説明

車両のサイドシル構造

【課題】ジャッキをサイドシルに当接させる際にジャッキとサイドシルガーニッシュとの干渉を回避するとともに、サイドシルとサイドシルガーニッシュとの間に砂や泥あるいは異物等が侵入し堆積することを抑制することができる車両のサイドシル構造を提供する。
【解決手段】サイドシル10にサイドシルガーニッシュ20が取り付けられる車両のサイドシル構造は、サイドシルガーニッシュが、ジャッキ当接部15に対応して凹状に形成されるジャッキ用凹部30と、ジャッキ用凹部30の車体前方側に形成される前側取付凹部40と、ジャッキ用凹部30の車体後方側に形成される後側取付凹部50とを備えている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車体側面の下部において車体前後方向に延びるサイドシルに、サイドシルガーニッシュが取り付けられてなる車両のサイドシル構造に関する。
【背景技術】
【0002】
周知のように、例えば自動車等の車両においては、車体側面の下部に車体前後方向に延びるサイドシルが左右両側面に配設されている。このサイドシルは、通常、サイドシルインナとサイドシルアウタとによって閉断面構造で形成されている。近年では、例えば車体側面の見映えを向上させるために、上記サイドシルの車体外方を覆うようにサイドシルガーニッシュが取り付けられた構造が知られている(例えば特許文献1参照)。
【0003】
また、上記サイドシルの下端部には、ジャッキを当接させるためのジャッキ当接部が一般的に設けられている。サイドシルにサイドシルガーニッシュが取り付けられたサイドシル構造では、ジャッキをジャッキ当接部にセットする際にジャッキとサイドシルガーニッシュとが干渉し得るので、この干渉を回避するためにサイドシルガーニッシュに切欠部を形成したものが知られている(例えば特許文献2参照)。
【特許文献1】特開2004−217039号公報
【特許文献2】特開2000−153782号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、ジャッキ当接部に対応してサイドシルガーニッシュの下面部に切欠部を形成する場合、例えば走行中に車輪などによって跳ね上げられる砂や泥あるいは異物等が、サイドシルとサイドシルガーニッシュとの間にサイドシルガーニッシュの下面部より侵入して堆積し、サイドシルガーニッシュの歪曲や変形などを引き起こす畏れがある。
【0005】
この発明は、上記技術的課題に鑑みてなされたものであり、サイドシルにサイドシルガーニッシュが取り付けられてなる車両において、ジャッキをサイドシルに当接させる際にジャッキとサイドシルガーニッシュとの干渉を回避するとともに、サイドシルとサイドシルガーニッシュとの間に砂や泥あるいは異物等が侵入し堆積することを抑制することができる車両のサイドシル構造を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
このため、本願の請求項1に係る発明は、車体前後方向に延び閉断面を有するサイドシルに、該サイドシルの車幅方向外方側及び下方側の少なくとも一部を覆うサイドシルガーニッシュが取り付けられてなる車両のサイドシル構造であって、前記サイドシルは、前記閉断面から下方に延びる下端部にジャッキを当接させるジャッキ当接部が設けられ、前記サイドシルガーニッシュは、該サイドシルガーニッシュの下面部において、前記ジャッキ当接部に対応して前記サイドシルに向かって窪む凹状のジャッキ用凹部と、該ジャッキ用凹部の車体前方側に前記サイドシルに向かって凹状に窪んで形成され前記サイドシルガーニッシュを前記サイドシルに取り付ける前側取付凹部と、前記ジャッキ用凹部の車体後方側に前記サイドシルに向かって凹状に窪んで形成され前記サイドシルガーニッシュを前記サイドシルに取り付ける後側取付凹部とを備え、前記ジャッキ用凹部を形成するジャッキ用凹所形成部と、前記前側取付凹部を形成する前側取付凹所形成部と、前記後側取付凹部を形成する後側取付凹所形成部とがそれぞれ、その車幅方向外方端部に折曲ヒンジ部を備えて前記サイドシルガーニッシュに一体成形され、前記ジャッキ用凹所形成部と前記前側取付凹所形成部と前記後側取付凹所形成部とを前記各折曲ヒンジ部で折り曲げることにより前記ジャッキ用凹部と前記前側取付凹部と前記後側取付凹部とがそれぞれ形成されていることを特徴としたものである。
【0007】
また、本願の請求項2に係る発明は、請求項1に係る発明において、前記ジャッキ用凹部は、少なくとも前記サイドシルガーニッシュの車体前後方向の前方側に設けられていることを特徴としたものである。
【0008】
更に、本願の請求項3に係る発明は、請求項1又は2に係る発明において、前記サイドシルは、前記サイドシルガーニッシュ側に突出し前記サイドシルガーニッシュを係止させる係止部材を備え、前記前側取付凹部及び前記後側取付凹部にはそれぞれ、前記係止部材と係合する開口部が設けられ、該開口部は、前記取付凹部の底面部からその側壁部にわたって形成されていることを特徴としたものである。
【0009】
また更に、本願の請求項4に係る発明は、請求項1〜3の何れか一に係る発明において、前記ジャッキ用凹部が、前記サイドシルガーニッシュの車体前後方向の前方側及び後方側にそれぞれ形成されるとともに、前記サイドシルガーニッシュの車体前後方向の前方側及び後方側にそれぞれ形成される前記ジャッキ用凹部の間に、前記サイドシルに向かって凹状に窪んで形成される少なくとも1つの中央凹部が設けられ、前記中央凹部を形成する中央凹所形成部が、その車幅方向外方端部に折曲ヒンジ部を備えて前記サイドシルガーニッシュに一体成形され、前記中央凹所形成部を前記折曲ヒンジ部で折り曲げることにより前記中央凹部が形成され、前記中央凹部の車体前方側及び車体後方側にはそれぞれ、前記前側取付凹部及び前記後側取付凹部が設けられていることを特徴としたものである。
【発明の効果】
【0010】
本願の請求項1の発明に係る車両のサイドシル構造によれば、ジャッキをサイドシルに当接させる際にジャッキとサイドシルガーニッシュとの干渉を回避するとともに、サイドシルとサイドシルガーニッシュとの間にサイドシルガーニッシュの下面部より砂や泥あるいは異物等が侵入し堆積することを抑制することができる。
砂や泥あるいは異物等の侵入や堆積を防止するためにジャッキ用凹部にサイドシルに取り付けるための取付穴を設けない場合であっても、ジャッキ用凹部の車体前方側及び車体後方側にそれぞれ配した前側取付凹部及び後側取付凹部によりジャッキ用凹部がその前後でサイドシルに対し押さえられ、確実な支持を行うことができる。サイドシルガーニッシュには、ジャッキ当接部に対応してジャッキ用凹部が設けられるので、サイドシルガーニッシュをサイドシルに取り付ける際にサイドシルガーニッシュの位置決めを比較的容易に行うことができる。
【0011】
また、本願の請求項2の発明によれば、ジャッキ用凹部は、少なくともサイドシルガーニッシュの車体前後方向の前方側に設けられることにより、例えば走行中に前輪によって砂や泥あるいは異物等が前輪後方、すなわち、サイドシルガーニッシュの車体前方側において激しく巻き上げられる場合においても、サイドシルとサイドシルガーニッシュとの間に砂や泥あるいは異物等が侵入し堆積することを抑制することができ、上記効果をより有効に奏することができる。
【0012】
更に、本願の請求項3の発明によれば、サイドシルはサイドシルガーニッシュを係止させる係止部材を備え、前側取付凹部及び後側取付凹部にはそれぞれ、係止部材と係合する開口部が設けられ、該開口部は、取付凹部の底面部からその側壁部にわたって形成されるので、取付凹部の開口部に係止部材を係合させてサイドシルガーニッシュをサイドシルに取り付ける場合に、開口部を取付凹部の底面部にのみ形成する場合に比して、サイドシルガーニッシュの下面部に形成される開口部を小さくすることができ、砂や泥あるいは異物等の侵入をより抑制することが可能である。
【0013】
また更に、本願の請求項4の発明によれば、例えば車体構造設計上あるいは生産工程上、サイドシルガーニッシュの下面部に凹状の中央凹部を設ける場合においても、中央凹部の車体前方側及び車体後方側にそれぞれ前側取付凹部及び後側取付凹部が設けられるので、中央凹部の支持強度を確保するとともに、サイドシルとサイドシルガーニッシュとの間にサイドシルガーニッシュの下面部より砂や泥あるいは異物等が侵入することを抑制できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
以下、本発明の実施形態について添付図面を参照しながら説明する。
図1は本発明の第1の実施形態に係る車両の車体側面を概略的に示す概略説明図である。また、図2は図1におけるY2−Y2線に沿った断面説明図、図3は図1におけるY3−Y3線に沿った断面説明図、図4は図1におけるY4−Y4線に沿った断面説明図である。
【0015】
第1の実施形態に係る車両1は、図1に示すように、4ドアタイプの乗用車であり、車体側面には車体前方側にフロントドア2が設けられ、その後方にリアドア3が設けられている。フロントドア2とリアドア3との下方には、フレーム部材として車体前後方向に延びるサイドシル10が配設されている。
【0016】
サイドシル10は、図2及び図3に示すように、車幅方向内方に位置するサイドシルインナ11と車幅方向外方に位置するサイドシルアウタ12とを備え、サイドシルインナ11とサイドシルアウタ12との間にサイドシル10を補強するサイドシルレインフォースメント13を備えている。
【0017】
サイドシルインナ11は、車幅方向内方に膨出する膨出部11aを備え、該膨出部11aの上下方向の端部にフランジ部11b、11cが形成されている。サイドシルインナ11の車幅方向外側に設けられるサイドシルレインフォースメント13には、車幅方向外方に膨出する膨出部13aが設けられ、該膨出部13aの上下方向の端部にはフランジ部13b、13cが形成されている。
【0018】
サイドシルインナ11とサイドシルレインフォースメント13とは、フランジ部11bとフランジ部13bとがフランジ結合され、フランジ部11cとフランジ部13cとがフランジ結合されている。また、サイドシルレインフォースメント13の車幅方向外側にはサイドシルアウタ12が接合されている。
【0019】
サイドシルアウタ12は、車幅方向外方に膨出する膨出部12aを備え、該膨出部12aの上下方向の端部にフランジ部12b、12cが形成されている。サイドシル12は、フランジ部12bがフランジ部11b、13bと共に接合され、フランジ部12cがサイドシルレインフォースメント13の膨出部13aに接合されている。
【0020】
このようにして、本実施形態では、サイドシル10が、サイドシルインナ11とサイドシルレインフォースメント13とサイドシルアウタ12とによって閉断面状に形成されているが、サイドシルインナとサイドシルアウタとで閉断面を有するように形成してもよい。
【0021】
サイドシル10は、サイドシル10の閉断面から下方に延びる下端部に、すなわち、フランジ部11cとフランジ部13cとで構成されるサイドシル10のフランジ部10cに、ジャッキ(不図示)をセットする際にジャッキを当接させるジャッキ当接部15が形成されている。ジャッキ当接部15は、図4に示すように、フランジ部10cの長さが短く形成されており、サイドシル10の車体前後方向の前方側及び後方側にそれぞれ設けられている。
【0022】
また、サイドシル10には、サイドシル10の車幅方向外方側及び下面側の少なくとも一部を覆うようにサイドシルガーニッシュ20が取り付けられている。サイドシルガーニッシュ20は、車体前後方向に延びるとともに、サイドシル10の下方側を覆う下面部21とサイドシル10の車幅方向外方側に覆う側面部22とを備え、略L字状に形成されている。
【0023】
本実施形態では、サイドシルガーニッシュ20は、図4に示すように、サイドシルガーニッシュ20の下面部21において、ジャッキ当接部15に対応して、サイドシル10に向かって窪む凹状のジャッキ用凹部30と、ジャッキ用凹部30の車体前方側にサイドシル10に向かって凹状に窪んで形成されサイドシルガーニッシュ20をサイドシル10に取り付ける前側取付凹部40と、ジャッキ用凹部30の車体後方側にサイドシル10に向かって凹状に窪んで形成されサイドシルガーニッシュ20をサイドシル10に取り付ける後側取付凹部50とを備えている。
【0024】
図1に示すように、サイドシルガーニッシュ20には、サイドシル10の車体前方側及び車体後方側にそれぞれ設けられるジャッキ当接部15に対応して、サイドシルガーニッシュの車体前後方向の前方側及び後方側にそれぞれジャッキ用凹部30が形成され、各ジャッキ用凹部30の車体前方側及び車体後方側には、前側取付凹部40と後側取付凹部50とが独立して配設されている。なお、このジャッキ用凹部30は、少なくともサイドシルガーニッシュ20の車体前後方向の前方側に設けられる。
【0025】
本実施形態に係るサイドシル構造は、車体前方側及び車体後方側において略同様の構成を備えているので、車体後方側のサイドシル構造について説明する。
図5は、サイドシルガーニッシュの車体後方側を車体外方側から見た斜視図であり、図6は、サイドシルガーニッシュの車体後方側を車体内方側から見た斜視図である。
【0026】
サイドシルガーニッシュ20に設けられるジャッキ用凹部30は、ジャッキ当接部15近傍において、サイドシルガーニッシュ20の下面部21からサイドシル10を指向して、すなわち、サイドシルレインフォースメント13の膨出部13aの下面部13dを指向して延びる3つの側壁部31a、31b、31cと、下面部13dに略沿って形成される底面部32とを備えている。このジャッキ用凹部30は、ジャッキをジャッキ当接部15に当接させる際に、ジャッキとサイドサイドシルガーニッシュ20とが干渉しないように好適な形状で形成される。
【0027】
サイドシルガーニッシュ20には、ジャッキ用凹部30を形成するジャッキ用凹所形成部35が設けられ、ジャッキ用凹所形成部35は、その車幅方向外方端部に、図2に示すように、ジャッキ用凹部30の側壁部31cの車幅方向外方端部に折曲ヒンジ部36を備えている。
【0028】
サイドシルガーニッシュ20は、例えば合成樹脂材料等を用いて形成されており、ジャッキ用凹所形成部35は、サイドシルガーニッシュ20に一体成形されている(図2の二点鎖線参照)。ジャッキ用凹部30は、サイドシルガーニッシュ20に一体成形されたジャッキ用凹所形成部35を、図2の矢印A1の方向に、折曲ヒンジ部36で折り曲げることにより形成される。
【0029】
図6に示すように、ジャッキ用凹所形成部35は、ジャッキ用凹部30の車体前方側及び車体後方側にそれぞれ、サイドシルガーニッシュ20の下面部21に係止させるフック部37a及び37bを備えている。ジャッキ用凹所形成部35を折曲ヒンジ部36で折り曲げた際に、フック部37a及び37bをサイドシルガーニッシュ20の下面部21に係止させてジャッキ用凹所形成部35を固定している。
【0030】
なお、フック部37aは、側壁部31aから車体前方側を指向して延びる平面部38aの車体前方端部に設けられ、フック部37bは、側壁部31bから車体後方側を指向して延びる平面部38bの車体後方端部に設けられている。また、サイドシルガーニッシュ20の下面部21には、フック部37a、37bをそれぞれ係止させる受部23a、23bが形成されている。
【0031】
また、サイドシルガーニッシュ20には、上述したようにジャッキ用凹部30の車体前方側に前側取付凹部40が設けられている。前側取付凹部40は、サイドシルガーニッシュ20の下面部21からサイドシル10を指向して延びる4つの側壁部41a、41b、41c、41dと、下面部13dに略沿って形成される底面部42とを備えている。前側取付凹部40には、底面部42から前側取付凹部40の車体後方側の側壁部41bにわたって開口部43が設けられ、該開口部43は、図6に示すように、平面視で略T字状に形成されている。
【0032】
一方、サイドシル10には、具体的には、サイドシルレインフォースメント13には、図3及び図4に示すように、サイドシルガーニッシュ20側に突出し、サイドシルガーニッシュ20を係止させる係止部材14が取り付けられている。係止部材14は、サイドシルレインフォースメント13から下方に延びる軸部15と、該軸部15の下方に略円盤状に形成される取付部16とを備えている。
【0033】
サイドシル10にサイドシルガーニッシュ20を取り付ける際には、先ず、係止部材14の軸部15より大きく形成される取付部16が、前側取付凹部40の車体後方側の側壁部41bに形成される開口部43に対応するように位置付けられる。そして、サイドシルガーニッシュ20をサイドシル10に対して車体後方側に移動させることにより、前側取付凹部40の開口部43と係止部材14の軸部15とを係合させ取付部16を底面部42に係止させて、前側取付凹部40がサイドシル10に取り付けられる。
【0034】
なお、前側取付凹部40の開口部43は、底面部42において係止部材14の軸部15を移動可能に形成され、底面部42と側壁部41bとの角部では、取付部16を挿入可能に形成されている。これにより、サイドシルガーニッシュ20の下面部21に形成される開口部43を小さくすることができる。
【0035】
また、サイドシルガーニッシュ20には、前側取付凹部40を形成する前側取付凹所形成部45が設けられ、前側取付凹所形成部45は、その車幅方向外方端部に、図3に示すように、前側取付凹部40の側壁部41cの車幅方向外方端部に折曲ヒンジ部46を備えている。
【0036】
前側取付凹所形成部45は、サイドシルガーニッシュ20に一体成形されており(図3の二点鎖線参照)、前側取付凹部40は、サイドシルガーニッシュ20に一体成形された前側取付凹所形成部45を、図3の矢印A2の方向に、折曲ヒンジ部46で折り曲げることにより形成されている。
【0037】
前側取付凹所形成部45は、ジャッキ用凹所形成部35について上述したように、前側取付凹部40の車体前方側及び車体後方側にそれぞれ、サイドシルガーニッシュ20の下面部21に係止させるフック部47a及び47bを備えている。前側取付凹所形成部45を折曲ヒンジ部46で折り曲げた際には、フック部47a及び47bをサイドシルガーニッシュ20の下面部21に係止させて前側取付凹所形成部45を固定している。
【0038】
なお、フック部47aは、前側取付凹部40の周縁部に形成される平面部48の車体前方端部に設けられ、フック部47bは、平面部48の車体後方端部に設けられている。また、サイドシルガーニッシュ20の下面部21には、フック部47a、47bをそれぞれ係止させる受部24a、24bが形成されている。
【0039】
また、ジャッキ用凹部30の車体後方側に設けられる後側取付凹部50についても、上記前側取付凹部40と実質的に同様の構成を備えている。後側取付凹部50は、サイドシルガーニッシュ20の下面部21からサイドシル10を指向して延びる4つの側壁部51a、51b、51c、51dと底面部52とを備え、底面部52から後側取付凹部50の車体後方側の側壁部51bにわたって開口部53が設けられている。なお、サイドシル10には、後側取付凹部50に対応して上記係止部材14が備えられている。
【0040】
サイドシルガーニッシュ20には、後側取付凹部50を形成する後側取付凹所形成部55が設けられ、後側取付凹所形成部55は、その車幅方向外方端部に、すなわち、後側取付凹部50の側壁部51cの車幅方向外方端部に折曲ヒンジ部56を備えてサイドシルガーニッシュ20に一体成形されている。この後側取付凹所形成部55を折曲ヒンジ部56で折り曲げることにより後側取付凹部50が形成されている。なお、後側取付凹所形成部55は、フック部57a、57bによってサイドシルガーニッシュ20の下面部21に固定されている。
【0041】
このように、本実施形態に係る車両のサイドシル構造によれば、サイドシル10のジャッキ当接部15に対応してサイドシルガーニッシュ20にジャッキ用凹部30が形成されるので、ジャッキをサイドシルに当接させる際にジャッキとサイドシルガーニッシュとの干渉を回避するとともに、サイドシルガーニッシュの下面部に切欠部を形成しないので、サイドシルとサイドシルガーニッシュとの間にサイドシルガーニッシュの下面部より砂や泥あるいは異物等が侵入し堆積することを抑制することができる。
砂や泥あるいは異物等の侵入や堆積を防止するためにジャッキ用凹部30にサイドシル10に取り付けるための取付穴を設けない場合であっても、ジャッキ用凹部30の車体前方側及び車体後方側にそれぞれ配した前側取付凹部40及び後側取付凹部50によりジャッキ用凹部30がその前後でサイドシル10に対し押さえられ、確実な支持を行うことができる。サイドシルガーニッシュ20には、ジャッキ当接部15に対応してジャッキ用凹部30が設けられるので、サイドシルガーニッシュをサイドシルに取り付ける際にサイドシルガーニッシュの位置決めを比較的容易に行うことができる。
【0042】
また、ジャッキ用凹部30は、少なくともサイドシルガーニッシュ20の車体前後方向の前方側に設けられることにより、例えば走行中に前輪によって砂や泥あるいは異物等が前輪後方、すなわち、サイドシルガーニッシュの車体前方側において激しく巻き上げられる場合においても、サイドシルとサイドシルガーニッシュとの間に砂や泥あるいは異物等が侵入し堆積することを抑制することができ、上記効果をより有効に奏することができる。
【0043】
更に、サイドシル10はサイドシルガーニッシュ20を係止させる係止部材14を備え、前側取付凹部40及び後側取付凹部50にはそれぞれ、係止部材14と係合する開口部43、53が設けられ、該開口部43、53は取付凹部40、50の底面部42、52からその側壁部41b、51bにわたって形成されるので、取付凹部の開口部に係止部材を係合させてサイドシルガーニッシュをサイドシルに取り付ける場合に、開口部を取付凹部の底面部にのみ形成する場合に比して、サイドシルガーニッシュの下面部に形成される開口部を小さくすることができ、砂や泥あるいは異物等の侵入をより抑制することが可能である。
【0044】
図7は、本発明の第2の実施形態に係る車両の車体側面を概略的に示す概略説明図である。第2の実施形態では、第1の実施形態に係るサイドシル構造と略同様の構成を備え、サイドシル110の車体前後方向の前方側及び後方側に設けられるジャッキ当接部115に対応して、サイドシルガーニッシュ120にジャッキ用凹部130がそれぞれ形成され、ジャッキ用凹部130の車体前方側及び車体後方側にはそれぞれ前側取付凹部140及び後側取付凹部150とが形成されている。
【0045】
第2の実施形態では、サイドシルガーニッシュ120の下面部121において、サイドシルガーニッシュ120の車体前後方向の前方側及び後方側にそれぞれ形成されるジャッキ用凹部130の間に、サイドシル110に向かって凹状に窪んで形成される中央凹部160が設けられている。
【0046】
中央凹部160は、ジャッキ凹部130と実質的に同様の構成を備えており、例えば車体構造設計や生産工程などに応じて、サイドシルガーニッシュ120の下面部121に好適な形状で形成される。サイドシルガーニッシュ120には、中央凹部160を形成する中央凹所形成部165が設けられ、中央凹所形成部165は、その車幅方向外方端部に折曲ヒンジ部(不図示)を備えてサイドシルガーニッシュ120に一体成形されている。中央凹所形成部165を折曲ヒンジ部で折り曲げることにより中央凹部160が形成されている。
【0047】
また、中央凹部160の車体前方側及び車体後方側にはそれぞれ、上述した前側取付凹部140及び後側取付凹部150が設けられ、前側取付凹部140及び後側取付凹部150の底面部には開口部が形成されている。サイドシル110には、前側取付凹部140及び後側取付凹部150に対応してそれぞれ係止部材が設けられ、上記係止部材を介して前側取付凹部140及び後側取付凹部150がサイドシル110に取り付けられている。
【0048】
本実施形態では、サイドシルガーニッシュ120の車体前後方向の前方側及び後方側にそれぞれ形成されるジャッキ用凹部130の間に、1つの中央凹部160が形成されているが、複数の中央凹部を形成することも可能である。かかる場合においても、中央凹部の車体前方側及び車体後方側にはそれぞれ、前側取付凹部140及び後側取付凹部150が設けられる。
【0049】
このように、例えば車体構造設計上あるいは生産工程上、サイドシルガーニッシュの下面部に凹状の中央凹部を設ける場合においても、中央凹部の車体前方側及び車体後方側にそれぞれ前側取付凹部及び後側取付凹部が設けられるので、中央凹部の支持強度を確保するとともに、サイドシルガーニッシュの下面部に切欠部を形成しないので、サイドシルとサイドシルガーニッシュとの間にサイドシルガーニッシュの下面部より砂や泥あるいは異物等が侵入することを抑制できる。
【0050】
なお、本実施形態では、サイドシルガーニッシュ20をサイドシル10に対して車体後方側に移動して組み付けるように形成されているが、車体前方側から組み付けるようにすることも可能である。この場合には、前側取付凹部及び後側取付凹部に形成される開口部はそれぞれ、その底面部から車体前方側の側壁部にわたって形成される。
【0051】
以上のように、本発明は、例示された実施の形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲において、種々の改良及び設計上の変更が可能であることは言うまでもない。
【産業上の利用可能性】
【0052】
本発明は、ジャッキとサイドシルガーニッシュとの干渉を回避するとともに、サイドシルとサイドシルガーニッシュとの間に砂や泥あるいは異物等が侵入し堆積することを抑制することができる車両のサイドシル構造であり、サイドシルに設けられるジャッキ当接部近傍にサイドシルガーニッシュが取り付けられる車両において適用可能である。
【図面の簡単な説明】
【0053】
【図1】本発明の第1の実施形態に係る車両の車体側面を概略的に示す概略説明図である。
【図2】図1におけるY2−Y2線に沿った断面説明図である。
【図3】図1におけるY3−Y3線に沿った断面説明図である。
【図4】図1におけるY4−Y4線に沿った断面説明図である。
【図5】サイドシルガーニッシュの車体後方側を車体外方側から見た斜視図である。
【図6】サイドシルガーニッシュの車体後方側を車体内方側から見た斜視図である。
【図7】本発明の第2の実施形態に係る車両の車体側面を概略的に示す概略説明図である。
【符号の説明】
【0054】
10 110 サイドシル
14 係止部材
15 115 ジャッキ当接部
20 120 サイドシルガーニッシュ
30 130 ジャッキ用凹部
35 ジャッキ用凹所形成部
36、46、56 折曲ヒンジ部
40 140 前側取付凹部
41b、51b 側壁部
42、52 底面部
43、53、開口部
45 前側取付凹所形成部
50 150 後側取付凹部
55 後側取付凹所形成部
160 中央凹部
165 中央凹所形成部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車体前後方向に延び閉断面を有するサイドシルに、該サイドシルの車幅方向外方側及び下方側の少なくとも一部を覆うサイドシルガーニッシュが取り付けられてなる車両のサイドシル構造であって、
前記サイドシルは、前記閉断面から下方に延びる下端部にジャッキを当接させるジャッキ当接部が設けられ、
前記サイドシルガーニッシュは、該サイドシルガーニッシュの下面部において、前記ジャッキ当接部に対応して前記サイドシルに向かって窪む凹状のジャッキ用凹部と、該ジャッキ用凹部の車体前方側に前記サイドシルに向かって凹状に窪んで形成され前記サイドシルガーニッシュを前記サイドシルに取り付ける前側取付凹部と、前記ジャッキ用凹部の車体後方側に前記サイドシルに向かって凹状に窪んで形成され前記サイドシルガーニッシュを前記サイドシルに取り付ける後側取付凹部とを備え、
前記ジャッキ用凹部を形成するジャッキ用凹所形成部と、前記前側取付凹部を形成する前側取付凹所形成部と、前記後側取付凹部を形成する後側取付凹所形成部とがそれぞれ、その車幅方向外方端部に折曲ヒンジ部を備えて前記サイドシルガーニッシュに一体成形され、前記ジャッキ用凹所形成部と前記前側取付凹所形成部と前記後側取付凹所形成部とを前記各折曲ヒンジ部で折り曲げることにより前記ジャッキ用凹部と前記前側取付凹部と前記後側取付凹部とがそれぞれ形成されている、
ことを特徴とする車両のサイドシル構造。
【請求項2】
前記ジャッキ用凹部は、少なくとも前記サイドシルガーニッシュの車体前後方向の前方側に設けられていることを特徴とする請求項1記載の車両のサイドシル構造。
【請求項3】
前記サイドシルは、前記サイドシルガーニッシュ側に突出し前記サイドシルガーニッシュを係止させる係止部材を備え、
前記前側取付凹部及び前記後側取付凹部にはそれぞれ、前記係止部材と係合する開口部が設けられ、
該開口部は、前記取付凹部の底面部からその側壁部にわたって形成されている、
ことを特徴とする請求項1又は2に記載の車両のサイドシル構造。
【請求項4】
前記ジャッキ用凹部が、前記サイドシルガーニッシュの車体前後方向の前方側及び後方側にそれぞれ形成されるとともに、
前記サイドシルガーニッシュの車体前後方向の前方側及び後方側にそれぞれ形成される前記ジャッキ用凹部の間に、前記サイドシルに向かって凹状に窪んで形成される少なくとも1つの中央凹部が設けられ、
前記中央凹部を形成する中央凹所形成部が、その車幅方向外方端部に折曲ヒンジ部を備えて前記サイドシルガーニッシュに一体成形され、前記中央凹所形成部を前記折曲ヒンジ部で折り曲げることにより前記中央凹部が形成され、
前記中央凹部の車体前方側及び車体後方側にはそれぞれ、前記前側取付凹部及び前記後側取付凹部が設けられている、
ことを特徴とする請求項1〜3の何れか一に記載の車両のサイドシル構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2007−261480(P2007−261480A)
【公開日】平成19年10月11日(2007.10.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−90992(P2006−90992)
【出願日】平成18年3月29日(2006.3.29)
【出願人】(000003137)マツダ株式会社 (6,115)
【Fターム(参考)】