置に設けられたインストルメントパネルと、を備えた車両のエアバッグ配設構造であって、
上記インストルメントパネルは、その車幅方向の中央付近から下方に延びて車載機器の操作部を有するインパネ中央部を備え、
車両衝突時に上記インパネ中央部に近接して該インパネ中央部の略全体を後方から覆うように展開するインパネエアバッグが設けられたことを特徴とする
車両のエアバッグ配設構造。
【請求項2】
上記インパネエアバッグは、上記フロントウインドを車室側から覆うフロントウインドエアバッグを有する
請求項1記載の車両のエアバッグ配設構造。
【請求項3】
上記フロントウインドエアバッグと上記インパネエアバッグとが一体形成された補助エアバッグを設け、
該補助エアバッグは上記フロントウインドの上部に配設されたフロントヘッダ部から下方に展開する
請求項2記載の車両のエアバッグ配設構造。
【請求項4】
上記インパネエアバッグは、上記運転席側に突出することなく、インパネ中央部から助手席側に突出して展開する
請求項1〜3の何れか1に記載の車両のエアバッグ配設構造。
【請求項5】
上記インパネエアバッグは、上記運転席と助手席との間に配設されるセンタコンソールから車室内部空間に突出する突出部を覆う位置まで展開する
請求項1〜4の何れか1に記載の車両のエアバッグ配設構造。
【請求項6】
上記運転席と助手席との後方には、これら両席間に対応して後席乗員が着座するリヤ中央席を有する後席が配設された
請求項1〜5の何れか1に記載の車両のエアバッグ配設構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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