説明

車両のフロアカーペット

【課題】フロアカーペットで工具収納部などを開閉自在に覆う場合に、開時にはフロアカーペットの引き出し容易性を向上させつつ、閉時にはフロアカーペットの安定した閉状態の維持を可能とする。また、フロアカーペットで工具収納部などを開閉自在に覆う場合に、部品点数の増加を招くことを回避することを可能にする。
【解決手段】車体11に形成された開口32の閉時には開口32の周縁裏面33と重なり合い、開時には開口32の表面側に引き出し可能な重なり片57を有する車両のフロアカーペット40において、重なり片57は、開口32の周縁裏面33と重なり合う量の小さい小ラップ部61と、開口32の周縁裏面33と重なり合う量の大きい大ラップ部62とを設けた。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両のフロアを覆うとともに、工具収納部分などを同時に覆う車両のフロアカーペットに関するものである。
【背景技術】
【0002】
車両のフロアカーペットの中には、スペアタイヤを収納した収納部を覆うものや、工具を収納した収納部分を覆うものが知られている。
この種の車両のフロアカーペットは、車両のフロアを覆うとともに、適宜必要な部分を同時に覆うようにするものであった。
【0003】
このような車両のフロアカーペットに利用できる技術として、内装材の端部を車体側の構造部材に潜り込ませ、内装材の端部を支持したものが知られている(例えば、特許文献1参照。)。
【特許文献1】実開昭62−130961公報
【0004】
特許文献1の内装材は、内装材の端部を車体側の構造部材に潜り込ませて内装材の端部を支持し、この内装材の当該部分に略コ字状の切り欠きを形成することで、内装材に開閉自在のリッド(蓋部材)を形成し、このリッドの車体側にリッドの倒れを防止する補強部材を設けたものである。
例えば、車体フロアに敷いたフロアカーペットを高さ方向に延出し、フロアカーペットの端部を車体側の構造部材に潜り込ませてフロアカーペットの端部を支持すれば、上記の内装材の形態と同様な構造となる。
【0005】
従来の内装材では、内装材の当該部分に略コ字状の切り欠きを形成することで、内装材に形成した開閉自在のリッド(蓋部材)の倒れを防止する。リッドの車体側にリッドの倒れを防止する補強部材を設ける必要があり、部品点数の増加を招くことになる。
また、内装材では、車体側へのリッドの倒れを防止できるものの、リッド閉時の自立性(安定性)の不具合も考えられる。
すなわち、車両のフロアカーペットにおいて、同様な構造を採用した場合には、部品点数の増加を招いたり、リッド閉時の自立性(安定性)の不具合が考えられる。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、フロアカーペットで工具収納部などを開閉自在に覆う場合に、開時にはフロアカーペットの引き出し容易性を向上させつつ、閉時にはフロアカーペットの安定した閉状態が維持可能な技術を提供することを課題とする。また、フロアカーペットで工具収納部などを開閉自在に覆う場合に、部品点数の増加を招くことを回避することが可能な車両のフロアカーペットを提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
請求項1に係る発明は、車体に形成された開口の閉時には開口の周縁裏面と重なり合い、開時には開口の表面側に引き出し可能な重なり片を有する車両のフロアカーペットにおいて、重なり片は、開口の周縁裏面と重なり合う量の小さい小ラップ部と、開口の周縁裏面と重なり合う量の大きい大ラップ部とを有することを特徴とする。
【0008】
請求項2に係る発明は、重なり片は、小ラップ部と大ラップ部とを凹凸形状になるよう交互に並べたことを特徴とする。
【0009】
請求項3に係る発明は、フロアカーペットに、車室内側に引き出すための取手部を備え、この取手部の上方に重なり片の小ラップ部が設けられることを特徴とする。
【0010】
請求項4に係る発明は、重なり片の両端に、大ラップ部が設けられることを特徴とする。
【0011】
請求項5に係る発明は、重なり片の両端近傍に、車体側に係合される凸部が設けられたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
請求項1に係る発明では、車両のフロアカーペットに、車体に形成された開口の閉時には開口の周縁裏面と重なり合い、開時には開口の表面側に引き出し可能な重なり片を有する。
重なり片は、開口の周縁裏面と重なり合う量の小さい小ラップ部と、開口の周縁裏面と重なり合う量の大きい大ラップ部とを有するので、フロアカーペットの開時(引き出す時)には引き出し性を向上することができ、フロアカーペットの閉時には安定した閉状態を満足することができる。
開口の周縁裏面に重なり片を重ねるだけなので、例えば、フロアカーペットで工具収納部などを開閉自在に覆う場合に、部品点数の増加を招くことがない。
【0013】
請求項2に係る発明では、重なり片は、小ラップ部と大ラップ部とを凹凸形状になるよう交互に並べたので、重なり片の引き出し時(開時)の操作荷重を軽くすることができるとともに、重なり片の収納時(閉時)の戻し作業を行い易くすることができる。また、引き出し時の操作荷重のばらつきも均一にすることができる。
【0014】
請求項3に係る発明では、フロアカーペットに、車室内側に引き出すための取手部を備え、この取手部の上方に重なり片の小ラップ部が設けられたので、フロアカーペット引き出し時の最初の負荷を軽減することができる。この結果、フロアカーペットの引き出し性の向上を図ることができる。
【0015】
請求項4に係る発明では、重なり片の両端に、大ラップ部が設けられたので、フロアカーペット閉時の支持性(安定性)を向上することができる。
【0016】
請求項5に係る発明では、重なり片の両端近傍に、車体側に係合される凸部が設けられた。例えば、フロアカーペットの重なり片の両端近傍までが外れてしまうと、フロアカーペットが戻しにくくなる。すなわち、重なり片の両端近傍に、車体側に係合される凸部が設けられたので、フロアカーペットの両端近傍の外れを防止することができる。この結果、フロアカーペットの開閉作業の作業性の向上を図ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
本発明を実施するための最良の形態を添付図に基づいて以下に説明する。なお、図面は符号の向きに見るものとする。
図1は本発明に係る車両のフロアカーペットを採用した車両の後部荷物室の斜視図であり、図2は図1の2−2線断面図であり、図3は図1の3−3線断面図である。
【0018】
図1〜図3に示されたように、車両の後部荷物室10は、車体11側下部を構成する車体フロア14と、この車体フロア14の上面に敷いた車両のフロアカーペット40(以下、「フロアカーペット40」と略記する)と、左・右の後部ホイールハウス(不図示)の車室12側を覆う左・右のホイールハウス用ライニング16,16(一方の符号16は不図示)と、テールゲート(不図示)を開閉自在に支持するテールゲート用枠体17と、このテールゲート用枠体17の車室12内側下部を覆うテールゲート用ロアライニング18とから構成される。
【0019】
テールゲート用枠体17は、車体11外面が構成されるアウタパネル21と、このアウタパネル21に取付けられ、アウタパネル21の剛性を向上させるインナパネル22とから構成される。さらに、テールゲート用枠体17は、アウタパネル21とインナパネル22との間に車両用工具23を収納する工具収納部24と、インナパネル22に形成されフロアカーペット40の後端壁部(開閉部)47を支える支持部25とが形成される。
【0020】
図2に示されたように、車体フロア14は、平坦に形成された平坦部27と、車体11下方に向けて凹ました凹部28とを備え、後部29がテールゲート用枠体17のインナパネル22及びアウタパネル21に連結される。
【0021】
ホイールハウス用ライニング16は、フロアカーペット40の左・右フランジ部51,52を保持するフランジ保持部31が形成される。
テールゲート用ロアライニング18は、図2に示されるように、フロアカーペット40の後端壁部47を保持する後端保持部32が形成される。なお、後端保持部32は、車体11に設けられた工具収納部24の開口(開口部)である。
【0022】
フロアカーペット40は、車体フロア14の平坦部27に敷かれるカーペット本体41と、車体フロア14の凹部28に敷かれ、物品を収納可能な収納凹部42とが形成される。
【0023】
収納凹部42は、底を形成する底面部45と、この底面部45の前部を上方に立ち上げた前端壁部46と、底面部45の後部を上方に立ち上げた後端壁部47と、底面部45の左右を上方に立ち上げた左・右側壁部48,49と、これらの左・右側壁部48,49の開口端に形成される左・右フランジ部51,52と、これらの左・右フランジ部51,52で且つ後述する重なり片57の両端近傍に形成され、ホイールハウス用ライニング16,16との保持(支持)力を増す凸部53,53とからなる。
【0024】
後端壁部(開閉部)47は、後端壁部47を手前(車体前方)に引き出すための取手部56と、後端保持部(開口)32の周縁裏面33に重なる重なり片57とが形成される。
【0025】
重なり片57は、車体11(図1参照)に形成された後端保持部(開口)32の閉時には開口32の周縁裏面33と重なり合い、開時には開口32の表面(手前)側に引き出し可能な部分であり、開口32の周縁裏面33と重なり合う量の小さい小ラップ部61と、開口32の周縁裏面33と重なり合う量の大きい大ラップ部62とを有する。小ラップ部61及び大ラップ部62は複数個が設けられる。
【0026】
また、重なり片57は、小ラップ部61及び大ラップ部62が凹凸形状になるよう交互に並べられる。さらに、重なり片57は、両端には大ラップ部62,62が位置するように設けられ、取手部56の上方には小ラップ部61が位置するように設けられる。
【0027】
図4は本発明に係る車両のフロアカーペットの斜視図であり、図5は図1の5−5線断面図である。
フロアカーペット40の収納凹部42には、車体11(図1参照)に形成された開口32の閉時には開口32の周縁裏面33と重なり合い、開時には開口32の表面側に引き出し可能な重なり片57を有したことを示す。
【0028】
従って、重なり片57は、開口32の周縁裏面33と重なり合う量の小さい小ラップ部61と、開口32の周縁裏面33と重なり合う量の大きい大ラップ部62とを有するので、フロアカーペット40の開時(引き出す時)には引き出し性を向上することができ、フロアカーペット40の閉時には安定した閉状態を満足することができる。
開口32の周縁裏面33に重なり片57を重ねるだけなので、フロアカーペット40で工具収納部24などを部品点数の増加を招くことがなく、開閉自在に覆うことができる。
【0029】
また、重なり片57は、複数の小ラップ部61と大ラップ部62とを凹凸形状になるよう交互に並べたので、重なり片57の引き出し時(開時)の操作荷重を軽くすることができるとともに、重なり片57の収納時(閉時)の戻し作業を行い易くすることができる。 また、引き出し時の操作荷重のばらつきも均一にすることができる。
【0030】
フロアカーペット40は、車室12(図1参照)内側に引き出すための取手部56を備え、この取手部56の上方に重なり片57の小ラップ部61が設けられたので、フロアカーペット40引き出し時の最初の負荷を軽減することができる。この結果、フロアカーペット40の引き出し性の向上を図ることができる。
【0031】
重なり片57は、両端に大ラップ部62,62が設けられたので、フロアカーペット40閉時の支持性(安定性)を向上することができる。
【0032】
重なり片57は、両端近傍に車体11(図1参照)側に係合される凸部53,53が設けられた。例えば、フロアカーペット40の重なり片57の両端近傍までが外れてしまうと、フロアカーペット40が戻しにくくなる。すなわち、重なり片57の両端近傍に、車体11側(詳細には、ホイールハウス用ライニング16,16のフランジ保持部31,31)に係合される凸部53,53が設けられたので、フロアカーペット40の後端壁部(開閉部)47両端近傍の外れを防止することができる。この結果、フロアカーペット40の開閉作業の作業性の向上を図ることができる。
【0033】
図6(a)〜(c)は図4に示された車両のフロアカーペットの作用の説明図である。
(a)において、車体11(図1参照)側の工具収納部24に車両用工具23が収納され、開口32の周縁裏面33に重なり片57が重なり合い、車両用工具23がフロアカーペット40で覆われている。
【0034】
(b)において、収納凹部42の後端壁部(開閉部)47に形成された取手部56を矢印a1の如く手前(車体前方)に引き、後端保持部(開口)32の周縁裏面33(図2参照)から重なり片57を外して収納凹部42の後端壁部47を開放する。
【0035】
重なり片57は、小ラップ部61と大ラップ部62とを凹凸形状になるよう交互に並べたので、重なり片57の引き出し時(開時)の操作荷重が軽い。また、取手部56の上方に重なり片57の小ラップ部61が設けられたので、フロアカーペット40の引き出し時の最初の負荷を軽減される。さらに、重なり片57の両端近傍に、車体11(図1参照)側に係合される凸部53,53が設けられたので、フロアカーペット40の後端壁部(開閉部)47両端近傍の外れが防止される。
【0036】
(c)において、工具収納部24から車両用工具23を矢印a2の如く取出すことができる。車両用工具23を使用後は、工具収納部24に車両用工具23を収納し、収納凹部42の後端壁部(開閉部)47を閉める。重なり片57の小ラップ部61及び大ラップ部62を順番に開口32の裏面周縁33(図2参照)に戻せばよく、重なり片57の戻し時(後端壁部47の閉時)の戻し作業を容易に行うことができる。
【0037】
尚、本発明に係る車両のフロアカーペット40は、図5に示されるように、重なり片57の小ラップ部61を3個、重なり片57の大ラップ部62を4個設けたが、小ラップ部及び大ラップ部の個数は任意である。
【産業上の利用可能性】
【0038】
本発明に係る車両のフロアカーペットは、セダンやワゴンなどの乗用車に採用するのに好適である。
【図面の簡単な説明】
【0039】
【図1】本発明に係る車両のフロアカーペットを採用した車両の後部荷物室の斜視図である。
【図2】図1の2−2線断面図である。
【図3】図1の3−3線断面図である。
【図4】本発明に係る車両のフロアカーペットの斜視図である。
【図5】図1の5−5線断面図である。
【図6】図4に示された車両のフロアカーペットの作用の説明図である。
【符号の説明】
【0040】
11…車体、12…車室、32…開口(後端保持部)、33…周縁裏面、40…車両のフロアカーペット、53…凸部、56…取手部、57…重なり片、61…小ラップ部、62…大ラップ部。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車体に形成された開口の閉時には開口の周縁裏面と重なり合い、開時には開口の表面側に引き出し可能な重なり片を有する車両のフロアカーペットにおいて、
前記重なり片は、前記開口の周縁裏面と重なり合う量の小さい小ラップ部と、前記開口の周縁裏面と重なり合う量の大きい大ラップ部とを有することを特徴とする車両のフロアカーペット。
【請求項2】
前記重なり片は、前記小ラップ部と前記大ラップ部とを凹凸形状になるよう交互に並べたことを特徴とする請求項1に記載の車両のフロアカーペット。
【請求項3】
前記フロアカーペットは、車室内側に引き出すための取手部を備え、この取手部の上方に前記小ラップ部が設けられることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の車両のフロアカーペット。
【請求項4】
前記重なり片の両端に、前記大ラップ部が設けられることを特徴とする請求項2又は請求項3に記載の車両のフロアカーペット。
【請求項5】
前記重なり片の両端近傍に、車体側に係合される凸部が設けられたことを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の車両のフロアカーペット。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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