車両の停止保持装置、及び車両の停止保持方法
【課題】搭乗者の操作に基づき車両を斜面上に停止させる際に該車両の予期せぬ移動の発生を抑制することができる車両の停止保持装置及び車両の停止保持方法を提供する。
【解決手段】CPUは、パーキングレバーが操作されることにより、パーキングブレーキから制動力が付与されている後輪がロック状態にある場合において、前輪の車輪速度VWの絶対値が閾値KVWよりも大きいときに、停止保持制御処理を実行する。すなわち、CPUは、前輪用のホイールシリンダ内のブレーキ液圧を増圧させることにより、前輪に対してホイールシリンダから制動力を付与させる。そして、前輪の車輪速度VWが「0(零)」になったと判断された場合に、CPUは、前輪用のホイールシリンダ内のブレーキ液圧を保圧させる。
【解決手段】CPUは、パーキングレバーが操作されることにより、パーキングブレーキから制動力が付与されている後輪がロック状態にある場合において、前輪の車輪速度VWの絶対値が閾値KVWよりも大きいときに、停止保持制御処理を実行する。すなわち、CPUは、前輪用のホイールシリンダ内のブレーキ液圧を増圧させることにより、前輪に対してホイールシリンダから制動力を付与させる。そして、前輪の車輪速度VWが「0(零)」になったと判断された場合に、CPUは、前輪用のホイールシリンダ内のブレーキ液圧を保圧させる。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両の停止状態を保持させる車両の停止保持装置、及び車両の停止保持方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、例えばパーキングブレーキが操作されたり、シフトレンジがパーキングレンジとなるように変速機が操作されたりした場合に、車両の停止状態を保持させる車両の停止保持装置、及び車両の停止保持方法として、例えば特許文献1に記載の車両の停止保持装置、及び車両の停止保持方法が提案されている。すなわち、特許文献1に記載の車両の停止保持装置には、パーキングレバーが操作(「ON」操作)された場合に車両の各車輪のうち後輪(第1の車輪)に制動力を付与するパーキングブレーキ(第1制動手段)が設けられている。
【0003】
ここで、パーキングブレーキからの制動力に基づき斜度を有する路面(斜面)に車両を停止させる場合において、その路面のμ値が比較的低いときなどには、斜面の傾斜方向下側への車両の予期せぬ移動(すなわち、車両のずり下がり)が発生することがある。このような場合、特許文献1に記載の車両の停止保持装置では、パーキングレバーの操作量に対応する制動力以上の制動力を後輪に対して付与することにより、車両全体としての制動力を増加させるようになっている。そのため、μ値の低い斜面上に車両を停止させた場合でも、車両のずり下がりの発生が好適に抑制されるようになっている。
【特許文献1】特開平8−48219号公報(請求項1)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、特許文献1に記載の車両の停止保持装置では、パーキングレバーを「ON」操作することにより車両を斜面に停止させる場合において、車両のずり下がりが発生したときに、パーキングレバーの操作量以上の制動力を後輪に付与するようになっている。ところが、各車輪のうち後輪にだけ制動力を付与することにより車両の停止を維持する方法では、車両全体の制動力の増加に限界があり、車両の停止状態を確実に維持(保持)できるとは言い難かった。すなわち、路面の斜度やμ値などによっては、車両が斜面の傾斜方向下側にずり下がってしまうおそれが依然としてあった。
【0005】
本発明は、このような事情に鑑みてなされたものであり、その目的は、搭乗者の操作に基づき車両を斜面上に停止させる際に該車両の予期せぬ移動の発生を抑制することができる車両の停止保持装置及び車両の停止保持方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するために、車両の停止保持装置にかかる請求項1に記載の発明は、車両(C)の各車輪(FR,FL,RR,RL)の車輪速度(VW)を検出する車輪速度検出手段(SE3,SE4,SE5,SE6)と、前記各車輪(FR,FL,RR,RL)のうち一部の車輪を構成する第1の車輪(RR,RL)に制動力(BP1)を付与可能な第1制動手段(PKB)によって前記第1の車輪(RR,RL)に制動力(BP1)が付与されたことにより、該第1の車輪(RR,RL)がロック状態にある場合において、前記車輪速度検出手段(SE3,SE4,SE5,SE6)により検出された前記各車輪(FR,FL,RR,RL)のうち前記第1の車輪(RR,RL)以外の第2の車輪(FR,FL)の車輪速度(VW)の絶対値が予め設定された閾値(KVW)よりも大きいか否かを判定する車輪速度判定手段(60)と、該車輪速度判定手段(60)による判定結果が肯定判定である場合に、前記第2の車輪(FR,FL)に対しても制動力(BP2)が付与されるように前記各車輪(FR,FL,RR,RL)のうち少なくとも前記第2の車輪(FR,FL)に制動力(BP2)を付与可能な第2制動手段(36a,36b)を制御する制御手段(60)とを備えたことを要旨とする。
【0007】
上記構成では、第1制動手段から制動力が付与された第1の車輪がロックした状態にある場合に、第2の車輪の車輪速度の絶対値が閾値よりも大きくなると、第2制動手段によって第2の車輪にも制動力が付与される。そのため、全ての車輪に対して制動力が付与された状態となる結果、制動力が第1の車輪のみにしか付与されない場合に比して、車両全体の制動力が増大する。したがって、搭乗者の操作に基づき車両を斜面上に停止させる際に該車両の予期せぬ移動の発生を抑制することができる。
【0008】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の車両の停止保持装置において、前記第2制動手段(36a,36b)は、前記第1制動手段(PKB)が前記第1の車輪(RR,RL)に付与する制動力(BP1)とは制動方式が異なる制動力(BP2)を前記各車輪(FR,FL,RR,RL)のうち少なくとも前記第2の車輪(FR,FL)に対して付与することを要旨とする。
【0009】
上記構成では、第1制動手段が第1の車輪に付与する制動力とは制動方式が異なる制動力が各車輪のうち少なくとも第2の車輪に付与される。したがって、かかる第2制動手段からの制動方式の異なる制動力を第2の車輪に加えて第1の車輪にも付与するようにすれば、より一層、車両全体の制動力を増加させることができるようになる。
【0010】
請求項3に記載の発明は、請求項1又は請求項2に記載の車両の停止保持装置において、前記制御手段(60)は、前記車輪速度判定手段(60)による判定結果が肯定判定である場合に、前記車輪速度検出手段(SE3,SE4,SE5,SE6)により検出された前記第2の車輪(FR,FL)の車輪速度(VW)の絶対値が前記閾値(KVW)以下となるように前記第2制動手段(36a,36b)を制御することを要旨とする。
【0011】
上記構成では、第2の車輪には、その車輪速度の絶対値が閾値以下となるように第2制動手段から制動力が付与される。そのため、車両の予期せぬ移動の発生がより良好に抑制される。
【0012】
請求項4に記載の発明は、請求項1又は請求項2に記載の車両の停止保持装置において、前記車両(C)が停止した路面の斜度(gr)を検出する路面斜度検出手段(60,SE8)と、該路面斜度検出手段(60,SE8)により検出された路面の斜度(gr)に応じて前記第2の車輪(FR,FL)に対する制動力(BP2)を設定する制動力設定手段(60)とをさらに備え、前記制御手段(60)は、前記車輪速度判定手段(60)による判定結果が肯定判定である場合に、前記制動力設定手段(60)によって設定された制動力(BP2)が前記第2の車輪(FR,FL)に付与されるように前記第2制動手段(36a,36b)を制御することを要旨とする。
【0013】
上記構成では、第2の車輪には、路面の斜度に応じた制動力が付与される。すなわち、第2の車輪に対して必要以上に制動力が付与されることを規制することにより、第2制動手段の劣化の進行を遅延させることが可能になる。
【0014】
請求項5に記載の発明は、請求項4に記載の車両の停止保持装置において、前記第2の車輪(FR,FL)に対する制動力(BP2)を前記路面の斜度(gr)に対応付けた状態で記憶する記憶手段(61)をさらに備え、前記制動力設定手段(60)は、前記路面斜度検出手段(60,SE8)により検出された路面の斜度(gr)に対応する制動力(BP2)を前記記憶手段(61)から読み出すことを要旨とする。
【0015】
上記構成では、路面の斜度に対応した制動力を記憶手段から読み出すことにより、第2の車輪に対して付与する制動力が設定される。すなわち、第2制動手段が第2の車輪に対して付与する制動力を設定するために、関係式を用いて演算処理を行う必要もない。したがって、制動力設定手段の処理負担が良好に低減される。
【0016】
請求項6に記載の発明は、請求項1〜請求項5のうち何れか一項に記載の車両の停止保持装置において、前記各車輪(FR,FL,RR,RL)のうち駆動輪(FR,FL)に対して駆動力を付与するために操作されるアクセルぺダル(17)が操作されたか否かを判定するアクセルぺダル操作判定手段(60)と、前記第1の車輪(RR,RL)に対して前記第1制動手段(PKB)からの制動力(BP1)が付与されていないか否かを判定する制動力付与判定手段(60)とをさらに備え、前記制御手段(60)は、前記アクセルぺダル操作判定手段(60)による判定結果及び前記制動力付与判定手段(60)による判定結果のうち少なくとも一方の判定結果が否定判定から肯定判定に切り換わった場合に、前記第2の車輪(FR,FL)に対する制動力(BP2)の付与を停止させるように前記第2制動手段(36a,36b)を制御することを要旨とする。
【0017】
上記構成では、アクセルぺダルの操作及び第1の車輪に対する第1制動手段からの制動力の付与の停止のうち少なくとも一方が検知された場合に、第2の車輪に対する第2制動手段からの制動力の付与を停止させる。そのため、その後に搭乗者が車両を操作する際に、各車輪のうち少なくとも第2の車輪に対する第2制動手段からの制動力に基づき搭乗者が感じる引きずり感が低減される。
【0018】
請求項7に記載の発明は、車両(C)の各車輪(FR,FL,RR,RL)の車輪速度(VW)を検出する車輪速度検出手段(SE3,SE4,SE5,SE6)と、前記各車輪(FR,FL,RR,RL)のうち一部の車輪を構成する第1の車輪(RR,RL)に制動力(BP1)を付与可能な第1制動手段(PKB)によって前記第1の車輪(RR,RL)に制動力(BP1)が付与されたことにより、該第1の車輪(RR,RL)がロック状態にある場合において、前記車輪速度検出手段(SE3,SE4,SE5,SE6)により検出された前記各車輪(FR,FL,RR,RL)のうち前記第1の車輪(RR,RL)以外の第2の車輪(FR,FL)の車輪速度(VW)の絶対値が予め設定された閾値(KVW)よりも大きいか否かを判定する車輪速度判定手段(60)と、該車輪速度判定手段(60)による判定結果が肯定判定である場合に、前記第2の車輪(FR,FL)に対しても前記第1制動手段(PKB)が前記第1の車輪(RR,RL)に付与している制動力(BP1)と同等の制動力(BP2)が付与されるように、前記第1の車輪(RR,RL)と前記第2の車輪(FR,FL)との間を連結状態又は非連結状態に切り替え可能に構成された第2制動手段(70)を、該第2制動手段(70)が前記第1の車輪(RR,RL)と前記第2の車輪(FR,FL)との間を連結状態とする切り替え態様となるように制御する制御手段(60)とを備えたことを要旨とする。
【0019】
上記構成では、第1制動手段から制動力が付与された第1の車輪がロックした状態にある場合に、第2の車輪の車輪速度の絶対値が閾値よりも大きくなると、第2制動手段が駆動されて第1の車輪と第2の車輪との間が連結状態となる結果、第1の車輪に付与されている制動力が第2の車輪に伝達される。すなわち、第2の車輪に対しても第1制動手段が第1の車輪に付与している制動力と同等な制動力が付与されるようになる。そのため、全ての車輪に対して制動力が付与されることになり、制動力が第1の車輪のみにしか付与されない場合に比して、車両全体の制動力が増大する。したがって、搭乗者の操作に基づき車両を斜面上に停止させる際に該車両の予期せぬ移動の発生を抑制することができる。
【0020】
一方、車両の停止保持方法にかかる請求項8に記載の発明は、車両(C)の各車輪(FR,FL,RR,RL)のうち一部の車輪を構成する第1の車輪(RR,RL)に制動力(BP1)が付与されたことにより、該第1の車輪(RR,RL)がロック状態にある場合において、前記各車輪(FR,FL,RR,RL)のうち前記第1の車輪(RR,RL)以外の第2の車輪(FR,FL)の車輪速度(VW)の絶対値が予め設定された閾値(KVW)よりも大きいか否かを判定し、該判定結果が肯定判定である場合に、前記第2の車輪(FR,FL)に対しても制動力(BP2)を付与するようにしたことを要旨とする。
【0021】
上記構成では、請求項1に記載の発明の場合と同様の作用効果を奏し得る。
請求項9に記載の発明は、請求項8に記載の車両の停止保持方法において、前記判定結果が肯定判定である場合に、前記各車輪(FR,FL,RR,RL)のうち少なくとも前記第2の車輪(FR,FL)に対して、前記第1の車輪(RR,RL)に付与されている制動力(BP1)とは制動方式が異なる制動力(BP2)を付与することを要旨とする。
【0022】
上記構成では、請求項2に記載の発明の場合と同様の作用効果を奏し得る。
請求項10に記載の発明は、車両(C)の各車輪(FR,FL,RR,RL)のうち一部の車輪を構成する第1の車輪(RR,RL)に制動力(BP1)が付与されたことにより、該第1の車輪(RR,RL)がロック状態にある場合において、前記各車輪(FR,FL,RR,RL)のうち前記第1の車輪(RR,RL)以外の第2の車輪(FR,FL)の車輪速度(VW)の絶対値が予め設定された閾値(KVW)よりも大きいか否かを判定し、該判定結果が肯定判定である場合に、前記第1の車輪(RR,RL)に対して付与されている制動力(BP1)を前記第2の車輪(FR,FL)に伝達することにより、前記制動力(BP1)と同等の制動力(BP2)を前記第2の車輪(FR,FL)に対して付与するようにしたことを要旨とする。
【0023】
上記構成では、請求項7に記載の発明の場合と同様の作用効果を奏し得る。
【発明を実施するための最良の形態】
【0024】
(第1の実施形態)
以下、本発明を具体化した一実施形態を図1〜図7に従って説明する。なお、以下における本明細書中の説明においては、車両の進行方向(前進方向)を前方(車両前方)として説明する。また、特に説明がない限り、以下の記載における左右方向は、車両進行方向における左右方向と一致するものとする。
【0025】
図1に示すように、本実施形態における車両の停止保持装置11は、複数(本実施形態では4つ)ある車輪(右前輪FR、左前輪FL、右後輪RR及び左後輪RL)のうち、前輪FR,FLが駆動輪として機能する車両(いわゆる前輪駆動車)に搭載されている。この停止保持装置11は、駆動源となるエンジン12で発生した駆動力を前輪FR,FLに伝達する駆動力伝達機構13と、前輪FR,FLを転舵輪(「操舵輪」ともいう。)として転舵させるための前輪転舵機構14と、各車輪FR,FL,RR,RLに制動力を付与するための制動力付与機構15とを備えている。また、この停止保持装置11は、制動力付与機構15とは制動方式を異にして別途に構成されたパーキングブレーキPKBと、上記各機構13,14,15を車両の走行状態に応じて適宜に制御するための電子制御装置(「ECU」ともいう。)16とを備えている。なお、エンジン12は、車両の搭乗者によるアクセルぺダル17の踏込み操作に対応した駆動力を発生させる。
【0026】
駆動力伝達機構13には、吸気管18内の吸気通路18aの開口断面積を可変させるスロットル弁19の開度を制御するためのスロットル弁アクチュエータ(例えばDCモータ)20と、エンジン12の吸気ポート(図示略)近傍に燃料を噴射するインジェクタを有する燃料噴射装置21とが設けられている。また、駆動力伝達機構13には、エンジン12の出力軸に接続されたトランスミッション22と、このトランスミッション22から伝達された駆動力を適宜配分して前輪FL,FRに伝達するディファレンシャルギヤ23とが設けられている。さらに、駆動力伝達機構13には、アクセルぺダル17の踏込み量(開度)を検出するためのアクセル開度センサSE1が設けられている。
【0027】
前輪転舵機構14には、ステアリングホイール24と、ステアリングホイール24が固定されたステアリングシャフト25と、ステアリングシャフト25に連結された転舵アクチュエータ26とが設けられている。また、前輪転舵機構14には、転舵アクチュエータ26により車両の左右方向に移動自在なタイロッドと、このタイロッドの移動により前輪FL,FRを転舵させるリンクとを含んだリンク機構部27とが設けられている。さらに、前輪転舵機構14には、ステアリングホイール24の操舵角を検出するための操舵角センサSE2が設けられている。
【0028】
パーキングブレーキPKBは、車両の駐車時に用いられるものであり、搭乗者に操作されるパーキングレバー28を備えている。このパーキングレバー28内には、図示しないラチェット機構が設けられると共に、パーキングレバー28からは、各後輪(第1の車輪)RR,RLに向けてワイヤWKが延設されている。そして、パーキングレバー28が操作された場合には、各ワイヤWKが引っ張られることにより、各後輪RR,RLに対して制動力が付与されるようになっている。また、パーキングレバー28の操作が解除された場合には、各ワイヤWKの引っ張られた状態が解除されることにより、各後輪RR,RLに対してパーキングブレーキPKBから制動力が付与されないようになっている。したがって、本実施形態では、パーキングブレーキPKBが、各車輪FR,FL,RR,RLのうち一部を構成する後輪(第1の車輪)RR,RLに制動力を付与可能な第1制動手段として機能するようになっている。
【0029】
次に、制動力付与機構15について図2に基づき以下説明する。
図2に示すように、本実施形態の制動力付与機構15は、マスタシリンダ30及びブースタ31を有する液圧発生装置32と、2つの液圧回路33,34を有する液圧制御装置(図2では二点鎖線で示す。)35とを備えている。各液圧回路33,34は、液圧発生装置32に接続されると共に、各車輪FR,FL,RR,RLに対応して設けられたホイールシリンダ36a,36b,36c,36dに接続されている。すなわち、右前輪FRにはホイールシリンダ36aが対応すると共に、左前輪FLにはホイールシリンダ36bが対応している。また、右後輪RRにはホイールシリンダ36cが対応すると共に、左後輪RLにはホイールシリンダ36dが対応している。したがって、本実施形態では、ホイールシリンダ36a,36dが、各車輪FR,FL,RR,RLのうち後輪(第1の車輪)RR,RL以外の前輪(第2の車輪)FR,FLに対して制動力を付与可能な第2制動手段として機能するようになっている。
【0030】
液圧発生装置32には、ブレーキペダル37が設けられており、このブレーキペダル37が車両の搭乗者によって踏込み操作されたことに基づき、液圧発生装置32のマスタシリンダ30及びブースタ31が駆動するようになっている。また、マスタシリンダ30には、2つの出力ポート30a,30bが設けられており、各出力ポート30a,30bのうち一方の出力ポート30aには第1液圧回路33が接続されると共に、他方の出力ポート30bには第2液圧回路34が接続されている。さらに、液圧発生装置32には、ブレーキペダル37が操作された際に電子制御装置16に向けて信号を送信するブレーキスイッチSW1が設けられている。
【0031】
液圧制御装置35には、第1液圧回路33内のブレーキ液圧を昇圧するためのポンプ38と、第2液圧回路34内のブレーキ液圧を昇圧するためのポンプ39と、各ポンプ38,39を同時に駆動させるモータMとが設けられている。また、各液圧回路33,34上にはブレーキオイルが貯留されるリザーバ40,41が設けられており、各リザーバ40,41内のブレーキオイルは、ポンプ38,39の駆動に基づき液圧回路33,34内に供給されるようになっている。さらに、各液圧回路33,34には、マスタシリンダ30内のブレーキ液圧を検出するための液圧センサPS1,PS2が設けられている。
【0032】
第1液圧回路33には、右前輪FRに対応するホイールシリンダ36aに接続されるホイールシリンダ36a用(右前輪FR用)の右前輪用経路33aと、左後輪RLに対応するホイールシリンダ36dに接続されるホイールシリンダ36d用(左後輪RL用)の左後輪用経路33bとが形成されている。そして、これら各経路33a,33b上には、常開型の電磁弁42,43と常閉型の電磁弁44,45とがそれぞれ設けられている。
【0033】
同様に、第2液圧回路34には、左前輪FLに対応するホイールシリンダ36bに接続されるホイールシリンダ36b用(左前輪FL用)の左前輪用経路34aと、右後輪RRに対応するホイールシリンダ36cに接続されるホイールシリンダ36c用(右後輪RR用)の右後輪用経路34bとが形成されている。そして、これら各経路34a,34b上には、常開型の電磁弁46,47と常閉型の電磁弁48,49とがそれぞれ設けられている。
【0034】
また、第1液圧回路33において各経路33a,33bに分岐された部位よりもマスタシリンダ30側には、常開型の比例電磁弁50が接続されると共に、この比例電磁弁50と並列関係をなすリリーフ弁51が接続されている。そして、比例電磁弁50とリリーフ弁51とにより比例差圧弁52が構成されている。比例差圧弁52は、電子制御装置16による制御に基づき、比例差圧弁52よりもマスタシリンダ30側とホイールシリンダ36a,36d側とで液圧差(ブレーキ液圧の差)を発生させることができる。なお、この液圧差の最大値は、リリーフ弁51を構成するばね51aの付勢力に基づく値となる。また、第1液圧回路33には、リザーバ40とポンプ38との間からマスタシリンダ30側に向けて分岐された分岐液圧路33cが形成されており、この分岐液圧路33c上には常閉型の電磁弁53が接続されている。
【0035】
同様に、第2液圧回路34において各経路34a,34bに分岐された部位よりもマスタシリンダ30側には、常開型の比例電磁弁54が接続されると共に、この比例電磁弁54と並列関係をなすリリーフ弁55が接続されている。そして、比例電磁弁54とリリーフ弁55とにより比例差圧弁56が構成されている。比例差圧弁56は、電子制御装置16による制御に基づき、比例差圧弁56よりもマスタシリンダ30側とホイールシリンダ36b,36c側とで液圧差(ブレーキ液圧の差)を発生させることができる。なお、この液圧差の最大値は、リリーフ弁55を構成するばね55aの付勢力に基づく値となる。また、第2液圧回路34には、リザーバ41とポンプ39との間からマスタシリンダ30側に向けて分岐された分岐液圧路34cが形成されており、この分岐液圧路34c上には常閉型の電磁弁57が接続されている。
【0036】
ここで、上記各電磁弁42〜49のソレノイドコイルが通電状態にある場合及び非通電状態にある場合における各ホイールシリンダ36a〜36d内のブレーキ液圧の変化について説明する。なお、以下の説明においては、各比例電磁弁50,54が閉じ状態であると共に、分岐液圧路33c,34c上の電磁弁53,57が閉じ状態であるものとする。
【0037】
まず、各電磁弁42〜49のソレノイドコイルが全て非通電状態にある場合には、常開型の電磁弁42,43,46,47は開き状態のままであると共に、常閉型の電磁弁44,45,48,49は閉じ状態のままである。そのため、上記ポンプ38,39が駆動している場合には、リザーバ40,41内のブレーキオイルが各経路33a,33b,34a,34bを介して各ホイールシリンダ36a〜36d内に流入し、各ホイールシリンダ36a〜36d内のブレーキ液圧は上昇することになる。
【0038】
一方、各電磁弁42〜49のソレノイドコイルが全て通電状態にある場合には、常開型の電磁弁42,43,46,47が閉じ状態となると共に、常閉型の電磁弁44,45,48,49が開き状態となる。そのため、各ホイールシリンダ36a〜36d内からブレーキオイルが各経路33a,33b,34a,34bを介してリザーバ40,41へと流出し、各ホイールシリンダ36a〜36d内のブレーキ液圧は降下することになる。
【0039】
そして、各電磁弁42〜49のうち常開型の電磁弁42,43,46,47のソレノイドコイルのみが通電状態にある場合には、全ての電磁弁42〜49が閉じ状態となる。そのため、各経路33a,33b,34a,34bを介したブレーキオイルの流動が規制される結果、各ホイールシリンダ36a〜36d内のブレーキ液圧はその液圧レベルが保持されることになる。
【0040】
図1に示すように、電子制御装置16は、制御手段としてのCPU60、ROM61、及びRAM62などを備えたデジタルコンピュータと、各装置を駆動させるための駆動回路(図示略)とを主体として構成されている。ROM61には、液圧制御装置35(モータM、各電磁弁42〜49,53,57及び比例電磁弁50,54の駆動)を制御するための制御プログラム、及び各種の定数(後述する閾値)などが記憶されている。また、RAM62には、車両の停止保持装置11の駆動中に適宜書き換えられる各種の情報が記録されるようになっている。
【0041】
また、電子制御装置16の入力側インターフェース(図示略)には、上記ブレーキスイッチSW1、液圧センサPS1,PS2、アクセル開度センサSE1、及び操舵角センサSE2がそれぞれ接続されている。また、入力側インターフェースには、各車輪FR,FL,RR,RLの車輪速度を検出するための車輪速度センサSE3,SE4,SE5,SE6、及びパーキングレバー28が操作された状態であることを検出するためのパーキングブレーキ操作検出センサSE7がそれぞれ接続されている。さらに、入力側インターフェースには、車両の車体加速度を検出するための車体加速度センサ(「前後Gセンサ」ともいう。)SE8が接続されている。すなわち、CPU60は、ブレーキスイッチSW1、液圧センサPS1,PS2、及び上記各種センサSE1〜SE8からの各信号を受信するようになっている。
【0042】
一方、電子制御装置16の出力側インターフェース(図示略)には、各ポンプ38,39を駆動させるためのモータM、各電磁弁42〜49,53,57及び比例電磁弁50,54が接続されている。そして、CPU60は、上記スイッチSW1及び各センサPS1,PS2,SE1〜SE8からの入力信号に基づき、モータM、各電磁弁42〜49,53,57及び比例電磁弁50,54の動作を個別に制御するようになっている。
【0043】
次に、本実施形態のCPU60が実行する制御処理ルーチンについて、図3〜図5に示すフローチャートに基づき以下説明する。図3には後述する停止保持制御の実行の有無を設定するための停止保持制御判定処理ルーチンが示されると共に、図4には停止保持制御を実行するための停止保持制御処理ルーチンが示されている。また、図5には停止保持制御終了判定処理ルーチンが示されている。
【0044】
最初に図3に示す停止保持制御判定処理ルーチンについて説明する。
さて、CPU60は、所定周期毎に停止保持制御判定処理ルーチンを実行する。そして、この停止保持制御判定処理ルーチンにおいて、CPU60は、パーキングレバー28が操作(「ON」操作)された状態であるか否かを判定する(ステップS10)。すなわち、CPU60は、パーキングブレーキ操作検出センサSE7から受信した信号に基づき、パーキングブレーキPKBにより後輪RR,RLに対して制動力が付与されているか否かを判定する。そして、ステップS10の判定結果が否定判定である場合、CPU60は、後輪RR,RLに対してパーキングブレーキPKBから制動力が付与されていないものと判断し、停止保持制御判定処理ルーチンを終了する。
【0045】
一方、ステップS10の判定結果が肯定判定である場合、CPU60は、後輪RR,RLに対してパーキングブレーキPKBから制動力が付与されているものと判断し、各車輪速度センサSE3〜SE6から受信した信号に基づき、各車輪FR,FL,RR,RLの車輪速度VWをそれぞれ検出する(ステップS11)。この点で、本実施形態では、CPU60及び車輪速度センサSE3〜SE6が、車輪速度検出手段として機能する。続いて、CPU60は、ステップS11にて検出した後輪RR,RLの車輪速度VWが「0(零)」であるか否かを判定する(ステップS12)。すなわち、CPU60は、後輪RR,RLに対してパーキングブレーキPKBから制動力が付与されることにより、後輪RR,RLがロック状態になっているか否かを判定する。そして、ステップS12の判定結果が否定判定(後輪RR,RLの車輪速度VW≠「0(零)」)である場合、CPU60は、後輪RR,RLがロック状態ではないと判断し、停止保持制御判定処理ルーチンを終了する。
【0046】
一方、ステップS12の判定結果が肯定判定(後輪RR,RLの車輪速度VW=「0(零)」)である場合、CPU60は、後輪RR,RLがロック状態であると判断し、ステップS11にて検出した前輪(第2の車輪)FR,FLの車輪速度VWの絶対値が予め設定された閾値(例えば「3」)KVWよりも大きいか否かを判定する(ステップS13)。この点で、本実施形態では、CPU60が、車輪速度判定手段としても機能する。なお、閾値KVWは、後述する停止保持制御処理を実行の有無を判定するための値であり、実験やシミュレーションなどによって予め設定される。
【0047】
そして、ステップS13の判定結果が否定判定(前輪FR,FLの車輪速度VWの絶対値≦閾値KVW)の場合、CPU60は、停止保持制御判定処理ルーチンを終了する。一方、ステップS13の判定結果が肯定判定(前輪FR,FLの車輪速度VWの絶対値>閾値KVW)の場合、CPU60は、停止保持制御処理(図4に詳述する。)を実行すると共に、図示しない停止保持制御処理フラグを「ON」にセットする。この停止保持制御処理フラグは、停止保持制御処理が実行されているか否かを判定するためのフラグであり、実行中の場合には「ON」にセットされる一方、非実行中の場合には「OFF」にセットされる。その後、CPU60は、停止保持制御判定処理ルーチンを終了する。
【0048】
次に図4に示す停止保持制御処理ルーチン(停止保持制御処理)について説明する。
さて、停止保持制御処理ルーチンにおいて、CPU60は、前輪FR,FLに対する制動力を増加させるために、前輪FR,FL用のホイールシリンダ36a,36b内のブレーキ液圧BPを増圧させる(ステップS20)。すなわち、CPU60は、上述したステップS12,13が共に肯定判定である場合に、前輪FR,FLに対しても制動力が付与されるように各車輪FR,FL,RR,RLのうち少なくとも前輪FR,FLに制動力を付与可能なホイールシリンダ36a,36bの内部のブレーキ液圧BPを制御する。
【0049】
具体的には、CPU60は、各液圧回路33,34上の各電磁弁42〜49のうち左後輪用経路33b上の電磁弁43及び右後輪用経路34b上の電磁弁47のみを通電状態とし、それ以外の電磁弁42,44〜46,48,49を非通電状態とする。また、CPU60は、モータMを駆動させると共に、比例電磁弁50,54を通電状態にすることにより比例電磁弁50,54を閉弁状態にする。
【0050】
続いて、CPU60は、各車輪速度センサSE3,SE4から受信した信号に基づき、前輪FR,FLの車輪速度VWをそれぞれ検出する(ステップS21)。そして、CPU60は、ステップS21にて検出した前輪FR,FLの車輪速度VWが「0(零)」であるか否かを判定する(ステップS22)。すなわち、CPU60は、ステップS21にて検出した前輪FR,FLの車輪速度VWの絶対値が閾値KVW以下の値である「0(零)」になったか否かを判定する。そして、ステップS22の判定結果が否定判定(前輪FR,FLの車輪速度VW≠「0(零)」)である場合、CPU60は、ステップS22の判定結果が肯定判定となるまで、ステップS21,S22を繰り返し実行する。
【0051】
一方、ステップS22の判定結果が肯定判定(前輪FR,FLの車輪速度VW=「0(零)」)である場合、CPU60は、前輪FR,FL用のホイールシリンダ36a,36b内のブレーキ液圧BPの増圧を停止させ、そのブレーキ液圧BPを保圧させる(ステップS23)。具体的には、CPU60は、モータMの駆動を停止させると共に、右前輪用経路33a上の電磁弁42及び左前輪用経路34a上の電磁弁46を通電状態にする。また、CPU60は、左後輪用経路33b上の電磁弁43及び右後輪用経路34b上の電磁弁47を非通電状態とすると共に、比例電磁弁50,54を非通電状態にすることにより比例電磁弁50,54を開弁状態にする。
【0052】
その後、CPU60は、停止保持制御処理ルーチンを終了する。
次に、図5に示す停止保持制御終了判定処理ルーチンについて説明する。
さて、CPU60は、所定周期毎に停止保持制御判定処理ルーチンを実行する。そして、この停止保持制御判定処理ルーチンにおいて、CPU60は、停止保持制御処理が実行中であるか否かを判定する(ステップS30)。すなわち、CPU60は、停止保持制御処理フラグが「ON」にセットされているか否かを判定する。そして、ステップS30の判定結果が否定判定(停止保持制御処理フラグ=「OFF」)である場合、CPU60は、停止保持制御判定処理ルーチンを終了する。
【0053】
一方、ステップS30の判定結果が肯定判定(停止保持制御処理フラグ=「ON」)である場合、CPU60は、パーキングレバー28が操作(「ON」操作)された状態であるか否かを判定する(ステップS31)。すなわち、CPU60は、パーキングブレーキ操作検出センサSE7から受信した信号に基づき、パーキングブレーキPKBにより後輪RR,RLに対して制動力が付与されているか否かを判定する。この点で、本実施形態では、CPU60が、制動力付与判定手段としても機能する。そして、ステップS31の判定結果が否定判定である場合、CPU60は、後輪RR,RLに対してパーキングブレーキPKBから制動力が既に付与されていないものと判断し、その処理を後述するステップS33に移行する。
【0054】
一方、ステップS31の判定結果が肯定判定である場合、CPU60は、後輪RR,RLに対してパーキングブレーキPKBから制動力が未だ付与されているものと判断し、アクセルぺダル17が踏込み操作されているか否かを判定する(ステップS32)。すなわち、CPU60は、アクセル開度センサSE1からの信号に基づき検出されたアクセルぺダル17の開度が「0(零)」でないか否かを判定する。この点で、本実施形態では、CPU60が、アクセルぺダル操作判定手段としても機能する。そして、ステップS32の判定結果が否定判定である場合、CPU60は、アクセルぺダル17が踏込み操作されていないものと判断し、停止保持制御判定処理ルーチンを終了する。一方、ステップS32の判定結果が肯定判定である場合、CPU60は、アクセルぺダル17が踏込み操作されたものと判断し、その処理を後述するステップS33に移行する。
【0055】
ステップS33において、CPU60は、前輪FR,FL用のホイールシリンダ36a,36bからの前輪FR,FLに対する制動力の付与を停止させるために、ホイールシリンダ36a,36b内のブレーキ液圧BPを減圧させる。すなわち、CPU60は、後輪RR,RLに対するパーキングブレーキPKBからの制動力の付与が停止されること、及びアクセルぺダル17が踏込み操作されることのうち少なくとも一方が実行された場合、前輪FR,FLに対するホイールシリンダ36a,36bからの制動力の付与を停止させる。
【0056】
具体的には、CPU60は、右前輪用経路33a上の電磁弁44及び左前輪用経路34a上の電磁弁48を通電状態とすることにより、ホイールシリンダ36a,36b内のブレーキ液圧BPを減圧させる。そして、CPU60は、ホイールシリンダ36a,36b内のブレーキ液圧BPが充分に減圧されたと判断した場合、右前輪用経路33a上の電磁弁42,44及び左前輪用経路34a上の電磁弁46,48を非通電状態とし、その後、停止保持制御判定処理ルーチンを終了する。
【0057】
次に、本実施形態における車両の停止保持方法について図6及び図7に基づき以下説明する。
さて、車両が斜度を有する路面(斜面)を斜面上側に向けて走行している際に、搭乗者がブレーキペダル37を踏込んで車両を停止させ、パーキングレバー28を「ON」操作すると、図6に示すように、車両Cの後輪RR,RLには、パーキングブレーキPKBから制動力BP1が付与される。その後、ブレーキペダル37の踏込み操作が解消されると、前輪FR,FLには制動力が付与されない状態となり、車両Cは、斜面下側に向けて移動しようとする力(所謂ずり下がろうとする力)に対向して、後輪RR,RLに付与されている制動力BP1のみで停止状態を維持しようとする。
【0058】
ところで、斜面のμ値が比較的低い場合、車両Cの斜面下側に移動しようとする力は、μ値が比較的高い場合に比して大きくなる。そして、(車両Cの斜面下側に移動しようとする力)>(後輪RR,RLに付与されるパーキングブレーキPKBからの制動力BP1)となった場合には、車両Cの斜面下側への予期せぬ移動が発生する。すなわち、後輪RR,RLと斜面との間で発生する摩擦力よりも車両Cの斜面下側に移動しようとする力の方が大きい場合には、車両Cが斜面下側に移動しようとする。
【0059】
ところが、本実施形態では、パーキングブレーキPKBからの制動力BP1によって後輪RR,RLがロック状態にある場合において、前輪FR,FLの車輪速度VWの絶対値が閾値KVWよりも大きくなったときには、前輪FR,FL用のホイールシリンダ36a,36b内のブレーキ液圧BPが増圧される。すなわち、図7に示すように、前輪FR,FLには、ホイールシリンダ36a,36b内のブレーキ液圧BPの増圧分に対応する制動力BP2がホイールシリンダ36a,36bから付与される。そのため、車両Cには、全ての車輪FR,FL,RR,RLに対して制動力BP1,BP2が付与されることになり、その結果、車両C全体の制動力が、後輪RR,RLのみに制動力が付与される場合に比して大きくなる。したがって、車両Cの停止状態が良好に維持される。
【0060】
したがって、本実施形態では、以下に示す効果を得ることができる。
(1)パーキングブレーキ(第1制動手段)PKBから制動力BP1が付与された後輪(第1の車輪)RR,RLがロックした状態にある場合に、前輪(第2の車輪)FR,FLの車輪速度VWの絶対値が閾値KVWよりも大きくなると、ホイールシリンダ(第2制動手段)36a,36bから前輪FR,FLに対して制動力BP2が付与される。そのため、全ての車輪FR,FL,RR,RLに対して制動力BP1,BP2が付与された状態になる結果、制動力BP1が後輪RR,RLのみにしか付与されない従来の場合に比して、車両C全体の制動力の増加量が増大する。したがって、搭乗者の操作に基づき車両Cが斜面上に停止した際において該車両Cの予期せぬ移動の発生を抑制することができる。
【0061】
(2)前輪(第2の車輪)FR,FLには、その車輪速度VWの絶対値が「0(零)」となるように前輪FR,FL用のホイールシリンダ(第2制動手段)36a,36bから制動力BP1が付与される。そのため、車両Cの予期せぬ移動の発生をより良好に抑制できる。
【0062】
(3)アクセルぺダル17の踏込み操作及び後輪(第1の車輪)RR,RLに対するパーキングブレーキ(第1制動手段)PKBからの制動力BP1の付与の停止のうち少なくとも一方が検知された場合に、前輪(第2の車輪)FR,FLに対するホイールシリンダ(第2制動手段)36a,36bからの制動力BP2の付与を停止させる。そのため、その後に搭乗者が車両Cを操作する際に、各車輪FR,FL,RR,RLのうち少なくとも前輪FR,FLに対するホイールシリンダ36a,36bからの制動力BP2に基づき搭乗者が感じる引きずり感を低減させることができる。
【0063】
(4)停止保持制御処理において、パーキングブレーキPKBによって制動力BP1が付与されている後輪RR,RLには、ホイールシリンダ36c,36dからの制動力が付与されないようになっている。そのため、停止保持制御処理において後輪RR,RLに対してホイールシリンダ36c,36dから制動力を付与する場合に比して、ホイールシリンダ36c、36dの劣化の進行を抑制できる。
(第2の実施形態)
次に、本発明の第2の実施形態を図8及び図9に従って説明する。なお、第2の実施形態は、ROMに記憶されている内容、及び停止保持制御処理(停止保持制御処理ルーチン)の処理内容が第1の実施形態と異なっている。したがって、以下の説明においては、第1の実施形態と相違する部分について主に説明するものとし、第1の実施形態と同一又は相当する部材構成には同一符号を付して重複説明を省略するものとする。
【0064】
本実施形態における車両の停止保持装置11は、電子制御装置16を備えている。この電子制御装置16は、CPU60、ROM61、及びRAM62などを備えたデジタルコンピュータと、各装置を駆動させるための駆動回路(図示略)とを主体として構成されている。ROM61には、液圧制御装置35(モータM、各電磁弁42〜49,53,57及び比例電磁弁50,54の駆動)を制御するための制御プログラム、前輪FR,FL用のホイールシリンダ36a,36b内のブレーキ液圧BPを設定するためのマップ(図8参照)及び閾値KVWなどが記憶されている。また、RAM62には、車両の停止保持装置11の駆動中に適宜書き換えられる各種の情報が記憶されるようになっている。
【0065】
次に、ROM61に記憶されるマップについて図8に基づき説明する。
図8に示すマップは、車両Cが停止する路面の斜度grと、停止保持制御処理を実行する際における前輪FR,FL用のホイールシリンダ36a,36b内のブレーキ液圧BPとの関係を示すものである。このブレーキ液圧BPは、路面の斜度grが大きくなる程、高くなるように設定されている。すなわち、ブレーキ液圧BPは、路面の斜度grの大きさに比例して変化している。そのため、路面の斜度grが大きくなる程、前輪FR,FLに付与される制動力BP2が大きくなるようになっている。したがって、本実施形態では、ROM61が、前輪(第2の車輪)FR,FLに対する制動力BP2を路面の斜度grに対応付けた状態で記憶する記憶手段として機能するようになっている。
【0066】
次に、本実施形態のCPU60が実行する各制御処理ルーチンのうち停止保持制御処理ルーチンについて図9に基づき以下説明する。
さて、停止保持制御処理ルーチンにおいて、CPU60は、車体加速度センサSE8から受信した信号に基づき路面の斜度grを検出する(ステップS40)。この点で、本実施形態では、CPU60及び車体加速度センサSE8が、路面斜度検出手段として機能する。続いて、CPU60は、ステップS40にて検出した路面の斜度grに対応するホイールシリンダ36a,36b内のブレーキ液圧BPを、図3に示すマップに基づき設定する(ステップS41)。すなわち、CPU60は、検出された路面の斜度grに基づき、前輪FR,FL用のホイールシリンダ36a,36dから前輪FR,FLに対して付与する制動力BP2を設定する。この点で、本実施形態では、CPU60が、制動力設定手段としても機能する。
【0067】
そして、CPU60は、前輪FR,FL用のホイールシリンダ36a,36d内のブレーキ液圧を、ステップS42にて設定したブレーキ液圧BPまで増圧させ、その増圧したブレーキ液圧BPを保圧させる(ステップS42)。その後、CPU60は、停止保持制御処理ルーチンを終了する。このようにホイールシリンダ36a,36b内のブレーキ液圧BPを増圧させた場合、前輪FR,FLに対してホイールシリンダ36a,36bから制動力BP2が付与される。そのため、全ての車輪FR,FL,RR,RLに対して制動力BP1,BP2が付与されることになる。
【0068】
本実施形態では、上記第1の実施形態の効果(1)(3)(4)に加え、さらに以下に示す効果をも得ることができる。
(5)前輪(第2の車輪)FR,FLには、路面の斜度grに応じた制動力BP2がホイールシリンダ(第2制動手段)36a,36bから付与される。すなわち、前輪FR,FLに対して必要以上に制動力BP2が付与されることを規制することにより、ホイールシリンダ36a,36bの劣化の進行を遅延させることができる。
【0069】
(6)路面の斜度grに対応したホイールシリンダ36a,36b内のブレーキ液圧BP(第2制動手段からの制動力BP2)をROM(記憶手段)61から読み出すことにより、前輪FR,FLに対してホイールシリンダ36a,36bから付与される制動力BP2が設定される。すなわち、ホイールシリンダ36a,36bが前輪FR,FLに対して付与する制動力BP2を設定するために、路面の斜度grを変数とする関係式を用いて演算処理を行う必要もない。したがって、CPU(制動力設定手段)60の処理負担を良好に低減することができる。
(第3の実施形態)
次に、本発明の第3の実施形態を図10及び図11に従って説明する。なお、第3の実施形態は、停止保持装置が搭載されている車両が第1の実施形態とは異なっている。したがって、以下の説明においては、第1の実施形態と相違する部分について主に説明するものとし、第1の実施形態と同一又は相当する部材構成には同一符号を付して重複説明を省略するものとする。
【0070】
図10及び図11に示すように、本実施形態における停止保持装置11は、エンジン12からの駆動力を各車輪FR,FL,RR,RLのうち少なくとも後輪RR、RLに伝達自在なセンターディファレンシャル70を備えた4輪駆動の車両(いわゆる4輪駆動車)Cに搭載されている。このセンターディファレンシャル70は、前輪FR,FL側のディファレンシャルギヤ23にシャフト71を介して連結されると共に、後輪RR,RL側のディファレンシャルギヤ23Aにシャフト72を介して連結されている。
【0071】
また、センターディファレンシャル70は、複数(本実施形態では2つ)のギヤ73,74から構成されており、図11に示すように、各ギヤ73,74が噛合状態にある場合には、後輪RR,RLに対してエンジン12からの駆動力が伝達されるようになっている。一方、図10に示すように、各ギヤ73,74が離間した状態にある場合には、後輪RR,RLに対してエンジン12からの駆動力が伝達されないようになっている。なお、センターディファレンシャル70は、例えば車両Cの旋回時において前輪FR,FLと後輪RR,RLとの回転速度に差が生じた場合に、この回転速度差を吸収する差動装置として機能するようになっている。
【0072】
次に、本実施形態のCPU60が実行する各制御処理ルーチンのうち停止保持制御処理ルーチンについて以下説明する。
さて、パーキングブレーキPKBから制動力BP1が付与された後輪RR,RLがロック状態にある場合において、前輪FR,FLの車輪速度VWの絶対値が閾値KVWよりも大きいと判定された場合、CPU60は、停止保持制御処理(停止保持制御処理ルーチン)を実行する。そして、停止保持制御処理ルーチンにおいて、CPU60は、センターディファレンシャル70の各ギヤ73,74を歯合状態にする(図11参照)。すなわち、後輪RR,RLと前輪FR,FLとの間を非連結状態から連結状態に切り替える。
【0073】
すると、前輪FR,FLには、パーキングブレーキPKBによって後輪RR.RLに対して付与されている制動力BP1がセンターディファレンシャル70を介して伝達される。その結果、前輪FR,FLに対してもパーキングブレーキPKBによって後輪RR.RLに対して付与されている制動力BP1と同等な制動力BP2が付与されることになる。そのため、全ての車輪FR,FL,RR,RLに対して制動力BP1,BP2が付与されることになり、車両C全体の制動力が、後輪RR,RLのみに制動力が付与された場合に比して大きくなる。このように、本実施形態では、センターディファレンシャル70が、後輪RR,RLに対して付与されている制動力BP1を前輪FR,FLに伝達自在な第2制動手段として機能する。
【0074】
本実施形態では、以下に示す効果を得ることができる。
(7)パーキングブレーキ(第1制動手段)PKBから制動力BP1が付与された後輪(第1の車輪)RR,RLがロックした状態にある場合に、前輪(第2の車輪)FR,FLの車輪速度VWの絶対値が閾値KVWよりも大きくなると、CPU60がセンターディファレンシャル(第2制動手段)70を駆動制御する。すなわち、各ギヤ73,74を歯合状態とさせて、後輪RR,RLと前輪FR,FLとの間を連結状態にする。その結果、パーキングブレーキPKBからの制動力BP1が前輪FR,FLにも伝達され、後輪RR,RLに付与されている制動力BP1と同等の制動力BP2が前輪FR,FLにも付与される。そのため、全ての車輪FR,FL,RR,RLに対して制動力BP1,BP2が付与されることになり、制動力が後輪RR,RLのみにしか付与されない従来の場合に比して、車両C全体の制動力の増加量が増大する。したがって、搭乗者の操作に基づき車両Cが斜面上に停止した際に該車両Cの予期せぬ移動の発生を抑制することができる。
【0075】
(8)本実施形態では、上述した第1及び第2の実施形態とは異なり第2制動手段としてホイールシリンダ36a,36bを使用することなく、センターディファレンシャル70を用いて、前輪FR,FLに制動力BP2を付与する。そのため、ホイールシリンダ36a,36bを第2制動手段として使用する場合に比して、ホイールシリンダ36a,36bの劣化の進行を抑制できる。
【0076】
なお、各実施形態は以下のような別の実施形態(別例)に変更してもよい。
・各実施形態において、トランスミッション22が自動変速機や無段変速機である場合において、トランスミッション22のシフトレンジがパーキングレンジであるときに、各車輪FR,FL,RR,RLのうち駆動輪である前輪FR,FLに対して制動力が付与されるようにしてもよい。そして、この際に、後輪RR,RLの車輪速度VWの絶対値が閾値KVWよりも大きくなった場合に、停止保持制御処理が実行されるようにしてもよい。すなわち、後輪RR,RL用のホイールシリンダ36c,36d内のブレーキ液圧BPを増圧させることにより、後輪RR,RLに対して制動力を付与することになる。この場合、トランスミッション22が第1制動手段として機能すると共に、後輪RR,RL用のホイールシリンダ36c,36dが第2制動手段として機能する。また、この場合、第1の車輪とは前輪FR,FLのことを示すと共に、第2の車輪とは後輪RR,RLのことを示すことになる。
【0077】
・各実施形態において、停止保持制御処理を停止させるための操作スイッチを、アクセルぺダル17やパーキングレバー28とは別途に設けてもよい。
・第2の実施形態において、ROM61には、図8に示すマップを記憶させるのではなく、路面の斜度grと前輪FR,FL用のホイールシリンダ36a,36b内のブレーキ液圧BPとの関係式を記憶させ、この関係式に基づきブレーキ液圧BPを設定するようにしてもよい。
【0078】
・第1の実施形態において、停止保持制御処理では、前輪FR,FL用のホイールシリンダ36a,36b内のブレーキ液圧BPを、制動力付与機構15により前輪FR,FLに対して最も大きな制動力を付与可能な場合の液圧回路33,34(ホイールシリンダ36a,36b)内のブレーキ液圧に設定するようにしてもよい。
【0079】
・第1及び第2の実施形態において、停止保持制御処理では、全ての車輪FR,FL,RR,FLに対してホイールシリンダ36a〜36dから制動力を付与するようにしてもよい。この場合、パーキングブレーキPKBが後輪RR,RLに付与する制動力BP1とは制動方式が異なる制動力BP2が前輪FR,FLに付与される。したがって、かかるホイールシリンダ36a〜36dからの制動方式の異なる制動力を前輪FR,FLに加えて後輪RR,RLにも付与するようにすれば、より一層、車両C全体の制動力を増加させることができるようになる。
【0080】
・各実施形態において、ブレーキペダル37は、搭乗者の足で操作するいわゆるフットペダル式のブレーキペダルではなく、手動で操作可能なブレーキペダルであってもよい。
・同様に、アクセルぺダル17は、搭乗者の足で操作するいわゆるフットペダル式のアクセルぺダルではなく、手動で操作可能なアクセルぺダルであってもよい。
【0081】
・第1及び第2実施形態において、前輪駆動車に搭載された車両の停止保持装置11ではなく、後輪駆動車に搭載される車両の停止保持装置に具体化してもよい。
・各実施形態において、第1液圧回路33には右前輪FR用のホイールシリンダ36aと左前輪FL用のホイールシリンダ36bとが接続されると共に、第2液圧回路34には右後輪RR用のホイールシリンダ36cと左後輪RL用のホイールシリンダ36dとが接続されるような回路構成としてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0082】
【図1】第1の実施形態における車両の停止保持装置のブロック図。
【図2】第1の実施形態における制動力付与機構のブロック図。
【図3】第1の実施形態における停止保持制御判定処理ルーチンを示すフローチャート。
【図4】第1の実施形態における停止保持制御処理ルーチンを示すフローチャート。
【図5】第1の実施形態における停止保持制御終了判定処理ルーチンを示すフローチャート。
【図6】第1の実施形態においてパーキングブレーキから後輪に対して制動力が付与された状態を示す模式図。
【図7】第1の実施形態において全ての車輪に制動力が付与された状態を示す模式図。
【図8】第2の実施形態において路面の斜度と前輪用のホイールシリンダ内のブレーキ液圧との関係を示すマップ。
【図9】第2の実施形態における停止保持制御処理ルーチンを示すフローチャート。
【図10】第3の実施形態においてパーキングブレーキから後輪に対して制動力が付与された状態を示す模式図。
【図11】第3の実施形態において全ての車輪に制動力が付与された状態を示す模式図。
【符号の説明】
【0083】
11…車両の停止保持装置、17…アクセルぺダル、36a,36b…ホイールシリンダ(第2制動手段)、60…CPU(車輪速度検出手段、車輪速度判定手段、制御手段、路面斜度検出手段、制動力設定手段、アクセルぺダル操作判定手段、制動力付与判定手段)、61…ROM(記憶手段)、70…センターディファレンシャル(第2制動手段)、BP1,BP2…制動力、C…車両、FR,FL…前輪(第2の車輪、駆動輪)、gr…路面の斜度、KVW…閾値、PKB…パーキングブレーキ、RR,RL…後輪(第1の車輪)、SE3〜SE6…車輪速度センサ(車輪速度検出手段)、SE8…車体加速度センサ(路面斜度検出手段)、VW…車輪速度。
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両の停止状態を保持させる車両の停止保持装置、及び車両の停止保持方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、例えばパーキングブレーキが操作されたり、シフトレンジがパーキングレンジとなるように変速機が操作されたりした場合に、車両の停止状態を保持させる車両の停止保持装置、及び車両の停止保持方法として、例えば特許文献1に記載の車両の停止保持装置、及び車両の停止保持方法が提案されている。すなわち、特許文献1に記載の車両の停止保持装置には、パーキングレバーが操作(「ON」操作)された場合に車両の各車輪のうち後輪(第1の車輪)に制動力を付与するパーキングブレーキ(第1制動手段)が設けられている。
【0003】
ここで、パーキングブレーキからの制動力に基づき斜度を有する路面(斜面)に車両を停止させる場合において、その路面のμ値が比較的低いときなどには、斜面の傾斜方向下側への車両の予期せぬ移動(すなわち、車両のずり下がり)が発生することがある。このような場合、特許文献1に記載の車両の停止保持装置では、パーキングレバーの操作量に対応する制動力以上の制動力を後輪に対して付与することにより、車両全体としての制動力を増加させるようになっている。そのため、μ値の低い斜面上に車両を停止させた場合でも、車両のずり下がりの発生が好適に抑制されるようになっている。
【特許文献1】特開平8−48219号公報(請求項1)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、特許文献1に記載の車両の停止保持装置では、パーキングレバーを「ON」操作することにより車両を斜面に停止させる場合において、車両のずり下がりが発生したときに、パーキングレバーの操作量以上の制動力を後輪に付与するようになっている。ところが、各車輪のうち後輪にだけ制動力を付与することにより車両の停止を維持する方法では、車両全体の制動力の増加に限界があり、車両の停止状態を確実に維持(保持)できるとは言い難かった。すなわち、路面の斜度やμ値などによっては、車両が斜面の傾斜方向下側にずり下がってしまうおそれが依然としてあった。
【0005】
本発明は、このような事情に鑑みてなされたものであり、その目的は、搭乗者の操作に基づき車両を斜面上に停止させる際に該車両の予期せぬ移動の発生を抑制することができる車両の停止保持装置及び車両の停止保持方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するために、車両の停止保持装置にかかる請求項1に記載の発明は、車両(C)の各車輪(FR,FL,RR,RL)の車輪速度(VW)を検出する車輪速度検出手段(SE3,SE4,SE5,SE6)と、前記各車輪(FR,FL,RR,RL)のうち一部の車輪を構成する第1の車輪(RR,RL)に制動力(BP1)を付与可能な第1制動手段(PKB)によって前記第1の車輪(RR,RL)に制動力(BP1)が付与されたことにより、該第1の車輪(RR,RL)がロック状態にある場合において、前記車輪速度検出手段(SE3,SE4,SE5,SE6)により検出された前記各車輪(FR,FL,RR,RL)のうち前記第1の車輪(RR,RL)以外の第2の車輪(FR,FL)の車輪速度(VW)の絶対値が予め設定された閾値(KVW)よりも大きいか否かを判定する車輪速度判定手段(60)と、該車輪速度判定手段(60)による判定結果が肯定判定である場合に、前記第2の車輪(FR,FL)に対しても制動力(BP2)が付与されるように前記各車輪(FR,FL,RR,RL)のうち少なくとも前記第2の車輪(FR,FL)に制動力(BP2)を付与可能な第2制動手段(36a,36b)を制御する制御手段(60)とを備えたことを要旨とする。
【0007】
上記構成では、第1制動手段から制動力が付与された第1の車輪がロックした状態にある場合に、第2の車輪の車輪速度の絶対値が閾値よりも大きくなると、第2制動手段によって第2の車輪にも制動力が付与される。そのため、全ての車輪に対して制動力が付与された状態となる結果、制動力が第1の車輪のみにしか付与されない場合に比して、車両全体の制動力が増大する。したがって、搭乗者の操作に基づき車両を斜面上に停止させる際に該車両の予期せぬ移動の発生を抑制することができる。
【0008】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の車両の停止保持装置において、前記第2制動手段(36a,36b)は、前記第1制動手段(PKB)が前記第1の車輪(RR,RL)に付与する制動力(BP1)とは制動方式が異なる制動力(BP2)を前記各車輪(FR,FL,RR,RL)のうち少なくとも前記第2の車輪(FR,FL)に対して付与することを要旨とする。
【0009】
上記構成では、第1制動手段が第1の車輪に付与する制動力とは制動方式が異なる制動力が各車輪のうち少なくとも第2の車輪に付与される。したがって、かかる第2制動手段からの制動方式の異なる制動力を第2の車輪に加えて第1の車輪にも付与するようにすれば、より一層、車両全体の制動力を増加させることができるようになる。
【0010】
請求項3に記載の発明は、請求項1又は請求項2に記載の車両の停止保持装置において、前記制御手段(60)は、前記車輪速度判定手段(60)による判定結果が肯定判定である場合に、前記車輪速度検出手段(SE3,SE4,SE5,SE6)により検出された前記第2の車輪(FR,FL)の車輪速度(VW)の絶対値が前記閾値(KVW)以下となるように前記第2制動手段(36a,36b)を制御することを要旨とする。
【0011】
上記構成では、第2の車輪には、その車輪速度の絶対値が閾値以下となるように第2制動手段から制動力が付与される。そのため、車両の予期せぬ移動の発生がより良好に抑制される。
【0012】
請求項4に記載の発明は、請求項1又は請求項2に記載の車両の停止保持装置において、前記車両(C)が停止した路面の斜度(gr)を検出する路面斜度検出手段(60,SE8)と、該路面斜度検出手段(60,SE8)により検出された路面の斜度(gr)に応じて前記第2の車輪(FR,FL)に対する制動力(BP2)を設定する制動力設定手段(60)とをさらに備え、前記制御手段(60)は、前記車輪速度判定手段(60)による判定結果が肯定判定である場合に、前記制動力設定手段(60)によって設定された制動力(BP2)が前記第2の車輪(FR,FL)に付与されるように前記第2制動手段(36a,36b)を制御することを要旨とする。
【0013】
上記構成では、第2の車輪には、路面の斜度に応じた制動力が付与される。すなわち、第2の車輪に対して必要以上に制動力が付与されることを規制することにより、第2制動手段の劣化の進行を遅延させることが可能になる。
【0014】
請求項5に記載の発明は、請求項4に記載の車両の停止保持装置において、前記第2の車輪(FR,FL)に対する制動力(BP2)を前記路面の斜度(gr)に対応付けた状態で記憶する記憶手段(61)をさらに備え、前記制動力設定手段(60)は、前記路面斜度検出手段(60,SE8)により検出された路面の斜度(gr)に対応する制動力(BP2)を前記記憶手段(61)から読み出すことを要旨とする。
【0015】
上記構成では、路面の斜度に対応した制動力を記憶手段から読み出すことにより、第2の車輪に対して付与する制動力が設定される。すなわち、第2制動手段が第2の車輪に対して付与する制動力を設定するために、関係式を用いて演算処理を行う必要もない。したがって、制動力設定手段の処理負担が良好に低減される。
【0016】
請求項6に記載の発明は、請求項1〜請求項5のうち何れか一項に記載の車両の停止保持装置において、前記各車輪(FR,FL,RR,RL)のうち駆動輪(FR,FL)に対して駆動力を付与するために操作されるアクセルぺダル(17)が操作されたか否かを判定するアクセルぺダル操作判定手段(60)と、前記第1の車輪(RR,RL)に対して前記第1制動手段(PKB)からの制動力(BP1)が付与されていないか否かを判定する制動力付与判定手段(60)とをさらに備え、前記制御手段(60)は、前記アクセルぺダル操作判定手段(60)による判定結果及び前記制動力付与判定手段(60)による判定結果のうち少なくとも一方の判定結果が否定判定から肯定判定に切り換わった場合に、前記第2の車輪(FR,FL)に対する制動力(BP2)の付与を停止させるように前記第2制動手段(36a,36b)を制御することを要旨とする。
【0017】
上記構成では、アクセルぺダルの操作及び第1の車輪に対する第1制動手段からの制動力の付与の停止のうち少なくとも一方が検知された場合に、第2の車輪に対する第2制動手段からの制動力の付与を停止させる。そのため、その後に搭乗者が車両を操作する際に、各車輪のうち少なくとも第2の車輪に対する第2制動手段からの制動力に基づき搭乗者が感じる引きずり感が低減される。
【0018】
請求項7に記載の発明は、車両(C)の各車輪(FR,FL,RR,RL)の車輪速度(VW)を検出する車輪速度検出手段(SE3,SE4,SE5,SE6)と、前記各車輪(FR,FL,RR,RL)のうち一部の車輪を構成する第1の車輪(RR,RL)に制動力(BP1)を付与可能な第1制動手段(PKB)によって前記第1の車輪(RR,RL)に制動力(BP1)が付与されたことにより、該第1の車輪(RR,RL)がロック状態にある場合において、前記車輪速度検出手段(SE3,SE4,SE5,SE6)により検出された前記各車輪(FR,FL,RR,RL)のうち前記第1の車輪(RR,RL)以外の第2の車輪(FR,FL)の車輪速度(VW)の絶対値が予め設定された閾値(KVW)よりも大きいか否かを判定する車輪速度判定手段(60)と、該車輪速度判定手段(60)による判定結果が肯定判定である場合に、前記第2の車輪(FR,FL)に対しても前記第1制動手段(PKB)が前記第1の車輪(RR,RL)に付与している制動力(BP1)と同等の制動力(BP2)が付与されるように、前記第1の車輪(RR,RL)と前記第2の車輪(FR,FL)との間を連結状態又は非連結状態に切り替え可能に構成された第2制動手段(70)を、該第2制動手段(70)が前記第1の車輪(RR,RL)と前記第2の車輪(FR,FL)との間を連結状態とする切り替え態様となるように制御する制御手段(60)とを備えたことを要旨とする。
【0019】
上記構成では、第1制動手段から制動力が付与された第1の車輪がロックした状態にある場合に、第2の車輪の車輪速度の絶対値が閾値よりも大きくなると、第2制動手段が駆動されて第1の車輪と第2の車輪との間が連結状態となる結果、第1の車輪に付与されている制動力が第2の車輪に伝達される。すなわち、第2の車輪に対しても第1制動手段が第1の車輪に付与している制動力と同等な制動力が付与されるようになる。そのため、全ての車輪に対して制動力が付与されることになり、制動力が第1の車輪のみにしか付与されない場合に比して、車両全体の制動力が増大する。したがって、搭乗者の操作に基づき車両を斜面上に停止させる際に該車両の予期せぬ移動の発生を抑制することができる。
【0020】
一方、車両の停止保持方法にかかる請求項8に記載の発明は、車両(C)の各車輪(FR,FL,RR,RL)のうち一部の車輪を構成する第1の車輪(RR,RL)に制動力(BP1)が付与されたことにより、該第1の車輪(RR,RL)がロック状態にある場合において、前記各車輪(FR,FL,RR,RL)のうち前記第1の車輪(RR,RL)以外の第2の車輪(FR,FL)の車輪速度(VW)の絶対値が予め設定された閾値(KVW)よりも大きいか否かを判定し、該判定結果が肯定判定である場合に、前記第2の車輪(FR,FL)に対しても制動力(BP2)を付与するようにしたことを要旨とする。
【0021】
上記構成では、請求項1に記載の発明の場合と同様の作用効果を奏し得る。
請求項9に記載の発明は、請求項8に記載の車両の停止保持方法において、前記判定結果が肯定判定である場合に、前記各車輪(FR,FL,RR,RL)のうち少なくとも前記第2の車輪(FR,FL)に対して、前記第1の車輪(RR,RL)に付与されている制動力(BP1)とは制動方式が異なる制動力(BP2)を付与することを要旨とする。
【0022】
上記構成では、請求項2に記載の発明の場合と同様の作用効果を奏し得る。
請求項10に記載の発明は、車両(C)の各車輪(FR,FL,RR,RL)のうち一部の車輪を構成する第1の車輪(RR,RL)に制動力(BP1)が付与されたことにより、該第1の車輪(RR,RL)がロック状態にある場合において、前記各車輪(FR,FL,RR,RL)のうち前記第1の車輪(RR,RL)以外の第2の車輪(FR,FL)の車輪速度(VW)の絶対値が予め設定された閾値(KVW)よりも大きいか否かを判定し、該判定結果が肯定判定である場合に、前記第1の車輪(RR,RL)に対して付与されている制動力(BP1)を前記第2の車輪(FR,FL)に伝達することにより、前記制動力(BP1)と同等の制動力(BP2)を前記第2の車輪(FR,FL)に対して付与するようにしたことを要旨とする。
【0023】
上記構成では、請求項7に記載の発明の場合と同様の作用効果を奏し得る。
【発明を実施するための最良の形態】
【0024】
(第1の実施形態)
以下、本発明を具体化した一実施形態を図1〜図7に従って説明する。なお、以下における本明細書中の説明においては、車両の進行方向(前進方向)を前方(車両前方)として説明する。また、特に説明がない限り、以下の記載における左右方向は、車両進行方向における左右方向と一致するものとする。
【0025】
図1に示すように、本実施形態における車両の停止保持装置11は、複数(本実施形態では4つ)ある車輪(右前輪FR、左前輪FL、右後輪RR及び左後輪RL)のうち、前輪FR,FLが駆動輪として機能する車両(いわゆる前輪駆動車)に搭載されている。この停止保持装置11は、駆動源となるエンジン12で発生した駆動力を前輪FR,FLに伝達する駆動力伝達機構13と、前輪FR,FLを転舵輪(「操舵輪」ともいう。)として転舵させるための前輪転舵機構14と、各車輪FR,FL,RR,RLに制動力を付与するための制動力付与機構15とを備えている。また、この停止保持装置11は、制動力付与機構15とは制動方式を異にして別途に構成されたパーキングブレーキPKBと、上記各機構13,14,15を車両の走行状態に応じて適宜に制御するための電子制御装置(「ECU」ともいう。)16とを備えている。なお、エンジン12は、車両の搭乗者によるアクセルぺダル17の踏込み操作に対応した駆動力を発生させる。
【0026】
駆動力伝達機構13には、吸気管18内の吸気通路18aの開口断面積を可変させるスロットル弁19の開度を制御するためのスロットル弁アクチュエータ(例えばDCモータ)20と、エンジン12の吸気ポート(図示略)近傍に燃料を噴射するインジェクタを有する燃料噴射装置21とが設けられている。また、駆動力伝達機構13には、エンジン12の出力軸に接続されたトランスミッション22と、このトランスミッション22から伝達された駆動力を適宜配分して前輪FL,FRに伝達するディファレンシャルギヤ23とが設けられている。さらに、駆動力伝達機構13には、アクセルぺダル17の踏込み量(開度)を検出するためのアクセル開度センサSE1が設けられている。
【0027】
前輪転舵機構14には、ステアリングホイール24と、ステアリングホイール24が固定されたステアリングシャフト25と、ステアリングシャフト25に連結された転舵アクチュエータ26とが設けられている。また、前輪転舵機構14には、転舵アクチュエータ26により車両の左右方向に移動自在なタイロッドと、このタイロッドの移動により前輪FL,FRを転舵させるリンクとを含んだリンク機構部27とが設けられている。さらに、前輪転舵機構14には、ステアリングホイール24の操舵角を検出するための操舵角センサSE2が設けられている。
【0028】
パーキングブレーキPKBは、車両の駐車時に用いられるものであり、搭乗者に操作されるパーキングレバー28を備えている。このパーキングレバー28内には、図示しないラチェット機構が設けられると共に、パーキングレバー28からは、各後輪(第1の車輪)RR,RLに向けてワイヤWKが延設されている。そして、パーキングレバー28が操作された場合には、各ワイヤWKが引っ張られることにより、各後輪RR,RLに対して制動力が付与されるようになっている。また、パーキングレバー28の操作が解除された場合には、各ワイヤWKの引っ張られた状態が解除されることにより、各後輪RR,RLに対してパーキングブレーキPKBから制動力が付与されないようになっている。したがって、本実施形態では、パーキングブレーキPKBが、各車輪FR,FL,RR,RLのうち一部を構成する後輪(第1の車輪)RR,RLに制動力を付与可能な第1制動手段として機能するようになっている。
【0029】
次に、制動力付与機構15について図2に基づき以下説明する。
図2に示すように、本実施形態の制動力付与機構15は、マスタシリンダ30及びブースタ31を有する液圧発生装置32と、2つの液圧回路33,34を有する液圧制御装置(図2では二点鎖線で示す。)35とを備えている。各液圧回路33,34は、液圧発生装置32に接続されると共に、各車輪FR,FL,RR,RLに対応して設けられたホイールシリンダ36a,36b,36c,36dに接続されている。すなわち、右前輪FRにはホイールシリンダ36aが対応すると共に、左前輪FLにはホイールシリンダ36bが対応している。また、右後輪RRにはホイールシリンダ36cが対応すると共に、左後輪RLにはホイールシリンダ36dが対応している。したがって、本実施形態では、ホイールシリンダ36a,36dが、各車輪FR,FL,RR,RLのうち後輪(第1の車輪)RR,RL以外の前輪(第2の車輪)FR,FLに対して制動力を付与可能な第2制動手段として機能するようになっている。
【0030】
液圧発生装置32には、ブレーキペダル37が設けられており、このブレーキペダル37が車両の搭乗者によって踏込み操作されたことに基づき、液圧発生装置32のマスタシリンダ30及びブースタ31が駆動するようになっている。また、マスタシリンダ30には、2つの出力ポート30a,30bが設けられており、各出力ポート30a,30bのうち一方の出力ポート30aには第1液圧回路33が接続されると共に、他方の出力ポート30bには第2液圧回路34が接続されている。さらに、液圧発生装置32には、ブレーキペダル37が操作された際に電子制御装置16に向けて信号を送信するブレーキスイッチSW1が設けられている。
【0031】
液圧制御装置35には、第1液圧回路33内のブレーキ液圧を昇圧するためのポンプ38と、第2液圧回路34内のブレーキ液圧を昇圧するためのポンプ39と、各ポンプ38,39を同時に駆動させるモータMとが設けられている。また、各液圧回路33,34上にはブレーキオイルが貯留されるリザーバ40,41が設けられており、各リザーバ40,41内のブレーキオイルは、ポンプ38,39の駆動に基づき液圧回路33,34内に供給されるようになっている。さらに、各液圧回路33,34には、マスタシリンダ30内のブレーキ液圧を検出するための液圧センサPS1,PS2が設けられている。
【0032】
第1液圧回路33には、右前輪FRに対応するホイールシリンダ36aに接続されるホイールシリンダ36a用(右前輪FR用)の右前輪用経路33aと、左後輪RLに対応するホイールシリンダ36dに接続されるホイールシリンダ36d用(左後輪RL用)の左後輪用経路33bとが形成されている。そして、これら各経路33a,33b上には、常開型の電磁弁42,43と常閉型の電磁弁44,45とがそれぞれ設けられている。
【0033】
同様に、第2液圧回路34には、左前輪FLに対応するホイールシリンダ36bに接続されるホイールシリンダ36b用(左前輪FL用)の左前輪用経路34aと、右後輪RRに対応するホイールシリンダ36cに接続されるホイールシリンダ36c用(右後輪RR用)の右後輪用経路34bとが形成されている。そして、これら各経路34a,34b上には、常開型の電磁弁46,47と常閉型の電磁弁48,49とがそれぞれ設けられている。
【0034】
また、第1液圧回路33において各経路33a,33bに分岐された部位よりもマスタシリンダ30側には、常開型の比例電磁弁50が接続されると共に、この比例電磁弁50と並列関係をなすリリーフ弁51が接続されている。そして、比例電磁弁50とリリーフ弁51とにより比例差圧弁52が構成されている。比例差圧弁52は、電子制御装置16による制御に基づき、比例差圧弁52よりもマスタシリンダ30側とホイールシリンダ36a,36d側とで液圧差(ブレーキ液圧の差)を発生させることができる。なお、この液圧差の最大値は、リリーフ弁51を構成するばね51aの付勢力に基づく値となる。また、第1液圧回路33には、リザーバ40とポンプ38との間からマスタシリンダ30側に向けて分岐された分岐液圧路33cが形成されており、この分岐液圧路33c上には常閉型の電磁弁53が接続されている。
【0035】
同様に、第2液圧回路34において各経路34a,34bに分岐された部位よりもマスタシリンダ30側には、常開型の比例電磁弁54が接続されると共に、この比例電磁弁54と並列関係をなすリリーフ弁55が接続されている。そして、比例電磁弁54とリリーフ弁55とにより比例差圧弁56が構成されている。比例差圧弁56は、電子制御装置16による制御に基づき、比例差圧弁56よりもマスタシリンダ30側とホイールシリンダ36b,36c側とで液圧差(ブレーキ液圧の差)を発生させることができる。なお、この液圧差の最大値は、リリーフ弁55を構成するばね55aの付勢力に基づく値となる。また、第2液圧回路34には、リザーバ41とポンプ39との間からマスタシリンダ30側に向けて分岐された分岐液圧路34cが形成されており、この分岐液圧路34c上には常閉型の電磁弁57が接続されている。
【0036】
ここで、上記各電磁弁42〜49のソレノイドコイルが通電状態にある場合及び非通電状態にある場合における各ホイールシリンダ36a〜36d内のブレーキ液圧の変化について説明する。なお、以下の説明においては、各比例電磁弁50,54が閉じ状態であると共に、分岐液圧路33c,34c上の電磁弁53,57が閉じ状態であるものとする。
【0037】
まず、各電磁弁42〜49のソレノイドコイルが全て非通電状態にある場合には、常開型の電磁弁42,43,46,47は開き状態のままであると共に、常閉型の電磁弁44,45,48,49は閉じ状態のままである。そのため、上記ポンプ38,39が駆動している場合には、リザーバ40,41内のブレーキオイルが各経路33a,33b,34a,34bを介して各ホイールシリンダ36a〜36d内に流入し、各ホイールシリンダ36a〜36d内のブレーキ液圧は上昇することになる。
【0038】
一方、各電磁弁42〜49のソレノイドコイルが全て通電状態にある場合には、常開型の電磁弁42,43,46,47が閉じ状態となると共に、常閉型の電磁弁44,45,48,49が開き状態となる。そのため、各ホイールシリンダ36a〜36d内からブレーキオイルが各経路33a,33b,34a,34bを介してリザーバ40,41へと流出し、各ホイールシリンダ36a〜36d内のブレーキ液圧は降下することになる。
【0039】
そして、各電磁弁42〜49のうち常開型の電磁弁42,43,46,47のソレノイドコイルのみが通電状態にある場合には、全ての電磁弁42〜49が閉じ状態となる。そのため、各経路33a,33b,34a,34bを介したブレーキオイルの流動が規制される結果、各ホイールシリンダ36a〜36d内のブレーキ液圧はその液圧レベルが保持されることになる。
【0040】
図1に示すように、電子制御装置16は、制御手段としてのCPU60、ROM61、及びRAM62などを備えたデジタルコンピュータと、各装置を駆動させるための駆動回路(図示略)とを主体として構成されている。ROM61には、液圧制御装置35(モータM、各電磁弁42〜49,53,57及び比例電磁弁50,54の駆動)を制御するための制御プログラム、及び各種の定数(後述する閾値)などが記憶されている。また、RAM62には、車両の停止保持装置11の駆動中に適宜書き換えられる各種の情報が記録されるようになっている。
【0041】
また、電子制御装置16の入力側インターフェース(図示略)には、上記ブレーキスイッチSW1、液圧センサPS1,PS2、アクセル開度センサSE1、及び操舵角センサSE2がそれぞれ接続されている。また、入力側インターフェースには、各車輪FR,FL,RR,RLの車輪速度を検出するための車輪速度センサSE3,SE4,SE5,SE6、及びパーキングレバー28が操作された状態であることを検出するためのパーキングブレーキ操作検出センサSE7がそれぞれ接続されている。さらに、入力側インターフェースには、車両の車体加速度を検出するための車体加速度センサ(「前後Gセンサ」ともいう。)SE8が接続されている。すなわち、CPU60は、ブレーキスイッチSW1、液圧センサPS1,PS2、及び上記各種センサSE1〜SE8からの各信号を受信するようになっている。
【0042】
一方、電子制御装置16の出力側インターフェース(図示略)には、各ポンプ38,39を駆動させるためのモータM、各電磁弁42〜49,53,57及び比例電磁弁50,54が接続されている。そして、CPU60は、上記スイッチSW1及び各センサPS1,PS2,SE1〜SE8からの入力信号に基づき、モータM、各電磁弁42〜49,53,57及び比例電磁弁50,54の動作を個別に制御するようになっている。
【0043】
次に、本実施形態のCPU60が実行する制御処理ルーチンについて、図3〜図5に示すフローチャートに基づき以下説明する。図3には後述する停止保持制御の実行の有無を設定するための停止保持制御判定処理ルーチンが示されると共に、図4には停止保持制御を実行するための停止保持制御処理ルーチンが示されている。また、図5には停止保持制御終了判定処理ルーチンが示されている。
【0044】
最初に図3に示す停止保持制御判定処理ルーチンについて説明する。
さて、CPU60は、所定周期毎に停止保持制御判定処理ルーチンを実行する。そして、この停止保持制御判定処理ルーチンにおいて、CPU60は、パーキングレバー28が操作(「ON」操作)された状態であるか否かを判定する(ステップS10)。すなわち、CPU60は、パーキングブレーキ操作検出センサSE7から受信した信号に基づき、パーキングブレーキPKBにより後輪RR,RLに対して制動力が付与されているか否かを判定する。そして、ステップS10の判定結果が否定判定である場合、CPU60は、後輪RR,RLに対してパーキングブレーキPKBから制動力が付与されていないものと判断し、停止保持制御判定処理ルーチンを終了する。
【0045】
一方、ステップS10の判定結果が肯定判定である場合、CPU60は、後輪RR,RLに対してパーキングブレーキPKBから制動力が付与されているものと判断し、各車輪速度センサSE3〜SE6から受信した信号に基づき、各車輪FR,FL,RR,RLの車輪速度VWをそれぞれ検出する(ステップS11)。この点で、本実施形態では、CPU60及び車輪速度センサSE3〜SE6が、車輪速度検出手段として機能する。続いて、CPU60は、ステップS11にて検出した後輪RR,RLの車輪速度VWが「0(零)」であるか否かを判定する(ステップS12)。すなわち、CPU60は、後輪RR,RLに対してパーキングブレーキPKBから制動力が付与されることにより、後輪RR,RLがロック状態になっているか否かを判定する。そして、ステップS12の判定結果が否定判定(後輪RR,RLの車輪速度VW≠「0(零)」)である場合、CPU60は、後輪RR,RLがロック状態ではないと判断し、停止保持制御判定処理ルーチンを終了する。
【0046】
一方、ステップS12の判定結果が肯定判定(後輪RR,RLの車輪速度VW=「0(零)」)である場合、CPU60は、後輪RR,RLがロック状態であると判断し、ステップS11にて検出した前輪(第2の車輪)FR,FLの車輪速度VWの絶対値が予め設定された閾値(例えば「3」)KVWよりも大きいか否かを判定する(ステップS13)。この点で、本実施形態では、CPU60が、車輪速度判定手段としても機能する。なお、閾値KVWは、後述する停止保持制御処理を実行の有無を判定するための値であり、実験やシミュレーションなどによって予め設定される。
【0047】
そして、ステップS13の判定結果が否定判定(前輪FR,FLの車輪速度VWの絶対値≦閾値KVW)の場合、CPU60は、停止保持制御判定処理ルーチンを終了する。一方、ステップS13の判定結果が肯定判定(前輪FR,FLの車輪速度VWの絶対値>閾値KVW)の場合、CPU60は、停止保持制御処理(図4に詳述する。)を実行すると共に、図示しない停止保持制御処理フラグを「ON」にセットする。この停止保持制御処理フラグは、停止保持制御処理が実行されているか否かを判定するためのフラグであり、実行中の場合には「ON」にセットされる一方、非実行中の場合には「OFF」にセットされる。その後、CPU60は、停止保持制御判定処理ルーチンを終了する。
【0048】
次に図4に示す停止保持制御処理ルーチン(停止保持制御処理)について説明する。
さて、停止保持制御処理ルーチンにおいて、CPU60は、前輪FR,FLに対する制動力を増加させるために、前輪FR,FL用のホイールシリンダ36a,36b内のブレーキ液圧BPを増圧させる(ステップS20)。すなわち、CPU60は、上述したステップS12,13が共に肯定判定である場合に、前輪FR,FLに対しても制動力が付与されるように各車輪FR,FL,RR,RLのうち少なくとも前輪FR,FLに制動力を付与可能なホイールシリンダ36a,36bの内部のブレーキ液圧BPを制御する。
【0049】
具体的には、CPU60は、各液圧回路33,34上の各電磁弁42〜49のうち左後輪用経路33b上の電磁弁43及び右後輪用経路34b上の電磁弁47のみを通電状態とし、それ以外の電磁弁42,44〜46,48,49を非通電状態とする。また、CPU60は、モータMを駆動させると共に、比例電磁弁50,54を通電状態にすることにより比例電磁弁50,54を閉弁状態にする。
【0050】
続いて、CPU60は、各車輪速度センサSE3,SE4から受信した信号に基づき、前輪FR,FLの車輪速度VWをそれぞれ検出する(ステップS21)。そして、CPU60は、ステップS21にて検出した前輪FR,FLの車輪速度VWが「0(零)」であるか否かを判定する(ステップS22)。すなわち、CPU60は、ステップS21にて検出した前輪FR,FLの車輪速度VWの絶対値が閾値KVW以下の値である「0(零)」になったか否かを判定する。そして、ステップS22の判定結果が否定判定(前輪FR,FLの車輪速度VW≠「0(零)」)である場合、CPU60は、ステップS22の判定結果が肯定判定となるまで、ステップS21,S22を繰り返し実行する。
【0051】
一方、ステップS22の判定結果が肯定判定(前輪FR,FLの車輪速度VW=「0(零)」)である場合、CPU60は、前輪FR,FL用のホイールシリンダ36a,36b内のブレーキ液圧BPの増圧を停止させ、そのブレーキ液圧BPを保圧させる(ステップS23)。具体的には、CPU60は、モータMの駆動を停止させると共に、右前輪用経路33a上の電磁弁42及び左前輪用経路34a上の電磁弁46を通電状態にする。また、CPU60は、左後輪用経路33b上の電磁弁43及び右後輪用経路34b上の電磁弁47を非通電状態とすると共に、比例電磁弁50,54を非通電状態にすることにより比例電磁弁50,54を開弁状態にする。
【0052】
その後、CPU60は、停止保持制御処理ルーチンを終了する。
次に、図5に示す停止保持制御終了判定処理ルーチンについて説明する。
さて、CPU60は、所定周期毎に停止保持制御判定処理ルーチンを実行する。そして、この停止保持制御判定処理ルーチンにおいて、CPU60は、停止保持制御処理が実行中であるか否かを判定する(ステップS30)。すなわち、CPU60は、停止保持制御処理フラグが「ON」にセットされているか否かを判定する。そして、ステップS30の判定結果が否定判定(停止保持制御処理フラグ=「OFF」)である場合、CPU60は、停止保持制御判定処理ルーチンを終了する。
【0053】
一方、ステップS30の判定結果が肯定判定(停止保持制御処理フラグ=「ON」)である場合、CPU60は、パーキングレバー28が操作(「ON」操作)された状態であるか否かを判定する(ステップS31)。すなわち、CPU60は、パーキングブレーキ操作検出センサSE7から受信した信号に基づき、パーキングブレーキPKBにより後輪RR,RLに対して制動力が付与されているか否かを判定する。この点で、本実施形態では、CPU60が、制動力付与判定手段としても機能する。そして、ステップS31の判定結果が否定判定である場合、CPU60は、後輪RR,RLに対してパーキングブレーキPKBから制動力が既に付与されていないものと判断し、その処理を後述するステップS33に移行する。
【0054】
一方、ステップS31の判定結果が肯定判定である場合、CPU60は、後輪RR,RLに対してパーキングブレーキPKBから制動力が未だ付与されているものと判断し、アクセルぺダル17が踏込み操作されているか否かを判定する(ステップS32)。すなわち、CPU60は、アクセル開度センサSE1からの信号に基づき検出されたアクセルぺダル17の開度が「0(零)」でないか否かを判定する。この点で、本実施形態では、CPU60が、アクセルぺダル操作判定手段としても機能する。そして、ステップS32の判定結果が否定判定である場合、CPU60は、アクセルぺダル17が踏込み操作されていないものと判断し、停止保持制御判定処理ルーチンを終了する。一方、ステップS32の判定結果が肯定判定である場合、CPU60は、アクセルぺダル17が踏込み操作されたものと判断し、その処理を後述するステップS33に移行する。
【0055】
ステップS33において、CPU60は、前輪FR,FL用のホイールシリンダ36a,36bからの前輪FR,FLに対する制動力の付与を停止させるために、ホイールシリンダ36a,36b内のブレーキ液圧BPを減圧させる。すなわち、CPU60は、後輪RR,RLに対するパーキングブレーキPKBからの制動力の付与が停止されること、及びアクセルぺダル17が踏込み操作されることのうち少なくとも一方が実行された場合、前輪FR,FLに対するホイールシリンダ36a,36bからの制動力の付与を停止させる。
【0056】
具体的には、CPU60は、右前輪用経路33a上の電磁弁44及び左前輪用経路34a上の電磁弁48を通電状態とすることにより、ホイールシリンダ36a,36b内のブレーキ液圧BPを減圧させる。そして、CPU60は、ホイールシリンダ36a,36b内のブレーキ液圧BPが充分に減圧されたと判断した場合、右前輪用経路33a上の電磁弁42,44及び左前輪用経路34a上の電磁弁46,48を非通電状態とし、その後、停止保持制御判定処理ルーチンを終了する。
【0057】
次に、本実施形態における車両の停止保持方法について図6及び図7に基づき以下説明する。
さて、車両が斜度を有する路面(斜面)を斜面上側に向けて走行している際に、搭乗者がブレーキペダル37を踏込んで車両を停止させ、パーキングレバー28を「ON」操作すると、図6に示すように、車両Cの後輪RR,RLには、パーキングブレーキPKBから制動力BP1が付与される。その後、ブレーキペダル37の踏込み操作が解消されると、前輪FR,FLには制動力が付与されない状態となり、車両Cは、斜面下側に向けて移動しようとする力(所謂ずり下がろうとする力)に対向して、後輪RR,RLに付与されている制動力BP1のみで停止状態を維持しようとする。
【0058】
ところで、斜面のμ値が比較的低い場合、車両Cの斜面下側に移動しようとする力は、μ値が比較的高い場合に比して大きくなる。そして、(車両Cの斜面下側に移動しようとする力)>(後輪RR,RLに付与されるパーキングブレーキPKBからの制動力BP1)となった場合には、車両Cの斜面下側への予期せぬ移動が発生する。すなわち、後輪RR,RLと斜面との間で発生する摩擦力よりも車両Cの斜面下側に移動しようとする力の方が大きい場合には、車両Cが斜面下側に移動しようとする。
【0059】
ところが、本実施形態では、パーキングブレーキPKBからの制動力BP1によって後輪RR,RLがロック状態にある場合において、前輪FR,FLの車輪速度VWの絶対値が閾値KVWよりも大きくなったときには、前輪FR,FL用のホイールシリンダ36a,36b内のブレーキ液圧BPが増圧される。すなわち、図7に示すように、前輪FR,FLには、ホイールシリンダ36a,36b内のブレーキ液圧BPの増圧分に対応する制動力BP2がホイールシリンダ36a,36bから付与される。そのため、車両Cには、全ての車輪FR,FL,RR,RLに対して制動力BP1,BP2が付与されることになり、その結果、車両C全体の制動力が、後輪RR,RLのみに制動力が付与される場合に比して大きくなる。したがって、車両Cの停止状態が良好に維持される。
【0060】
したがって、本実施形態では、以下に示す効果を得ることができる。
(1)パーキングブレーキ(第1制動手段)PKBから制動力BP1が付与された後輪(第1の車輪)RR,RLがロックした状態にある場合に、前輪(第2の車輪)FR,FLの車輪速度VWの絶対値が閾値KVWよりも大きくなると、ホイールシリンダ(第2制動手段)36a,36bから前輪FR,FLに対して制動力BP2が付与される。そのため、全ての車輪FR,FL,RR,RLに対して制動力BP1,BP2が付与された状態になる結果、制動力BP1が後輪RR,RLのみにしか付与されない従来の場合に比して、車両C全体の制動力の増加量が増大する。したがって、搭乗者の操作に基づき車両Cが斜面上に停止した際において該車両Cの予期せぬ移動の発生を抑制することができる。
【0061】
(2)前輪(第2の車輪)FR,FLには、その車輪速度VWの絶対値が「0(零)」となるように前輪FR,FL用のホイールシリンダ(第2制動手段)36a,36bから制動力BP1が付与される。そのため、車両Cの予期せぬ移動の発生をより良好に抑制できる。
【0062】
(3)アクセルぺダル17の踏込み操作及び後輪(第1の車輪)RR,RLに対するパーキングブレーキ(第1制動手段)PKBからの制動力BP1の付与の停止のうち少なくとも一方が検知された場合に、前輪(第2の車輪)FR,FLに対するホイールシリンダ(第2制動手段)36a,36bからの制動力BP2の付与を停止させる。そのため、その後に搭乗者が車両Cを操作する際に、各車輪FR,FL,RR,RLのうち少なくとも前輪FR,FLに対するホイールシリンダ36a,36bからの制動力BP2に基づき搭乗者が感じる引きずり感を低減させることができる。
【0063】
(4)停止保持制御処理において、パーキングブレーキPKBによって制動力BP1が付与されている後輪RR,RLには、ホイールシリンダ36c,36dからの制動力が付与されないようになっている。そのため、停止保持制御処理において後輪RR,RLに対してホイールシリンダ36c,36dから制動力を付与する場合に比して、ホイールシリンダ36c、36dの劣化の進行を抑制できる。
(第2の実施形態)
次に、本発明の第2の実施形態を図8及び図9に従って説明する。なお、第2の実施形態は、ROMに記憶されている内容、及び停止保持制御処理(停止保持制御処理ルーチン)の処理内容が第1の実施形態と異なっている。したがって、以下の説明においては、第1の実施形態と相違する部分について主に説明するものとし、第1の実施形態と同一又は相当する部材構成には同一符号を付して重複説明を省略するものとする。
【0064】
本実施形態における車両の停止保持装置11は、電子制御装置16を備えている。この電子制御装置16は、CPU60、ROM61、及びRAM62などを備えたデジタルコンピュータと、各装置を駆動させるための駆動回路(図示略)とを主体として構成されている。ROM61には、液圧制御装置35(モータM、各電磁弁42〜49,53,57及び比例電磁弁50,54の駆動)を制御するための制御プログラム、前輪FR,FL用のホイールシリンダ36a,36b内のブレーキ液圧BPを設定するためのマップ(図8参照)及び閾値KVWなどが記憶されている。また、RAM62には、車両の停止保持装置11の駆動中に適宜書き換えられる各種の情報が記憶されるようになっている。
【0065】
次に、ROM61に記憶されるマップについて図8に基づき説明する。
図8に示すマップは、車両Cが停止する路面の斜度grと、停止保持制御処理を実行する際における前輪FR,FL用のホイールシリンダ36a,36b内のブレーキ液圧BPとの関係を示すものである。このブレーキ液圧BPは、路面の斜度grが大きくなる程、高くなるように設定されている。すなわち、ブレーキ液圧BPは、路面の斜度grの大きさに比例して変化している。そのため、路面の斜度grが大きくなる程、前輪FR,FLに付与される制動力BP2が大きくなるようになっている。したがって、本実施形態では、ROM61が、前輪(第2の車輪)FR,FLに対する制動力BP2を路面の斜度grに対応付けた状態で記憶する記憶手段として機能するようになっている。
【0066】
次に、本実施形態のCPU60が実行する各制御処理ルーチンのうち停止保持制御処理ルーチンについて図9に基づき以下説明する。
さて、停止保持制御処理ルーチンにおいて、CPU60は、車体加速度センサSE8から受信した信号に基づき路面の斜度grを検出する(ステップS40)。この点で、本実施形態では、CPU60及び車体加速度センサSE8が、路面斜度検出手段として機能する。続いて、CPU60は、ステップS40にて検出した路面の斜度grに対応するホイールシリンダ36a,36b内のブレーキ液圧BPを、図3に示すマップに基づき設定する(ステップS41)。すなわち、CPU60は、検出された路面の斜度grに基づき、前輪FR,FL用のホイールシリンダ36a,36dから前輪FR,FLに対して付与する制動力BP2を設定する。この点で、本実施形態では、CPU60が、制動力設定手段としても機能する。
【0067】
そして、CPU60は、前輪FR,FL用のホイールシリンダ36a,36d内のブレーキ液圧を、ステップS42にて設定したブレーキ液圧BPまで増圧させ、その増圧したブレーキ液圧BPを保圧させる(ステップS42)。その後、CPU60は、停止保持制御処理ルーチンを終了する。このようにホイールシリンダ36a,36b内のブレーキ液圧BPを増圧させた場合、前輪FR,FLに対してホイールシリンダ36a,36bから制動力BP2が付与される。そのため、全ての車輪FR,FL,RR,RLに対して制動力BP1,BP2が付与されることになる。
【0068】
本実施形態では、上記第1の実施形態の効果(1)(3)(4)に加え、さらに以下に示す効果をも得ることができる。
(5)前輪(第2の車輪)FR,FLには、路面の斜度grに応じた制動力BP2がホイールシリンダ(第2制動手段)36a,36bから付与される。すなわち、前輪FR,FLに対して必要以上に制動力BP2が付与されることを規制することにより、ホイールシリンダ36a,36bの劣化の進行を遅延させることができる。
【0069】
(6)路面の斜度grに対応したホイールシリンダ36a,36b内のブレーキ液圧BP(第2制動手段からの制動力BP2)をROM(記憶手段)61から読み出すことにより、前輪FR,FLに対してホイールシリンダ36a,36bから付与される制動力BP2が設定される。すなわち、ホイールシリンダ36a,36bが前輪FR,FLに対して付与する制動力BP2を設定するために、路面の斜度grを変数とする関係式を用いて演算処理を行う必要もない。したがって、CPU(制動力設定手段)60の処理負担を良好に低減することができる。
(第3の実施形態)
次に、本発明の第3の実施形態を図10及び図11に従って説明する。なお、第3の実施形態は、停止保持装置が搭載されている車両が第1の実施形態とは異なっている。したがって、以下の説明においては、第1の実施形態と相違する部分について主に説明するものとし、第1の実施形態と同一又は相当する部材構成には同一符号を付して重複説明を省略するものとする。
【0070】
図10及び図11に示すように、本実施形態における停止保持装置11は、エンジン12からの駆動力を各車輪FR,FL,RR,RLのうち少なくとも後輪RR、RLに伝達自在なセンターディファレンシャル70を備えた4輪駆動の車両(いわゆる4輪駆動車)Cに搭載されている。このセンターディファレンシャル70は、前輪FR,FL側のディファレンシャルギヤ23にシャフト71を介して連結されると共に、後輪RR,RL側のディファレンシャルギヤ23Aにシャフト72を介して連結されている。
【0071】
また、センターディファレンシャル70は、複数(本実施形態では2つ)のギヤ73,74から構成されており、図11に示すように、各ギヤ73,74が噛合状態にある場合には、後輪RR,RLに対してエンジン12からの駆動力が伝達されるようになっている。一方、図10に示すように、各ギヤ73,74が離間した状態にある場合には、後輪RR,RLに対してエンジン12からの駆動力が伝達されないようになっている。なお、センターディファレンシャル70は、例えば車両Cの旋回時において前輪FR,FLと後輪RR,RLとの回転速度に差が生じた場合に、この回転速度差を吸収する差動装置として機能するようになっている。
【0072】
次に、本実施形態のCPU60が実行する各制御処理ルーチンのうち停止保持制御処理ルーチンについて以下説明する。
さて、パーキングブレーキPKBから制動力BP1が付与された後輪RR,RLがロック状態にある場合において、前輪FR,FLの車輪速度VWの絶対値が閾値KVWよりも大きいと判定された場合、CPU60は、停止保持制御処理(停止保持制御処理ルーチン)を実行する。そして、停止保持制御処理ルーチンにおいて、CPU60は、センターディファレンシャル70の各ギヤ73,74を歯合状態にする(図11参照)。すなわち、後輪RR,RLと前輪FR,FLとの間を非連結状態から連結状態に切り替える。
【0073】
すると、前輪FR,FLには、パーキングブレーキPKBによって後輪RR.RLに対して付与されている制動力BP1がセンターディファレンシャル70を介して伝達される。その結果、前輪FR,FLに対してもパーキングブレーキPKBによって後輪RR.RLに対して付与されている制動力BP1と同等な制動力BP2が付与されることになる。そのため、全ての車輪FR,FL,RR,RLに対して制動力BP1,BP2が付与されることになり、車両C全体の制動力が、後輪RR,RLのみに制動力が付与された場合に比して大きくなる。このように、本実施形態では、センターディファレンシャル70が、後輪RR,RLに対して付与されている制動力BP1を前輪FR,FLに伝達自在な第2制動手段として機能する。
【0074】
本実施形態では、以下に示す効果を得ることができる。
(7)パーキングブレーキ(第1制動手段)PKBから制動力BP1が付与された後輪(第1の車輪)RR,RLがロックした状態にある場合に、前輪(第2の車輪)FR,FLの車輪速度VWの絶対値が閾値KVWよりも大きくなると、CPU60がセンターディファレンシャル(第2制動手段)70を駆動制御する。すなわち、各ギヤ73,74を歯合状態とさせて、後輪RR,RLと前輪FR,FLとの間を連結状態にする。その結果、パーキングブレーキPKBからの制動力BP1が前輪FR,FLにも伝達され、後輪RR,RLに付与されている制動力BP1と同等の制動力BP2が前輪FR,FLにも付与される。そのため、全ての車輪FR,FL,RR,RLに対して制動力BP1,BP2が付与されることになり、制動力が後輪RR,RLのみにしか付与されない従来の場合に比して、車両C全体の制動力の増加量が増大する。したがって、搭乗者の操作に基づき車両Cが斜面上に停止した際に該車両Cの予期せぬ移動の発生を抑制することができる。
【0075】
(8)本実施形態では、上述した第1及び第2の実施形態とは異なり第2制動手段としてホイールシリンダ36a,36bを使用することなく、センターディファレンシャル70を用いて、前輪FR,FLに制動力BP2を付与する。そのため、ホイールシリンダ36a,36bを第2制動手段として使用する場合に比して、ホイールシリンダ36a,36bの劣化の進行を抑制できる。
【0076】
なお、各実施形態は以下のような別の実施形態(別例)に変更してもよい。
・各実施形態において、トランスミッション22が自動変速機や無段変速機である場合において、トランスミッション22のシフトレンジがパーキングレンジであるときに、各車輪FR,FL,RR,RLのうち駆動輪である前輪FR,FLに対して制動力が付与されるようにしてもよい。そして、この際に、後輪RR,RLの車輪速度VWの絶対値が閾値KVWよりも大きくなった場合に、停止保持制御処理が実行されるようにしてもよい。すなわち、後輪RR,RL用のホイールシリンダ36c,36d内のブレーキ液圧BPを増圧させることにより、後輪RR,RLに対して制動力を付与することになる。この場合、トランスミッション22が第1制動手段として機能すると共に、後輪RR,RL用のホイールシリンダ36c,36dが第2制動手段として機能する。また、この場合、第1の車輪とは前輪FR,FLのことを示すと共に、第2の車輪とは後輪RR,RLのことを示すことになる。
【0077】
・各実施形態において、停止保持制御処理を停止させるための操作スイッチを、アクセルぺダル17やパーキングレバー28とは別途に設けてもよい。
・第2の実施形態において、ROM61には、図8に示すマップを記憶させるのではなく、路面の斜度grと前輪FR,FL用のホイールシリンダ36a,36b内のブレーキ液圧BPとの関係式を記憶させ、この関係式に基づきブレーキ液圧BPを設定するようにしてもよい。
【0078】
・第1の実施形態において、停止保持制御処理では、前輪FR,FL用のホイールシリンダ36a,36b内のブレーキ液圧BPを、制動力付与機構15により前輪FR,FLに対して最も大きな制動力を付与可能な場合の液圧回路33,34(ホイールシリンダ36a,36b)内のブレーキ液圧に設定するようにしてもよい。
【0079】
・第1及び第2の実施形態において、停止保持制御処理では、全ての車輪FR,FL,RR,FLに対してホイールシリンダ36a〜36dから制動力を付与するようにしてもよい。この場合、パーキングブレーキPKBが後輪RR,RLに付与する制動力BP1とは制動方式が異なる制動力BP2が前輪FR,FLに付与される。したがって、かかるホイールシリンダ36a〜36dからの制動方式の異なる制動力を前輪FR,FLに加えて後輪RR,RLにも付与するようにすれば、より一層、車両C全体の制動力を増加させることができるようになる。
【0080】
・各実施形態において、ブレーキペダル37は、搭乗者の足で操作するいわゆるフットペダル式のブレーキペダルではなく、手動で操作可能なブレーキペダルであってもよい。
・同様に、アクセルぺダル17は、搭乗者の足で操作するいわゆるフットペダル式のアクセルぺダルではなく、手動で操作可能なアクセルぺダルであってもよい。
【0081】
・第1及び第2実施形態において、前輪駆動車に搭載された車両の停止保持装置11ではなく、後輪駆動車に搭載される車両の停止保持装置に具体化してもよい。
・各実施形態において、第1液圧回路33には右前輪FR用のホイールシリンダ36aと左前輪FL用のホイールシリンダ36bとが接続されると共に、第2液圧回路34には右後輪RR用のホイールシリンダ36cと左後輪RL用のホイールシリンダ36dとが接続されるような回路構成としてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0082】
【図1】第1の実施形態における車両の停止保持装置のブロック図。
【図2】第1の実施形態における制動力付与機構のブロック図。
【図3】第1の実施形態における停止保持制御判定処理ルーチンを示すフローチャート。
【図4】第1の実施形態における停止保持制御処理ルーチンを示すフローチャート。
【図5】第1の実施形態における停止保持制御終了判定処理ルーチンを示すフローチャート。
【図6】第1の実施形態においてパーキングブレーキから後輪に対して制動力が付与された状態を示す模式図。
【図7】第1の実施形態において全ての車輪に制動力が付与された状態を示す模式図。
【図8】第2の実施形態において路面の斜度と前輪用のホイールシリンダ内のブレーキ液圧との関係を示すマップ。
【図9】第2の実施形態における停止保持制御処理ルーチンを示すフローチャート。
【図10】第3の実施形態においてパーキングブレーキから後輪に対して制動力が付与された状態を示す模式図。
【図11】第3の実施形態において全ての車輪に制動力が付与された状態を示す模式図。
【符号の説明】
【0083】
11…車両の停止保持装置、17…アクセルぺダル、36a,36b…ホイールシリンダ(第2制動手段)、60…CPU(車輪速度検出手段、車輪速度判定手段、制御手段、路面斜度検出手段、制動力設定手段、アクセルぺダル操作判定手段、制動力付与判定手段)、61…ROM(記憶手段)、70…センターディファレンシャル(第2制動手段)、BP1,BP2…制動力、C…車両、FR,FL…前輪(第2の車輪、駆動輪)、gr…路面の斜度、KVW…閾値、PKB…パーキングブレーキ、RR,RL…後輪(第1の車輪)、SE3〜SE6…車輪速度センサ(車輪速度検出手段)、SE8…車体加速度センサ(路面斜度検出手段)、VW…車輪速度。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両(C)の各車輪(FR,FL,RR,RL)の車輪速度(VW)を検出する車輪速度検出手段(SE3,SE4,SE5,SE6)と、
前記各車輪(FR,FL,RR,RL)のうち一部の車輪を構成する第1の車輪(RR,RL)に制動力(BP1)を付与可能な第1制動手段(PKB)によって前記第1の車輪(RR,RL)に制動力(BP1)が付与されたことにより、該第1の車輪(RR,RL)がロック状態にある場合において、前記車輪速度検出手段(SE3,SE4,SE5,SE6)により検出された前記各車輪(FR,FL,RR,RL)のうち前記第1の車輪(RR,RL)以外の第2の車輪(FR,FL)の車輪速度(VW)の絶対値が予め設定された閾値(KVW)よりも大きいか否かを判定する車輪速度判定手段(60)と、
該車輪速度判定手段(60)による判定結果が肯定判定である場合に、前記第2の車輪(FR,FL)に対しても制動力(BP2)が付与されるように前記各車輪(FR,FL,RR,RL)のうち少なくとも前記第2の車輪(FR,FL)に制動力(BP2)を付与可能な第2制動手段(36a,36b)を制御する制御手段(60)とを備えた車両の停止保持装置。
【請求項2】
前記第2制動手段(36a,36b)は、前記第1制動手段(PKB)が前記第1の車輪(RR,RL)に付与する制動力(BP1)とは制動方式が異なる制動力(BP2)を前記各車輪(FR,FL,RR,RL)のうち少なくとも前記第2の車輪(FR,FL)に対して付与する請求項1に記載の車両の停止保持装置。
【請求項3】
前記制御手段(60)は、前記車輪速度判定手段(60)による判定結果が肯定判定である場合に、前記車輪速度検出手段(SE3,SE4,SE5,SE6)により検出された前記第2の車輪(FR,FL)の車輪速度(VW)の絶対値が前記閾値(KVW)以下となるように前記第2制動手段(36a,36b)を制御する請求項1又は請求項2に記載の車両の停止保持装置。
【請求項4】
前記車両(C)が停止した路面の斜度(gr)を検出する路面斜度検出手段(60,SE8)と、該路面斜度検出手段(60,SE8)により検出された路面の斜度(gr)に応じて前記第2の車輪(FR,FL)に対する制動力(BP2)を設定する制動力設定手段(60)とをさらに備え、
前記制御手段(60)は、前記車輪速度判定手段(60)による判定結果が肯定判定である場合に、前記制動力設定手段(60)によって設定された制動力(BP2)が前記第2の車輪(FR,FL)に付与されるように前記第2制動手段(36a,36b)を制御する請求項1又は請求項2に記載の車両の停止保持装置。
【請求項5】
前記第2の車輪(FR,FL)に対する制動力(BP2)を前記路面の斜度(gr)に対応付けた状態で記憶する記憶手段(61)をさらに備え、
前記制動力設定手段(60)は、前記路面斜度検出手段(60,SE8)により検出された路面の斜度(gr)に対応する制動力(BP2)を前記記憶手段(61)から読み出す請求項4に記載の車両の停止保持装置。
【請求項6】
前記各車輪(FR,FL,RR,RL)のうち駆動輪(FR,FL)に対して駆動力を付与するために操作されるアクセルぺダル(17)が操作されたか否かを判定するアクセルぺダル操作判定手段(60)と、前記第1の車輪(RR,RL)に対して前記第1制動手段(PKB)からの制動力(BP1)が付与されていないか否かを判定する制動力付与判定手段(60)とをさらに備え、
前記制御手段(60)は、前記アクセルぺダル操作判定手段(60)による判定結果及び前記制動力付与判定手段(60)による判定結果のうち少なくとも一方の判定結果が否定判定から肯定判定に切り換わった場合に、前記第2の車輪(FR,FL)に対する制動力(BP2)の付与を停止させるように前記第2制動手段(36a,36b)を制御する請求項1〜請求項5のうち何れか一項に記載の車両の停止保持装置。
【請求項7】
車両(C)の各車輪(FR,FL,RR,RL)の車輪速度(VW)を検出する車輪速度検出手段(SE3,SE4,SE5,SE6)と、
前記各車輪(FR,FL,RR,RL)のうち一部の車輪を構成する第1の車輪(RR,RL)に制動力(BP1)を付与可能な第1制動手段(PKB)によって前記第1の車輪(RR,RL)に制動力(BP1)が付与されたことにより、該第1の車輪(RR,RL)がロック状態にある場合において、前記車輪速度検出手段(SE3,SE4,SE5,SE6)により検出された前記各車輪(FR,FL,RR,RL)のうち前記第1の車輪(RR,RL)以外の第2の車輪(FR,FL)の車輪速度(VW)の絶対値が予め設定された閾値(KVW)よりも大きいか否かを判定する車輪速度判定手段(60)と、
該車輪速度判定手段(60)による判定結果が肯定判定である場合に、前記第2の車輪(FR,FL)に対しても前記第1制動手段(PKB)が前記第1の車輪(RR,RL)に付与している制動力(BP1)と同等の制動力(BP2)が付与されるように、前記第1の車輪(RR,RL)と前記第2の車輪(FR,FL)との間を連結状態又は非連結状態に切り替え可能に構成された第2制動手段(70)を、該第2制動手段(70)が前記第1の車輪(RR,RL)と前記第2の車輪(FR,FL)との間を連結状態とする切り替え態様となるように制御する制御手段(60)とを備えた車両の停止保持装置。
【請求項8】
車両(C)の各車輪(FR,FL,RR,RL)のうち一部の車輪を構成する第1の車輪(RR,RL)に制動力(BP1)が付与されたことにより、該第1の車輪(RR,RL)がロック状態にある場合において、前記各車輪(FR,FL,RR,RL)のうち前記第1の車輪(RR,RL)以外の第2の車輪(FR,FL)の車輪速度(VW)の絶対値が予め設定された閾値(KVW)よりも大きいか否かを判定し、該判定結果が肯定判定である場合に、前記第2の車輪(FR,FL)に対しても制動力(BP2)を付与するようにした車両の停止保持方法。
【請求項9】
前記判定結果が肯定判定である場合に、前記各車輪(FR,FL,RR,RL)のうち少なくとも前記第2の車輪(FR,FL)に対して、前記第1の車輪(RR,RL)に付与されている制動力(BP1)とは制動方式が異なる制動力(BP2)を付与する請求項8に記載の車両の停止保持方法。
【請求項10】
車両(C)の各車輪(FR,FL,RR,RL)のうち一部の車輪を構成する第1の車輪(RR,RL)に制動力(BP1)が付与されたことにより、該第1の車輪(RR,RL)がロック状態にある場合において、前記各車輪(FR,FL,RR,RL)のうち前記第1の車輪(RR,RL)以外の第2の車輪(FR,FL)の車輪速度(VW)の絶対値が予め設定された閾値(KVW)よりも大きいか否かを判定し、該判定結果が肯定判定である場合に、前記第1の車輪(RR,RL)に対して付与されている制動力(BP1)を前記第2の車輪(FR,FL)に伝達することにより、前記制動力(BP1)と同等の制動力(BP2)を前記第2の車輪(FR,FL)に対して付与するようにした車両の停止保持方法。
【請求項1】
車両(C)の各車輪(FR,FL,RR,RL)の車輪速度(VW)を検出する車輪速度検出手段(SE3,SE4,SE5,SE6)と、
前記各車輪(FR,FL,RR,RL)のうち一部の車輪を構成する第1の車輪(RR,RL)に制動力(BP1)を付与可能な第1制動手段(PKB)によって前記第1の車輪(RR,RL)に制動力(BP1)が付与されたことにより、該第1の車輪(RR,RL)がロック状態にある場合において、前記車輪速度検出手段(SE3,SE4,SE5,SE6)により検出された前記各車輪(FR,FL,RR,RL)のうち前記第1の車輪(RR,RL)以外の第2の車輪(FR,FL)の車輪速度(VW)の絶対値が予め設定された閾値(KVW)よりも大きいか否かを判定する車輪速度判定手段(60)と、
該車輪速度判定手段(60)による判定結果が肯定判定である場合に、前記第2の車輪(FR,FL)に対しても制動力(BP2)が付与されるように前記各車輪(FR,FL,RR,RL)のうち少なくとも前記第2の車輪(FR,FL)に制動力(BP2)を付与可能な第2制動手段(36a,36b)を制御する制御手段(60)とを備えた車両の停止保持装置。
【請求項2】
前記第2制動手段(36a,36b)は、前記第1制動手段(PKB)が前記第1の車輪(RR,RL)に付与する制動力(BP1)とは制動方式が異なる制動力(BP2)を前記各車輪(FR,FL,RR,RL)のうち少なくとも前記第2の車輪(FR,FL)に対して付与する請求項1に記載の車両の停止保持装置。
【請求項3】
前記制御手段(60)は、前記車輪速度判定手段(60)による判定結果が肯定判定である場合に、前記車輪速度検出手段(SE3,SE4,SE5,SE6)により検出された前記第2の車輪(FR,FL)の車輪速度(VW)の絶対値が前記閾値(KVW)以下となるように前記第2制動手段(36a,36b)を制御する請求項1又は請求項2に記載の車両の停止保持装置。
【請求項4】
前記車両(C)が停止した路面の斜度(gr)を検出する路面斜度検出手段(60,SE8)と、該路面斜度検出手段(60,SE8)により検出された路面の斜度(gr)に応じて前記第2の車輪(FR,FL)に対する制動力(BP2)を設定する制動力設定手段(60)とをさらに備え、
前記制御手段(60)は、前記車輪速度判定手段(60)による判定結果が肯定判定である場合に、前記制動力設定手段(60)によって設定された制動力(BP2)が前記第2の車輪(FR,FL)に付与されるように前記第2制動手段(36a,36b)を制御する請求項1又は請求項2に記載の車両の停止保持装置。
【請求項5】
前記第2の車輪(FR,FL)に対する制動力(BP2)を前記路面の斜度(gr)に対応付けた状態で記憶する記憶手段(61)をさらに備え、
前記制動力設定手段(60)は、前記路面斜度検出手段(60,SE8)により検出された路面の斜度(gr)に対応する制動力(BP2)を前記記憶手段(61)から読み出す請求項4に記載の車両の停止保持装置。
【請求項6】
前記各車輪(FR,FL,RR,RL)のうち駆動輪(FR,FL)に対して駆動力を付与するために操作されるアクセルぺダル(17)が操作されたか否かを判定するアクセルぺダル操作判定手段(60)と、前記第1の車輪(RR,RL)に対して前記第1制動手段(PKB)からの制動力(BP1)が付与されていないか否かを判定する制動力付与判定手段(60)とをさらに備え、
前記制御手段(60)は、前記アクセルぺダル操作判定手段(60)による判定結果及び前記制動力付与判定手段(60)による判定結果のうち少なくとも一方の判定結果が否定判定から肯定判定に切り換わった場合に、前記第2の車輪(FR,FL)に対する制動力(BP2)の付与を停止させるように前記第2制動手段(36a,36b)を制御する請求項1〜請求項5のうち何れか一項に記載の車両の停止保持装置。
【請求項7】
車両(C)の各車輪(FR,FL,RR,RL)の車輪速度(VW)を検出する車輪速度検出手段(SE3,SE4,SE5,SE6)と、
前記各車輪(FR,FL,RR,RL)のうち一部の車輪を構成する第1の車輪(RR,RL)に制動力(BP1)を付与可能な第1制動手段(PKB)によって前記第1の車輪(RR,RL)に制動力(BP1)が付与されたことにより、該第1の車輪(RR,RL)がロック状態にある場合において、前記車輪速度検出手段(SE3,SE4,SE5,SE6)により検出された前記各車輪(FR,FL,RR,RL)のうち前記第1の車輪(RR,RL)以外の第2の車輪(FR,FL)の車輪速度(VW)の絶対値が予め設定された閾値(KVW)よりも大きいか否かを判定する車輪速度判定手段(60)と、
該車輪速度判定手段(60)による判定結果が肯定判定である場合に、前記第2の車輪(FR,FL)に対しても前記第1制動手段(PKB)が前記第1の車輪(RR,RL)に付与している制動力(BP1)と同等の制動力(BP2)が付与されるように、前記第1の車輪(RR,RL)と前記第2の車輪(FR,FL)との間を連結状態又は非連結状態に切り替え可能に構成された第2制動手段(70)を、該第2制動手段(70)が前記第1の車輪(RR,RL)と前記第2の車輪(FR,FL)との間を連結状態とする切り替え態様となるように制御する制御手段(60)とを備えた車両の停止保持装置。
【請求項8】
車両(C)の各車輪(FR,FL,RR,RL)のうち一部の車輪を構成する第1の車輪(RR,RL)に制動力(BP1)が付与されたことにより、該第1の車輪(RR,RL)がロック状態にある場合において、前記各車輪(FR,FL,RR,RL)のうち前記第1の車輪(RR,RL)以外の第2の車輪(FR,FL)の車輪速度(VW)の絶対値が予め設定された閾値(KVW)よりも大きいか否かを判定し、該判定結果が肯定判定である場合に、前記第2の車輪(FR,FL)に対しても制動力(BP2)を付与するようにした車両の停止保持方法。
【請求項9】
前記判定結果が肯定判定である場合に、前記各車輪(FR,FL,RR,RL)のうち少なくとも前記第2の車輪(FR,FL)に対して、前記第1の車輪(RR,RL)に付与されている制動力(BP1)とは制動方式が異なる制動力(BP2)を付与する請求項8に記載の車両の停止保持方法。
【請求項10】
車両(C)の各車輪(FR,FL,RR,RL)のうち一部の車輪を構成する第1の車輪(RR,RL)に制動力(BP1)が付与されたことにより、該第1の車輪(RR,RL)がロック状態にある場合において、前記各車輪(FR,FL,RR,RL)のうち前記第1の車輪(RR,RL)以外の第2の車輪(FR,FL)の車輪速度(VW)の絶対値が予め設定された閾値(KVW)よりも大きいか否かを判定し、該判定結果が肯定判定である場合に、前記第1の車輪(RR,RL)に対して付与されている制動力(BP1)を前記第2の車輪(FR,FL)に伝達することにより、前記制動力(BP1)と同等の制動力(BP2)を前記第2の車輪(FR,FL)に対して付与するようにした車両の停止保持方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【公開番号】特開2007−112391(P2007−112391A)
【公開日】平成19年5月10日(2007.5.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−308863(P2005−308863)
【出願日】平成17年10月24日(2005.10.24)
【出願人】(301065892)株式会社アドヴィックス (1,291)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成19年5月10日(2007.5.10)
【国際特許分類】
【出願日】平成17年10月24日(2005.10.24)
【出願人】(301065892)株式会社アドヴィックス (1,291)
【Fターム(参考)】
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