説明

車両のドア構造

【課題】モール部材のリップ部を通過してしまった雨水を的確に処理することを可能にする。
【解決手段】車体に開閉自在に取付けたドア本体21と、このドア本体21の内部へ収納可能なドアガラス22と、ドア本体21の上縁部27に沿って設けられ、ドア本体21とドアガラス22との隙間をシールするモール部材23とを備えた車両のドア構造において、モール部材23に、ドアガラス22側に当接するリップ部42と、このリップ部42の下方に形成され、ドアガラス22側に突出する突起部43とを備え、突起部43の上側に、モール部材23の延在方向に沿って溝部44が形成される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ドア本体とドアガラスとの隙間をシールする車両のドア構造に関するものである。
【背景技術】
【0002】
車両のドア構造として、車体に開閉自在にドア本体が取付けられ、このドア本体の内部へ収納可能なドアガラスが設けられ、これらのドア本体とドアガラスとの隙間をシールするモール部材が設けられるものが知られている。
この種の車両のドア構造は、ドアガラスからドア本体内に雨水の浸入を防止するように適宜設計がなされるものであった。
【0003】
このような車両のドア構造として、モール部材に雨水の浸入を防止するリップ部を形成したものが知られている(例えば、特許文献1参照。)。
【特許文献1】特開平9−123756号公報
【0004】
特許文献1の車両のドア構造は、車体に開閉自在に取付けたドア本体と、このドア本体の内部へ収納可能なドアガラスと、ドア本体の上縁部に沿って設けられ、ドア本体とドアガラスとの車外側の隙間をシールするモール部材とを備え、このモール部材に雨水の浸入を防止するリップ部が形成され、このリップ部の下方にドアガラスに当接させる突起部が設けられたものである。
【0005】
しかし、車両のドア構造では、リップ部で大半の雨水は防げるものの、例えば、天候により雨水が横殴りにドアガラスに当たる場合などでは、リップ部とドアガラスとのシール部分からドア本体内に雨水が浸入する場合も有りうる。
ドア本体内に雨水が浸入した場合には、ドア本体内に内蔵される照明類、スピーカ若しくはドアガラスを昇降させるレギュレータなどが被水することがあり、錆等の発生の原因となり、好ましいこととは言えない。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、モール部材のリップ部を通過してしまった雨水を的確に処理することができる車両のドア構造を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
請求項1に係る発明は、車体に開閉自在に取付けたドア本体と、このドア本体の内部へ収納可能なドアガラスと、ドア本体の上縁部に沿って設けられ、ドア本体とドアガラスとの隙間をシールするモール部材とを備えた車両のドア構造において、モール部材に、ドアガラス側に当接するリップ部と、このリップ部の下方に形成され、ドアガラス側に突出する突起部とを備え、突起部の上側に、モール部材の延在方向に沿って溝部が形成されていることを特徴とする。
【0008】
請求項2に係る発明は、突起部が、ドア本体の上縁部に挟持されるモール本体からドアガラス側に突出して形成され、ドアガラスに当接可能なガイド機能を有し、モール本体から連続して形成される突起基部と、この突起基部の先端部側に上方に突出して形成される隆起部とを備え、溝部が、モール本体、突起基部及び隆起部によって形成されることを特徴とする。
【0009】
請求項3に係る発明は、隆起部が、ドアガラスとの当接部を有し、この当接部は平坦面で形成されていることを特徴とする。
【0010】
請求項4に係る発明は、隆起部が、突起基部に比較して軟質な材料で構成されることを特徴とする。
【0011】
請求項5に係る発明は、隆起部が、ドアガラス側になるに連れて先細りとなるテーパ形状を有していることを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
請求項1に係る発明では、車体に開閉自在にドア本体が取付けられ、このドア本体の内部へ収納可能なドアガラスが設けられ、ドア本体の上縁部に沿って設けられ、ドア本体とドアガラスとの隙間をシールするモール部材が設けられる。
モール部材に、ドアガラス側に当接するリップ部と、このリップ部の下方に形成され、ドアガラス側に突出する突起部とを備える。
突起部の上側に、モール部材の延在方向に沿って溝部が形成されているので、リップ部の下方に水が浸入した場合であっても、突起部の上面に形成された溝部によってモール部材の端末部まで水を案内して排水することができる。これにより、ドア本体内部に水が流下することによる不具合を防止することができる。
【0013】
請求項2に係る発明では、突起部が、ドア本体の上縁部に挟持されるモール本体からドアガラス側に突出して形成され、ドアガラスに当接可能なガイド機能を有し、モール本体から連続して形成される突起基部と、この突起基部の先端部側に上方に突出して形成される隆起部とを備える。
溝部が、モール本体、突起基部及び隆起部によって形成されるので、突起部の上面に凹形状を切欠いて形成することなく溝部を形成することができる。これにより、突起部の強度を損ねることがない。従って、突起部をドアガラスと当接させるガイド部として良好に利用することができる。
【0014】
請求項3に係る発明では、隆起部が、ドアガラスとの当接部を有し、この当接部は平坦面で形成されている。すなわち、肉厚を確保できる隆起部によって、ドアガラスとの当接部を平坦面に形成することができ、ドアガラスに対して安定したガイド機能を得ることができる。
【0015】
請求項4に係る発明では、隆起部が、突起基部に比較して軟質な材料で構成されるので、ドアガラスに対して安定したガイド機能を得ることができる。
【0016】
請求項5に係る発明では、隆起部が、ドアガラス側になるに連れて先細りとなるテーパ形状を有しているので、隆起部を極力小さく形成してコストを削減するとともに、ドアガラスの滑らかなガイド機能を得ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
本発明を実施するための最良の形態を添付図に基づいて以下に説明する。なお、図面は符号の向きに見るものとする。
図1は本発明に係る車両のドア構造を採用した車両の斜視図であり、図2は図1の2−2線断面図であり、図3は本発明に係る車両のドア構造のモール部材の斜視図である。
図1に示されたように、車両10は、車体11に開閉自在に取付けられ車室12内に乗降のためのドア14が設けられる。
【0018】
車両のドア構造は、ドア14のシール構造であり、車体11にヒンジ(不図示)を介して開閉自在に取付けられるドア本体21と、このドア本体21に昇降自在に取付けられ、ドア本体21の内部に収納可能なドアガラス22と、ドア本体21の上縁部に沿って設けられ、ドア本体21とドアガラス22との隙間をシールするモール部材23とから構成される。
【0019】
ドア本体21は、車体11外方に形成されるアウタパネル25と、車室12側に形成されるインナパネル(不図示)とからなり、アウタパネル25はヘアピン状に折り曲げられた上縁部(フランジ部)27を備える。
【0020】
図2及び図3に示されたように、モール部材23は、ゴム等の弾性体で形成された断面視略U字状の長手の部材であり、金属板で形成された芯金31と、この芯金31の廻りに略U字状に形成されるモール本体32と、このモール本体32の略U字形状の内部に突出され、上縁部27の車体11外方に当接する第1・第2外側当接部33,34と、モール本体32の略U字形状の内部に突出され、上縁部27の車室12側に当接する第1・第2内側当接部35,36と、モール本体32の略U字形状の外先端に形成され、アウタパネル25に当接するパネル当接部37と、モール本体32の略U字形状の内先端に形成され、アウタパネル25のエッジ28を受けるパネル受け部38と、モール本体32の略U字形状の底部からドアガラス22側に延ばされ、モール部材23とドアガラス22との隙間を覆うカバー部41と、モール本体32の略U字形状の車室12側中間上方からドアガラス22側に延ばされ、ドアガラス22に当接させて、ドア本体21とドアガラス22とをシールするリップ部42と、このリップ部42の下方に形成されるとともに、モール本体32の略U字形状の車室12側中間下方からドアガラス22側に突出させ、ドアガラス22をガイドする突起部43と、この突起部43の上側にモール本体32の延在方向に沿って形成され、浸入した雨水を流す溝部44と、リップ部42に取付けられ、ドアガラス22に摺動させるリップ摺動部材46と、突起部43の隆起部49に取付けられ、ドアガラス22に摺動させる突起摺動部材47とからなる。
【0021】
突起部43は、詳細には、ドア本体21の上縁部27に挟持されるモール本体32からドアガラス22側に突出して形成され、ドアガラス22に当接可能なガイド機能を有し、モール本体32から連続して形成される突起基部48と、別体で形成されるとともに、突起基部48の先端部側に上方に突出して形成される隆起部49とからなる。
【0022】
隆起部49は、ドアガラス22との当接部51を有し、この当接部51は平坦面で形成され、突起基部48に比較して軟質な材料で構成される。さらに、隆起部49は、ドアガラス22側になるに連れて先細りとなるテーパ形状を有したテーパ部52,53を備える。
溝部44は、詳細には、モール本体32、突起基部48及び隆起部49から構成される。
【0023】
図4(a),(b)は本発明に係る車両のドア構造の比較検討図である。(a)は比較例の車両のドア構造が示され、(b)は実施例の車両のドア構造が示される。
(a)において、比較例の車両のドア構造は、ドア本体101と、このドア本体101の内部に収納可能なドアガラス102と、これらのドア本体101とドアガラス102との隙間をシールするモール部材103とから構成され、モール部材103に、ドアガラス102に当接させ、ドア本体101とドアガラス102とをシールするリップ部105と、リップ部105の下方に形成され、ドアガラス102をガイドする突起部106とが形成される。
【0024】
リップ部105とドアガラス102との間から浸入した雨水は、リップ部105から矢印a1の如く突起部106に流れ、突起部106から矢印a2の如くドア本体101内に浸入し、例えば、ドア本体101内に内蔵される照明類(不図示)、スピーカ若しくはドアガラス102を昇降させるレギュレータなどが被水する恐れがある。
【0025】
(b)において、実施例の車両のドア構造では、モール部材23に、モール本体32と、ドア本体21とドアガラス22とをシールするリップ部42と、ドアガラス22をガイドする突起部43とが形成され、モール本体32と、突起部43の突起基部48及び突起部43の隆起部49で、雨水を流す溝部44が形成される。従って、リップ部42から矢印b1の如く突起部43に流れた雨水を、溝部44を経由させてドア本体21外に排出することができる。この結果、例えば、ドア本体21内に内蔵される照明類(不図示)、スピーカ若しくはドアガラス22を昇降させるレギュレータなどを雨水から十分に保護することができる。
【0026】
図1〜図3に示されたように、車両のドア構造では、車体11に開閉自在にドア本体21が取付けられ、このドア本体21の内部へ収納可能なドアガラス22が設けられ、ドア本体21の上縁部27に沿って設けられ、ドア本体21とドアガラス22との隙間をシールするモール部材23が設けられる。
【0027】
モール部材23に、ドアガラス22側に当接するリップ部42と、このリップ部42の下方に形成され、ドアガラス22側に突出する突起部43とを備える。
突起部43の上側に、モール部材23の延在方向に沿って溝部44が形成されているので、リップ部42の下方に水が浸入した場合であっても、突起部43の上面に形成された溝部44によってモール部材23の端末部まで水を案内して排水することができる。これにより、ドア本体21内部に水が流下することによる不具合を防止することができる。
【0028】
また、突起部43は、ドア本体21の上縁部27に挟持されるモール本体32からドアガラス22側に突出して形成され、ドアガラス22に当接可能なガイド機能を有し、モール本体32から連続して形成される突起基部48と、この突起基部48の先端部側に上方に突出して形成される隆起部49とを備える。
【0029】
溝部44は、モール本体32、突起基部48及び隆起部49によって形成されるので、突起部43の上面に凹形状を切欠いて形成することなく溝部44を形成することができる。これにより、突起部43の強度を損ねることがない。従って、突起部43をドアガラス22と当接させるガイド部として良好に利用することができる。
【0030】
さらに、隆起部49は、ドアガラス22との当接部51を有し、この当接部51は平坦面で形成されている。すなわち、肉厚を確保できる隆起部49によって、ドアガラス22との当接部51を平坦面に形成することができ、ドアガラス22に対して突起摺動部47を介して安定したガイド機能を得ることができる。
【0031】
隆起部49は、突起基部48に比較して軟質な材料で構成されるので、ドアガラス22に対して安定したガイド機能を得ることができる。
【0032】
隆起部49は、ドアガラス22側になるに連れて先細りとなるテーパ形状を有しているので、隆起部49を極力小さく形成してコストを削減するとともに、ドアガラス22の滑らかなガイド機能を得ることができる。
【0033】
尚、本発明に係る車両のドア構造は、図2に示すように、突起部43の突起基部48及び隆起部49は別体にて形成されたが、これに限るものではなく、突起基部及び隆起部を一体的に形成したものであってもよい。
【産業上の利用可能性】
【0034】
本発明に係る車両のドア構造は、セダンやワゴンなどの乗用車に採用するのに好適である。
【図面の簡単な説明】
【0035】
【図1】本発明に係る車両のドア構造を採用した車両の斜視図である。
【図2】図1の2−2線断面図である。
【図3】本発明に係る車両のドア構造のモール部材の斜視図である。
【図4】本発明に係る車両のドア構造の比較検討図である。
【符号の説明】
【0036】
11…車体、21…ドア本体、22…ドアガラス、23…モール部材、27…上縁部、32…モール本体、42…リップ部、43…突起部、44…溝部、48…突起基部、49…隆起部、51…当接部。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車体に開閉自在に取付けたドア本体と、このドア本体の内部へ収納可能なドアガラスと、前記ドア本体の上縁部に沿って設けられ、前記ドア本体と前記ドアガラスとの隙間をシールするモール部材とを備えた車両のドア構造において、
前記モール部材は、前記ドアガラス側に当接するリップ部と、このリップ部の下方に形成され、前記ドアガラス側に突出する突起部とを備え、
前記突起部の上側には、前記モール部材の延在方向に沿って溝部が形成されていること
を特徴とする車両のドア構造。
【請求項2】
前記突起部は、前記ドア本体の上縁部に挟持されるモール本体から前記ドアガラス側に突出して形成され、前記ドアガラスに当接可能なガイド機能を有し、前記モール本体から連続して形成される突起基部と、この突起基部の先端部側に上方に突出して形成される隆起部とを備え、
前記溝部は、前記モール本体、突起基部及び隆起部によって形成されることを特徴とする請求項1記載の車両のドア構造。
【請求項3】
前記隆起部は、前記ドアガラスとの当接部を有し、この当接部は平坦面で形成されていることを特徴とする請求項2記載の車両のドア構造。
【請求項4】
前記隆起部は、前記突起基部に比較して軟質な材料で構成されることを特徴とする請求項2記載の車両のドア構造。
【請求項5】
前記隆起部は、前記ドアガラス側になるに連れて先細りとなるテーパ形状を有していることを特徴とする請求項2記載の車両のドア構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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