説明

車両の無線通信装置

【課題】車室外の通信対象との適切な無線通信を確保しつつも、取り付けが容易な車両の無線通信装置を提供する。
【解決手段】この車両の無線通信装置は、ループアンテナを収容するハウジング2を備える。また、ハウジング2の底面及び側面には両面テープが接着されており、この両面テープによって車両のドアトリム70及びピラー71の双方にハウジング2が固定される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、携帯電話機などの通信対象と無線通信を行うための車両の無線通信装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、車両の無線通信システムの一つとして、ユーザがICカードを所持した状態で車両ドアに接近することにより車両ドアのアンロックが自動的に実行される無線通信システムが周知である。そして従来、このような無線通信システムとしては、例えば特許文献1に記載のシステムが知られている。この特許文献1に記載の車両の無線通信システムでは、車両ドアの窓ガラスの表面にループアンテナが貼付されており、ユーザが車両のドアアンドルに手を触れると、このループアンテナから無線信号が送信される。また、この無線通信システムでは、ループアンテナから送信される無線信号を受信するとともに、この無線信号に対して識別コード(IDコード)等を含む無線信号を送信するICカードをユーザが所持する。すなわち、ICカードを所持したユーザがドアハンドルに手を触れることで、IDコード等を含む無線信号がICカードから送信される。そしてこのシステムにおいて、ICカードから送信された無線信号は、車両の窓ガラスに配置されたループアンテナによって受信されて、その旨が、車両にかかる各種制御を実行する制御装置に伝達される。この制御装置では、ループアンテナを介して受信した無線信号に含まれるIDコードと車両固有のIDコードとの照合を行い、この照合を通じて、車両ドアに設けられているドアロック機構をアンロックさせる。このような無線通信システムによれば、ユーザの直接的な手動操作によることなく車両の各種操作が自動的に行われるため、車両の操作にかかる利便性が大きく向上するようになる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平11−131884号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、上記特許文献1に記載の無線通信システムのように、車両ドアの窓ガラスにループアンテナを貼付するようにした場合には、次のような問題が無視できないものとなる。まず、ユーザによる窓ガラスの開閉操作に伴って窓ガラスの一部あるいは全部がドアパネルの内部に収容されると、ループアンテナの一部あるいは全部もドアパネルの内部に収容される場合がある。このような場合、ループアンテナとICカードとの間での信号授受がドアパネルによって阻害されてしまうため、車両ドアをアンロックすることができなくなるなど、無線通信システムとして要求される機能にも支障をきたしかねない。
【0005】
なおこのような課題は、ループアンテナを介してICカードと無線通信を行う車両の無線通信装置に限らず、例えばユーザの所持する携帯電話機など、適宜の通信対象とループアンテナを介して無線通信を行う車両の無線通信装置に共通する課題である。
【0006】
本発明は、こうした実情に鑑みてなされたものであり、その目的は、車室外の通信対象との適切な無線通信を確保しつつも、取り付けが容易な車両の無線通信装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために、請求項1に記載の発明は、通信対象に無線信号を送信するとともに同通信対象から送信される無線信号を受信するループアンテナと、該ループアンテナを収容するハウジングと、車両の窓ガラスに近接する車載部品に前記ハウジングを固定するための固定部材と、を備えることを要旨としている。
【0008】
同構成によれば、車両の窓ガラスに近接する車載部品にハウジングが固定されるため、同ハウジングに収容されるループアンテナの一部あるいは全部が窓ガラスの開閉に伴ってドアパネルの内部に収容されることがない。したがって、ループアンテナと通信対象との間での信号授受がドアパネルによって阻害されることがないため、通信対象との間の適切な無線通信を確保することができるようになる。また、ループアンテナを車両に設置する際に、車両の窓ガラスに近接する車載部品にハウジングを固定部材によって固定するだけでよいため、前述のようにループアンテナを窓ガラスに貼付する場合と比較すると、ループアンテナを車両に容易に設置することができるようになる。
【0009】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の車両の無線通信装置において、前記ハウジングは、前記ループアンテナを収容する本体部と、該本体部に脱着可能に装着されるとともに前記固定部材を介して前記車載部品に固定されるベース部との分割体により構成されてなることを要旨としている。
【0010】
車載部品は、一般に、車種毎に異なる形状を有している。このため、各車種の車載部品に対してハウジングを確実に固定しようとする場合には、車種毎にハウジングの形状を最適設計する必要がある。しかしながら、車種毎にハウジングの形状を最適設計するとなると、コストの増大を招くおそれがある。この点、上記構成によれば、ループアンテナを収容する本体部については各車種で共通化した上で、ベース部の形状を各車種の車載部品の形状に応じて最適設計することができる。このため、コストの低減を図りながらも、ハウジングの高い固定強度を各車種で担保することができるようになる。
【0011】
請求項3に記載の発明は、請求項1又は2に記載の車両の無線通信装置において、前記窓ガラスが、車両ドアに設けられる窓ガラスであるとともに、前記車載部品が、車両のドアトリムであって、前記ハウジングが、前記ドアトリムに前記固定部材により固定されるものであることを要旨としている。
【0012】
車両の無線通信システムにあっては、前述のように、ユーザの乗車の際に、ユーザの所持する無線通信装置と、車両に搭載された無線通信装置との間で無線通信が行われるとともに、この無線通信を通じて車両ドアのアンロックなどが実行される。この点、上記構成によるように、車両のドアトリムにハウジングを固定することとすれば、車両ドアの窓ガラスの近傍に車両側の無線通信装置を配置することができる。このため、ユーザは、乗車の際に、車両ドアの窓ガラスに自身の無線通信装置を近づけるだけで、自身の無線通信装置と車両側の無線通信装置との間で無線通信を行うことができる。したがって、車両ドアのアンロックなどの操作を容易に行うことができるため、利便性が向上するようになる。
【0013】
請求項4に記載の発明は、請求項3に記載の車両の無線通信装置において、前記車載部品が、前記ドアトリム及び車両のピラーであって、前記ハウジングが、前記ドアトリム及び前記ピラーの双方に前記固定部材により固定されるものであることを要旨としている。
【0014】
同構成によれば、ドアトリム及びピラーの2点でハウジングを固定することができるため、ハウジングの固定強度を向上させることができる。このため、例えば車両の振動や、ユーザによるドアの開閉操作などに伴って当該無線通信装置が外れるような状況を回避することができるため、高い安定性を確保することができるようになる。
【発明の効果】
【0015】
本発明にかかる車両の無線通信装置によれば、通信対象との適切な無線通信を確保しつつも、容易に取り付けることができるようになる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明にかかる車両の無線通信装置の一実施形態についてその斜視構造を示す斜視図。
【図2】同実施形態の車両の無線通信装置についてその分解斜視構造を示す斜視図。
【図3】同実施形態の車両の無線通信装置についてその断面構造を示す断面図。
【図4】同実施形態の車両の無線通信装置についてその底面側から見た斜視構造を示す斜視図。
【図5】同実施形態の車両の無線通信装置についてその本体部の底面側から見た斜視構造を示す斜視図。
【図6】車両の斜視構造を示す斜視図。
【図7】同実施形態の車両の無線通信装置についてその車両に設置された状態を示す斜視図。
【図8】図7のB−B線に沿った断面構造を示す断面図。
【図9】同実施形態の車両の無線通信装置を利用した無線通信システムについてそのシステム構成を示すブロック図。
【図10】本発明にかかる車両の無線通信装置の他の例についてその車両に設置された状態を示す斜視図。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明にかかる車両の無線通信装置の一実施形態について図1〜図9を参照して説明する。はじめに、図1〜図6を参照して、本実施形態にかかる車両の無線通信装置の構造について説明する。ちなみにこの無線通信装置は、13.56MHzの電波を用いて通信対象に内蔵された通信モジュールとNFC(Near Field Communication)規格に基づく近距離無線通信を行う、いわゆるリーダライタ装置である。
【0018】
図1に示すように、この車両の無線通信装置1は、基本的には、無線通信を行うための各種電子部品を略扁平直方体状のハウジング2により覆うことで同電子部品を外部環境から保護する構造を有している。また、図2に併せ示すように、ハウジング2は、無線通信を行うための各種電子部品を収容する本体部3と、同本体部3に脱着可能に装着されるとともに車載部品に固定される部分となるベース部4との分割体として構成されている。
【0019】
ここで、この無線通信装置1の断面構造を図3に示すように、本体部3の内部には、ループアンテナ31などの電子部品が実装された回路基板30が図示しないねじなどによって固定された状態で収容されている。ループアンテナ31は、通信対象のNFC通信モジュールと電磁誘導方式の無線通信を行う磁界型のループアンテナである。すなわちこのループアンテナ31は、通信対象のNFC通信モジュールに電力を供給するとともに特定の送信データ(コマンド)を通信対象に送信するための磁界を形成したり、あるいは通信対象のNFC通信モジュールにより形成される磁界を受信する部分である。一方、回路基板30には、例えばスプリアスを遮断するフィルタや、アンテナと制御回路のインピーダンスを整合させる整合回路など、その通信特性を設定するためのRF回路32が設けられている。また、このRF回路32には、回路基板30に設けられたリーダライタ(R/W)IC33が電気的に接続されている。このリーダライタIC33は、上記コマンドを変調してループアンテナ31から送信する処理や、ループアンテナ31を介して受信した無線信号を復調する処理など、各種通信処理を行う部分である。また、このリーダライタIC33には、回路基板30に設けられたコネクタ34が電気的に接続されている。ちなみにこのコネクタ34にはハーネス6が接続され、このハーネス6を通じて無線通信装置1への給電が行われる。またリーダライタIC33は、ハーネス6を介して外部機器と各種情報の授受を行う。なお、本体部3及びベース部4には、ハーネス6が挿通される部分として以下の貫通孔及び溝部が形成されている。
【0020】
・本体部3には、回路基板30が位置する部分に対応して、その底面から内部に貫通する貫通孔35が形成されている。
・ベース部4には、貫通孔35の右端部の位置に対応して、上面から底面に貫通する貫通孔40が形成されている。また、図4に併せ示されるように、ベース部4の底面には、貫通孔40の側壁から右方向(図中の矢印aで示す方向)に延びる溝部46と、同溝部46の側壁からベース部4の背面に貫通する半円形状の貫通孔47が形成されている。
【0021】
そして、上記ハーネス6は、これら貫通孔35,40,47、及び溝部46を通ってハウジング2の背面から導出される。また、回路基板30には、コネクタ34に電気的に接続される第1及び第2のLED36,37が設けられている。これら第1及び第2のLED36,37は、ハーネス6を介して接続される外部機器によってその点灯及び消灯が制御される。一方、先の図1及び図2に示されるように、本体部3の正面には、ループアンテナ31の位置を把握し易くすべく、同アンテナの位置に対応してマークMが印字されている。また、本体部3の正面には、上記第1及び第2のLED36,37の位置に対応して、同本体部3の内部に貫通するとともに透明なプラスチックなどの部材が埋め込まれた貫通孔38が形成されている。すなわち、この無線通信装置1では、貫通孔38を通じて第1及び第2のLED36,37の点灯状態を視認することができる。
【0022】
また、図2に示されるように、ベース部4は、基本的には、互いに直交する第1及び第2の部材4a,4bからなるL字状の部材である。このうち、第1の部材4aの内面には、T字状の突出部4cが形成されている。一方、図5に示すように、本体部3の突出部4cに対向する側面3bには、本体部3の底面に貫通するT字状の溝部3aが形成されている。そして、ハウジング2では、本体部3の底面側から溝部3aの内部にベース部4の突出部4cが挿入されることで、本体部3及びベース部4が互いに組み付けられる。また、先の図2に示されるように、上記第2の部材4bには、ボルト5が挿通される貫通孔42が形成されている。一方、先の図3に示されるように、本体部3には、ボルト5が螺入されるねじ穴39が形成されている。そして、ハウジング2では、ベース部4の貫通孔42から挿通されてねじ穴39に螺入されるボルト5を通じてベース部4が本体部3に一体的に締結されている。また一方、先の図2に示されるように、第1の部材4aは、突出部4cが形成される面と反対側の面に、第2の部材4bの底面に対して所定角度θをなす傾斜面43を有している。この傾斜面43の傾斜角度θは、図6に示すように、車両の後部座席のドアトリム70の上面と、運転席の窓ガラス72及び後部座席の窓ガラス73の間に配置されるピラー71の側面とが互いになす角度αに設定されている。なお、ドアトリム70とピラー71とがなす角度αは通常、車種毎に異なるため、ベース部4については、各車種の角度αに対応した傾斜角度θを有する複数種のものが用意されている。そして、この無線通信装置1では、本体部3については全車種で共通とし、この本体部3に各車種に対応した傾斜角度θを有するベース部4を取り付けることができるようになっている。また、図4に示すように、第1の部材4aの傾斜面43及び第2の部材4bの底面44には、両面テープ45が接着されている。
【0023】
そして、このような構成からなる無線通信装置1は、次のようにして車両に取り付けられる。すなわち、図7に示すように、ベース部4の傾斜面43が上記両面テープによりピラー71の側面に接着されるとともに、ベース部4の底面44が上記両面テープによりドアトリム70の上面に接着されることで、車両に固定される。なお、図7のB−B線に沿った断面構造を図8に示すように、ハウジング2の背面から導出されるハーネス6は、ドアトリム70の上面を通ってピラー71の内部に導かれて、車両に設けられた制御装置に接続されている。本実施形態の無線通信装置1はこのように、ドアトリム70及びピラー71の2点でハウジング2を固定することができるため、例えば車両の振動や、ユーザによるドアの開閉操作などに伴って当該無線通信装置1が外れるような状況を回避することができる。このため、高い安定性を確保することができる。
【0024】
無線通信装置としてのこのような構成によれば、車両の後部座席のドアトリム70にハウジング2を固定することができるため、ユーザによる窓ガラスの開閉操作に伴ってループアンテナ31の一部あるいは全部がドアパネルの内部に収容されることがない。このため、ループアンテナ31と通信対象との間の適切な無線通信を確保することができる。また、ループアンテナを車両に設置する際に、ドアトリム70にハウジング2を固定するだけでよいため、前述のようにループアンテナを窓ガラスに貼付する場合と比較すると、ループアンテナを容易に設置することができるようになる。
【0025】
また、本実施形態の無線通信装置1では、ベース部4の傾斜角度θを車種に応じて最適設計するだけで、各車種のドアトリム70及びピラー71の双方にベース部4を確実に当接させることができる。これにより、どの車種でもドアトリム70及びピラー71の2点で両面テープ45によりハウジング2を確実に固定することができるため、ハウジング2の高い固定強度を各車種で担保することができるようになる。また、本体部3については各車種で共通化することができるため、コストの低減を図ることができるようになる。
【0026】
次に、図9を参照して、このような構成からなる無線通信装置1を利用した車両の無線通信システムの構成、動作について説明する。
同図9に示すように、この無線通信システムでは、車両に搭載された車載機8とユーザが所持する携帯電話機9との間でNFC規格に基づく無線通信が行われて、車両ドアのアンロックが実行される。
【0027】
ここで、車載機8は、基本的には、先の図1〜図8に例示した無線通信装置1と、車両に搭載されて無線通信装置1と上記ハーネス6を介して接続される制御装置80とから構成されている。この制御装置80は、演算処理装置(CPU)、プログラムメモリ(ROM)やデータメモリ(RAM)等を有するマイクロコンピュータを備えて、例えばドアロック機構81などの制御対象を制御する部分である。また、この制御装置80は、無線通信装置1からコマンド信号Scを送信する処理や、無線通信装置1を介して受信されるIDコード信号Siの処理を行う部分でもある。さらに、この制御装置80は、上記ハーネス6及びコネクタ34を介して、上記第1及び第2のLED36,37の点灯を制御する部分でもある。ちなみに、制御装置80の不揮発性のメモリ80aには、識別コード(IDコード)などの情報が予め記憶されている。
【0028】
一方、携帯電話機9には、前述したNFC規格に基づく無線通信を行うためのNFC通信モジュール90が予め内蔵されている。ちなみに、このNFC通信モジュール90は、制御回路やメモリなどを有するICチップと、アンテナなどにより構成されている。また、NFC通信モジュールのメモリには、識別コードなどの情報が予め記憶されている。
【0029】
次に、この無線通信システムの動作について説明する。
まず、制御装置80は、ドアロック機構81を通じて車両ドアをロックさせているとき、第1のLED36を点灯させるとともに、第2のLED37を消灯させることで、車両ドアがロック状態であることを報知する。また、制御装置80は、車両ドアをロックさせているとき、コマンド信号Scを所定の周期をもって生成するとともに、生成したコマンド信号Scをハーネス6を介して無線通信装置1に出力する。このとき無線通信装置1では、コマンド信号Scがコネクタ34を介してリーダライタIC33に入力される。このリーダライタIC33は、コマンド信号が入力されると、同信号を変調するとともに、RF回路32を介してループアンテナ31に電流を流すことで、変調されたコマンド信号を含む磁界をループアンテナ31により形成する。
【0030】
こうしてループアンテナ31により磁界が形成されている状態で、ユーザが乗車の際に自身の携帯電話機9を先の図7に示した後部座席の窓ガラス73の外側から無線通信装置1のマークMにかざしたとする。このとき、図9に示されるように、携帯電話機9に内蔵されるNFC通信モジュール90は、ループアンテナ31により形成された磁界を受信すると、電磁誘導作用によって電力を得て起動する。またこのとき、NFC通信モジュール90は、磁界に含まれるコマンド信号を受信するとともに、このコマンド信号を復調し、同信号に基づいた通信処理を実行する。具体的には、内蔵されるメモリに記憶されたIDコードを含むIDコード信号Siを生成するとともに、同IDコード信号Siを変調する。そしてその後、変調されたIDコード信号Siを含む磁界を形成する。
【0031】
こうしてNFC通信モジュール90により磁界が形成されると、無線通信装置1では、この磁界に含まれるIDコード信号Siがループアンテナ31を介して受信される。このとき、リーダライタIC33は、IDコード信号Siを復調するとともに、復調したIDコード信号Siをコネクタ34及びハーネス6を介して制御装置80に出力する。制御装置80は、IDコード信号Siが入力されると、同信号に含まれるIDコードと、自身の不揮発性のメモリ80aに記憶されているIDコードとの照合を行って、互いのIDコードが一致している場合には、携帯電話機9の認証が成立した旨を判断する。そして、携帯電話機9の認証が成立した場合には、ドアロック機構81を駆動させて車両ドアをアンロックさせる。またこのとき、制御装置80は、点灯状態の第1のLED36を消灯させるとともに、消灯状態の第2のLED37を点灯させることで、車両ドアがアンロックされた旨をユーザに報知する。
【0032】
無線通信システムとしてのこのような構成によれば、ユーザは、乗車の際に、車両の後部座席の窓ガラスに自身の携帯電話機9を近づけるだけで、携帯電話機9と車載機8との間で無線通信を行うことができる。このため、車両ドアのアンロックを容易に行うことができるため、利便性が向上するようになる。
【0033】
以上説明したように、本実施形態にかかる車両の無線通信装置によれば、以下のような効果が得られるようになる。
(1)ループアンテナ31をハウジング2に収容することとした。また、ハウジング2には、車両にハウジング2を固定するための両面テープ45を接着することとした。これにより、携帯電話機9との間の適切な無線通信を確保することができるようになるとともに、ループアンテナ31を車両に容易に設置することができるようになる。
【0034】
(2)両面テープ45によってドアトリム70及びピラー71の双方にハウジング2を固定することとした。これにより、ハウジング2の固定強度を向上させることができるため、高い安定性を確保することができるようになる。
【0035】
(3)ハウジング2を、ループアンテナ31が収容される本体部3と、ドアトリム70及びピラー71に固定されるベース部4との分割体として構成することとした。これにより、各車種のドアトリム70及びピラー71のなす角度αに応じてベース部4の傾斜角度θを最適設計するだけで、ハウジング2の高い固定強度を各車種で担保することができるようになる。また、本体部3については各車種で共通化することができるため、コストの低減を図ることができるようにもなる。
【0036】
(4)ベース部4をL字状に形成することとした。これにより、ベース部4をドアトリム70及びピラー71の双方に確実に当接させることができるため、両面テープ45によってベース部4をドアトリム70及びピラー71の双方に確実に固定することができるようになる。
【0037】
(5)ハウジング2をドアトリム70及びピラー71の双方に固定するための固定部材として、両面テープ45を採用することとした。これにより、十分な固定強度を担保しつつも、ドアトリム70及びピラー71の双方とハウジング2とを容易に接合することができるようになる。
【0038】
なお、上記実施形態は、これを適宜変更した以下の形態にて実施することもできる。
・ユーザは、自身の携帯電話機9を無線通信装置1にかざす際に、携帯電話機9の長手方向がハウジング2の長手方向となるように携帯電話機9を持つ傾向がある。具体的には、例えば先の図7に例示したように、ハウジング2をその長手方向がドアトリム70に沿った方向となるように固定した場合、ユーザは、携帯電話機9の長手方向がドアトリム70に沿った方向となるように、すなわち水平方向となるように携帯電話機9を持つ傾向がある。しかしながらこの場合には、携帯電話機9を持ちにくいことが懸念される。そこで図10に示すように、例えば上記ベース部4の形状を適宜変更するなどして、ハウジング2を、その長手方向がピラー71に沿った方向となるように固定してもよい。これによりユーザは、携帯電話機9を無線通信装置1にかざす際に、携帯電話機9の長手方向がピラー71に沿った方向となるように、すなわち鉛直方向となるように携帯電話機9を持つようになる。このため、携帯電話機9を持ち易くなるため、利便性が向上するようになる。
【0039】
・上記実施形態では、無線通信装置1と制御装置80との間の通信をハーネス6を介して有線により行うこととした。これに代えて、無線通信装置1及び制御装置80には、それらの間で無線通信を行うための通信装置を設ける。そしてこの通信装置を通じて、無線通信装置1と制御装置80との間の通信を無線により行う。また、無線通信装置1には、その駆動電源となる電池(バッテリ)などを搭載する。これにより、車両にハーネス6を取り付ける必要がなくなるため、本発明にかかる無線通信装置を車両に容易に搭載することができるようになる。
【0040】
・上記実施形態では、IDコードの照合処理や第1及び第2のLED36,37の点灯制御を車両の制御装置80により行うこととした。これに代えて、例えば上記回路基板30に制御回路を実装した上で、この制御回路を通じてIDコードの照合処理や第1及び第2のLED36,37の点灯制御を実行してもよい。
【0041】
・上記実施形態では、ハウジング2をドアトリム70及びピラー71に固定するための固定部材として、両面テープ45を用いることとしたが、これに代えて、例えばボルトやリベットなどを用いてもよい。
【0042】
・上記実施形態では、ベース部4をL字状に形成することとしたが、ドアトリム70とピラー71とがなす角度αによっては、例えばV字状に形成するなど、ベース部4の形状を適宜変更してもよい。また、本体部3の形状も適宜変更してもよい。
【0043】
・上記実施形態では、ハウジング2を本体部3及びベース部4の分割体として構成することとしたが、これに代えて、例えばハウジング2を一体的に形成してもよい。これにより、ハウジング2の製造の際に、本体部3及びベース部4を組み付ける作業を削減することができることから、製造工数の低減を図ることができるようになる。
【0044】
・上記実施形態では、ハウジング2をドアトリム70及びピラー71の双方に固定することとしたが、これに代えて、例えばハウジング2の底面のみをドアトリム70に固定してもよい。なおこの場合には、ハウジング2の固定強度が低下するおそれがあるため、例えばボルトなどを用いてハウジング2をドアトリム70に締結することが有効である。
【0045】
・上記実施形態では、無線通信装置1を車両の後部座席の窓ガラスの近傍に配置することとしたが、これに代えて、例えば運転席の窓ガラスの近傍や、助手席の窓ガラスの近傍に配置してもよい。また、フロントガラスの端部に無線通信装置1を配置してもよい。さらに、例えばフロントガラスを支えるAピラーに三角窓が設けられている車両にあっては、この三角窓に無線通信装置1を配置してもよい。このように、無線通信装置1は、車両の窓ガラスに近接する適宜の車載部品に設置されるものであればよい。
【0046】
・上記実施形態では、本発明にかかる車両の無線通信装置を、車両ドアのアンロックを行う車両の無線通信システムに適用することとした。これに代えて、例えば携帯電話機9のIDコードに基づいてシートポジションを変更する無線通信システムに適用することも可能である。また、携帯電話機9の認証が成立した際に、ユーザの名前を音声で伝えたり、あるいは車両のライトを点灯させるなど、いわゆるお出迎え機能を実行する無線通信システムに適用することも可能である。さらに、携帯電話機9の認証が成立した際に、車載エンジンを始動させる無線通信システムにも適用することが可能である。要は、無線通信に基づく認証結果に基づいて車両の各種制御を行う無線通信システムであれば、本発明にかかる無線通信装置を適用することが可能である。
【0047】
・上記実施形態では、無線通信装置1の通信対象が携帯電話機9であったが、これに代えて、例えばNFC通信モジュールが内蔵されたカードなどであってもよい。
・上記実施形態では、本発明にかかる車両の無線通信装置を、NFC規格に基づく無線通信を行う通信装置に適用することとしたが、これに代えて、一般的なRFID方式に基づく無線通信を行う通信装置に適用してもよい。
【0048】
<付記>
次に、上記実施形態及びその変形例から把握できる技術的思想について追記する。
(イ)請求項2に記載の車両の無線通信装置において、前記ベース部がL字状に形成されてなることを特徴とする車両の無線通信装置。同構成によるように、ベース部をL字状に形成することとすれば、その互いに直交する部位を、例えば前述したドアトリムとピラーなど、互いに直交する2つの車載部品にそれぞれ当接させることができるようになる。このため、固定部材によってベース部を車載部品に確実に固定することができるようになる。
【0049】
(ロ)請求項1〜4及び付記イのいずれか一項に記載の車両の無線通信装置において、前記ループアンテナが、NFC(Near Field Communication)規格に基づく無線通信を行って前記通信対象と前記無線信号の授受を行うものであることを特徴とする車両の無線通信装置。ループアンテナがNFCを利用して通信対象と無線通信を行うものである場合には、通信に用いられる周波数が低周波であることから、ドアパネルなどの金属体により無線通信が阻害されないことが望まれる。このため、こうした無線通信装置において、請求項1〜4及び付記イのいずれか一項に記載の発明を採用することの意義は大きい。
【0050】
(ハ)請求項4に記載の車両の無線通信装置において、前記通信対象が携帯電話機であって、前記ハウジングは、その長手方向が前記ピラーに沿った方向となるように前記固定部材により前記ドアトリム及び前記ピラーに固定されるものであることを特徴とする車両の無線通信装置。ユーザは、自身の携帯電話機を車両の無線通信装置にかざす際に、携帯電話機の長手方向とハウジングの長手方向とが一致するように携帯電話機を持つ傾向がある。具体的には、例えばハウジングをその長手方向がドアトリムに沿った方向となるように車両に設置した場合、ユーザは、携帯電話機の長手方向がドアトリムに沿った方向となるように、すなわち水平方向となるように携帯電話機を持つ傾向がある。しかしながらこの場合には、携帯電話機をかざし難いことが懸念される。この点、上記構成によるように、ハウジングの長手方向がピラーに沿った方向となるようにハウジングを固定した場合には、ユーザは、携帯電話機を無線通信装置にかざす際に、携帯電話機の長手方向がピラーに沿った方向となるように、すなわち鉛直方向となるように携帯電話機を持つようになる。このため、携帯電話機をかざし易くなるため、利便性が向上するようになる。
【0051】
(ニ)請求項1〜4、及び付記イ〜ハのいずれか一項に記載の車両の無線通信装置において、前記固定部材が、前記車載部品と前記ハウジングとを互いに接合する両面テープであることを特徴とする車両の無線通信装置。同構成によれば、十分な固定強度を担保しつつも、車載部品とハウジングとを容易に接合することができるようになる。
【符号の説明】
【0052】
M…マーク、Sc…コマンド信号、Si…IDコード信号、1…無線通信装置、2…ハウジング、3…本体部、3a…溝部、3b…側面、4…ベース部、4a…第1の部材、4b…第2の部材、4c…突出部、5…ボルト、6…ハーネス、8…車載機、9…携帯電話機、30…回路基板、31…ループアンテナ、32…RF回路、33…リーダライタIC、34…コネクタ、35…貫通孔、36…第1のLED、37…第2のLED、38,40,42…貫通孔、39…ねじ穴、43…傾斜面、44…底面、45…両面テープ、46…溝部、47…貫通孔、70…ドアトリム、71…ピラー、72,73…窓ガラス、80…制御装置、80a…メモリ、81…ドアロック機構、90…NFC通信モジュール。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
通信対象に無線信号を送信するとともに同通信対象から送信される無線信号を受信するループアンテナと、
該ループアンテナを収容するハウジングと、
車両の窓ガラスに近接する車載部品に前記ハウジングを固定するための固定部材と、
を備えることを特徴とする車両の無線通信装置。
【請求項2】
前記ハウジングは、前記ループアンテナを収容する本体部と、該本体部に脱着可能に装着されるとともに前記固定部材を介して前記車載部品に固定されるベース部との分割体により構成されてなる
請求項1に記載の車両の無線通信装置。
【請求項3】
前記窓ガラスが、車両ドアに設けられる窓ガラスであるとともに、前記車載部品が、車両のドアトリムであって、前記ハウジングが、前記ドアトリムに前記固定部材により固定されるものである
請求項1又は2に記載の車両の無線通信装置。
【請求項4】
前記車載部品が、前記ドアトリム及び車両のピラーであって、前記ハウジングが、前記ドアトリム及び前記ピラーの双方に前記固定部材により固定されるものである
請求項3に記載の車両の無線通信装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate


【公開番号】特開2012−111413(P2012−111413A)
【公開日】平成24年6月14日(2012.6.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−263636(P2010−263636)
【出願日】平成22年11月26日(2010.11.26)
【出願人】(000003551)株式会社東海理化電機製作所 (3,198)
【Fターム(参考)】