説明

車両の前部車体構造

【課題】エプロンサイドメンバの前端の上下のずれや捩れ変形を抑制して車体の剛性を効率良く高めることができる車両の前部車体構造を提供すること。
【解決手段】エンジンルームSの左右両側にエプロンサイドメンバ4を車両前後方向に沿って配設した車両の前部車体構造として、左右の前記エプロンサイドメンバ4の各前端に、閉断面構造を有して下方に延びるエプロンサイドメンバフロント4Aをそれぞれ設け、左右の前記エプロンサイドメンバフロント4Aの下端部前面に、車幅方向に配されたラジエータサポートメンバ5の車幅方向両端部をボルト10によって車両前方から固定する構成とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、エンジンルームの左右両側にエプロンサイドメンバを車両前後方向に沿って配設した車両の前部車体構造に関するものである。
【背景技術】
【0002】
図7に従来の前部車体構造を示す。即ち、図7は車体前部の骨格構造を斜め下方から見た部分斜視図であり、同図に示すように車体前部のエンジンルームSの左右両側にはエプロンサイドメンバ104が車両前後方向に沿って配設されており、これらのエプロンサイドメンバ104の各前端には上下方向に延びるエプロンサイドメンバフロント104Aがそれぞれ設けられている。そして、左右のエプロンサイドメンバフロント104Aの下端部の底面には、車幅方向に沿って配されたラジエータサポートメンバ105の車幅方向両端部が各2本のボルト110によって下方から取り付けられ、このラジエータサポートメンバ105の車幅方向2箇所に車両前方に向かって水平に突出するように取り付けられたラジエータブラケット111によって不図示のラジエータの下部が取り付け支持される。
【0003】
又、左右のエプロンサイドメンバフロント104Aの前面には、フロントバンパの裏側で車幅方向に沿って配され車両前方からの荷重を受け止めるバンパメンバ106の左右両端部を車体に取り付け、車両前方からの荷重を吸収するクラッシュボックスが取り付けられ、エプロンサイドメンバフロント104Aの上方には不図示のアッパクロスメンバ(フードロックメンバ)が車幅方向に沿って横架されており、このアッパクロスメンバにラジエータの上部が取り付け支持されている。
【0004】
ところで、特許文献1には、車両の上下にそれぞれ車幅方向に沿って延びるアッパクロスメンバとロアクロスメンバ(ラジエータサポートメンバ)を配した車両の前部車体構造において、ロアクロスメンバをアッパクロスメンバに対して車両後方側に配設し、該ロアクロスメンバに取り付けられたラジエータ用下部ブラケットを交換可能に構成することによって、車両前方からの負荷を交換可能なラジエータ用下部ブラケットによって吸収する構成が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2007−131187号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところが、特許文献1において提案された前部車体構造を含めて図7に示す従来の前部車体構造においては、ラジエータサポートメンバ105はラジエータの取付部材としての機能しか考慮されておらず、車両の製造工程での組付性を考慮してラジエータサポートメンバ105の左右両端部は左右のエプロンサイドメンバフロント104Aの下端部の底面に2本のボルト110によって下方から取り付けられていたため、エプロンサイドメンバ104の前端間の開き方向の動きは抑止できるものの、上下にずれる動きを抑制する効果は余り期待できない。特に、締付固定用の2本のボルト110が車両前後方向に沿って並んで配置されている場合には、エプロンサイドメンバ104は更に変形(動き)し易くなる。又、ボルト110がエプロンサイドメンバ104の上下にずれる動きに対して剪断方向ではなく軸方向の引張強度によって荷重に耐えることになるため、ボルト110として強度の高いものを使用する必要があった。
【0007】
ところで、エプロンサイドメンバ104の前端部同士はクラッシュボックスを介してバンパメンバ106によって連結されているが、この連結構造は車両前方からの荷重の伝達や吸収機能が優先され、車体の剛性を効率良く高める取付構造とはなっていなかったため、車両の走行に伴うサスペンションからの入力等によるエプロンサイドメンバ104の捩れ変形やエプロンサイドメンバ104前端の上下にずれる動きを抑制することが難しかった。
【0008】
本発明は上記問題に鑑みてなされたもので、その目的とする処は、エプロンサイドメンバの前端の上下のずれや捩れ変形を抑制して車体の剛性を効率良く高めることができる車両の前部車体構造を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するため、請求項1記載の発明は、エンジンルームの左右両側にエプロンサイドメンバを車両前後方向に沿って配設した車両の前部車体構造であって、
左右の前記エプロンサイドメンバの各前端に、閉断面構造を有して下方に延びるエプロンサイドメンバフロントをそれぞれ設け、
左右の前記エプロンサイドメンバフロントの下端部前面に、車幅方向に沿って配されたラジエータサポートメンバの車幅方向両端部を車両前方から固定したことを特徴とする。
【0010】
請求項2記載の発明は、請求項1記載の発明において、前記ラジエータサポートメンバの車幅方向両端部の前記エプロンサイドメンバフロントの下端部前面への固定を複数のボルトによる締め付けによって行うとともに、
左右の各締付箇所を少なくとも車両中央側下方と車両側方側上方の2箇所としたことを特徴とする。
【0011】
請求項3記載の発明は、請求項1又は2記載の発明において、前記ラジエータサポートメンバを、閉断面構造を有して車幅方向中央に位置するメンバ部と、該メンバ部の左右両端部にそれぞれ取り付けられて前記エプロンサイドメンバフロントへの取付部を構成する一対のブラケット部とで構成し、
前記ブラケット部の上部に前記エプロンサイドメンバフロントへの締付箇所、下部に前記メンバ部の閉断面に連続する閉断面構造部をそれぞれ配置したことを特徴とする。
【0012】
請求項4記載の発明は、請求項1〜3の何れかに記載の発明において、前記エンジンルームの下方に配設されたサブフレームの左右前端部を左右の前記エプロンサイドメンバフロントの各底面に取り付けるとともに、該サブフレームの底面と前記ラジエータサポートメンバの車幅方向両端部の各底面とを連結する補強用のガセットを設けたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0013】
請求項1記載の発明によれば、左右のエプロンサイドメンバフロントの下端部同士を連結するラジエータサポートメンバの車幅方向両端部をエプロンサイドメンバフロントの前面に車両前方から固定したため、左右のエプロンサイドメンバの前端の上下のずれが抑制されて車体の剛性が効率良く高められる。
【0014】
又、左右のエプロンサイドメンバの各前端から下方に延びるエプロンサイドメンバフロントの下端部にラジエータサポートメンバの車幅方向両端部を固定したため、エプロンサイドメンバの軸中心からオフセットした位置を連結することができ、該エプロンサイドメンバの捩れを効率良く抑制して車体の剛性を高めることができる。
【0015】
以上のようにエプロンサイドメンバの前端の剛性が高められ、車体前部のねじれ変形等を抑制することが可能となって車体の剛性が効率良く高められ、車両の走行安定性と乗心地性及び商品性が高められる。
【0016】
そして、ラジエータサポートメンバの車幅方向両端部をエプロンサイドメンバフロントの前面に固定したため、車両前方から入力される衝撃荷重をラジエータサポートメンバで受け止めてエプロンサイドメンバフロントへ効率良く伝達することができ、エプロンサイドメンバフロントからエプロンサイドメンバへと衝撃荷重を伝達することができる。
【0017】
請求項2記載の発明によれば、ラジエータサポートメンバの車幅方向両端部のエプロンサイドメンバフロントの下端部前面へのボルトによる締付箇所を少なくとも車両中央側下方と車両側方側上方の2箇所としたため、エプロンサイドメンバフロントの下端部前面の幅に対して締付箇所間の距離を長くすることができ、ラジエータサポートメンバとエプロンサイドメンバフロントとの結合強度が高められ、エプロンサイドメンバ前端の上下のずれや捩れを抑制することができ、車体の剛性を効率良く高めることができる。そして、締付箇所を車両中央側を下方とし、車両側方側を上方としたため、ラジエータサポートメンバの左右端部の取付部の形状を小型にして軽量化することができる。
【0018】
請求項3記載の発明によれば、ラジエータサポートメンバの左右両端部に形成されたブラケット部には、その上部にエプロンサイドメンバフロントへの締付箇所が配置され、下部にメンバ部の閉断面に連続する閉断面構造部が配置されているため、エプロンサイドメンバフロントの下端の位置を高くすることができ、該エプロンサイドメンバフロントを小型化することができる。又、ラジエータサポートメンバの中央部のメンバ部を容易に低く配置することができ、該ラジエータサポートメンバに大型のラジエータを搭載することができる。
【0019】
更に、ラジエータサポートメンバのメンバ部の閉断面に連続する閉断面構造部をブラケット部に形成したため、より車両の側方にまで閉じ断面を延長配置することが可能となって、ラジエータサポートメンバ自体の剛性が向上して車体前部の剛性が向上するとともに、少なくともエプロンサイドメンバフロント前面の前側まで閉断面構造部を延長することができ、車両前方からの衝撃荷重を容易にエプロンサイドメンバフロントに伝達することができる。
【0020】
請求項4記載の発明によれば、サブフレームの底面とラジエータサポートメンバの車幅方向両端部の各底面とを連結する補強用のガセットを設けたため、ラジエータサポートメンバの左右両端部の上部はエプロンサイドメンバフロントの前面に固定され、下部はガセットによって補強されるため、該ラジエータサポートメンバのエプロンサイドメンバフロントへの取付強度と取付剛性が高められ、車体全体の剛性も高められる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】本発明に係る前部車体構造を示す車両前部の斜視図である。
【図2】ラジエータサポートメンバの取付構造を示す正面図である。
【図3】ラジエータサポートメンバの斜視図である。
【図4】図3のA−A線断面図である。
【図5】図3のB−B線断面図である。
【図6】本発明に係る前部車体構造を有する車両前部を斜め下方から見た部分斜視図である。
【図7】従来の前部車体構造を有する車両前部を斜め下方から見た部分斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下に本発明の実施の形態を添付図面に基づいて説明する。
【0023】
図1は本発明に係る前部車体構造を示す車両前部の斜視図、図2はラジエータサポートメンバの取付構造を示す正面図、図3はラジエータサポートメンバの斜視図、図4は図3のA−A線断面図、図5は図3のB−B線断面図、図6は車両前部を斜め下方から見た部分斜視図である。
【0024】
図1に示す車両1の前部車体構造において、前端上部には車幅方向に水平に延びるアッパクロスメンバ(フードロックメンバ)2が配されており、このアッパクロスメンバ2の左右両端部は、上下方向に延びるランプサポートブレース3を介して左右一対のエプロンサイドメンバ4に連結されている。
【0025】
上記エプロンサイドメンバ4は、閉断面構造でエンジンルームSの左右両側に車両前後方向に沿って配設されており、これらのエプロンサイドメンバ4の各前端には、閉断面構造を有して垂直下方に延びるエプロンサイドメンバフロント4Aがそれぞれ設けられている。そして、左右のエプロンサイドメンバフロント4Aの下端部前面には、車幅方向に沿って配されたラジエータサポートメンバ5の左右両端部が車両前方から固定されている。又、エプロンサイドメンバ4の前方となる左右のエプロンサイドメンバフロント4Aの上部前面には、前記ラジエータサポートメンバ5の上前方に車幅方向に沿って配されたバンパメンバ6の左右両端部がサポートブラケット7及び矩形板状のバンパメンバブラケット8及びサポートブラケット7とバンパメンバブラケット8の間に配置されてバンパメンバ6に加えられた衝撃荷重を吸収するクラッシュボックスを介してそれぞれ取り付けられている。
【0026】
尚、車体前部の前記バンパメンバ6の後方には不図示のラジエータがその面を前後方向に向けて垂直に配されるが、このラジエータの上部は前記アッパクロスメンバ2に取り付けられ、下部は前記ラジエータサポートメンバ5に支持される。そして、ラジエータと左右のエプロンサイドメンバ4及びダッシュパネル9によって囲まれる前記エンジンルームSには不図示のエンジン等が収容されており、このエンジンルームSの上方は前開き式の不図示のフロントフードによって覆われている。
【0027】
ところで、前記ラジエータサポートメンバ5は、図3に示すように、車幅方向中央に位置するメンバ部5Aと、該メンバ部5Aの左右両端部にそれぞれ取り付けられて前記エプロンサイドメンバフロント4Aへの取付部を構成する一対のブラケット部5Bとで構成されている。ここで、メンバ部5Aは、図4に示すように、板金のプレス成形によって得られたアッパパネル5aとロアパネル5bとで構成されている。詳細には、アッパパネル5aの上縁には前方に突出するフランジ5a1が形成され、アッパパネル5aの下縁には後方に突出するフランジ5a2が形成され、ロアパネル5bの上縁には前方に突出するフランジ5b1が形成され、ロアパネル5bの下縁には後方に突出するフランジ5b2が形成されている。そして、これらのアッパパネル5aとロアパネル5bのフランジンジ5a1と5b1及びフランジ5a2と5b2同士をそれぞれ上下に重ねて溶接することによって中空の閉断面構造のメンバ部5Aが構成されている。
【0028】
又、前記左右の各ブラケット部5Bは、車幅方向外側に向かって高さが高くなるよう正面視略三角状に形成されており、図5に示すように、板金のプレス成形によって得られたアウタパネル5cとインナパネル5dとで構成されている。詳細には、前方側に配置されたアウタパネル5cの上縁には前方に突出するフランジ5c1が形成され、アウタパネル5cの下縁には後方に突出するフランジ5c2が形成され、後方側に配置されたインナパネル5dの上縁には前方に突出するフランジ5d1が形成され、インナパネル5dの下縁には後方に突出するフランジ5d2が形成されている。そして、これらのアウタパネル5cとインナパネル5dのフランジ5c1と5d1及びフランジ5c2と5d2同士をそれぞれ重ねて溶接することによって中空の閉断面構造部分を有するブラケット部5Bが構成されている。尚、ブラケット部5Bの下端はエプロンサイドメンバフロント4Aの下端よりも下方に位置しているため、後方に突出するフランジ5c2と5d2とエプロンサイドメンバフロント4Aは干渉することはない。
【0029】
そして、図2及び図3に示すように、ラジエータサポートメンバ5の左右の各ブラケット部5Bには、その上部に斜めに配置された少なくとも2箇所がボルト10によって左右の各エプロンサイドメンバフロント4Aの下端部前面にそれぞれ締付固定されており、下部にはアウタパネル5cの下部が前方に膨出することによってメンバ部5Bの閉断面に連続する閉断面構造部5eが車両前方に向かって膨出するよう一体に形成されている。この閉断面構造部5eは、車両の左右方向で少なくともエプロンサイドメンバフロント4Aの位置まで形成されている。又、閉断面構造部5eの車両側方側の端部は、アウタパネル5cとインナパネル5dの接近配置(重ね合わせ)で閉じられており、ラジエータサポートメンバ5の内部空間に泥等が入り込まないようになっている。ここで、左右の各ブラケット部5Bのボルト10による各エプロンサイドメンバフロント4Aの下端部前面への締付箇所は、車両中央側下方と車両側方側上方の2箇所にボルト挿通孔が形成されており、各ブラケット部5Bは各エプロンサイドメンバフロント4Aの下端部前面に車両前方からボルト10にて締付固定される。尚、各エプロンサイドメンバフロント4Aの下端部前面の裏側には、ボルト10に対応するナットが溶着されている。
【0030】
ところで、図3に示すように、ラジエータサポートメンバ5の上面の車幅方向2箇所にはラジエータブラケット11が左右2本のボルト12によってそれぞれ取り付けられており、これらのラジエータブラケット11によって不図示のラジエータの下端部が支持される。詳細には、ラジエータの下端部は各ラジエータブラケット11に形成された円孔11aに下方から挿通する不図示のボルトによってラジエータブラケット11に取り付けられている。尚、前述のようにラジエータの上端部はアッパクロスメンバ2に取り付けられている。
【0031】
又、図6に示すように、エンジンルームSの下方にはサブフレーム(サスペンションフレーム)13が配設されており、このサブフレーム13の各前端部はマウントボルト14によって左右の前記エプロンサイドメンバフロント4Aの各底面に取り付けられている。そして、サブフレーム13の底面とラジエータサポートメンバ5の車幅方向両端部の各底面とは補強用のガセット15によって連結されている。詳細には、各ガセット15は、車両の前方側が後方側に対してより車両の中央側となるように斜めに配置され、ガセット15の一端は2本のボルト16によってラジエータサポートメンバ5の車幅方向両端部であって、ラジエータサポートメンバ5とエプロンサイドメンバフロント4Aとの結合位置よりも車幅方向中央側となるラジエータサポートメンバ5の各底面に取り付けられ、他端は前記マウントボルトによる共締めによってサブフレーム13と共にエプロンサイドメンバフロント4Aの各底面に取り付けられている。
【0032】
而して、以上説明した本発明に係る前部車体構造によれば、左右のエプロンサイドメンバフロント4Aの下端部同士を連結するラジエータサポートメンバ5の車幅方向両端部をエプロンサイドメンバフロント4Aの前面に車両前方から固定するようにしたため、左右のエプロンサイドメンバ4の前端の上下のずれが抑制されて車体の剛性が効率良く高められる。
【0033】
又、左右のエプロンサイドメンバ4の各前端から下方に延びるエプロンサイドメンバフロント4Aの下端部にラジエータサポートメンバ5の車幅方向両端部を固定したため、エプロンサイドメンバ4の軸中心からオフセットした位置を連結することができ、該エプロンサイドメンバ4の捩れを効率良く抑制して車体の剛性を高めることができる。
【0034】
以上のように車体の剛性が効率良く高められることによって車両1の走行安定性と乗心地性及び商品性が高められる。
【0035】
そして、本実施の形態では、ラジエータサポートメンバ5の車幅方向両端部をエプロンサイドメンバフロント4Aの前面に固定したため、車両前方から入力される衝撃荷重をラジエータサポートメンバ5で受け止めてエプロンサイドメンバフロント4Aからエプロンサイドメンバ4へと効率良く伝達することができる。
【0036】
又、本実施の形態では、ラジエータサポートメンバ5の車幅方向両端部のエプロンサイドメンバフロント4Aの下端部前面へのボルト10による締付箇所を少なくとも車両中央側下方と車両側方側上方の2箇所に配置したため、エプロンサイドメンバフロント4Aの下端部前面の幅に対して締付箇所間の距離を長くすることができ、ラジエータサポートメンバ5のエプロンサイドメンバフロント4Aへの結合強度が高められ、エプロンサイドメンバ4の前端の上下のずれを抑制することができ、車体の剛性を効率良く高めることができる。そして、締付箇所を車両中央側を下方とし、車両側方側を上方としたため、ラジエータサポートメンバ5の左右端部の取付部であるブラケット部5Bの形状を小型にして軽量化することができる。
【0037】
更に、本実施の形態では、ラジエータサポートメンバ5の左右両端部に形成されたブラケット部5Bには、その上側にエプロンサイドメンバフロント4Aへの締付箇所が配置され、下側にメンバ部5Aの閉断面に連続する閉断面構造部5eが配置されているため、エプロンサイドメンバフロント4Aの下端の位置を高くすることができ、該エプロンサイドメンバフロント4Aを小型化することができる。又、ラジエータサポートメンバ5の中央部のメンバ部5Aを容易に低く配置することができ、該ラジエータサポートメンバ5に大型のラジエータを搭載することができる。
【0038】
そして、本実施の形態では、ラジエータサポートメンバ5のメンバ部5Aの閉断面に連続する閉断面構造部5eをブラケット部5Bに形成したため、エプロンサイドメンバフロント4Aの前面前側まで閉断面構造部を延長することができ、車両前方からの衝撃荷重を容易にエプロンサイドメンバフロント4Aに伝達することができる。
【0039】
ここで、図3に示すように、ラジエータサポートメンバ5の左右の各ブラケット部5Bには、車両中央側下方と車両側方側上方の締付箇所を結ぶ直線と略平行に取付面から車両前方に向かって屈曲するフランジ部5c1,5d1(図5参照)が形成されている。これらのフランジ部5c1,5d1は、上下に延びるエプロンサイドメンバフロント4Aと左右に延びるラジエータサポートメンバ5の挟み角位置に筋交い状に斜めに配置されているため、これによってブラケット部5Bの剛性が高められるとともに、エプロンサイドメンバフロント4Aとラジエータサポートメンバ5の結合剛性が高められている。
【0040】
又、本実施の形態では、ラジエータサポートメンバ5の左右両端部の上部はエプロンサイドメンバフロント4Aの前面に固定され、下部はガセット15によって補強されるため、該ラジエータサポートメンバ5の取付強度と取付剛性が高められ、車体全体の剛性も高められるという効果が得られる。特に、各ガセット15は、その前端部が車幅方向中央に位置するよう斜めに配置されているため、フロントサイドメンバフロント4Aとラジエータサポートメンバ5との結合部の結合剛性がガセット15によって高められる。そして、この場合、ガセット15の前端部は、ラジエータサポートメンバ5のメンバ部5Aとブラケット部5Bの接合箇所(両者が重ねられてスポット溶接されているために比較的強度が高い箇所)に取り付けられているため、ラジエータサポートメンバ5とガセット15との結合構造が容易に高められる。
【0041】
更に、ラジエータサポートメンバ5とガセット15との結合位置は、ラジエータサポートメンバ5とエプロンサイドメンバフロント4Aとの結合位置よりも車幅方向中央側にオフセットされているため、エプロンサイドメンバフロント4Aとラジエータサポートメンバ5の接合剛性が高められている。
【符号の説明】
【0042】
1 車両
2 アッパクロスメンバ(フードロックメンバ)
3 ランプサポートブレース
4 エプロンサイドメンバ
4A エプロンサイドメンバフロント
5 ラジエータサポートメンバ
5A ラジエータサポートメンバのメンバ部
5B ラジエータサポートメンバのブラケット部
5a メンバ部のアッパパネル
5a1,5a2 アッパパネルのフランジ部
5b メンバ部のロアパネル
5b1,5b2 ロアパネルのフランジ部
5c ブラケット部のアウタパネル
5c1,5c2 アウタパネルのフランジ部
5d ブラケット部のインナパネル
5d1,5d2 インナパネルのフランジ部
5e ブラケット部の閉断面構造部
6 バンパメンバ
7 サポートブラケット
8 バンパメンバブラケット
9 ダッシュパネル
10 ボルト
11 ラジエータブラケット
11a ラジエータブラケットの円孔
12 ボルト
13 サブフレーム(サスペンションフレーム)
14 マウントボルト
15 ガセット
16 ボルト
S エンジンルーム



【特許請求の範囲】
【請求項1】
エンジンルームの左右両側にエプロンサイドメンバを車両前後方向に沿って配設した車両の前部車体構造であって、
左右の前記エプロンサイドメンバの各前端に、閉断面構造を有して下方に延びるエプロンサイドメンバフロントをそれぞれ設け、
左右の前記エプロンサイドメンバフロントの下端部前面に、車幅方向に沿って配されたラジエータサポートメンバの車幅方向両端部を車両前方から固定したことを特徴とする車両の前部車体構造。
【請求項2】
前記ラジエータサポートメンバの車幅方向両端部の前記エプロンサイドメンバフロントの下端部前面への固定を複数のボルトによる締め付けによって行うとともに、
左右の各締付箇所を少なくとも車両中央側下方と車両側方側上方の2箇所としたことを特徴とする請求項1記載の車両の前部車体構造。
【請求項3】
前記ラジエータサポートメンバを、閉断面構造を有して車幅方向中央に位置するメンバ部と、該メンバ部の左右両端部にそれぞれ取り付けられて前記エプロンサイドメンバフロントへの取付部を構成する一対のブラケット部とで構成し、
前記ブラケット部の上部に前記エプロンサイドメンバフロントへの締付箇所、下部に前記メンバ部の閉断面に連続する閉断面構造部をそれぞれ配置したことを特徴とする請求項1又は2記載の車両の前部車体構造。
【請求項4】
前記エンジンルームの下方に配設されたサブフレームの左右前端部を左右の前記エプロンサイドメンバフロントの各底面に取り付けるとともに、該サブフレームの底面と前記ラジエータサポートメンバの車幅方向両端部の各底面とを連結する補強用のガセットを設けたことを特徴とする請求項1〜3の何れかに記載の車両の前部車体構造。



【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2011−84196(P2011−84196A)
【公開日】平成23年4月28日(2011.4.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−239414(P2009−239414)
【出願日】平成21年10月16日(2009.10.16)
【出願人】(000002082)スズキ株式会社 (3,196)
【Fターム(参考)】