説明

車両の制御装置

【課題】ヒータ要求による冷却水の循環開始後において、短期間で冷却水温度を安定させることで、ヒータブロアの作動開始遅延時間を短縮することが可能な車両の制御装置を提供する。
【解決手段】車両の制御装置は、ハイブリッド車両に搭載され、電動ウォーターポンプと、ヒータコアと、ヒータブロアと、制御手段と、を備える。電動ウォーターポンプは、内燃機関における冷却水を循環させる。ヒータコアは、冷却水と空気との熱交換を行う。ヒータブロアは、ヒータコアにより冷却水と熱交換された空気を車室へ流動させる。制御手段は、乗員操作に基づく暖房要求時に、電動ウォーターポンプの作動をさせるとともに、電動ウォーターポンプの作動から所定時間遅延させてヒータブロアを作動させる。さらに、制御手段は、暖房要求時から前記ヒータブロアの作動開始までの期間、電動ウォーターポンプの出力を一時的に増加させ、かつ、ヒータブロアの作動後は出力を減少させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、内燃機関の冷却水を利用して車両の暖房を行う技術分野に関する。
【背景技術】
【0002】
この種の技術が、例えば特許文献1に提案されている。特許文献1には、電動ウォーターポンプ(以下では、「電動WP」と表記する。)の停止中のヒータ要求時において、電動WPの作動後の所定期間はヒータブロアを停止させる技術が提案されている。具体的には、この技術では、推定された冷却水温度の変化率が所定範囲内となるまでの間、ヒータブロアを停止させている。こうすることで、ヒータコアから流れ出る空気の温度が変動することにより乗員が不快になることを防止している。つまり、ヒータブロアの吹き出し温度が変化することで空調性能が悪化することを防止している。その他、本発明に関連のある技術が、特許文献2乃至特許文献5に提案されている。
【0003】
【特許文献1】特開2006−341660号公報
【特許文献2】特開平04−078716号公報
【特許文献3】特開2003−025826号公報
【特許文献4】特開平09−030237号公報
【特許文献5】特開2000−225838号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ヒータ要求時に電動WPを停止状態から作動させた場合、ヒータコア部分の冷却水温度が一旦下降してから上昇するといった変化をする場合がある。これは、冷却水の循環を停止していたことによる冷却水通路内での冷却水温度のばらつき等に起因する。このように冷却水温度が変化した際にヒータブロアから吹き出しを行った場合には、ヒータブロアから温度の変動がある空気が車室内に送風され、乗員に不快感を与える可能性がある。
【0005】
ここで、上記した特許文献1に記載された技術では、電動WPの作動後の所定期間、ヒータブロアを停止させている。しかし、この技術では、ヒータブロア禁止中の電動WPの流量を最低に設定しているため、冷却水温度が安定するまでに時間を要するという問題があった。
【0006】
本発明は、上記のような課題を解決するためになされたものであり、ヒータ要求による冷却水の循環開始後において、短期間で冷却水温度を安定させることで、ヒータブロアの作動開始遅延時間を短縮することが可能な車両の制御装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の1つの観点では、内燃機関における冷却水を循環させる電動ウォーターポンプと、前記冷却水と空気との熱交換を行うヒータコアと、前記ヒータコアにより熱交換された空気を車室へ流動させるヒータブロアと、乗員操作に基づく暖房要求時に、前記電動ウォーターポンプの作動をさせるとともに、前記作動から所定時間遅延させて前記ヒータブロアを作動させる制御手段と、を備え、前記制御手段は、前記暖房要求時から前記ヒータブロアの作動開始までの期間、前記電動ウォーターポンプの出力を一時的に増加させ、かつ、前記ヒータブロアの作動後は前記出力を減少させることを特徴とする。
【0008】
上記の車両の制御装置は、電動ウォーターポンプと、ヒータコアと、ヒータブロアと、制御手段と、を備える。電動ウォーターポンプは、内燃機関における冷却水を循環させる。ヒータコアは、冷却水と空気との熱交換を行う。ヒータブロアは、ヒータコアにより冷却水と熱交換された空気を車室(キャビン)へ流動させる。制御手段は、例えばECU(Electronic Control Unit)であり、乗員操作に基づく暖房要求時に、電動ウォーターポンプの作動をさせるとともに、電動ウォーターポンプの作動から所定時間遅延させてヒータブロアを作動させる。さらに、制御手段は、暖房要求時から前記ヒータブロアの作動開始までの期間、電動ウォーターポンプの出力を一時的に増加させ、かつ、ヒータブロアの作動後は出力を減少させる。上述の所定時間は、例えば、電動ウォーターポンプの作動開始後から冷却水温度が安定するまでの時間に設定される。このようにすることで、車両の制御装置は、電動ウォーターポンプの作動に起因した冷却水温度の変動を早期に安定させることができ、ヒータブロアの作動開始の遅延を短縮することができる。
【0009】
上記の車両の制御装置の一態様では、前記暖房要求時から前記ヒータブロアの作動開始までの期間、前記電動ウォーターポンプの出力を一時的に増加させ、かつ、前記ヒータブロアの作動後は前記出力を減少させる。この態様では、車両の制御装置は、冷却水の攪拌を促進させるため、電動ウォーターポンプの出力を最大にする。これによって、車両の制御装置は、ヒータブロアの作動を早期に実行することが可能となる。
【0010】
上記の車両の制御装置の他の一態様では、前記制御手段は、乗員操作に基づく暖房要求がデフロスタ要求であった場合、前記電動ウォーターポンプの作動後遅延なく前記ヒータブロアを作動させる。この態様では、車両の制御装置は、デフロスタ要求があった場合、車両の安全性を最優先にし、ヒータブロアを作動させる。
【0011】
上記の車両の制御装置の他の一態様では、前記制御手段は、前記冷却水から検出される水温が所定温度以上の場合、前記電動ウォーターポンプの作動後遅延なく前記ヒータブロアを作動させる。所定温度は、例えば、ヒータブロアにより車室へ供給される空気の温度の上限値に設定される。この場合、冷却水の攪拌に起因して車室へ供給される空気の変動は殆ど生じないことが推定される。従って、車両の制御装置は、この場合には、不要にヒータブロアの作動開始を遅延させるのを防ぐことができる。
【0012】
上記の車両の制御装置の好適な例では、車両の制御装置は、ハイブリッド車両に搭載される。このようにすることで、車両の制御装置を本発明に好適に適用することが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
以下、図面を参照して本発明の好適な実施の形態について説明する。
【0014】
[車両の構成]
まず、本発明の車両の制御装置を適用したハイブリッド車両について説明する。
【0015】
図1は、ハイブリッド車両100の概略構成を示す図である。ハイブリッド車両100は、主に、エンジン1と、車軸102と、車輪103と、モータ(モータジェネレータ)MG1、MG2と、プラネタリギヤ104と、インバータ105と、バッテリ106と、ECU20と、を備える。以後、ハイブリッド車両100の各構成要素について説明する。なお、エンジン1とECU20については「システムの構成」の説明で述べる。
【0016】
車軸102は、エンジン1及びモータMG2の動力を車輪103に伝達する動力伝達系の一部である。車輪103は、ハイブリッド車両100の車輪であり、説明の簡略化のため、図1では特に左右前輪のみが表示されている。
【0017】
モータMG1は、主としてバッテリ106を充電するための発電機、或いはモータMG2に電力を供給するための発電機として機能するように構成されている。また、モータMG2は、主としてエンジン1の出力をアシスト(補助)する電動機として機能するように構成され、車軸102に動力を伝達することができるように構成されている。モータMG2の回転数は、ECU20によって制御される。
【0018】
これらのモータMG1及びモータMG2は、例えば同期電動発電機として構成され、外周面に複数個の永久磁石を有するロータと、回転磁界を形成する三相コイルが巻回されたステータとを備える。プラネタリギヤ(遊星歯車機構)104は、エンジン1の出力をモータMG1及び車軸102へ分配することが可能に構成され、動力分割機構として機能する。
【0019】
インバータ105は、バッテリ106と、モータMG1及びモータMG2との間の電力の入出力を制御する直流交流変換機である。例えば、インバータ105は、バッテリ106から取り出した直流電力を交流電力に変換して、或いはモータMG1によって発電された交流電力をそれぞれモータMG2に供給すると共に、モータMG1によって発電された交流電力を直流電力に変換してバッテリ106に供給することが可能に構成されている。
【0020】
バッテリ106は、モータMG1及びモータMG2を駆動するための電源として機能することが可能に構成された充電可能な蓄電池である。
【0021】
[システムの構成]
図2は、本発明の各実施形態に係る車両の制御装置が適用されたシステム50の概略構成を示す図である。システム50は、ハイブリッド車両100に搭載される。なお、図2においては、実線矢印は冷却水の流れの一例を示しており、破線矢印は信号の入出力を示している。また、太線で表した実線(符号7で示す)は、冷却水が流れる冷却水通路を示している。
【0022】
システム50は、主に、エンジン(内燃機関)1と、ヒータコア2aと、ヒータブロア2bと、ラジエータ3と、サーモスタット4と、電動ウォーターポンプ(電動WP)5と、排気熱回収器6aと、EGRクーラ6bと、冷却水通路7と、冷却水温度センサ10と、ヒータスイッチ11と、ECU20と、を有する。このシステム50は、冷却水通路7に設けられた構成要素(エンジン1、ヒータコア2a、排気熱回収器6a、EGRクーラ6bなど)と冷却水との間で熱交換を行うことで、冷却したり暖機したりするシステムである。
【0023】
エンジン1は、燃料と空気との混合気を燃焼させることによって、車両における動力を発生する装置である。エンジン1は、ガソリンエンジンやディーゼルエンジンなどによって構成される。また、エンジン1には冷却水通路7が形成されており、当該冷却水通路7を通過する冷却水とエンジン1との間で熱交換が行われることで、エンジン1の冷却若しくは暖機が行われる。
【0024】
ヒータコア2aは、内部を通過する冷却水によって、車室内の空気を暖める装置であり、ヒータブロア2bは、ヒータコア2aで暖められた空気を車室内に送風する装置である。具体的には、ヒータコア2aにはヒータブロア2bから取り込まれた車室内の空気が供給され、このようにヒータコア2aに供給された空気は、冷却水と熱交換することで暖められて、ヒータブロア2bより吹き出し口を介して吹き出される。以後、ヒータブロア2bにより吹き出し口を介して吹き出される空気を、「ブロア風」と呼ぶ。また、ヒータブロア2bは、ECU20から供給される制御信号S2bによって制御される。例えば、ヒータブロア2bからの吹き出し開始などが制御される。なお、ヒータブロア2bは、吹き出し口が複数存在する場合、各吹き出し口に対応して複数設置されてもよい。
【0025】
ラジエータ3は、内部を通過する冷却水を外気によって冷却する装置である。この場合、電動ファン(不図示)の回転により導入された風によって、ラジエータ3内の冷却水の冷却が促進される。
【0026】
サーモスタット4は、冷却水温度に応じて開閉する弁によって構成される。基本的には、サーモスタット4は、冷却水温度が比較的低温である場合には閉弁することでラジエータ3への冷却水の供給を遮断し、冷却水温度が比較的高温となったときに開弁してラジエータ3へ冷却水を供給する。
【0027】
電動ウォーターポンプ5(以後、「電動WP5」と称す。)は、電動式のモータを備えて構成され、このモータの駆動により冷却水を冷却水通路7内で循環させる。電動WP5は、ECU20から供給される制御信号S5によって制御される。具体的には、電動WP5における動作のオン/オフや、電動WP5内のモータの回転数などが制御される。従って、電動WP5は、エンジン1の回転数とは独立して動作することが可能である。
【0028】
排気熱回収器6aは、冷却水通路7上に設けられていると共に、エンジン1の排気ガスが通過する排気通路(不図示)上に設けられており、冷却水と排気ガスとの間で熱交換を行うことで排気熱を回収する。EGRクーラ6bは、冷却水通路7上に設けられていると共に、EGRガスが通過するEGR通路(不図示)上に設けられており、冷却水とEGRガスとの間で熱交換を行うことでEGRガスを冷却する。
【0029】
冷却水温度センサ10は、エンジン1のヘッドの下流側における冷却水通路7上に設けられており、当該箇所での冷却水温度を検出する。冷却水温度センサ10は、検出した冷却水温度に対応する検出信号S10をECU20に供給する。
【0030】
ヒータスイッチ11は、車室内を暖房するために乗員によって操作されるスイッチである。ヒータスイッチ11は、スイッチのオン/オフに対応する信号S11をECU20に供給する。つまり、ヒータスイッチ11は、乗員からの暖房要求の有無に対応する信号S11を出力する。
【0031】
ECU20は、図示しないCPU(Central Processing Unit)、ROM(Read Only Memory)及びRAM(Random Access Memory)などを備え、車両内の構成要素に対して種々の制御を行う。具体的には、ECU20は、冷却水温度センサ10及びヒータスイッチ11から供給される信号S10、S11に基づいて、ヒータブロア2b及び電動WP5に制御信号S2b、S5を供給することで、ヒータブロア2b及び電動WP5に対する制御を行う。このように、ECU20は、本発明における制御手段として機能する。
【0032】
なお、上記では、冷却水温度センサ10をエンジン1のヘッドの下流側における冷却水通路7上に設ける例を示したが、冷却水温度センサ10を設ける位置は、これに限定はされない。つまり、エンジン1のヘッドの下流側における冷却水通路7中の冷却水の温度を用いることに限定はされない。また、上記では、冷却水を循環させるポンプとして電動WP5を示したが、これに限定はされない。エンジン1と独立して動作可能であれば、電動WP5以外の種々のポンプを用いることができる。
【0033】
以下の第1実施形態及び第2実施形態では、ECU20による電動WP5及びヒータブロア2bの作動制御について具体的に説明する。
【0034】
[第1実施形態]
次に、第1実施形態においてECU20が行う制御方法について説明する。第1実施形態では、ECU20は、乗員からの暖房要求があった場合には、電動WP5を作動させるとともに、作動後所定時間遅延させてヒータブロア2bを作動させる。これにより、ECU20は、電動WP5の作動開始直後での冷却水の攪拌に起因したブロア風の温度変動を抑制する。
【0035】
第1実施形態における制御の流れについて図3を用いて説明する。図3は、ECU20の制御に基づくヒータブロア2b及び電動WP5の作動状態、その他システム50の状態を表すパラメータの時間変化のグラフの一例である。具体的には、図3(a)は、冷却水温度センサ10から検出される冷却水温度の時間変化のグラフを示す。図3(b)は、暖房要求の有無(ここでは、それぞれ「ON」、「OFF」と称す。)の時間変化のグラフを示す。図3(c)は、ヒータブロア2bの状態(ここでは、作動中を「ON」、停止中を「OFF」で表す。)の時間変化のグラフを示す。図3(d)は、ブロア風温度の時間変化のグラフを示す。図3(e)は、電動WP5の状態の時間変化のグラフを示す。また、所定時刻「t0」は、電動WP5が停止している所定の時刻を指し、所定時刻「t1」は、時刻t0後であって、暖房要求があった時刻を指し、所定時刻「t2」は、時刻t1後であって、ヒータブロア2bをONにする時刻を指す。
【0036】
まず、時刻t0から時刻t1までの期間Aでは、ECU20は、電動WP5を停止させている(図3(e)参照)。従って、期間Aでは、冷却水温度は、エンジン1の発熱に起因して温度が上昇する(図3(a)参照)。
【0037】
そして、暖房要求があった時刻t1において(図3(b)参照)、ECU20は、ヒータコア2aで車室内の空気と冷却水との熱交換を実行するため、電動WP5を作動させる(図3(e)参照)。
【0038】
電動WP5の作動に起因して、冷却水通路7内の冷却水は、エンジン1近傍の高温部分と、他の低温部分とが攪拌される。その結果、時刻t1から時刻t2までの期間Bでは、冷却水温度が変動する(図3(a)参照)。この期間Bでは、ECU20は、ブロア風の温度が急変することによる乗員の不快感を抑制するため、ヒータブロア2bを作動しない(図3(c)参照)。
【0039】
そして、冷却水温度が安定した時刻t2において、ECU20は、ヒータブロア2bを作動させる(図3(a)、図3(c)参照)。このとき、ヒータコア2aに流れる冷却水の温度は安定しているため、ヒータコア2aにより熱交換された空気の温度は安定する。従って、ブロア風の温度は、ほぼ一定を保つ(図3(d)参照)。従って、期間Bの長さ、即ち、本発明における「所定時間」は、電動WP5の作動後から、冷却水の攪拌に起因した冷却水温度の変動がなくなるまで、または変動がなくなったとみなせる程度に当該変動幅が小さくなるまでの期間(以後、「水温変動期間」と呼ぶ。)の長さ以上に設定される。従って、ECU20は、例えば、冷却水温度センサ10から検出された冷却水温度を監視し、当該温度の変動幅が所定の閾値以下になった場合に、水温変動期間が終了したと判断し、ヒータブロア2bを作動させる。これにより、ECU20は、安定した温度を有するブロア風を車室に供給することができる。
【0040】
次に、第1実施形態の効果について補足する。図4は、電動WP5の作動開始直後にヒータブロア2bを作動させた場合(以後、「比較例」と呼ぶ。)での、ヒータブロア2b及び電動WP5の作動状態、その他システム50の状態を表すパラメータの時間変化のグラフの一例である。図4(a)乃至(e)は、それぞれ図3(a)乃至(e)に対応する。
【0041】
比較例では、ECU20は、時刻t1に電動WP5を作動させるとともに、その直後にヒータブロア2bを作動させている(図4(e)、図4(c)参照)。即ち、ECU20は、冷却水温度の変動がある期間Bにおいて、ヒータブロア2bを作動させている(図4(a)参照)。従って、期間Bにおいて、車室に供給されるブロア風の温度は安定せず、これに起因して乗員に不快感を与える可能性がある。これに対し、第1実施形態では、ECU20は、電動WP5の作動開始に起因した冷却水温度の変動が収まった後にヒータブロア2bを作動させている。これにより、ECU20は、ブロア風の温度が急変することに起因して乗員に不快感を与えるのを抑制することができる。
【0042】
(処理フロー)
次に、第1実施形態における処理の手順について説明する。図5は、第1実施形態においてECU20が実行する処理の手順を表すフローチャートの一例である。ECU20は、図5に示すフローチャートの処理を所定の周期に従い繰り返し実行する。
【0043】
まず、ECU20は、電動WP5が停止中であるか否かについて判定する(ステップS101)。そして、電動WP5が停止中の場合(ステップS101;Yes)、ECU20は、次に乗員から暖房要求があったか否かについて判定する(ステップS102)。例えば、ECU20は、乗員からの暖房要求の有無を、ヒータスイッチ11から送信される信号S11により判断する。
【0044】
そして、暖房要求があった場合(ステップS102;Yes)、ECU20は、電動WPを作動させる(ステップS103)。これにより、冷却水が攪拌されるとともに、ヒータコア2aで車室内の空気と冷却水との熱交換が行われる。
【0045】
一方、電動WP5が駆動中の場合(ステップS101;No)、または、暖房要求がない場合(ステップS102;No)、ECU20は、フローチャートの処理を終了する。
【0046】
次に、ECU20は、ステップS103で電動WP5を作動後、所定時間が経過したか否かについて判定する(ステップS104)。このとき、所定時間は、水温変動期間の長さ以上に設定される。そして、電動WP5の作動後、所定時間経過していない場合(ステップS104;No)、ECU20は、引き続き所定時間が経過したか否かについて監視する。
【0047】
一方、所定時間が経過した場合(ステップS104;Yes)、ECU20は、ヒータブロア2bを作動させる(ステップS105)。ステップS105の時点では、水温変動期間は経過している。従って、ECU20は、電動WP5の作動開始直後での冷却水の攪拌に起因したブロア風の温度変動を抑制し、安定した温度のブロア風を車室に供給することができる。
【0048】
[第2実施形態]
第1実施形態では、ECU20は、乗員からの暖房要求に基づき電動WP5を作動させた場合、電動WP5の作動後所定時間遅延させてヒータブロア2bを作動させることで、冷却水温度の変動に起因したブロア風温度の変動を防いだ。これに加えて、第2実施形態では、ECU20は、乗員からの暖房要求に基づき電動WP5を作動させた場合、電動WP5の出力を一時的に最大にする。これにより、ECU20は、水温変動期間の幅を縮小させ、ヒータブロア2bの作動開始の遅延を最小限に抑える。
【0049】
第2実施形態における制御の流れについて図6を用いて説明する。図6は、第2実施形態におけるヒータブロア2b及び電動WP5の作動状態、その他システム50の状態を表すパラメータの時間変化のグラフの一例である。図6(a)乃至図6(d)は、それぞれ図3(a)乃至図3(d)に対応する。図6(e)は、電動WP5の出力状態の時間変化のグラフの一例を示す。ここでは、電動WP5の出力が「0」の場合が、電動WP5の停止状態に対応する。また、所定時刻「t2α」は、第2実施形態においてヒータブロア2bの作動を開始する時刻を表す。
【0050】
まず、暖房要求があった時刻t1において、ECU20は、第1実施形態と同様、ヒータコア2aで車室内の空気と冷却水との熱交換を実行するため、電動WP5を作動させる(図6(e)参照)。
【0051】
ここで、さらに、第2実施形態では、冷却水温度の変動を早期に収縮させるため、ECU20は、電動WP5を最大出力「Pmax」で作動させる(図6(e)参照)。これにより、ECU20は、冷却水通路7内の冷却水の攪拌を促進し、冷却水温度を早期に安定させることができる。
【0052】
そして、電動WP5が最大出力Pmaxで作動することにより、時刻t2αには冷却水温度の変動が収まる(図6(a)参照)。そして、時刻t2αにおいて、ECU20は、ヒータブロア2bを作動させる(図6(c)参照)。この時刻t2αは、第1実施形態における時刻t2よりも早い時刻となる。即ち、時刻t1から時刻t2αまでの期間Bαの長さは、時刻t1から時刻t2までの期間Bの長さよりも短くなる。従って、ECU20は、暖房要求があった時刻t1から早期にヒータブロア2bを駆動させることができる。
【0053】
また、ECU20は、冷却水温度の変動が収まった時刻t2α以降では、ECU20は、電動WP5の出力を通常用いられる出力P0(以後、「通常出力P0」と呼ぶ。)に減少させる(図6(e)参照)。これにより、ECU20は、電動WP5の過負担等を防ぐ。
【0054】
なお、図6(e)では、ECU20は、時刻t2αに、電動WP5の出力を最大出力Pmaxから通常出力P0へ瞬時に切り替えた。しかし、これに代わり、ECU20は、電動WP5の出力を最大出力Pmaxから通常出力P0へ、徐々に、即ち時間幅をもって遷移させてもよい。
【0055】
(処理フロー)
次に、第2実施形態における処理の手順について説明する。図7は、第2実施形態においてECU20が実行する処理の手順を表すフローチャートの一例である。ECU20は、図7に示すフローチャートの処理を所定の周期に従い繰り返し実行する。ここでは、第1実施形態と処理が異なるステップS203から説明する。
【0056】
暖房要求があった場合(ステップS202;Yes)、ECU20は、電動WP5を最大出力Pmaxで作動させる(ステップS203)。これにより、冷却水の攪拌が促進される。
【0057】
次に、ECU20は、電動WP5の作動後から所定時間経過したか否かについて判定する(ステップS204)。このとき、所定時間は、例えば、水温変動期間の長さに設定される。また、水温変動期間は、電動WP5が最大出力Pmaxで作動していることに起因して短縮される。即ち、ここでの所定時間は、第1実施形態における所定時間よりも短い。
【0058】
そして、所定時間が経過していない場合(ステップS204;No)、ECU20は、引き続き所定時間が経過したか否かについて監視する。
【0059】
一方、所定時間が経過したと判断した場合(ステップS204;Yes)、ECU20は、ヒータブロア2bを作動させる(ステップS205)。また、ECU20は、電動WP5を通常出力P0に設定する(ステップS206)。以上により、ECU20は、ヒータブロア2bの作動開始の遅延を最小限に抑制することができる。
【0060】
(変形例1)
第2実施形態では、ECU20は、乗員からの暖房要求に基づき電動WP5を作動させた場合、電動WP5の出力指示を最大にした。しかし、本発明が適用可能な制御はこれに限定されず、これに代わり、ECU20は、電動WP5の出力を通常出力P0よりも大きい任意の出力にしてもよい。この場合、例えば、ECU20は、電動WP5に過度の処理負担を掛けない範囲の高出力で電動WP5を駆動する。これによっても、ECU20は、水温変動期間の幅を縮小することができ、ヒータブロア2bの作動開始の遅延を低減させることができる。
【0061】
(変形例2)
第1実施形態及び第2実施形態では、ECU20は、電動WP5の作動開始後所定時間遅延させてヒータブロア2bを作動させることにより、冷却水温度の変動に起因したブロア風温度の変動を防いだ。しかし、これに代えて、ECU20は、外部熱源を利用してブロア風を暖機することにより、冷却水温度の変動に起因したブロア風温度の変動を防いでもよい。
【0062】
この場合、外部熱源は、例えば、PTC(Positive Tempreture Coefficient)ヒータであり、バッテリ106から電力の供給を受けることで作動する。そして、外部熱源は、ヒータブロア2bの近傍に設置され、ECU20の制御信号に基づき作動が制御される。
【0063】
そして、変形例2では、ECU20は、暖房要求に基づき電動WP5を駆動させた場合、遅延なくヒータブロア2bを作動させるとともに、外部熱源を作動させる。これにより、ヒータコア2aによって熱交換された空気は、比較的低温であっても、外部熱源により一定以上の温度に暖機される。即ち、ECU20は、外部熱源により、車室に供給するブロア風の温度を一定以上に安定させることができる。以上のように、ECU20は、外部熱源を利用することで、ブロア風の温度変動を防止することができる。
【0064】
(変形例3)
第1実施形態及び第2実施形態では、ECU20は、電動WP5の作動開始後所定時間遅延させてヒータブロア2bを作動させた。一方、ECU20は、乗員からの暖房要求がデフロスタ要求であった場合、即ち車両に付属する窓ガラスの曇りを除去するための要求であった場合には、電動WP5の作動開始後遅延なくヒータブロア2bを作動させてもよい。これにより、ECU20は、車両の安全性を担保することができる。
【0065】
(変形例4)
第1実施形態及び第2実施形態では、ECU20は、吹き出し口に依らず、電動WP5の作動開始後所定時間遅延させてからブロア風を供給した。一方、これに代えて、ECU20は、電動WP5の作動開始後遅延なく、乗員に直接当たらない吹き出し口からブロア風を車室へ供給してもよい。このとき、ECU20は、乗員に直接当たる吹き出し口からは、電動WP5の作動開始後所定時間遅延させてブロア風を車室へ供給する。
【0066】
例えば、ECU20は、電動WP5の作動開始後遅延なく、フロントガラスの下面に位置する吹き出し口からブロア風を供給する。一方で、ECU20は、他の吹き出し口、例えばインストルメントパネル付近に設置される吹き出し口からは、電動WP5の作動開始後所定時間遅延させてブロア風を供給する。この場合、ECU20は、例えば、各吹き出し口に対応して設置されるヒータブロア2bを個別に作動制御するか、または、各吹き出し口を開閉させることにより、吹き出し口ごとのブロア風の供給を制御する。
【0067】
このように、ECU20は、乗員に不快感を与える恐れがない吹き出し口からは電動WP5の作動開始後遅延なくブロア風を供給することで、車室内温度の上昇が遅れるのを防止することができる。
【0068】
(変形例5)
第1実施形態及び第2実施形態では、ECU20は、冷却水温度が高温か否かに依らず、電動WP5の作動開始後所定時間遅延させてからヒータブロア2bを駆動させた。一方、これに代えて、ECU20は、冷却水温度が高温の場合には、電動WP5の作動開始後遅延なくヒータブロア2bを作動させてもよい。
【0069】
具体的には、ECU20は、暖房要求に基づき電動WP5を開始した場合、冷却水温度が所定温度以上か否かについて判断する。この場合、上述の所定温度は、例えば、想定されるブロア風の最高温度付近(例えば、50度〜60度)に設定される。そして、冷却水温度が所定温度以上の場合、ECU20は、冷却水の攪拌による水温変動に起因したブロア風の温度変動はないと判断し、電動WP5の作動開始後遅延なくヒータブロア2bを作動させる。一方、冷却水温度が所定温度未満の場合、ECU20は、水温変動に起因したブロア風の温度変動が発生する可能性があると判断し、電動WP5の作動開始後所定時間遅延させてヒータブロア2bを作動させる。このようにすることで、冷却水温度が所定温度以上の高温の場合、ECU20は、不要にヒータブロア2bの作動を遅延させるのを防ぎ、早期に車室内温度を上昇させることができる。
【0070】
(変形例6)
上述の説明では、システム50は、ハイブリッド車両100に搭載されていたが、本発明が適用可能な構成はこれに限定されない。例えば、システム50は、通常のエンジン車両に搭載されてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0071】
【図1】車両の制御装置が搭載されるハイブリッド車両の概略構成図を示す。
【図2】車両の制御装置が適用されたシステムの概略構成図を示す。
【図3】第1実施形態に係るシステムが有する各状態の時間変化を示すグラフの一例である。
【図4】比較例に係るシステムが有する各状態の時間変化を示すグラフの一例である。
【図5】第1実施形態における制御処理を示すフローチャートである。
【図6】第2実施形態に係るシステムが有する各状態の時間変化を示すグラフの一例である。
【図7】第2実施形態における制御処理を示すフローチャートである。
【符号の説明】
【0072】
1 エンジン(内燃機関)
2a ヒータコア
2b ヒータブロア
3 ラジエータ
4 サーモスタット
5 電動ウォーターポンプ(電動WP)
7 冷却水通路
10 冷却水温度センサ
11 ヒータスイッチ
20 ECU
106 バッテリ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
内燃機関における冷却水を循環させる電動ウォーターポンプと、
前記冷却水と空気との熱交換を行うヒータコアと、
前記ヒータコアにより熱交換された空気を車室へ流動させるヒータブロアと、
乗員操作に基づく暖房要求時に、前記電動ウォーターポンプの作動をさせるとともに、前記作動から所定時間遅延させて前記ヒータブロアを作動させる制御手段と、を備え、
前記制御手段は、前記暖房要求時から前記ヒータブロアの作動開始までの期間、前記電動ウォーターポンプの出力を一時的に増加させ、かつ、前記ヒータブロアの作動後は前記出力を減少させることを特徴とする車両の制御装置。
【請求項2】
前記制御手段は、前記暖房要求時から前記ヒータブロアの作動開始までの期間、前記電動ウォーターポンプの出力を最大出力まで増加させる請求項1に記載の車両の制御装置。
【請求項3】
前記制御手段は、乗員操作に基づく暖房要求がデフロスタ要求であった場合、前記電動ウォーターポンプの作動後遅延なく前記ヒータブロアを作動させる請求項1または2に記載の車両の制御装置。
【請求項4】
前記制御手段は、前記冷却水から検出される水温が所定温度以上の場合、前記電動ウォーターポンプの作動後遅延なく前記ヒータブロアを作動させる請求項1乃至3のいずれか一項に記載の車両の制御装置。
【請求項5】
ハイブリッド車両に搭載される請求項1乃至4のいずれか一項に記載の車両の制御装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2010−125966(P2010−125966A)
【公開日】平成22年6月10日(2010.6.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−302262(P2008−302262)
【出願日】平成20年11月27日(2008.11.27)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】