車両の熱制御装置
【課題】車両における調温部の冷却を行いたいとき、そのタイミングにて蓄熱材の吸熱を利用した調温部の冷却を適切に行えるようにする。
【解決手段】熱制御装置を用いた加温が行われた後には、同装置の反応器6に収容された蓄熱材7が加水状態とされる。この状態のもとで、反応器6の内部を密閉し、且つ反応器6の内部の圧力を目標圧力Ptに向けて高めることにより、冷却スタンバイ状態が実現されるとともに、その冷却スタンバイ状態が保持される。同冷却スタンバイ状態のもとでは、反応器6に収容された蓄熱材7が熱を受けたときに同蓄熱材7からの脱水が行われにくくなるため、その蓄熱材7が集合排気管2の各枝部2a等からの熱を受けて脱水及び吸熱してしまうことを抑制できる。そして、冷却スタンバイ状態のもとで熱制御装置を用いた触媒4の冷却、すなわち蓄熱材7の吸熱を利用した触媒4の冷却を行いたいときには、反応器6の内部の密閉が解除される。
【解決手段】熱制御装置を用いた加温が行われた後には、同装置の反応器6に収容された蓄熱材7が加水状態とされる。この状態のもとで、反応器6の内部を密閉し、且つ反応器6の内部の圧力を目標圧力Ptに向けて高めることにより、冷却スタンバイ状態が実現されるとともに、その冷却スタンバイ状態が保持される。同冷却スタンバイ状態のもとでは、反応器6に収容された蓄熱材7が熱を受けたときに同蓄熱材7からの脱水が行われにくくなるため、その蓄熱材7が集合排気管2の各枝部2a等からの熱を受けて脱水及び吸熱してしまうことを抑制できる。そして、冷却スタンバイ状態のもとで熱制御装置を用いた触媒4の冷却、すなわち蓄熱材7の吸熱を利用した触媒4の冷却を行いたいときには、反応器6の内部の密閉が解除される。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両の熱制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
自動車などの車両においては、温度調節が必要となる調温部を加温したり冷却したりすることが行われている。こうした調温部の加温や冷却を行うべく、例えば特許文献1に示される熱制御装置を採用することが考えられる。
【0003】
この熱制御装置は、低温時の加水により水分と反応して発熱する一方で高温時には脱水して吸熱を行う蓄熱材を備えている。同装置は、放熱モード時に蓄熱材と水分とを反応させ、同反応によって発生した熱を内燃機関の排気系に設けられた触媒に付与することで、その触媒を加温する。なお、同触媒を加温するための上記放熱モードは、車両の始動時など触媒の温度が低いときに実施される。一方、上記熱制御装置では、車両の運転中などに蓄熱モードとなり、その蓄熱モード時に内燃機関の排気系における触媒の上流の熱が加水状態にある蓄熱材に付与される。詳しくは、触媒の上流を流れる排気の一部が蓄熱材へと導かれることで、その排気を通じて触媒上流の熱が蓄熱材に付与される。加水状態にある蓄熱材に対し上述したように熱が付与されると、同蓄熱材からの脱水と同蓄熱材への吸熱とが行われる。こうした蓄熱材への吸熱が行われると、同蓄熱材に導かれた排気の温度が上記吸熱を通じて低下する。この温度低下した排気を触媒の上流に戻すことで、その触媒の上流部分、更には同触媒が冷却されるようになる。
【0004】
従って、この例では、内燃機関の排気系における触媒及びその上流部分が、車両において温度調節の必要な上記調温部となる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2009−257239公報(段落[0053]〜[0058]、図3(A)及び(B))
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記特許文献1の熱制御装置では、内燃機関の排気系における触媒及びその上流部分を冷却したいタイミングにて蓄熱モードを実行することで、上記触媒及びその上流部分を冷却することが可能にはなる。詳しくは、上記タイミングでの蓄熱モードの実行を通じて、内燃機関の排気系における触媒上流の排気を加水状態にある蓄熱材に導き、その後に同蓄熱材の吸熱を通じて温度低下した上記排気を触媒の上流に戻すことにより、同触媒及びその上流部分を冷却することが可能にはなる。
【0007】
ただし、放熱モードにより加水状態とされた蓄熱材は、蓄熱モードの実行前に外部からの熱を受けて自然に脱水・吸熱してしまう可能性がある。この場合、上記タイミングでの放熱モードの実行を通じて、内燃機関の排気系における触媒上流の排気を蓄熱材に導いたとしても、その蓄熱材にて既にある程度の脱水及び吸熱が行われてしまっており、上記排気を蓄熱材の吸熱によって十分に温度低下させることができなくなる。このため、蓄熱材に導いた後の排気を触媒の上流に戻しても、同排気によって触媒及びその上流部分(調温部)を冷却することができなくなる。
【0008】
本発明はこのような実情に鑑みてなされたものであって、その目的は、車両における調温部の冷却を行いたいとき、そのタイミングにて蓄熱材の吸熱を利用した調温部の冷却を適切に行うことのできる車両の熱制御装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
請求項1記載の発明によれば、反応器に収容された蓄熱材が加水状態とされているとき、開閉手段により反応器の内部を密閉し、且つ、加圧手段により反応器の内部の圧力を外部の圧力よりも高めることで、反応器の内部に収容された蓄熱材が熱を受けたときの同蓄熱材からの脱水が行われにくくなる。このように反応器の内部を密閉して外部よりも高圧とすることで、反応器の内部に収容された加水状態の蓄熱材が、調温部を含めた外部からの熱を受けて脱水・吸熱してしまうことを抑制できる。なお、上記調温部としては、車両に搭載された内燃機関の排気系における触媒や同触媒上流の集合排気管があげられる。そして、車両における調温部を冷却したいときには、開閉手段により反応器の内部の密閉が解除される。この状態のもとでは、調温部の熱が加水状態にある蓄熱材に付与されることにより、蓄熱材からの脱水と同蓄熱材への吸熱とが行われる。そして、その蓄熱材への吸熱を利用した調温部の冷却が行われる。以上により、車両における調温部の冷却を行いたいとき、そのタイミングにて蓄熱材の吸熱を利用した調温部の冷却を適切に行うことができるようになる。
【0010】
請求項2記載の発明によれば、蓄熱材への加水により発生した熱が調温部に付与されるよう同熱の伝達経路を切換手段によって切り換えることで、その熱によって調温部を加温することができる。そして、蓄熱材が加水状態となった後、同蓄熱材を収容した反応器の内部を開閉手段により密閉し、更に反応器の内部を加圧手段により外部よりも高圧とすることで、蓄熱材への吸熱に基づく調温部の冷却が可能な状態(以下、冷却スタンバイ状態という)が保持される。その後、上記調温部を冷却したいとき、開閉手段により反応器の内部の密閉が解除される。この状態のもとで、調温部の熱が加水状態にある蓄熱材に付与されることにより、蓄熱材からの脱水と同蓄熱材への吸熱とが行われ、その蓄熱材への吸熱に基づいて調温部が冷却される。
【0011】
このように蓄熱材からの脱水、及び、蓄熱材への急熱が行われた後、再び冷却スタンバイ状態とするためには、蓄熱材を加水状態とすべく同蓄熱材に対し加水を行わなければならない。ただし、このように蓄熱材に対し加水を行うと、それに伴う蓄熱材からの発熱によって調温部が無駄に加温されるおそれがある。しかし、請求項2記載の発明では、こうした蓄熱材への加水時、同蓄熱材にて発生した熱が外部放熱器に付与されるよう同熱の伝達経路を切換手段により切り換えることで、上記熱が無駄に調温部に付与されないようにすることができる。なお、外部放熱器に付与された上記熱は、その外部放熱器から外部に放出される。以上により、冷却スタンバイ状態から調温部の冷却を行った後、同調温部を不必要に加温することなく、再び冷却スタンバイ状態を実現することができるようになる。
【0012】
請求項3記載の発明によれば、蓄熱材への加水による同蓄熱材の発熱を利用して触媒を加温することができるため、その加温を通じて車両の始動開始後等における触媒の暖機を速やかに完了させることができる。これにより、車両の始動開始後等における内燃機関の排気エミッションの悪化を抑制することができる。また、内燃機関における排気の熱を効果的に触媒に伝達して同触媒の暖機を早期に完了させるためには、触媒を内燃機関の排気系において可能な限り上流側に設けることが好ましい。ただし、このように触媒を設けると、同触媒の暖機完了後に内燃機関の排気の温度が高くなったとき、触媒の温度が過上昇して同触媒の熱劣化を招くおそれがある。しかし、請求項3記載の発明では、このようなときに触媒に対し蓄熱材への吸熱に基づく冷却を行い、それによって触媒の温度が過上昇することを抑制できる。従って、内燃機関の排気系における可能な限り上流側に触媒を設けることによる同触媒の速やかな暖機完了を図りつつ、排気の温度が高くなったときの触媒の熱劣化を抑制することができる。
【0013】
請求項4記載の発明によれば、蓄熱材の発熱を利用して内燃機関の排気系における触媒の上流に位置する集合排気管の各枝部が加温されると、それら各枝部を通過する排気の温度が上昇し、その温度上昇した排気が触媒に流れて同触媒が加温されることとなる。また、蓄熱材への吸熱に基づき上記各枝部が冷却されると、それら各枝部を通過する排気の温度が低下し、その温度低下した排気が触媒に流れて同触媒が冷却されることとなる。集合排気管の各枝部は、湾曲した外形を有しており、熱を吸収及び放出する表面積を大きくとることが可能な形状である関係から、内燃機関の排気系において熱の吸収及び放出を効果的に行うことの可能な部分である。こうした集合排気管の各枝部の加温及び冷却を通じて、内燃機関の排気系における集合排気管の下流に位置する触媒の加温及び冷却を行うことで、同触媒の加温及び冷却を効率よく行うことができるようになる。
【0014】
請求項5記載の発明によれば、蓄熱材への加水による同蓄熱材の発熱を利用して内燃機関の冷却水を加温することができる。こうした冷却水の加温を内燃機関の始動開始後等に行うことで、機関始動開始後等における筒内での燃料の揮発性低下を抑制し、その燃料の揮発性低下に伴う排気エミッションの悪化を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】第1実施形態における熱制御装置の全体構成を示す略図。
【図2】内燃機関の排気系における排気ポートから触媒までの距離の変化に対する触媒入り口の排気温の推移を示すグラフ。
【図3】内燃機関の排気系における排気ポートから触媒までの距離の変化に対する触媒暖機に必要な熱エネルギの変化を示すグラフ。
【図4】内燃機関の排気系における加温箇所の違いによる触媒入り口の排気温の推移の違いを示すタイムチャート。
【図5】熱制御装置を用いた加温の実行手順を示すフローチャート。
【図6】熱制御装置での冷却スタンバイ処理の実行手順を示すフローチャート。
【図7】熱制御装置を用いた冷却の実行手順を示すフローチャート。
【図8】第2実施形態における熱制御装置の全体構成を示す略図。
【図9】同熱制御装置における蓄熱材からの放熱の手順を示すタイムチャート。
【図10】第3実施形態における熱制御装置の全体構成を示す略図。
【発明を実施するための形態】
【0016】
[第1実施形態]
以下、本発明を自動車の熱制御装置に具体化した第1実施形態について、図1〜図7を参照して説明する。
【0017】
図1に示されるように、自動車に搭載される内燃機関1の排気系には、同機関に接続される集合排気管2が設けられている。この集合排気管2は、内燃機関1の各気筒にそれぞれ繋がる複数の枝部2aを備え、それら各枝部2aを湾曲形成して一つに集合させるようにしている。また、内燃機関1の排気系における集合排気管2の下流には、排気管3、触媒4、及び排気管5が排気系の上流から下流に向かって順に設けられている。そして、内燃機関1からの排気は、集合排気管2及び排気管3を通って触媒4に流れ、その触媒4にて浄化された後に排気管5を介して外部に放出される。
【0018】
自動車の熱制御装置は、同自動車における温度調節の必要な部分である調温部を加温したり冷却したりする。この実施形態では、内燃機関1の排気系における触媒4及びその上流部分(集合排気管2の各枝部2a)が上記調温部となっている。同装置は、集合排気管2の各枝部2aの周囲に設けられた反応器6を備えている。反応器6の内部には、水酸化カルシウム等の蓄熱材7が収容されている。この蓄熱材7は、低温での加水時に水分と反応して発熱する一方、高温時には脱水して吸熱を行う。反応器6には、水タンク8内の水を同反応器6の内部に送るための供給管9、及び、反応器6の内部に存在する水や水蒸気を水タンク8に戻すための排出管10が接続されている。なお、水タンク8には、その内部の余分な空気を外部に逃がすための解放弁14が設けられている。
【0019】
そして、水タンク8の水が供給管9を介して反応器6に送られると、同反応器6の内部に収容された蓄熱材7が水分と反応して発熱する。この発熱を利用して、内燃機関1の排気系における集合排気管2の各枝部2aが加温される。このように集合排気管2の各枝部2aが加温されると、各枝部2aを通過する排気の温度が上昇し、その温度上昇した排気が触媒4に流れて同触媒4が加温される。一方、蓄熱材7の加水状態にあって、各枝部2aを通過する排気の温度が高くなって同排気の熱が反応器6内の蓄熱材7に付与されると、同蓄熱材7からの脱水及び同蓄熱材7への吸熱が行われる。こうした蓄熱材7への吸熱に基づいて集合排気管2の各枝部2aが冷却される。このように集合排気管2の各枝部2aが冷却されると、各枝部2aを通過する排気の温度が低下し、その温度低下した排気が触媒4に流れて同触媒4が冷却される。
【0020】
自動車の熱制御装置における上記供給管9には開閉弁11が設けられている。この開閉弁11を開くと水タンク8から反応器6への供給管9を介しての水の流れが許容され、開閉弁11を閉じると水タンク8から反応器6への供給管9を介しての水の流れが遮断される。また、同装置における上記排出管10には開閉弁12が設けられている。この開閉弁12を開くと反応器6から水タンク8への排出管10を介しての水や水蒸気の流れが許容され、開閉弁12を閉じると反応器6から水タンク8への排出管10を介しての水や水蒸気の流れが遮断される。従って、上記開閉弁11と上記開閉弁12との両方を閉じることで反応器6の内部が密閉される一方、その密閉時に開閉弁11及び開閉弁12のうちの少なくとも一方を開くことで上記密閉が解除される。また、反応器6には、その内部に空気を送り込むためのポンプ13が接続されている。そして、反応器6の内部を密閉した状態で、その内部に上記ポンプ13により空気を送り込むことにより、反応器6の内部の圧力を外部の圧力よりも高めることが可能になる。
【0021】
次に、内燃機関1の排気系における触媒4の位置、及び、熱制御装置による直接的な加温及び冷却を行う位置について、図2〜図4を参照して詳しく説明する。
図2に示されるように、触媒4の入り口における排気の温度は、同触媒4を内燃機関1の排気系における上流側に設けるほど高くなる。このため、車両の始動開始後などに触媒4の暖機を早期に完了させるためには、同触媒を内燃機関1の排気系において可能な限り上流側に設けることが好ましい。こうした実情を考慮して、本実施形態では、触媒4が内燃機関1の排気系において可能な限り上流側に設けられている。
【0022】
熱制御装置による触媒4の加温については、それを触媒4に対して直接的に行ったり、あるいは触媒4の上流に位置する排気管を加温することにより間接的に行ったりすることが考えられる。
【0023】
図3は、触媒4を直接的に加温した場合に同触媒4の暖機に必要な熱エネルギQ1(破線)と、触媒4の上流に位置する排気管を加温した場合に同触媒4の暖機に必要な熱エネルギQ2(実線)との違いを示している。同図から分かるように、触媒4が内燃機関1の排気系において上流に位置している場合には上記熱エネルギQ2が上記熱エネルギQ1よりも小さく抑えられる一方、触媒4が内燃機関1の排気系において下流に位置している場合には上記熱エネルギQ2が上記熱エネルギQ1よりも大きくなる。これは、触媒4が排気系の上流に位置している場合には触媒4そのものを加温するよりも触媒4の入り口の排気の温度を高めた方が触媒4の温度を高めやすく、触媒4が排気系の下流に位置している場合には触媒4の入り口の排気の温度を高めるよりも触媒4そのものを加温した方が触媒4の温度を高めやすいためである。
【0024】
上述したように、この実施形態では、触媒4が内燃機関1の排気系において可能な限り上流側に設けられているため、熱制御装置による加温が内燃機関1の排気系における触媒4よりも上流の排気管(集合排気管2の各枝部2a)に対して行われる。詳しくは、熱制御装置の反応器6(蓄熱材7)が内燃機関1の排気系における触媒4よりも上流の排気管(集合排気管2の各枝部2a)に対応した位置に設けられており、それによって蓄熱材7からの熱が上記排気管に付与されるようにしている。これにより、触媒4の加温を効果的に行えるようになる。なお、このように蓄熱材7の熱を上記排気管に付与することで触媒4の加温を効果的に行えるということは、蓄熱材7への吸熱に基づき上記排気管を冷却することで触媒4の冷却を効果的に行えるということも意味する。
【0025】
熱制御装置による内燃機関1の排気系における触媒4よりも上流に位置する排気管の加温を行う際、その加温の位置が触媒4の入り口の排気温に影響を及ぼす。
図4は、触媒4の入り口における排気の温度の時間経過に伴う推移を示している。同図において、実線は集合排気管2の各枝部2aのみを熱制御装置により加温した場合の上記排気の温度の推移を表し、破線は集合排気管2全体を熱制御装置により加温した場合の上記排気の温度の推移を表し、二点鎖線は熱制御装置による加温を行わなかった場合の上記排気の温度の推移を表している。同図から分かるように、集合排気管2の各枝部2aのみを熱制御装置により加温したとき(実線)、触媒4の入り口における排気の温度を効果的に高めることができ、それによって触媒4の加温を効果的に行うことができるようになる。これは、集合排気管2の各枝部2aは、湾曲した外形を有しており、熱を吸収可能な表面積を大きくとることが可能な形状である関係から、内燃機関1の排気系において熱の吸収を効果的に行えるためである。
【0026】
上述したように、この実施形態では、熱制御装置の反応器6(蓄熱材7)が集合排気管2の各枝部2aに対応した位置に設けられているため、蓄熱材7からの熱が上記排気管に付与される。これにより、触媒4の入り口における排気の温度を効果的に高めることができ、ひいては触媒4の加温を効果的に行えるようになる。なお、このように蓄熱材7の熱を集合排気管2の各枝部2aに付与することで触媒4の加温を効果的に行えるということは、蓄熱材7への吸熱に基づき上記集合排気管2の各枝部2aを冷却することで触媒4の冷却を効果的に行えるということも意味する。
【0027】
次に、上記熱制御装置の電気的構成について、図1を参照して説明する。
この熱制御装置は、内燃機関1に関する各種運転制御等を実施する電子制御装置21を備えている。同電子制御装置21には、上記制御に係る各種演算処理を実行するCPU、その制御に必要なプログラムやデータの記憶されたROM、CPUの演算結果等が一時記憶されるRAM、外部との間で信号を入・出力するための入・出力ポート等が設けられている。
【0028】
電子制御装置21の入力ポートには、内燃機関1の吸入空気量を検出するエアフローメータ22、同機関1の回転速度を検出するためのクランクポジションセンサ23、及び、同機関1の排気系における触媒4の上流の排気温度を検出する排気温センサ24といった各種センサが接続されている。また、電子制御装置21の出力ポートには、内燃機関1を運転制御するための各種機器の駆動回路が接続される他、開閉弁11の駆動回路、開閉弁12の駆動回路、及び、ポンプ13の駆動回路等が接続されている。
【0029】
そして、電子制御装置21は、上記各種センサから入力した検出信号に基づき、機関回転速度や機関負荷(内燃機関1の1サイクル当たりに燃焼室に吸入される空気の量)といった機関運転状態を把握する。電子制御装置21は、機関負荷や機関回転速度といった機関運転状態に応じて、上記出力ポートに接続された各種駆動回路に指令信号を出力する。こうして内燃機関1における燃料噴射量制御等の各種運転制御や、開閉弁11,12及びポンプ13の駆動制御が電子制御装置21を通じて実施される。
【0030】
次に、熱制御装置による触媒4の加温について、加温ルーチンを示す図5のフローチャートを参照して説明する。この加温ルーチンは、電子制御装置21を通じて、例えば所定時間毎の時間割り込みにて周期的に実行される。
【0031】
同ルーチンにおいては、まず、熱制御装置による加温が可能な状態であるか否かが判断される(S101)。具体的には、自動車の始動開始後に熱制御装置による加温が一度も行われていないとき、その加温が可能な状態である旨判断される。そして、S101の処理で肯定判定がなされると、熱制御装置を用いた加温の要求があるか否かが判断される(S102)。具体的には、自動車の始動開始後など、触媒4の温度が同触媒4による排気浄化機能を必要レベルとすることの可能な値として予め定められた暖機判定値未満であるとき、上記熱制御装置を用いた加温の要求がなされる。なお、触媒4の温度については、排気温センサ24によって検出される触媒4の入り口の排気の温度、機関運転状態から求められる内燃機関1の燃料噴射量の指令値、及び、エアフローメータ22によって検出される内燃機関1の吸入空気量等から推定することが可能である。
【0032】
S102の処理で加温の要求がある旨判断されると、熱制御装置を用いた加温が実施される(S103)。詳しくは、通常は共に閉じられた状態にある開閉弁11,12のうち、開閉弁11が開かれて水タンク8の水が供給管9を介して反応器6の内部に送り込まれる。これにより、反応器6の内部に収容された蓄熱材7が水分と反応して発熱し、その発熱を利用して集合排気管2の各枝部2aが加温される。このように集合排気管2の各枝部2aが加温されると、各枝部2aを通過する排気の温度が上昇し、その温度上昇した排気が触媒4に流れて同触媒4が加温される。同触媒4の加温により自動車の始動開始後等に触媒4の暖機を速やかに完了させることができ、触媒4の暖機完了前における内燃機関1の排気エミッションの悪化を抑制することができる。
【0033】
上述したように熱制御装置を用いた加温を行うことで、反応器6に収容された蓄熱材7が加水状態になる。ところで、蓄熱材7の加水状態にあっては、各枝部2aを通過する排気の熱が反応器6内の蓄熱材7に付与されると、同蓄熱材7からの脱水及び同蓄熱材7への吸熱が行われ、こうした蓄熱材7への吸熱に基づいて集合排気管2の各枝部2aが冷却される。このように集合排気管2の各枝部2aが冷却されると、各枝部2aを通過する排気の温度が低下し、その温度低下した排気が触媒4に流れて同触媒4が冷却される。この実施形態では、上記触媒4の冷却を的確に所望のタイミングで行えるようにしている。詳しくは、熱制御装置を用いた上記加温後に蓄熱材7を加水状態に保持することで、同蓄熱材7への吸熱に基づく冷却が可能な状態(以下、冷却スタンバイ状態という)を保持し、その冷却スタンバイ状態のもとで触媒4の冷却要求があったときに熱制御装置を用いた触媒4の冷却を行うようにしている。
【0034】
ここで、上記冷却スタンバイ状態を実現するための冷却スタンバイ処理ルーチンについて、図6のフローチャートを参照して説明する。この冷却スタンバイ処理ルーチンは、電子制御装置21を通じて、例えば所定時間毎の時間割り込みにて周期的に実行される。
【0035】
同ルーチンにおいては、まず、熱制御装置を用いた加温の終了後であるか否か(S201)、言い換えれば蓄熱材7への加水の終了後であるか否かが判断される。ここで肯定判定であれば、冷却スタンバイ状態となっているか否かを判断するためのフラグFが「0(冷却スタンバイ状態でない)」であることを条件に(S202:YES)、蓄熱材7を収容した反応器6の内部の密閉が行われる(S203)。具体的には、開閉弁11と開閉弁12とが共に閉じられることによって反応器6の内部が密閉される。
【0036】
その後、ポンプ13の駆動制御を通じて、反応器6の内部の圧力が外部の圧力よりも高くなるよう、反応器6の内部の圧力が目標圧力Ptに向けて高められる(S204)。なお、このときの反応器6の内部の圧力を高い値とするほど、すなわち上記目標圧力Ptを高い値とするほど、反応器6内の加水状態にある蓄熱材7に対し熱が付与されたとき、同蓄熱材7の脱水反応及びそれに伴う吸熱が生じにくくなる。この実施形態では、加水状態にある蓄熱材7が集合排気管2の各枝部2aを流れる排気の熱を受けても脱水反応及びそれに伴う吸熱を生じさせないよう上記目標圧力Ptが定められ、その目標圧力Ptに合わせて反応器6の内部の圧力が高められる。
【0037】
上述したように、反応器6の内部が密閉された状態で同反応器6の内部の圧力が高められることにより、冷却スタンバイ状態が実現されるとともに、その冷却スタンバイ状態が保持される。このときには、冷却スタンバイ状態となっているか否かを判断するためのフラグFが「1(冷却スタンバイ状態)」に設定される(S205)。このようにフラグFが「1」になると、S202の処理で否定判定がなされるため、上記S203〜S205の処理がスキップされるようになる。
【0038】
次に、上記冷却スタンバイ状態から行われる熱制御装置を用いた触媒4の冷却について、冷却ルーチンを示す図7のフローチャートを参照して説明する。この冷却ルーチンは、電子制御装置21を通じて、例えば所定時間毎の時間割り込みにて実行される。
【0039】
同ルーチンにおいては、まず、フラグFが「1(冷却スタンバイ状態)」であることを条件に(S301:YES)、熱制御装置を用いた冷却の要求があるか否かが判断される(S302)。具体的には、内燃機関1の高負荷運転時など、触媒4の温度が同触媒4の熱劣化を招くおそれのある値として予め定められた許容上限値以上になるとき、上記熱制御装置を用いた冷却の要求がなされる。
【0040】
S302の処理で冷却の要求がある旨判断されると、熱制御装置を用いた冷却が実施される(S303)。詳しくは、冷却スタンバイ状態のもとで共に閉じられた状態にある開閉弁11,12のうち開閉弁12が開かれる。これにより、反応器6の内部の密閉が解除されるとともに、反応器6から水タンク8への排出管10を介しての水や水蒸気の流れが許容される。反応器6の内部の密閉が解除されると、その反応器6の内部の圧力が下がる。この状態のもとでは、集合排気管2の各枝部2aを流れる排気の熱が加水状態にある蓄熱材7に付与されることで、蓄熱材7からの脱水と同蓄熱材7への吸熱とが行われ、その蓄熱材7への吸熱を利用して各枝部2aが冷却される。このように集合排気管2の各枝部2aが冷却されると、各枝部2aを通過する排気の温度が低下し、その温度低下した排気が触媒4に流れて同触媒4が冷却される。同触媒4の冷却により、内燃機関1の高負荷運転時など、触媒4の温度が過上昇するおそれのあるとき、そうした触媒4の温度の過上昇を抑制することができる。
【0041】
上述した冷却スタンバイ状態からの熱制御装置を用いた触媒4の冷却、すなわち蓄熱材7の吸熱を利用した触媒4の冷却では、同触媒4の冷却を行いたいときに反応器6の密閉を解除することで、上記触媒4の冷却を行いたいタイミングにて的確に同冷却を行うことができるようになる。なお、このように冷却を行った後には、蓄熱材7が脱水状態となって冷却スタンバイ状態が解消されるため、冷却スタンバイ状態となっているか否かを判断するための上記フラグFが「0(冷却スタンバイ状態でない)」に設定される(S304)。
【0042】
ちなみに、S302での冷却要求は、触媒4の温度が上記許容上限値以上である状況のときだけでなく、そうした状況のもとになくとも自動車の運転停止時にはなされる。このように自動車の運転停止時に冷却要求がなされるのは、自動車における次回の始動開始に備えるためである。すなわち、自動車における次回の始動開始後、熱制御装置を用いた触媒4の加温が可能となるよう蓄熱材7を脱水状態としておくため、上記冷却要求がなされる。この場合、上記冷却要求に基づき反応器6の内部の密閉が解除されると、上記と同様に蓄熱材7からの脱水が行われる。これにより、蓄熱材7が自動車における次回の始動開始に備えて脱水状態とされる。
【0043】
以上詳述した本実施形態によれば、以下に示す効果が得られるようになる。
(1)熱制御装置を用いた加温、すなわち蓄熱材7の加水による発熱を利用した加温が触媒4に対して行われるため、その加温を通じて自動車の始動開始後等における触媒4の暖機を速やかに完了させることができる。これにより、自動車の始動開始後等における内燃機関1の排気エミッションの悪化を抑制することができる。
【0044】
(2)熱制御装置を用いた加温が行われた後には、同装置の反応器6に収容された蓄熱材7が加水状態とされる。こうした状態のもとで、反応器6の内部を密閉し、且つ反応器6の内部の圧力を目標圧力Ptに向けて高めることにより、冷却スタンバイ状態が実現されるとともに、その冷却スタンバイ状態が保持される。同冷却スタンバイ状態のもとでは、反応器6に収容された蓄熱材7が熱を受けたときに同蓄熱材7からの脱水が行われにくくなるため、その蓄熱材7が集合排気管2の各枝部2a等からの熱を受けて脱水・吸熱してしまうことを抑制できる。そして、冷却スタンバイ状態のもとで熱制御装置を用いた触媒4の冷却、すなわち蓄熱材7の吸熱を利用した触媒4の冷却を行いたいときには、反応器6の内部の密閉が解除される。これにより、反応器6の内部の圧力が低下すると、加水状態にある蓄熱材7が集合排気管2の各枝部2aからの熱を受けて脱水及び吸熱することから、その吸熱を利用した触媒4の冷却が行われるようになる。従って、冷却スタンバイ状態からの熱制御装置を用いた触媒4の冷却では、同触媒4の冷却を行いたいときに反応器6の密閉を解除することで、その冷却を行いたいタイミングにて的確に同冷却を行うことができる。
【0045】
(3)自動車の始動開始後などに触媒4の暖機を早期に完了させることを意図して、触媒4が内燃機関1の排気系において可能な限り上流側に設けられると、同触媒4の暖機完了後に内燃機関1の高負荷運転時など同機関1の排気の温度が高くなったとき、触媒4の温度が過上昇して同触媒4の熱劣化を招くおそれがある。しかし、このようなとき、上記(2)に示すように熱制御装置を用いた触媒4の冷却を行うことができる。従って、内燃機関1の排気系における可能な限り上流側に触媒4を設けることによる同触媒4の速やかな暖機完了を図りつつ、排気の温度が高くなったときの触媒4の熱劣化を抑制することができる。
【0046】
(4)熱制御装置を用いた加温や冷却は、直接的には、内燃機関1の排気系における集合排気管2の各枝部2aに対して行われる。そして、これら各枝部2aに対する加温や冷却を通じて、集合排気管2の下流に位置する触媒4に対して間接的に加温や冷却が行われる。上記集合排気管2の各枝部2aは、湾曲した外形を有しており、熱を吸収及び放出する表面積を大きくとることが可能な形状である関係から、内燃機関1の排気系において熱の吸収及び放出を効果的に行うことの可能な部分である。こうした集合排気管2の各枝部2aの加温及び冷却を通じて、その集合排気管2の下流に位置する触媒4の加温及び冷却を行うことで、同触媒4の加温及び冷却を効率よく行うことができる。
【0047】
[第2実施形態]
次に、本発明の第2実施形態を図8及び図9に基づき説明する。
この実施形態は、熱制御装置を用いた触媒4の冷却が行われて冷却スタンバイ状態が解消された後、触媒4を不必要に加温することなく再び冷却スタンバイ状態を実現できるようにしたものである。これを実現するため、本実施形態の熱制御装置は、蓄熱材7への加水により発生した熱が集合排気管2の各枝部2aと外部放熱器とのうちのいずれかに付与されるよう、その熱の伝達経路を切り換え可能な構造を有している。
【0048】
上記熱制御装置は、図8に示されるように、集合排気管2における各枝部2aの周囲に設けられた熱交換器32と、その熱交換器32とは別の場所に設けられた反応器6とを備えている。更に、熱制御装置には、水などの熱媒体を循環させて上記熱交換器32及び上記反応器6を通過させることで、反応器6の蓄熱材7と熱交換器32との間での上記熱媒体を用いた熱のやり取りを行う循環回路33が設けられている。
【0049】
循環回路33における反応器6の下流には、同回路33にて熱媒体を常に循環させるべく駆動されるポンプ34が設けられている。循環回路33におけるポンプ34の下流側は、切換弁35にて上記熱交換器32を通過する経路33aと外部放熱器36を通過する経路33bとの二つに分岐している。また、経路33aと経路33bとは熱交換器32及び外部放熱器36の下流で一つに合流した後、反応器6の内部を通過して上記ポンプ34に繋がっている。循環回路33における上記切換弁35は、循環回路33内で循環する熱媒体の循環経路を、同弁35の切り換え動作を通じて経路33aと経路33bとのうちのいずれか一方に切り換える。なお、循環回路33内で循環する熱媒体の循環経路としては、通常は経路33aが選択されている。
【0050】
反応器6において蓄熱材7からの発熱が行われると、循環回路33における反応器6の内部を通過する熱媒体と上記蓄熱材7との間での熱交換を通じて、その熱媒体が加温されて同熱媒体の温度が上昇する。こうして温度上昇した熱媒体が経路33aの熱交換器32を通過するとき、同熱媒体と集合排気管2の各枝部2aとの間での熱交換が行われることにより、それら各枝部2aが加温される。また、反応器6において蓄熱材7への吸熱が行われると、循環回路33における反応器6の内部を通過する熱媒体と上記蓄熱材7との間での熱交換を通じて、その熱媒体が冷却されて同熱媒体の温度が低下する。こうして温度低下した熱媒体が経路33aの熱交換器32を通過するとき、同熱媒体と集合排気管2の各枝部2aとの間での熱交換が行われることにより、それら各枝部2aが冷却される。
【0051】
この熱制御装置では、蓄熱材7からの放熱に基づく集合排気管2の各枝部2aの加温、及び、蓄熱材7への吸熱に基づく集合排気管2お各枝部2aの冷却が、循環回路33を循環する熱媒体を通じて行われるようになる。また、蓄熱材7からの発熱時に、循環回路33内で循環する熱媒体の循環経路として経路33bが選択されるよう切換弁35を切り換え動作させれば、蓄熱材7との熱交換によって温度上昇した熱媒体が外部放熱器36を通過するようになるため、その外部放熱器36にて熱媒体の熱を外部に放出することが可能になる。このとき、循環回路33内の循環する熱媒体が経路33a(熱交換器32)を通過することはないため、同熱媒体の熱が集合排気管2の各枝部2aに付与されることもない。
【0052】
以上から分かるように、この熱制御装置では、切換弁35の切り換え動作を通じて、蓄熱材7にて発生した熱を集合排気管2の各枝部2aと外部放熱器36とのいずれかに付与されるよう、その熱の伝達経路を切り換えることが可能となっている。
【0053】
次に、熱制御装置を用いた触媒4の冷却が行われて冷却スタンバイ状態が解消された後、再び冷却スタンバイ状態を実現するための具体的な手順について、放熱ルーチンを示す図9のフローチャートを参照して説明する。この放熱ルーチンは、電子制御装置21を通じて、所定時間毎の時間割り込みにて周期的に実行される。
【0054】
同ルーチンにおいては、まず、熱制御装置を用いた冷却の終了後であるか否かが判断される(S401)。ここで肯定判定であれば、冷却スタンバイ状態が解消されて反応器6内の蓄熱材7が脱水状態である旨判断され、再び冷却スタンバイ状態が実現されるよう蓄熱材7への加水が行われる(S402)。詳しくは、通常は共に閉じられた状態にある開閉弁11,12のうち、開閉弁11が開かれて水タンク8の水が供給管9を介して反応器6の内部に送り込まれる。これにより、反応器6の内部に収容された蓄熱材7が加水状態とされる一方、蓄熱材7が水分と反応して発熱するようになる。
【0055】
こうした状況のもとでは、蓄熱材7から発生する熱が循環回路33の外部放熱器36に付与される(S403)。具体的には、循環回路33を循環する熱媒体の循環経路が経路33bとなるよう、循環回路33での切換弁35の切り換え動作が行われる。この場合、蓄熱材7から発生した熱が循環回路33の熱媒体を介して外部放熱器36に付与されるようになる。こうして外部放熱器36に付与された熱は、同外部放熱器36から外部に放出される。
【0056】
そして、蓄熱材7への加水が行われた後、その加水に基づき蓄熱材7から発生した熱がほぼ外部放熱器36から放出されたとき、例えば同放出に要する時間が経過したとき、外部放熱器36を用いた熱の放出が終了される(S404)。具体的には、循環回路33を循環する熱媒体の循環経路が経路33aとなるよう、循環回路33での切換弁35の切り換え動作が行われる。これにより、循環回路33を循環する熱媒体が外部放熱器36に流れることはなくなる。その後、冷却スタンバイ状態となっているか否かを判断するためのフラグFが「1(冷却スタンバイ状態)」に設定される(S405)。以上により、熱制御装置を用いた触媒4の冷却が行われて冷却スタンバイ状態が解消された後において、再び冷却スタンバイ状態が実現される。
【0057】
本実施形態によれば、第1実施形態に記載した(1)〜(4)の効果に加え、以下に示す効果が得られる。
(5)熱制御装置を用いた冷却が行われて冷却スタンバイ状態が解消された後、再び冷却スタンバイ状態とするためには、蓄熱材7を加水状態とすべく同蓄熱材7に対し加水を行わなければならない。こうした蓄熱材7への加水時、同蓄熱材7にて発生した熱が外部放熱器36に付与されるよう同熱の伝達経路を切換弁35の切り換え動作を通じて切り換えることで、上記熱が無駄に集合排気管2の各枝部2a及び触媒4に付与されないようにすることができる。従って、冷却スタンバイ状態から集合排気管2の各枝部2a及び触媒4の冷却を行った後、それらを不必要に加温することなく、再び冷却スタンバイ状態を実現することができる。
【0058】
[第3実施形態]
次に、本発明の第3実施形態を図10に基づき説明する。
この実施形態は、熱制御装置における蓄熱材7への加水により発生した熱を、内燃機関1の冷却水の加温に用いるようにしたものである。この実施形態の熱制御装置は、図10に示されるように、第1実施形態の熱制御装置に対し、排出管10における開閉弁12と反応器6との間の部分に熱交換器41が設けられている。同熱交換器41は、反応器6の蓄熱材7からの発生した熱を、内燃機関1における冷却水回路42の冷却水に付与するためのものである。こうした熱交換器41を設けることにより、熱制御装置を用いた集合排気管2の各枝部2a及び触媒4の加温を行うべく、蓄熱材7への加水による同蓄熱材7からの発熱が行われるとき、その発熱を利用して内燃機関1の冷却水を加温することができる。
【0059】
本実施形態によれば、第1実施形態に記載した(1)〜(4)の効果に加え、以下に示す効果が得られる。
(6)内燃機関1の冷却水の加温を自動車の始動開始後、すなわち機関始動開始後に行うことで、機関始動開始後における内燃機関1の筒内での燃料の揮発性低下を抑制することができ、ひいては同燃料の揮発性低下に伴う内燃機関1の排気エミッションの悪化を抑制することができる。
【0060】
[その他の実施形態]
なお、上記各実施形態は、例えば以下のように変更することもできる。
・第1〜第3実施形態において、反応器6を集合排気管2全体の周囲に亘るように設けたり、集合排気管2における各枝部2aの集合部分の周囲のみに設けたり、排気管3の周囲のみに設けたりしてもよい。
【0061】
・触媒4が図3の熱エネルギQ2が熱エネルギQ1よりも大きくなるほど内燃機関1の排気系における下流側に設けられている場合には、第1及び第3実施形態において反応器6を触媒4の周囲に設けたり、第2実施形態において熱交換器32を触媒4の周囲に設けたりして、触媒4のみを調温部とすることが好ましい。
【0062】
・第1及び第3実施形態において、反応器6は、集合排気管2の各枝部2aの周囲と触媒4の周囲との両方に亘るものであってもよい。
・第2実施形態において、熱交換器32は、集合排気管2の各枝部2aの周囲と触媒4の周囲との両方に亘るものであってもよい。
【0063】
・第2実施形態において、熱制御装置を用いた集合排気管2の各枝部2aの加温については必ずしも行う必要はなく、同制御装置を用いた集合排気管2の各枝部2aの冷却のみを行うようにしてもよい。この場合、循環回路33における熱媒体の循環経路として通常は経路33bが選択されるよう切換弁35の切り換え動作が行われる一方、上記冷却を行う場合には上記循環経路として経路33aが選択されるよう切換弁35の切り換え動作が行われる。
【0064】
・第1〜第3実施形態において、蓄熱材7として、水酸化マグネシウムなどの水酸化カルシウム以外の物質を用いてもよい。
【符号の説明】
【0065】
1…内燃機関、2…集合排気管、2a…枝部、3…排気管、4…触媒、5…排気管、6…反応器、7…蓄熱材、8…水タンク、9…供給管、10…排出管、11…開閉弁(開閉手段)、12…開閉弁(開閉手段)、13…ポンプ(加圧手段)、14…解放弁、21…電子制御装置、22…エアフローメータ、23…クランクポジションセンサ、24…排気温センサ、32…熱交換器、33…循環回路、33a…経路、33b…経路、34…ポンプ、35…切換弁(切換手段)、36…外部放熱器、41…熱交換器、42…冷却水回路。
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両の熱制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
自動車などの車両においては、温度調節が必要となる調温部を加温したり冷却したりすることが行われている。こうした調温部の加温や冷却を行うべく、例えば特許文献1に示される熱制御装置を採用することが考えられる。
【0003】
この熱制御装置は、低温時の加水により水分と反応して発熱する一方で高温時には脱水して吸熱を行う蓄熱材を備えている。同装置は、放熱モード時に蓄熱材と水分とを反応させ、同反応によって発生した熱を内燃機関の排気系に設けられた触媒に付与することで、その触媒を加温する。なお、同触媒を加温するための上記放熱モードは、車両の始動時など触媒の温度が低いときに実施される。一方、上記熱制御装置では、車両の運転中などに蓄熱モードとなり、その蓄熱モード時に内燃機関の排気系における触媒の上流の熱が加水状態にある蓄熱材に付与される。詳しくは、触媒の上流を流れる排気の一部が蓄熱材へと導かれることで、その排気を通じて触媒上流の熱が蓄熱材に付与される。加水状態にある蓄熱材に対し上述したように熱が付与されると、同蓄熱材からの脱水と同蓄熱材への吸熱とが行われる。こうした蓄熱材への吸熱が行われると、同蓄熱材に導かれた排気の温度が上記吸熱を通じて低下する。この温度低下した排気を触媒の上流に戻すことで、その触媒の上流部分、更には同触媒が冷却されるようになる。
【0004】
従って、この例では、内燃機関の排気系における触媒及びその上流部分が、車両において温度調節の必要な上記調温部となる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2009−257239公報(段落[0053]〜[0058]、図3(A)及び(B))
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記特許文献1の熱制御装置では、内燃機関の排気系における触媒及びその上流部分を冷却したいタイミングにて蓄熱モードを実行することで、上記触媒及びその上流部分を冷却することが可能にはなる。詳しくは、上記タイミングでの蓄熱モードの実行を通じて、内燃機関の排気系における触媒上流の排気を加水状態にある蓄熱材に導き、その後に同蓄熱材の吸熱を通じて温度低下した上記排気を触媒の上流に戻すことにより、同触媒及びその上流部分を冷却することが可能にはなる。
【0007】
ただし、放熱モードにより加水状態とされた蓄熱材は、蓄熱モードの実行前に外部からの熱を受けて自然に脱水・吸熱してしまう可能性がある。この場合、上記タイミングでの放熱モードの実行を通じて、内燃機関の排気系における触媒上流の排気を蓄熱材に導いたとしても、その蓄熱材にて既にある程度の脱水及び吸熱が行われてしまっており、上記排気を蓄熱材の吸熱によって十分に温度低下させることができなくなる。このため、蓄熱材に導いた後の排気を触媒の上流に戻しても、同排気によって触媒及びその上流部分(調温部)を冷却することができなくなる。
【0008】
本発明はこのような実情に鑑みてなされたものであって、その目的は、車両における調温部の冷却を行いたいとき、そのタイミングにて蓄熱材の吸熱を利用した調温部の冷却を適切に行うことのできる車両の熱制御装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
請求項1記載の発明によれば、反応器に収容された蓄熱材が加水状態とされているとき、開閉手段により反応器の内部を密閉し、且つ、加圧手段により反応器の内部の圧力を外部の圧力よりも高めることで、反応器の内部に収容された蓄熱材が熱を受けたときの同蓄熱材からの脱水が行われにくくなる。このように反応器の内部を密閉して外部よりも高圧とすることで、反応器の内部に収容された加水状態の蓄熱材が、調温部を含めた外部からの熱を受けて脱水・吸熱してしまうことを抑制できる。なお、上記調温部としては、車両に搭載された内燃機関の排気系における触媒や同触媒上流の集合排気管があげられる。そして、車両における調温部を冷却したいときには、開閉手段により反応器の内部の密閉が解除される。この状態のもとでは、調温部の熱が加水状態にある蓄熱材に付与されることにより、蓄熱材からの脱水と同蓄熱材への吸熱とが行われる。そして、その蓄熱材への吸熱を利用した調温部の冷却が行われる。以上により、車両における調温部の冷却を行いたいとき、そのタイミングにて蓄熱材の吸熱を利用した調温部の冷却を適切に行うことができるようになる。
【0010】
請求項2記載の発明によれば、蓄熱材への加水により発生した熱が調温部に付与されるよう同熱の伝達経路を切換手段によって切り換えることで、その熱によって調温部を加温することができる。そして、蓄熱材が加水状態となった後、同蓄熱材を収容した反応器の内部を開閉手段により密閉し、更に反応器の内部を加圧手段により外部よりも高圧とすることで、蓄熱材への吸熱に基づく調温部の冷却が可能な状態(以下、冷却スタンバイ状態という)が保持される。その後、上記調温部を冷却したいとき、開閉手段により反応器の内部の密閉が解除される。この状態のもとで、調温部の熱が加水状態にある蓄熱材に付与されることにより、蓄熱材からの脱水と同蓄熱材への吸熱とが行われ、その蓄熱材への吸熱に基づいて調温部が冷却される。
【0011】
このように蓄熱材からの脱水、及び、蓄熱材への急熱が行われた後、再び冷却スタンバイ状態とするためには、蓄熱材を加水状態とすべく同蓄熱材に対し加水を行わなければならない。ただし、このように蓄熱材に対し加水を行うと、それに伴う蓄熱材からの発熱によって調温部が無駄に加温されるおそれがある。しかし、請求項2記載の発明では、こうした蓄熱材への加水時、同蓄熱材にて発生した熱が外部放熱器に付与されるよう同熱の伝達経路を切換手段により切り換えることで、上記熱が無駄に調温部に付与されないようにすることができる。なお、外部放熱器に付与された上記熱は、その外部放熱器から外部に放出される。以上により、冷却スタンバイ状態から調温部の冷却を行った後、同調温部を不必要に加温することなく、再び冷却スタンバイ状態を実現することができるようになる。
【0012】
請求項3記載の発明によれば、蓄熱材への加水による同蓄熱材の発熱を利用して触媒を加温することができるため、その加温を通じて車両の始動開始後等における触媒の暖機を速やかに完了させることができる。これにより、車両の始動開始後等における内燃機関の排気エミッションの悪化を抑制することができる。また、内燃機関における排気の熱を効果的に触媒に伝達して同触媒の暖機を早期に完了させるためには、触媒を内燃機関の排気系において可能な限り上流側に設けることが好ましい。ただし、このように触媒を設けると、同触媒の暖機完了後に内燃機関の排気の温度が高くなったとき、触媒の温度が過上昇して同触媒の熱劣化を招くおそれがある。しかし、請求項3記載の発明では、このようなときに触媒に対し蓄熱材への吸熱に基づく冷却を行い、それによって触媒の温度が過上昇することを抑制できる。従って、内燃機関の排気系における可能な限り上流側に触媒を設けることによる同触媒の速やかな暖機完了を図りつつ、排気の温度が高くなったときの触媒の熱劣化を抑制することができる。
【0013】
請求項4記載の発明によれば、蓄熱材の発熱を利用して内燃機関の排気系における触媒の上流に位置する集合排気管の各枝部が加温されると、それら各枝部を通過する排気の温度が上昇し、その温度上昇した排気が触媒に流れて同触媒が加温されることとなる。また、蓄熱材への吸熱に基づき上記各枝部が冷却されると、それら各枝部を通過する排気の温度が低下し、その温度低下した排気が触媒に流れて同触媒が冷却されることとなる。集合排気管の各枝部は、湾曲した外形を有しており、熱を吸収及び放出する表面積を大きくとることが可能な形状である関係から、内燃機関の排気系において熱の吸収及び放出を効果的に行うことの可能な部分である。こうした集合排気管の各枝部の加温及び冷却を通じて、内燃機関の排気系における集合排気管の下流に位置する触媒の加温及び冷却を行うことで、同触媒の加温及び冷却を効率よく行うことができるようになる。
【0014】
請求項5記載の発明によれば、蓄熱材への加水による同蓄熱材の発熱を利用して内燃機関の冷却水を加温することができる。こうした冷却水の加温を内燃機関の始動開始後等に行うことで、機関始動開始後等における筒内での燃料の揮発性低下を抑制し、その燃料の揮発性低下に伴う排気エミッションの悪化を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】第1実施形態における熱制御装置の全体構成を示す略図。
【図2】内燃機関の排気系における排気ポートから触媒までの距離の変化に対する触媒入り口の排気温の推移を示すグラフ。
【図3】内燃機関の排気系における排気ポートから触媒までの距離の変化に対する触媒暖機に必要な熱エネルギの変化を示すグラフ。
【図4】内燃機関の排気系における加温箇所の違いによる触媒入り口の排気温の推移の違いを示すタイムチャート。
【図5】熱制御装置を用いた加温の実行手順を示すフローチャート。
【図6】熱制御装置での冷却スタンバイ処理の実行手順を示すフローチャート。
【図7】熱制御装置を用いた冷却の実行手順を示すフローチャート。
【図8】第2実施形態における熱制御装置の全体構成を示す略図。
【図9】同熱制御装置における蓄熱材からの放熱の手順を示すタイムチャート。
【図10】第3実施形態における熱制御装置の全体構成を示す略図。
【発明を実施するための形態】
【0016】
[第1実施形態]
以下、本発明を自動車の熱制御装置に具体化した第1実施形態について、図1〜図7を参照して説明する。
【0017】
図1に示されるように、自動車に搭載される内燃機関1の排気系には、同機関に接続される集合排気管2が設けられている。この集合排気管2は、内燃機関1の各気筒にそれぞれ繋がる複数の枝部2aを備え、それら各枝部2aを湾曲形成して一つに集合させるようにしている。また、内燃機関1の排気系における集合排気管2の下流には、排気管3、触媒4、及び排気管5が排気系の上流から下流に向かって順に設けられている。そして、内燃機関1からの排気は、集合排気管2及び排気管3を通って触媒4に流れ、その触媒4にて浄化された後に排気管5を介して外部に放出される。
【0018】
自動車の熱制御装置は、同自動車における温度調節の必要な部分である調温部を加温したり冷却したりする。この実施形態では、内燃機関1の排気系における触媒4及びその上流部分(集合排気管2の各枝部2a)が上記調温部となっている。同装置は、集合排気管2の各枝部2aの周囲に設けられた反応器6を備えている。反応器6の内部には、水酸化カルシウム等の蓄熱材7が収容されている。この蓄熱材7は、低温での加水時に水分と反応して発熱する一方、高温時には脱水して吸熱を行う。反応器6には、水タンク8内の水を同反応器6の内部に送るための供給管9、及び、反応器6の内部に存在する水や水蒸気を水タンク8に戻すための排出管10が接続されている。なお、水タンク8には、その内部の余分な空気を外部に逃がすための解放弁14が設けられている。
【0019】
そして、水タンク8の水が供給管9を介して反応器6に送られると、同反応器6の内部に収容された蓄熱材7が水分と反応して発熱する。この発熱を利用して、内燃機関1の排気系における集合排気管2の各枝部2aが加温される。このように集合排気管2の各枝部2aが加温されると、各枝部2aを通過する排気の温度が上昇し、その温度上昇した排気が触媒4に流れて同触媒4が加温される。一方、蓄熱材7の加水状態にあって、各枝部2aを通過する排気の温度が高くなって同排気の熱が反応器6内の蓄熱材7に付与されると、同蓄熱材7からの脱水及び同蓄熱材7への吸熱が行われる。こうした蓄熱材7への吸熱に基づいて集合排気管2の各枝部2aが冷却される。このように集合排気管2の各枝部2aが冷却されると、各枝部2aを通過する排気の温度が低下し、その温度低下した排気が触媒4に流れて同触媒4が冷却される。
【0020】
自動車の熱制御装置における上記供給管9には開閉弁11が設けられている。この開閉弁11を開くと水タンク8から反応器6への供給管9を介しての水の流れが許容され、開閉弁11を閉じると水タンク8から反応器6への供給管9を介しての水の流れが遮断される。また、同装置における上記排出管10には開閉弁12が設けられている。この開閉弁12を開くと反応器6から水タンク8への排出管10を介しての水や水蒸気の流れが許容され、開閉弁12を閉じると反応器6から水タンク8への排出管10を介しての水や水蒸気の流れが遮断される。従って、上記開閉弁11と上記開閉弁12との両方を閉じることで反応器6の内部が密閉される一方、その密閉時に開閉弁11及び開閉弁12のうちの少なくとも一方を開くことで上記密閉が解除される。また、反応器6には、その内部に空気を送り込むためのポンプ13が接続されている。そして、反応器6の内部を密閉した状態で、その内部に上記ポンプ13により空気を送り込むことにより、反応器6の内部の圧力を外部の圧力よりも高めることが可能になる。
【0021】
次に、内燃機関1の排気系における触媒4の位置、及び、熱制御装置による直接的な加温及び冷却を行う位置について、図2〜図4を参照して詳しく説明する。
図2に示されるように、触媒4の入り口における排気の温度は、同触媒4を内燃機関1の排気系における上流側に設けるほど高くなる。このため、車両の始動開始後などに触媒4の暖機を早期に完了させるためには、同触媒を内燃機関1の排気系において可能な限り上流側に設けることが好ましい。こうした実情を考慮して、本実施形態では、触媒4が内燃機関1の排気系において可能な限り上流側に設けられている。
【0022】
熱制御装置による触媒4の加温については、それを触媒4に対して直接的に行ったり、あるいは触媒4の上流に位置する排気管を加温することにより間接的に行ったりすることが考えられる。
【0023】
図3は、触媒4を直接的に加温した場合に同触媒4の暖機に必要な熱エネルギQ1(破線)と、触媒4の上流に位置する排気管を加温した場合に同触媒4の暖機に必要な熱エネルギQ2(実線)との違いを示している。同図から分かるように、触媒4が内燃機関1の排気系において上流に位置している場合には上記熱エネルギQ2が上記熱エネルギQ1よりも小さく抑えられる一方、触媒4が内燃機関1の排気系において下流に位置している場合には上記熱エネルギQ2が上記熱エネルギQ1よりも大きくなる。これは、触媒4が排気系の上流に位置している場合には触媒4そのものを加温するよりも触媒4の入り口の排気の温度を高めた方が触媒4の温度を高めやすく、触媒4が排気系の下流に位置している場合には触媒4の入り口の排気の温度を高めるよりも触媒4そのものを加温した方が触媒4の温度を高めやすいためである。
【0024】
上述したように、この実施形態では、触媒4が内燃機関1の排気系において可能な限り上流側に設けられているため、熱制御装置による加温が内燃機関1の排気系における触媒4よりも上流の排気管(集合排気管2の各枝部2a)に対して行われる。詳しくは、熱制御装置の反応器6(蓄熱材7)が内燃機関1の排気系における触媒4よりも上流の排気管(集合排気管2の各枝部2a)に対応した位置に設けられており、それによって蓄熱材7からの熱が上記排気管に付与されるようにしている。これにより、触媒4の加温を効果的に行えるようになる。なお、このように蓄熱材7の熱を上記排気管に付与することで触媒4の加温を効果的に行えるということは、蓄熱材7への吸熱に基づき上記排気管を冷却することで触媒4の冷却を効果的に行えるということも意味する。
【0025】
熱制御装置による内燃機関1の排気系における触媒4よりも上流に位置する排気管の加温を行う際、その加温の位置が触媒4の入り口の排気温に影響を及ぼす。
図4は、触媒4の入り口における排気の温度の時間経過に伴う推移を示している。同図において、実線は集合排気管2の各枝部2aのみを熱制御装置により加温した場合の上記排気の温度の推移を表し、破線は集合排気管2全体を熱制御装置により加温した場合の上記排気の温度の推移を表し、二点鎖線は熱制御装置による加温を行わなかった場合の上記排気の温度の推移を表している。同図から分かるように、集合排気管2の各枝部2aのみを熱制御装置により加温したとき(実線)、触媒4の入り口における排気の温度を効果的に高めることができ、それによって触媒4の加温を効果的に行うことができるようになる。これは、集合排気管2の各枝部2aは、湾曲した外形を有しており、熱を吸収可能な表面積を大きくとることが可能な形状である関係から、内燃機関1の排気系において熱の吸収を効果的に行えるためである。
【0026】
上述したように、この実施形態では、熱制御装置の反応器6(蓄熱材7)が集合排気管2の各枝部2aに対応した位置に設けられているため、蓄熱材7からの熱が上記排気管に付与される。これにより、触媒4の入り口における排気の温度を効果的に高めることができ、ひいては触媒4の加温を効果的に行えるようになる。なお、このように蓄熱材7の熱を集合排気管2の各枝部2aに付与することで触媒4の加温を効果的に行えるということは、蓄熱材7への吸熱に基づき上記集合排気管2の各枝部2aを冷却することで触媒4の冷却を効果的に行えるということも意味する。
【0027】
次に、上記熱制御装置の電気的構成について、図1を参照して説明する。
この熱制御装置は、内燃機関1に関する各種運転制御等を実施する電子制御装置21を備えている。同電子制御装置21には、上記制御に係る各種演算処理を実行するCPU、その制御に必要なプログラムやデータの記憶されたROM、CPUの演算結果等が一時記憶されるRAM、外部との間で信号を入・出力するための入・出力ポート等が設けられている。
【0028】
電子制御装置21の入力ポートには、内燃機関1の吸入空気量を検出するエアフローメータ22、同機関1の回転速度を検出するためのクランクポジションセンサ23、及び、同機関1の排気系における触媒4の上流の排気温度を検出する排気温センサ24といった各種センサが接続されている。また、電子制御装置21の出力ポートには、内燃機関1を運転制御するための各種機器の駆動回路が接続される他、開閉弁11の駆動回路、開閉弁12の駆動回路、及び、ポンプ13の駆動回路等が接続されている。
【0029】
そして、電子制御装置21は、上記各種センサから入力した検出信号に基づき、機関回転速度や機関負荷(内燃機関1の1サイクル当たりに燃焼室に吸入される空気の量)といった機関運転状態を把握する。電子制御装置21は、機関負荷や機関回転速度といった機関運転状態に応じて、上記出力ポートに接続された各種駆動回路に指令信号を出力する。こうして内燃機関1における燃料噴射量制御等の各種運転制御や、開閉弁11,12及びポンプ13の駆動制御が電子制御装置21を通じて実施される。
【0030】
次に、熱制御装置による触媒4の加温について、加温ルーチンを示す図5のフローチャートを参照して説明する。この加温ルーチンは、電子制御装置21を通じて、例えば所定時間毎の時間割り込みにて周期的に実行される。
【0031】
同ルーチンにおいては、まず、熱制御装置による加温が可能な状態であるか否かが判断される(S101)。具体的には、自動車の始動開始後に熱制御装置による加温が一度も行われていないとき、その加温が可能な状態である旨判断される。そして、S101の処理で肯定判定がなされると、熱制御装置を用いた加温の要求があるか否かが判断される(S102)。具体的には、自動車の始動開始後など、触媒4の温度が同触媒4による排気浄化機能を必要レベルとすることの可能な値として予め定められた暖機判定値未満であるとき、上記熱制御装置を用いた加温の要求がなされる。なお、触媒4の温度については、排気温センサ24によって検出される触媒4の入り口の排気の温度、機関運転状態から求められる内燃機関1の燃料噴射量の指令値、及び、エアフローメータ22によって検出される内燃機関1の吸入空気量等から推定することが可能である。
【0032】
S102の処理で加温の要求がある旨判断されると、熱制御装置を用いた加温が実施される(S103)。詳しくは、通常は共に閉じられた状態にある開閉弁11,12のうち、開閉弁11が開かれて水タンク8の水が供給管9を介して反応器6の内部に送り込まれる。これにより、反応器6の内部に収容された蓄熱材7が水分と反応して発熱し、その発熱を利用して集合排気管2の各枝部2aが加温される。このように集合排気管2の各枝部2aが加温されると、各枝部2aを通過する排気の温度が上昇し、その温度上昇した排気が触媒4に流れて同触媒4が加温される。同触媒4の加温により自動車の始動開始後等に触媒4の暖機を速やかに完了させることができ、触媒4の暖機完了前における内燃機関1の排気エミッションの悪化を抑制することができる。
【0033】
上述したように熱制御装置を用いた加温を行うことで、反応器6に収容された蓄熱材7が加水状態になる。ところで、蓄熱材7の加水状態にあっては、各枝部2aを通過する排気の熱が反応器6内の蓄熱材7に付与されると、同蓄熱材7からの脱水及び同蓄熱材7への吸熱が行われ、こうした蓄熱材7への吸熱に基づいて集合排気管2の各枝部2aが冷却される。このように集合排気管2の各枝部2aが冷却されると、各枝部2aを通過する排気の温度が低下し、その温度低下した排気が触媒4に流れて同触媒4が冷却される。この実施形態では、上記触媒4の冷却を的確に所望のタイミングで行えるようにしている。詳しくは、熱制御装置を用いた上記加温後に蓄熱材7を加水状態に保持することで、同蓄熱材7への吸熱に基づく冷却が可能な状態(以下、冷却スタンバイ状態という)を保持し、その冷却スタンバイ状態のもとで触媒4の冷却要求があったときに熱制御装置を用いた触媒4の冷却を行うようにしている。
【0034】
ここで、上記冷却スタンバイ状態を実現するための冷却スタンバイ処理ルーチンについて、図6のフローチャートを参照して説明する。この冷却スタンバイ処理ルーチンは、電子制御装置21を通じて、例えば所定時間毎の時間割り込みにて周期的に実行される。
【0035】
同ルーチンにおいては、まず、熱制御装置を用いた加温の終了後であるか否か(S201)、言い換えれば蓄熱材7への加水の終了後であるか否かが判断される。ここで肯定判定であれば、冷却スタンバイ状態となっているか否かを判断するためのフラグFが「0(冷却スタンバイ状態でない)」であることを条件に(S202:YES)、蓄熱材7を収容した反応器6の内部の密閉が行われる(S203)。具体的には、開閉弁11と開閉弁12とが共に閉じられることによって反応器6の内部が密閉される。
【0036】
その後、ポンプ13の駆動制御を通じて、反応器6の内部の圧力が外部の圧力よりも高くなるよう、反応器6の内部の圧力が目標圧力Ptに向けて高められる(S204)。なお、このときの反応器6の内部の圧力を高い値とするほど、すなわち上記目標圧力Ptを高い値とするほど、反応器6内の加水状態にある蓄熱材7に対し熱が付与されたとき、同蓄熱材7の脱水反応及びそれに伴う吸熱が生じにくくなる。この実施形態では、加水状態にある蓄熱材7が集合排気管2の各枝部2aを流れる排気の熱を受けても脱水反応及びそれに伴う吸熱を生じさせないよう上記目標圧力Ptが定められ、その目標圧力Ptに合わせて反応器6の内部の圧力が高められる。
【0037】
上述したように、反応器6の内部が密閉された状態で同反応器6の内部の圧力が高められることにより、冷却スタンバイ状態が実現されるとともに、その冷却スタンバイ状態が保持される。このときには、冷却スタンバイ状態となっているか否かを判断するためのフラグFが「1(冷却スタンバイ状態)」に設定される(S205)。このようにフラグFが「1」になると、S202の処理で否定判定がなされるため、上記S203〜S205の処理がスキップされるようになる。
【0038】
次に、上記冷却スタンバイ状態から行われる熱制御装置を用いた触媒4の冷却について、冷却ルーチンを示す図7のフローチャートを参照して説明する。この冷却ルーチンは、電子制御装置21を通じて、例えば所定時間毎の時間割り込みにて実行される。
【0039】
同ルーチンにおいては、まず、フラグFが「1(冷却スタンバイ状態)」であることを条件に(S301:YES)、熱制御装置を用いた冷却の要求があるか否かが判断される(S302)。具体的には、内燃機関1の高負荷運転時など、触媒4の温度が同触媒4の熱劣化を招くおそれのある値として予め定められた許容上限値以上になるとき、上記熱制御装置を用いた冷却の要求がなされる。
【0040】
S302の処理で冷却の要求がある旨判断されると、熱制御装置を用いた冷却が実施される(S303)。詳しくは、冷却スタンバイ状態のもとで共に閉じられた状態にある開閉弁11,12のうち開閉弁12が開かれる。これにより、反応器6の内部の密閉が解除されるとともに、反応器6から水タンク8への排出管10を介しての水や水蒸気の流れが許容される。反応器6の内部の密閉が解除されると、その反応器6の内部の圧力が下がる。この状態のもとでは、集合排気管2の各枝部2aを流れる排気の熱が加水状態にある蓄熱材7に付与されることで、蓄熱材7からの脱水と同蓄熱材7への吸熱とが行われ、その蓄熱材7への吸熱を利用して各枝部2aが冷却される。このように集合排気管2の各枝部2aが冷却されると、各枝部2aを通過する排気の温度が低下し、その温度低下した排気が触媒4に流れて同触媒4が冷却される。同触媒4の冷却により、内燃機関1の高負荷運転時など、触媒4の温度が過上昇するおそれのあるとき、そうした触媒4の温度の過上昇を抑制することができる。
【0041】
上述した冷却スタンバイ状態からの熱制御装置を用いた触媒4の冷却、すなわち蓄熱材7の吸熱を利用した触媒4の冷却では、同触媒4の冷却を行いたいときに反応器6の密閉を解除することで、上記触媒4の冷却を行いたいタイミングにて的確に同冷却を行うことができるようになる。なお、このように冷却を行った後には、蓄熱材7が脱水状態となって冷却スタンバイ状態が解消されるため、冷却スタンバイ状態となっているか否かを判断するための上記フラグFが「0(冷却スタンバイ状態でない)」に設定される(S304)。
【0042】
ちなみに、S302での冷却要求は、触媒4の温度が上記許容上限値以上である状況のときだけでなく、そうした状況のもとになくとも自動車の運転停止時にはなされる。このように自動車の運転停止時に冷却要求がなされるのは、自動車における次回の始動開始に備えるためである。すなわち、自動車における次回の始動開始後、熱制御装置を用いた触媒4の加温が可能となるよう蓄熱材7を脱水状態としておくため、上記冷却要求がなされる。この場合、上記冷却要求に基づき反応器6の内部の密閉が解除されると、上記と同様に蓄熱材7からの脱水が行われる。これにより、蓄熱材7が自動車における次回の始動開始に備えて脱水状態とされる。
【0043】
以上詳述した本実施形態によれば、以下に示す効果が得られるようになる。
(1)熱制御装置を用いた加温、すなわち蓄熱材7の加水による発熱を利用した加温が触媒4に対して行われるため、その加温を通じて自動車の始動開始後等における触媒4の暖機を速やかに完了させることができる。これにより、自動車の始動開始後等における内燃機関1の排気エミッションの悪化を抑制することができる。
【0044】
(2)熱制御装置を用いた加温が行われた後には、同装置の反応器6に収容された蓄熱材7が加水状態とされる。こうした状態のもとで、反応器6の内部を密閉し、且つ反応器6の内部の圧力を目標圧力Ptに向けて高めることにより、冷却スタンバイ状態が実現されるとともに、その冷却スタンバイ状態が保持される。同冷却スタンバイ状態のもとでは、反応器6に収容された蓄熱材7が熱を受けたときに同蓄熱材7からの脱水が行われにくくなるため、その蓄熱材7が集合排気管2の各枝部2a等からの熱を受けて脱水・吸熱してしまうことを抑制できる。そして、冷却スタンバイ状態のもとで熱制御装置を用いた触媒4の冷却、すなわち蓄熱材7の吸熱を利用した触媒4の冷却を行いたいときには、反応器6の内部の密閉が解除される。これにより、反応器6の内部の圧力が低下すると、加水状態にある蓄熱材7が集合排気管2の各枝部2aからの熱を受けて脱水及び吸熱することから、その吸熱を利用した触媒4の冷却が行われるようになる。従って、冷却スタンバイ状態からの熱制御装置を用いた触媒4の冷却では、同触媒4の冷却を行いたいときに反応器6の密閉を解除することで、その冷却を行いたいタイミングにて的確に同冷却を行うことができる。
【0045】
(3)自動車の始動開始後などに触媒4の暖機を早期に完了させることを意図して、触媒4が内燃機関1の排気系において可能な限り上流側に設けられると、同触媒4の暖機完了後に内燃機関1の高負荷運転時など同機関1の排気の温度が高くなったとき、触媒4の温度が過上昇して同触媒4の熱劣化を招くおそれがある。しかし、このようなとき、上記(2)に示すように熱制御装置を用いた触媒4の冷却を行うことができる。従って、内燃機関1の排気系における可能な限り上流側に触媒4を設けることによる同触媒4の速やかな暖機完了を図りつつ、排気の温度が高くなったときの触媒4の熱劣化を抑制することができる。
【0046】
(4)熱制御装置を用いた加温や冷却は、直接的には、内燃機関1の排気系における集合排気管2の各枝部2aに対して行われる。そして、これら各枝部2aに対する加温や冷却を通じて、集合排気管2の下流に位置する触媒4に対して間接的に加温や冷却が行われる。上記集合排気管2の各枝部2aは、湾曲した外形を有しており、熱を吸収及び放出する表面積を大きくとることが可能な形状である関係から、内燃機関1の排気系において熱の吸収及び放出を効果的に行うことの可能な部分である。こうした集合排気管2の各枝部2aの加温及び冷却を通じて、その集合排気管2の下流に位置する触媒4の加温及び冷却を行うことで、同触媒4の加温及び冷却を効率よく行うことができる。
【0047】
[第2実施形態]
次に、本発明の第2実施形態を図8及び図9に基づき説明する。
この実施形態は、熱制御装置を用いた触媒4の冷却が行われて冷却スタンバイ状態が解消された後、触媒4を不必要に加温することなく再び冷却スタンバイ状態を実現できるようにしたものである。これを実現するため、本実施形態の熱制御装置は、蓄熱材7への加水により発生した熱が集合排気管2の各枝部2aと外部放熱器とのうちのいずれかに付与されるよう、その熱の伝達経路を切り換え可能な構造を有している。
【0048】
上記熱制御装置は、図8に示されるように、集合排気管2における各枝部2aの周囲に設けられた熱交換器32と、その熱交換器32とは別の場所に設けられた反応器6とを備えている。更に、熱制御装置には、水などの熱媒体を循環させて上記熱交換器32及び上記反応器6を通過させることで、反応器6の蓄熱材7と熱交換器32との間での上記熱媒体を用いた熱のやり取りを行う循環回路33が設けられている。
【0049】
循環回路33における反応器6の下流には、同回路33にて熱媒体を常に循環させるべく駆動されるポンプ34が設けられている。循環回路33におけるポンプ34の下流側は、切換弁35にて上記熱交換器32を通過する経路33aと外部放熱器36を通過する経路33bとの二つに分岐している。また、経路33aと経路33bとは熱交換器32及び外部放熱器36の下流で一つに合流した後、反応器6の内部を通過して上記ポンプ34に繋がっている。循環回路33における上記切換弁35は、循環回路33内で循環する熱媒体の循環経路を、同弁35の切り換え動作を通じて経路33aと経路33bとのうちのいずれか一方に切り換える。なお、循環回路33内で循環する熱媒体の循環経路としては、通常は経路33aが選択されている。
【0050】
反応器6において蓄熱材7からの発熱が行われると、循環回路33における反応器6の内部を通過する熱媒体と上記蓄熱材7との間での熱交換を通じて、その熱媒体が加温されて同熱媒体の温度が上昇する。こうして温度上昇した熱媒体が経路33aの熱交換器32を通過するとき、同熱媒体と集合排気管2の各枝部2aとの間での熱交換が行われることにより、それら各枝部2aが加温される。また、反応器6において蓄熱材7への吸熱が行われると、循環回路33における反応器6の内部を通過する熱媒体と上記蓄熱材7との間での熱交換を通じて、その熱媒体が冷却されて同熱媒体の温度が低下する。こうして温度低下した熱媒体が経路33aの熱交換器32を通過するとき、同熱媒体と集合排気管2の各枝部2aとの間での熱交換が行われることにより、それら各枝部2aが冷却される。
【0051】
この熱制御装置では、蓄熱材7からの放熱に基づく集合排気管2の各枝部2aの加温、及び、蓄熱材7への吸熱に基づく集合排気管2お各枝部2aの冷却が、循環回路33を循環する熱媒体を通じて行われるようになる。また、蓄熱材7からの発熱時に、循環回路33内で循環する熱媒体の循環経路として経路33bが選択されるよう切換弁35を切り換え動作させれば、蓄熱材7との熱交換によって温度上昇した熱媒体が外部放熱器36を通過するようになるため、その外部放熱器36にて熱媒体の熱を外部に放出することが可能になる。このとき、循環回路33内の循環する熱媒体が経路33a(熱交換器32)を通過することはないため、同熱媒体の熱が集合排気管2の各枝部2aに付与されることもない。
【0052】
以上から分かるように、この熱制御装置では、切換弁35の切り換え動作を通じて、蓄熱材7にて発生した熱を集合排気管2の各枝部2aと外部放熱器36とのいずれかに付与されるよう、その熱の伝達経路を切り換えることが可能となっている。
【0053】
次に、熱制御装置を用いた触媒4の冷却が行われて冷却スタンバイ状態が解消された後、再び冷却スタンバイ状態を実現するための具体的な手順について、放熱ルーチンを示す図9のフローチャートを参照して説明する。この放熱ルーチンは、電子制御装置21を通じて、所定時間毎の時間割り込みにて周期的に実行される。
【0054】
同ルーチンにおいては、まず、熱制御装置を用いた冷却の終了後であるか否かが判断される(S401)。ここで肯定判定であれば、冷却スタンバイ状態が解消されて反応器6内の蓄熱材7が脱水状態である旨判断され、再び冷却スタンバイ状態が実現されるよう蓄熱材7への加水が行われる(S402)。詳しくは、通常は共に閉じられた状態にある開閉弁11,12のうち、開閉弁11が開かれて水タンク8の水が供給管9を介して反応器6の内部に送り込まれる。これにより、反応器6の内部に収容された蓄熱材7が加水状態とされる一方、蓄熱材7が水分と反応して発熱するようになる。
【0055】
こうした状況のもとでは、蓄熱材7から発生する熱が循環回路33の外部放熱器36に付与される(S403)。具体的には、循環回路33を循環する熱媒体の循環経路が経路33bとなるよう、循環回路33での切換弁35の切り換え動作が行われる。この場合、蓄熱材7から発生した熱が循環回路33の熱媒体を介して外部放熱器36に付与されるようになる。こうして外部放熱器36に付与された熱は、同外部放熱器36から外部に放出される。
【0056】
そして、蓄熱材7への加水が行われた後、その加水に基づき蓄熱材7から発生した熱がほぼ外部放熱器36から放出されたとき、例えば同放出に要する時間が経過したとき、外部放熱器36を用いた熱の放出が終了される(S404)。具体的には、循環回路33を循環する熱媒体の循環経路が経路33aとなるよう、循環回路33での切換弁35の切り換え動作が行われる。これにより、循環回路33を循環する熱媒体が外部放熱器36に流れることはなくなる。その後、冷却スタンバイ状態となっているか否かを判断するためのフラグFが「1(冷却スタンバイ状態)」に設定される(S405)。以上により、熱制御装置を用いた触媒4の冷却が行われて冷却スタンバイ状態が解消された後において、再び冷却スタンバイ状態が実現される。
【0057】
本実施形態によれば、第1実施形態に記載した(1)〜(4)の効果に加え、以下に示す効果が得られる。
(5)熱制御装置を用いた冷却が行われて冷却スタンバイ状態が解消された後、再び冷却スタンバイ状態とするためには、蓄熱材7を加水状態とすべく同蓄熱材7に対し加水を行わなければならない。こうした蓄熱材7への加水時、同蓄熱材7にて発生した熱が外部放熱器36に付与されるよう同熱の伝達経路を切換弁35の切り換え動作を通じて切り換えることで、上記熱が無駄に集合排気管2の各枝部2a及び触媒4に付与されないようにすることができる。従って、冷却スタンバイ状態から集合排気管2の各枝部2a及び触媒4の冷却を行った後、それらを不必要に加温することなく、再び冷却スタンバイ状態を実現することができる。
【0058】
[第3実施形態]
次に、本発明の第3実施形態を図10に基づき説明する。
この実施形態は、熱制御装置における蓄熱材7への加水により発生した熱を、内燃機関1の冷却水の加温に用いるようにしたものである。この実施形態の熱制御装置は、図10に示されるように、第1実施形態の熱制御装置に対し、排出管10における開閉弁12と反応器6との間の部分に熱交換器41が設けられている。同熱交換器41は、反応器6の蓄熱材7からの発生した熱を、内燃機関1における冷却水回路42の冷却水に付与するためのものである。こうした熱交換器41を設けることにより、熱制御装置を用いた集合排気管2の各枝部2a及び触媒4の加温を行うべく、蓄熱材7への加水による同蓄熱材7からの発熱が行われるとき、その発熱を利用して内燃機関1の冷却水を加温することができる。
【0059】
本実施形態によれば、第1実施形態に記載した(1)〜(4)の効果に加え、以下に示す効果が得られる。
(6)内燃機関1の冷却水の加温を自動車の始動開始後、すなわち機関始動開始後に行うことで、機関始動開始後における内燃機関1の筒内での燃料の揮発性低下を抑制することができ、ひいては同燃料の揮発性低下に伴う内燃機関1の排気エミッションの悪化を抑制することができる。
【0060】
[その他の実施形態]
なお、上記各実施形態は、例えば以下のように変更することもできる。
・第1〜第3実施形態において、反応器6を集合排気管2全体の周囲に亘るように設けたり、集合排気管2における各枝部2aの集合部分の周囲のみに設けたり、排気管3の周囲のみに設けたりしてもよい。
【0061】
・触媒4が図3の熱エネルギQ2が熱エネルギQ1よりも大きくなるほど内燃機関1の排気系における下流側に設けられている場合には、第1及び第3実施形態において反応器6を触媒4の周囲に設けたり、第2実施形態において熱交換器32を触媒4の周囲に設けたりして、触媒4のみを調温部とすることが好ましい。
【0062】
・第1及び第3実施形態において、反応器6は、集合排気管2の各枝部2aの周囲と触媒4の周囲との両方に亘るものであってもよい。
・第2実施形態において、熱交換器32は、集合排気管2の各枝部2aの周囲と触媒4の周囲との両方に亘るものであってもよい。
【0063】
・第2実施形態において、熱制御装置を用いた集合排気管2の各枝部2aの加温については必ずしも行う必要はなく、同制御装置を用いた集合排気管2の各枝部2aの冷却のみを行うようにしてもよい。この場合、循環回路33における熱媒体の循環経路として通常は経路33bが選択されるよう切換弁35の切り換え動作が行われる一方、上記冷却を行う場合には上記循環経路として経路33aが選択されるよう切換弁35の切り換え動作が行われる。
【0064】
・第1〜第3実施形態において、蓄熱材7として、水酸化マグネシウムなどの水酸化カルシウム以外の物質を用いてもよい。
【符号の説明】
【0065】
1…内燃機関、2…集合排気管、2a…枝部、3…排気管、4…触媒、5…排気管、6…反応器、7…蓄熱材、8…水タンク、9…供給管、10…排出管、11…開閉弁(開閉手段)、12…開閉弁(開閉手段)、13…ポンプ(加圧手段)、14…解放弁、21…電子制御装置、22…エアフローメータ、23…クランクポジションセンサ、24…排気温センサ、32…熱交換器、33…循環回路、33a…経路、33b…経路、34…ポンプ、35…切換弁(切換手段)、36…外部放熱器、41…熱交換器、42…冷却水回路。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
低温時の加水により水分と反応して発熱する一方で高温時には脱水して吸熱を行う蓄熱材を備え、車両に搭載された内燃機関の排気系における触媒と同触媒上流の集合排気管との少なくとも一方が車両における温度調節を必要とする調温部とされており、同調温部の高温時、その調温部の熱が加水状態にある前記蓄熱材に付与されることで、前記蓄熱材からの脱水と同蓄熱材への吸熱とが行われて同吸熱に基づき前記調温部が冷却される車両の熱制御装置において、
前記蓄熱材を内部に収容した反応器と、
前記反応器の内部の密閉及び同密閉の解除を行う開閉手段と、
前記反応器の内部が密閉された状態のもとで同反応器の内部の圧力を外部の圧力よりも高めることの可能な加圧手段と、
を備えることを特徴とする車両の熱制御装置。
【請求項2】
請求項1記載の車両の熱制御装置において、
前記蓄熱材への加水により発生した熱が前記調温部と外部放熱器とのうちのいずれかに付与されるよう前記熱の伝達経路を切り換える切換手段を更に備える
ことを特徴とする車両の熱制御装置。
【請求項3】
前記蓄熱材への加水により発生した熱は車両に搭載された内燃機関の排気系における触媒の加温に用いられる一方、その触媒に対して前記蓄熱材への吸熱に基づく冷却が行われる
請求項1記載の車両の熱制御装置。
【請求項4】
前記触媒の加温は、内燃機関の排気系における前記触媒の上流に位置する集合排気管の各枝部を前記蓄熱材からの発熱により加温することで実現されるものであり、
前記触媒の冷却は、前記集合排気管の各枝部を前記蓄熱材への吸熱に基づき冷却することで実現されるものである
請求項3記載の車両の熱制御装置。
【請求項5】
前記蓄熱材への加水により発生した熱は、車両に搭載された内燃機関の冷却水の加温に用いられる
請求項1記載の車両の熱制御装置。
【請求項1】
低温時の加水により水分と反応して発熱する一方で高温時には脱水して吸熱を行う蓄熱材を備え、車両に搭載された内燃機関の排気系における触媒と同触媒上流の集合排気管との少なくとも一方が車両における温度調節を必要とする調温部とされており、同調温部の高温時、その調温部の熱が加水状態にある前記蓄熱材に付与されることで、前記蓄熱材からの脱水と同蓄熱材への吸熱とが行われて同吸熱に基づき前記調温部が冷却される車両の熱制御装置において、
前記蓄熱材を内部に収容した反応器と、
前記反応器の内部の密閉及び同密閉の解除を行う開閉手段と、
前記反応器の内部が密閉された状態のもとで同反応器の内部の圧力を外部の圧力よりも高めることの可能な加圧手段と、
を備えることを特徴とする車両の熱制御装置。
【請求項2】
請求項1記載の車両の熱制御装置において、
前記蓄熱材への加水により発生した熱が前記調温部と外部放熱器とのうちのいずれかに付与されるよう前記熱の伝達経路を切り換える切換手段を更に備える
ことを特徴とする車両の熱制御装置。
【請求項3】
前記蓄熱材への加水により発生した熱は車両に搭載された内燃機関の排気系における触媒の加温に用いられる一方、その触媒に対して前記蓄熱材への吸熱に基づく冷却が行われる
請求項1記載の車両の熱制御装置。
【請求項4】
前記触媒の加温は、内燃機関の排気系における前記触媒の上流に位置する集合排気管の各枝部を前記蓄熱材からの発熱により加温することで実現されるものであり、
前記触媒の冷却は、前記集合排気管の各枝部を前記蓄熱材への吸熱に基づき冷却することで実現されるものである
請求項3記載の車両の熱制御装置。
【請求項5】
前記蓄熱材への加水により発生した熱は、車両に搭載された内燃機関の冷却水の加温に用いられる
請求項1記載の車両の熱制御装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【公開番号】特開2012−122375(P2012−122375A)
【公開日】平成24年6月28日(2012.6.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−272645(P2010−272645)
【出願日】平成22年12月7日(2010.12.7)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年6月28日(2012.6.28)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年12月7日(2010.12.7)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】
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