説明

車両のフード構造

【課題】 フード前部とフード後部とで、それぞれ衝突物の重量に応じた最適の反力が得られる車両のフード構造を提供すること。
【解決手段】 フード後部1rの剛性の高さを、フード前部1fの剛性よりも高く設定した。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両前部に設けられたエンジンルームや荷物入れなどを開閉するフードの構造に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、エンジンフードのアウタパネルの裏側にインナパネルが設けられ、このアウタパネルとインナパネルにより、フード裏面に複数の力骨を形成した車両のフード構造が知られている(例えば、特許文献1参照)。
【特許文献1】特開2004−322985号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、上述の従来技術にあっては、フード裏面の力骨を、フード前部とフード後部とで略均等に配置し、フード全体をほぼ均一の剛性に形成しているため、フード前部とフード後部とのフード反力が同等となっている。
【0004】
そこで、フードに物体が衝突する場合、軽量物はフード前部に衝突し、重量物はフード後部に衝突する場合が多く、上述の従来技術では、フード前部に軽量物が衝突した場合と、フード後部に重量物が衝突した場合とでは、フードの変形ストローク量が異なってしまっていた。
【0005】
そこで、本発明は、フード前部とフード後部とで、より適した反力が得られる車両のフード構造を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、上述事情に鑑みなされたもので、フード後部の剛性の高さを、フード前部の剛性よりも高く設定したことを最も主要な特徴とする車両のフード構造である。
【発明の効果】
【0007】
フード前部とフード後部との剛性を同等の高さに形成したフードと比較して、フード後部に重量物が衝突した場合の変形ストローク量を小さくすることができる。
【0008】
したがって、フード前部に軽量物が衝突したときの変形ストローク量と、フード後部に重量物が衝突したときの変形ストローク量と、の差を、従来よりも抑えて、フード前部とフード後部とでより適した反力が得られるようにできる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。
【0010】
この実施の形態の車両のフード構造は、車両前部に設けられたフード(1)において、車両後方側部位であるフード後部(1r)の剛性の高さを、車両前方側部位であるフード前部(1f)の剛性よりも高く設定したことを特徴とする車両のフード構造である。
【実施例1】
【0011】
図1〜図3に基づいて本発明の最良の実施の形態の実施例1の車両のフード構造について説明する。
【0012】
まず、その構成について説明する。
【0013】
車体前部に形成されたエンジンルームを開閉するエンジンフード1が、その前端部あるいは後端部を車体に回動可能に支持されている。なお、図において矢印FR方向が車両前方を示している。
【0014】
このエンジンフード1は、図2の断面図に示すように、車体外板となる金属板製のフードアウタパネル11と、このフードアウタパネル11の裏面(車両下方側の面)に配設された金属板製のフードインナパネル12と、を備えている。
【0015】
エンジンフード1は、図1に示すように、外枠13,14,15,16、縦骨17,17,17,17,17、横骨18,18を有している。外枠13,14,15,16は、エンジンフード1の全周縁部に亘って形成されている。縦骨17は、外枠13と外枠15との間で車両前後方向に延在され、車幅方向に略等間隔で5本形成されている。横骨18は、縦骨17と交差して外枠14と外枠16との間で車幅方向に延在されている。
【0016】
なお、外枠13,14,15,16、縦骨17、横骨18は、それぞれ、図2に一部示すように、フードインナパネル12においてハット断面形状に形成した外枠部12a、縦骨部12b、横骨部12cを、フードアウタパネル11に接合させて閉断面形状に形成されている。この接合において、外枠部12a、縦骨部12b、横骨部12cのハット断面両端部のフランジ12fをフードアウタパネル11に接合させているが、エンジンフード1の外周では、ヘミング結合し、それ以外では接着している。
【0017】
また、本実施例1では、横骨18,18は、エンジンフード1の車両前方側部分であるフード前部1fには形成されずに、エンジンフード1の車両後方側部分であるフード後部1rに2本形成されている。
【0018】
このように、フード後部1rの横骨18の数(2本)をフード前部1fの横骨の数(0本)よりも多く設定したことにより、フード後部1rの剛性の高さがフード前部1fの剛性よりも高く設定されている。
【0019】
次に、実施例1の作用について説明する。
【0020】
図3は、エンジンフード1のフード前部1fに車両上方から軽量物を衝突させ、フード後部1rに車両上方から重量物を衝突させた場合の、荷重−ストローク特性図を示し、(a)が実施例1、(b)がフード前部とフード後部とで剛性を等しくした従来例を示している。
【0021】
この図において、斜線の領域が重量物を衝突させた際の特性を示し、黒点の領域が軽量物を衝突させた際の特性を示している。この図の(b)に示すように、従来例では、フード全体で反力がほぼ均等に生じるため、重量物が衝突したフード後部の変形ストローク量が、軽量物が衝突したフード前部の変形ストローク量よりも大きくなる。
【0022】
一方、同図(a)に示す実施例1では、重量物が衝突したフード後部1rは、フード前部1fよりも剛性を高く形成したため、衝突時のフード後部1rにおける荷重に対応した反力がフード前部1fよりも大きくなる。よって、このフード後部1rの変形ストローク量が、(b)に示す従来例よりも小さくなり、フード前部1fとにおいて軽量物が衝突した場合と同等のストローク量とすることができる。
【0023】
このように、フード後部1rの剛性の高さをフード前部1fの剛性よりも大きくして、フード前部1fに軽量物が衝突した場合と、フード後部1rに重量物が衝突した場合と、で、エンジンフード1の前後における変形ストローク量が異ならないよう衝突物の重量に対応した反力チューニングができる。
【0024】
これにより、エンジンフード1の変形時に、エンジンルームに収容したエンジンなどによりエンジンフード1が底付き状態となってエネルギ吸収性能が悪化したり、あるいは、エンジンフード1の車両下方に変形用の十分なスペースを確保する必要があるというような設計上の制約が生じたりするのを防止できる。
【0025】
さらに、実施例1では、フード後部1rにおいて、縦骨17と横骨18とを、密に格子状に配置しているため、部位により極端に各骨17,18から離れることがなく、車両上方から入力される荷重に対する反力の均一化を図ることができる。
【実施例2】
【0026】
次に、図4に基づきこの発明の実施の形態の実施例2の車両のフード構造を説明する。
【0027】
この実施の形態の実施例2の車両のフード構造は、エンジンフード201のフードインナパネル212の形状を変更し、フード前部201fに1本の横骨218を設け、フード後部201rに、実施例1と同様に2本の横骨18,18を設けた例である。
【0028】
このように、フード後部201rの横骨18の数(2本)をフード前部201fの横骨218の数(1本)よりも多く設定したことにより、フード後部201rの剛性の高さがフード前部201fの剛性よりも高く設定されている。
【0029】
よって、フード前部201fに軽量物が衝突した場合と、フード後部201rに重量物が衝突した場合と、で、エンジンフード201の前後における変形ストローク量が異ならないよう衝突物の重量に対応した反力チューニングができる。
【0030】
他の構成および作用効果については、実施例1と同様であるので説明を省略する。
【実施例3】
【0031】
次に、図5および図6に基づきこの発明の実施の形態の実施例3の車両のフード構造を説明する。
【0032】
この実施の形態の実施例3の車両のフード構造では、図5に示すように、エンジンフード301のフードインナパネル312の形状に基づき、フード前部301fとフード後部301rとのそれぞれに、1本の横骨318f,318rが設けられている。
【0033】
そして、図6に示すように、同図(b)に示す横骨部312cにより形成されるフード後部301rの横骨318rは、同図(a)に示す横骨部312dにより形成されるフード前部301fの横骨318fに比べて、断面積が大きく形成されている。このように形成されていることで、横骨318rの断面二次モーメントが、横骨318fの断面二次モーメントよりも大きく設定され、これにより、フード後部301rの剛性の高さがフード前部301fの剛性よりも高く設定されている。
【0034】
よって、フード前部301fに軽量物が衝突した場合と、フード後部301rに重量物が衝突した場合と、で、エンジンフード301の前後で変形ストローク量が異ならないよう衝突物の重量に対応した反力チューニングができる。
【0035】
他の構成および作用効果については、実施例1と同様であるので説明を省略する。
【実施例4】
【0036】
次に、図7および図8に基づきこの発明の実施の形態の実施例4の車両のフード構造を説明する。
【0037】
この実施の形態の実施例4の車両のフード構造では、図7に示すように、エンジンフード401のフードインナパネル412の形状に基づき、フード前部401fとフード後部401rとのそれぞれに、2本ずつの横骨418f,418f,418r,418rが設けられている。
【0038】
各横骨418f,418f,418r,418rは、ほぼ等しい断面積に形成されているが、図8に示すように、同図(b)に示すフードインナパネル412の横骨部412cにより形成されるフード後部401rの横骨418rは、同図(a)に示すフードインナパネル412の横骨部412dにより形成されるフード前部401fの横骨418fに比べて、その板厚が厚く形成されている。これにより、フード後部401rの剛性の高さがフード前部401fの剛性よりも高く設定されている。
【0039】
よって、フード前部401fに軽量物が衝突した場合と、フード後部401rに重量物が衝突した場合と、で、エンジンフード401の前後で変形ストローク量が異ならないよう衝突物の重量に対応した反力チューニングができる。
【0040】
他の構成および作用効果については、実施例1と同様であるので説明を省略する。
【0041】
以上、図面を参照して、本発明の実施の形態および実施例1ないし実施例4を詳述してきたが、具体的な構成は、この実施の形態および実施例1ないし実施例4に限らず、本発明の要旨を逸脱しない程度の設計的変更は、本発明に含まれる。
【0042】
すなわち、実施例1ないし実施例4では、フードとして、エンジンフード1,201,301,401を示したが、フードとしてはエンジンフードに限定されるものではなく、荷物入れを開閉するフードや、それ以外の例えば、モータ充電池などを格納する空間を開閉するフードなどに適用できる。
【0043】
また、実施例1ないし実施例4では、エンジンフード1,201,301,401に形成する骨として、交差する縦骨17と横骨18,218,318f,318r,418f,418rとを備えた例を示したが、これに限定されない。例えば、斜めの骨を有した構成としてもよい。さらに、フードは、骨を備えていない構造としてもよく、すなわち、フードアウタパネル11の裏面に板状のレインフォースを部分的に当接させた構造としてもよい。
【0044】
また、実施例3では、フード後部301rの横骨318rの断面二次モーメントを、フード前部301fの横骨318fの断面二次モーメントよりも大きく設定するにあたり、その断面積を大きく形成したが、これに加え、その板厚を厚く形成することで、断面二次モーメントをさらに大きく設定することもできる。
【図面の簡単な説明】
【0045】
【図1】本発明の実施の形態の実施例1の車両のフード構造を示す車両下方から見た底面図である。
【図2】本発明の実施の形態の実施例1の車両のフード構造を示す断面図であり、図1のS2−S2線で切った状態を示している。
【図3】本発明の実施の形態の実施例1の車両のフード構造および従来技術における車両上方からの衝突時の荷重―ストローク特性図であり、(a)は実施例1の特性を、(b)は従来技術の特性を示している。
【図4】本発明の実施の形態の実施例2の車両のフード構造を示す車両下方から見た底面図である。
【図5】本発明の実施の形態の実施例3の車両のフード構造を示す車両下方から見た底面図である。
【図6】本発明の実施の形態の実施例3の車両のフード構造を示す断面図であり、(a)は図5のS6a−S6a線で切った状態を示し、(b)は図5のS6b−S6b線で切った状態を示している。
【図7】本発明の実施の形態の実施例4の車両のフード構造を示す車両下方から見た底面図である。
【図8】本発明の実施の形態の実施例4の車両のフード構造を示す断面図であり、(a)は図7のS8a−S8a線で切った状態を示し、(b)は図7のS8b−S8b線で切った状態を示している。
【符号の説明】
【0046】
1 エンジンフード(フード)
1r フード後部
1f フード前部
11 フードアウタパネル
12 フードインナパネル
17 縦骨
18 横骨
201 エンジンフード(フード)
201rフード後部
201fフード前部
212 フードインナパネル
218 横骨
301 エンジンフード(フード)
301rフード後部
301fフード前部
312 フードインナパネル
318r横骨
318f横骨
401 エンジンフード(フード)
401rフード後部
401fフード前部
412 フードインナパネル
418r横骨
418f横骨

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両前部に設けられたフードにおいて、車両後方側部位であるフード後部の剛性の高さを、車両前方側部位であるフード前部の剛性よりも高く設定したことを特徴とする車両のフード構造。
【請求項2】
前記フードが、フードアウタパネルと、このフードアウタパネルの裏面に設置され、フードアウタパネルとの間に、車両前後方向に延びる縦骨、および、この縦骨に交差して車幅方向に延びる横骨を形成するフードインナパネルと、を備え、
前記フード後部の剛性の高さをフード前部の剛性よりも高く設定するにあたり、前記フード後部に配設した横骨の数を、フード前部に配設した横骨の数よりも多く設定したことを特徴とする請求項1に記載の車両のフード構造。
【請求項3】
前記フードが、フードアウタパネルと、このフードアウタパネルの裏面に設置され、フードアウタパネルとの間に、車両前後方向に延びる縦骨、および、この縦骨に交差して車幅方向に延びる横骨を形成するフードインナパネルと、を備え、
前記フード後部の剛性の高さをフード前部の剛性よりも高く設定するにあたり、前記フード後部に配設した横骨の断面二次モーメントを、前記フード前部に配設した横骨の断面二次モーメントよりも大きく設定したことを特徴とする請求項1または請求項2に記載の車両のフード構造。
【請求項4】
前記フードが、フードアウタパネルと、このフードアウタパネルの裏面に設置され、フードアウタパネルとの間に、車両前後方向に延びる縦骨、および、この縦骨に交差して車幅方向に延びる横骨を形成するフードインナパネルと、を備え、
前記フード後部の剛性の高さをフード前部の剛性よりも高く設定するにあたり、前記フード後部に配設した横骨の板厚を、前記フード前部に配設した横骨の板厚よりも厚く設定したことを特徴とする請求項1ないし請求項3のいずれか1項に記載の車両のフード構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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