説明

車両の操舵装置

【課題】 簡単な操舵機構によって、二輪の操舵車輪を操舵することができる車両の操舵装置を提供する
【解決手段】 操舵車輪1を回転自在に枢支する操舵車輪支持フレーム3に操舵軸4を設けると共に、各操舵車輪支持フレーム3の操舵軸4を車体5にそれぞれ水平回動自在に取り付ける。ハンドル2に設けたハンドル軸6を上記の一対の操舵軸4の間の位置において車体5に水平回動自在に取り付ける。ハンドル軸6と操舵軸4にそれぞれホイール7,8を設ける。そしてハンドル軸6のホイール7と操舵軸4のホイール8とを動力伝達用索体9で連結して、ハンドル軸6の水平回動に従動して各操舵軸4が同方向に水平回動する。ハンドル2を回してハンドル軸6を回動させることによって、ホイール7,8と動力伝達用索体9を介してハンドル軸6に連結されている一対の操舵軸4を同方向に回動させ、一対の操舵車輪1を回動操作することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、四輪の電動乗用カートなど、車両の操舵装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
電動の乗用カートは、老人や身体障害者が主として利用する車椅子タイプの他に、ショッピングなど近場に移動する際に利用するタイプや、ゴルフ場に持ち込んで利用するタイプなどがある。いずれのタイプの乗用カートにあっても、取り扱い性等の面から、小型・軽量であることが望まれる。
【0003】
そしてこのような乗用カートにおいて、構造を簡便化するために、前輪の操舵車輪が一輪、後輪の駆動車輪が二輪の、三輪タイプのものが種々提案されている(例えば特許文献1等参照)。
【0004】
しかし、三輪タイプの乗用カートは安定性が悪く、転倒し易い。そこで、前輪の操舵車輪が二輪、後輪の駆動車輪が二輪の、四輪タイプのものも種々提案されている(例えば特許文献2等参照)。
【特許文献1】特開2001−25488号公報
【特許文献2】特開2001−301663号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
四輪タイプの乗用カートは転倒し難く、安定性に優れているが、上記のように前輪の操舵車輪が二輪となり、その操舵機構は、ハンドルを操作することによって二輪の操舵車輪の向きを同時に同方向に回動させるようにする必要がある。
【0006】
しかしハンドルを操作して二輪の操舵車輪の向きを同時に同方向に回動させる場合、操舵装置はハンドルの軸と操舵車輪との間にクランク機構やギア機構などを組み合わせた複雑な構造になり、部品点数が増加して重量増やコストアップの原因になる等の問題を有するものであった。
【0007】
本発明は上記の点に鑑みてなされたものであり、簡単な操舵機構によって、二輪の操舵車輪を操舵することができる車両の操舵装置を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の請求項1に係る車両の操舵装置は、一対の操舵車輪1の向きをハンドル2で操作して操舵するようにした車両において、各操舵車輪1を回転自在に枢支する操舵車輪支持フレーム3にそれぞれ操舵軸4を設けると共に、各操舵車輪支持フレーム3の操舵軸4を車体5にそれぞれ水平回動自在に取り付け、ハンドル2に設けたハンドル軸6を上記の一対の操舵軸4の間の位置において車体5に水平回動自在に取り付け、ハンドル軸6と操舵軸4にそれぞれホイール7,8を設けると共に、ハンドル軸6のホイール7と操舵軸4のホイール8とを動力伝達用索体9で連結して、ハンドル軸6の水平回動に従動して各操舵軸4が同方向に水平回動するようにして成ることを特徴とするものである。
【0009】
また請求項2の発明は、請求項1において、車体5に操舵支持体10を設け、この操舵支持体10に上記ハンドル軸6と操舵軸4を水平回動自在に取り付けると共に、操舵支持体10を車体5に枢着して、操舵支持体10を起倒回動自在にして成ることを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、ハンドル2を回してハンドル軸6を回動させることによって、ホイール7,8と動力伝達用索体9を介してハンドル軸6に連結されている一対の操舵軸4を同方向に回動させ、一対の操舵車輪1を回動操作することができるものである。従って、ホイール7,8と動力伝達用索体9による動力伝達機構で、例えばチェーンホイール(スプロケット)とチェーンによる動力伝達機構で操舵装置を形成することができるものであり、簡単な機構で二輪の操舵車輪1を操舵することができるものである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
以下、本発明を実施するための最良の形態を説明する。
【0012】
図1及び図2の実施の形態は、本発明に係る操舵装置を四輪タイプの電動乗用カートに適用した例を示すものであり、車体5は前部車体16と後部車体17とに分離して形成するようにしてある。前部車体16には操舵支持体10が設けてあり、前部車体16の上面に操舵支持体10の下端を蝶番18によって前後方向に回動自在に枢支することによって、操舵支持体10を起倒自在にしてある。前部車体16の両側には上方へ向けて前方へ弧状に突出する角度調整用支持板19が設けてあり、この角度調整用支持板19に複数の固定用孔21が形成してある。操舵支持体10の両側端には固定用孔21と対応する位置において受け孔22が設けてあり、固定ピン20を固定用孔21から受け孔22に差し込むことによって、操舵支持体10を任意の傾斜角度で角度調整用支持板19で支持して固定するようにしてある。
【0013】
操舵支持体10の両側端の上端部には突出部23が張り出して設けてあり、各突出部23に上下に開口する円筒状の操舵車輪回動用軸受け24が設けてある。またこの一対の操舵車輪回動用軸受け24の間において、操舵支持体10の上端部の幅方向中央に、上方に開口する円筒状のハンドル回動用軸受け25が設けてある。
【0014】
ハンドル回動用軸受け25にはハンドル用回動軸26が水平回動自在に枢着してあり、ハンドル用回動軸26のハンドル回動用軸受け25の上方へ突出する上端部にホイール7が固定して取り付けてある。ハンドル用回動軸26にホイール7は上下に2段重ねた状態で取り付けてあり、ハンドル用回動軸26の上端面にはハンドル嵌合孔27が形成してある。ハンドル2は両端にグリップ28を設け、中央に下方へハンドル軸6を垂下して全体としてT字形に形成されるものである。そして、ハンドル軸6の下端部をハンドル嵌合孔27に差し込み嵌合することによって、ハンドル用回動軸26にハンドル軸6を結合固定し、ハンドル軸6をハンドル用回動軸26を介してハンドル回動用軸受け25に水平回動自在に取り付けると共に、ハンドル軸6の下端にホイール7を設けるようにしてある。
【0015】
また、各操舵車輪回動用軸受け24には操舵車輪用回動軸31が水平回動自在に枢着してあり、各操舵車輪用回動軸31の操舵車輪回動用軸受け24の上方へ突出する上端部にホイール8が固定して取り付けてある。各操舵車輪用回動軸31には上下に貫通して通し孔33が穿設してある。操舵車輪1は操舵車輪支持フレーム3の下方へ突出する二股状のフォーク34に回転軸35を枢着して回転自在に取り付けてあり、操舵車輪支持フレーム3の上端に操舵軸4を突出して設け、操舵軸4の上端面には雌ネジ穴37が設けてある。そして操舵軸4を操舵車輪回動用軸受け24に下側から水平回動自在に挿入し、操舵車輪用回動軸31の通し孔33にボルト38を挿通すると共にボルト38の下端部を雌ネジ穴37に螺合することによって、操舵車輪用回動軸31に操舵軸4を結合固定し、操舵車輪支持フレーム3を操舵軸4によって操舵車輪回動用軸受け24に水平回動自在に取り付けると共に、操舵軸4に操舵車輪用回動軸31を介してホイール8を設けるようにしてある。
【0016】
上記のようにして、ハンドル軸6に一対のホイール7を、各操舵車輪支持フレーム3の操舵軸4にそれぞれホイール8を取り付けるようにしてあり、ハンドル軸6の一方のホイール7と一方の操舵車輪支持フレーム3の操舵軸4のホイール8との間に動力伝達用索体9を、ハンドル軸6の他方のホイール7と他方の操舵車輪支持フレーム3の操舵軸4のホイール8との間に動力伝達用索体9をそれぞれ懸架することによって、ハンドル軸6の一対のホイール7と各操舵車輪支持フレーム3の操舵軸4のホイール8をそれぞれ動力伝達用索体9で連結するようにしてある。ここで、ホイール7,8と動力伝達用索体9としては、特に限定されるものではないが、例えばホイール7,8としてスプロケット(チェーンホイール)を、動力伝達用索体9としてチェーンを用いることができるものであり、このようなチェーン−スプロケット機構にすることによって、滑りが生じることなく動力を伝達することができるものである。
【0017】
上記のようにして、一対の操舵車輪1を前輪として前部車体16に取り付けてあり、後部車体17には後輪として一対の駆動車輪40が取り付けてある。後部車体17内には電動機及びバッテリー等が搭載してあり、駆動車輪40は電動機によって回転駆動されるようにしてある。後部車体17の上面には座席受け筒部41が突設してあり、運転座席42の下面に突設した座席軸43を座席受け筒部41に差し込むことによって、運転座席42が後部車体17に取り付けてある。座席受け筒部41と座席軸43にはそれぞれ連結孔44,45が設けてあって、連結孔44,45に連結ピン46を差し込むことによって運転座席42を固定するようにしてあり、連結ピン46を連結孔44,45から抜いて固定を解除することによって、運転座席42を後部車体17から取り外すことができるようにしてある。
【0018】
また、前記の前部車体16の下側にスライドバー48が後方へ突出するように取り付けてある。前部車体16に設けた通孔63に通したボルト64をスライドバー48の端部に設けたネジ孔65にねじ込むことによって、前部車体16にスライドバー48を取り付けて固定するようにしてある。スライドバー48の上面には位置決め孔49が複数箇所において設けてある。このスライドバー48は平行に二本設けられるものであり、各スライドバー48の下面にはその前後方向に沿ってラック50が設けてある。また、後部車体17の下側には図4のようにシャーシなどにガイドレール52を固定して取り付けてある。ガイドレール52は図5(b)に示すように下面にスリット状の開口部53を設けた前後方向に長い筒体で形成してあり、平行に二本設けられるものである。各ガイドレール52の前端部の両側には軸受け板54が下方へ突出して設けてあり、各軸受け板54に通して一本の歯車軸55を回動自在に取り付け、歯車軸55の各ガイドレール52の下側位置にそれぞれ歯車(ピニオン)56が固定して取り付けてある。この歯車軸55の端部に回動操作用ハンドル57を脱着自在に取り付けることによって、回動操作用ハンドル57の操作で歯車軸55を回して各歯車56を回動させることができるようにしてある。
【0019】
そして後部車体17に固定したガイドレール52に、前部車体16に固定したスライドバー48を差し込んで取り付けることによって、前部車体16と後部車体17を連結することができるものである。このようにガイドレール52にスライドバー48を差し込むと、図5(b)のようにスライドバー48に設けたラック50がガイドレール52の下面の開口部53から下方へ突出した状態で、図5(a)のようにスライドバー48はガイドレール52内に沿って前後方向にスライド自在になる。またこのとき、ガイドレール52の下面の開口部53から突出するラック50には歯車56が噛合しており、歯車56を回してラック50を移動させることによって、スライドバー48をガイドレール52に沿って前後方向にスライドさせることができるものである。ここで、歯車軸55を図5(a)のイ矢印方向に回すと、歯車56の回動によってラック50が図4、図5(a)のロ矢印のように移動し、また歯車軸55をハ矢印方向に回すと、歯車56の回動によってラック50がニ矢印のように移動するので、スライドバー48をガイドレール52に沿って前後方向にスライドさせ、前部車体16と後部車体17を近接・離間させることができるものである。
【0020】
しかして、前部車体16と後部車体17を離間させた状態で、スライドバー48の上にステップ板59を取り付けるようにしてある。ステップ板59には上記の位置決め孔49に対応する位置に差し込み孔60が設けてあり、差し込み孔60から対応する位置決め孔49に取付ピン61を差し込むことによって、ステップ板59を位置決めしてスライドバー48に固定することができるものである。このように前部車体16と後部車体17の間にステップ板59を取り付けることによって、前部車体16と後部車体17の間の隙間を塞ぐことができ、図2に示すような電動の乗用カートとして使用することができるものである。そしてステップ板59の上に足を置いた状態で運転座席42に腰掛け、ハンドル2を握って操作することによって、乗用カートを運転して走行させることができるものである。
【0021】
ここで、乗用カートの走向方向を変えるためにハンドル2を回すと、ハンドル2の回動軸であるハンドル軸6が回動され、ハンドル軸6と共にハンドル軸6に設けた一対のホイール7も同じ方向に回動される。このようにハンドル軸6のホイール7が回動すると、各ホイール7と動力伝達用索体9によって連結されている各操舵車輪支持フレーム3の操舵軸4のホイール8が従動して回動し、各操舵車輪支持フレーム3を操舵軸4を中心に水平に回動させることができる。各操舵車輪支持フレーム3のホイール8の回動の向きはハンドル軸6のホイール7の回動の向きと同じであり、またホイール7とホイール8は直径を同一に形成してある。従って、ハンドル2を回した方向と同じ方向に、各操舵車輪支持フレーム3を回動させることができ、各操舵車輪支持フレーム3に取り付けた一対の操舵車輪1を同じ向きに水平回動させることができるものであり、ハンドル2を回した方向に走向方向を変える操舵を行なうことができるものである。
【0022】
このように、二輪の操舵車輪1の向きを同時に同方向に回動させるように操舵する操舵装置を、ホイール7,8と動力伝達用索体9による動力伝達機構、例えばチェーンホイール(スプロケット)とチェーンによる動力伝達機構で形成することができるものであり、ハンドル軸6と操舵車輪1との間にクランク機構やギア機構などを組み合わせた複雑な構造の操舵装置を設ける必要がなくなり、簡単な機構で二輪の操舵車輪1を操舵することができるものである。従って、操舵装置の部品点数を少なくして、重量を減少することが可能になると共にコストを削減することが可能になるものであり、また構造シンプルで故障がすくなくなり、メンテナンスも容易になる等の優れた効果を得ることができるものである。
【0023】
尚、上記の電動乗用カートはコンパクトに収納することができるようにしてある。すなわち、まず取付ピン61を抜いて、スライドバー48の上からステップ板59を取り外す。次に、歯車軸55に回動操作用ハンドル57を嵌め込んで取り付け、回動操作用ハンドル57によって歯車56を回す。歯車軸55を図5(a)のイ矢印方向に回すと、歯車56の回動によってラック50が図4、図5(a)のロ矢印のように後部車体17の方向に移動するので、スライドバー48はガイドレール52内に差し込まれる方向にスライドし、前部車体16と後部車体17が近接する。このように前部車体16と後部車体17を近接させることによって、図3に示すように電動乗用カートの前後方向の寸法を2/3程度に短くして、コンパクトにすることができる。また、連結ピン46を抜いて運転座席42を後部車体17から取り外すことができる。そしてさらに、固定ピン20を抜いて操舵支持体10を後方へ回動させて倒すことによって、操舵支持体10に設けたハンドル2を後部車体17の上に重ねるように折り畳むことができ、電動乗用カートの高さ寸法が1/2以下に低くなって、さらにコンパクトにすることができるものである。しかも、操舵支持体10には操舵車輪1を支持する操舵車輪支持フレーム3も取り付けてあるので、操舵支持体10をこのように回動させて倒すと、操舵車輪1は上方へ浮き上がるようになって、電動乗用カートの車高を低くすることができるものであり、よりコンパクトにすることができるものである。
【0024】
上記のように、本発明を電動の乗用カートに適用して説明したが、本発明はこのような乗用カートに限定されるものではなく、一対の操舵車輪1を備える車両の全般に適用することができるものである。またホイール7,8や動力伝達索体9としては、チェーンホイール(スプロケット)とチェーンを用いる他に、プーリとベルトなどを用いることも可能である。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】本発明を乗用カートに適用した実施の形態の一例を示す分解斜視図である。
【図2】同上の斜視図である。
【図3】同上の乗用カートをコンパクト化した状態の斜視図である。
【図4】同上の乗用カートの伸縮の機構を示す概略図である。
【図5】同上の伸縮の機構の一部を示すものであり、(a)は斜視図、(b)は断面図である。
【符号の説明】
【0026】
1 操舵車輪
2 ハンドル
3 操舵車輪支持フレーム
4 操舵軸
5 車体
6 ハンドル軸
7 ホイール
8 ホイール
9 動力伝達用索体
10 車体本体
11 操舵支持体

【特許請求の範囲】
【請求項1】
一対の操舵車輪の向きをハンドルで操作して操舵するようにした車両において、各操舵車輪を回転自在に枢支する操舵車輪支持フレームにそれぞれ操舵軸を設けると共に、各操舵車輪支持フレームの操舵軸を車体にそれぞれ水平回動自在に取り付け、ハンドルに設けたハンドル軸を上記の一対の操舵軸の間の位置において車体に水平回動自在に取り付け、ハンドル軸と操舵軸にそれぞれホイールを設けると共に、ハンドル軸のホイールと操舵軸のホイールとを動力伝達用索体で連結して、ハンドル軸の水平回動に従動して各操舵軸が同方向に水平回動するようにして成ることを特徴とする車両の操舵装置。
【請求項2】
車体の本体に操舵支持体を設け、この操舵支持体に上記ハンドル軸と操舵軸を水平回動自在に取り付けると共に、操舵支持体を車体本体に枢着して、操舵支持体を起倒回動自在にして成ることを特徴とする請求項1に記載の車両の操舵装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2006−123870(P2006−123870A)
【公開日】平成18年5月18日(2006.5.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−318405(P2004−318405)
【出願日】平成16年11月1日(2004.11.1)
【出願人】(502124880)
【Fターム(参考)】