説明

車両の換気構造

【課題】ベンチレータバルブのばたつきを抑制することにより、その動作を安定させ、車室内の換気をより促進することが可能な車両の換気構造を提供することを目的とする。
【解決手段】本発明にかかる車両の換気構造の構成は、リヤバンパ104内側の車体後部パネル102に設けられた換気口102aに装着され、換気口を通じて車室内の空気を排出するベンチレータ110を含む車両の換気構造であって、ベンチレータは、換気口に面して取り付けられベンチレータ外に生じる負圧の作用で開閉するベンチレータバルブ130と、換気口の後方に位置する後壁142と、後壁より後方に延長された延長部144と、延長部末端にて気流の進行方向下流側に設けられ、車室内の空気を排出する排出口146と、を備えることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車室内の空気を排出するベンチレータを含む車両の換気構造に関するものである。
【背景技術】
【0002】
車室内の換気を促進するために、車両には換気装置であるベンチレータが設けられている。ベンチレータは、リヤバンパ内側の車体後部パネルに設けられた換気口に装着され、かかる換気口を通じて車室内の空気を車室外へ排出する。
【0003】
ベンチレータとしては、例えば特許文献1に、換気窓を有するベンチレータアウトレット部と、換気窓を覆い且つ空気圧の作用により換気窓を開放する薄膜のバルブ部と、バルブ部およびベンチレータアウトレット部を囲って車幅方向に排出口を有するダクト部とを備えた換気装置を装着した車両の換気構造が開示されている。特許文献1の換気構造によれば、雪道走行時等においても換気性能を好適に維持することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2005−81882号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1に記載の車両の換気構造に設けられるベンチレータのみならず、従来のベンチレータでは、ベンチレータバルブの後方近傍且つベンチレータカバーの車両側方側(気流の進行方向下流側)に排出口が設けられていた。このため、ベンチレータバルブは、排出口から離れている側は容易に開くことができるものの、排出口に近い側は、離れている側から排出された空気により圧力を受けるため開きづらかった。故に、空気排出時にベンチレータバルブのばたつきが生じ易く、ベンチレータバルブがより安定して動作することができる車両の換気構造の開発が望まれていた。
【0006】
本発明は、このような課題に鑑み、ベンチレータバルブのばたつきを抑制することにより、その動作を安定させ、車室内の換気をより促進することが可能な車両の換気構造を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために、本発明にかかる車両の換気構造の代表的な構成は、リヤバンパ内側の車体後部パネルに設けられた換気口に装着され、換気口を通じて車室内の空気を排出するベンチレータを含む車両の換気構造であって、ベンチレータは、換気口に面して取り付けられベンチレータ外に生じる負圧の作用で開閉するベンチレータバルブと、換気口の後方に位置する後壁と、後壁より後方に延長された延長部と、延長部末端にて気流の進行方向下流側に設けられ、車室内の空気を排出する排出口と、を備えることを特徴とする。
【0008】
上記構成によれば、排出口は、ベンチレータの後壁より後方に延長された延長部の末端に設けられる。もとより排出口は、その出口に負圧を形成するため、車幅方向に流れる気流の進行方向下流に向かって設ける必要がある。本発明の特徴は、延長部を設けて、その末端にかかる排出口を設けたことである。これにより、ベンチレータバルブの、排出口から離れた側から排出された空気は延長部に向かって流れることとなり、排出口に近い側への圧力を低減することができる。したがって、ベンチレータバルブのばたつきを抑制することができるため、動作が安定し、車室内の換気をより促進することが可能となる。
【0009】
上記のベンチレータバルブは、車幅方向に複数設けられているとよい。一般的に、ベンチレータバルブはゴム等の柔軟な材料からなるため変形等が生じやすく、変形等によってベンチレータバルブが車室内側に引っかかると、その本来の機能を十分に発揮できなくなってしまう。そこで、かかる構成のようにベンチレータバルブを車幅方向に複数設けることにより、1つのベンチレータバルブの変形が他のベンチレータバルブに影響しないため、全体の変形量を低減することができる。したがって、ベンチレータバルブが機能を確実に発揮することができ、換気性能を更に高めることが可能となる。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、ベンチレータバルブのばたつきを抑制することにより、その動作を安定させ、車室内の換気をより促進することが可能な車両の換気構造を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本実施形態にかかる車両の換気構造の概略構成を示す図である。
【図2】本実施形態にかかる車両の換気構造に設けられるベンチレータの詳細を示す図である。
【図3】図2(a)のA−A断面図である。
【図4】ベンチレータを換気口に装着した状態を示す図である。
【図5】比較例の車両の換気構造の概略構成を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下に添付図面を参照しながら、本発明の好適な実施形態について詳細に説明する。かかる実施形態に示す寸法、材料、その他具体的な数値などは、発明の理解を容易とするための例示に過ぎず、特に断る場合を除き、本発明を限定するものではない。なお、本明細書及び図面において、実質的に同一の機能、構成を有する要素については、同一の符号を付することにより重複説明を省略し、また本発明に直接関係のない要素は図示を省略する。
【0013】
(本実施形態の車両の換気構造)
図1は、本実施形態にかかる車両の換気構造の概略構成を示す図である。本実施形態にかかる車両の換気構造は、車室内の空気を排出する換気装置であるベンチレータを含んで構成される。図1に示すように、車体後部パネル102のリヤバンパ104が装着される部分、すなわち車体後部パネル102のリヤバンパ104内側には換気口102aが設けられている。ベンチレータ110はかかる換気口102aに装着され、換気口102aを通じて車室内の空気を車室外に排出する。
【0014】
図2は、本実施形態にかかる車両の換気構造に設けられるベンチレータ110の詳細を示す図である。図2(a)はベンチレータ110の外観斜視図であり、図2(b)はベンチレータ110の分解斜視図である。図2(a)および(b)に示すように、ベンチレータ110は、ベンチレータベース120と、ベンチレータバルブ130と、ベンチレータカバー140とから構成される。
【0015】
ベンチレータベース120は、後述するベンチレータバルブ130を支持し、ベンチレータ110を車体後部パネル102に設けられた換気口102aに装着するための部材である。ベンチレータベース120には爪部122が設けられていて、かかる爪部122にベンチレータバルブ130を嵌めることにより、ベンチレータベース120がベンチレータバルブ130を支持することができる。
【0016】
またベンチレータベース120は、嵌合溝124および突出部126を備える。嵌合溝124は、ベンチレータカバー140の突出部148を嵌め合わせられる。突出部126は、換気口102a近傍に設けられた溝(不図示)に嵌め合わせられる。これらにより、ベンチレータ110を組み立て、組み立てたベンチレータ110を換気口102aに装着することが可能となる。
【0017】
ベンチレータバルブ130は、換気口102aに面した状態となるようにベンチレータベース120に取り付けられ、ベンチレータ110外(リヤバンパ104内)に生じる負圧の作用で開閉する部材である。ベンチレータバルブ130には、ゴム等の高分子系樹脂材料を好適に用いることができる。これにより、ベンチレータバルブ130の軽量化を図れるため、開動作に要する力を低減し、開閉動作を円滑にすることが可能となる。
【0018】
図3は、図2(a)のA−A断面図である。後述するベンチレータカバー140に設けられる排出口146近傍(図2参照)が負圧となる。すると、負圧の作用により、ベンチレータバルブ130は、図3に示すように爪部122を軸にしてベンチレータカバー140内部に(矢印の方向に)移動し、二点鎖線の位置に到達する。これによりベンチレータ110は開状態となり、車室内の空気がベンチレータ110内に流出し、排出口146を通じて車室外に排出される。このようにして車室内の換気が行われる。
【0019】
本実施形態では、ベンチレータバルブ130は車幅方向に複数設けられている。これにより、ベンチレータバルブ130がゴム等の柔軟な材料からなり変形等が生じやすい場合であっても、1つのベンチレータバルブの変形が他のベンチレータバルブに影響しないため、全体の変形量を低減することができる。したがって、ベンチレータバルブ130がその機能を確実に発揮することができ、高い換気性能を確保することが可能となる。
【0020】
なお、本実施形態においては、ベンチレータバルブ130を、車幅方向に2列、車高方向に2行、計4枚で構成したが、これに限定するものではなく、3列以上や3行以上すなわち6枚以上の構成としてもよい。またベンチレータバルブ130は必ずしも複数枚設けられなくてもよく、1枚で構成してもよい。
【0021】
ベンチレータカバー140は、ベンチレータベース120を覆うように換気口102aに取り付けられる部材である。これにより、ベンチレータバルブ130を介して換気口102aから排出された車室内の空気を車外に排出するための流路を形成することができる。またベンチレータカバー140は、車両走行中に巻き上げられた石や雨水等の異物が換気口102a内に入り込むことを防止するという役割も担う。かかるベンチレータカバー140は、後壁142と、延長部144と、排出口146と、突出部148を有する。
【0022】
後壁142は、換気口102aの(車両前方側から見て)後方に位置する壁面である。後壁142のうちリヤバンパ104内側を車幅方向に流れる気流の進行方向下流寄りには、後壁142より後方に延長された延長部144が設けられる。そして、延長部144の末端にて気流の進行方向下流側には、車室内の空気を排出する排出口146が設けられる。詳細には、排出口は、その出口に負圧を形成するため、車幅方向に流れる気流の進行方向下流に向かって設けられるが、特に本実施形態では、延長部144を設けて、その末端にかかる排出口146を設けている。このような構成により、ベンチレータバルブ130のばたつきを抑制することができる。
【0023】
本実施形態では上述のように、後壁142のうち、気流の進行方向下流寄りに延長部144を設けている。しかし延長部144の位置は本実施形態の構成に限られるものではない。例えば、延長部144は、後壁142の中央や、気流の進行方向上流寄りに設けてもよい。
【0024】
(ベンチレータ110の組立および装着)
図4は、ベンチレータ110を換気口102aに装着した状態を示す図である。図4(a)は換気口102aに装着したベンチレータ110の斜視図であり、図4(b)は図4(a)のB−B断面図である。ベンチレータ110を組み立てる際には、まずベンチレータベース120の爪部122にベンチレータバルブ130を嵌める(図2(b)参照)。次に、ベンチレータベース120の嵌合溝124にベンチレータカバー140の突出部148を嵌め合わせることにより、ベンチレータ110が組み立てられる(図2(a)参照)。そして、上述のようにして組み立てたベンチレータベース120の突出部126を換気口102a近傍に設けられた溝(不図示)に嵌め合わせる。これにより、ベンチレータ110が換気口102aに装着され、図4(a)に示す状態となる。
【0025】
(ベンチレータ110内の空気の流れ)
次に、図4(b)を参照して、ベンチレータ110内の空気の流れについて説明する。なお、理解を容易にするために、複数のベンチレータバルブ130のうち、排出口146から離れている側をベンチレータバルブ130a、排出口146に近い側をベンチレータバルブ130bと称する。
【0026】
車両の走行中、リヤバンパ104内では車両の側面方向(図中破線で示す方向)に向かって気流が生じ、かかる気流により排出口146近傍が負圧146aとなる。すると、図中白抜き矢印で示す方向にベンチレータバルブ130が開き、車室内の空気がベンチレータ110内に排出される。
【0027】
このとき、ベンチレータバルブ130a(排出口から離れている側)は、比較例と同様に容易に開くことができ、そこから車室内の空気が排出される。そして、ベンチレータバルブ130aから排出された空気は延長部144に向かって流れるため、ベンチレータバルブ130bへの圧力が低減される。これにより、ベンチレータバルブ130bも容易に開くことができ、ばたつきが抑制される。したがって、ベンチレータバルブ130aおよび130bのいずれも動作が安定し、車室内の換気をより促進することが可能となる。
【0028】
(比較例の車両の換気構造)
次に、本実施形態と比較する比較例について説明する。図5は、比較例の車両の換気構造の概略構成を示す図である。図5(a)は、比較例の車両の換気構造の外観斜視図であり、図5(b)は図5(a)のC−C断面図である。なお、比較例の説明において、本実施形態と同様の要素については同一の参照符号を用いて図示する。従来の車両の換気構造においても、車体後部パネル102のリヤバンパ104内側には換気口102a(図1参照)にベンチレータ10が装着される。
【0029】
図5(a)および(b)に示すように、比較例の車両の換気構造に設けられるベンチレータ10は、ベンチレータバルブ12の後方近傍、すなわちベンチレータカバー14の後壁14aの車両側方側(リヤバンパ104内の気流の進行方向下流側)に排出口16が設けられていた。車両の走行中、リヤバンパ104内では車両の側面方向(図中破線で示す方向)に向かって気流が生じ、かかる気流により排出口16近傍が負圧16aとなる。すると、図中白抜き矢印で示す方向にベンチレータバルブ12が開き、車室内の空気がベンチレータ10内に排出され、車室内の換気が行われる。
【0030】
このとき、ベンチレータバルブ12a(排出口から離れている側)は容易に開くことができ、そこから車室内の空気が排出される。しかし、ベンチレータバルブ12aから排出された空気によりベンチレータバルブ12bに圧力がかかるため、ベンチレータバルブ12bは開きづらくなってしまう。これにより、ベンチレータバルブ12のばたつきが生じ、動作の安定性を低下させていた。そこで、上述した本実施形態にかかる車両の換気構造によれば、ベンチレータバルブのばたつきを抑制することにより、その動作を安定させ、車室内の換気をより促進することが可能となる。
【0031】
以上、添付図面を参照しながら本発明の好適な実施形態について説明したが、本発明は係る例に限定されないことは言うまでもない。当業者であれば、特許請求の範囲に記載された範疇内において、各種の変更例または修正例に想到し得ることは明らかであり、それらについても当然に本発明の技術的範囲に属するものと了解される。
【産業上の利用可能性】
【0032】
本発明は、車室内の空気を排出するベンチレータを含む車両の換気構造に利用することができる。
【符号の説明】
【0033】
10…ベンチレータ、12・12a・12b…ベンチレータバルブ、14…ベンチレータカバー、14a…後壁、16…排出口、16a…負圧、102…車体後部パネル、102a…換気口、104…リヤバンパ、110…ベンチレータ、120…ベンチレータベース、122…爪部、124…嵌合溝、126…突出部、130・130a・130b…ベンチレータバルブ、140…ベンチレータカバー、142…後壁、144…延長部、146…排出口、146a…負圧、148…突出部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
リヤバンパ内側の車体後部パネルに設けられた換気口に装着され、該換気口を通じて車室内の空気を排出するベンチレータを含む車両の換気構造であって、
前記ベンチレータは、
前記換気口に面して取り付けられ前記ベンチレータ外に生じる負圧の作用で開閉するベンチレータバルブと、
前記換気口の後方に位置する後壁と、
前記後壁より後方に延長された延長部と、
前記延長部末端にて前記気流の進行方向下流側に設けられ、前記車室内の空気を排出する排出口と、
を備えることを特徴とする車両の換気構造。
【請求項2】
前記ベンチレータバルブは、車幅方向に複数設けられていることを特徴とする請求項1に記載の車両の換気構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2011−121442(P2011−121442A)
【公開日】平成23年6月23日(2011.6.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−279651(P2009−279651)
【出願日】平成21年12月9日(2009.12.9)
【出願人】(000002082)スズキ株式会社 (3,196)
【Fターム(参考)】