車両のステアリング装置
【課題】 センターテイクオフ式の車両のステアリング装置において、ラックバーハウジングなどの周辺部品に対するタイロッドの衝突を回避する。
【解決手段】 ステアリング装置は、操舵ハンドル11の回動により左右方向に変位するラックバーを有する。ラックバーの軸線方向中央部には、連結器40を用いて、左右前輪FW1,FW2を揺動により左右にそれぞれ操舵するタイロッド31,32の内側端が接続されている。ラックバーはラックバーハウジング22に収容されており、ラックバーハウジング22は車体取付け部22a,22bにて車体に取り付けられる。ラックバーハウジング22の車体取付け部22a,22bに、タイロッド31,32を脱着可能に保持する保持部23b1,25b1を設け、タイロッド31,32の連結器40への組付け後、タイロッド31,32をラックバーハウジング22に固定しておく。
【解決手段】 ステアリング装置は、操舵ハンドル11の回動により左右方向に変位するラックバーを有する。ラックバーの軸線方向中央部には、連結器40を用いて、左右前輪FW1,FW2を揺動により左右にそれぞれ操舵するタイロッド31,32の内側端が接続されている。ラックバーはラックバーハウジング22に収容されており、ラックバーハウジング22は車体取付け部22a,22bにて車体に取り付けられる。ラックバーハウジング22の車体取付け部22a,22bに、タイロッド31,32を脱着可能に保持する保持部23b1,25b1を設け、タイロッド31,32の連結器40への組付け後、タイロッド31,32をラックバーハウジング22に固定しておく。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、左右操舵輪をラックバーの軸線方向の変位に応じて操舵するように、左右のタイロッドの軸線方向内側端をラックバーの中央部に接続したセンターテイクオフ式の車両のステアリング装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、例えば下記特許文献1に示されているように、センターテイクオフ式の車両のステアリング装置は知られている。この車両のステアリング装置は、操舵ハンドルの操舵操作に応じて軸線方向に変位するラックバーと、左右操舵輪を軸線方向外側端にてそれぞれ接続し、左右操舵輪を揺動により左右にそれぞれ操舵する左右一対のタイロッドと、ラックバーの軸線方向中央部に固定されるとともに、左右一対のタイロッドの内側端をそれぞれ接続し、ラックバーと一体的に左右方向に変位して、左右操舵輪を左右に操舵するために左右一対のタイロッドを揺動させる連結器と、ラックバーを軸線方向に変位可能に収容するラックバーハウジングとを備えている。
【特許文献1】特開平11−321694号公報
【発明の開示】
【0003】
このステアリング装置の組み立て時、組み立てられたステアリング装置の輸送時、及びステアリング装置の車体への組み付け時に、タイロッドが揺動する。左右一対のタイロッドは、ラックバーの中央部に接続されて左右に延設された長尺状の部材であり、タイロッドが揺動してラックバーハウジングを含む周辺部品に衝突することがある。そして、タイロッドが前記周辺部品に衝突すると、タイロッド及び前記周辺部品の外周面に施したメッキ、塗装などの防錆処理部分を傷つけてしまい、防錆処理部分の防錆効果が低下するという問題がある。特に、ラックバーハウジングには、ラックバーハウジングを車体に固定するために、左右一対のタイロッド側の外周上に、車体に取付けるための車体取付け部が設けられている。そして、タイロッドはこの車体取付け部に衝突し易い。
【0004】
本発明は、上記問題に対処するためになされたもので、その目的は、ステアリング装置の組み立て時、組み立てられたステアリング装置の輸送時、及びステアリング装置の車体への組み付け時に、タイロッドが揺動しないようにして、タイロッドのラックバーハウジングを含む周辺部品への衝突を避けるようにした車両のステアリング装置を提供することにある。
【0005】
上記目的を達成するために、本発明の特徴は、操舵ハンドルの操舵操作に応じて軸線方向に変位するラックバーと、左右操舵輪を軸線方向外側端にてそれぞれ接続し、左右操舵輪を揺動により左右にそれぞれ操舵する左右一対のタイロッドと、ラックバーの軸線方向中央部に固定されるとともに、左右一対のタイロッドの内側端をそれぞれ接続し、ラックバーと一体的に左右方向に変位して、左右操舵輪を左右に操舵するために左右一対のタイロッドを揺動させる連結器と、ラックバーを軸線方向に変位可能に収容したラックバーハウジングとを備えた車両のステアリング装置において、ラックバーハウジングの外周上に左右一対のタイロッドを着脱可能に保持する左右一対の保持部を設けたことにある。
【0006】
この場合、ラックバーハウジングは、左右一対のタイロッド側の外周上に車体に取付けるための左右一対の車体取付け部を備えており、左右一対の車体取付け部はラックバーハウジングを車体に固定するためのボルトをそれぞれ貫通させる円筒部を有し、円筒部の内周面上に弾性部材を有するマウントブッシュが組み付けられ、マウントブッシュの弾性部材を車体取付け部から突出させ、前記突出させた部分にタイロッドを嵌合させるように保持部を形成するとよい。
【0007】
上記のように構成した本発明においては、左右一対のタイロッドを連結器に組み付けた後、各タイロッドを保持部に保持させる。この状態では、左右一対のタイロッドは揺動することはなく、ラックバーハウジングに固定される。なお、左右一対のタイロッドの外側端に左右操舵輪を接続する際には、保持部によるタイロッドの固定を解除する。したがって、本発明によれば、ステアリング装置の組み立て時、組み立てられたステアリング装置の輸送時、及びステアリング装置の車体への組み付け時にも、タイロッドが揺動することはなく、ラックバーハウジングを含む周辺部材に対するタイロッドの衝突が回避される。したがって、タイロッド及びラックバーハウジングを含む周辺部品の外周面に施したメッキ、塗装などの防錆処理部分を傷つけることがなくなり、防錆処理部分の防錆効果の低下を回避できる。
【0008】
また、マウントブッシュの弾性部材を車体取付け部から突出させ、前記突出させた部分にタイロッドを嵌合させるように保持部を形成した場合には、保持部を形成するための格別な部品を用意したり、格別な部品の組付け作業をしたりする必要がなくなり、簡単に上記タイロッドのラックバーハウジングに対する固定を実現できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
以下、本発明の一実施形態について図面を用いて説明する。図1は、同実施形態に係る車両のステアリング装置の全体外観図である。図2は、図1の2点鎖線で囲んだ部分の拡大横断断面図である。なお、本願明細書においては、前後方向とは車両の前後方向を意味し、左右方向とは車両の左右方向を意味する。
【0010】
この車両のステアリング装置は、操舵ハンドル11、ラックバー21、左右一対のタイロッド31,32、連結器40及びヒートインシュレータ61を備えている。操舵ハンドル11は、操舵輪としての左右前輪FW1,FW2を操舵するために、運転者によって操舵操作される。ラックバー21は、操舵ハンドル11の操舵操作に応じて車両の左右方向に変位する。タイロッド31,32は、ラックバー21の左右方向への変位に応じて揺動して左右前輪FW1,FW2を左右に操舵する。連結器40は、ラックバー21とタイロッド31,32とを連結して、ラックバー21の左右方向への変位に応じてタイロッド31,32を揺動させる。ヒートインシュレータ61は、連結器40を覆って熱源から連結器40への輻射熱を遮断する。
【0011】
ラックバー21は、金属材料で長尺状に形成され、その一部にラック歯を有する。ラックバー21は、金属材料で円筒状に形成されたラックバーハウジング22内に、ラックバーハウジング22と軸線方向を同一にして、軸線方向に変位可能に組み込まれている。ラックバー21のラック歯には、ラックバーハウジング22に組み付けられたギヤボックス12内にて、ステアリングシャフト13の下端部に設けたピニオンギヤが噛み合っている。ステアリングシャフト13の上端には、操舵ハンドル11が組み付けられている。操舵ハンドル11が回動されると、ステアリングシャフト13が軸線回りに回転して、ラックバー21は左右方向に変位する。ラックバー21の中央前面側には、ラックバー21が中立位置にある状態で、車両の左右方向の中心位置を挟んで左右対称位置に、円形の凹部21a,21bがそれぞれ形成されている。また、ラックバー21の中央前面側には、凹部21a,21bの底面中心位置から後方に向かって内周面に雌ねじを形成した有底のねじ孔21c,21dが形成されている。
【0012】
ラックバーハウジング22の両端部外周上には、車体取付け部(ギヤマウント)22a,22bが設けられている。車体取付け部22a,22bには、図3に示すように、マウントブッシュ23,24,25,26が組み付けられている。図3は、車体取付け部22aを、図1の3−3線に沿って見た拡大断面図である。なお、車体取付け部22b及びマウントブッシュ25,26も車体取付け部22a及びマウントブッシュ23,24と同様に構成されており、図3においては、車体取付け部22b及びマウントブッシュ25,26に関する部材の符号をカッコ内に示す。以下の具体的構成の説明においても、車体取付け部22b及びマウントブッシュ25,26に関する部材の符号をカッコ内に示して説明する。
【0013】
車体取付け部22a(22b)は、車体組付け状態にてラックバーハウジング22の前側位置(すなわちタイロッド31,32側)にくるように、ラックバーハウジング22に一体的に円筒状に形成されている。車体取付け部22a(22b)の内周面上には、斜め上方からマウントブッシュ23(25)が圧入されるとともに、斜め下方からマウントブッシュ24(26)が圧入されている。マウントブッシュ23,24(25,26)は、鍔付き円筒状に金属で成形され、ラックバーハウジング22を車体BDに固定するためのボルト27(28)を貫通させる軸受け部材23a,24a(25a,26a)を有する。軸受け部材23a,24a(25a,26a)の外周面上には、弾性材料であるゴム材料で鍔付き円筒状に形成されたゴム部材23b,24b(25b,26b)が加硫接着されている。
【0014】
ゴム部材23b(25b)は、さらに、鍔付き円筒状に形成された本体部と一体的に形成された保持部23b1(25b1)を有する。保持部23b1(25b1)は、前記本体部の鍔部分の外周上から軸方向外側に突出して、前記本体部よりも大径の円筒状に形成されている。この円筒状部分の内径は軸受け部材23a(25a)の外径に等しく、タイロッド31,32を保持するために、前記本体部よりも肉厚に形成されている。保持部23b1(25b1)の円筒部分の対向する両側面には、嵌合溝23b2(25b2)が先端面から前記本体部に向かって形成されている。嵌合溝23b2(25b2)の幅は、タイロッド31,32の直径よりも若干小さく設定されている。これにより、嵌合溝23b2(25b2)内にタイロッド31,32を嵌め込んだ状態では、タイロッド31,32はラックバーハウジング22上に固定される。また、前記嵌め込みを解除すれば、タイロッド31,32の前記固定は解除される。
【0015】
また、ラックバーハウジング22の中央部前側には、ラックバー21と連結器40の一体的な左右方向の変位を許容するために、横長の方形状の開口部22cが設けられている。この開口部22cの横方向の長さは、ラックバー21の左右方向への最大変位量よりも若干長く設定されている。
【0016】
ラックバーハウジング22の左右両端部を除く部分は、ダストブーツ29によって覆われている。ダストブーツ29は、ゴム材料で一体的に成型され、その中央部29aを厚肉に形成し、中央部29aの両側にて薄肉の蛇腹部29b,29cを有する。中央部29aは、円筒状に形成され、その前側部分に垂直な平面を形成する凹部29a1を有する。この凹部29a1には、ラックバー21が中立状態にあるときにねじ孔21c,21dが対向する位置に、貫通孔29a2,29a3が設けられている。ダストブーツ29の両端部は、ラックバーハウジング22の外周上に固定されている。ダストブーツ29の中央部29aは、詳しくは後述するように、連結器40によりラックバー21に組み付けられている。したがって、ダストブーツ29の中央部29aは、ラックバー21の左右方向の変位に応じて、蛇腹部29b,29cの伸縮を伴いながら左右方向に変位する。
【0017】
タイロッド31,32は、各外側端にて、連結部材33,34に組み付けられた図示しないナックルアームを介して、揺動により左右前輪FW1,FW2を操舵可能にそれぞれ連結している。タイロッド31,32の各内側端は、連結器40の左右方向の変位に応じて左右方向に変位するように連結器40に接続されている。
【0018】
連結器40は、ブラケット41及び左右一対のボールジョイント機構50A,50Bからなる。ブラケット41は、図5A〜図5Eに示すように、本体部41a及び取付け部41b,41cからなり、金属材料を一体成型して平面視T字状に形成されている。図5Aは、ブラケット41の正面図、すなわち車両への組み付け状態にてブラケット41を前方から見た図である。図5Bはブラケット41の平面図であり、図5Cはブラケット41の側面図である。図5Dは図5Aの5D−5D線に沿って見たブラケット41の断面図であり、図5Eは図5Aの5E−5Eに沿って見たブラケット41の断面図である。
【0019】
本体部41aは、前端から後端近傍位置まで横方向に同一の幅を有し、後端部にて後方に向けて横方向の幅が徐々に大きくなるような形状に形成されている。また、この本体部41aは、横方向から見て、前部にてU字状(すなわち円弧状)の上下対称の外形を有し、後部にて直線状の上下対称の外形を有する。そして、後部の上面及び下面は平面を形成しており、この後部の上面及び下面は、ヒートインシュレータ61をブラケット41に組み付けた際の座面41a1,41a2を構成する。本体部41aの後端部には、横方向から見て、座面41a1,41a2から上方及び下方にそれぞれ突出して、座面41a1,41a2の後端にて横方向に直線上に延びた段差を形成する突出部41a3,41a4が設けられている。これらの突出部41a3,41a4の前後方向の幅は、座面41a1,41a2の前後方向の長さに比べて小さい。本体部41aの前部には、横方向に貫通して内周面に雌ねじを形成したねじ孔41a5が設けられている。本体部41aの中間部には、座面41a1,41a2から内部に向けて内周面に雌ねじを形成した有底のねじ孔41a6,41a7が設けられている。
【0020】
取付け部41b,41cは、本体部41aの後端部(突出部41a3,41a4の前後位置に対応)から左右方向へそれぞれ延設されている。取付け部41b,41cの前後方向の幅は、突出部41a3,41a4の前後方向の幅に等しい。取付け部41b,41cは、正面から見てU字状(すなわち円弧状)の左右対称の外形を有する。また、両取付け部41b,41cには、前後方向に貫通する円形の孔41b1,41c1が設けられている。
【0021】
ブラケット41は、取付け部41b,41cにて、一対のボルト42,43を用いてラックバー21に固定されている。ボルト42,43は、取付け部41b,41cの孔41b1,41c1及びダストブーツ29の貫通孔29a2,29a3を貫通して、ラックバー21のねじ孔21c,21dにねじ結合されている。連結器41をラックバー21及びダストブーツ29の正確な位置に堅固に固定するために、ボルト42,43の外周上には金属製のカラー44,45及び樹脂製の支持部材46が組み付けられている。カラー44,45は、段付き円筒状に形成され、後端部をラックバー21の凹部21a,21bに嵌合させるとともに、前端部をダストブーツ29の貫通孔29a2,29a3に嵌合させて、ボルト42,43を貫通させている。支持部材46は、長円状に樹脂材料により一体成型されて一対の貫通孔を有し、貫通孔にボルト42,43及びカラー44,45を貫通させている。また、支持部材46は、カラー44,45の段差部とダストブーツ29の凹部29a1との間に介装されて、凹部29a1を連結器40との間に挟み込むようにしている。
【0022】
ボールジョイント機構50A,50Bは、金属製の支持部材51,52及び金属製の連結ロッド53,54を有する。支持部材51,52は、それらの内側部に設けた雄ねじ部51a,52aをブラケット41のねじ孔41a5に外側からそれぞれねじ結合させて、ブラケット41に固定されている。支持部材51,52は、球座部51b,52bにて、樹脂製のシート55,56を介して、連結ロッド53,54の内側端に設けた球状のボール部53a,54aを回転可能に支持している。球座部51b,52bは、ゴム製のダストブーツ57,58により覆われている。連結ロッド53,54の外側部分にそれぞれ設けた雄ねじ部53b,54bは、タイロッド31,32の内周面に設けた雌ねじ部31a,32aにねじ結合されている。そして、ロックナット59,60により、タイロッド31,32は連結ロッド53,54に堅固に固定されている。
【0023】
ヒートインシュレータ61は、連結器40を前側から覆って、連結器40の前下方に位置するエンジン及びその付属部品から連結器40への輻射熱を遮断することにより、連結器40を保護する。特に、ヒートインシュレータ61は、連結器40内のシート55,56、球座部51b,52b内に封入されたグリースなどへの前記輻射熱を遮断して、ボールジョイント機構50A,50Bを保護する。このヒートインシュレータ61は、図6A〜図6Eに示されている。図6Aは、ヒートインシュレータ61の正面図、すなわち車両への組み付け状態にてヒートインシュレータ61を前方から見た図である。図6Bはヒートインシュレータ61の平面図であり、図6Cはヒートインシュレータ61の側面図である。図6Dは、図6Cの矢印6Dによって示された部分のヒートインシュレータ61の部分拡大図である。図6Eは、図6Cの矢印6Eによって示された部分のヒートインシュレータ61の部分拡大図である。
【0024】
ヒートインシュレータ61は、金属プレート(例えば、鉄製の金属プレート)を曲げ加工して形成したもので、連結器40への組み付け状態にて前側に位置する連結部61aにて一体的に連結された上板部61b及び下板部61cを有する。上板部61b及び下板部61cは互いに上下に対向し、連結部61aと共に、縦断面U字状の後方に開放された空間SPを形成する。なお、この空間SPは、左右側方においても開放されている。下板部61cは、方形状に形成され、左右前端部において左右対称に小さく円弧状に切り欠かれている。上板部61bも、下板部61cと同じ方形状に形成され、中央部から左右対称に斜め前方に比較的大きく切り欠かれている。そして、上板部61bの面積は下板部61cの面積よりも小さく設定されている。言い換えれば、上板部61bが空間SPを覆う面積は、上板部61bの前記斜め前方に切り欠いた面積分だけ、下板部61cが空間SPを覆う面積よりも小さい。これにより、ヒートインシュレータ61内の熱が上方に逃げ易くなり、ヒートインシュレータ61内の温度上昇が良好に抑制される。また、連結部61a、上板部61b及び下板部61cは、左右方向の中央部分を外側部分よりも窪ませて形成されている。
【0025】
上板部61b及び下板部61cの中央位置には、前端近傍位置から後方に向けて所定幅の平面部61b1,61c1が形成されている。平面部61b1,61c1の後端部分は、それらよりも外側の上板部61b及び下板部61cの後端面よりも方形状に突出して、突出部61b2,61c2を構成する。突出部61b2,61c2の前方の左右方向中心位置には、ブラケット41に設けたねじ孔41a6,41a7と同径の円形の貫通孔61b3,61c3が形成されている。これらの貫通孔61b3,61c3の入口の最も後方の位置から突出部61b2,61c2の前端までの長さは、ブラケット41のねじ孔41a6、41a7の入口の最も後方の位置から座面41a1,41a2に設けた突出部41a3、41a4の段差までの長さに等しい。これは、ヒートインシュレータ61をブラケット41に組み付けた際に、ヒートインシュレータ61の突出部61b2,61c2の前端面を、ブラケット41の突出部41a3、41a4による段差面に当接させることにより、ヒートインシュレータ61を位置決めするためである。ヒートインシュレータ61に関しては、プレス打ち抜きにより、突出部61b2,61c2の端面を高精度に加工しておくとよい。また、ブラケット41の突出部41a3,41a4に関しては、切削などの機械加工により、高精度に突出部41a3,41a4の段差面を成型しておくとよい。
【0026】
このように構成したヒートインシュレータ61は、図4A及び図4Bに示すように、ブラケット41の本体部41aに固定される。図4Aは、図1及び図2からブラケット41及びヒートインシュレータ61のみを取り出して、ヒートインシュレータ61のブラケット41への組付け状態を示す平面図である。図4Bは、図4Aの4B−4B線に沿って見た断面図である。
【0027】
ヒートインシュレータ61は、上板部61bの平面部61b1の下面をブラケット41の座面41a1上に密着させるとともに、下板部61cの平面部61c1の下面をブラケット41の座面41a2上に密着させる。そして、ヒートインシュレータ61の上板部61bの突出部61b2の後端面をブラケット41の突出部41a3の段差面に当接させるとともに、ヒートインシュレータ61の下板部61cの突出部61c2の後端面をブラケット41の突出部41a4の段差面に当接させる。そして、ボルト62,63を、ヒートインシュレータ61の貫通孔61b3,61c3を介してブラケット41のねじ孔41a6,41a7に侵入させてねじ結合させる。これにより、ヒートインシュレータ61は、ブラケット41に固定される。
【0028】
上記のように構成したステアリング装置の組立てについて説明しておく。ラックバー21をラックバーハウジング22内に収容するとともに、ラックバーハウジング22にマウントブッシュ23,24,25,26及びダストブーツ29を組付ける。この場合、カラー44,45及び支持部材46もラックバー21に組みつ付けておく。ラックバーハウジング22に対するマウントブッシュ24,26の組付けにおいては、車体取付け部22a,22bにマウントブッシュ23,24,25,26を圧入して固定する。
【0029】
この状態で、連結器40のブラケット41が、ボルト42,43を用いて、ラックバー21に固定される。一方、支持部材51,52の球座部51b、52に連結ロッド53,54のボール部53a,54aを回転可能に支持させた状態で、連結ロッド53,54を支持部材51,52に組み付けて、ボールジョイント機構50A,50Bを組み立てておく。この場合、ボールジョイント機構50A,50Bを組み立てる前には円筒状に形成されている球座部51b、52b内に円筒状のシート55,56を組み入れ、シート55,56内にボール部53a,54aを侵入させて、球座部51b、52bをかしめた後、ダストブーツ57,58を組み付けることにより、ボールジョイント機構50A,50Bを組み立てる。
【0030】
次に、ラックバー21に組み付けられたブラケット41に、ボールジョイント機構50A,50Bの支持部材51,51をそれぞれ組み付ける。この場合の組付け行程においては、支持部材51の雄ねじ部51a、51bを、ブラケット41のねじ孔41a5に左右方向の外側から内側に向けてねじ込んで、ブラケット41にボールジョイント機構50A,50Bを固定する。そして、ボールジョイント機構50A,50Bの連結ロッド53,54の軸線方向外側端部に、タイロッド31,32の軸線方向内側端部をそれぞれ組み付ける。このタイロッド31,32の組付けにおいては、連結ロッド53,54のボール部53a,54aを回転させて、連結ロッド53,54を前方(ラックバー21と反対方向)に若干傾ける。次に、連結ロッド53,54の雄ねじ部53b,54bに、ロックナット59,60を組み付けるとともに、タイロッド31,32の雌ねじ部31a、32aをねじ入れ、最後にロックナット59,60の締め付けにより、タイロッド31,32を連結ロッド53,54に堅固に固定する。
【0031】
このタイロッド31,32の組付け後、タイロッド31,32を揺動させて、ラックバーハウジング22の車体取付け部22a,22bに組み付けたマウントブッシュ23,25に設けた保持部23b1,25b1の嵌合溝23b2,25b2内に、タイロッド31,32を押し込む。これにより、タイロッド31,32は、図7に示すように固定される。その後、ヒートインシュレータ61を、前述したようにして、ブラケット41に固定する。また、タイロッド31,32の外側端部に、連結部材33,34を組み付けておく。なお、ヒートインシュレータ61及び連結部材33,34の組付けにおいては、タイロッド31,32を連結ロッド53,54に組み付ける前でもよい。
【0032】
このような行程により、ステアリングアセンブリが組み立てられる。このステアリングアセンブリの組み立てにおいて、タイロッド31,32の組付け後には、タイロッド31,32が自由に揺動することはなく、ラックバーハウジング22(特に、車体取付け部22a、22b)を含む周辺部品に対するタイロッド31,32の衝突が回避される。また、このように構成されたステアリングアセンブリを輸送する場合にも、タイロッド31,32はラックバーハウジング22に固定されたままであるので、ラックバーハウジング22(特に、車体取付け部22a、22b)を含む周辺部品に対するタイロッド31,32の衝突が回避される。
【0033】
また、ステアリングアセンブリの車体への組み付けにおいては、前述したラックバーハウジング22の車体取付け部22a,22bに対するタイロッド31,32の固定を一旦解除する。この解除後、車体取付け部22a、22bに組み付けたマウントブッシュ23,24,25,26にボルト27,28を貫通させて車体にねじ結合し、ステアリングアセンブリを車体に固定する。次に、タイロッド31,32を車体取付け部22a,22bに再び固定する。その後、ステアリングシャフト13及び操舵ハンドル11をステアリングアセンブリに組み付けて、操舵ハンドル11をラックバー21に連結する。そして、タイロッド31,32の固定を再び解除し、タイロッド31,32の外側端部に組み付けた連結部材33,34に、ナックルアーム及び左右前輪FW1,FW2をそれぞれ組み付ける。
【0034】
したがって、ステアリングアセンブリの組み立て時、組み立てられたステアリングアセンブリの輸送時、及びステアリングアセンブリの車体への組み付け時に、ラックバーハウジング22を含む周辺部材に対するタイロッド31,32の衝突が回避される。その結果、タイロッド31,32及び前記周辺部品の外周面に施したメッキ、塗装などの防錆処理部分が傷つけられることがなくなり、防錆処理部分の防錆効果の低下を回避できる。また、マウントブッシュ23,25をラックバーハウジング22の車体取付け部22a,22bに組み付けるのみで、タイロッド31,32を保持する保持部23b1,25b1がラックバーハウジング22に設けられることになる。したがって、簡単にタイロッド31,32のラックバーハウジング22に対する固定機構を実現できる。
【0035】
上記のように構成した実施形態の動作について説明する。運転者が操舵ハンドル11を左右に回動操作すると、操舵ハンドル11の回動はステアリングシャフト13を介してラックバー21に伝達されて、ラックバー21は左右方向に変位する。このラックバー21の左右方向の変位により、ブラケット41及び支持部材51,52もラックバー21と一体的に左右に変位する。支持部材51,52の左右方向の変位により、連結ロッド53,54のボール部53a,54aの回転を伴いながら、タイロッド31,32は連結ロッド53,54と一体的に揺動し、左右前輪FW1,FW2は操舵される。したがって、左右前輪FW1,FW2は、操舵ハンドル11の回動操作により操舵される。
【0036】
また、ヒートインシュレータ61は、エンジン及びその付属部品から連結器40、特にボールジョイント機構50A,50Bのシート55,56、球座部51b、52b、ボール部53a,54aへの輻射熱を遮断する。したがって、シート55,56、球座部51b、52b内のグリースなどが高い温度まで上昇しなくなるので、シート55,56、グリースなどが熱によって変形及び変質し難くなり、ボールジョイント機構50A、50Bの良好な作動が維持される。
【0037】
さらに、本発明は上記実施形態に限定されることなく、本発明の範囲内において種々の変形例を採用することができる。
【0038】
上記実施形態においては、マウントブッシュ23,25のゴム部材23b、25bの一部を保持部23b1,25b1として用いて、タイロッド31,32を固定するようにした。しかし、これに代えて、車体取付け部22a,22b又はラックバーハウジング22の車体取付け部材22a,22b以外の部位に、タイロッド31,32を着脱可能に保持する保持部を設けるようにしてもよい。例えば、タイロッド31,32を着脱可能に保持する保持器を別途用意して、車体取付け部22a,22b又はラックバーハウジング22の車体取付け部材22a,22b以外の部位に前記保持器を組み付けるようにしてもよい。
【0039】
これらの変形例によっても、ステアリングアセンブリの組み立て時、組み立てられたステアリングアセンブリの輸送時、及びステアリングアセンブリの車体への組み付け時に、ラックバーハウジング22を含む周辺部材に対するタイロッド31,32の衝突が回避される。その結果、タイロッド31,32及び前記周辺部品の外周面に施したメッキ、塗装などの防錆処理部分が傷つけられることがなくなり、防錆処理部分の防錆効果の低下を回避できる。
【図面の簡単な説明】
【0040】
【図1】本発明の一実施形態に係る車両のステアリング装置の全体外観図である。
【図2】図1の2点鎖線で囲んだ部分の拡大横断断面図である。
【図3】図1の3−3線に沿って見た車体取付け部の拡大断面図である。
【図4A】ヒートインシュレータのブラケットへの組付け状態を示す平面図である。
【図4B】図4Aの4B−4B線に沿って見た断面図である。
【図5A】ブラケットの正面図、すなわち車両への組み付け状態にてブラケットを前方から見た図である。
【図5B】ブラケットの平面図である。
【図5C】ブラケットの側面図である。
【図5D】図5Aの5D−5D線に沿って見たブラケットの断面図である。
【図5E】図5Aの5E−5E線に沿って見たブラケットの断面図である。
【図6A】ヒートインシュレータの正面図、すなわち車両への組み付け状態にてヒートインシュレータを前方から見た図である。
【図6B】ヒートインシュレータの平面図である。
【図6C】ヒートインシュレータの側面図である。
【図6D】図6Cの矢印6Dによって示された部分のヒートインシュレータの部分拡大図である。
【図6E】図6Cの矢印6Eによって示された部分のヒートインシュレータの部分拡大図である。
【図7】ラックバーハウジングに対するタイロッドの固定状態を示す車両のステアリング装置の全体外観図である。
【符号の説明】
【0041】
11…操舵ハンドル、13…ステアリングシャフト、21…ラックバー、22…ラックバーハウジング、22a,22b…車体取付け部、23,24,25,26…マウントブッシュ、23b,24b,25b,26b…ゴム部材、23b1,25b1…保持部、29…ダストブーツ、31,32…タイロッド、40…連結器、41…ブラケット、50A,50B…ボールジョイント機構、61…ヒートインシュレータ
【技術分野】
【0001】
本発明は、左右操舵輪をラックバーの軸線方向の変位に応じて操舵するように、左右のタイロッドの軸線方向内側端をラックバーの中央部に接続したセンターテイクオフ式の車両のステアリング装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、例えば下記特許文献1に示されているように、センターテイクオフ式の車両のステアリング装置は知られている。この車両のステアリング装置は、操舵ハンドルの操舵操作に応じて軸線方向に変位するラックバーと、左右操舵輪を軸線方向外側端にてそれぞれ接続し、左右操舵輪を揺動により左右にそれぞれ操舵する左右一対のタイロッドと、ラックバーの軸線方向中央部に固定されるとともに、左右一対のタイロッドの内側端をそれぞれ接続し、ラックバーと一体的に左右方向に変位して、左右操舵輪を左右に操舵するために左右一対のタイロッドを揺動させる連結器と、ラックバーを軸線方向に変位可能に収容するラックバーハウジングとを備えている。
【特許文献1】特開平11−321694号公報
【発明の開示】
【0003】
このステアリング装置の組み立て時、組み立てられたステアリング装置の輸送時、及びステアリング装置の車体への組み付け時に、タイロッドが揺動する。左右一対のタイロッドは、ラックバーの中央部に接続されて左右に延設された長尺状の部材であり、タイロッドが揺動してラックバーハウジングを含む周辺部品に衝突することがある。そして、タイロッドが前記周辺部品に衝突すると、タイロッド及び前記周辺部品の外周面に施したメッキ、塗装などの防錆処理部分を傷つけてしまい、防錆処理部分の防錆効果が低下するという問題がある。特に、ラックバーハウジングには、ラックバーハウジングを車体に固定するために、左右一対のタイロッド側の外周上に、車体に取付けるための車体取付け部が設けられている。そして、タイロッドはこの車体取付け部に衝突し易い。
【0004】
本発明は、上記問題に対処するためになされたもので、その目的は、ステアリング装置の組み立て時、組み立てられたステアリング装置の輸送時、及びステアリング装置の車体への組み付け時に、タイロッドが揺動しないようにして、タイロッドのラックバーハウジングを含む周辺部品への衝突を避けるようにした車両のステアリング装置を提供することにある。
【0005】
上記目的を達成するために、本発明の特徴は、操舵ハンドルの操舵操作に応じて軸線方向に変位するラックバーと、左右操舵輪を軸線方向外側端にてそれぞれ接続し、左右操舵輪を揺動により左右にそれぞれ操舵する左右一対のタイロッドと、ラックバーの軸線方向中央部に固定されるとともに、左右一対のタイロッドの内側端をそれぞれ接続し、ラックバーと一体的に左右方向に変位して、左右操舵輪を左右に操舵するために左右一対のタイロッドを揺動させる連結器と、ラックバーを軸線方向に変位可能に収容したラックバーハウジングとを備えた車両のステアリング装置において、ラックバーハウジングの外周上に左右一対のタイロッドを着脱可能に保持する左右一対の保持部を設けたことにある。
【0006】
この場合、ラックバーハウジングは、左右一対のタイロッド側の外周上に車体に取付けるための左右一対の車体取付け部を備えており、左右一対の車体取付け部はラックバーハウジングを車体に固定するためのボルトをそれぞれ貫通させる円筒部を有し、円筒部の内周面上に弾性部材を有するマウントブッシュが組み付けられ、マウントブッシュの弾性部材を車体取付け部から突出させ、前記突出させた部分にタイロッドを嵌合させるように保持部を形成するとよい。
【0007】
上記のように構成した本発明においては、左右一対のタイロッドを連結器に組み付けた後、各タイロッドを保持部に保持させる。この状態では、左右一対のタイロッドは揺動することはなく、ラックバーハウジングに固定される。なお、左右一対のタイロッドの外側端に左右操舵輪を接続する際には、保持部によるタイロッドの固定を解除する。したがって、本発明によれば、ステアリング装置の組み立て時、組み立てられたステアリング装置の輸送時、及びステアリング装置の車体への組み付け時にも、タイロッドが揺動することはなく、ラックバーハウジングを含む周辺部材に対するタイロッドの衝突が回避される。したがって、タイロッド及びラックバーハウジングを含む周辺部品の外周面に施したメッキ、塗装などの防錆処理部分を傷つけることがなくなり、防錆処理部分の防錆効果の低下を回避できる。
【0008】
また、マウントブッシュの弾性部材を車体取付け部から突出させ、前記突出させた部分にタイロッドを嵌合させるように保持部を形成した場合には、保持部を形成するための格別な部品を用意したり、格別な部品の組付け作業をしたりする必要がなくなり、簡単に上記タイロッドのラックバーハウジングに対する固定を実現できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
以下、本発明の一実施形態について図面を用いて説明する。図1は、同実施形態に係る車両のステアリング装置の全体外観図である。図2は、図1の2点鎖線で囲んだ部分の拡大横断断面図である。なお、本願明細書においては、前後方向とは車両の前後方向を意味し、左右方向とは車両の左右方向を意味する。
【0010】
この車両のステアリング装置は、操舵ハンドル11、ラックバー21、左右一対のタイロッド31,32、連結器40及びヒートインシュレータ61を備えている。操舵ハンドル11は、操舵輪としての左右前輪FW1,FW2を操舵するために、運転者によって操舵操作される。ラックバー21は、操舵ハンドル11の操舵操作に応じて車両の左右方向に変位する。タイロッド31,32は、ラックバー21の左右方向への変位に応じて揺動して左右前輪FW1,FW2を左右に操舵する。連結器40は、ラックバー21とタイロッド31,32とを連結して、ラックバー21の左右方向への変位に応じてタイロッド31,32を揺動させる。ヒートインシュレータ61は、連結器40を覆って熱源から連結器40への輻射熱を遮断する。
【0011】
ラックバー21は、金属材料で長尺状に形成され、その一部にラック歯を有する。ラックバー21は、金属材料で円筒状に形成されたラックバーハウジング22内に、ラックバーハウジング22と軸線方向を同一にして、軸線方向に変位可能に組み込まれている。ラックバー21のラック歯には、ラックバーハウジング22に組み付けられたギヤボックス12内にて、ステアリングシャフト13の下端部に設けたピニオンギヤが噛み合っている。ステアリングシャフト13の上端には、操舵ハンドル11が組み付けられている。操舵ハンドル11が回動されると、ステアリングシャフト13が軸線回りに回転して、ラックバー21は左右方向に変位する。ラックバー21の中央前面側には、ラックバー21が中立位置にある状態で、車両の左右方向の中心位置を挟んで左右対称位置に、円形の凹部21a,21bがそれぞれ形成されている。また、ラックバー21の中央前面側には、凹部21a,21bの底面中心位置から後方に向かって内周面に雌ねじを形成した有底のねじ孔21c,21dが形成されている。
【0012】
ラックバーハウジング22の両端部外周上には、車体取付け部(ギヤマウント)22a,22bが設けられている。車体取付け部22a,22bには、図3に示すように、マウントブッシュ23,24,25,26が組み付けられている。図3は、車体取付け部22aを、図1の3−3線に沿って見た拡大断面図である。なお、車体取付け部22b及びマウントブッシュ25,26も車体取付け部22a及びマウントブッシュ23,24と同様に構成されており、図3においては、車体取付け部22b及びマウントブッシュ25,26に関する部材の符号をカッコ内に示す。以下の具体的構成の説明においても、車体取付け部22b及びマウントブッシュ25,26に関する部材の符号をカッコ内に示して説明する。
【0013】
車体取付け部22a(22b)は、車体組付け状態にてラックバーハウジング22の前側位置(すなわちタイロッド31,32側)にくるように、ラックバーハウジング22に一体的に円筒状に形成されている。車体取付け部22a(22b)の内周面上には、斜め上方からマウントブッシュ23(25)が圧入されるとともに、斜め下方からマウントブッシュ24(26)が圧入されている。マウントブッシュ23,24(25,26)は、鍔付き円筒状に金属で成形され、ラックバーハウジング22を車体BDに固定するためのボルト27(28)を貫通させる軸受け部材23a,24a(25a,26a)を有する。軸受け部材23a,24a(25a,26a)の外周面上には、弾性材料であるゴム材料で鍔付き円筒状に形成されたゴム部材23b,24b(25b,26b)が加硫接着されている。
【0014】
ゴム部材23b(25b)は、さらに、鍔付き円筒状に形成された本体部と一体的に形成された保持部23b1(25b1)を有する。保持部23b1(25b1)は、前記本体部の鍔部分の外周上から軸方向外側に突出して、前記本体部よりも大径の円筒状に形成されている。この円筒状部分の内径は軸受け部材23a(25a)の外径に等しく、タイロッド31,32を保持するために、前記本体部よりも肉厚に形成されている。保持部23b1(25b1)の円筒部分の対向する両側面には、嵌合溝23b2(25b2)が先端面から前記本体部に向かって形成されている。嵌合溝23b2(25b2)の幅は、タイロッド31,32の直径よりも若干小さく設定されている。これにより、嵌合溝23b2(25b2)内にタイロッド31,32を嵌め込んだ状態では、タイロッド31,32はラックバーハウジング22上に固定される。また、前記嵌め込みを解除すれば、タイロッド31,32の前記固定は解除される。
【0015】
また、ラックバーハウジング22の中央部前側には、ラックバー21と連結器40の一体的な左右方向の変位を許容するために、横長の方形状の開口部22cが設けられている。この開口部22cの横方向の長さは、ラックバー21の左右方向への最大変位量よりも若干長く設定されている。
【0016】
ラックバーハウジング22の左右両端部を除く部分は、ダストブーツ29によって覆われている。ダストブーツ29は、ゴム材料で一体的に成型され、その中央部29aを厚肉に形成し、中央部29aの両側にて薄肉の蛇腹部29b,29cを有する。中央部29aは、円筒状に形成され、その前側部分に垂直な平面を形成する凹部29a1を有する。この凹部29a1には、ラックバー21が中立状態にあるときにねじ孔21c,21dが対向する位置に、貫通孔29a2,29a3が設けられている。ダストブーツ29の両端部は、ラックバーハウジング22の外周上に固定されている。ダストブーツ29の中央部29aは、詳しくは後述するように、連結器40によりラックバー21に組み付けられている。したがって、ダストブーツ29の中央部29aは、ラックバー21の左右方向の変位に応じて、蛇腹部29b,29cの伸縮を伴いながら左右方向に変位する。
【0017】
タイロッド31,32は、各外側端にて、連結部材33,34に組み付けられた図示しないナックルアームを介して、揺動により左右前輪FW1,FW2を操舵可能にそれぞれ連結している。タイロッド31,32の各内側端は、連結器40の左右方向の変位に応じて左右方向に変位するように連結器40に接続されている。
【0018】
連結器40は、ブラケット41及び左右一対のボールジョイント機構50A,50Bからなる。ブラケット41は、図5A〜図5Eに示すように、本体部41a及び取付け部41b,41cからなり、金属材料を一体成型して平面視T字状に形成されている。図5Aは、ブラケット41の正面図、すなわち車両への組み付け状態にてブラケット41を前方から見た図である。図5Bはブラケット41の平面図であり、図5Cはブラケット41の側面図である。図5Dは図5Aの5D−5D線に沿って見たブラケット41の断面図であり、図5Eは図5Aの5E−5Eに沿って見たブラケット41の断面図である。
【0019】
本体部41aは、前端から後端近傍位置まで横方向に同一の幅を有し、後端部にて後方に向けて横方向の幅が徐々に大きくなるような形状に形成されている。また、この本体部41aは、横方向から見て、前部にてU字状(すなわち円弧状)の上下対称の外形を有し、後部にて直線状の上下対称の外形を有する。そして、後部の上面及び下面は平面を形成しており、この後部の上面及び下面は、ヒートインシュレータ61をブラケット41に組み付けた際の座面41a1,41a2を構成する。本体部41aの後端部には、横方向から見て、座面41a1,41a2から上方及び下方にそれぞれ突出して、座面41a1,41a2の後端にて横方向に直線上に延びた段差を形成する突出部41a3,41a4が設けられている。これらの突出部41a3,41a4の前後方向の幅は、座面41a1,41a2の前後方向の長さに比べて小さい。本体部41aの前部には、横方向に貫通して内周面に雌ねじを形成したねじ孔41a5が設けられている。本体部41aの中間部には、座面41a1,41a2から内部に向けて内周面に雌ねじを形成した有底のねじ孔41a6,41a7が設けられている。
【0020】
取付け部41b,41cは、本体部41aの後端部(突出部41a3,41a4の前後位置に対応)から左右方向へそれぞれ延設されている。取付け部41b,41cの前後方向の幅は、突出部41a3,41a4の前後方向の幅に等しい。取付け部41b,41cは、正面から見てU字状(すなわち円弧状)の左右対称の外形を有する。また、両取付け部41b,41cには、前後方向に貫通する円形の孔41b1,41c1が設けられている。
【0021】
ブラケット41は、取付け部41b,41cにて、一対のボルト42,43を用いてラックバー21に固定されている。ボルト42,43は、取付け部41b,41cの孔41b1,41c1及びダストブーツ29の貫通孔29a2,29a3を貫通して、ラックバー21のねじ孔21c,21dにねじ結合されている。連結器41をラックバー21及びダストブーツ29の正確な位置に堅固に固定するために、ボルト42,43の外周上には金属製のカラー44,45及び樹脂製の支持部材46が組み付けられている。カラー44,45は、段付き円筒状に形成され、後端部をラックバー21の凹部21a,21bに嵌合させるとともに、前端部をダストブーツ29の貫通孔29a2,29a3に嵌合させて、ボルト42,43を貫通させている。支持部材46は、長円状に樹脂材料により一体成型されて一対の貫通孔を有し、貫通孔にボルト42,43及びカラー44,45を貫通させている。また、支持部材46は、カラー44,45の段差部とダストブーツ29の凹部29a1との間に介装されて、凹部29a1を連結器40との間に挟み込むようにしている。
【0022】
ボールジョイント機構50A,50Bは、金属製の支持部材51,52及び金属製の連結ロッド53,54を有する。支持部材51,52は、それらの内側部に設けた雄ねじ部51a,52aをブラケット41のねじ孔41a5に外側からそれぞれねじ結合させて、ブラケット41に固定されている。支持部材51,52は、球座部51b,52bにて、樹脂製のシート55,56を介して、連結ロッド53,54の内側端に設けた球状のボール部53a,54aを回転可能に支持している。球座部51b,52bは、ゴム製のダストブーツ57,58により覆われている。連結ロッド53,54の外側部分にそれぞれ設けた雄ねじ部53b,54bは、タイロッド31,32の内周面に設けた雌ねじ部31a,32aにねじ結合されている。そして、ロックナット59,60により、タイロッド31,32は連結ロッド53,54に堅固に固定されている。
【0023】
ヒートインシュレータ61は、連結器40を前側から覆って、連結器40の前下方に位置するエンジン及びその付属部品から連結器40への輻射熱を遮断することにより、連結器40を保護する。特に、ヒートインシュレータ61は、連結器40内のシート55,56、球座部51b,52b内に封入されたグリースなどへの前記輻射熱を遮断して、ボールジョイント機構50A,50Bを保護する。このヒートインシュレータ61は、図6A〜図6Eに示されている。図6Aは、ヒートインシュレータ61の正面図、すなわち車両への組み付け状態にてヒートインシュレータ61を前方から見た図である。図6Bはヒートインシュレータ61の平面図であり、図6Cはヒートインシュレータ61の側面図である。図6Dは、図6Cの矢印6Dによって示された部分のヒートインシュレータ61の部分拡大図である。図6Eは、図6Cの矢印6Eによって示された部分のヒートインシュレータ61の部分拡大図である。
【0024】
ヒートインシュレータ61は、金属プレート(例えば、鉄製の金属プレート)を曲げ加工して形成したもので、連結器40への組み付け状態にて前側に位置する連結部61aにて一体的に連結された上板部61b及び下板部61cを有する。上板部61b及び下板部61cは互いに上下に対向し、連結部61aと共に、縦断面U字状の後方に開放された空間SPを形成する。なお、この空間SPは、左右側方においても開放されている。下板部61cは、方形状に形成され、左右前端部において左右対称に小さく円弧状に切り欠かれている。上板部61bも、下板部61cと同じ方形状に形成され、中央部から左右対称に斜め前方に比較的大きく切り欠かれている。そして、上板部61bの面積は下板部61cの面積よりも小さく設定されている。言い換えれば、上板部61bが空間SPを覆う面積は、上板部61bの前記斜め前方に切り欠いた面積分だけ、下板部61cが空間SPを覆う面積よりも小さい。これにより、ヒートインシュレータ61内の熱が上方に逃げ易くなり、ヒートインシュレータ61内の温度上昇が良好に抑制される。また、連結部61a、上板部61b及び下板部61cは、左右方向の中央部分を外側部分よりも窪ませて形成されている。
【0025】
上板部61b及び下板部61cの中央位置には、前端近傍位置から後方に向けて所定幅の平面部61b1,61c1が形成されている。平面部61b1,61c1の後端部分は、それらよりも外側の上板部61b及び下板部61cの後端面よりも方形状に突出して、突出部61b2,61c2を構成する。突出部61b2,61c2の前方の左右方向中心位置には、ブラケット41に設けたねじ孔41a6,41a7と同径の円形の貫通孔61b3,61c3が形成されている。これらの貫通孔61b3,61c3の入口の最も後方の位置から突出部61b2,61c2の前端までの長さは、ブラケット41のねじ孔41a6、41a7の入口の最も後方の位置から座面41a1,41a2に設けた突出部41a3、41a4の段差までの長さに等しい。これは、ヒートインシュレータ61をブラケット41に組み付けた際に、ヒートインシュレータ61の突出部61b2,61c2の前端面を、ブラケット41の突出部41a3、41a4による段差面に当接させることにより、ヒートインシュレータ61を位置決めするためである。ヒートインシュレータ61に関しては、プレス打ち抜きにより、突出部61b2,61c2の端面を高精度に加工しておくとよい。また、ブラケット41の突出部41a3,41a4に関しては、切削などの機械加工により、高精度に突出部41a3,41a4の段差面を成型しておくとよい。
【0026】
このように構成したヒートインシュレータ61は、図4A及び図4Bに示すように、ブラケット41の本体部41aに固定される。図4Aは、図1及び図2からブラケット41及びヒートインシュレータ61のみを取り出して、ヒートインシュレータ61のブラケット41への組付け状態を示す平面図である。図4Bは、図4Aの4B−4B線に沿って見た断面図である。
【0027】
ヒートインシュレータ61は、上板部61bの平面部61b1の下面をブラケット41の座面41a1上に密着させるとともに、下板部61cの平面部61c1の下面をブラケット41の座面41a2上に密着させる。そして、ヒートインシュレータ61の上板部61bの突出部61b2の後端面をブラケット41の突出部41a3の段差面に当接させるとともに、ヒートインシュレータ61の下板部61cの突出部61c2の後端面をブラケット41の突出部41a4の段差面に当接させる。そして、ボルト62,63を、ヒートインシュレータ61の貫通孔61b3,61c3を介してブラケット41のねじ孔41a6,41a7に侵入させてねじ結合させる。これにより、ヒートインシュレータ61は、ブラケット41に固定される。
【0028】
上記のように構成したステアリング装置の組立てについて説明しておく。ラックバー21をラックバーハウジング22内に収容するとともに、ラックバーハウジング22にマウントブッシュ23,24,25,26及びダストブーツ29を組付ける。この場合、カラー44,45及び支持部材46もラックバー21に組みつ付けておく。ラックバーハウジング22に対するマウントブッシュ24,26の組付けにおいては、車体取付け部22a,22bにマウントブッシュ23,24,25,26を圧入して固定する。
【0029】
この状態で、連結器40のブラケット41が、ボルト42,43を用いて、ラックバー21に固定される。一方、支持部材51,52の球座部51b、52に連結ロッド53,54のボール部53a,54aを回転可能に支持させた状態で、連結ロッド53,54を支持部材51,52に組み付けて、ボールジョイント機構50A,50Bを組み立てておく。この場合、ボールジョイント機構50A,50Bを組み立てる前には円筒状に形成されている球座部51b、52b内に円筒状のシート55,56を組み入れ、シート55,56内にボール部53a,54aを侵入させて、球座部51b、52bをかしめた後、ダストブーツ57,58を組み付けることにより、ボールジョイント機構50A,50Bを組み立てる。
【0030】
次に、ラックバー21に組み付けられたブラケット41に、ボールジョイント機構50A,50Bの支持部材51,51をそれぞれ組み付ける。この場合の組付け行程においては、支持部材51の雄ねじ部51a、51bを、ブラケット41のねじ孔41a5に左右方向の外側から内側に向けてねじ込んで、ブラケット41にボールジョイント機構50A,50Bを固定する。そして、ボールジョイント機構50A,50Bの連結ロッド53,54の軸線方向外側端部に、タイロッド31,32の軸線方向内側端部をそれぞれ組み付ける。このタイロッド31,32の組付けにおいては、連結ロッド53,54のボール部53a,54aを回転させて、連結ロッド53,54を前方(ラックバー21と反対方向)に若干傾ける。次に、連結ロッド53,54の雄ねじ部53b,54bに、ロックナット59,60を組み付けるとともに、タイロッド31,32の雌ねじ部31a、32aをねじ入れ、最後にロックナット59,60の締め付けにより、タイロッド31,32を連結ロッド53,54に堅固に固定する。
【0031】
このタイロッド31,32の組付け後、タイロッド31,32を揺動させて、ラックバーハウジング22の車体取付け部22a,22bに組み付けたマウントブッシュ23,25に設けた保持部23b1,25b1の嵌合溝23b2,25b2内に、タイロッド31,32を押し込む。これにより、タイロッド31,32は、図7に示すように固定される。その後、ヒートインシュレータ61を、前述したようにして、ブラケット41に固定する。また、タイロッド31,32の外側端部に、連結部材33,34を組み付けておく。なお、ヒートインシュレータ61及び連結部材33,34の組付けにおいては、タイロッド31,32を連結ロッド53,54に組み付ける前でもよい。
【0032】
このような行程により、ステアリングアセンブリが組み立てられる。このステアリングアセンブリの組み立てにおいて、タイロッド31,32の組付け後には、タイロッド31,32が自由に揺動することはなく、ラックバーハウジング22(特に、車体取付け部22a、22b)を含む周辺部品に対するタイロッド31,32の衝突が回避される。また、このように構成されたステアリングアセンブリを輸送する場合にも、タイロッド31,32はラックバーハウジング22に固定されたままであるので、ラックバーハウジング22(特に、車体取付け部22a、22b)を含む周辺部品に対するタイロッド31,32の衝突が回避される。
【0033】
また、ステアリングアセンブリの車体への組み付けにおいては、前述したラックバーハウジング22の車体取付け部22a,22bに対するタイロッド31,32の固定を一旦解除する。この解除後、車体取付け部22a、22bに組み付けたマウントブッシュ23,24,25,26にボルト27,28を貫通させて車体にねじ結合し、ステアリングアセンブリを車体に固定する。次に、タイロッド31,32を車体取付け部22a,22bに再び固定する。その後、ステアリングシャフト13及び操舵ハンドル11をステアリングアセンブリに組み付けて、操舵ハンドル11をラックバー21に連結する。そして、タイロッド31,32の固定を再び解除し、タイロッド31,32の外側端部に組み付けた連結部材33,34に、ナックルアーム及び左右前輪FW1,FW2をそれぞれ組み付ける。
【0034】
したがって、ステアリングアセンブリの組み立て時、組み立てられたステアリングアセンブリの輸送時、及びステアリングアセンブリの車体への組み付け時に、ラックバーハウジング22を含む周辺部材に対するタイロッド31,32の衝突が回避される。その結果、タイロッド31,32及び前記周辺部品の外周面に施したメッキ、塗装などの防錆処理部分が傷つけられることがなくなり、防錆処理部分の防錆効果の低下を回避できる。また、マウントブッシュ23,25をラックバーハウジング22の車体取付け部22a,22bに組み付けるのみで、タイロッド31,32を保持する保持部23b1,25b1がラックバーハウジング22に設けられることになる。したがって、簡単にタイロッド31,32のラックバーハウジング22に対する固定機構を実現できる。
【0035】
上記のように構成した実施形態の動作について説明する。運転者が操舵ハンドル11を左右に回動操作すると、操舵ハンドル11の回動はステアリングシャフト13を介してラックバー21に伝達されて、ラックバー21は左右方向に変位する。このラックバー21の左右方向の変位により、ブラケット41及び支持部材51,52もラックバー21と一体的に左右に変位する。支持部材51,52の左右方向の変位により、連結ロッド53,54のボール部53a,54aの回転を伴いながら、タイロッド31,32は連結ロッド53,54と一体的に揺動し、左右前輪FW1,FW2は操舵される。したがって、左右前輪FW1,FW2は、操舵ハンドル11の回動操作により操舵される。
【0036】
また、ヒートインシュレータ61は、エンジン及びその付属部品から連結器40、特にボールジョイント機構50A,50Bのシート55,56、球座部51b、52b、ボール部53a,54aへの輻射熱を遮断する。したがって、シート55,56、球座部51b、52b内のグリースなどが高い温度まで上昇しなくなるので、シート55,56、グリースなどが熱によって変形及び変質し難くなり、ボールジョイント機構50A、50Bの良好な作動が維持される。
【0037】
さらに、本発明は上記実施形態に限定されることなく、本発明の範囲内において種々の変形例を採用することができる。
【0038】
上記実施形態においては、マウントブッシュ23,25のゴム部材23b、25bの一部を保持部23b1,25b1として用いて、タイロッド31,32を固定するようにした。しかし、これに代えて、車体取付け部22a,22b又はラックバーハウジング22の車体取付け部材22a,22b以外の部位に、タイロッド31,32を着脱可能に保持する保持部を設けるようにしてもよい。例えば、タイロッド31,32を着脱可能に保持する保持器を別途用意して、車体取付け部22a,22b又はラックバーハウジング22の車体取付け部材22a,22b以外の部位に前記保持器を組み付けるようにしてもよい。
【0039】
これらの変形例によっても、ステアリングアセンブリの組み立て時、組み立てられたステアリングアセンブリの輸送時、及びステアリングアセンブリの車体への組み付け時に、ラックバーハウジング22を含む周辺部材に対するタイロッド31,32の衝突が回避される。その結果、タイロッド31,32及び前記周辺部品の外周面に施したメッキ、塗装などの防錆処理部分が傷つけられることがなくなり、防錆処理部分の防錆効果の低下を回避できる。
【図面の簡単な説明】
【0040】
【図1】本発明の一実施形態に係る車両のステアリング装置の全体外観図である。
【図2】図1の2点鎖線で囲んだ部分の拡大横断断面図である。
【図3】図1の3−3線に沿って見た車体取付け部の拡大断面図である。
【図4A】ヒートインシュレータのブラケットへの組付け状態を示す平面図である。
【図4B】図4Aの4B−4B線に沿って見た断面図である。
【図5A】ブラケットの正面図、すなわち車両への組み付け状態にてブラケットを前方から見た図である。
【図5B】ブラケットの平面図である。
【図5C】ブラケットの側面図である。
【図5D】図5Aの5D−5D線に沿って見たブラケットの断面図である。
【図5E】図5Aの5E−5E線に沿って見たブラケットの断面図である。
【図6A】ヒートインシュレータの正面図、すなわち車両への組み付け状態にてヒートインシュレータを前方から見た図である。
【図6B】ヒートインシュレータの平面図である。
【図6C】ヒートインシュレータの側面図である。
【図6D】図6Cの矢印6Dによって示された部分のヒートインシュレータの部分拡大図である。
【図6E】図6Cの矢印6Eによって示された部分のヒートインシュレータの部分拡大図である。
【図7】ラックバーハウジングに対するタイロッドの固定状態を示す車両のステアリング装置の全体外観図である。
【符号の説明】
【0041】
11…操舵ハンドル、13…ステアリングシャフト、21…ラックバー、22…ラックバーハウジング、22a,22b…車体取付け部、23,24,25,26…マウントブッシュ、23b,24b,25b,26b…ゴム部材、23b1,25b1…保持部、29…ダストブーツ、31,32…タイロッド、40…連結器、41…ブラケット、50A,50B…ボールジョイント機構、61…ヒートインシュレータ
【特許請求の範囲】
【請求項1】
操舵ハンドルの操舵操作に応じて軸線方向に変位するラックバーと、
左右操舵輪を軸線方向外側端にてそれぞれ接続し、前記左右操舵輪を揺動により左右にそれぞれ操舵する左右一対のタイロッドと、
前記ラックバーの軸線方向中央部に固定されるとともに、前記左右一対のタイロッドの内側端をそれぞれ接続し、前記ラックバーと一体的に左右方向に変位して、前記左右操舵輪を左右に操舵するために前記左右一対のタイロッドを揺動させる連結器と、
前記ラックバーを軸線方向に変位可能に収容したラックバーハウジングとを備えた車両のステアリング装置において、
前記ラックバーハウジングの外周上に前記左右一対のタイロッドを着脱可能に保持する左右一対の保持部を設けたことを特徴する車両のステアリング装置。
【請求項2】
前記ラックバーハウジングは、前記左右一対のタイロッド側の外周上に車体に取付けるための左右一対の車体取付け部を備えており、
前記左右一対の車体取付け部は前記ラックバーハウジングを車体に固定するためのボルトをそれぞれ貫通させる円筒部を有し、前記円筒部の内周面上に弾性部材を有するマウントブッシュが組み付けられ、
前記マウントブッシュの弾性部材を前記車体取付け部から突出させ、前記突出させた部分に前記タイロッドを嵌合させるように前記保持部を形成したことを特徴とする請求項1に記載した車両のステアリング装置。
【請求項1】
操舵ハンドルの操舵操作に応じて軸線方向に変位するラックバーと、
左右操舵輪を軸線方向外側端にてそれぞれ接続し、前記左右操舵輪を揺動により左右にそれぞれ操舵する左右一対のタイロッドと、
前記ラックバーの軸線方向中央部に固定されるとともに、前記左右一対のタイロッドの内側端をそれぞれ接続し、前記ラックバーと一体的に左右方向に変位して、前記左右操舵輪を左右に操舵するために前記左右一対のタイロッドを揺動させる連結器と、
前記ラックバーを軸線方向に変位可能に収容したラックバーハウジングとを備えた車両のステアリング装置において、
前記ラックバーハウジングの外周上に前記左右一対のタイロッドを着脱可能に保持する左右一対の保持部を設けたことを特徴する車両のステアリング装置。
【請求項2】
前記ラックバーハウジングは、前記左右一対のタイロッド側の外周上に車体に取付けるための左右一対の車体取付け部を備えており、
前記左右一対の車体取付け部は前記ラックバーハウジングを車体に固定するためのボルトをそれぞれ貫通させる円筒部を有し、前記円筒部の内周面上に弾性部材を有するマウントブッシュが組み付けられ、
前記マウントブッシュの弾性部材を前記車体取付け部から突出させ、前記突出させた部分に前記タイロッドを嵌合させるように前記保持部を形成したことを特徴とする請求項1に記載した車両のステアリング装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4A】
【図4B】
【図5A】
【図5B】
【図5C】
【図5D】
【図5E】
【図6A】
【図6B】
【図6C】
【図6D】
【図6E】
【図7】
【図2】
【図3】
【図4A】
【図4B】
【図5A】
【図5B】
【図5C】
【図5D】
【図5E】
【図6A】
【図6B】
【図6C】
【図6D】
【図6E】
【図7】
【公開番号】特開2009−45950(P2009−45950A)
【公開日】平成21年3月5日(2009.3.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−210749(P2007−210749)
【出願日】平成19年8月13日(2007.8.13)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成21年3月5日(2009.3.5)
【国際特許分類】
【出願日】平成19年8月13日(2007.8.13)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】
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