説明

車両の補機への電力供給装置

【課題】 特装車など、大電力を補機にて消費する車両に、ハイブリッド技術を適用するにあたり、生産コストを低下させるとともに、長期間にわたりハイブリッドシステムを構成する部品の部品調達と保全サービスを確実に提供できるようにする。
【解決手段】 発電インバータINV1には、第1の電力線20が電気的に接続されている。また、出力変換部11には、第2の電力線21が電気的に接続されている。第1の電力線20と第2の電力線21は、蓄電部C11の端子22に電気的に接続されている。そして、蓄電部C11の端子は、第1および第2の電力線20、21よりも耐電流が高く構成されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、大電力を消費する補機(電源負荷)を搭載した車両に関し、特に、その補機へ電力を供給する装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
一般的に車両には、エンジンを駆動源として作動する空調機などの補機が電源負荷として搭載されている。なお、この明細書において「補機」とは、車両の走行機能以外の機能を実現する補助的な機器であって電力を供給することで作動する機器をいう。補機は、たとえば高速バスにおける空調機器、路外地形(オフロード)を走行可能な特装車における照明灯、通信装置、計算機、レーダなどの車載品である。
【0003】
補機の電力需要がエンジンの軸出力に比較して小さい乗用車などの一般車両の場合には車両の本来的な機能である走行には特に影響は及ばさない。例えば走行用の200〜300kwの主エンジンからベルト駆動で5〜10kwの交流オルタネータや直流ゼネレータなどの発電体にエンジンの回転動力を供給し発電を行い、この発電体で発電した電力を、補機に供給する場合を想定する。この場合、例え走行中に補機の電力の需要が急増したとしても、発電体で消費するエンジンの回転動力は、最大でもエンジン軸出力の3%以下と小さいため、オペレータは車両が急減速したと感じることはない。
【0004】
ところが補機の電力需要がエンジンの軸出力に比較して大きい場合には車両の本来的な機能である走行に影響を及ばす。例えば60kwの発電体で電力を補機に供給する場合に、車両走行中に補機の電力需要が10kwから60kwに急増すると、電力需要が急増した瞬間に、エンジンの軸出力の約20%が走行以外に電力として消費される。このため車両にエンジンブレーキがかかったように急減速する感覚をオペレータは受ける。
【0005】
一般的にエンジンの軸出力の5〜20%以上の摩擦損失によってエンジンブレーキが働くということが知られており、エンジン軸出力に比して消費電力が大きい補機の電力需要が増大するときにオペレータが受ける感覚は、これによって説明される。
【0006】
そこで、特許文献1に記載された発明では、エンジン出力をアシストするために、発電インバータと、蓄電部と、出力変換部を直流電源線によって接続して、エンジンと補機の負荷状況に応じて、発電インバータと蓄電部を制御して、発電インバータおよび/または蓄電部から出力変換部を介して補機へ電力を供給するとともに、発電電動機を電動作用させてエンジンをアシストするようにして、上述した車両が急減速するときの違和感をなくすとともに補機の電力需要を満たすようにしている。
【特許文献1】特開2003-314326号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ところで、一般自動車などの分野では、燃費向上、排ガス清浄化、加速性向上、凍結路での起動性向上、車両搭載機器への電力供給などの多用なメリットを得るために、エンジンアシスト型のハイブリッド自動車が既に実用化されている。たとえばパラレルハイブリッド型の自動車は、エンジンとトランスミッションの間の駆動軸に発電電動機が設けられた構成であり、この発電電動機を力行動作(電動作用)させて上記駆動軸に回転トルクを供給したり、発電電動機を回生動作(発電作用)させて上記駆動軸の回転トルクを吸収させるようにしている。
【0008】
物資輸送のためのトラックや人員輸送のためのバスであっても、一般自動車の場合には、同一仕様の車両を大量生産できるため、量産効果によって生産コストを下げることができる。このため車種、仕様に合わせて発電電動機、インバータを設計したとしても、ある程度の生産台数が見込まれるため、量産効果によりハイブリッド車の生産コストを下げることができる。
【0009】
一方、上述の特装車は、極端な少量多品種生産の車両であり、このような量産効果は全く期待できない。特に、災害現場等で特殊な作業を行う特殊大型装輪車(以下、特装車という)の場合には、同一車種、同一仕様の生産台数が極端に少ない。このため、足回りや駆動機構などのシャシ部分は全ての車種、仕様で共通化を図り、車種、仕様(用途)ごとにシャシ以外の搭載物や架装部分を設計することで特装車全車種の生産コストを下げる努力が試みられている。
【0010】
このような特装車をハイブリッド化するにあたり、すべての車種、仕様(用途)にも使用できる大出力の発電電動機を共通のシャシに搭載することが考えられる。しかし、このようにすると、本来、出力容量が少なくて済む用途の車両では、過剰仕様となってしまい、特装車全車種の生産コストを押し上げることになる。逆に、車種、仕様ごとに最適な出力容量の発電電動機を設計したとすると、様々な用途ごとに個別の発電電動機を開発し、極少量づつ製造しなければならないため、開発費用、製造費用が膨大なものとなり、特装車全車種の生産コストを押し上げることになる。
【0011】
このように、特殊大型装輪車にハイブリッド技術を適用したとすると、生産コストが大幅に増加してしまうという問題がある。
【0012】
更に、特殊大型装輪車にあっては、量産車1号車の生産開始から最終号機の生産終了するまでの生産期間、これら全車両の運用期間、ならびにこれら全車両が廃棄完了に至るまでの期間は、きわめて長期間(たとえば20年)に及ぶ。車両製造メーカ側としては、こうした長期間にわたり、ハイブリッドシステムを構成する部品についても、部品調達と保全サービスを確実に提供し続けなければならない。
【0013】
しかし、上述の補機にてエンジン軸出力に比して大電力を消費する特装車などの車両の場合には、装備される補機の種類によって、消費電力の大きさが異なるため、ハイブリッドシステムを構成する部品自体が極端な多品種少量生産品である。このため、この種の車両をハイブリッド化するにあたり、将来の部品供給の安定が損なわれることが予測される。すなわち、保全サービスを提供すべき長期間の間にハイブリッドシステムを構成する部品が陳腐化したり、半導体デバイスのメーカの段階で次々と生産中止になり、車両メーカとしての部品調達や保全サービスが行き詰まることが予測される。特に、特殊大型装輪車の場合には、大馬力に見合った特殊な大電力部品を使ってハイブリッドシステムが構築されているため、陳腐化や生産中止の可能性が非常に高く、長期間にわたる部品調達と保全サービスを保証できない可能性が高い。
【0014】
こうした補機で消費される電力が高く、また消費電力の大きさが車種ごとに異なることに起因する問題点について、図6を参照して説明する。
【0015】
図6は、特許文献1に記載された発明の構成図の一部を取り出した図であって、発電インバータ8と、蓄電部9と、出力変換部11を直流電源線14によって接続した構成を示している。直流電源線14は、各電力線14a、14b、14cを介して発電インバータ8、蓄電部9、出力変換部11の各端子にそれぞれ電気的に接続されている。
【0016】
ここで、エンジン2と補機12の負荷が同時に増大し、蓄電部9から発電インバータ8と出力変換部11の両方へ同時に電力を供給する必要が生じた場合、蓄電部9から電力線14bに大電流が流れてしまう。例えば、蓄電部9から発電インバータ8へ60kVA(300V、200A)の電力を供給すると同時に、蓄電部9から出力変換部11へ同じ60kVA(300V、200A)の電力を供給しようとすると、蓄電部9から400Aの電流を放電する必要がある。このため電力線14bには、400Aもの大電流が流れる。
【0017】
しかしながら、ハイブリッド車両用に開発され量産されている市販のケーブルの耐電流は、上限が200A程度である。このため、電力線14bには市販のケーブルを使用できなくなり、専用のケーブルを新たに開発せざるを得なくなり、高コストを招く。また、車種が異なり補機が異なれば、電力線14bに流れる電流の上限も異なり、車種、補機の種類に応じてケーブルを新たに開発せざるを得なくなり、更なる高コストを招く。
【0018】
また、たとえ大電流に耐えられるケーブルを電力線14bに使用できたとしても、大電流をケーブルに通過する際に大きなノイズが発生して他の電子機器に悪影響を与えるおそれがある。
【0019】
また、大電流を蓄電部9から放電中に異常が発生して、蓄電部9から放電される大電流(たとえば400A)を遮断しようとしても、そのような大電流を安全に緊急遮断できる遮断器は、ハイブリッド車両用の遮断器として市販されておらず、同様に車種毎、補機の種類毎に、専用の遮断器を開発せざるを得なく、高コストを招くおそれがある。
【0020】
本発明は、こうした実情に鑑みてなされたものであり、特装車など、大電力を補機にて消費する車両に、ハイブリッド技術を適用するにあたり、生産コストを低下させるとともに、長期間にわたりハイブリッドシステムを構成する部品の部品調達と保全サービスを確実に提供できるようにすることを解決課題とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0021】
そこで、第1発明は、
車両の補機に出力変換部を介して電力を供給する車両の補機への電力供給装置であって、
蓄電部および/または出力変換部に電力を供給するとともに、蓄電部から電力が供給される発電インバータと、
発電インバータおよび/または出力変換部に電力を供給するとともに、発電インバータから電力が供給される蓄電部と、
発電部および/または蓄電部から電力が供給される出力変換部と、
発電インバータに電気的に接続される第1の電力線と、
出力変換部に電気的に接続される第2の電力線と
が備えられ、
第1の電力線と第2の電力線は、蓄電部の端子に電気的に接続され、
蓄電部の端子は、第1および第2の電力線よりも耐電流が高く構成されていること
を特徴とする。
【0022】
第2発明は、第1発明において、
蓄電部は、複数の蓄電部からなり、そのうちの1つの蓄電部の端子に第1および第2の電力線が電気的に接続され、当該蓄電部の端子に電力線を介して他の蓄電部の端子が電気的に接続されていること
を特徴とする。
【0023】
第3発明は、
車両の補機に出力変換部を介して電力を供給する車両の補機への電力供給装置であって、
蓄電部および/または出力変換部に電力を供給するとともに、蓄電部から電力が供給される発電インバータと、
発電インバータおよび/または出力変換部に電力を供給するとともに、発電インバータから電力が供給される蓄電部と、
発電部および/または蓄電部から電力が供給される出力変換部と、
発電インバータに電気的に接続される第1の電力線と、
出力変換部に電気的に接続される第2の電力線と
が備えられ、
第1の電力線と第2の電力線は、中継端子に電気的に接続され、
当該中継端子は、第3の電力線を介して蓄電部の端子に電気的に接続され、
第3の電力線は、第1および第2の電力線よりも短く、かつ第3の電力線、中継端子および蓄電部の端子は、第1および第2の電力線よりも耐電流が高く構成されていること
を特徴とする。
【0024】
第4発明は、第1発明において、
蓄電部は、複数の蓄電部からなり、そのうちの1つの蓄電部の端子に第3の電力線、中継端子を介して第1および第2の電力線が電気的に接続され、当該蓄電部の端子に電力線を介して他の蓄電部の端子が電気的に接続されていること
を特徴とする。
【0025】
第1発明は、図5(a)に示すごとく、蓄電部Cを1つとした構成を含む発明である。
【0026】
すなわち、発電インバータINVと、蓄電部Cと、出力変換部11からなる構成によって補機Lに電力が供給される。発電インバータINVには、第1の電力線20が電気的に接続されている。また、出力変換部11には、第2の電力線21が電気的に接続されている。第1の電力線20、第2の電力線21は、蓄電部Cの端子22に電気的に接続されている。そして、蓄電部Cの端子は、第1および第2の電力線20、21よりも耐電流が高く構成されている。
【0027】
第2発明は、図2に示すごとく、蓄電部Cを複数の蓄電部C11、C12、C13で構成した発明である。
【0028】
同図2に示すように、発電インバータINV1には、第1の電力線20が電気的に接続されている。また、出力変換部11には、第2の電力線21が電気的に接続されている。
【0029】
蓄電部C1は、複数の蓄電部C11、C12、C13からなり、そのうちの1つの蓄電部C11の端子22に第1の電力線20および第2の電力線21が電気的に接続されている。そして、蓄電部C11の端子は、第1および第2の電力線よりも耐電流が高く構成されている。この蓄電部C11の端子22に電力線23、24を介してそれぞれ他の蓄電部C12、C13の端子25、26が電気的に接続されている。
【0030】
第3発明では、図5(b)に示すごとく、図5(a)の端子22の代わりに、中継端子27と、極く短い電力線28と、端子22´で構成される。第3発明は、蓄電部Cを1つとした構成を含む発明である。第3発明では、第1の電力線20、第2の電力線21が中継端子27、第3の電力線28、端子22´を介して蓄電部Cに電気的に接続されるように構成されている。ここで、第3の電力線28は、第1および第2の電力線20、21に比して極く短く、かつ第3の電力線28、中継端子27および蓄電部Cの端子22´は、第1発明と同様に、第1および第2の電力線20、21よりも耐電流が高く構成されている。
【0031】
第4発明では、図3に示すように、図2の端子22の代わりに、中継端子27と、極く短い電力線28と、端子22´で構成される。第4発明は、蓄電部Cを複数の蓄電部C11、C12、C13で構成した発明である。すなわち、この発明では、図3に示すように、第1の電力線20と第2の電力線21は、中継端子27に電気的に接続されている。この中継端子27は、第3の電力線28を介して蓄電部C11の端子22´に電気的に接続されている。ここで、第3の電力線28は、第1および第2の電力線20、21に比して極く短く、かつ第3の電力線28、中継端子27および蓄電部C11の端子22´は、第2発明と同様に、第1および第2の電力線20、21よりも耐電流が高く構成されている。また、蓄電部C11の端子22´には、電力線23、24を介して他の蓄電部C12、C13の端子25、26が電気的に接続されている。
【発明の効果】
【0032】
つぎに第1発明の作用効果について説明する。
【0033】
蓄電部Cには、たとえば耐電流が400Aの端子22が用いられる。このため、たとえば、蓄電部Cから400Aの電流を放電して発電インバータINVに対して電流が200Aとなる電力を供給し補機Lにも電流が200Aとなる電力を供給することが必要な状況であったとしても、そのような合計400Aの大電流を安全に供給することができる。また、本発明によれば、たとえば200Aを超える大電流が流れる部分のみを端子22で構成し、その他の200A以下の電流が流れる部分については市販のケーブルを使用することができる。また、端子22は、ケーブルと異なり、大電流(200Aを超えるもの)に耐えられるものを低コストで製造することが可能であり、またそのような大電流に耐えられるものが市販されている。このため本発明によれば、市販のケーブルを利用することができ、コスト的に有益である。また端子22は、ケーブルと異なり、大電流が通過する際にノイズが問題となることはない。このため大きなノイズによる他の電子機器への悪影響を回避することができる。また、各電力線20、21は、市販のケーブルが用いられ、200Aを超える大電流が流れることはないため、市販の遮断器を用いることができる。このため更にコストを抑えることができる。
【0034】
さらに、第2発明、第4発明によれば、エンジン2の種類によってアシスト力が異なったり、補機Lの種類によって補機Lの消費電力が異なっている場合であっても、蓄電部の数を増減することで、蓄電部の規格、ケーブルの規格、端子の規格は変更することなく、需要電力に対処することが可能である。
【0035】
第3発明、第4発明においても、第1発明、第2発明と同様に、蓄電部Cあるいは蓄電部C11の端子22´、この端子22´に接続される第3の電力線28、この第3の電力線28に接続される中継端子27は、大電流に耐えられるように構成されているため、前述の第1発明、第2発明と同様の効果が得られる。なお第3の電力線28は、第1および第2の電力線20、21に比して極く短いため、コスト的に大きく上昇することはない。また第3の電力線28は極く短いケーブルで構成されているため、ノイズ源となって他の電子機器に与える影響を極力回避することができる。
【発明の実施の形態】
【0036】
以下、図面を参照して本発明に係る車両の補機への供給電力制御装置の実施の形態について説明する。
【0037】
図1は、実施形態の車両1の内部の構成を示している。この車両は、エンジン2の出力軸17が、動力分配機構(たとえば分配ギア)3を介して動力伝達機構4の入力軸19に連結されるとともに、発電電動機MG1、MG2の入力軸22、22に連結された構成のエンジンアシスト型のパラレルハイブリッド車である。本実施例では、発電電動機MGは、複数(図示する実施例では、2つ)の発電電動機MG1、MG2に分割されて設けられている。
【0038】
エンジン2の出力トルクは、駆動力制御装置16によって制御される。駆動力制御装置16は、エンジン制御指令(アクセル開度指令)をエンジン2に出力して、エンジン2の出力トルクを制御する。
【0039】
動力伝達機構4は、エンジン2の出力トルク(走行動力)を駆動輪27に伝達し車両1を走行させるものであり、エンジン2の出力トルクが動力分配機構3、トルクコンバータ23、トランスミッション(多段の自動変速機)24、減速装置25を介して駆動輪27に伝達されて車両1が走行する。
【0040】
複数の発電電動機MG1、MG2は、動力分配機構3を介して結合している。発電電動機MG1、MG2は、発電作用(回生動作)と電動作用(力行動作)を行う。つまり複数の発電電動機MG1、MG2は、電動機(モータ)として作動し、また発電機としても作動する。電動作用が行われると、発電電動機MG1、MG2で発生したトルクが各回転軸からエンジン出力軸17に供給される。また、エンジン出力軸17からトルクが発電電動機MG1、MG2の各回転軸に供給されて、発電作用が行なわれる。
【0041】
電源系統A、Bはそれぞれ、発電電動機MG1、MG2を電気的に駆動するものである。電源系統Aは、発電電動機MG1と、発電インバータINV1と、蓄電部C1とからなる。蓄電部C1は、更に複数(図示する実施例では、3つ)の蓄電部C11、C12、C13とからなる。電源系統Bは、発電電動機MG2と、発電インバータINV2と、蓄電部C2とからなる。蓄電部C2は、蓄電部C1と同じく、更に3つの蓄電部C21、C22、C23とからなる。なお、以下では、蓄電部C1とC2を総称するときは、蓄電部Cというものとする。また、発電インバータINV1とINV2を総称するときは、発電インバータINVというものとする。
【0042】
電源系統Aの発電インバータINV1と、蓄電部C1と、出力変換部11とは、互いに電気的に接続されている。同様に電源系統Bの発電インバータINV2と、蓄電部C2と、出力変換部11とは、互いに電気的に接続されている。
【0043】
車両1には、電源負荷としての補機Lが搭載されている。補機Lは、たとえば高速バスにおける空調機器、路外地形(オフロード)を走行可能な特装車における照明灯、通信装置、計算機、レーダなどの車載品である。
【0044】
複数の発電電動機MG1、MG2はそれぞれ、発電インバータINV1、INV2によってトルク制御される。
【0045】
蓄電部C1、C2は、キャパシタや電池などによって構成され、それぞれ発電電動機MG1、MG2が発電作用した場合に発電した電力を蓄積するとともに、自己の蓄電部C1、C2に蓄積された電力をそれぞれ発電インバータINV1、INV2または出力変換部11に供給する。
【0046】
出力変換部11は、発電電動機MG1、MG2が発電作用した場合に発電した電力の供給を受けて、あるいは蓄電部C1、C2に蓄積された電力の供給を受けて、補機Lに適合する所望の電圧、周波数、相数の電力に変換して補機Lに供給する。
電源制御装置15は、複数の発電インバータINV1、INV2に対して発電電動機制御指令(トルク指令)を出力して、複数の発電電動機MG1、MG2をトルク制御する。
【0047】
電源制御装置15から発電インバータINV1、INV2に対して負(−)極性のトルク指令が与えられると、発電インバータINV1、INV2は複数の発電電動機MG1、MG2が発電機として作動するように制御する。すなわちエンジン2で発生した出力トルクの一部は、エンジン出力軸17を介して複数の発電電動機MG1、MG2の回転軸に伝達されてエンジン2のトルクを吸収して発電が行われる。そして発電電動機MG1、MG2で発生した交流電力はそれぞれ発電インバータINV1、INV2で直流電力に変換される。
【0048】
また、電源制御装置15から発電インバータINV1、INV2に対して正(+)極性のトルク指令が与えられると、発電インバータINV1、INV2は複数の発電電動機MG1、MG2が電動機として作動するように制御する。すなわち蓄電部C1に蓄積された直流電力は発電インバータINV1で交流電力に変換されて発電電動機MG1に供給され、発電電動機MG1の回転軸を回転作動させる。これにより発電電動機MG1でトルクが発生し、このトルクは、発電電動機MG1の回転軸を介してエンジン出力軸17に伝達されて、エンジン2の出力トルクに加算される。この加算した出力トルク(走行動力)は、動力伝達機構4に入力される。同様に、蓄電部C2に蓄積された直流電力は発電インバータINV2で交流電力に変換されて発電電動機MG2に供給され、発電電動機MG2の回転軸を回転作動させる。これにより発電電動機MG2でトルクが発生し、このトルクは、発電電動機MG2の回転軸を介してエンジン出力軸17に伝達されて、エンジン2の出力トルクに加算される。この加算した出力トルク(走行動力)は、動力伝達機構4に入力される。
【0049】
複数の発電電動機MG1、MG2の発電量(吸収トルク量)、電動量(アシスト量;発生トルク量)は、上記トルク指令の内容に応じて変化する。
【0050】
蓄電部C1は、発電電動機MG1が発電作用した場合に発電した電力を蓄積する。また蓄電部C1は、蓄電部C1に蓄積された電力を発電インバータINV1または出力変換部11に供給する。同様に、蓄電部C2は、発電電動機MG2が発電作用した場合に発電した電力を蓄積する。また蓄電部C2は、蓄電部C2に蓄積された電力を発電インバータINV2または出力変換部11に供給する。
【0051】
図2は、図1の構成図から、発電電動機MG、発電インバータINV、蓄電部C、出力変換部11、補機Lの部分のみ取り出した構成を示している。
【0052】
同図2に示すように、電源系統Aの発電インバータINV1には、第1の電力線20が電気的に接続されている。また、出力変換部11には、第2の電力線21が電気的に接続されている。
【0053】
蓄電部C1は、上述したように、複数の蓄電部C11、C12、C13からなり、そのうちの1つの蓄電部C11の端子22に第1の電力線20および第2の電力線21が電気的に接続されている。蓄電部C11の端子22は、第1および第2の電力線20、21よりも耐電流が高く構成されている。
【0054】
この蓄電部C11の端子22に電力線23、24を介してそれぞれ他の蓄電部C12、C13の端子25、26が電気的に接続されている。
【0055】
電源系統Bの発電インバータINV2と、蓄電部C2(C21、C22、C23)と、出力変換部11との電気接続の構成についても図2と同様であり、蓄電部C21の端子22に第1の電力線20および第2の電力線21が電気的に接続されており、この蓄電部C21の端子22に電力線23、24を介してそれぞれ他の蓄電部C22、C23の端子25、26が電気的に接続されている。
【0056】
本実施例では、端子22が設けられた蓄電部C11、C21で充放電される電流の最大値は、400Aであるものとする。これに応じて、蓄電部C11、C21の端子22は、400Aの電流に耐えられるように構成されている。他の蓄電部C12、C13、C22、C23で充放電される電流の最大値はそれぞれ、200Aであるものとする。これに応じて蓄電部C12、C13、C22、C23に接続される電力線23、24は、耐電流が200A程度の市販のケーブルで構成されている。同様に第1の電力線20、第2の電力線21についても、耐電流が200A程度の市販のケーブルで構成されている。
【0057】
なお、図示する各電力線は、直流の電力線であればプラスとマイナスのケーブル、交流の電力線であれば全相のケーブルを一括した表記したものである。
【0058】
以下、図6で説明した従来の構成と対比しつつ本実施例の作用、効果について説明する。
【0059】
従来の構成にあっては、図6で説明したように、エンジン2と補機12の負荷が同時に増大し、蓄電部9から発電インバータ8と出力変換部11の両方へ同時に電力を供給する必要が生じたとすると、蓄電部9から発電インバータ8へ60kVA(300V、200A)の電力を供給すると同時に、蓄電部9から出力変換部11へ同じ60kVA(300V、200A)の電力を供給しようとすると、蓄電部9から400Aの電流を放電する必要があった。このため電力線14bには、400Aもの大電流が流れることになっていた。
【0060】
これに対して、本実施例の構成では、蓄電部C11、C21には、耐電流が400Aの端子22が用いられ、端子22を介して電流が充放電される。このため、たとえ一方の電源系統(たとえば電源系統A)の蓄電部C11から400Aの電流を放電して発電インバータINV1に電流が200Aとなる電力を供給し補機Lにも電流が200Aとなる電力を供給することが必要な状況であったとしても、その大電流を安全に供給することができる。また、本実施例では、200Aを超える大電流が流れる部分のみに端子22が用いられ、その他の200A以下の電流が流れる部分については市販のケーブルを使用することができる。また、端子22は、ケーブルと異なり、大電流(200Aを超えるもの)に耐えられるものを低コストで製造することが可能であり、またそのような大電流に耐えられるものが市販されている。このため本実施例によれば、市販のケーブルを利用することができ、コスト的に有益である。端子22は、ケーブルと異なり、大電流が通過する際にノイズが問題となることはない。このため大きなノイズによる他の電子機器への悪影響を回避することができる。また、各電力線20、21、23、24には、市販のケーブルが用いられ、200Aを超える大電流が流れることはないため、市販の遮断器を用いることができる。このため更にコストを抑えることができる。
【0061】
さらに本実施例では、電源系統がA、Bの2つに分けられ、一方の電源系統の蓄電部が複数(3つ)のものから構成されている。このため、電源制御装置15によって各蓄電部で充放電される電流が分散されるように制御すれば、1つの蓄電部当りで充放電される電流の上限値が小さくなり、各電力線20、21、23、24に、より耐電流の低い市販のケーブルを使用することができ、また、より耐電流の低い端子22を使用することができ、更にコストを低減させることができる。
【0062】
また、本実施例によれば、エンジン2の種類によってアシスト力が異なったり、補機Lの種類によって補機Lの消費電力が異なっている場合であっても、蓄電部の規格、ケーブルの規格、端子の規格を変更することなく対処することが可能となる。すなわち、エンジン2の種類や補機Lの種類によって、エンジン2や出力変換部11に供給される電力(最大電力)が異なったとしても、電源系統の数を変更したり、あるいは1つの電源系統あたりの蓄電部の個数を変更したりすることで、各蓄電部の規格、各ケーブルの規格、各端子の規格は同一のままで異なる需用電力に対処することができ、電子部品の共通化を図ることができる。
【0063】
以上の説明では、蓄電部C11、C21の端子22を大電流に耐えられるように構成しているが、図3に示すように、端子22の代わりに、中継端子27と極く短い電力線28と蓄電部C11、C21の端子22´で構成する実施も可能である。
【0064】
すなわち、この実施例では、同図3に示すように、電源系統Aの第1の電力線20と第2の電力線21は、中継端子27に電気的に接続されている。この中継端子27は、第3の電力線28を介して蓄電部C11の端子22´に電気的に接続されている。ここで、第3の電力線28は、第1および第2の電力線20、21に比して極く短く、かつ第3の電力線28、中継端子27および蓄電部C11の端子22´は、図2の実施例と同様に、第1および第2の電力線20、21よりも耐電流が高く構成されている。また、蓄電部C11の端子22´には、電力線23、24を介して他の蓄電部C12、C13の端子25、26が電気的に接続されている。電源系統Bについても同様である。
【0065】
図3に示す実施例においても、図2で説明した実施例と同様に、蓄電部C11、C21の端子22´、この端子22´に接続される第3の電力線28、この第3の電力線28に接続される中継端子27は、大電流に耐えられるように構成されているため、前述の図2で説明した実施例と同様の効果が得られる。なお第3の電力線28は、第1および第2の電力線20、21に比して極く短いため、コスト的に大きく上昇することはない。また第3の電力線28は極く短いケーブルで構成されているため、ノイズ源となって他の電子機器に与える影響を極力回避することができる。
【0066】
また、図2の実施例では、複数の電源系統A、Bを介して1つの補機Lに電力を供給する場合を想定した。しかし、本発明は、この構成に限定されるわけではなく、図4に示すように、複数の補機L1、L2が備えられた車両1にも適用可能である。すなわち、補機L1、L2、これら補機L1、L2に対応する出力変換部11A、11Bを設けるとともに、これら補機L1、L2毎に、出力変換部11A、11B毎に、それぞれ電源系統A、Bを設け、各電源系統A、Bからそれぞれ出力変換部11A、11Bを介して補機L1、L2に対して電力を供給する実施も可能である。図3の実施例についても同様である。
【0067】
以上の説明では、電源系統がA、Bの2つに分けられ、一方の電源系統の蓄電部が複数(3つ)のものから構成されていることを前提としている。
【0068】
しかし、本発明は、これに限定されるわけでなく、図5(a)、(b)に示すごとく、図6に示す従来技術と同様に、発電インバータINVと、蓄電部Cと、出力変換部11がそれぞれ1つである構成に対しても適用可能である。この場合において図5(a)に示すように、図2と同じく、第1の電力線20、第2の電力線21を端子22を介して蓄電部Cに電気的に接続するように構成すれば、図2に示す実施例と同様の効果が得られる。また、図5(b)に示すごとく、図3と同じく、第1の電力線20、第2の電力線21を中継端子27、第3の電力線28、端子22´を介して蓄電部Cに電気的に接続するように構成すれば、図4に示す実施例と同様の効果が得られる。
【図面の簡単な説明】
【0069】
【図1】図1は、実施形態の車両の構成を示す図である。
【図2】図2は、図1の構成図から、発電電動機、発電インバータ、蓄電部、出力変換部、補機の部分のみ取り出した構成を示した図である。
【図3】図3は、図2の変形構成例を示した図である。
【図4】図4は、図2と異なる実施例の構成図である。
【図5】図5(a)、(b)はそれぞれ、図2、図3とは異なる他の構成例を示した図である。
【図6】図6は、従来の電力供給装置の構成例を示した図である。
【符号の説明】
【0070】
1 車両、 2 エンジン、 4 動力伝達機構 MG(MG1、MG2)、 発電電動機、 INV(INV1、INV2、INV3) 発電インバータ、 C(C1、C2) 蓄電部
20 第1の電力線、21 第2の電力線、22 端子、27 中継端子、28 第3の電力線

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両の補機に出力変換部を介して電力を供給する車両の補機への電力供給装置であって、
蓄電部および/または出力変換部に電力を供給するとともに、蓄電部から電力が供給される発電インバータと、
発電インバータおよび/または出力変換部に電力を供給するとともに、発電インバータから電力が供給される蓄電部と、
発電部および/または蓄電部から電力が供給される出力変換部と、
発電インバータに電気的に接続される第1の電力線と、
出力変換部に電気的に接続される第2の電力線と
が備えられ、
第1の電力線と第2の電力線は、蓄電部の端子に電気的に接続され、
蓄電部の端子は、第1および第2の電力線よりも耐電流が高く構成されていること
を特徴とする車両の補機への電力供給装置。
【請求項2】
蓄電部は、複数の蓄電部からなり、そのうちの1つの蓄電部の端子に第1および第2の電力線が電気的に接続され、当該蓄電部の端子に電力線を介して他の蓄電部の端子が電気的に接続されていること
を特徴とする請求項1記載の車両の補機への電力供給装置。
【請求項3】
車両の補機に出力変換部を介して電力を供給する車両の補機への電力供給装置であって、
蓄電部および/または出力変換部に電力を供給するとともに、蓄電部から電力が供給される発電インバータと、
発電インバータおよび/または出力変換部に電力を供給するとともに、発電インバータから電力が供給される蓄電部と、
発電部および/または蓄電部から電力が供給される出力変換部と、
発電インバータに電気的に接続される第1の電力線と、
出力変換部に電気的に接続される第2の電力線と
が備えられ、
第1の電力線と第2の電力線は、中継端子に電気的に接続され、
当該中継端子は、第3の電力線を介して蓄電部の端子に電気的に接続され、
第3の電力線は、第1および第2の電力線よりも短く、かつ第3の電力線、中継端子および蓄電部の端子は、第1および第2の電力線よりも耐電流が高く構成されていること
を特徴とする車両の補機への電力供給装置。
【請求項4】
蓄電部は、複数の蓄電部からなり、そのうちの1つの蓄電部の端子に第3の電力線、中継端子を介して第1および第2の電力線が電気的に接続され、当該蓄電部の端子に電力線を介して他の蓄電部の端子が電気的に接続されていること
を特徴とする請求項1記載の車両の補機への電力供給装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2008−160987(P2008−160987A)
【公開日】平成20年7月10日(2008.7.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−347717(P2006−347717)
【出願日】平成18年12月25日(2006.12.25)
【出願人】(000001236)株式会社小松製作所 (1,686)
【Fターム(参考)】