車両の車体前部
【課題】車両の正面に入力された衝撃(荷重)を吸収し、車体前部の前後の長さ(クラッシャブルゾーン)を短縮した車両の車体前部を提供する。
【解決手段】車体前部12は、左右のフロントサイドフレーム16に取付けたサブフレーム15から正面枠部(バルクヘッド)37までサイドビーム74を延ばした。サイドビーム74は、車両11の前方へ向くサブフレーム15の前壁75に接合して前方へ延ばした中央水平部135を形成し、中央水平部135に連ね斜め上方へ延びる傾斜部136を形成した下部緩衝バー部材137と、傾斜部136及びバルクヘッド37に接合し、車両11の正面79に入力される衝撃に対し強度が下部緩衝バー部材137より小さい屈曲衝撃吸収部材81と、を備えている。
【解決手段】車体前部12は、左右のフロントサイドフレーム16に取付けたサブフレーム15から正面枠部(バルクヘッド)37までサイドビーム74を延ばした。サイドビーム74は、車両11の前方へ向くサブフレーム15の前壁75に接合して前方へ延ばした中央水平部135を形成し、中央水平部135に連ね斜め上方へ延びる傾斜部136を形成した下部緩衝バー部材137と、傾斜部136及びバルクヘッド37に接合し、車両11の正面79に入力される衝撃に対し強度が下部緩衝バー部材137より小さい屈曲衝撃吸収部材81と、を備えている。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車室の床の前に設けたサブフレームから車両正面近傍まで衝撃吸収用のビームを延ばした車両の車体前部に関するものである。
【背景技術】
【0002】
車体前部には、車両の正面に第1衝撃吸収部、この下に第2衝撃吸収部を設けたものがある。
この車体前部は、前輪に沿うフロントサイドフレームの先端に設けた第1衝撃吸収部、フロントサイドフレームの下位に配置したエプロンロアメンバ(ビーム)の先端に設けた第2衝撃吸収部によって、車両前方からの衝撃を吸収することができるというものである(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
しかし、従来技術(特許文献1)は、フロントサイドフレームの下位に配置したエプロンロアメンバ(ビーム)の衝撃吸収量が小さくなることがある。
すなわち、エプロンロアメンバに入力された衝撃(荷重)は、エプロンロアメンバからエプロンロアメンバの根本を接続しているサスペンションフレーム(サブフレーム)に一直線に伝わるため、エプロンロアメンバの座屈強度が大きく、エプロンロアメンバは衝撃を十分吸収することができない。
また、車両正面に入力される衝撃を十分に吸収することができないと、車体前部の前後の長さ(クラッシャブルゾーン)を長くする必要がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2009−51440号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、車両の正面に入力された衝撃(荷重)を吸収し、車体前部の前後の長さ(クラッシャブルゾーン)を短縮し、空間を形成してエンジン補機(例えば、コンプレッサー)を配置した車両の車体前部を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記の課題を解決するために、請求項1に係る発明は、車両の車室に連続する車体前部の左右のフロントサイドフレームに車室の床の前に配置され左右に延びるサブフレームを取付けた車体前部において、サブフレームから車体前部の正面枠部まで延びるサイドビームを有し、サイドビームは、車両の前方へ向くサブフレームの前壁に接合して前方へ延ばした中央水平部を形成し、中央水平部に連ね斜め上方へ延びる傾斜部を形成した下部緩衝バー部材と、傾斜部及び正面枠部に接合し、車両の正面に入力される衝撃に対し強度が下部緩衝バー部材より小さい屈曲衝撃吸収部材と、を備えていることを特徴とする。
【0007】
請求項2に係る発明は、正面枠部の下面に屈曲衝撃吸収部材の上面を接触させて結合していることを特徴とする。
【0008】
請求項3に係る発明は、屈曲衝撃吸収部材の前方に衝撃吸収突出部材を屈曲衝撃吸収部材を延ばすように設けていることを特徴とする。
【0009】
請求項4に係る発明は、サブフレームは、車両の前方へ向く前壁と、前壁に連なり左右の端部にサスペンション装置のロアアームを支持している前アーム連結部を有し、下部緩衝バー部材の後部を前アーム連結部を設けた前壁に結合していることを特徴とする。
【0010】
請求項5に係る発明は、正面枠部から車両前方へ足払いプレートを張りだし、衝撃吸収突出部材は足払いプレートに一体的に接合していることを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
請求項1に係る発明では、サイドビームは、車両の前方へ向くサブフレームの前壁に接合して前方へ延ばした中央水平部を形成し、中央水平部に連ね斜め上方へ延びる傾斜部を形成した下部緩衝バー部材と、傾斜部及び正面枠部に接合し、車両の正面に入力される衝撃に対し強度が下部緩衝バー部材より小さい屈曲衝撃吸収部材と、を備えているので、車両の正面に衝撃(荷重)が入力されると、強度の小さい屈曲衝撃吸収部材が、その上面を谷折りして屈曲変形することによって、車両の変形量(衝撃吸収代(クラッシャブルゾーン))の長さ(ストローク)を短くしつつ、比較的小さい衝撃を吸収することができる。
【0012】
また、屈曲衝撃吸収部材が屈曲変形した後、上位の正面枠部が後退して屈曲衝撃吸収部材に荷重を伝えるので、下部緩衝バー部材は下方へV字状に折り曲がることによって、屈曲しつつ衝撃を吸収することができる。
【0013】
さらに、屈曲衝撃吸収部材の上方に設けた空間にエンジン補機(例えば、コンプレッサー)を配置することができる。
すなわち、屈曲衝撃吸収部材が正面枠部から下方へ傾斜して延びているので、正面枠部から水平に屈曲衝撃吸収部材を延ばしたものに比べ、屈曲衝撃吸収部材の上方の空間を大きくすることができる。
【0014】
請求項2に係る発明では、正面枠部の下面に屈曲衝撃吸収部材の上面を接触させて結合しているので、屈曲衝撃吸収部材が変形した後、続いて、上方の正面枠部から屈曲衝撃吸収部材の上面を介して下方の下部緩衝バー部材の上面に衝撃(荷重)を圧縮するように伝えることができる。その結果、屈曲衝撃吸収部材の上面を容易に谷折りして屈曲変形させることができる。
【0015】
請求項3に係る発明では、屈曲衝撃吸収部材の前方に衝撃吸収突出部材を屈曲衝撃吸収部材を延ばすように設けているので、車両の正面に衝撃(荷重)が入力されると、正面に近い衝撃吸収突出部材が圧縮変形することによって、衝撃(荷重)を吸収し始める。その結果、より小さい衝撃を吸収することができ、結果的に、衝撃吸収を高めることができる。
【0016】
請求項4に係る発明では、サブフレームは、車両の前方へ向く前壁と、前壁に連なり左右の端部にサスペンション装置のロアアームを支持している前アーム連結部を有し、下部緩衝バー部材の後部を前アーム連結部を設けた前壁に結合しているので、車両の正面から下部緩衝バー部材に衝撃(荷重)が伝わると、下部緩衝バー部材から前壁を介して近傍のロアアームに伝わる。そして、ロアアームから車体に衝撃(荷重)を分散することができる。
【0017】
請求項5に係る発明では、正面枠部から車両前方へ足払いプレートを張りだし、衝撃吸収突出部材は足払いプレートに一体的に接合しているので、張り出した足払いプレートを衝撃吸収突出部材で補強することができ、足を払う効果を高めることができる。
また、足払いプレートの設置が容易になる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本発明の実施例に係る車両の概要を示す断面図である。
【図2】右下から見た車体前部の斜視図である。
【図3】車体前部の分解斜視図である。
【図4】下から見た車体前部の左部の下面図である。
【図5】実施例に係るサブフレーム、サイドビームの斜視図である。
【図6】実施例に係る正面枠部、サブフレーム、サイドビームの斜視図である。
【図7】実施例に係るサイドビームを取り外した状態を示す斜視図である。
【図8】図6の8−8線断面図である。
【図9】図6の9矢視図である。
【図10】図6の10−10線断面である。
【図11】正面枠部に取付けるサイドビームの斜視図である。
【図12】図7の12−12線断面図である。
【図13】図7の13−13線断面図である。
【図14】足払いプレートを示す図で、(a)は斜視図、(b)は(a)のb−b線断面図である。
【図15】車体前部の衝撃を吸収する機構を説明する図で、(a)は衝撃を入力する前の側面図、(b)は(a)の続きを示す図、(c)は(b)の続きを示す図、(d)は(c)の続きを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明の実施の形態について、実施例で詳細に説明する。
【実施例】
【0020】
車両11は、図1〜図3に示すように、実施例に係る車体前部12を採用している。
車体前部12は、車体14のフロントボデーであり、サブフレーム15を備える。このサブフレーム15および左右のフロントサイドフレーム16、17にエンジン18を載せ、前サスペンション装置21を支持している。
【0021】
ここで、車両11前後方向をX軸方向、車両11左右方向(車幅方向)をY軸方向、車両11上下方向をZ軸方向とする。
左右は、運転手を基準とし、運転席に座って正面を見た状態で、運転手の右が右とする。
【0022】
エンジン18は、図1、図5、図6に示すように、既存の横置(Y軸方向)きで、右に配置したエンジン本体23と、エンジン本体23に接続し左に配置した変速装置24
と、右のサイドビーム74の上方に配置したエンジン補機(例えば、コンプレッサー)18aと、を有する。
【0023】
前サスペンション装置21は、図5、図6、図9に示す通り、マクファーソンストラット式で、前輪26(図1)を支持するロアアーム27と、このロアアーム27に下端を取付け立設したダンパー(ストラット)28と、を備える。
【0024】
ロアアーム27は、既存のもので、鉄(鋼)またはアルミニウム合金を用いた鋳造品(中実)であり、鋼板を用いたサブフレーム15に比べ強度が大きい。
そして、サブフレーム15に連結するロアアーム前連結端31と、ロアアーム後連結端32と、前輪26を支持したダンパー28の下端を連結する先端リンク部33と、を備える。なお、ダンパー28の上端を車体前部12のダンパーハウジング34(図2)に締結する。
【0025】
車体前部(フロントボデー)12は、左右のフロントサイドフレーム16、17、このフロントサイドフレーム16、17の先端に取付けた正面枠部(バルクヘッド)37、フロントサイドフレーム16、17に立設したダンパーハウジング34と、を備える。
【0026】
フロントサイドフレーム16、17は、図1〜図4に示すように、ほぼ水平なフレーム本体38と、フレーム本体38から後方下方(矢印a1の方向)に下がり傾斜したフロントフロアフレーム41と、を有する。
フロントフロアフレーム41の中央に設けた前フレーム締結部43、後部に設けた後フレーム締結部44に下方からサブフレーム15を締結し、フロントフロアフレーム41を床(アンダボデー)45に一体的に接合している。
【0027】
アンダボデー45は、図2に示す通り、フロントフロアパネル46の左右の端を左右のサイドボデー47、48のサイドシル51に接合している。
また、フロントフロアパネル46と、フロントフロアパネル46の左右の中央に設けたトンネル部52と、図2〜図4に示すフロントフロアフレーム41から延びるフロアセンタフレーム54、フロアフレーム55、アウトリガー56と、を備える。
これらフロアフレーム55の後端、アウトリガー56の外端を左右のフロントサイドフレーム16、17の後方でサイドシル51に接合している。
【0028】
フロントサイドフレーム16、17はまた、フレーム本体38の前部を前衝撃吸収部58とし、この前衝撃吸収部58にバンパ装置61のバンパビーム62を取付けている。
前衝撃吸収部58はバンパビーム62に入力された衝撃(荷重)を直接吸収する。
【0029】
バンパビーム62は、前衝撃吸収部58の先端に直接締結したものである。すなわち、バンパビーム62に入力された衝撃(荷重)を吸収するものをフロントサイドフレーム16、17との間に介在させていない。
【0030】
前衝撃吸収部58の内側には正面枠部(バルクヘッド)37を取付けている。
正面枠部(バルクヘッド)37は、左右のフロントサイドフレーム16、17に立設したフロントサイドバルクヘッド64、フロントサイドバルクヘッド64の上部に接合したバルクヘッドアッパフレーム65、フロントサイドバルクヘッド64の下部に接合したフロントバルクヘッドロアクロスメンバ66を備える。68はフロントバルクヘッドロアクロスメンバ66に接合した足払いプレートである。
【0031】
次に、車体前部12の主要構成を図1〜図13で説明する。
車体前部12は、車両11の車室71に連続する車体前部12の左右のフロントサイドフレーム16、17に車室71の床(アンダボデー)45の前に配置された左右に延びるサブフレーム15を取付けた。
そして、サブフレーム15から車体前部12の正面枠部(バルクヘッド)37まで延びるサイドビーム74を有する。
【0032】
サイドビーム74は、車両11の前方へ向くサブフレーム15の前壁75に接合して前方へ延ばした中央水平部135を形成し、中央水平部135に連ね斜め上方へ延びる傾斜部136を形成した下部緩衝バー部材137と、傾斜部136及び正面枠部(バルクヘッド)37に接合し、車両11の正面79に入力される衝撃に対し強度が下部緩衝バー部材137より小さい屈曲衝撃吸収部材81と、を備えている。
【0033】
正面枠部(バルクヘッド)37の下面83(図9、図10)に屈曲衝撃吸収部材81の上面82を接触させて結合している。
【0034】
屈曲衝撃吸収部材81の前方に衝撃吸収突出部材138を屈曲衝撃吸収部材81を延ばすように設けている(図9)。
【0035】
サブフレーム15は、車両11の前方へ向く前壁75と、前壁75に連なり左右の端部にサスペンション装置(前サスペンション装置)21のロアアーム27を支持している前アーム連結部85を有する。
そして、下部緩衝バー部材137の後部141を前アーム連結部85を設けた前壁75に結合している(図8)。
【0036】
正面枠部(バルクヘッド)37から車両11前方へ足払いプレート68を張りだしている。
衝撃吸収突出部材138は足払いプレート68に一体的に接合している。
【0037】
次に、車体前部12を詳しく説明していく。
車体前部12は、既に述べた下部緩衝バー部材137と、屈曲衝撃吸収部材81と、衝撃吸収突出部材138と、足払いプレート68と、を有する。
【0038】
下部緩衝バー部材137は、図7、図11に示す通り、角管状(図13)の本体の中央水平部135を一直線に形成し、後部141よりも前部196を距離Hfだけ上位に配置している。中央水平部135を後部141より距離Hrだけ下位に配置している。なお、傾斜部136に前部196を含める。
【0039】
また、図6〜図8に示す通り、後部141を締結する締結ブラケット152を有する。 締結ブラケット152は、断面U状で、開口を下方に向け前壁75に溶接(溶接部154)で接合されている。
後部141には、ボルト155を通して締結力(軸力)を伝える締結力伝達部156を形成している。
【0040】
傾斜部136および傾斜部136近傍の中央水平部135は、図9、図10に示す通り、屈曲衝撃吸収部材81内に嵌り、溶接を施すことで接合されている。
【0041】
屈曲衝撃吸収部材81は、鋼板を塑性加工したもので、図7、図9、図10〜図12に示す通り、断面U字状の吸収フレーム部91にフランジ部197を形成し、開口を車両11の下方へ向け配置されている。
【0042】
屈曲衝撃吸収部材81の峰部81aには、ビード81bを形成している。そして、下部緩衝バー部材137を嵌めた部位では下部緩衝バー部材137の天部137aに屈曲衝撃吸収部材81を接触させている。その結果、屈曲衝撃吸収部材81の強度を設定することができる。
【0043】
屈曲衝撃吸収部材81の吸収前部198(下部緩衝バー部材137を嵌めていない残りの部位)を正面枠部(バルクヘッド)37のフロントバルクヘッドロアクロスメンバ66に、フロントバルクヘッドロアクロスメンバ66のナットプレート201にボルト202をねじ込むことで締結している。
屈曲衝撃吸収部材81の前方には衝撃吸収突出部材138を前述したように設けている。
【0044】
屈曲衝撃吸収部材81の前方に衝撃吸収突出部材138を屈曲衝撃吸収部材81を延ばすように設けている(図9)。
「屈曲衝撃吸収部材81を延ばすように」とは、車両平面視(図9の裏から見た視点)、屈曲衝撃吸収部材81の軸線81aと衝撃吸収突出部材138の軸線138aとを一致させている。また、車両側面視(図10の視点)、屈曲衝撃吸収部材81の上面82の車両上下方向(Z軸方向)の高さと衝撃吸収突出部材138の下端138bの高さ(Z軸方向)を一致させている。
【0045】
衝撃吸収突出部材138は、図9〜図11に示すように、鋼板を塑性加工したもので、車両側面視(図10の視点)、三角形で、前方へ向け先細りに形成されている。
【0046】
また、衝撃吸収突出部材138は吸収本体138cに連なる上フランジ205、ベースフランジ206を形成したものである。ベースフランジ206をフロントバルクヘッドロアクロスメンバ66の前壁部66aに重ねて接合した。
そして、上フランジ205を足払いプレート68に重ねて接合し、足払いプレート68とで閉断面形状(図10)を形成している。
【0047】
足払いプレート68は、図14に示す通り、鋼板を塑性加工したもので、正面枠部(バルクヘッド)37のフロントバルクヘッドロアクロスメンバ66に接合する根本端部208と、根本端部208に連続する衝撃変形部211と、衝撃変形部211に連続した正面先端部212と、衝撃変形部211に開けた開口213と、開口213間に設けたビード146と、を備える。
【0048】
ビード146は、溝状に形成した部位で、開口146aを下方へ向け、車両11の前後に根本端部208から正面先端部212まで延び、高さh、幅wで形成されている。ビード146を形成することによって、足払いプレート68の強度を確保している。
その結果、足払いプレート68の正面先端部212が下がるたわみを抑制することができ、且つ、吸収する衝撃(荷重)の大きさを設定することができる。
【0049】
次に、実施例に係る車体前部12の作用を説明する。
車体前部12の衝撃を吸収する機構を説明する(図15参照)。
車体前部12では、車両11の正面79(図1)に他の自動車など障害物が接触すると、前から順に、足払いプレート68、衝撃吸収突出部材138、屈曲衝撃吸収部材81、下部緩衝バー部材137が変形することによって、車両11の変形量の長さを短くしつつ、衝撃(荷重)を吸収することができる。
呼称を変えていうと、車両11のクラッシャブルゾーンのストロークを短くしつつ、衝撃(荷重)を吸収することができる。
【0050】
具体的には、図15(a)に示す車体前部12に障害物が接触し、正面に衝撃(荷重)が矢印d1のように入力されると、図15(b)に示す通り、足払いプレート68が変形する。
ほぼ同時に、衝撃吸収突出部材138も圧縮変形する。
【0051】
足払いプレート68および衝撃吸収突出部材138は、正面枠部(バルクヘッド)37やフロントサイドフレーム16、17に衝撃(荷重)を伝えるため、屈曲衝撃吸収部材81より先に変形し始める。
その結果、車両11の変形量(衝撃吸収代(クラッシャブルゾーン))の長さ(ストローク)を短くしつつ、比較的小さい衝撃を吸収することができる。
【0052】
続いて、図15(c)に示す通り、屈曲衝撃吸収部材81が下部緩衝バー部材137に重なる境界部(重なることで板の厚さが変化する部位)81c(図10参照)から上面を谷折りするよう折れ曲がる。
【0053】
入力される屈曲衝撃吸収部材81の前部は、境界部より上位であり、偏心しているため、上面を谷折りするように曲がる。
また、境界部は、下部緩衝バー部材137に重ねることで、板厚が変化しているため、荷重が集中し、折れの起点となる。
【0054】
最後に、図15(d)に示す通り、下部緩衝バー部材137が変形する。下方に偏心している中央水平部135と後部141の境またはその近傍から上面を谷折りするように曲がって折れる。
【0055】
このように、車体前部12では、前から順に、足払いプレート68、衝撃吸収突出部材138、屈曲衝撃吸収部材81、下部緩衝バー部材137が変形するので、衝撃(荷重)を吸収することができる。
【0056】
また、屈曲衝撃吸収部材81の上方に設けた空間にエンジン補機(例えば、コンプレッサー)18a(図1参照)を配置することができる。
【0057】
さらに、車両11の正面79から下部緩衝バー部材137に衝撃(荷重)が伝わると、下部緩衝バー部材137から前壁75を介して近傍のロアアーム27に伝わる。そして、ロアアーム27からサブフレーム15の後締結部98、後フレーム締結部44を介して車体14に衝撃(荷重)を分散することができる(図4)。
【産業上の利用可能性】
【0058】
本発明の車両の車体前部は、自動車に好適である。
【符号の説明】
【0059】
11…車両、12…車体前部、15…サブフレーム、16…左のフロントサイドフレーム、17…右のフロントサイドフレーム、21…サスペンション装置(前サスペンション装置)、27…ロアアーム、37…正面枠部(バルクヘッド)、45…床(アンダボデー)、68…足払いプレート、71…車室、74…サイドビーム、75…サブフレームの前壁、79…車両の正面、81…屈曲衝撃吸収部材、82…屈曲衝撃吸収部材の上面、83…正面枠部(バルクヘッド)の下面、85…サブフレームの前アーム連結部、135…中央水平部、136…傾斜部、137…下部緩衝バー部材、138…衝撃吸収突出部材、141…下部緩衝バー部材の後部。
【技術分野】
【0001】
本発明は、車室の床の前に設けたサブフレームから車両正面近傍まで衝撃吸収用のビームを延ばした車両の車体前部に関するものである。
【背景技術】
【0002】
車体前部には、車両の正面に第1衝撃吸収部、この下に第2衝撃吸収部を設けたものがある。
この車体前部は、前輪に沿うフロントサイドフレームの先端に設けた第1衝撃吸収部、フロントサイドフレームの下位に配置したエプロンロアメンバ(ビーム)の先端に設けた第2衝撃吸収部によって、車両前方からの衝撃を吸収することができるというものである(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
しかし、従来技術(特許文献1)は、フロントサイドフレームの下位に配置したエプロンロアメンバ(ビーム)の衝撃吸収量が小さくなることがある。
すなわち、エプロンロアメンバに入力された衝撃(荷重)は、エプロンロアメンバからエプロンロアメンバの根本を接続しているサスペンションフレーム(サブフレーム)に一直線に伝わるため、エプロンロアメンバの座屈強度が大きく、エプロンロアメンバは衝撃を十分吸収することができない。
また、車両正面に入力される衝撃を十分に吸収することができないと、車体前部の前後の長さ(クラッシャブルゾーン)を長くする必要がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2009−51440号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、車両の正面に入力された衝撃(荷重)を吸収し、車体前部の前後の長さ(クラッシャブルゾーン)を短縮し、空間を形成してエンジン補機(例えば、コンプレッサー)を配置した車両の車体前部を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記の課題を解決するために、請求項1に係る発明は、車両の車室に連続する車体前部の左右のフロントサイドフレームに車室の床の前に配置され左右に延びるサブフレームを取付けた車体前部において、サブフレームから車体前部の正面枠部まで延びるサイドビームを有し、サイドビームは、車両の前方へ向くサブフレームの前壁に接合して前方へ延ばした中央水平部を形成し、中央水平部に連ね斜め上方へ延びる傾斜部を形成した下部緩衝バー部材と、傾斜部及び正面枠部に接合し、車両の正面に入力される衝撃に対し強度が下部緩衝バー部材より小さい屈曲衝撃吸収部材と、を備えていることを特徴とする。
【0007】
請求項2に係る発明は、正面枠部の下面に屈曲衝撃吸収部材の上面を接触させて結合していることを特徴とする。
【0008】
請求項3に係る発明は、屈曲衝撃吸収部材の前方に衝撃吸収突出部材を屈曲衝撃吸収部材を延ばすように設けていることを特徴とする。
【0009】
請求項4に係る発明は、サブフレームは、車両の前方へ向く前壁と、前壁に連なり左右の端部にサスペンション装置のロアアームを支持している前アーム連結部を有し、下部緩衝バー部材の後部を前アーム連結部を設けた前壁に結合していることを特徴とする。
【0010】
請求項5に係る発明は、正面枠部から車両前方へ足払いプレートを張りだし、衝撃吸収突出部材は足払いプレートに一体的に接合していることを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
請求項1に係る発明では、サイドビームは、車両の前方へ向くサブフレームの前壁に接合して前方へ延ばした中央水平部を形成し、中央水平部に連ね斜め上方へ延びる傾斜部を形成した下部緩衝バー部材と、傾斜部及び正面枠部に接合し、車両の正面に入力される衝撃に対し強度が下部緩衝バー部材より小さい屈曲衝撃吸収部材と、を備えているので、車両の正面に衝撃(荷重)が入力されると、強度の小さい屈曲衝撃吸収部材が、その上面を谷折りして屈曲変形することによって、車両の変形量(衝撃吸収代(クラッシャブルゾーン))の長さ(ストローク)を短くしつつ、比較的小さい衝撃を吸収することができる。
【0012】
また、屈曲衝撃吸収部材が屈曲変形した後、上位の正面枠部が後退して屈曲衝撃吸収部材に荷重を伝えるので、下部緩衝バー部材は下方へV字状に折り曲がることによって、屈曲しつつ衝撃を吸収することができる。
【0013】
さらに、屈曲衝撃吸収部材の上方に設けた空間にエンジン補機(例えば、コンプレッサー)を配置することができる。
すなわち、屈曲衝撃吸収部材が正面枠部から下方へ傾斜して延びているので、正面枠部から水平に屈曲衝撃吸収部材を延ばしたものに比べ、屈曲衝撃吸収部材の上方の空間を大きくすることができる。
【0014】
請求項2に係る発明では、正面枠部の下面に屈曲衝撃吸収部材の上面を接触させて結合しているので、屈曲衝撃吸収部材が変形した後、続いて、上方の正面枠部から屈曲衝撃吸収部材の上面を介して下方の下部緩衝バー部材の上面に衝撃(荷重)を圧縮するように伝えることができる。その結果、屈曲衝撃吸収部材の上面を容易に谷折りして屈曲変形させることができる。
【0015】
請求項3に係る発明では、屈曲衝撃吸収部材の前方に衝撃吸収突出部材を屈曲衝撃吸収部材を延ばすように設けているので、車両の正面に衝撃(荷重)が入力されると、正面に近い衝撃吸収突出部材が圧縮変形することによって、衝撃(荷重)を吸収し始める。その結果、より小さい衝撃を吸収することができ、結果的に、衝撃吸収を高めることができる。
【0016】
請求項4に係る発明では、サブフレームは、車両の前方へ向く前壁と、前壁に連なり左右の端部にサスペンション装置のロアアームを支持している前アーム連結部を有し、下部緩衝バー部材の後部を前アーム連結部を設けた前壁に結合しているので、車両の正面から下部緩衝バー部材に衝撃(荷重)が伝わると、下部緩衝バー部材から前壁を介して近傍のロアアームに伝わる。そして、ロアアームから車体に衝撃(荷重)を分散することができる。
【0017】
請求項5に係る発明では、正面枠部から車両前方へ足払いプレートを張りだし、衝撃吸収突出部材は足払いプレートに一体的に接合しているので、張り出した足払いプレートを衝撃吸収突出部材で補強することができ、足を払う効果を高めることができる。
また、足払いプレートの設置が容易になる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本発明の実施例に係る車両の概要を示す断面図である。
【図2】右下から見た車体前部の斜視図である。
【図3】車体前部の分解斜視図である。
【図4】下から見た車体前部の左部の下面図である。
【図5】実施例に係るサブフレーム、サイドビームの斜視図である。
【図6】実施例に係る正面枠部、サブフレーム、サイドビームの斜視図である。
【図7】実施例に係るサイドビームを取り外した状態を示す斜視図である。
【図8】図6の8−8線断面図である。
【図9】図6の9矢視図である。
【図10】図6の10−10線断面である。
【図11】正面枠部に取付けるサイドビームの斜視図である。
【図12】図7の12−12線断面図である。
【図13】図7の13−13線断面図である。
【図14】足払いプレートを示す図で、(a)は斜視図、(b)は(a)のb−b線断面図である。
【図15】車体前部の衝撃を吸収する機構を説明する図で、(a)は衝撃を入力する前の側面図、(b)は(a)の続きを示す図、(c)は(b)の続きを示す図、(d)は(c)の続きを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明の実施の形態について、実施例で詳細に説明する。
【実施例】
【0020】
車両11は、図1〜図3に示すように、実施例に係る車体前部12を採用している。
車体前部12は、車体14のフロントボデーであり、サブフレーム15を備える。このサブフレーム15および左右のフロントサイドフレーム16、17にエンジン18を載せ、前サスペンション装置21を支持している。
【0021】
ここで、車両11前後方向をX軸方向、車両11左右方向(車幅方向)をY軸方向、車両11上下方向をZ軸方向とする。
左右は、運転手を基準とし、運転席に座って正面を見た状態で、運転手の右が右とする。
【0022】
エンジン18は、図1、図5、図6に示すように、既存の横置(Y軸方向)きで、右に配置したエンジン本体23と、エンジン本体23に接続し左に配置した変速装置24
と、右のサイドビーム74の上方に配置したエンジン補機(例えば、コンプレッサー)18aと、を有する。
【0023】
前サスペンション装置21は、図5、図6、図9に示す通り、マクファーソンストラット式で、前輪26(図1)を支持するロアアーム27と、このロアアーム27に下端を取付け立設したダンパー(ストラット)28と、を備える。
【0024】
ロアアーム27は、既存のもので、鉄(鋼)またはアルミニウム合金を用いた鋳造品(中実)であり、鋼板を用いたサブフレーム15に比べ強度が大きい。
そして、サブフレーム15に連結するロアアーム前連結端31と、ロアアーム後連結端32と、前輪26を支持したダンパー28の下端を連結する先端リンク部33と、を備える。なお、ダンパー28の上端を車体前部12のダンパーハウジング34(図2)に締結する。
【0025】
車体前部(フロントボデー)12は、左右のフロントサイドフレーム16、17、このフロントサイドフレーム16、17の先端に取付けた正面枠部(バルクヘッド)37、フロントサイドフレーム16、17に立設したダンパーハウジング34と、を備える。
【0026】
フロントサイドフレーム16、17は、図1〜図4に示すように、ほぼ水平なフレーム本体38と、フレーム本体38から後方下方(矢印a1の方向)に下がり傾斜したフロントフロアフレーム41と、を有する。
フロントフロアフレーム41の中央に設けた前フレーム締結部43、後部に設けた後フレーム締結部44に下方からサブフレーム15を締結し、フロントフロアフレーム41を床(アンダボデー)45に一体的に接合している。
【0027】
アンダボデー45は、図2に示す通り、フロントフロアパネル46の左右の端を左右のサイドボデー47、48のサイドシル51に接合している。
また、フロントフロアパネル46と、フロントフロアパネル46の左右の中央に設けたトンネル部52と、図2〜図4に示すフロントフロアフレーム41から延びるフロアセンタフレーム54、フロアフレーム55、アウトリガー56と、を備える。
これらフロアフレーム55の後端、アウトリガー56の外端を左右のフロントサイドフレーム16、17の後方でサイドシル51に接合している。
【0028】
フロントサイドフレーム16、17はまた、フレーム本体38の前部を前衝撃吸収部58とし、この前衝撃吸収部58にバンパ装置61のバンパビーム62を取付けている。
前衝撃吸収部58はバンパビーム62に入力された衝撃(荷重)を直接吸収する。
【0029】
バンパビーム62は、前衝撃吸収部58の先端に直接締結したものである。すなわち、バンパビーム62に入力された衝撃(荷重)を吸収するものをフロントサイドフレーム16、17との間に介在させていない。
【0030】
前衝撃吸収部58の内側には正面枠部(バルクヘッド)37を取付けている。
正面枠部(バルクヘッド)37は、左右のフロントサイドフレーム16、17に立設したフロントサイドバルクヘッド64、フロントサイドバルクヘッド64の上部に接合したバルクヘッドアッパフレーム65、フロントサイドバルクヘッド64の下部に接合したフロントバルクヘッドロアクロスメンバ66を備える。68はフロントバルクヘッドロアクロスメンバ66に接合した足払いプレートである。
【0031】
次に、車体前部12の主要構成を図1〜図13で説明する。
車体前部12は、車両11の車室71に連続する車体前部12の左右のフロントサイドフレーム16、17に車室71の床(アンダボデー)45の前に配置された左右に延びるサブフレーム15を取付けた。
そして、サブフレーム15から車体前部12の正面枠部(バルクヘッド)37まで延びるサイドビーム74を有する。
【0032】
サイドビーム74は、車両11の前方へ向くサブフレーム15の前壁75に接合して前方へ延ばした中央水平部135を形成し、中央水平部135に連ね斜め上方へ延びる傾斜部136を形成した下部緩衝バー部材137と、傾斜部136及び正面枠部(バルクヘッド)37に接合し、車両11の正面79に入力される衝撃に対し強度が下部緩衝バー部材137より小さい屈曲衝撃吸収部材81と、を備えている。
【0033】
正面枠部(バルクヘッド)37の下面83(図9、図10)に屈曲衝撃吸収部材81の上面82を接触させて結合している。
【0034】
屈曲衝撃吸収部材81の前方に衝撃吸収突出部材138を屈曲衝撃吸収部材81を延ばすように設けている(図9)。
【0035】
サブフレーム15は、車両11の前方へ向く前壁75と、前壁75に連なり左右の端部にサスペンション装置(前サスペンション装置)21のロアアーム27を支持している前アーム連結部85を有する。
そして、下部緩衝バー部材137の後部141を前アーム連結部85を設けた前壁75に結合している(図8)。
【0036】
正面枠部(バルクヘッド)37から車両11前方へ足払いプレート68を張りだしている。
衝撃吸収突出部材138は足払いプレート68に一体的に接合している。
【0037】
次に、車体前部12を詳しく説明していく。
車体前部12は、既に述べた下部緩衝バー部材137と、屈曲衝撃吸収部材81と、衝撃吸収突出部材138と、足払いプレート68と、を有する。
【0038】
下部緩衝バー部材137は、図7、図11に示す通り、角管状(図13)の本体の中央水平部135を一直線に形成し、後部141よりも前部196を距離Hfだけ上位に配置している。中央水平部135を後部141より距離Hrだけ下位に配置している。なお、傾斜部136に前部196を含める。
【0039】
また、図6〜図8に示す通り、後部141を締結する締結ブラケット152を有する。 締結ブラケット152は、断面U状で、開口を下方に向け前壁75に溶接(溶接部154)で接合されている。
後部141には、ボルト155を通して締結力(軸力)を伝える締結力伝達部156を形成している。
【0040】
傾斜部136および傾斜部136近傍の中央水平部135は、図9、図10に示す通り、屈曲衝撃吸収部材81内に嵌り、溶接を施すことで接合されている。
【0041】
屈曲衝撃吸収部材81は、鋼板を塑性加工したもので、図7、図9、図10〜図12に示す通り、断面U字状の吸収フレーム部91にフランジ部197を形成し、開口を車両11の下方へ向け配置されている。
【0042】
屈曲衝撃吸収部材81の峰部81aには、ビード81bを形成している。そして、下部緩衝バー部材137を嵌めた部位では下部緩衝バー部材137の天部137aに屈曲衝撃吸収部材81を接触させている。その結果、屈曲衝撃吸収部材81の強度を設定することができる。
【0043】
屈曲衝撃吸収部材81の吸収前部198(下部緩衝バー部材137を嵌めていない残りの部位)を正面枠部(バルクヘッド)37のフロントバルクヘッドロアクロスメンバ66に、フロントバルクヘッドロアクロスメンバ66のナットプレート201にボルト202をねじ込むことで締結している。
屈曲衝撃吸収部材81の前方には衝撃吸収突出部材138を前述したように設けている。
【0044】
屈曲衝撃吸収部材81の前方に衝撃吸収突出部材138を屈曲衝撃吸収部材81を延ばすように設けている(図9)。
「屈曲衝撃吸収部材81を延ばすように」とは、車両平面視(図9の裏から見た視点)、屈曲衝撃吸収部材81の軸線81aと衝撃吸収突出部材138の軸線138aとを一致させている。また、車両側面視(図10の視点)、屈曲衝撃吸収部材81の上面82の車両上下方向(Z軸方向)の高さと衝撃吸収突出部材138の下端138bの高さ(Z軸方向)を一致させている。
【0045】
衝撃吸収突出部材138は、図9〜図11に示すように、鋼板を塑性加工したもので、車両側面視(図10の視点)、三角形で、前方へ向け先細りに形成されている。
【0046】
また、衝撃吸収突出部材138は吸収本体138cに連なる上フランジ205、ベースフランジ206を形成したものである。ベースフランジ206をフロントバルクヘッドロアクロスメンバ66の前壁部66aに重ねて接合した。
そして、上フランジ205を足払いプレート68に重ねて接合し、足払いプレート68とで閉断面形状(図10)を形成している。
【0047】
足払いプレート68は、図14に示す通り、鋼板を塑性加工したもので、正面枠部(バルクヘッド)37のフロントバルクヘッドロアクロスメンバ66に接合する根本端部208と、根本端部208に連続する衝撃変形部211と、衝撃変形部211に連続した正面先端部212と、衝撃変形部211に開けた開口213と、開口213間に設けたビード146と、を備える。
【0048】
ビード146は、溝状に形成した部位で、開口146aを下方へ向け、車両11の前後に根本端部208から正面先端部212まで延び、高さh、幅wで形成されている。ビード146を形成することによって、足払いプレート68の強度を確保している。
その結果、足払いプレート68の正面先端部212が下がるたわみを抑制することができ、且つ、吸収する衝撃(荷重)の大きさを設定することができる。
【0049】
次に、実施例に係る車体前部12の作用を説明する。
車体前部12の衝撃を吸収する機構を説明する(図15参照)。
車体前部12では、車両11の正面79(図1)に他の自動車など障害物が接触すると、前から順に、足払いプレート68、衝撃吸収突出部材138、屈曲衝撃吸収部材81、下部緩衝バー部材137が変形することによって、車両11の変形量の長さを短くしつつ、衝撃(荷重)を吸収することができる。
呼称を変えていうと、車両11のクラッシャブルゾーンのストロークを短くしつつ、衝撃(荷重)を吸収することができる。
【0050】
具体的には、図15(a)に示す車体前部12に障害物が接触し、正面に衝撃(荷重)が矢印d1のように入力されると、図15(b)に示す通り、足払いプレート68が変形する。
ほぼ同時に、衝撃吸収突出部材138も圧縮変形する。
【0051】
足払いプレート68および衝撃吸収突出部材138は、正面枠部(バルクヘッド)37やフロントサイドフレーム16、17に衝撃(荷重)を伝えるため、屈曲衝撃吸収部材81より先に変形し始める。
その結果、車両11の変形量(衝撃吸収代(クラッシャブルゾーン))の長さ(ストローク)を短くしつつ、比較的小さい衝撃を吸収することができる。
【0052】
続いて、図15(c)に示す通り、屈曲衝撃吸収部材81が下部緩衝バー部材137に重なる境界部(重なることで板の厚さが変化する部位)81c(図10参照)から上面を谷折りするよう折れ曲がる。
【0053】
入力される屈曲衝撃吸収部材81の前部は、境界部より上位であり、偏心しているため、上面を谷折りするように曲がる。
また、境界部は、下部緩衝バー部材137に重ねることで、板厚が変化しているため、荷重が集中し、折れの起点となる。
【0054】
最後に、図15(d)に示す通り、下部緩衝バー部材137が変形する。下方に偏心している中央水平部135と後部141の境またはその近傍から上面を谷折りするように曲がって折れる。
【0055】
このように、車体前部12では、前から順に、足払いプレート68、衝撃吸収突出部材138、屈曲衝撃吸収部材81、下部緩衝バー部材137が変形するので、衝撃(荷重)を吸収することができる。
【0056】
また、屈曲衝撃吸収部材81の上方に設けた空間にエンジン補機(例えば、コンプレッサー)18a(図1参照)を配置することができる。
【0057】
さらに、車両11の正面79から下部緩衝バー部材137に衝撃(荷重)が伝わると、下部緩衝バー部材137から前壁75を介して近傍のロアアーム27に伝わる。そして、ロアアーム27からサブフレーム15の後締結部98、後フレーム締結部44を介して車体14に衝撃(荷重)を分散することができる(図4)。
【産業上の利用可能性】
【0058】
本発明の車両の車体前部は、自動車に好適である。
【符号の説明】
【0059】
11…車両、12…車体前部、15…サブフレーム、16…左のフロントサイドフレーム、17…右のフロントサイドフレーム、21…サスペンション装置(前サスペンション装置)、27…ロアアーム、37…正面枠部(バルクヘッド)、45…床(アンダボデー)、68…足払いプレート、71…車室、74…サイドビーム、75…サブフレームの前壁、79…車両の正面、81…屈曲衝撃吸収部材、82…屈曲衝撃吸収部材の上面、83…正面枠部(バルクヘッド)の下面、85…サブフレームの前アーム連結部、135…中央水平部、136…傾斜部、137…下部緩衝バー部材、138…衝撃吸収突出部材、141…下部緩衝バー部材の後部。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両の車室に連続する車体前部の左右のフロントサイドフレームに前記車室の床の前に配置され左右に延びるサブフレームを取付けた車体前部において、
前記サブフレームから前記車体前部の正面枠部まで延びるサイドビームを有し、
前記サイドビームは、前記車両の前方へ向く前記サブフレームの前壁に接合して前方へ延ばした中央水平部を形成し、該中央水平部に連ね斜め上方へ延びる傾斜部を形成した下部緩衝バー部材と、前記傾斜部及び前記正面枠部に接合し、前記車両の正面に入力される衝撃に対し強度が前記下部緩衝バー部材より小さい屈曲衝撃吸収部材と、を備えていることを特徴とする車両の車体前部。
【請求項2】
前記正面枠部の下面に前記屈曲衝撃吸収部材の上面を接触させて結合していることを特徴とする請求項1記載の車両の車体前部。
【請求項3】
前記屈曲衝撃吸収部材の前方に衝撃吸収突出部材を前記屈曲衝撃吸収部材を延ばすように設けていることを特徴とする請求項1又は請求項2記載の車両の車体前部。
【請求項4】
前記サブフレームは、前記車両の前方へ向く前壁と、該前壁に連なり左右の端部にサスペンション装置のロアアームを支持している前アーム連結部を有し、
前記下部緩衝バー部材の後部を前記前アーム連結部の前記前壁に結合していることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項記載の車両の車体前部。
【請求項5】
前記正面枠部から車両前方へ足払いプレートを張りだし、
前記衝撃吸収突出部材は前記足払いプレートに一体的に接合していることを特徴とする請求項3又は請求項4記載の車両の車体前部。
【請求項1】
車両の車室に連続する車体前部の左右のフロントサイドフレームに前記車室の床の前に配置され左右に延びるサブフレームを取付けた車体前部において、
前記サブフレームから前記車体前部の正面枠部まで延びるサイドビームを有し、
前記サイドビームは、前記車両の前方へ向く前記サブフレームの前壁に接合して前方へ延ばした中央水平部を形成し、該中央水平部に連ね斜め上方へ延びる傾斜部を形成した下部緩衝バー部材と、前記傾斜部及び前記正面枠部に接合し、前記車両の正面に入力される衝撃に対し強度が前記下部緩衝バー部材より小さい屈曲衝撃吸収部材と、を備えていることを特徴とする車両の車体前部。
【請求項2】
前記正面枠部の下面に前記屈曲衝撃吸収部材の上面を接触させて結合していることを特徴とする請求項1記載の車両の車体前部。
【請求項3】
前記屈曲衝撃吸収部材の前方に衝撃吸収突出部材を前記屈曲衝撃吸収部材を延ばすように設けていることを特徴とする請求項1又は請求項2記載の車両の車体前部。
【請求項4】
前記サブフレームは、前記車両の前方へ向く前壁と、該前壁に連なり左右の端部にサスペンション装置のロアアームを支持している前アーム連結部を有し、
前記下部緩衝バー部材の後部を前記前アーム連結部の前記前壁に結合していることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項記載の車両の車体前部。
【請求項5】
前記正面枠部から車両前方へ足払いプレートを張りだし、
前記衝撃吸収突出部材は前記足払いプレートに一体的に接合していることを特徴とする請求項3又は請求項4記載の車両の車体前部。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【公開番号】特開2012−153260(P2012−153260A)
【公開日】平成24年8月16日(2012.8.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−14271(P2011−14271)
【出願日】平成23年1月26日(2011.1.26)
【出願人】(000005326)本田技研工業株式会社 (23,863)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年8月16日(2012.8.16)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年1月26日(2011.1.26)
【出願人】(000005326)本田技研工業株式会社 (23,863)
【Fターム(参考)】
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