説明

車両の潤滑装置

【課題】車両の高速走行時において、オイルを回転電機およびオイル要部へ好適に供給することができる車両の潤滑装置を提供する。
【解決手段】ファイナリングギア20の回転によって掻き上げられたオイルを、車両に設けられたモータ3およびモータ3以外の要部40に供給する車両の潤滑装置1において、掻き上げられたオイルを貯留可能なキャッチタンク31と、キャッチタンク31の鉛直方向上方側に部位に設けられ、モータ3へ向けてオイルを供給するための第1供給孔32と、キャッチタンク31の鉛直方向下方側の部位に設けられ、要部40へ向けてオイルを供給するための第2供給孔33と、キャッチタンク31に貯留されるオイルの液位が、第2供給孔33からオイルを供給可能な規定液位以上となった場合に、第2供給孔33へ向けて流れるオイルを、第1供給孔32へ向けて流れるように可動する可動部材34と、を備えた。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両の潤滑装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、回転部材と、回転部材の下方に潤滑油(オイル)を貯留する貯留部と、回転部材の回転により貯留部から掻き上げられた潤滑油を貯留するオイル受け部とを備えた動力伝達装置が知られている(例えば、特許文献1参照)。この動力伝達装置には、ガイド部材が設けられ、ガイド部材は、回転部材とオイル受け部とを連通する流路を形成するように設けられている。
【0003】
また、特許文献2として、リングギアの回転によって掻き上げられた潤滑油を案内する案内板を設けた潤滑構造が知られている。この案内板は、感温型のアクチュエータの作動により、突出位置と退避位置との間で移動可能に構成され、掻き上げられる潤滑油の温度に応じて、潤滑油が循環する方向を変化させている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2010−151261号公報
【特許文献2】特開2008−2476号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、車両には、モータ等の回転電機が設けられる場合がある。この場合、リングギア等の回転部材により掻き上げられたオイルは、一旦、キャッチタンク等のオイル受け部に貯留される。オイル受け部に貯留されたオイルは、車両に設けられた回転電機へ向けて供給されると共に、回転電機以外のオイル要部へ向けて供給される。ここで、車両を高速走行させるべく、回転電機の回転数を上昇させると、回転部材の回転数が上昇して、掻き上げられるオイルの油量は増大し、回転電機およびオイル要部へ向けて供給されるオイルの油量は増大する。ところが、回転電機の回転数が所定の回転数以上になると、回転電機へ向けて供給されるオイルの油量が減少することが分かった。これは、回転電機の回転数が所定の回転数以上になると、オイル受け部へ流入したオイルが、オイル要部へ向けて流れ易くなる一方で、回転電機へ向けて流れ難くなるからであると考えられる。
【0006】
このとき、特許文献1のように、オイルの流れを案内するガイド部材を設けることが考えられる。つまり、ガイド部材を設けることで、オイルを回転電機へ向けて流れ易くすることができる。しかしながら、ガイド部材は、オイル要部へ向かうオイルの流れを阻害することになるため望ましくない。また、特許文献2のように、オイルの温度に応じて、オイルの流れる方向を変化させる案内板を設けることが考えられる。しかしながら、オイルの温度を因子として、オイルの流れる方向を案内板により変更するため、必ずしもオイルを回転電機およびオイル要部へ好適に供給できるとは限らない。
【0007】
本発明は、上記の事情に鑑みてなされたものであって、車両の高速走行時において、オイルを回転電機およびオイル要部へ好適に供給することができる車両の潤滑装置を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の車両の潤滑装置は、回転体の回転によって掻き上げられたオイルを、車両に設けられた回転電機および回転電機以外のオイル要部に供給する車両の潤滑装置において、掻き上げられたオイルを貯留可能なオイル受け部と、オイル受け部の鉛直方向上方側の部位に設けられ、回転電機へ向けてオイルを供給するための第1供給孔と、オイル受け部の鉛直方向下方側の部位に設けられ、オイル要部へ向けてオイルを供給するための第2供給孔と、オイル受け部に貯留されるオイルの液位が、第2供給孔からオイルを供給可能な規定液位以上となった場合に、第2供給孔へ向けて流れるオイルを、第1供給孔へ向けて流れるように可動する可動部材と、を備えたことを特徴とする。
【0009】
この場合、可動部材は、オイル受け部に貯留されるオイルに浮かぶように構成され、オイル受け部に貯留されるオイルの液位が規定液位未満となる場合、オイルに浮かばずに、第2供給孔へ向けて流れるオイルを許容するように可動する一方で、オイルの液位が規定液位以上となる場合、オイルに浮かんで、第2供給孔へ向けて流れるオイルをせき止めて、第1供給孔へ向けて流れるように可動することが好ましい。
【0010】
この場合、可動部材は、可動部と、可動部を可動させるように温度に応じて変形する形状変形部と、を有し、形状変形部は、オイルの液位が規定液位未満となると、低温状態となって、第2供給孔へ向けて流れるオイルを許容するように可動部を可動させる一方で、オイルの液位が規定液位以上となると、高温状態となって、第2供給孔へ向けて流れるオイルをせき止めて、第1供給孔へ向けて流れるように可動部を可動させることが好ましい。
【発明の効果】
【0011】
本発明に係る車両の潤滑装置は、車両が高速走行状態となることで、オイル受け部に貯留されるオイルの液位が規定液位以上となると、可動部材を可動させることができるため、第2供給孔へ向けて流れるオイルを、第1供給孔へ向けて流すことができる。このため、車両の潤滑装置は、オイル受け部に貯留したオイルを、第2供給孔を介してオイル要部へ好適に供給することができ、また、オイル受け部に流入するオイルを、第1供給孔を介して回転電機へ好適に供給することができるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】図1は、実施形態1に係る車両の潤滑装置を模式的に表した高速走行時における構成図である。
【図2】図2は、図1のA―A’面で切ったときの断面図である。
【図3】図3は、実施形態1に係る車両の潤滑装置を模式的に表した低速走行時における構成図である。
【図4】図4は、実施形態2に係る車両の潤滑装置を模式的に表した高速走行時における構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下に、本発明に係る車両の潤滑装置の実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。なお、この実施形態によりこの発明が限定されるものではない。
【0014】
〔実施形態1〕
図1は、実施形態1に係る車両の潤滑装置を模式的に表した高速走行時における構成図であり、図2は、図1のA―A’面で切ったときの断面図であり、図3は、実施形態1に係る車両の潤滑装置を模式的に表した低速走行時における構成図である。実施形態1の潤滑装置1が搭載される車両は、例えば、ハイブリッド車両であり、動力源としてエンジンおよびモータ(回転電機)3を搭載している。また、車両には、トランスアスクル5が搭載されており、トランスアスクル5は、変速機構(図示省略)とデファレンシャル7とをトランスアスクルケース10内に収容して構成されている。そして、潤滑装置1は、このトランスアスクルケース10内に収容されている。なお、実施形態1では、潤滑装置1をハイブリッド車両に適用して説明するが、これに限らず、電気自動車に適用してもよい。
【0015】
モータ3は、図示は省略するがロータおよびステータを備えている。モータ3は、力行時において、ステータに電力が供給されると、ロータが回転して動力が発生する動力源として機能する。そして、この動力が、駆動輪の回転へ変換されることで、車両が走行する。一方で、モータ3は、回生時において、駆動輪が回転させられると、ロータが回転することにより、ステータから誘導起電力が発生する発電機として機能する。そして、この誘導起電力がバッテリに供給されて、バッテリの充電が行われる。
【0016】
トランスアスクルケース10内に収容されたデファレンシャル7は、回転体として機能するファイナリングギア20を有しており、ファイナリングギア20から伝達されたトルクを左右の車軸に分配している。このファイナリングギア20には、ファイナリングドライブピニオンギア21が噛合しており、また、ファイナリングドライブピニオンギア21には、エンジンからの動力を伝達するカウンタドリブンギア22と、モータ3からの動力を伝達するモータギア23とが噛合している。従って、車両は、ファイナリングドライブピニオンギア21に対し、カウンタドリブンギア22を介してエンジンの動力を伝達すると共に、モータギア23を介してモータ3の動力を伝達する。この後、車両は、ファイナリングドライブピニオンギア21を介して、エンジンおよびモータ3の動力を、ファイナリングギア20に伝達する。
【0017】
ファイナリングギア20は、トランスアスクルケース10の底部に溜まったオイルに浸るように設けられている。このため、ファイナリングギア20は、エンジンおよびモータ3の動力によって回転すると、ケース底部に溜まったオイルを掻き上げる。そして、掻き上げられたオイルは、後述する潤滑装置1のキャッチタンク31に貯留される。なお、実施形態1では、回転体としてファイナリングギア20を適用したが、これに限らず、ディスクや、プーリ、スプロケット等であってもよく、エンジンおよびモータ3の動力により回転するものであれば、いずれであってもよい。
【0018】
次に、トランスアスクルケース10内に収容された潤滑装置1について説明する。潤滑装置1は、ファイナリングギア20によって掻き上げられたオイルを、回転電機としてのモータ3へ向けて供給すると共に、モータ3以外の要部(オイル要部)40へ向けて供給している。なお、要部40としては、潤滑材として機能するオイルが供給される潤滑部分であったり、冷却材として機能するオイルが供給される冷却部分であったり、作動油として機能するオイルが供給される油圧作動部分である。潤滑部分としては、例えば、ボール軸受等の軸受、ギヤ(歯車)やスプロケット等である。また、冷却部分としては、例えば、モータ3に設けられた冷却油路等である。また、油圧作動部分としては、例えば、油圧制御回路等である。
【0019】
潤滑装置1は、ファイナリングギア20によって掻き上げられたオイルを貯留するキャッチタンク(オイル受け部)31と、キャッチタンク31からモータ3へ向けてオイルを供給するための第1供給孔32と、キャッチタンク31から要部40へ向けてオイルを供給するための第2供給孔33と、キャッチタンク31に貯留するオイルの貯留量に応じて可動する可動部材34と、を備えている。
【0020】
キャッチタンク31は、オイルを貯留可能な構成となっており、各種ギア20,21,22,23の鉛直方向の上方側に設けられ、ファイナリングギア20によって掻き上げられたオイルを捕らえることが可能な位置に設けられている。このキャッチタンク31は、その底面が、オイルが流入する流入側(上流側:図1の右側)から、オイルが流出する流出側(下流側:図1の左側)へ向けて下り傾斜となる傾斜面となっている。このため、キャッチタンク31に流入したオイルは、キャッチタンク31の流入側から流出側へ向けて流れ易くなっている。つまり、キャッチタンク31の流入側は、キャッチタンク31の流出側に対して、鉛直方向の上方側となっているためにオイルが貯留し難い。換言すれば、キャッチタンク31の流出側は、キャッチタンク31の流入側に対し、鉛直方向の下方側となっているためにオイルが貯留し易い。
【0021】
また、図2に示すように、キャッチタンク31の流入側には、流入側から流出側に向けて流れるオイルの流れ方向に沿って設けられた主流路31aと、主流路31aから分岐してオイルの流れ方向に直交するように設けられた副流路31bとが設けられている。
【0022】
第1供給孔32は、キャッチタンク31の流入側における副流路31bの底面に設けられている。つまり、第1供給孔32は、キャッチタンク31の鉛直方向の上方側の部位に設けられ、第2供給孔33よりも上方側に位置している。第1供給孔32は、モータギア23に連結されたモータ3の駆動軸に、オイルを供給するために設けられている。よって、掻き上げられてキャッチタンク31に流入したオイルは、その一部が副流路31bを通過し、第1供給孔32を介してモータ3の駆動軸に供給される。
【0023】
第2供給孔33は、キャッチタンク31の流出側の側面に設けられている。つまり、第2供給孔33は、キャッチタンク31の鉛直方向の下方側の部位に設けられ、第1供給孔32よりも下方側に位置している。第2供給孔33は、モータ3以外の要部40に、オイルを供給するために設けられている。よって、掻き上げられてキャッチタンク31に流入したオイルは、その一部が主流路31aを通過し、第2供給孔33を介して要部40に供給される。
【0024】
可動部材34は、キャッチタンク31に貯留するオイルの液位に応じて、鉛直方向の上方側の突出位置P1と、鉛直方向の下方側の退避位置P2との間で可動するように構成されている。可動部材34は、オイルに浮かぶように構成されており、キャッチタンク31における主流路31aと副流路31bとの分岐点の下流側に設けられている。可動部材34は、鉛直方向に突出する壁部34aと、水平方向に延在する水平部34bと、壁部34aと水平部34bとの間をつなぐ中間部34cとを有している。
【0025】
壁部34aは、キャッチタンク31の主流路31aを流れるオイルをせき止め可能に構成されている。つまり、壁部34aは、主流路31aのオイルの流れ方向に直交する幅方向の全長に亘って設けられている。水平部34bは、キャッチタンク31に貯留するオイルの液面に浮かぶように構成され、オイルの液位に応じて上下動可能となっている。具体的に、水平部34bは、キャッチタンク31に貯留するオイルの液位が規定液位未満となる場合では浮かばず、一方で、キャッチタンク31に貯留するオイルの液位が規定液位以上となる場合に浮かぶように構成されている。ここで、規定液位とは、キャッチタンク31に貯留したオイルを第2供給孔33から供給可能な液位である。
【0026】
従って、可動部材34は、キャッチタンク31に貯留するオイルの液位が規定液位未満となる場合、水平部34bが浮かばないため、壁部34aが主流路31aのオイルの流れを許容するように、退避位置P2に可動する。一方で、可動部材34は、キャッチタンク31に貯留するオイルの液位が規定液位以上となる場合、水平部34bが浮かぶため、壁部34aが主流路31aのオイルの流れをせき止めるように、突出位置P1に可動する。なお、突出位置P1は、規定液位以上となるオイルの液位に応じた位置となる。
【0027】
続いて、図1および図3を参照して、車両の走行速度に応じた潤滑装置1の動作について説明する。図3に示すように、車両が低速走行を行っている場合、キャッチタンク31には、オイルが貯留しておらず、可動部材34は退避位置P2に位置している。図3に示す状態から、車両が高速走行を行うべく、モータギア23およびカウンタドリブンギア22の回転数を上昇させることにより、ファイナリングドライブピニオンギア21を介してファイナリングギア20の回転数を上昇させる。すると、ファイナリングギア20は、掻き上げるオイルの油量が増大し、これにより、キャッチタンク31に流入するオイルの油量は増大する。キャッチタンク31に流入するオイルが増大すると、ファイナリングギア20にモータギア23を介して連結するモータ3の回転数が所定の回転数となるまで、主流路31aおよび副流路31bに流れるオイルの油量は増大する。
【0028】
さらに、モータ3の回転数が上昇して所定の回転数以上となると、主流路31aにおけるオイルの流れが増速することで、副流路31bに流れるオイルの一部は、主流路31a側に引き込まれ易くなる。これにより、副流路31bを流れるオイルの油量は、モータ3の回転数が所定の回転数以上となる前に比べて減少する。
【0029】
このとき、図1に示すように、キャッチタンク31に流入するオイルは増大するため、キャッチタンク31の下流側(流出側)においてオイルが貯留する。キャッチタンク31の下流側に貯留したオイルが規定液位以上となると、可動部材34の水平部34bが貯留したオイルの液面に浮かぶことで、可動部材34は、突出位置P1に可動する。可動部材34が突出位置P1に可動すると、可動部材34は、主流路31aにおいて、キャッチタンク31に流入するオイルをせき止める。これにより、キャッチタンク31に流入したオイルは、副流路31bに流れることとなる。
【0030】
一方で、車両が高速走行から低速走行になると、掻き上げられるオイルの油量は減少するため、キャッチタンク31に流入するオイルの油量よりも、キャッチタンク31から流出するオイルの油量が多ければ、キャッチタンク31に貯留するオイルの貯留量は減少する。このため、オイルの貯留量が減少することにより、オイルが規定液位未満となれば、可動部材34は、退避位置P2に可動する。可動部材34が退避位置P2に可動すると、可動部材34は、キャッチタンク31に流入するオイルの流れを許容する。これにより、キャッチタンク31に流入したオイルは、キャッチタンク31の下流側へ向かって流れる。
【0031】
以上の構成によれば、車両の潤滑装置1は、車両が高速走行しても、第2供給孔33を介して要部40に供給されるオイルを確保しつつ、キャッチタンク31に流入するオイルを、第1供給孔32へ向けて供給することができる。これにより、車両の潤滑装置1は、車両の高速走行時において、第1供給孔32を介してモータ3の駆動軸へ向けてオイルを供給することができ、また、第2供給孔33を介して要部40へ向けてオイルを供給することができる。
【0032】
また、可動部材34は、オイルに浮かぶように構成したため、簡易な構成で、キャッチタンク31に貯留されるオイルの液位に応じて可動させることができる。
【0033】
〔実施形態2〕
次に、図4を参照して、実施形態2に係る車両の潤滑装置50について説明する。図4は、実施形態2に係る車両の潤滑装置を模式的に表した高速走行時における構成図である。なお、重複した記載を避けるべく、異なる部分についてのみ説明する。実施形態1の潤滑装置1では、可動部材34がオイルの液面に浮かんで突出位置P1と退避位置P2との間で可動するように構成したが、実施形態2の潤滑装置50では、可動部材51がオイルの油温によって突出位置P1と退避位置P2との間で可動するように構成している。以下、実施形態2の潤滑装置50の可動部材51について説明する。
【0034】
可動部材51は、キャッチタンク31に貯留するオイルの液位に応じて、鉛直方向の上方側の突出位置P1と、鉛直方向の下方側の退避位置P2との間で可動するように構成されている。可動部材51は、実施形態1と同様に、キャッチタンク31における主流路31aと副流路31bとの分岐点の下流側に設けられている。可動部材51は、可動部54と、可動部54を可動させるように温度変化に応じて変形する形状変形部55とを有している。
【0035】
可動部54は、鉛直方向に突出する壁部54aと、水平方向に延在する水平部54bと、壁部54aと水平部54bとの間の中間部54cとを有している。なお、壁部54a、水平部54bおよび中間部54cについては、水平部54bがオイルの液面に浮かばない構成であることを除き、実施形態1の壁部34a、水平部34bおよび中間部34cと同様であるため、説明を省略する。
【0036】
形状変形部55は、その一端が可動部54に接続され、その他端がキャッチタンク31の底面に接続されており、鉛直方向に伸縮可能となっている。形状変形部55は、キャッチタンク31に貯留するオイルの液位が規定液位未満である場合、貯留するオイルに浸らない位置となるため低温状態となる。形状変形部55は、低温状態の場合、鉛直方向に収縮して、可動部54を退避位置P2に可動させる。一方で、形状変形部55は、キャッチタンク31に貯留するオイルの液位が規定液位以上である場合、貯留するオイルに浸る位置となるため高温状態となる。形状変形部55は、高温状態の場合、鉛直方向に伸長して、可動部54を突出位置P1に可動させる。
【0037】
従って、可動部材51は、キャッチタンク31に貯留するオイルの液位が規定液位未満となる場合、形状変形部55が収縮するため、壁部54aが主流路31aのオイルの流れを許容するように、可動部54を退避位置P2に可動させる。一方で、可動部材51は、キャッチタンク31に貯留するオイルの液位が規定液位以上となる場合、形状変形部55が伸長するため、壁部54aが主流路31aのオイルの流れをせき止めるように、可動部54を突出位置P1に可動させる。
【0038】
以上の構成においても、車両の潤滑装置50は、車両が高速走行しても、第2供給孔33を介して要部40に供給されるオイルを確保しつつ、キャッチタンク31に流入するオイルを、第1供給孔32へ向けて供給することができる。これにより、車両の潤滑装置50は、車両の高速走行時において、第1供給孔32を介してモータ3の駆動軸へ向けてオイルを供給することができ、また、第2供給孔33を介して要部40へ向けてオイルを供給することができる。
【0039】
また、可動部材51は、形状変形部55により可動部54を突出位置P1と退避位置P2との間で可動させることができるため、可動部54をオイルに浮かぶ構成とする必要がなく、簡易な構成で、キャッチタンク31に貯留されるオイルの液位に応じて可動させることができる。
【産業上の利用可能性】
【0040】
以上のように、本発明に係る車両の潤滑装置は、動力源となるモータを備えた車両の潤滑装置に有用であり、特に、車両の走行状態に応じてオイルの流れを変化させる場合に適している。
【符号の説明】
【0041】
1 潤滑装置
3 モータ
5 トランスアスクル
7 デファレンシャル
10 トランスアスクルケース
20 ファイナリングギア
21 ファイナリングドライブピニオンギア
22 カウンタドリブンギア
23 モータギア
31 キャッチタンク
31a 主流路
31b 副流路
32 第1供給孔
33 第2供給孔
34 可動部材
40 要部
50 潤滑装置
51 可動部材
54 可動部
55 形状変形部
P1 突出位置
P2 退避位置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
回転体の回転によって掻き上げられたオイルを、車両に設けられた回転電機および前記回転電機以外のオイル要部に供給する車両の潤滑装置において、
掻き上げられた前記オイルを貯留可能なオイル受け部と、
前記オイル受け部の鉛直方向上方側の部位に設けられ、前記回転電機へ向けて前記オイルを供給するための第1供給孔と、
前記オイル受け部の鉛直方向下方側の部位に設けられ、前記オイル要部へ向けて前記オイルを供給するための第2供給孔と、
前記オイル受け部に貯留される前記オイルの液位が、前記第2供給孔から前記オイルを供給可能な規定液位以上となった場合に、前記第2供給孔へ向けて流れる前記オイルを、前記第1供給孔へ向けて流れるように可動する可動部材と、を備えたことを特徴とする車両の潤滑装置。
【請求項2】
前記可動部材は、前記オイル受け部に貯留される前記オイルに浮かぶように構成され、前記オイル受け部に貯留される前記オイルの液位が前記規定液位未満となる場合、前記オイルに浮かばずに、前記第2供給孔へ向けて流れる前記オイルを許容するように可動する一方で、前記オイルの液位が前記規定液位以上となる場合、前記オイルに浮かんで、前記第2供給孔へ向けて流れる前記オイルをせき止めて、前記第1供給孔へ向けて流れるように可動することを特徴とする請求項1に記載の車両の潤滑装置。
【請求項3】
前記可動部材は、可動部と、前記可動部を可動させるように温度に応じて変形する形状変形部と、を有し、
前記形状変形部は、前記オイルの液位が前記規定液位未満となると、低温状態となって、前記第2供給孔へ向けて流れる前記オイルを許容するように前記可動部を可動させる一方で、前記オイルの液位が前記規定液位以上となると、高温状態となって、前記第2供給孔へ向けて流れる前記オイルをせき止めて、前記第1供給孔へ向けて流れるように前記可動部を可動させることを特徴とする請求項1に記載の車両の潤滑装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2012−137126(P2012−137126A)
【公開日】平成24年7月19日(2012.7.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−288631(P2010−288631)
【出願日】平成22年12月24日(2010.12.24)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】