説明

車両の障害物検知装置

【課題】障害物が一時的に消滅したときに車両の作動機器が誤って作動するのを防いで運転時の煩わしさをなくして安全且つスムーズに運転を行えるようにする。
【解決手段】自車両1の前方の障害物を検知するミリ波レーダ3(障害物検知手段)と、このミリ波レーダ3による障害物の検知状態に応じて車両の作動機器(ブレーキ手段14,警報装置13やシートベルトプリテンショナ15)を制御する制御ユニット10(作動制御手段)とを設ける。ミリ波レーダ3によって検出されていた障害物が検出されなくなったときに、この障害物の位置を推定する障害物位置推定手段24を設ける。この障害物位置推定手段24が作動しているときには、推定された障害物による制御ユニット10の制御を停止する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自車両の前方に存在する先行車両等の障害物との接触を回避する等のために用いられる車両用障害物検出装置に関し、特に、レーダ装置等の障害物検知手段を用いて自車両と障害物との距離等を検出するものの改良に係わる。
【背景技術】
【0002】
従来より、自車両前方の障害物を検知する障害物検知手段と、該障害物検知手段による障害物の検知状態に応じて車両の作動機器を制御する作動制御手段とを備えた車両の障害物検知装置は知られている。
【0003】
上記障害物検知手段によって自車両前方の障害物を検出できなくなる原因は色々ある。例えば自車両が大きなピッチング運動をすることによって一時的に障害物が検出できなくなる場合もあれば、前方の車両の陰にその前方の車両が入ってこの前方の車両を検出することができなくなる場合もある。さらに、道路形状の変化している場合(自車両前方で下り坂になったり、カーブしている場合等)にも前方の車両が検出されなくなる。このような種々の原因で検出できなくなる障害物の推定を一律な態様で行なうことは問題がある。
【0004】
そこで、例えば、特許文献1では、自車両の前方の障害物をレーダ装置によって検出する車両用障害物検知装置において、レーダ装置によって検出されていた障害物が検出されなくなったときに、それまでに障害物についてレーダ装置によって得られた情報に基づいて、現在の自車両と当該障害物との相対関係を推定する推定手段と、障害物が検出されなくなったときに、当該障害物についてのそれまでの情報とレーダ装置によって得られる他の障害物についての情報とに基づいて、当該障害物が物の陰に入って検出されなくなったものか否かを判定する判定手段と、当該障害物が物の陰に入って検出されなくなったと判定された場合とそうでない場合とで推定手段による当該障害物の推定方法を変更する推定方法変更手段とを備えたものが開示されている。
【特許文献1】特開平7−215147号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記特許文献1のような車両の障害物検知装置においても、障害物が一時的に消滅したときに、実際には存在しない推定された障害物の存在により、車両の作動機器(警報装置、ブレーキ、シートベルトプリテンショナ等)が作動してしまう場合があり、煩わしいという問題がある。
【0006】
本発明は、かかる点に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、障害物が一時的に消滅したときに車両の作動機器が誤って作動するのを防いで運転時の煩わしさをなくして安全且つスムーズに運転を行えるようにすることにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記の目的を達成するために、この発明では、推定された障害物による作動制御手段の制御を停止するようにした。
【0008】
具体的には、第1の発明では、自車両前方の障害物を検知する障害物検知手段と、該障害物検知手段による障害物の検知状態に応じて車両の作動機器を制御する作動制御手段とを備えた車両の障害物検知装置を対象とし、
上記障害物検知手段によって検出されていた障害物が検出されなくなったときに、該障害物の位置を推定する障害物位置推定手段を備え、
上記障害物位置推定手段が作動しているときには、推定された障害物による作動制御手段の制御を停止するように構成されている。
【0009】
すなわち、道路形状の変化や、他の障害物の存在等により、障害物検知手段が障害物を一時的に検知できない場合には、障害物位置推定手段によって障害物の現在の位置が推定される。この推定が行われている間は、障害物がそこにあると判断する。しかし、上記の構成によると、障害物位置推定手段が作動しているときには、推定された障害物による作動制御手段の制御を停止するので、この推定された障害物が例えば設定された領域に侵入したと推定される場合でも、車両の作動機器が作動しない。したがって、障害物の推定の誤りにより、実際には障害物が存在しないような場合の作動機器の誤動作が防止される。なお、障害物が実際に自車両に近付いているような場合には、障害物検知手段によって再びその障害物が検知されるので、そのような場合には、その検知結果に基づいて作動制御手段が作動機器を作動させる。
【0010】
第2の発明では、上記障害物位置推定手段は、所定時間作動し、その後においても障害物が検知されないときには、その障害物が消失したものと判断するように構成されている。
【0011】
上記の構成によると、障害物位置推定手段は、障害物検知手段によって検出されていた障害物が検出されなくなったときに、この障害物の位置を推定するが、所定時間推定を行った後にも、実際に障害物検知手段が障害物を検出しないときは、その障害物は消失したものと判断し、その推定を停止する。このため、推定誤差による誤作動の発生がさらに効果的に防止される。逆に、所定時間推定を行っているときに障害物を検出したときには、推定されていた障害物と実際に検知した障害物は同一であると判断する。この場合、その検知結果に応じて作動制御手段が作動機器を作動させる。
【0012】
第3の発明では、上記作動機器は、乗員に危険状態を報知する報知手段とする。
【0013】
上記の構成によると、障害物の推定の誤りにより、実際には障害物が存在しないような場合の報知手段の誤動作が防止されるので、不必要な報知が行われなくなり、運転時の煩わしさがなくなる。
【0014】
第4の発明では、上記作動機器は、車両に制動力を加えるブレーキ手段とする。
【0015】
上記の構成によると、障害物の推定の誤りにより、実際には障害物が存在しないような場合のブレーキ手段の誤動作が防止されるので、不必要な制動が行われなくなり、運転時の煩わしさがなくなる。
【0016】
第5の発明では、上記作動機器は、シートベルトを強制的に引き込むシートベルトプリテンショナとする。
【0017】
上記の構成によると、障害物の推定の誤りにより、実際には障害物が存在しないような場合のシートベルトプリテンショナの誤動作が防止されるので、不必要にシートベルトを引き込んで乗員を拘束することがなくなり、運転時の煩わしさがなくなる。
【0018】
第6の発明では、上記障害物検知手段は、ミリ波レーダとする。
【0019】
上記の構成によると、ミリ波レーダは、ドップラー周波数で直接的に障害物の相対速度を測ることができるので、複数の障害物があるような場合でも、各障害物を取り違えたりしない。
【発明の効果】
【0020】
以上説明したように、上記第1の発明によれば、障害物位置推定手段が作動しているときに推定された障害物による作動制御手段の制御を停止し、障害物の推定の誤りにより、実際には障害物が存在しないような場合の作動機器の誤動作を防止している。このため、障害物が一時的に消滅したときに車両の作動機器が誤って作動するのを防いで運転時の煩わしさをなくして安全且つスムーズに運転を行うことができる。
【0021】
上記第2の発明によれば、障害物位置推定手段は、所定時間推定を行った後、障害物検知手段が障害物を検出しないときにその障害物は消失したものと判断して推定を停止するようにしている。このため、障害物が一時的に消滅したときの誤った推定の発生をさらに防止することができるので、確実に車両の作動機器が誤って作動するのを防いで運転時の煩わしさをなくして安全且つスムーズに運転を行うことができる。
【0022】
上記第3の発明によれば、作動機器を乗員に危険状態を報知する報知手段とし、障害物の推定の誤りによって報知手段が作動しないようにしている。このため、運転時の煩わしさを防いで、安全且つスムーズに運転を行うことができる。
【0023】
上記第4の発明によれば、作動機器を車両に制動力を加えるブレーキ手段とし、障害物の推定の誤りによって不必要に制動力を加えないようにしている。このため、運転時の煩わしさをなくして安全且つスムーズに運転を行うことができる。
【0024】
上記第5の発明によれば、作動機器をシートベルトを強制的に引き込むシートベルトプリテンショナとし、障害物の推定の誤りによって不必要にシートベルトを巻き込まないようにしている。このため、運転時の煩わしさをなくして安全且つスムーズに運転を行うことができる。
【0025】
上記第6の発明によれば、障害物検知手段をミリ波レーダとしている。このため、複数の障害物があるような場合でも、各障害物を取り違えたりしないので、障害物の誤検出を防いで安全且つスムーズに運転を行うことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0026】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。
【0027】
図1に本発明の実施形態にかかる車両の障害物検知装置2を備えた車両1を示す。この障害物検知装置2は、自車両1の前方の障害物を検知する障害物検知手段としてのミリ波レーダ3を備えている。ミリ波は、鋭い指向性を持たせることができたり、高速な通信用に広帯域を確保できたり、部品を小型化・マイクロ化できたりする等の特長を有している。図3に太線で示すように、ミリ波レーダ3の検知範囲は、距離が略100m以内で、放射状に広がるものとなっている。なお、本実施形態では、ミリ波レーダ3は、車両1の幅方向中心よりも右側にオフセットして配置されているが、必ずしもオフセットされている必要はない。また、障害物検知手段を赤外線レーザーなどで構成してもよい。
【0028】
図2に示すように、障害物検知装置2は、乗員による車両1の所定の運転操作状態を検知する運転操作状態検知手段5を備えている。所定の運転操作状態とは、本実施形態では、車両1が進行方向に対して曲がる運転操作状態とし、具体的には、カーブ時やレーンチェンジ時等のステアリング6を切る操作等により車両1が曲がる運転操作状態を意味する。
【0029】
障害物検知装置2は、上記ミリ波レーダ3による障害物の検知状態に応じて後述する車両1の作動機器を制御する作動制御手段としての制御ユニット10を備えている。この制御ユニット10は、運転操作状態検知手段5や衝突センサー11等の各種センサーからの情報により、作動機器を作動させる役割を有している。
【0030】
障害物検知装置2は、運転操作状態検知手段5で得られた検知結果から作動機器の作動タイミングを切り換える作動タイミング切換手段12を備えている。本実施形態では、作動機器は、乗員に危険状態を報知する報知手段とし、この報知手段は、例えば、ホーン等の警報装置13よりなる。なお、報知手段は、インストルメントパネル上の警告ランプ、カーナビ上の警告表示等で構成してもよい。
【0031】
図3に示すように、警報装置13は、第1の作動タイミングとしてのLONG警報エリアA1(障害物検知領域)と、この第1の作動タイミングよりも遅い第2の作動タイミングとしてのSHORT警報エリアA2(障害物検知領域)で作動するように構成されている。上記作動タイミング切換手段12が、LONG警報エリアA1をSHORT警報エリアA2に切り換えるように構成されている。このLONG警報エリアA1は、ミリ波レーダ3によって障害物50を検知する領域が広範囲のもので、SHORT警報エリアA2は、その領域がLONG警報エリアA1に比べて狭いものとなっている。
【0032】
上記LONG警報エリアA1やSHORT警報エリアA2の車幅方向の領域は、ほぼ車幅Lと同じ領域に制限されている。また、先端は左右中心線から車幅Lの±10%の領域を残し、そこから後方へ広がるようにカットされた車両1の先端までの山形の領域となっている。すなわち、LONG警報エリアA1は、車両1の車幅方向端部からのオフセット40%かつ衝突まで2秒の点P1と、オフセット0%かつ衝突まで0.8秒の点P4とを結んだ線よりも外側がカットされている。SHORT警報エリアA2は、車両1の車幅方向端部からのオフセット40%かつ衝突まで1.6秒の点P2と、オフセット0%かつ衝突まで0.8秒の点P4とを結んだ線よりも外側がカットされた領域となっている。このように先端側の左右の角部がカットされているのは、自車両1から近距離の障害物50はステアリング6の操作等によって回避し難いが、遠距離且つ車両1の左右中心側の障害物50はステアリング6の操作等によって回避し易いためである。
【0033】
障害物検知装置2は、作動タイミング切換SW(図示せず)を備えている。運転者が頻繁に警報装置13が作動するのを嫌う場合に、この作動タイミング切換SWをSHORTに設定することで、作動タイミング切換手段12の作動にかかわらず、常に作動タイミングがSHORT警報エリアA2に設定されるようになっている。
【0034】
車両1は、作動機器として車両1に制動力を加えるブレーキ手段14やシートベルト16のたるみを取り、乗員の拘束力を高めるシートベルトプリテンショナ15も備えている。但し、本実施形態では、ブレーキ手段14やシートベルトプリテンショナ15の作動タイミングを作動タイミング切換手段12によって切り換えない場合を説明している。
【0035】
具体的には、ミリ波レーダ3が、障害物50が所定距離(衝突まで1.0秒の点P3)の領域に侵入したと判断したときに、制御ユニット10によって、ブレーキ手段14に信号が送られ、比較的弱い、運転者に注意を促すための一次ブレーキが作動されるようになっている。さらに、ミリ波レーダ3が障害物50がさらに近距離(衝突まで0.6秒の点P5)の領域に侵入したと判断したときに、制御ユニット10によって、ブレーキ手段14に信号が送られ、衝突を回避するための強い二次ブレーキが作動されるようになっている。これら一次ブレーキ及び二次ブレーキの検知領域A3,A4(障害物検知領域)も上記警報エリアA1,A2と同様に先端は左右中心線から車幅Lの±10%の領域を残し、そこから後方へ広がるようにカットされている。具体的には、一次ブレーキエリアA3は、オフセット10%の操舵回避時間の点(図示せず)と、オフセット40%かつ衝突まで1.0秒までの点P3とを結んだ線よりも外側がカットされた車両1の先端までの山形の領域となっている。二次ブレーキエリアA4は、オフセット10%の操舵回避時間の点(図示せず)と、オフセット40%かつ衝突まで0.6秒の点P5とを結んだ線よりも外側がカットされた車両1の先端までの山形の領域となっている。また、二次ブレーキエリアA4は、衝突後0.2秒までの範囲も含まれている。これは、ミリ波レーダ3の計測のばらつきを吸収するための制御継続時間であり、衝突後にブレーキ手段14の制動が解除されることを防ぐ等の理由により設けられている。
【0036】
なお、図示しないが、一次ブレーキの作動タイミングを上記警報装置13と同様に作動タイミング切換手段12によってLONG(広い領域)とSHORT(狭い領域)で切換可能としてもよい。このことで、そのまま検知された運転操作を行えば障害物50が自車両1に衝突しないような場合に不必要に制動力を加えないようにすることができる。
【0037】
シートベルトプリテンショナ15は、第1シートベルトプリテンショナ15aと第2シートベルトプリテンショナ15bとで構成されており、ミリ波レーダ3によって、障害物50が所定距離(衝突まで0.4秒の点P6)まで近付いたことを検知したときに第1シートベルトプリテンショナ15aによってシートベルト16をリトラクタ(図示せず)に引き込んで乗員を所定の張力(衝突回避操作に影響しない程度)で拘束するようになっている。第2シートベルトプリテンショナ15bは、車両が衝突したことを衝突センサー11によって検出したときに、さらにシートベルト16を引き込んで乗員を強い拘束力で拘束するものである。なお、第1シートベルトプリテンショナ15aは電動モータ(図示せず)によってシートベルト16を引き込むように構成されている。第2シートベルトプリテンショナ15bは火薬などのインフレータ(図示せず)によってシートベルト16を引き込むように構成されている。
【0038】
なお、作動タイミング切換手段12によって、第1シートベルトプリテンショナ15aの作動タイミングを切換可能とし、障害物検知領域として、広い検知領域のLONG(例えば、図3の一次ブレーキエリアA3)と、狭い検知領域のSHORT(同図の二次ブレーキ1エリアA4)とを設定し、LONG領域で弱くシートベルト16を引き込み、SHORT領域で強く引き込むようにしてもよい。このことで、そのまま検知された運転操作を行えば障害物50が自車両1に衝突しないような場合に不必要にシートベルト16を巻き込まないようにすることができる。
【0039】
本実施形態では、運転操作状態検知手段5として、ステアリング6の操舵角を示す舵角θfを検知する舵角センサー20や、舵角θfの単位時間当たりの変化を示す舵角速度dθf/dsecを検知する舵角速度検出手段21や、車両1が進む方向に対して横方向に受ける加速度、すなわち横Gを検知する横Gセンサー22やステアリング6の操舵角を示す舵角θfの所定時間当たりの積分値を検知する舵角積分値検出手段(本実施形態では、制御ユニット10が兼ねている)が設けられている。舵角θfや横Gは、例えば、右側が正、左側が負として制御ユニット10に入力される。また、車両1の旋回半径が所定値以下であることを検知する旋回半径検知手段23も備えている。旋回半径検知手段23をGPSからの信号を受けて判断するものとしてもよい。なお、上記舵角速度検出手段21は、制御ユニット10によって兼ねさせることもできる。
【0040】
なお、運転操作状態検知手段5は、舵角θf、舵角速度dθf/dt、舵角θfの所定時間当たりの積分値、横G、車両1の旋回半径Rを検知しているが、その全てを検知する必要はなく、その一部のみを検知するものでもよい。また、運転操作状態検知手段5の検知対象を車速や道路状況に対応して切り換え、その検知対象が条件を満たしたときに、作動タイミング切換手段12を作動させるように構成してもよい。具体的には、制御ユニット10が上記複数の運転操作状態検知手段5からの検知信号を車両1の速度や道路状態に応じて取捨選択して、作動タイミング切換手段12を作動させるようにしてもよい。このようにすることで、車速や道路状態に応じて最適な検知対象を選択することができるので、障害物50の誤検出を防いで安全且つスムーズに運転を行うことができる。
【0041】
そして、本発明の特徴として、障害物検知装置2は、上記ミリ波レーダ3によって検知されていた障害物50が所定時間検知されなくなったときに、この障害物50の位置を推定して補間する障害物位置推定手段24を備えている。この障害物位置推定手段24が作動中には、誤動作防止のために障害物検知装置2の後述するPCS制御は行われないように構成されている。
【0042】
上記障害物位置推定手段24は、所定時間(例えば、7秒間)作動し、その後においても障害物50が検知されないときには、その障害物50が消失したものと判断するように構成されている。逆に、所定時間推定を行っているときに障害物50を検出したときには、推定されていた障害物50と実際に検知した障害物50は同一であると判断する。この場合、その検知結果に応じて制御ユニット10が作動機器を作動させるように構成されている。
【0043】
なお、以下に説明するように、障害物50が実際に自車両1に近付いているような場合には、ミリ波レーダ3によって再びその障害物50が検知されるので、そのような場合には、その検知結果に基づいて制御ユニット10が作動機器を作動させるようになっている。
【0044】
−PCS制御−
次に、本実施形態にかかる車両の障害物検知装置2の制御ユニット10が行うPCS制御(PRE CLASH SAFTY SYSYTEM )について図4を用いて説明する。
【0045】
まず、ステップS1において、制御ユニット10がミリ波レーダ3からの出力を受信し、障害物50の物標位置及び距離の推定のための計算をする。
【0046】
次いで、ステップS2において、その障害物50が二次ブレーキエリアA4にあるか否かを判断する。二次ブレーキエリアA4にあれば、ステップS3で直ちに二次ブレーキを実行し、強くブレーキ手段14が作動し、リターンに進む。
【0047】
一方、二次ブレーキエリアA4にない場合には、ステップS4において、ブレーキペダル(図示せず)が踏まれているか否か、また、障害物位置推定手段24によって補間が行われているか否かが判定される。ブレーキペダルが踏まれてブレーキ手段14が作動し、又は障害物位置推定手段24によって補間が行われている場合には、推定された障害物50による制御ユニット10の制御を停止させるために、リターンに飛ぶ。逆に、ブレーキが踏まれず、補間も行われていないときには、ステップS5に進む。
【0048】
ステップS5において、作動タイミング切換手段12によって、舵角θfの絶対値がα1(例えば90°)よりも大きい(|θf|>α1)か、舵角速度dθf/dtの絶対値がα2(例えば、50°/sec )よりも大きい(|dθf/dt|>α2)か、舵角θfの所定時間当たりの積分値の絶対値がα3(例えば、90°)よりも大きい(|Σθf|>α3)か、横Gの絶対値がα4(例えば、6m/sec2)よりも大きい(|横G|>α4)か、車両1の旋回半径Rが175mよりも小さい(R<175)かのいずれかの条件が満たされているかを判定する。全て満たさない場合には、ステップS6に進み、1つでも条件が満たされているときには、ステップS7に進む。
【0049】
ステップS6では、作動タイミング設定SWがSHORTであるか否かが判定され、SHORTの場合には、ステップS7に進み、SHORTでない、すなわち、LONGの場合には、ステップS8に進む。
【0050】
ステップS7では、作動タイミングがSHORTに設定される。なお、ステップS6で設定SWがSHORTの場合は、ステップS7でそのままSHORTが継続される。
【0051】
ステップS8では、障害物50が一次ブレーキエリアA3内にあるか否かが判定され、範囲内であれば、ステップS9に進み、範囲外であれば、ステップS10に進む。
【0052】
ステップS9では、ブレーキ手段14に信号が送られ、一次ブレーキが実行され、ブレーキ手段14により車両1に軽い制動力が加えられ、リターンに進む。
【0053】
ステップS10では、障害物50が警報エリア(警報エリアA1,A2)内にあるか否かが判定される。範囲内にあれば、ステップS11に進み、範囲外であれば、リターンに進む。
【0054】
ステップS11では、警報装置13に信号が送られ、警報が実行され、運転者に報知される。その後、リターンに進む。
【0055】
−実施形態の効果−
したがって、本実施形態にかかる車両の障害物検知装置2によると、障害物位置推定手段24が作動しているときに推定された障害物50による制御ユニット10の制御を停止し、障害物50の推定の誤りにより、実際には障害物50が存在しないような場合の作動機器(ブレーキ手段14,警報装置13やシートベルトプリテンショナ15)の誤動作を防止している。このため、障害物50が一時的に消滅したときに車両の作動機器が誤って作動するのを防いで運転時の煩わしさをなくして安全且つスムーズに運転を行うことができる。
【0056】
また、障害物位置推定手段24は、所定時間推定を行った後、ミリ波レーダ3が障害物50を検出しないときにその障害物50は消失したものと判断して推定を停止するようにしている。このため、障害物50が一時的に消滅したときの誤った推定の発生をさらに防止することができるので、確実に車両の作動機器が誤って作動するのを防いで運転時の煩わしさをなくして安全且つスムーズに運転を行うことができる。
【0057】
また、障害物検知手段をミリ波レーダ3としている。このため、複数の障害物50があるような場合でも、各障害物50を取り違えたりしないので、障害物50の誤検出を防いで安全且つスムーズに運転を行うことができる。
【0058】
なお、以上の実施形態は、本質的に好ましい例示であって、本発明、その適用物や用途の範囲を制限することを意図するものではない。
【産業上の利用可能性】
【0059】
以上説明したように、本発明は、ミリ波レーダなどの障害物検知手段と、この障害物検知手段による障害物の検知状態に応じて車両の作動機器を制御する作動制御手段とを備えた車両の障害物検知装置について有用である。
【図面の簡単な説明】
【0060】
【図1】本発明の実施形態にかかる車両の障害物検知装置を備えた車両の概念図である。
【図2】車両の障害物検知装置を示すブロック図である。
【図3】ミリ波レーダの検出範囲を示す概念図である。
【図4】PCS制御を示すフローチャートである。
【符号の説明】
【0061】
1 車両
2 障害物検知装置
3 ミリ波レーダ(障害物検知手段)
10 制御ユニット(作動制御手段)
13 警報装置(作動機器、報知手段)
14 ブレーキ手段
15 シートベルトプリテンショナ
24 障害物位置推定手段
50 障害物

【特許請求の範囲】
【請求項1】
自車両前方の障害物を検知する障害物検知手段と、該障害物検知手段による障害物の検知状態に応じて車両の作動機器を制御する作動制御手段とを備えた車両の障害物検知装置であって、
上記障害物検知手段によって検出されていた障害物が検出されなくなったときに、該障害物の位置を推定する障害物位置推定手段を備え、
上記障害物位置推定手段が作動しているときには、推定された障害物による作動制御手段の制御を停止するように構成されていることを特徴とする車両の障害物検知装置。
【請求項2】
請求項1に記載の車両の障害物検知装置において、
上記障害物位置推定手段は、所定時間作動し、その後においても障害物が検知されないときには、その障害物が消失したものと判断するように構成されていることを特徴とする車両の障害物検知装置。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の車両の障害物検知装置において、
上記作動機器は、乗員に危険状態を報知する報知手段であることを特徴とする車両の障害物検知装置。
【請求項4】
請求項1又は2に記載の車両の障害物検知装置において、
上記作動機器は、車両に制動力を加えるブレーキ手段であることを特徴とする車両の障害物検知装置。
【請求項5】
請求項1又は2に記載の車両の障害物検知装置において、
上記作動機器は、シートベルトを強制的に引き込むシートベルトプリテンショナであることを特徴とする車両の障害物検知装置。
【請求項6】
請求項1乃至5のいずれか1つに記載の車両の障害物検知装置において、
上記障害物検知手段は、ミリ波レーダであることを特徴とする車両の障害物検知装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2007−153196(P2007−153196A)
【公開日】平成19年6月21日(2007.6.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−353374(P2005−353374)
【出願日】平成17年12月7日(2005.12.7)
【出願人】(000003137)マツダ株式会社 (6,115)
【Fターム(参考)】