説明

車両のバックドア開口肩部の補強構造

【課題】バックドア開口部周辺の剛性を向上させ、縦壁部接合点周りのモーメントを低減させることにある。
【解決手段】バックドア開口部1の上部にバックドアヒンジが配置されているとともに、バックドアヒンジの取付部3にバックドアヒンジリンフォース10が設けられ、ルーフレール溝5の車両後方に位置するルーフパネル6の縦壁部6aで、ルーフ組立部品Rとサイドボディ組立部品Sとが接合された車体から構成されている車両のバックドア開口肩部2の補強構造において、バックドア開口肩部2に位置するルーフパネル6の下方には、バックドア開口肩部2を補強する肩部リンフォース15が設けられ、肩部リンフォース15は、車両幅方向に間隔を置く2点Wb,Wcでルーフパネル6の縦壁部6aと接合され、2点のうち、車両幅方向外側の接合点Wbでは、サイドボディアウタエクステンションパネル9と接合されている一方、車体の内側では、バックドアヒンジリンフォース10と接合されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、特に、車体後方の上部にドアヒンジ部を有し、バックドアが上方へ開くタイプのハッチバック車両におけるバックドア開口肩部の補強構造に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、ハッチバック車両のバックドア開口部は、積載能力を高めたり、あるいは荷物の積み降ろし作業性を向上させるために、車体後部において大きな面積を有するように設計されている。一方、バックドア開口部の面積を大きく形成した場合は、車両全体の剛性が減少するため、バックドア開口部周辺の剛性を増大させる必要がある。
そこで、従来のハッチバック車両の中には、バックドア開口部の上側コーナ部などの肩部を構成するパネルなどの接合剛性を高めることによって、バックドア開口部を補強するようにした構造のものがある(例えば、特許文献1、2、3参照)。
【0003】
例えば、図9〜図13に示すように、ハッチバック車両のバックドア開口肩部100において、ルーフパネル51などからなるルーフ組立部品50と、サイドボディアウタパネル61などからなるサイドボディ組立部品60とは、ルーフレール溝(スポット溶接用溝)52からルーフパネル51の縦壁部51aにかけて溶接ガン71で複数箇所がスポット溶接されるとともに、ボルト72及びナット73で複数箇所が締結されることによって、互いに接合されている。
そのため、ルーフ組立部品50のルーフバックレール53は、図10及び図11に示すように、ルーフパネル51の車両後方側の辺部に沿って、車両下方へ向かって突出するハット形状の断面に形成されている。そして、バックドアのヒンジ部74には、バックドアヒンジリンフォース54が設けられている。
【0004】
また、サイドボディ組立部品60の下方側には、図12及び図13に示すように、スポット溶接用の作業孔62aを有するクォータインナパネル62がルーフバックレール53の断面形状とほぼ同じ断面形状で配設されている。しかも、クォータインナパネル62の上方には、図9及び図12に示すように、サイドボディアウタエクステンションパネル63が配設されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2002−96758号公報
【特許文献2】特開2008−49760号公報
【特許文献3】特開平8−164872号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上述した従来のバックドア開口肩部100の補強構造においては、図9に示すように、ルーフ組立部品50とサイドボディ組立部品60とが、スポット溶接用溝のルーフレール溝52からルーフパネル51の縦壁部51aにかけて車両幅方向へほぼ一直線上に接合されているので、縦壁部接合点Wにおいて、縦壁部接合点周りのモーメントMが発生しやすく、縦壁部接合点Wが亀裂する場合があった。一方、縦壁部接合点Wを廃止した場合には、スポット溶接部分の亀裂は発生しないが、他の部分に負荷が回ることによって、塗装シーラーPに割れが発生してしまうおそれがあった。特許文献3に記載されているような構造でも、ルーフ組立部品側の剛性を向上させることはできるが、縦壁部接合点W周りのモーメントMを低減させることができないという不具合を有していた。
【0007】
ところで、このような縦壁部接合点Wに掛かるモーメントMは、車両上下方向のサイドボディ組立部品60と、車両幅方向のルーフ組立部品50を構成するルーフバックレール53等の開口部の剛性構造との接合点に掛かる変形モーメントである。バックドア開口部の剛性は、バックドアの開閉操作時の荷重を支え、形状を保つことで開閉操作時の品質(しっくり感やドア閉め時のチャック音の品質など)を保持するものである。しかも、バックドア開口部の剛性は、車体後部の剛性に影響を及ぼすので、車体全体の捩じり剛性に寄与するとともに、車両の品質や操縦安定性の向上に寄与するものである。このため、縦壁部接合点Wの周囲の剛性を確保するとともに、溶接の剥がれ現象等の問題を回避する必要がある。
【0008】
縦壁部接合点Wは、スポット溶接を行う溶接ガン71を用いて、ルーフパネル51とサイドボディアウタエクステンションパネル63、もしくはルーフパネル51とサイドボディアウタパネル61で打つことにより形成されるものである。縦壁部接合点Wに発生するモーメントMの対策としては、車体内側で同じパネルをもう一度接合する必要があるが、サイドボディアウタエクステンションパネル63やサイドボディアウタパネル61を車両幅方向内側に延ばすと、製品形状に突起部分が生じてしまい、プレス成形性が低下したり、部品の運搬が不便となったりする可能性があった。生産工程で突起部分をルーフバックレール53等の車体内側の部品と車両前後方向や車両上下方向で重ね合わせて組み付ける必要があり、また、入り組んで配置される各パネルをくぐって溶接ガン71などの設備を挿入する必要があるので、生産工程における接合作業が煩雑となり、場合によっては実現できないこともあった。さらに、通常、ルーフ組立部品50は、サイドボディ組立部品60に対し、車両上方側から投入されるので、ルーフレール溝52やルーフパネル51の縦壁部51aを跨った部品を配置することは、生産上非常に困難であった。
【0009】
なお、バックドアヒンジリンフォース54を車両幅方向外側に延長してルーフパネル51と接合する場合には、ルーフパネル51とバックドアヒンジリンフォース54で共通のパネルに2つの接合点Wを打つことも可能であるが、バックドアヒンジリンフォース54は、車体インナ側の構造部材に取付けられてバックドアヒンジの取付部74からの荷重を車体骨格と共に支える役割を有しているので、車体骨格と離れてルーフパネル51に接合すると、バックドアヒンジリンフォース54の本来の剛性効果が得られなくなるおそれがあった。また、当該荷重によるバックドアヒンジの取付部74の変形がバックドアヒンジリンフォース54を介してルーフパネル51を変形させることになるので、見栄えが悪くなり、外観品質を維持する上で不具合を有していた。
【0010】
本発明はこのような実状に鑑みてなされたものであって、その目的は、バックドア開口部周辺の剛性を向上させ、縦壁部接合点周りのモーメントを低減させることが可能な車両のバックドア開口肩部の補強構造を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記従来技術の有する課題を解決するために、本発明は、車両側方に車両前後方向に沿って延在するルーフレール溝が設けられ、車両後方に縦壁部が形成されているルーフパネルを備えたルーフ組立部品と、サイドボディアウタパネル、クォータインナパネル及びサイドボディアウタエクステンションパネルを備えたサイドボディ組立部品とを有し、バックドア開口部の上部にバックドアヒンジが配置されているとともに、前記バックドアヒンジの取付部にバックドアヒンジリンフォースが設けられ、前記ルーフレール溝の車両後方に位置する前記ルーフパネルの縦壁部で、前記ルーフ組立部品と前記サイドボディ組立部品とが接合された車体から構成されている車両のバックドア開口肩部の補強構造において、前記バックドア開口肩部に位置する前記ルーフパネルの下方には、前記バックドア開口肩部を補強する肩部リンフォースが設けられ、前記肩部リンフォースは、車両幅方向に間隔を置く2点で前記ルーフパネルの縦壁部と接合され、前記2点のうち、車両幅方向外側の接合点では、前記サイドボディアウタエクステンションパネルと接合されている一方、前記車体の内側では、前記バックドアヒンジリンフォースと接合されている。
【0012】
本発明において、前記2点間に位置する前記ルーフパネルの縦壁部には、車両前方もしくは車両後方に向かって突出する凸形状部が形成されている。
また、本発明において、前記2点が位置する前記ルーフパネルの縦壁部の車両上方視の各平面は、車両後方へ向かって延びるハの字形状の角度で形成され、これら2つの平面の垂線が、前記肩部リンフォースより前記車体の内側のパネルに設けた溶接作業用孔へ向かって互いに近づくように配置されている。
【0013】
さらに、本発明において、前記肩部リンフォースは、車両側方視でハット形状に形成され、前記バックドアヒンジリンフォースと共に車両幅方向に沿って延設され、かつ下端部のフランジで前記バックドアヒンジリンフォースと接合されているとともに、前記バックドアヒンジの取付部の車両前方位置で前記ルーフパネル及び前記バックドアヒンジリンフォースと接合されている。
【発明の効果】
【0014】
上述の如く、本発明に係る車両のバックドア開口肩部の補強構造は、車両側方に車両前後方向に沿って延在するルーフレール溝が設けられ、車両後方に縦壁部が形成されているルーフパネルを備えたルーフ組立部品と、サイドボディアウタパネル、クォータインナパネル及びサイドボディアウタエクステンションパネルを備えたサイドボディ組立部品とを有し、バックドア開口部の上部にバックドアヒンジが配置されているとともに、前記バックドアヒンジの取付部にバックドアヒンジリンフォースが設けられ、前記ルーフレール溝の車両後方に位置する前記ルーフパネルの縦壁部で、前記ルーフ組立部品と前記サイドボディ組立部品とが接合された車体から構成されているものであって、前記バックドア開口肩部に位置する前記ルーフパネルの下方には、前記バックドア開口肩部を補強する肩部リンフォースが設けられ、前記肩部リンフォースは、車両幅方向に間隔を置く2点で前記ルーフパネルの縦壁部と接合され、前記2点のうち、車両幅方向外側の接合点では、前記サイドボディアウタエクステンションパネルと接合されている一方、前記車体の内側では、前記バックドアヒンジリンフォースと接合されている。
したがって、本発明の補強構造においては、サイドボディ組立部品と車体内側の剛性部品との接合によって車体剛性を高めることが可能となるので、バックドア開口肩部の剛性を向上させることができるとともに、車両幅方向外側の接合点の周りに発生するモーメントを効果的に抑えることができる。
【0015】
また、本発明の補強構造において、前記2点間に位置する前記ルーフパネルの縦壁部には、車両前方もしくは車両後方に向かって突出する凸形状部が形成されているので、2点間のパネル剛性の向上を図ることができる。したがって、本発明の補強構造によれば、バックドア開閉操作時の入力荷重などに起因するパネル変形及び接合点へのモーメントを緩和することが可能となり、バックドア開閉操作時の品質を保持することができる。
【0016】
さらに、本発明の補強構造において、前記2点が位置する前記ルーフパネルの縦壁部の車両上方視の各平面は、車両後方へ向かって延びるハの字形状の角度で形成され、これら2つの平面の垂線が、前記肩部リンフォースより前記車体の内側のパネルに設けた溶接作業用孔へ向かって互いに近づくように配置されているので、当該部分の面剛性を向上させることができる。しかも、本発明の補強構造によれば、2つの接合点に対する車室内側からの溶接ガンの挿入領域が重なって配置されることになるため、溶接作業用孔の大きさを小さく設定することができ、車体剛性の低下を低減させることができる。
【0017】
そして、本発明の補強構造において、前記肩部リンフォースは、車両側方視でハット形状に形成され、前記バックドアヒンジリンフォースと共に車両幅方向に沿って延設され、かつ下端部のフランジで前記バックドアヒンジリンフォースと接合されているとともに、前記バックドアヒンジの取付部の車両前方位置で前記ルーフパネル及び前記バックドアヒンジリンフォースと接合されているので、バックドアヒンジの取付部と隣接して閉断面部が追加されることになり、バックドアヒンジの取付部からの荷重を受ける車体の剛性をより一層向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本発明の実施形態に係るバックドア開口肩部の補強構造が適用された車両の後部を斜め上方から見た斜視図である。
【図2】図1のX部を示す拡大斜視図である。
【図3】本発明の実施形態に係るバックドア開口肩部を拡大して示す斜視図である。
【図4】図2におけるA−A線断面図である。
【図5】図2におけるB−B線断面図である。
【図6】図2におけるC−C線断面図である。
【図7】図2におけるD−D線断面図である。
【図8】図2におけるE−E線断面図である。
【図9】従来例に係るバックドア開口肩部の補強構造が適用された車両の後部を斜め上方から見た拡大斜視図である。
【図10】図9におけるA−A線断面図である。
【図11】図9におけるB−B線断面図である。
【図12】図9におけるC−C線断面図である。
【図13】図9におけるD−D線断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明を図示の実施の形態に基づいて詳細に説明する。
図1〜図8は本発明の実施形態に係る車両のバックドア開口肩部の補強構造を示すものである。
【0020】
図1〜図3に示すように、本発明の実施形態に係る補強構造が適用される車両は、車体後方の上部にドアヒンジ部を有し、図示しないバックドアが上方へ開くタイプのハッチバック車両であり、車体後部には、バックドアによって開閉されるバックドア開口部1が設けられている。そのため、バックドア開口部1の車両上方に位置する左右両側コーナ部付近のバックドア開口肩部2には、バックドアを回動可能に支持するバックドアヒンジのヒンジ取付部3がそれぞれ設けられており、ヒンジ取付部3には、図4に示すようなヒンジブラケット4等が取付けられている。
なお、図1〜図8において、矢印F方向は車両前方側、矢印O方向は車両外方側、矢印U方向は車両上方側をそれぞれ示している。
【0021】
バックドア開口肩部2は、図1〜図8に示すように、車両側方に車両前後方向に沿って延在するルーフレール溝5が設けられ、車両後方に縦壁部6aが形成されているルーフパネル6を備えたルーフ組立部品Rと、サイドボディアウタパネル7、クォータインナパネル8及びサイドボディアウタエクステンションパネル9を備えたサイドボディ組立部品Sとを有しており、ルーフレール溝5の車両後方に位置するルーフパネル6の縦壁部6aにおいて、ルーフ組立部品Rとサイドボディ組立部品Sとが接合された車体から構成されている。クォータインナパネル8には、接合箇所に対応してスポット溶接用の作業孔8aが穿設されている。
【0022】
また、ヒンジ取付部3を含むルーフパネル6の下方には、ヒンジ取付部3を補強するバックドアヒンジリンフォース10が設けられているとともに、当該バックドアヒンジリンフォース10の下方には、スポット溶接用の作業孔11aを有するルーフバックレール11が設けられている。これらバックドアヒンジリンフォース10及びルーフバックレール11は、ルーフ組立部品Rを構成するものであり、ルーフバックレール11は、ルーフパネル6の車両後方側の辺部に沿って、車両下方へ向かって突出するハット形状の断面に形成されている。しかも、サイドボディ組立部品Sのクォータインナパネル8は、ルーフバックレール11の断面形状とほぼ同じ断面形状に形成されて設けられている。
さらに、バックドアヒンジリンフォース10、ルーフバックレール11及びクォータインナパネル8には、ルーフ組立部品Rとサイドボディ組立部品Sとを締結する締付ボルト12を挿入するボルト孔10b,11b,8bが対応する位置にそれぞれ穿設されており、バックドアヒンジリンフォース10の上面には、締付ボルト12と螺合する溶接ナット13がボルト孔10bの位置と対応して固着されている。
なお、各作業孔8a,11aには、スポット溶接を行う溶接ガン14が挿入されるようになっている。
【0023】
ルーフレール溝5は、スポット溶接用の溝としても使用されるものであり、断面略L字状に折り曲げられたルーフパネル6の車両外方側の端部と、断面略L字状に折り曲げられたサイドボディアウタパネル7の車両内方側の端部とを重ね合わせてスポット溶接にて接合することにより、断面略U字状に形成されており、バックドア開口肩部2の箇所においては、後述の肩部リンフォースが間に挟まれた3枚重ねの状態で、接合されている(図3及び図7参照)。ルーフパネル6の縦壁部6aは、ルーフパネル6の後端部を車両下方へ向かってほぼ直角に折り曲げることにより形成される垂直壁であり、縦壁部6aの下端部分は、車両後方へ向かって水平方向に延びながら下方へ徐々に傾斜することによって、バックドア開口部1の上側周縁として構成されている。
【0024】
本実施形態のバックドア開口肩部2に位置するルーフパネル6の車両幅方向の左右両側の下方には、図2〜図8に示すように、当該バックドア開口肩部2を補強する肩部リンフォース15が設けられている。この肩部リンフォース15は、図4及び図5に示すように、車両側方視でハット形状に形成されているとともに、バックドアヒンジリンフォース10と共に車両幅方向に延設されており、対向壁の下端部には、外側へ折り曲げたフランジ15aが形成されている。
本実施形態の特徴部分である肩部リンフォース15は、図2、図3、図5及び図6に示すように、対向壁の上下中間部分において車両幅方向に間隔を置く2点の縦壁部接合点Wb,Wcで、スポット溶接によりルーフパネル6の縦壁部6aと接合されている。そして、これら2点の縦壁部接合点Wb,Wcのうち、車両幅方向外側の縦壁部接合点Wbでは、サイドボディアウタエクステンションパネル9と接合されている。一方、車体の内側において、肩部リンフォース15は、下端部のフランジ15aで、スポット溶接によりバックドアヒンジリンフォース10と接合されている。
【0025】
また、車両幅方向において縦壁部接合点Wb,Wcの2点間に位置するルーフパネル6の縦壁部6aには、図2、図3及び図8に示すように、車両後方に向かって突出する凸形状部16が形成されており、該凸形状部16よって縦壁部接合点Wb,Wc間のパネル剛性を高めるようになっている。また、縦壁部接合点Wb,Wcが位置するルーフパネル6の縦壁部6aの車両上方視の各平面6a1,6a2は、図8に示すように、当該部分の面剛性を向上させるため、車両後方へ向かって延びるハの字形状の傾斜角度θで形成されている。しかも、これら2つの平面6a1,6a2を通る垂線C1,C2は、肩部リンフォース15より車体内側のクォータインナパネル8に設けたスポット溶接用の作業孔8aへ向かって互いに互いに近づくように配置されている。これによって、2つの縦壁部接合点Wb,Wcに対する車室内側からの溶接ガン14の挿入領域が重なって配置されることになり、作業孔8aの大きさが小さくなるように設定されている。
【0026】
さらに、本実施形態の肩部リンフォース15は、図4に示すように、バックドアヒンジのヒンジ取付部3の車両前方位置で、車両外方側のフランジ15aを間に挟んだ3枚重ねの状態で、ルーフパネル6及びバックドアヒンジリンフォース10と接合されている。これによって、バックドアヒンジのヒンジ取付部3に隣接した箇所には、車体の剛性を高めて、開閉操作するバックドアからの入力荷重に耐え得る閉断面部17が追加して設けられることになる。
【0027】
次に、本発明の実施形態に係る車両のバックドア開口肩部2の補強構造を得る1つの方法として、まず、溶接ガン14などのスポット溶接設備を用いて、ルーフパネル6、肩部リンフォース15、バックドアヒンジリンフォース10及びルーフバックレール11の所定箇所を接合することにより、ルーフ組立部品Rの部組みを行う。この際、肩部リンフォース15の対向壁の一方の上下中間部分とルーフパネル6の縦壁部6aとは、車両幅方向に間隔を置く2点の縦壁部接合点Wb,Wcで、スポット溶接により接合されている。また、溶接ガン14などのスポット溶接設備を用いて、サイドボディアウタパネル7、クォータインナパネル8及びサイドボディアウタエクステンションパネル9の所定箇所を接合することにより、サイドボディ組立部品Sの部組みを行う。
次いで、部組みしたルーフ組立部品R及びサイドボディ組立部品Sを図示しない搬送装置によって所定の位置まで搬送し、溶接ガン14などのスポット溶接設備を用いて、ルーフレール溝5からルーフパネル6の縦壁部6aにかけてルーフ組立部品Rとサイドボディ組立部品Sとの所定箇所を接合するとともに、締付ボルト12を溶接ナット13に螺合させて締付固定すれば、補強されたバックドア開口肩部2の車体が得られることになる。
【0028】
このように、本発明の実施形態に係る車両のバックドア開口肩部2の補強構造では、車両側方視でハット形状の肩部リンフォース15がバックドア開口肩部2のルーフパネル6の下方に設けられ、肩部リンフォース15の対向壁の上下中間部分とルーフパネル6の縦壁部6aとが車両幅方向に間隔を置く2点の縦壁部接合点Wb,Wcでスポット溶接により接合され、車体の内側でも肩部リンフォース15とバックドアヒンジリンフォース10とが接合されているため、バックドア開閉操作時の荷重を支えるバックドア開口肩部2の剛性向上を図ることが可能となり、バックドア開閉操作時の品質を高めることができるとともに、車両幅方向外側の縦壁部接合点Wbの周りのモーメントを低減させ、外部からの荷重による溶接剥がれを回避することができる。
【0029】
以上、本発明の実施の形態につき述べたが、本発明は既述の実施の形態に限定されるものではなく、本発明の技術的思想に基づいて各種の変形及び変更が可能である。
例えば、既述の実施の形態では、凸形状部16が車両後方に向かって突出して設けられているが、適応車種などによって凸形状部16が車両前方に向かって突出して設けられていても良い。
【符号の説明】
【0030】
1 バックドア開口部
2 バックドア開口肩部
3 ヒンジ取付部
5 ルーフレール溝
6 ルーフパネル
6a 縦壁部
7 サイドボディアウタパネル
8 クォータインナパネル
8a 作業孔
8b ボルト孔
9 サイドボディアウタエクステンションパネル
10 バックドアヒンジリンフォース
10b ボルト孔
11 ルーフバックレール
11a 作業孔
11b ボルト孔
12 締付ボルト
13 溶接ナット
14 溶接ガン
15 肩部リンフォース
15a フランジ
16 凸形状部
17 閉断面部
R ルーフ組立部品
S サイドボディ組立部品
Wb,Wc 縦壁部接合点

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両側方に車両前後方向に沿って延在するルーフレール溝が設けられ、車両後方に縦壁部が形成されているルーフパネルを備えたルーフ組立部品と、サイドボディアウタパネル、クォータインナパネル及びサイドボディアウタエクステンションパネルを備えたサイドボディ組立部品とを有し、バックドア開口部の上部にバックドアヒンジが配置されているとともに、前記バックドアヒンジの取付部にバックドアヒンジリンフォースが設けられ、前記ルーフレール溝の車両後方に位置する前記ルーフパネルの縦壁部で、前記ルーフ組立部品と前記サイドボディ組立部品とが接合された車体から構成されている車両のバックドア開口肩部の補強構造において、
前記バックドア開口肩部に位置する前記ルーフパネルの下方には、前記バックドア開口肩部を補強する肩部リンフォースが設けられ、前記肩部リンフォースは、車両幅方向に間隔を置く2点で前記ルーフパネルの縦壁部と接合され、前記2点のうち、車両幅方向外側の接合点では、前記サイドボディアウタエクステンションパネルと接合されている一方、前記車体の内側では、前記バックドアヒンジリンフォースと接合されていることを特徴とする車両のバックドア開口肩部の補強構造。
【請求項2】
前記2点間に位置する前記ルーフパネルの縦壁部には、車両前方もしくは車両後方に向かって突出する凸形状部が形成されていることを特徴とする請求項1に記載の車両のバックドア開口肩部の補強構造。
【請求項3】
前記2点が位置する前記ルーフパネルの縦壁部の車両上方視の各平面は、車両後方へ向かって延びるハの字形状の角度で形成され、これら2つの平面の垂線が、前記肩部リンフォースより前記車体の内側のパネルに設けた溶接作業用孔へ向かって互いに近づくように配置されていることを特徴とする請求項1または2に記載の車両のバックドア開口肩部の補強構造。
【請求項4】
前記肩部リンフォースは、車両側方視でハット形状に形成され、前記バックドアヒンジリンフォースと共に車両幅方向に沿って延設され、かつ下端部のフランジで前記バックドアヒンジリンフォースと接合されているとともに、前記バックドアヒンジの取付部の車両前方位置で前記ルーフパネル及び前記バックドアヒンジリンフォースと接合されていることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の車両のバックドア開口肩部の補強構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【公開番号】特開2012−228948(P2012−228948A)
【公開日】平成24年11月22日(2012.11.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−98261(P2011−98261)
【出願日】平成23年4月26日(2011.4.26)
【出願人】(000002082)スズキ株式会社 (3,196)
【Fターム(参考)】