説明

車両の制御装置

【課題】通路噴射弁のみから燃料を噴射する運転状態において筒内噴射弁から燃料を噴射する場合に、吸入空気量に対して過剰に多くの燃料が気筒内に供給されることを抑制することができる車両の制御装置を提供する。
【解決手段】パワーマネジメントコントロールコンピュータは、ポート噴射のみを行う運転状態であるときには(ステップS10:YES)、エンジンに対する負荷を増大させた上で(ステップS12)、筒内噴射を行う(ステップS13)。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、吸気通路内に燃料を噴射する通路噴射弁及び気筒内に燃料を直接噴射する筒内噴射弁を有する内燃機関が搭載される車両の制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、吸気通路内に燃料を噴射する通路噴射弁及び気筒内に燃料を直接噴射する筒内噴射弁を有する内燃機関として、例えば特許文献1に記載の内燃機関が提案されている。この内燃機関では、運転状態に応じて両噴射弁を併用したり、各噴射弁を使い分けたりすることで、内燃機関の低燃費化や広い駆動領域での高出力化が図られる。なお、通路噴射弁からの燃料噴射を「ポート噴射」ともいい、筒内噴射弁からの燃料噴射を「筒内噴射」ともいう。
【0003】
上記のように通路噴射弁と筒内噴射弁とを有する内燃機関の中には、アイドリング運転時などのように内燃機関に対する要求出力が低い運転状態である場合に、ポート噴射のみを行うものがある。ポート噴射時においては、通路噴射弁から吸気通路に噴射された燃料と吸入空気とを混合した混合気が気筒内に吸入される。そして、気筒内で混合気が燃焼されると、該燃焼によって気筒内では熱が発生する。このように発生した熱により、デリバリパイプ及び該デリバリパイプ内の燃料が暖められてその温度が上昇し、当該燃料の圧力が高くなる。つまり、デリバリパイプから筒内噴射弁に供給される燃料の圧力は、ポート噴射の実行に伴いデリバリパイプ内の燃料の温度が上昇するに連れて高くなっていく。そして、デリバリパイプから筒内噴射弁に供給される燃料の圧力が、目標とする燃料圧力からかけ離れて高くなってしまった場合には、筒内噴射弁の開弁期間が同じであっても噴射される燃料の量が過剰に多くなるため、筒内噴射弁からの燃料の噴射量の調整が困難になるおそれがある。
【0004】
そこで、特許文献1に記載の内燃機関では、デリバリパイプから筒内噴射弁に供給される燃料の圧力が目標値を超えた場合には、筒内噴射弁に供給される燃料の圧力が高くなったと判断し、通路噴射弁のみから燃料が噴射される運転状態であっても、筒内噴射弁から燃料を噴射するようにしている。すると、デリバリパイプ内の燃料が筒内噴射弁から噴射されることにより、デリバリパイプから筒内噴射弁に供給される燃料の圧力が低下する。そのため、デリバリパイプから筒内噴射弁に供給される燃料の圧力が過剰に高い状態が解消され、筒内噴射が行われる運転状態に移行したときには、筒内噴射弁から適量の燃料を噴射することができるようになる。
【0005】
なお、ポート噴射のみを行う運転状態であっても筒内噴射弁から燃料を噴射する技術としては、その他、特許文献2に記載されているように、筒内噴射弁の温度が高くなったときに、筒内噴射を行うものがある。この特許文献2に記載の内燃機関によれば、筒内噴射を行うことにより、噴射された燃料の気化潜熱によって筒内噴射弁を冷却することができるため、筒内噴射弁へのデポジットの堆積を抑制することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2010−203414号公報
【特許文献2】特開2006−291922号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ところで、筒内噴射弁によって実現可能な最小開弁期間には限界があるため、デリバリパイプから筒内噴射弁に供給される燃料の圧力が高くなるほど、筒内噴射弁による噴射によって実現することのできる燃料噴射量の下限値は大きくなっていく。
【0008】
そのため、特許文献1に記載されている内燃機関では、筒内噴射弁に供給される燃料の圧力が目標値よりも著しく高くなっている状態で、燃料の圧力を下げるための筒内噴射が行われたときに、燃料噴射量を吸入空気量に見合った量に制限することができなくなってしまう。その結果、吸入空気量に対して過剰に多くの燃料が気筒内に供給されることになる。
【0009】
なお、特許文献2に記載されているように、筒内噴射弁の温度が高くなったときに、筒内噴射を行う内燃機関であっても、同様の課題は生じ得る。すなわち、筒内噴射弁に供給される燃料の圧力が高くなっているときに該筒内噴射弁の温度が高くなり、筒内噴射が行われた場合には、吸入空気量に対して過剰に多くの燃料が気筒内に供給されることになる。
【0010】
本発明は、このような事情に鑑みてなされたものである。その目的は、通路噴射弁のみから燃料を噴射する運転状態において筒内噴射弁から燃料を噴射する場合に、吸入空気量に対して過剰に多くの燃料が気筒内に供給されることを抑制することができる車両の制御装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
以下、上記目的を達成するための手段及びその作用効果について記載する。
車両の制御装置にかかる請求項1に記載の発明は、吸気通路内に燃料を噴射する通路噴射弁及び気筒内に燃料を直接噴射する筒内噴射弁を有し、要求噴射量に対応する量の燃料を運転状態に応じて前記通路噴射弁及び前記筒内噴射弁のいずれか一方のみから噴射したり、両噴射弁から噴き分けて噴射したりする一方、前記通路噴射弁のみから燃料を噴射する運転状態であっても前記筒内噴射弁から燃料を噴射することのある内燃機関を備える車両の制御装置において、前記通路噴射弁のみから燃料を噴射する運転状態のときに前記筒内噴射弁から燃料を噴射する際には、前記内燃機関に対する負荷を増大させた上で、前記筒内噴射弁から燃料を噴射することを要旨とする。
【0012】
内燃機関に対する負荷を増大させた場合には、負荷の増大によって運転状態が不安定になることを抑制するために出力を増大させる必要がある。そのため、内燃機関に対する負荷を増大させた場合には、内燃機関の吸入空気量が増大される。上記構成によれば、通路噴射弁のみから燃料を噴射する運転状態のときに筒内噴射弁から燃料を噴射する際には、内燃機関に対する負荷を増大させた上で、筒内噴射弁から燃料が噴射される。そのため、通路噴射弁のみから燃料が噴射され続け、筒内噴射弁に供給される燃料の圧力が高くなっているときに筒内噴射弁から燃料が噴射された場合であっても、気筒内に供給される燃料供給量が過剰になることを抑制することができる。すなわち、上記構成によれば、内燃機関に対する負荷を増大させることにより、吸入空気量を増大させ、要求噴射量を増大させた上で、筒内噴射が行われるようになる。そのため、通路噴射弁のみから燃料を噴射する運転状態において筒内噴射弁から燃料を噴射する場合に、吸入空気量に対して過剰に多くの燃料が気筒内に供給されることを抑制することができるようになる。
【0013】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の車両の制御装置において、前記車両は、前記内燃機関の駆動に基づき発電可能な発電機を搭載するハイブリッド車両であり、前記発電機に発電を行わせることで、前記内燃機関に対する負荷を増大させることを要旨とする。
【0014】
上記構成では、筒内噴射を開始するに際して、ハイブリッド車両に搭載された発電機によって発電を行うことにより、内燃機関に対する負荷を増大させるようにしている。そのため、筒内噴射が開始されるに際して増大された内燃機関の出力は、発電機における発電を通じて電気エネルギーに変換され、ハイブリッド車両のバッテリに蓄えられることになる。つまり、筒内噴射の開始に起因して要求噴射量が増大されることによる出力の増加分を電気エネルギーに変換してバッテリに蓄え、その後の車両走行時に有効活用することが可能となる。したがって、筒内噴射を行うことに起因した燃料消費量の増大を抑制することが可能となる。
【0015】
請求項3に記載の発明は、請求項1又は請求項2に記載の車両の制御装置において、前記通路噴射弁のみから燃料を噴射する運転状態のときに前記筒内噴射弁から燃料を噴射する際には、前記筒内噴射弁から前記要求噴射量に対応する量の燃料を全量噴射することを要旨とする。
【0016】
上記構成によれば、通路噴射弁のみから燃料を噴射する運転状態のときに筒内噴射弁から燃料を噴射する際には、通路噴射弁からの燃料噴射が停止されて筒内噴射弁のみから燃料が噴射されるようになる。すなわち、ポート噴射が停止されて筒内噴射のみが行われるようになる。ここで、ポート噴射と筒内噴射とを共に行う方法も考えられるが、その場合には、筒内噴射弁から噴射される燃料の噴射量が、ポート噴射を停止させる場合と比較して少なくなる。
【0017】
この点、上記請求項3に記載の構成によれば、筒内噴射のみが行われるようになるため、ポート噴射と筒内噴射とが共に行われる場合と比較して、筒内噴射弁から噴射される燃料の量を多くすることができる。その結果、筒内噴射弁から噴射される燃料の量が多くなる分、筒内噴射弁に燃料を供給するデリバリパイプなどに貯留された燃料の圧力を速やかに低下させることができる。つまり、筒内噴射弁に供給される燃料の圧力を速やかに低くすることができる。したがって、筒内噴射弁に供給される燃料の圧力を低くするために筒内噴射を行う期間を短くし、内燃機関に対する負荷を大きくする期間を短くすることができ、ひいては燃料消費量を低減することができる。
【0018】
請求項4に記載の発明は、請求項1〜3のいずれか一項に記載の車両の制御装置において、前記筒内噴射弁の噴射によって実現可能な下限噴射量が、前記要求噴射量よりも多くなったときには、前記通路噴射弁のみから燃料を噴射する運転状態であっても、前記内燃機関に対する負荷を増大させた上で、前記筒内噴射弁から燃料を噴射することを要旨とする。
【0019】
また、請求項5に記載の発明は、請求項4に記載の車両の制御装置において、前記筒内噴射弁に供給される燃料の圧力と、前記筒内噴射弁によって実現可能な最小開弁期間とに基づいて前記下限噴射量を算出し、算出された前記下限噴射量が前記要求噴射量よりも多くなったときには、前記通路噴射弁のみから燃料を噴射する運転状態であっても、前記内燃機関に対する負荷を増大させた上で、前記筒内噴射弁から燃料を噴射することを要旨とする。
【0020】
そして、請求項7に記載の発明は、請求項4に記載の車両の制御装置において、前記要求噴射量と等しい量の燃料を前記筒内噴射弁から噴射できる燃料の圧力の上限値を、前記筒内噴射弁によって実現可能な最小開弁期間と前記要求噴射量とに基づいて算出し、前記筒内噴射弁に供給される燃料の圧力が、算出された前記上限値よりも高くなったときには、前記通路噴射弁のみから燃料を噴射する運転状態であっても、前記内燃機関に対する負荷を増大させた上で、前記筒内噴射弁から燃料を噴射することを要旨とする。
【0021】
筒内噴射弁に供給される燃料の圧力が高くなるほど、筒内噴射弁による噴射によって実現することのできる下限噴射量は多くなっていく。そこで、下限噴射量が要求噴射量よりも少ない時点から筒内噴射を行うことによって筒内噴射弁に供給される燃料の圧力が過剰に高くなってしまうことを抑制することもできる。しかし、その場合には、通路噴射弁のみから燃料を噴射する運転状態であるにも拘わらず、筒内噴射が行われる頻度が高くなってしまう。
【0022】
これに対して上記請求項4に記載の構成では、下限噴射量が要求噴射量よりも多くなったときに、筒内噴射を行うようにしている。そのため、内燃機関に対する負荷を増大させずに筒内噴射を行った場合に要求噴射量を超える過剰な量の燃料を筒内噴射弁が噴射してしまう蓋然性が高いときにのみ内燃機関の負荷を増大させて筒内噴射が行われるようになる。すなわち、内燃機関に対する負荷を増大させなくても要求噴射量に対応する量の燃料を筒内噴射弁から噴射することができる場合には筒内噴射が行われなくなる。そのため、通路噴射弁のみから燃料を噴射する運転状態であるにも拘わらず、筒内噴射が行われる頻度が高くなることが抑制され、本来行うべきポート噴射を筒内噴射よりも優先させて行うことができるようになる。
【0023】
なお、筒内噴射弁によって実現可能な下限噴射量は、筒内噴射弁に供給される燃料の圧力と筒内噴射弁によって実現可能な最小開弁期間とに基づいて算出することができる。そのため、下限噴射量が、要求噴射量よりも多くなったことを判定するための方法としては、上記請求項5に記載されているように、筒内噴射弁に供給される燃料の圧力と、最小開弁期間とに基づいて下限噴射量を算出し、算出された下限噴射量が要求噴射量よりも多くなったか否かを監視する構成を採用することができる。
【0024】
また、要求噴射量と等しい量の燃料を筒内噴射弁から噴射するための燃料の圧力の上限値は、筒内噴射弁によって実現可能な最小開弁期間と要求噴射量とに基づいて算出することができる。筒内噴射弁に供給される燃料の圧力が上記の上限値よりも高い場合には、下限噴射量が、要求噴射量よりも多くなっていると推定される。そのため、下限噴射量が、要求噴射量よりも多くなったことを判定するための方法としては、上記請求項7に記載されているように、要求噴射量と等しい量の燃料を筒内噴射弁から噴射するための燃料の圧力の上限値を算出し、筒内噴射弁に供給される燃料の圧力が、算出された上限値よりも高くなったか否かを監視する構成を採用することもできる。
【0025】
請求項6に記載の発明は、請求項5に記載の車両の制御装置において、前記通路噴射弁のみから燃料を噴射する運転状態において前記筒内噴射弁から燃料を噴射しているときに算出された前記下限噴射量が、前記要求噴射量よりも小さな基準値を下回ったときには、前記筒内噴射弁からの燃料の噴射と前記内燃機関に対する負荷の増大とを終了させることを要旨とする。
【0026】
筒内噴射を行うことにより筒内噴射弁に供給される燃料の圧力が低下し、下限噴射量が要求噴射量を僅かでも下回ったときに直ちに筒内噴射と負荷の増大を終了させるようにした場合には、通路噴射弁のみによる燃料噴射の再開に伴って直ぐに下限噴射量が要求噴射量を上回り、再び筒内噴射が行われるおそれがある。これに対し、上記請求項6に記載されているように算出された下限噴射量が、要求噴射量よりも小さな基準値を下回ったときに、筒内噴射と負荷の増大とを終了させるようにすれば、筒内噴射の実行条件にヒステリシスを持たせ、頻繁に筒内噴射が繰り返されることを抑制することができる。したがって、通路噴射弁のみから燃料を噴射する運転状態であるにも拘わらず、筒内噴射が行われる頻度が高くなってしまうことを抑制することができる。
【0027】
なお、基準値を要求噴射量よりも小さな値にするほど、通路噴射弁のみから燃料を噴射する運転状態において筒内噴射が行われる頻度は低くなるため、本来行うべきポート噴射を筒内噴射よりも優先させて行う上では、基準値を要求噴射量よりも十分に小さな値にすることが望ましい。
【0028】
請求項8に記載の発明は、請求項7に記載の車両の制御装置において、前記通路噴射弁のみから燃料を噴射する運転状態において前記筒内噴射弁から燃料を噴射しているときに該筒内噴射弁に供給される燃料の圧力が、前記上限値よりも小さな基準値を下回ったときには、前記筒内噴射弁からの燃料の噴射と前記内燃機関に対する負荷の増大とを終了させることを要旨とする。
【0029】
筒内噴射を行うことにより筒内噴射弁に供給される燃料の圧力が低下し、筒内噴射弁に供給される燃料の圧力が、上記の上限値を僅かでも下回ったときに直ちに筒内噴射と負荷の増大を終了させるようにした場合には、通路噴射弁のみによる燃料噴射の再開に伴って直ぐに筒内噴射弁に供給される燃料の圧力が上記の上限値を上回り、再び筒内噴射が行われるおそれがある。これに対し、上記請求項8に記載されているように筒内噴射弁に供給される燃料の圧力が上記の上限値よりも小さな基準値を下回ったときに、筒内噴射と負荷の増大とを終了させるようにすれば、筒内噴射の実行条件にヒステリシスを持たせ、頻繁に筒内噴射が繰り返されることを抑制することができる。したがって、通路噴射弁のみから燃料を噴射する運転状態であるにも拘わらず、筒内噴射が行われる頻度が高くなってしまうことを抑制することができる。
【0030】
なお、基準値を上記の上限値よりも小さな値にするほど、通路噴射弁のみから燃料を噴射する運転状態において筒内噴射が行われる頻度は低くなるため、本来行うべきポート噴射を筒内噴射よりも優先させて行う上では、基準値を上記の上限値よりも十分に小さな値にすることが望ましい。
【図面の簡単な説明】
【0031】
【図1】本発明の車両の制御装置の第1の実施形態であるパワーマネジメントコントロールコンピュータに制御されるハイブリッドシステムの概略構成を示す模式図。
【図2】ハイブリッドシステムを制御するための制御構成を示すブロック図。
【図3】第1の実施形態において、パワーマネジメントコントロールコンピュータが実行する制御処理ルーチンを示すフローチャート。
【図4】第1の実施形態において、アイドリング運転時に気筒内への燃料の供給方法がポート噴射から筒内噴射に切り替る際における各種パラメータの変化を模式的に示すタイミングチャート。
【図5】第2の実施形態において、パワーマネジメントコントロールコンピュータが実行する制御処理ルーチンを示すフローチャート。
【発明を実施するための形態】
【0032】
(第1の実施形態)
以下、本発明の車両の制御装置をハイブリッドシステムの出力制御を行うパワーマネジメントコントロールコンピュータに具体化した第1の実施形態について、図1〜図4を参照して説明する。
【0033】
図1に示すように、ハイブリッドシステム100は、エンジン(内燃機関)110と2つのモータジェネレータ120,150とを動力分割機構130並びにリダクションギア140を介して連結することによって構成されている。なお、第1及び第2の各モータジェネレータ120,150は、いずれも内部に永久磁石が埋め込まれたロータと三相コイルが巻回されたステータとを備える周知の同期発電電動機である。
【0034】
エンジン110の各気筒111内には、所定の方向に進退移動するピストン112が設けられている。このピストン112には、図示しないコネクティングロッドを介して、エンジン110の出力軸であるクランクシャフト113が連結されている。また、エンジン110には、気筒111内においてピストン112の上方に区画形成された燃焼室114に吸入空気を吸入させるための吸気通路115と、燃焼室114から排気を排出させるための排出経路116とが設けられている。
【0035】
本実施形態のエンジン110には、吸気通路115内に燃料を噴射するための通路噴射弁117と、気筒111内に燃料を直接噴射するための筒内噴射弁118とが設けられている。通路噴射弁117には、フィードポンプ及び低圧配管などで構成される周知の低圧燃料系11Aによって燃料が供給される。また、筒内噴射弁118には、高圧ポンプ、高圧配管及びデリバリパイプなどで構成される周知の高圧燃料系11Bによって、通路噴射弁117に供給される燃料よりも高圧の燃料が供給される。
【0036】
なお、高圧燃料系11Bには、上記デリバリパイプ内の燃料の圧力が規定の圧力を超えた場合に、該デリバリパイプ内の燃料を上記燃料タンクに戻すべく作動する機械式のリリーフバルブ(図示略)が設けられている。このリリーフバルブは、デリバリパイプを保護する目的で設けられたバルブであって、該デリバリパイプ内の燃料の圧力が規定の圧力を超えた時点で開弁するように構成されている。
【0037】
そして、各噴射弁117,118のうち少なくとも一方の噴射弁から噴射された燃料は、吸入空気と混合される。そして、燃焼室114内では、燃料と吸入空気とが混合された混合気が、点火プラグ119による点火によって燃焼する。そして、この燃焼に基づいた力によってピストン112が気筒111内を摺動することにより、クランクシャフト113が回転する。なお、以降の記載においては、通路噴射弁117からの燃料噴射を「ポート噴射」ともいい、筒内噴射弁118からの燃料噴射を「筒内噴射」ともいう。
【0038】
動力分割機構130は、外歯歯車のサンギア131と、該サンギア131を取り囲む内歯歯車を有するリングギア132と、サンギア131及びリングギア132の双方に噛合する複数のプラネタリギア133とを備える遊星歯車機構である。各プラネタリギア133は、プラネタリキャリア134によって連結され、自転自在且つ公転自在に支持されている。プラネタリキャリア134は、ダンパDPを介してエンジン110のクランクシャフト113に連結されている。サンギア131は、第1のモータジェネレータ120に連結されている。リングギア132にはカウンターギア160が噛合されており、リングギア132の動力はカウンターギア160及びファイナルギア170を介してディファレンシャル180に伝達される。
【0039】
また、リングギア132には、リダクションギア140を介して第2のモータジェネレータ150が接続されている。リダクションギア140は、動力分割機構130と同様に、サンギア141及び複数のプラネタリギア143を備える遊星歯車機構である。しかし、リダクションギア140にあってはプラネタリキャリア144が固定されている。そのため、リダクションギア140のプラネタリギア143は、自転自在であるものの公転不能になっている。なお、第2のモータジェネレータ150は、サンギア141に連結されている。
【0040】
上記ハイブリッドシステム100にあっては、プラネタリキャリア134から入力されるエンジン110からの動力が動力分割機構130を通じてサンギア131側とリングギア132側に分配されることになる。なお、リングギア132の歯数に対するサンギア131の歯数の比であるプラネタリ比は「ρ」であり、動力はこのプラネタリ比に応じて分配される。
【0041】
リングギア132は、動力分割機構130を通じて入力されるエンジン110の動力と、リダクションギア140を通じて入力される第2のモータジェネレータ150の動力とを統合してディファレンシャル180に伝達する。これにより、ハイブリッドシステム100から出力された動力は、ディファレンシャル180を介して左右の駆動輪190L,190Rに分配される。
【0042】
第1及び第2の各モータジェネレータ120,150は、インバータ210及びコンバータ220を介してバッテリ200に接続されている。インバータ210は、第1及び第2の各モータジェネレータ120,150のそれぞれに対して6個の絶縁ゲートバイポーラトランジスタにより3相ブリッジ回路を構成している。これにより、インバータ210は、半導体スイッチング素子として絶縁ゲートバイポーラトランジスタをON・OFFすることにより、直流電流を三相交流電流に変換したり、三相交流電流を直流電流に変換したりする。
【0043】
コンバータ220は、リアクトルと2つの絶縁ゲートバイポーラトランジスタとにより構成されている。こうしたコンバータ220は、一方の絶縁ゲートバイポーラトランジスタをON・OFFすることにより、バッテリ200から供給される電力を昇圧してインバータ210に供給する。また、コンバータ220は、他方の絶縁ゲートバイポーラトランジスタをON・OFFすることにより、インバータ210から供給される電力を降圧してバッテリ200に供給する。
【0044】
これにより、第1のモータジェネレータ120によって発電された交流電流は、インバータ210に伝達されるとともに同インバータ210によって直流電流に変換され、コンバータ220を通じて降圧された後にバッテリ200に充電される。
【0045】
また、エンジン110の始動時には、バッテリ200から供給される直流電流がコンバータ220を通じて昇圧された後にインバータ210によって交流電流に変換されて第1のモータジェネレータ120に供給される。
【0046】
第2のモータジェネレータ150は、第1のモータジェネレータ120と同様に、インバータ210及びコンバータ220を介してバッテリ200に接続されている。そして、発進時、低速時及び加速時には、バッテリ200から供給される直流電流がコンバータ220で昇圧された後にインバータ210によって交流電流に交換されて第2のモータジェネレータ150に供給される。
【0047】
第1のモータジェネレータ120は、エンジン110の始動時にはエンジン110をクランキングするスタータモータとして機能する一方、エンジン110の運転中にはエンジン110の動力を利用して発電を行う発電機として機能する。
【0048】
また、定常走行時及び加速時には、第1のモータジェネレータ120によって発電された交流電流がインバータ210を介して第2のモータジェネレータ150に供給される。こうして供給された電流によって第2のモータジェネレータ150が駆動されると、その動力はリダクションギア140に伝達される。そして、リダクションギア140に伝達された動力がディファレンシャル180を介して駆動輪190L,190Rに伝達される。
【0049】
また、減速時には、駆動輪190L,190Rから伝達される動力により第2のモータジェネレータ150が駆動される。このとき、第2のモータジェネレータ150が発電機として機能し、発電することで、駆動輪190L,190Rから第2のモータジェネレータ150に伝達された動力が電力に変換される。こうして変換された電力は、インバータ210によって交流電流から直流電流に変換され、コンバータ220を通じて降圧された後にバッテリ200に充電される。すなわち、減速時には、運動エネルギーを電気エネルギーに変換してバッテリ200に蓄えることにより、エネルギーが回収される。
【0050】
次に、上記ハイブリッドシステム100の制御構成について図2を参照して説明する。
図2に示すように、ハイブリッドシステム100の制御は、パワーマネジメントコントロールコンピュータ500から出力される制御信号に基づいて実行される。パワーマネジメントコントロールコンピュータ500は、ハイブリッドシステム100の各部を制御するための各種演算処理を実施する中央演算処理装置(CPU)、制御用のプログラムやデータが記憶された読み込み専用メモリ(ROM)、演算処理の結果などを一時的に記憶するランダムアクセスメモリ(RAM)などを備えて構成されている。
【0051】
また、パワーマネジメントコントロールコンピュータ500には、バッテリ監視ユニット250、モータ制御ユニット300及びエンジン制御ユニット400などが電気的に接続されている。
【0052】
バッテリ監視ユニット250には、バッテリ200とコンバータ220との間の電力ラインに設けられた電流センサ230からの電流値信号、バッテリ温度センサ240からのバッテリ温度信号などが入力される。バッテリ監視ユニット250は、こうしたセンサから入力されたバッテリ200の状態に関するデータを必要に応じてパワーマネジメントコントロールコンピュータ500に送信する。なお、パワーマネジメントコントロールコンピュータ500は、バッテリ監視ユニット250から送信される電流センサ230の検出値の積算値に基づいてバッテリ200の充電残量を演算する。
【0053】
モータ制御ユニット300は、パワーマネジメントコントロールコンピュータ500からの出力要求に従い、インバータ210及びコンバータ220を制御し、第1及び第2の各モータジェネレータ120,150を制御する。また、モータ制御ユニット300には、第1のモータジェネレータ120の回転数を検出する第1の回転センサ320と第2のモータジェネレータ150の回転数を検出する第2の回転センサ350が電気的に接続されている。そして、モータ制御ユニット300は、これら回転センサ320,350によって検出された回転数の情報など、車両制御に必要な情報をパワーマネジメントコントロールコンピュータ500に送信する。
【0054】
エンジン制御ユニット400は、パワーマネジメントコントロールコンピュータ500からの出力要求に従い、エンジン110における燃料噴射制御や、点火時期制御、吸入空気量制御などを行う。なお、本実施形態のエンジン110では、パワーマネジメントコントロールコンピュータ500からの制御指令に基づいて算出される要求噴射量に対応する量の燃料を運転状態に応じて通路噴射弁117及び筒内噴射弁118のいずれか一方のみから噴射したり、通路噴射弁117及び筒内噴射弁118から噴き分けて噴射したりする。例えば、アイドル運転時などのようにエンジン110に対する要求出力が極めて低いときにはポート噴射のみによって要求噴射量に対応する量の燃料を全量噴射する。一方で、加速時のようにエンジン110に対する要求出力が高いときには、筒内噴射を併用し、要求噴射量に対応する量の燃料を通路噴射弁117及び筒内噴射弁118から噴き分けて噴射する。
【0055】
エンジン制御ユニット400には、吸入空気量を検出するエアフロメータ410、及びクランクシャフト113の回転数であるエンジン回転数を検出するクランクポジションセンサ420が電気的に接続されている。また、エンジン制御ユニット400には、スロットルバルブの開度を検出するスロットルポジションセンサ430、及び高圧燃料系11Bから筒内噴射弁118に供給される燃料の圧力を検出する燃圧センサ440などが電気的に接続されている。そして、エンジン制御ユニット400は、必要に応じてこれらのセンサによって検出された情報をパワーマネジメントコントロールコンピュータ500に送信する。
【0056】
また、パワーマネジメントコントロールコンピュータ500には、アクセルの操作量を検出するアクセルポジションセンサ510、シフトレバーの操作位置を検出するシフトポジションセンサ520、及び車速を検出する車速センサ530などが電気的に接続されている。そして、パワーマネジメントコントロールコンピュータ500は、アクセルの操作量と車速とに基づいてリングギア132に出力すべき要求トルクを算出し、この要求トルクに対応する要求動力がリングギア132に出力されるように、エンジン110、第1及び第2の各モータジェネレータ120,150を制御する。
【0057】
例えば、パワーマネジメントコントロールコンピュータ500は、エンジン110が出力する動力の一部を利用して第1のモータジェネレータ120を駆動させ、そこで発電された電力を利用して第2のモータジェネレータ150を駆動させる。これにより、駆動輪190L,190Rには、エンジン110の動力と共に第2のモータジェネレータ150の動力が伝達される。こうしてエンジン110が出力する動力の一部を第1のモータジェネレータ120に分配するととともに、第2のモータジェネレータ150の動力によって駆動をアシストすることにより、エンジン回転数を調整し、エンジン110を効率のよい運転領域で運転させつつ要求動力が得られるようにする。
【0058】
また、パワーマネジメントコントロールコンピュータ500は、要求動力が大きい加速時などには、バッテリ200から第2のモータジェネレータ150に電力を供給させ、第2のモータジェネレータ150によるアシスト量を増大させてより大きな動力を出力させる。
【0059】
さらに、パワーマネジメントコントロールコンピュータ500は、バッテリ200の充電残量が少ないときには、エンジン110の運転量を増大させ、第1のモータジェネレータ120における発電量を増大させることにより、バッテリ200に電力を供給させる。
【0060】
なお、本実施形態の車両では、バッテリ200の充電残量が十分に確保されている場合には、エンジン110の運転を停止して要求動力に見合う動力を第2のモータジェネレータ150のみからリングギア132に出力させるモータ運転も可能となっている。
【0061】
ところで、停車中においては、基本的にはエンジン110は停止している。しかし、停車中であってもエンジン110の駆動によって生じる暖気を用いて車室内の温度調節を行う場合及びバッテリ200を暖める場合などには、エンジン110が駆動されアイドリング運転が行われることがある。こうしたアイドリング運転中などのようにエンジン110に要求される要求出力が極めて小さい場合、上述したようにエンジン110では、筒内噴射は行われずに、ポート噴射のみが行われる。
【0062】
このようにポート噴射のみが行われると、筒内噴射弁118、高圧燃料系11Bを構成するデリバリパイプなどの構成部材及びデリバリパイプ内の燃料には、ポート噴射時に気筒111内の燃焼室114で発生した熱の一部が伝達される。その結果、高圧燃料系11Bから筒内噴射弁118に供給される燃料の圧力は、デリバリパイプ及び該デリバリパイプ内の燃料の温度が上昇するに連れて次第に高くなる。筒内噴射弁118によって実現可能な最小開弁期間には限界があるため、高圧燃料系11Bから筒内噴射弁118に供給される燃料の圧力が高くなるほど、筒内噴射弁118による噴射によって実現することのできる燃料噴射量の下限値は大きくなっていく。そのため、高圧燃料系11Bから筒内噴射弁118に供給される燃料の圧力が高くなり続けると、筒内噴射を行う運転状態に移行したときに、筒内噴射弁118からの燃料の噴射量が好適に調整できないおそれがある。つまり、燃焼室114内に供給される燃料の供給量が過剰になるおそれがある。
【0063】
そこで、本実施形態では、図3のフローチャートに示すように、筒内噴射時における燃料の噴射過多を抑制するための制御処理ルーチンがパワーマネジメントコントロールコンピュータ500によって実行される。なお、この制御処理ルーチンは、以下に示す2つの条件を満たす場合に実行される。
(第1の条件)停車中にエンジン110が駆動していること(即ち、アイドリング運転中であること)。
(第2の条件)第1のモータジェネレータ120が発電していないこと。
【0064】
次に、筒内噴射時における燃料の噴射過多を抑制するための制御処理ルーチンについて、図3に示すフローチャートを参照して説明する。
さて、図3に示す制御処理ルーチンは、上記2つの条件の成立時に、予め設定された所定周期毎に実行される。そして、この制御処理ルーチンにおいて、パワーマネジメントコントロールコンピュータ500は、アイドリング運転時におけるエンジン110でポート噴射のみが行われているか否かを判定する(ステップS10)。そして、エンジン110で筒内噴射が行われている場合(ステップS10:NO)、パワーマネジメントコントロールコンピュータ500は、本制御処理ルーチンを一旦終了する。
【0065】
一方、エンジン110でポート噴射のみが行われている場合(ステップS10:YES)、パワーマネジメントコントロールコンピュータ500は、筒内噴射弁118で噴射可能な燃料の下限噴射量Aminが、その時点の要求噴射量Xよりも多いか否かを判定する(ステップS11)。下限噴射量Aminは、高圧燃料系11Bから筒内噴射弁118に供給される筒内噴射用の燃料の圧力Pdiと、筒内噴射弁118で実現可能な最小開弁期間とに基づいて算出される。なお、この最小開弁期間は、筒内噴射弁118の特性によって決まる。そのため、下限噴射量Aminは、筒内噴射用の燃料の圧力Pdiが高圧であるほど大きな値となる。
【0066】
下限噴射量Aminが要求噴射量X以下である場合(ステップS11:NO)、パワーマネジメントコントロールコンピュータ500は、本制御処理ルーチンを一旦終了する。一方、下限噴射量Aminが要求噴射量Xよりも多い場合(ステップS11:YES)、パワーマネジメントコントロールコンピュータ500は、第1のモータジェネレータ120で発電させてバッテリ200を充電する充電制御を実施する(ステップS12)。具体的には、パワーマネージメントコントロールコンピュータ500は、モータ制御ユニット300に第1のモータジェネレータ120による発電とバッテリ200への充電の実施を指示すると共に、エンジン制御ユニット400に出力の増大を指示する。指示を受信したモータ制御ユニット300は、第1のモータジェネレータ120で発電が開始され、バッテリ200への充電が実行されるようにインバータ210及びコンバータ220を制御する。また、指示を受信したエンジン制御ユニット400は、発電による負荷の増大によるエンジン回転数の低下を抑制するために吸入空気量を増大させ、それにあせて要求噴射量を増大させることによりエンジン110の出力を増大させる。
【0067】
続いて、パワーマネジメントコントロールコンピュータ500は、エンジン110の燃焼室114への燃料の供給方法をポート噴射から筒内噴射に切り替えることをエンジン制御ユニット400に指示する(ステップS13)。指示を受信したエンジン制御ユニット400は、燃料の供給方法をポート噴射から筒内噴射に切り替える。すなわち、エンジン制御ユニット400は、要求噴射量に対応する量の燃料を筒内噴射弁118から全量噴射する噴射態様に切り替える。
【0068】
そして、パワーマネジメントコントロールコンピュータ500は、筒内噴射弁118で噴射可能な燃料の下限噴射量Aminが、上記要求噴射量Xよりも小さい値に設定される基準値Y1未満であるか否かを判定する(ステップS14)。例えば、この基準値Y1は、要求噴射量Xから予め設定された減算量を減算した値である。また、基準値Y1の算出に用いられる要求噴射量Xは、ポート噴射から筒内噴射に切り替えられる前の値(即ち、ステップS11の判定で用いられた要求噴射量X)である。
【0069】
下限噴射量Aminが基準値Y1以上である場合(ステップS14:NO)、筒内噴射では要求噴射量Xよりも多い量の燃料が噴射されるおそれがあるため、パワーマネジメントコントロールコンピュータ500は、その処理を前述したステップS12に移行する。
【0070】
一方、下限噴射量Aminが基準値Y1未満になった場合(ステップS14:YES)、筒内噴射でも要求噴射量Xと同等の量の燃料を噴射できるため、パワーマネジメントコントロールコンピュータ500は、充電制御を停止する(ステップS15)。具体的には、パワーマネジメントコントロールコンピュータ500は、モータ制御ユニット300に第1のモータジェネレータ120による発電とバッテリ200への充電の停止を指示すると共に、エンジン制御ユニット400に出力の低減を指示する。指示を受信したモータ制御ユニット300は、第1のモータジェネレータ120での発電が停止され、バッテリ200への充電が停止されるようにインバータ210及びコンバータ220を制御する。また、指示を受信したエンジン制御ユニット400は、発電による負荷の増大に対応するために増大させていた吸入空気量を低減させ、それにあせて要求噴射量を低減させることによりエンジン110の出力を低減させる。
【0071】
続いて、パワーマネジメントコントロールコンピュータ500は、エンジン110の燃焼室114への燃料の供給方法を元に戻す旨をエンジン制御ユニット400に指示する。指示を受信したエンジン制御ユニット400は、燃料の供給方法を筒内噴射からポート噴射に切り替える(ステップS16)。すなわち、エンジン制御ユニット400は、要求噴射量に対応する量の燃料を通路噴射弁117から全量噴射する噴射態様に切り替える。その後、パワーマネジメントコントロールコンピュータ500は、本制御処理ルーチンを一旦終了する。
【0072】
次に、アイドリング運転中におけるハイブリッドシステム100の動作について、図4に示すタイミングチャートを参照して説明する。なお、前提として、停車中において上記2つの条件が成立しているものとする。
【0073】
さて、停車中にエンジン110が運転されるアイドリング運転時には、該エンジン110に要求される要求出力が極めて低いため、筒内噴射は行われず、ポート噴射のみが行われている。第1のタイミングt11から第2のタイミングt12では、筒内噴射用の燃料の圧力Pdiは、時間が経過するに連れて次第に高圧になる。これは、ポート噴射によってエンジン110の燃焼室114で発生した熱によって高圧燃料系11Bから筒内噴射弁118に供給される燃料が暖められ、筒内噴射用の燃料の温度が上昇するためである。なお、第2のタイミングt12までは、筒内噴射弁118で実現可能な燃料の下限噴射量Aminがその時点の要求噴射量X以下となっている。
【0074】
そして、ポート噴射のみが継続して行われることで筒内噴射用の燃料の圧力Pdiが上昇し、筒内噴射弁118で実現可能な燃料の下限噴射量Aminがその時点の要求噴射量Xを超えると、第1のモータジェネレータ120による発電が開始される(第2のタイミングt12)。すると、第1のモータジェネレータ120での発電が開始される前と比較して、エンジン110に対する負荷が大きくなる。
【0075】
そして、エンジン110に対する負荷が大きくなると、エンジン110に対する要求出力が高められる。すると、一回のサイクルで燃焼室114に吸入される吸入空気量SAは、第1のモータジェネレータ120による発電開始前と比較して多くなる。
【0076】
また、第1のモータジェネレータ120で発電が開始される第2のタイミングt12では、燃料の供給方法が、ポート噴射から筒内噴射に切り替えられる。すると、燃焼室114に供給される燃料の供給量は、筒内噴射の開始前と比較して多くなる。これは、筒内噴射用の燃料の圧力Pdiが高圧になり過ぎたことで、筒内噴射弁118からの燃料噴射量を筒内噴射の開始前における要求噴射量以下の噴射量に調整できないためである。このように燃焼室114への燃料の供給量が多くなっても、エンジン110に対する要求出力の増大によって燃焼室114への吸入空気量SAも多くなっている。そのため、ポート噴射から筒内噴射への切替えによって燃焼室114に供給される燃料の供給量が増えても、燃焼室114への燃料の供給過多が回避される。
【0077】
つまり、燃焼室114における吸入空気に対する燃料の比率は、筒内噴射の開始前の比率から大幅に大きくなっていない。その結果、燃焼室114では、燃焼行程時における点火プラグ119の点火によって、混合気が好適に燃焼される。そして、燃焼によって発生した力は、ピストン112などを介してクランクシャフト113に伝達される。
【0078】
このとき、停車中であるため、エンジン110で発生した動力は、第1のモータジェネレータ120に伝達される。すると、第1のモータジェネレータ120は、伝達されたエンジン110からの動力によって発電する。そして、第1のモータジェネレータ120によって発電された交流電流は、インバータ210に伝達されるとともに同インバータ210によって直流電流Idに変換され、コンバータ220を通じて降圧された後にバッテリ200に充電される。
【0079】
また、上記のようにポート噴射が停止された状態で筒内噴射が行われるため、高圧燃料系11Bのデリバリパイプに一時的に貯留される筒内噴射用の燃料の貯留量が少なくなる。その結果、筒内噴射が行われることにより、筒内噴射用の燃料の圧力Pdiが低くなり始める(第3のタイミングt13)。ただし、筒内噴射が開始される第2のタイミングt12以降では、筒内噴射弁118で噴射可能な燃料の下限噴射量Aminが、第2のタイミングt12時点での要求噴射量Xよりも小さい基準値Y1以上であるため、筒内噴射が継続される。
【0080】
第3のタイミングt13以降では、筒内噴射用の燃料の圧力Pdiは、筒内噴射が継続して行われることにより次第に低くなる。そして、筒内噴射用の燃料の圧力Pdiと筒内噴射弁118の最小開弁期間とに基づき算出される筒内噴射弁118の下限噴射量Aminが上記基準値Y1を下回る第4のタイミングt14では、エンジン110に対する負荷を低減させるために第1のモータジェネレータ120での発電が停止される。すると、エンジン110に対する要求出力も小さくされる。その結果、一回のサイクルで燃焼室114に吸入される吸入空気量SAは、第1のモータジェネレータ120による発電停止前と比較して少なくなる。
【0081】
また、第1のモータジェネレータ120での発電が停止される第4のタイミングt14では、燃料の供給方法が、筒内噴射からポート噴射に切り替えられる。つまり、エンジン110の駆動態様は、第2のタイミングt12以前とほぼ同等となる。なお、この状態で筒内噴射が行われたとしても、筒内噴射弁118からは、要求噴射量Xと同等の量の燃料が燃焼室114内に噴射される。
【0082】
以上説明したように、本実施形態では、以下に示す効果を得ることができる。
(1)アイドリング運転時にポート噴射のみが行われると、筒内噴射用の燃料の圧力Pdiは、筒内噴射用の燃料の温度上昇に伴い高くなっていく。こうした状態で、ポート噴射のみを行うような運転状態であるアイドリング運転時に筒内噴射が行われる際には、エンジン110に対する負荷が増大される。すると、燃焼室114内に吸入される吸入空気量SAが、エンジン110に対する負荷の増大に伴い多くされる。そのため、吸入空気量SAに対して過剰に多くの燃料が気筒111内に供給されることを抑制することができるようになる。
【0083】
(2)本実施形態では、筒内噴射を開始するに際して、第1のモータジェネレータ120によって発電を行うことにより、エンジン110に対する負荷が増大される。そのため、筒内噴射が開始されるに際して増大されたエンジン110からの出力は、第1のモータジェネレータ120における発電を通じて電気エネルギーに変換され、バッテリ200に蓄えられる。つまり、筒内噴射の開始に起因して要求噴射量が増大されることによる出力の増加分を電気エネルギーに変換してバッテリ200に蓄え、その後の車両走行時に有効活用することが可能となる。したがって、筒内噴射を行うことに起因した燃料消費量の増大を抑制することが可能となる。
【0084】
(3)また、本実施形態では、アイドリング運転時に筒内噴射が行われる間は、ポート噴射が停止される。ここで、アイドリング運転時にポート噴射と筒内噴射とを共に行う方法も考えられる。しかし、この場合、筒内噴射弁118から噴射される燃料の噴射量は、ポート噴射が停止される本実施形態の場合と比較して少なくなる。
【0085】
これに対し、本実施形態では、アイドリング運転時に筒内噴射が行われる間は、ポート噴射が停止されるため、ポート噴射と筒内噴射とが共に行われる場合と比較して、筒内噴射弁118からの燃料噴射量が多くなる。その結果、高圧燃料系11Bのデリバリパイプ内に一時的に貯留される燃料の消費速度が速くなり、筒内噴射用の燃料の圧力Pdiを速やかに低くすることができる。したがって、筒内噴射用の燃料の圧力Pdiを低くするためにエンジン110に対する負荷を増大させた上で筒内噴射を行う期間を短くすることができ、ひいてはエンジン110の燃料消費量を低減させることができる。
【0086】
(4)筒内噴射用の燃料の圧力Pdiが高くなるほど、筒内噴射弁118の下限噴射量Aminは多くなっていく。そこで、下限噴射量Aminが要求噴射量Xよりも少ない時点から筒内噴射を行うことによって筒内噴射用の燃料の圧力Pdiが過剰に高くなることを抑制することも考えられる。しかし、その場合には、本来はポート噴射のみが行われるアイドリング運転時に、筒内噴射が行われる頻度が高くなってしまう。
【0087】
これに対し、本実施形態では、下限噴射量Aminが要求噴射量Xよりも多くなったときに、筒内噴射が行われる。そのため、エンジン110に対する負荷を増大させずに筒内噴射を行った場合に要求噴射量Xを超える過剰な量の燃料を噴射してしまう蓋然性が高いときにのみエンジン110の負荷を増大させて筒内噴射が行われるようになる。言い換えると、エンジン110に対する負荷を増大させなくても要求噴射量Xに対応する量の燃料を筒内噴射弁118から噴射することができる場合には筒内噴射が行われない。したがって、アイドリング運転時では、筒内噴射の行われる頻度が高くなることが抑制され、本来行うべきポート噴射を筒内噴射よりも優先させて行うことができるようになる。
【0088】
(5)アイドリング運転時に筒内噴射が行われる場合に、該筒内噴射を終了させてポート噴射を再開させるか否かの判断基準として設定される基準値Y1は、筒内噴射が開始された時点の要求噴射量Xよりも十分に小さい値となっている。そのため、筒内噴射の実行条件にヒステリシスを持たせ、頻繁に筒内噴射が繰り返されることを抑制することができる。したがって、ポート噴射のみが行われる運転状態(即ち、アイドリング運転時)であるにも拘わらず、筒内噴射の行われる頻度が高くなることを抑制することができる。
【0089】
(6)本実施形態では、アイドリング運転時に必要に応じて筒内噴射が行われることで、筒内噴射用の燃料の圧力Pdiが十分に低くされる。そのため、車両の加速時などのようにエンジン110に対する要求出力が高くなり、筒内噴射を行うような運転状態になった場合には、その時点の要求噴射量のうち筒内噴射弁118に分配された要求量の燃料を、筒内噴射弁118から適切に噴射することができる。
【0090】
(第2の実施形態)
次に、本発明の第2の実施形態を図5に従って説明する。第2の実施形態は、アイドリング運転時にポート噴射から筒内噴射に切り替えたり、筒内噴射からポート噴射に戻したりする際の判定に用いられるパラメータが第1の実施形態と異なっている。以下の説明において、第1の実施形態と相違する部分について主に説明する。また、第1の実施形態と同一の部材には同一符号を付して、その説明を省略する。
【0091】
筒内噴射時における燃料の噴射過多を抑制するための制御処理ルーチンについて、図5に示すフローチャートを参照して説明する。
図5に示す制御処理ルーチンにおいて、パワーマネジメントコントロールコンピュータ500は、アイドリング運転時に筒内噴射が行われている場合には(ステップS20:NO)、本制御処理ルーチンを一旦終了し、アイドリング運転時にポート噴射のみが行われている場合には(ステップS20:YES)、その処理を次のステップS21に移行する。
【0092】
ステップS21において、パワーマネジメントコントロールコンピュータ500は、筒内噴射用の燃料の圧力Pdiが、筒内噴射弁118の最小開弁期間とその時点の要求噴射量Xに基づいて算出された上限値Bmaxを超えたか否かを判定する(ステップS21)。この上限値Bmaxは、現時点の要求噴射量Xと等しい量の燃料を筒内噴射弁118から噴射することのできる燃料圧力の上限値である。つまり、筒内噴射用の燃料の圧力Pdiが上限値Bmaxを超えた状態で筒内噴射が行われると、要求噴射量Xよりも多い燃料が燃焼室114に供給される。
【0093】
筒内噴射用の燃料の圧力Pdiが上限値Bmax未満である場合(ステップS21:NO)、パワーマネジメントコントロールコンピュータ500は、本制御処理ルーチンを一旦終了する。一方、筒内噴射用の燃料の圧力Pdiが上限値Bmaxを超えた場合(ステップS21:YES)、パワーマネジメントコントロールコンピュータ500は、上記ステップS12,S13の各処理と同等のステップS22,S23の各処理を行う。
【0094】
そして、ステップS23を行ったパワーマネジメントコントロールコンピュータ500は、筒内噴射用の燃料の圧力Pdiが、上記上限値Bmaxよりも小さい値に設定される基準値Y2未満であるか否かを判定する(ステップS24)。例えば、この基準値Y2は、上記上限値Bmaxから予め設定された減算量を減算した値である。
【0095】
筒内噴射用の燃料の圧力Pdiが基準値Y2以上である場合(ステップS24:NO)、パワーマネジメントコントロールコンピュータ500は、その処理を前述したステップS22に移行する。一方、筒内噴射用の燃料の圧力Pdiが基準値Y2未満である場合(ステップS24:YES)、パワーマネジメントコントロールコンピュータ500は、上記ステップS15,S16の各処理と同等のステップS25,S26の各処理を行い、その後、本制御処理ルーチンを一旦終了する。
【0096】
以上説明したように、本実施形態では、上記第1の実施形態の効果(1)〜(3)(5)(6)に相当する効果に加え、以下に示す効果をさらに得ることができる。
(7)本実施形態では、筒内噴射弁118の下限噴射量Amin及び要求噴射量Xの代わりに、筒内噴射用の燃料の圧力Pdi及び上記上限値Bmaxを用いて、ポート噴射から筒内噴射に切り替えたり、筒内噴射からポート噴射に戻したりする際の判定が行われている。このような制御構成を採用しても、アイドリング運転時に、筒内噴射によってその時点の要求噴射量Xを超える量の燃料しか噴射できなくなった場合には、エンジン110に対する負荷が増大された上で、筒内噴射が行われる。そのため、吸入空気量SAに対して過剰に多くの燃料が気筒111内に供給されることを抑制することができるようになる。
【0097】
その一方で、筒内噴射によってその時点の要求噴射量Xと同等の量の燃料を噴射できる場合には、ポート噴射のみが行われる。つまり、アイドリング運転時では、筒内噴射の実行頻度が高くなることが抑制され、本来行うべきポート噴射を筒内噴射よりも優先させて行うことができるようになる。
【0098】
なお、上記各実施形態は以下のような別の実施形態に変更してもよい。
・各実施形態において、ポート噴射のみでエンジン110を駆動させるような運転状態であるのであれば、アイドリング運転時以外の運転状態でも、図3及び図5に示す制御処理ルーチンを行ってもよい。
【0099】
・各実施形態において、ポート噴射のみでエンジン110を駆動させるような運転状態で第1のモータジェネレータ120が発電している場合であっても、エンジン110に対する負荷をさらに増大させることが可能であれば、図3及び図5に示す制御処理ルーチンを行ってもよい。例えば、エンジン110に対する負荷をさらに増大させる方法としては、第1のモータジェネレータ120での発電量がより多くなるように、第1のモータジェネレータ120からより大きなトルクを発生させることなどが挙げられる。
【0100】
・各実施形態において、ポート噴射のみでエンジン110を駆動させる運転状態であるにも拘わらず、筒内噴射を行う場合には、筒内噴射とポート噴射を併用させてもよい。このように構成しても、筒内噴射によって筒内噴射弁118から燃料が噴射される分、高圧燃料系11Bのデリバリパイプに一時的に貯留される燃料が少なくなることで、筒内噴射用の燃料の圧力Pdiを低くすることが可能となる。ただし、ポート噴射を停止させる場合と比較して、エンジン110に対する負荷を増大させた上で筒内噴射を行う期間が長くなる。
【0101】
・ポート噴射のみでエンジン110を駆動させるような運転状態で、筒内噴射を行う場合としては、筒内噴射弁118の温度上昇に伴って該筒内噴射弁118にデポジットが堆積することを抑制したい場合が挙げられる。このようにポート噴射のみが行われることで筒内噴射弁118の温度が高くなったときにも、本発明を適用してもよい。この場合、筒内噴射弁118の温度上昇に伴って筒内噴射を行うに際して、筒内噴射用の燃料の圧力Pdiが高い場合(例えば、ステップS11,S21の判定結果が「YES」である場合)には、エンジン110に対する負荷を増大させた上で、筒内噴射を行うことになる。この場合、筒内噴射用の燃料の圧力Pdiを十分に低くすることができるだけではなく、筒内噴射弁118へのデポジットの堆積を抑制することができるようになる。
【0102】
ただし、筒内噴射弁118の温度が上昇しても、筒内噴射用の燃料の圧力Pdiが十分に低い場合(例えば、ステップS11,S21の判定結果が「NO」である場合)には、エンジン110に対する負荷を変更しないで筒内噴射を行うことが好ましい。
【0103】
・各実施形態において、エンジン110に対する負荷を増大させることができるのであれば、第1のモータジェネレータ120以外にも、エンジン110からの動力を利用する他の車載アクチュエータを駆動させてもよい。例えば、車載空調機を駆動させるためのコンプレッサの駆動を開始させても、エンジン110に対する負荷を増大させることが可能となる。
【0104】
・車両を、通路噴射弁117及び筒内噴射弁118を共に備えるエンジン110を搭載する車両であれば上記ハイブリッドシステム100を搭載しない車両に具体化してもよい。この場合、エンジン110に対する負荷を増大させる方法としては、車載空調機用のコンプレッサの駆動を開始させたり、オルタネータによる発電を開始させたりする方法が挙げられる。この場合、エンジン110を制御するエンジン制御ユニット400が、車両の制御装置として機能する。
【符号の説明】
【0105】
110…内燃機関としてのエンジン、111…気筒、115…吸気通路、117…通路噴射弁、118…筒内噴射弁、120…発電機としての第1のモータジェネレータ、400…車両の制御装置としてのエンジン制御ユニット、500…車両の制御装置としてのパワーマネジメントコントロールコンピュータ。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
吸気通路内に燃料を噴射する通路噴射弁及び気筒内に燃料を直接噴射する筒内噴射弁を有し、要求噴射量に対応する量の燃料を運転状態に応じて前記通路噴射弁及び前記筒内噴射弁のいずれか一方のみから噴射したり、両噴射弁から噴き分けて噴射したりする一方、前記通路噴射弁のみから燃料を噴射する運転状態であっても前記筒内噴射弁から燃料を噴射することのある内燃機関を備える車両の制御装置において、
前記通路噴射弁のみから燃料を噴射する運転状態のときに前記筒内噴射弁から燃料を噴射する際には、前記内燃機関に対する負荷を増大させた上で、前記筒内噴射弁から燃料を噴射することを特徴とする車両の制御装置。
【請求項2】
前記車両は、前記内燃機関の駆動に基づき発電可能な発電機を搭載するハイブリッド車両であり、
前記発電機に発電を行わせることで、前記内燃機関に対する負荷を増大させることを特徴とする請求項1に記載の車両の制御装置。
【請求項3】
請求項1又は請求項2に記載の車両の制御装置において、
前記通路噴射弁のみから燃料を噴射する運転状態のときに前記筒内噴射弁から燃料を噴射する際には、前記筒内噴射弁から前記要求噴射量に対応する量の燃料を全量噴射することを特徴とする車両の制御装置。
【請求項4】
前記筒内噴射弁の噴射によって実現可能な下限噴射量が、前記要求噴射量よりも多くなったときには、前記通路噴射弁のみから燃料を噴射する運転状態であっても、前記内燃機関に対する負荷を増大させた上で、前記筒内噴射弁から燃料を噴射することを特徴とする請求項1〜3のいずれか一項に記載の車両の制御装置。
【請求項5】
前記筒内噴射弁に供給される燃料の圧力と、前記筒内噴射弁によって実現可能な最小開弁期間とに基づいて前記下限噴射量を算出し、
算出された前記下限噴射量が前記要求噴射量よりも多くなったときには、前記通路噴射弁のみから燃料を噴射する運転状態であっても、前記内燃機関に対する負荷を増大させた上で、前記筒内噴射弁から燃料を噴射することを特徴とする請求項4に記載の車両の制御装置。
【請求項6】
前記通路噴射弁のみから燃料を噴射する運転状態において前記筒内噴射弁から燃料を噴射しているときに算出された前記下限噴射量が、前記要求噴射量よりも小さな基準値を下回ったときには、
前記筒内噴射弁からの燃料の噴射と前記内燃機関に対する負荷の増大とを終了させることを特徴とする請求項5に記載の車両の制御装置。
【請求項7】
前記要求噴射量と等しい量の燃料を前記筒内噴射弁から噴射できる燃料の圧力の上限値を、前記筒内噴射弁によって実現可能な最小開弁期間と前記要求噴射量とに基づいて算出し、
前記筒内噴射弁に供給される燃料の圧力が、算出された前記上限値よりも高くなったときには、前記通路噴射弁のみから燃料を噴射する運転状態であっても、前記内燃機関に対する負荷を増大させた上で、前記筒内噴射弁から燃料を噴射することを特徴とする請求項4に記載の車両の制御装置。
【請求項8】
前記通路噴射弁のみから燃料を噴射する運転状態において前記筒内噴射弁から燃料を噴射しているときに該筒内噴射弁に供給される燃料の圧力が、前記上限値よりも小さな基準値を下回ったときには、
前記筒内噴射弁からの燃料の噴射と前記内燃機関に対する負荷の増大とを終了させることを特徴とする請求項7に記載の車両の制御装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2013−100728(P2013−100728A)
【公開日】平成25年5月23日(2013.5.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−243697(P2011−243697)
【出願日】平成23年11月7日(2011.11.7)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】