説明

車両のフード構造

【課題】車幅方向に大型の吸気開口部を備えながら、歩行者保護性能の優れた車両のフード構造を提供する。
【解決手段】開口部14Bの車幅方向両脇には、縦骨20および縦骨22が配設され、フードインナ10Bの車体前後方向に延設されている。縦骨20、22は横骨16A、16Bの車幅方向両端と接合され、全体として略梯子型のパターンを形成することにより、フードインナ10B全体の強度を確保している。バルジ12をフードインナ10Bに固定する固定部材24はボス24A、ボルト24B、ナット24Cからなり、ボス24Aはバルジ12をフードインナ10B上に所定の間隔を開けて固定する。ボス24Aは強度を意図的に低下させた脆弱構造を備え、バルジ12への車体上側からの入力に対しては、バルジ12よりも少ない荷重で座屈する剛性、強度とする。これにより車体上方向からの入力に対してはバルジ12が座屈するよりも前にボス24Aが座屈する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は車両のフード構造に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、特にエンジンルーム内にインタークーラーを備えたターボエンジン搭載車において、インタークーラー冷却のための開口部を備えたエンジンフードが存在する。上記開口部は複数に分割すれば吸気量が減少し、吸気経路も複雑化することによる弊害があるため、開口面積の大きいものを一つ設けることが望ましい。
【0003】
またフード全体に亘って強度メンバとしての縦骨が設けられた構造では、開口部の開口面積を大きくし難いため、開口部の前後で縦骨を分割する構造が求められる。このようなエンジンフードにおいて、歩行者保護の観点から強度部材の一部に意図的に脆弱部が設けられた構造が存在する(例えば、特許文献1、2参照)。
【特許文献1】特開2000−001182号公報
【特許文献2】特表2004−535983号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし上記の構造では開口部を樹脂製バルジでカバーした際に、樹脂製品の壊れ方の予測が難しいため、発生する荷重の予測をし難いという問題がある。また、開口部の前後で縦骨が分断された構造において、強度を下げ過ぎた場合には車体上方向より入力時の変形ストロークが大きくなり、開口部直下に設けられたインタークーラーなどの構成部品までの距離に余裕がなくなる虞がある。
【0005】
本発明は上記事実を考慮し、車幅方向に大型の吸気開口部を備えながら、歩行者保護性能の優れた車両のフード構造を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
請求項1に記載の本発明における車両のフード構造は、フードの車体外側面を構成するアウタ部材と、前記アウタ部材の内側に配設されたインナ部材と、からなる車両のフード構造であって、前記アウタ部材に設けられ車幅方向に延在する第1の開口部と、前記インナ部材に設けられ平面視で前記第1の開口部と重なる第2の開口部と、前記第1の開口部を車体前側からカバーするバルジと、前記バルジを前記インナ部材に間隔を開けて固定すると共に、前記バルジよりも剛性の低い固定部材と、前記第2の開口部の車体前側に隣接して車幅方向に設けられた第1の横骨と、前記第2の開口部の車体後側に隣接して車幅方向に設けられた第2の横骨と、前記第1の横骨の途中から車体前方に延設された第1の縦骨と、前記第2の横骨の途中から車体後方に延設された第2の縦骨と、前記第1および第2の横骨を、前記第2の開口部の車幅方向両側で結合し、車体前後方向に延設された一対の第3の縦骨と、を有することを特徴とする。
【0007】
上記構成によれば、開口部の外側はバルジでカバーされ、インナ部材の開口部前後端を第1、第2の横骨で、開口部両脇を第3の縦骨で囲まれた構成としたとき、バルジをインナ部材に固定する固定部材がバルジ自身よりも強度が低いので、入力時に固定部材が壊れることで十分な荷重を発生し、且つ開口部に隣接した縦横の骨を配置したことでフード自体も十分な強度を備えた車両のフード構造とすることができる。
【0008】
請求項2に記載の本発明における車両のフード構造は、請求項1に記載の構成において、前記第2の開口部直下に過給器用のインタークーラーが設けられたことを特徴とする。
【0009】
上記構成によれば、開口部より導入された外気でインタークーラーが冷却されるので、インタークーラーを車体前端でなくエンジンの直上に設けることができ、圧縮された空気の冷却が十分に行われ、効率の良い過給を行うことができる。
【発明の効果】
【0010】
本発明に係る車両のフード構造は上記構成としたので、車幅方向に大型の吸気開口部を備えながら、歩行者保護性能に優れるという優れた効果が得られる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
<構造の概要>
本発明に係る車両のフード構造の実施形態を図1〜図4に従って説明する。
【0012】
なお、各図において、図中矢印FRは車体前部方向を、矢印REは車体後方方向を、矢印UPは車体上方方向を、矢印INは内側を、矢印OUTは外側を示す。
【0013】
図1および図2には、本発明が適用された実施形態に係る車両のフード構造を備えたエンジンフード10が示されている。
【0014】
図1に示すように、車体11の前方上側にエンジンルーム13を覆うように配設されたエンジンフード10は、車体上側すなわち外側をカバーするフードアウタ10Aと、車体下側すなわち内側から前記フードアウタ10Aを支持するフードインナ10Bとが所定の間隔をあけて一体化され、図示しないヒンジ部材で車体11上に開閉可能に支持されている。
【0015】
フードアウタ10Aには、車幅方向および車体前後方向の略中央部分に車幅方向を長手とする略長方形の開口部14Aが設けられ、開口部14Aの周縁部は樹脂などの素材で形成されたバルジ12がカバーし、開口部14A近傍の強度を補うと共に外観上の意匠を整えている。
【0016】
フードインナ10Bには、開口部14Aに対応する箇所に、フードアウタ10Aと一体化した際にエンジンフード10を貫通する開口部14となるように開口部14Bが設けられている。開口部14Bの車体前側には横骨16Aが、車体後側には横骨16Bが開口部14Bに隣接して設けられ、それぞれ開口部14Bの車幅方向長さにわたって延設されることで、エンジンフード10全体において、特に開口部14B近傍の車幅方向の強度を担っている。
【0017】
また横骨16Aの車体前側には、これと略直交するように車体前後方向に複数の縦骨18Aが設けられ、フードインナ10Bの車体前端近傍まで延設されている。この縦骨18Aにより開口部14Bより車体前側の強度が確保されている。同様に横骨16Bの車体後側には、これと略直交するように車体前後方向に複数の縦骨18Bが設けられ、フードインナ10Bの車体後端近傍まで延設されている。この縦骨18Bにより開口部14Bより車体後側の強度が確保されている。
【0018】
開口部14Bの車幅方向両脇には、縦骨20および縦骨22が配設され、フードインナ10Bの車体前後方向に延設されている。この縦骨20および縦骨22は横骨16Aおよび横骨16Bの車幅方向両端と接合され、全体として横骨16Aと横骨16B、縦骨20と縦骨22で略梯子型のパターンを形成することにより、フードインナ10B全体の強度を確保している。
【0019】
図3には、図2に示すフードインナ10BのA−A断面が示されている。
【0020】
図3に示すように、横骨16Aと横骨16Bとは、開口部14Bの車体上下方向における開口幅(開口高さ)をクリアするため高さ方向に段差をもって配置されている。すなわち開口高さ分だけ横骨16Bが高く、前下がりに横骨16Aが低く配置されている。これにより開口部14は車体前方からの正面視で所定の開口面積を持つので、走行風を受ける構造とされている。
【0021】
図3に示すように、開口部14Bの車体後方下側にはダクト26が設けられ、ダクト26の車体下側端に設けられたダクトシール28と合わせて、開口部14から導入される走行風をエンジンルーム13内に導入する。開口部14Bの直下にはエンジンルーム13内にインタークーラー30が設けられ、図示しない過給器で圧縮されエンジン32へと送られる、高温の圧縮空気を冷却する。
【0022】
開口部14Aの周縁部は強度確保、および意匠上の必要によりバルジ12でカバーされている。バルジ12は樹脂等で成型され、車体前方からの走行風を開口部14に導入する空力部材としても作用する形状とされている。
【0023】
バルジ12は開口部14Aの周縁部をカバーすると同時に、図3に示す固定部材24でフードインナ10Bに固定される。固定部材24はボス24A、ボルト24B、ナット24Cからなり、ボス24Aはバルジ12をフードインナ10B上に所定の間隔を開けて固定される。
【0024】
ボス24Aは、例えば図4(A)に示すように穴25を設けた構造や、肉抜き、あるいは板厚の薄い部材を用いる等の方法で強度を意図的に低下させた脆弱構造を備えた箱ボス形状であり、バルジ12への車体上側からの入力に対しては、ボス24Aはバルジ12よりも少ない荷重で座屈するように強度および剛性が設定されている。または略パンタグラフ形状の断面をもつエネルギー吸収ブラケットなどの構造としてもよい。これにより図4(B)に示すように、車体上方向からの入力40に対してはバルジ12が座屈するよりも前に先ずボス24Aが座屈する構造とされている。
【0025】
<作用効果>
次に本発明の実施形態の作用および効果について説明する。
【0026】
図1および図2に示すように、エンジンフード10の車幅方向および車体前後方向の略中央に開口部14を設けた場合は、車幅方向中央近傍において、強度メンバである縦骨を通すことができない。すなわち、図5に示すようにエンジンフード中央近傍のフードインナ110Bに強度メンバである横骨116、縦骨118を備えた構造に比較して、開口部を備えたフードインナは中央近傍に強度メンバを配置できない。このため、車体上方向より入力のあった際、十分な強度を確保できずにフードインナの変形ストロークが大きくなり、開口部14の直下に設けられたインタークーラー30などの構成部品までの距離に余裕がなくなる虞があった。
【0027】
本実施形態においては、フードインナ10Bの強度部材である横骨16Aと横骨16Bとを開口部14Bの前後に配置し、かつ横骨16Aと横骨16Bの車幅方向両端を縦骨20、22と結合する、所謂梯子構造とすることでエンジンフード10の強度を確保している。さらに横骨16Aからは車体前方向に縦骨18Aが、横骨16Bからは車体後方向に縦骨18Bが設けられ、さらなるフードインナ10Bの強度を確保している。
【0028】
上記の構造とすることにより、エンジンフード10全体としては中央近傍に開口部14を備えながら、フードインナ10Bは車体上方向からの入力に対して適度な荷重を発生する強度を備え、歩行者保護性能の優れたエンジンフード10とすることができる。
【0029】
またフードアウタ10Aにおいて開口部14Aの周縁部をカバーするバルジ12は通常、樹脂成形部品が多く使用されるが、樹脂成形による部材は入力時の変形ストロークや荷重の発生が板金に比較して予測しにくい欠点があった。
【0030】
本実施形態においては、図4(A)に示すようにバルジ12を固定部材24でフードインナ10B上に所定の間隔をあけて固定することにより、バルジ12に対する車体上方からの入力40に対して、バルジ12において十分な荷重が発生せずとも、固定部材24において荷重を発生させることができる。
【0031】
すなわち固定部材24に予め脆弱構造を備えたボス24Aを用いることにより、図4(B)に示すようにバルジ12に対する車体上方からの入力40の発生時には、ボス24Aが座屈することで荷重を発生し、バルジ12において十分な荷重の発生を必要とせず、歩行者保護性能の優れたエンジンフード10とすることができる。
【0032】
上記の構成とすることにより、エンジンルーム13内にインタークーラー30を設ける場合、エンジン32の直上に設けることができる。このため車体前端にインタークーラー30を設ける構造に比較して、シャシーを延長する、補器類のスペースを確保するなどの必要がないため現行の車体を設計変更することなく使用することができる。これにより生産コスト、開発コストを低減することができる。
【0033】
以上、実施形態を挙げて本発明の実施の形態を説明したが、これらの実施形態は一例であり、要旨を逸脱しない範囲内で種々変更して実施できる。また、本発明の権利範囲がこれらの実施形態に限定されず、本発明の要旨を逸脱しない範囲において種々なる態様で実施し得ることは言うまでもない。
【0034】
すなわち、上記実施形態では過給器用のインタークーラーを備えたエンジンフードを例としたが、これに限定せず貫通口が設けられたフード構造であれば、本発明を応用することができる。すなわちインタークーラー冷却用以外でも、ラジエターやブレーキ等の冷却用、あるいはキャブレターやインジェクションの空気取り入れ口、さらにエンジンルーム全体の冷却用ダクトを備えたフードなどに応用することもできる。
【図面の簡単な説明】
【0035】
【図1】本発明の実施形態に係る車両のフード構造を備えるエンジンフードを示す斜視図である。
【図2】図1に示されるフードインナを示した平面図である。
【図3】図2のA−A断面を示す拡大断面図である。
【図4】図3に示される固定部材の構造と作用を示す拡大断面図である。
【図5】従来のエンジンフードにおけるフードインナを示す平面図である。
【符号の説明】
【0036】
10 エンジンフード
10A フードアウタ
10B フードインナ
12 バルジ
13 エンジンルーム
14 開口部
14A 開口部
14B 開口部
16A 横骨
16B 横骨
18A 縦骨
18B 縦骨
20 縦骨
22 縦骨
24 固定部材
24A ボス
30 インタークーラー
32 エンジン

【特許請求の範囲】
【請求項1】
フードの車体外側面を構成するアウタ部材と、前記アウタ部材の内側に配設されたインナ部材と、からなる車両のフード構造であって、
前記アウタ部材に設けられ車幅方向に延在する第1の開口部と、
前記インナ部材に設けられ平面視で前記第1の開口部と重なる第2の開口部と、
前記第1の開口部を車体前側からカバーするバルジと、
前記バルジを前記インナ部材に間隔を開けて固定すると共に、前記バルジよりも剛性の低い固定部材と、
前記第2の開口部の車体前側に隣接して車幅方向に設けられた第1の横骨と、
前記第2の開口部の車体後側に隣接して車幅方向に設けられた第2の横骨と、
前記第1の横骨の途中から車体前方に延設された第1の縦骨と、
前記第2の横骨の途中から車体後方に延設された第2の縦骨と、
前記第1および第2の横骨を、前記第2の開口部の車幅方向両側で結合し、車体前後方向に延設された一対の第3の縦骨と、
を有することを特徴とする車両のフード構造。
【請求項2】
前記第2の開口部直下に過給器用のインタークーラーが設けられたことを特徴とする請求項1に記載の車両のフード構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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