説明

車両サスペンション用アッパーサポートおよびその製造方法

【課題】シールゴムが確実にシール性能を発揮していることを視認することができる車両サスペンション用アッパーサポートを提供する。
【解決手段】中間筒金具31は、下側外筒金具10の筒状部11の内周面に圧入される中間筒状部311、および、中間筒状部311の上端から径方向外方に屈曲された屈曲部312を備える。そして、少なくとも中間筒金具31の屈曲部312に固着され、中間筒金具31の中間筒状部311が下側外筒金具10の筒状部11に圧入されることに伴い下側外筒金具10と中間筒金具31の屈曲部312との間に挟圧されるシールゴム36を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両サスペンション用アッパーサポートおよびその製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来の車両サスペンション用アッパーサポートとして、例えば、実登2521763号公報(特許文献1)および特開2003−35333号公報(特許文献2)に記載されたものがある。この種の車両サスペンション用アッパーサポートは、下側外筒金具の筒状部に中間筒金具を圧入して固定している。従って、下側外筒金具と上側外筒金具との取付隙間や上側外筒金具の中央孔から中間筒金具が配置されている部位に、水などが侵入するおそれがある。
【0003】
中間筒金具が配置されている部位に水などが侵入すると、中間筒金具と下側外筒金具とに錆により、板厚が減少するおそれがある。そうすると、中間筒金具と下側外筒金具の圧入による保持力が低下して、中間筒金具が下側外筒金具から抜けるおそれがある。その結果、適切な防振効果を発揮できないことに加えて、異音を発生することになる。このような問題を解決するために、特許文献1および特許文献2には、下側外筒金具と上側外筒金具と中間筒金具の間にシールゴムを挟み込んでいる。これにより、中間筒金具と下側外筒金具との間に、水が侵入することを防止している。
【0004】
ところで、上記構成とは異なる車両サスペンション用アッパーサポートとして、特開2003−278822号公報(特許文献3)には、中間筒金具が上側外筒金具の筒状部に圧入などにより固定されているものが記載されている。そして、この構成においては、上側外筒金具の中央孔から中間筒金具が配置されている部位に水などが侵入するおそれがある。これに対して、中間筒金具の上端にシールゴムを配置して、上側外筒金具の下面に当接させることで、シールしている。
【特許文献1】実登2521763号公報
【特許文献2】特開2003−35333号公報
【特許文献3】特開2003−278822号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ここで、特許文献1および2においては、シールゴムは、下側外筒金具に中間筒金具を圧入した後に、さらに上側外筒金具を取り付けた状態で、シール性能を発揮する状態となる。つまり、シールゴムがシール性能を発揮する状態を、視認することができない。従って、各構成部材の寸法精度を高精度に製造しなければならない。しかし、いくら高精度に製造したとしても、必ず製造誤差が生じるため、その製造誤差がシール性能へ影響を及ぼす可能性は残っていた。
【0006】
また、特許文献3においては、シールゴムは、上側外筒金具に中間筒金具を圧入することで、シール性能を発揮する状態となる。この場合、中間筒金具を上側外筒金具に圧入してしまうと、シールゴムを視認することはできない。中間筒金具を上側外筒金具に対して軸方向の位置を設計寸法通りに高精度に位置決めしなければ、シールゴムが適切なシール性能を発揮できない状態となるおそれがある。しかし、この位置決めについても、特許文献1および2における問題と同様に、やはり製造誤差による問題が生じる。
【0007】
本発明は、このような事情に鑑みてなされたものであり、シールゴムが確実にシール性能を発揮していることを視認することができる車両サスペンション用アッパーサポートおよびその製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
<車両サスペンション用アッパーサポート>
本発明の車両サスペンション用アッパーサポートは、筒状部、および、筒状部の上端から径方向外方に延在し且つ車両ボディに固定されるフランジ部を備える下側外筒金具と、下側外筒金具のフランジ部の上面側に重ね合わさるようにフランジ部に固定される上側外筒金具と、下側外筒金具の筒状部の内周面に圧入される中間筒状部、および、中間筒状部の上端から径方向外方に屈曲された屈曲部を備える中間筒金具と、中間筒金具の中間筒状部の径方向内方に離隔して配置され、車両サスペンションにおけるショックアブソーバのピストンロッドに固定される内筒金具と、中間筒金具の中間筒状部の内周面と内筒金具の外周面とを弾性連結する本体ゴム弾性体と、少なくとも中間筒金具の屈曲部に固着され、中間筒金具の中間筒状部が下側外筒金具の筒状部に圧入されることに伴い下側外筒金具と中間筒金具の屈曲部との間に挟圧されるシールゴムと、を備えることを特徴とする。
【0009】
本発明によれば、シールゴムは、中間筒金具の屈曲部と下側外筒金具との間に挟圧されている。つまり、シールゴムがシール性能を発揮するためには、中間筒金具の屈曲部と下側外筒金具との間に挟圧されていればよく、上側外筒金具は不要となる。さらに、シールゴムは、中間筒金具が下側外筒金具に対して圧入される側、すなわち下側外筒金具のフランジ側に位置している。従って、中間筒金具を下側外筒金具に圧入した後であっても、シールゴムを視認することができる。さらに言えば、シールゴムを視認しながら、中間筒金具を下側外筒金具に圧入していくことができる。このように、シールゴムを視認しながら、製造することができ、シールゴムが確実にシール性能を発揮する状態とすることができる。
【0010】
さらに、中間筒金具が、中間筒状部の上端から径方向外方に屈曲した屈曲部を備えている。そして、シールゴムが、この中間筒金具の屈曲部と下側外筒金具との間に挟圧されている。すなわち、シールゴムは、屈曲部の下面と下側外筒金具のフランジ部の上面との間に挟圧されることになる。このように、中間筒金具が屈曲部を備えることで、シールゴムが中間筒金具の下側外筒金具への圧入方向に挟圧されることになる。つまり、中間筒金具を下側外筒金具に圧入すればするほど、シールゴムに生じる圧縮力が大きくなる。そして、シールゴムに生じる圧縮力が大きくなるほど、シール性能が高くなる。このように、中間筒金具が屈曲部を備えることで、シールゴムが確実にシール性能を発揮できる。従って、中間筒金具と下側外筒金具との間に水が侵入することを防止でき、結果として防振性能の低下および異音の発生を防止できる。
【0011】
また、中間筒金具の屈曲部の上端に、外部に露出している露出部を有するとよい。中間筒金具は、下側外筒金具の筒状部に圧入する。従って、圧入の際に、中間筒金具を上側から押圧する必要がある。そこで、中間筒金具の屈曲部の上端に露出部を有することで、この露出部を圧入治具が押圧するようにできる。そして、圧入治具が露出部、すなわち、金属部分を押圧するため、中間筒金具の下側外筒金具に対する軸方向の位置決めを高精度にできる。
【0012】
そして、中間筒金具の屈曲部が露出部を有する場合には、以下のようにするとよい。すなわち、中間筒金具の屈曲部の上端に、本体ゴム弾性体およびシールゴムと一体成形されるゴムで被覆されている被覆部を有するとよい。このように被覆部を備えることで、例えば、本体ゴム弾性体を形成する金型部位にゴム注入口が設けられている場合、被覆部を通過して、シールゴムの部位にゴムを供給することができる。従って、被覆部を備えることで、本体ゴム弾性体とシールゴムとを確実に一体成形できる。その結果、製造コストが高くなることを防止できる。
【0013】
また、露出部および被覆部は、それぞれ複数であるとよい。つまり、露出部を見た場合に、露出部が、屈曲部の上端の一周のうち断続的に複数箇所存在していることになる。従って、圧入治具を複数箇所の露出部を押圧するようにできる。これにより、中間筒金具の下側外筒金具に対する軸方向の位置決め精度をより高くすることができる。
【0014】
さらに、露出部が複数ある場合に、被覆部の最大角度は、180度以下であるとよい。換言すると、露出部が、180度のうちで必ず2箇所存在していることになる。これにより、中間筒金具を下側外筒金具に圧入する際に、中間筒金具の軸中心がずれないように、圧入治具により中間筒金具を押圧することができる。つまり、安定して高精度に中間筒金具を下側外筒金具に圧入することができる。
【0015】
ここで、上述においては、中間筒金具の屈曲部の上端が露出部を有することとして説明した。露出部を有しない場合であっても、以下のようにすることもできる。すなわち、中間筒金具の屈曲部の上端に、本体ゴム弾性体およびシールゴムと一体成形されるゴムからなり、周方向に向かって厚肉部と薄肉部とを有するようにしてもよい。屈曲部の上端が完全に露出していないとしても、薄肉部を圧入治具により押圧することで、中間筒金具の下側外筒金具に対する軸方向の位置決めを高精度にできる。ここで、薄肉部は、圧入治具により中間筒金具を押圧する際に、弾性力をほとんど発揮しない程度とするのが望ましい。さらに、厚肉部を有することで、本体ゴム弾性体とシールゴムとを確実に一体成形できる。例えば、本体ゴム弾性体を形成する金型部位にゴム注入口が設けられている場合、厚肉部を通過して、シールゴムの部位にゴムを供給することができる。その結果、製造コストが高くなることを防止できる。
【0016】
また、厚肉部および薄肉部は、それぞれ複数であるとよい。つまり、薄肉部を見た場合に、薄肉部が、屈曲部の上端の一周のうち断続的に複数箇所存在していることになる。従って、圧入治具を複数箇所の薄肉部を押圧するようにできる。これにより、中間筒金具の下側外筒金具に対する軸方向の位置決め精度をより高くすることができる。
【0017】
さらに、薄肉部が複数ある場合に、厚肉部の最大角度は、180度以下であるとよい。換言すると、薄肉部が、180度のうちで必ず2箇所存在していることになる。これにより、中間筒金具を下側外筒金具に圧入する際に、中間筒金具の軸中心がずれないように、圧入治具により中間筒金具を押圧することができる。つまり、安定して高精度に中間筒金具を下側外筒金具に圧入することができる。
【0018】
また、上記構成において、下側外筒金具のフランジ部とシールゴムの形状を以下のようにするとよりよい。すなわち、下側外筒金具のフランジ部は、下側外筒金具の筒状部の上端から上方に向かって湾曲しながら拡径する湾曲部、および、湾曲部から径方向外方に延在する平板部を備え、シールゴムの下面は、湾曲部に対応する湾曲形状からなるとよい。これにより、シールゴムの下面のほとんどが、下側外筒金具のフランジ部の湾曲部に当接することができる。つまり、シールゴムと下側外筒金具との接触面積を増大することができる。さらに、シールゴムの下面が湾曲部に対応する湾曲形状からなるため、中間筒金具が下側外筒金具に圧入されることに伴いシールゴムが圧縮される圧縮力が、ほぼ均一に近づけることができる。このように、接触面積の増大および圧縮力が均一になることで、よりシール性能を向上できる。
【0019】
<車両サスペンション用アッパーサポートの製造方法>
また、車両サスペンション用アッパーサポートの製造方法は、次のとおりである。すなわち、車両サスペンション用アッパーサポートの製造方法であって、車両サスペンション用アッパーサポートは、筒状部、および、筒状部の上端から径方向外方に延在し且つ車両ボディに固定されるフランジ部を備える下側外筒金具と、下側外筒金具のフランジ部の上面側に重ね合わさるようにフランジ部に固定される上側外筒金具と、下側外筒金具の筒状部の内周面に圧入される中間筒状部、および、中間筒状部の上端から径方向外方に屈曲された屈曲部を備える中間筒金具と、中間筒金具の中間筒状部の径方向内方に離隔して配置され、車両サスペンションにおけるショックアブソーバのピストンロッドに固定される内筒金具と、中間筒金具の中間筒状部の内周面と内筒金具の外周面とを弾性連結する本体ゴム弾性体と、少なくとも中間筒金具の屈曲部に固着され、中間筒金具の中間筒状部が下側外筒金具の筒状部に圧入されることに伴い下側外筒金具と中間筒金具の屈曲部との間に挟圧されるシールゴムと、を備え、中間筒金具、内筒金具、本体ゴム弾性体、および、シールゴムを一体化して一体品を成形する一体化工程と、シールゴムが下側外筒金具と中間筒金具の屈曲部との間に挟圧されるように、一体化工程により成形された一体品のうち中間筒金具の中間筒状部を下側外筒金具の筒状部に圧入する圧入工程と、圧入工程の後に、上側外筒金具を下側外筒金具のフランジ部に固定する上側外筒固定工程と、を備えることを特徴とする。
【0020】
これにより、上述した本発明の車両サスペンション用アッパーサポートとしての効果と同一の効果を奏する。特に、圧入工程において、シールゴムがシール性能を発揮する状態なることを視認しながら、圧入を行うことができる。
【0021】
また、中間筒金具の屈曲部の上端に、外部に露出している露出部を有し、あるいは、本体ゴム弾性体およびシールゴムと一体成形されるゴムからなり、厚肉部と薄肉部とを有し、圧入工程は、圧入治具により露出部または薄肉部を押圧して行うようにするとよい。このように、圧入治具が露出部あるいは薄肉部を押圧することで、中間筒金具の下側外筒金具に対する軸方向の位置決めを高精度にできる。
【発明の効果】
【0022】
本発明の車両サスペンション用アッパーサポートによれば、シールゴムが確実にシール性能を発揮していることを視認することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0023】
次に、実施形態を挙げ、本発明をより詳しく説明する。本発明の車両サスペンション用アッパーサポートは、車両ボディと車両サスペンションにおけるショックアブソーバのピストンロッドとを防振連結するものである。
【0024】
<第一実施形態>
第一実施形態の車両サスペンション用アッパーサポート(以下、単に「アッパーサポート」と称する)について、図1および図2を参照して説明する。図1は、アッパーサポートを示す図である。具体的には、図1(a)は、アッパーサポートの平面図であり、図1(b)は、図1(a)のA−A断面図である。図2は、アッパーサポートの内装一体品を示す図である。具体的には、図2(a)は、内装一体品の平面図であり、図2(b)は、図2(a)のB−B断面図であり、図2(c)は、内装一体品の底面図である。ここで、図1(b)および図2(b)の上下方向が、車両上下方向に相当する。そこで、以下、特に断らない限り、上側は、車両上側を意味し、下側は、車両下側を意味する。
【0025】
図1に示すように、アッパーサポートは、下側外筒金具10と、上側外筒金具20と、内装一体品30とから構成される。下側外筒金具10は、筒状部11と、フランジ部12と、ストッパ部13とから構成される。筒状部11は、円筒状に形成されている。フランジ部12は、筒状部11の車両上端から車両上方に向かって湾曲しながら拡径する湾曲部121と、湾曲部121から径方向外方に延在する円環板状の平板部122とからなる。平板部122には、図1(a)に示すように、周方向に等間隔に3個のボルト挿通孔122aが形成されている。ストッパ部13は、中央に円形孔が形成された円環板状からなる。このストッパ部13は、後述する下側ストッパゴム35に当接することで、車両ボディに対するショックアブソーバのピストンロッドの車両下方向への相対変位を規制している。
【0026】
上側外筒金具20は、テーパ部21と、フランジ部22と、ストッパ部23とから構成される。テーパ部21は、車両下方に向かって拡径するテーパ状に形成されている。フランジ部22は、テーパ部21の車両下端から径方向外方に延在する円環板状に形成されている。このフランジ部22の外周形状は、下側外筒金具11のフランジ部12の平板部122の外周形状とほぼ同様の形状からなる。さらに、上側外筒金具20のフランジ部22には、平板部122に形成されるボルト挿通孔122aに対応する位置に、3個のボルト挿通孔22aが形成されている。そして、フランジ部22が、平板部122aの上面側に重ね合わさるように平板部122aに溶接により固定されている。そして、平板部122aのボルト挿通孔122aとともに、フランジ部22のボルト挿通孔22aに、車両下方から車両上方に向かってボルトが挿通され、フランジ部22の上面側に配置された車両ボディ(図示せず)に固定される。
【0027】
また、このフランジ部22の内径は、平板部122の内径とほぼ同等である。つまり、下側外筒金具10のフランジ部12の湾曲部121の上面には、上側外筒金具20のフランジ部22が位置しておらず、車両上下方向の隙間を介してテーパ部21が位置している。ストッパ部23は、後述する上側ストッパゴム34に当接することで、車両ボディに対するショックアブソーバのピストンロッドの車両上方向への相対変位を規制している。
【0028】
内装一体品30は、下側外筒金具10および上側外筒金具20の径方向内方に配置され、且つ、下側外筒金具10のストッパ部13と上側外筒金具20のストッパ部23との軸方向間に配置されている。この内装一体品30は、中間筒金具31と、内筒金具32と、本体ゴム弾性体33と、上側ストッパゴム34と、下側ストッパゴム35と、シールゴム36と、中間筒上端ゴム37とから構成される。この内装一体品30については、図1に加えて、図2を参照しながら説明する。
【0029】
中間筒金具31は、中間筒状部311と、屈曲部312とから構成される。中間筒状部311は、円筒状に形成されている。この中間筒状部311が下側外筒金具10の筒状部11に圧入可能となるように、中間筒状部311の外径が下側外筒金具10の筒状部11の内径より僅かに大きく形成されている。屈曲部312は、中間筒状部311の上端から径方向外方に屈曲されている。この屈曲部312の外径は、下側外筒金具10のフランジ部12の平板部122の内径よりも小さくされている。つまり、中間筒状部311が筒状部11に圧入された状態において、屈曲部312は、下側外筒金具10のフランジ部12の湾曲部121と、上側外筒金具20のテーパ部21との間に位置する。さらに、この屈曲部312の下面側は、湾曲した曲面状からなる。
【0030】
内筒金具32は、全体として、筒状に形成されている。そして、この内筒金具32は、中間筒金具31の径方向内方に離隔して、且つ、同軸的に配置されている。この内筒金具32は、詳細には、小径筒状部321と、大径筒状部322とから構成される。小径筒状部321は、ほぼ円筒状からなり、内周面側が車両サスペンションのショックアブソーバのピストンロッドに固定される。大径筒状部322は、小径筒状部321の外周面のうち軸方向中央から、径方向外方に延在するように一体的に形成されている。この大径筒状部322の外径は、中間筒金具31の中間筒状部311の内径よりも小さく形成されている。さらに、大径筒状部322の外径は、下側外筒金具10のストッパ部13の内径より大きく、且つ、上側外筒金具20のストッパ部23の内径より大きく形成されている。つまり、大径筒状部322は、車両上下方向において、下側外筒金具10のストッパ部13および上側外筒金具20のストッパ部23に対して係合している。
【0031】
本体ゴム弾性体33は、中間筒金具31の中間筒状部311の内周面と内筒金具32の大径筒状部322の外周面とに加硫接着されることにより、両者を弾性連結する。ここで、本実施形態においては、本体ゴム弾性体33は、中間筒状部311の内周面と大径筒状部322の外周面とを、周方向全周に亘って連結している。さらに、本体ゴム弾性体33の車両上面および車両下面の何れにも凹溝を周方向全周に亘って形成している。ただし、適用する弾性特性に応じて、すぐり孔を形成してもよいし、凹溝の深さを周方向の位置によって異なるようにしてもよい。
【0032】
上側ストッパゴム34は、大径筒状部322の上面に加硫接着されている。具体的には、図2(a)(b)に示すように、上側ストッパゴム34は、周方向に等間隔に4箇所、車両上方に大きく突出した部位を有している。この上側ストッパゴム34の一部は、図1(b)に示すように、初期取付状態において、上側外筒金具20のストッパ部23の下面に当接している。そして、この上側ストッパゴム34は、外筒金具10、20に対して内筒金具32が車両上方に変位した場合に、当該変位を規制するように機能する。この上側ストッパゴム34は、本体ゴム弾性体33と一体加硫成形されている。
【0033】
下側ストッパゴム35は、大径筒状部322の下面に加硫接着されている。具体的には、図2(b)(c)に示すように、下側ストッパゴム35は、周方向に等間隔に4箇所、車両下方に大きく突出した部位を有している。この下側ストッパゴム35の一部は、図1(b)に示すように、初期取付状態において、下側外筒金具10のストッパ部13の上面に当接している。そして、この下側ストッパゴム35は、外筒金具10、20に対して内筒金具32が車両下方に変位した場合に、当該変位を規制するように機能する。この下側ストッパゴム35は、本体ゴム弾性体33と一体加硫成形されている。
【0034】
シールゴム36は、屈曲部312の外周端面および屈曲部312の湾曲する下面の周方向全周に、加硫接着されている。つまり、シールゴム36は、屈曲部312の外周端面および屈曲部312の湾曲する下面から径方向外方に向かって突出するように形成されている。詳細には、シールゴム36の下面は、車両上下方向に直交する平面状に形成されており、中間筒状部311と屈曲部312との境界部に位置している。さらに、シールゴム36の外周面は、車両下方に向かって拡径するように傾斜している。このシールゴム36の最大外径は、下側外筒金具10のフランジ部12の平板部122の内径よりも小さくされている。
【0035】
そして、このシールゴム36は、中間筒金具31が下側外筒金具10の筒状部11に圧入されることに伴い、下側外筒金具10のフランジ部12の湾曲部121と中間筒金具31の屈曲部312との間に挟圧される。つまり、シールゴム36は、フランジ部12の湾曲部121の上面と屈曲部312の下面とより車両上下方向に挟圧されるため、車両上下方向の圧縮力が作用した状態で、両者に当接している。従って、下側外筒金具10のフランジ部12と上側外筒金具20のフランジ部22との隙間、および、上側外筒金具20のストッパ部13の中央の円形孔から水が侵入してきたとしても、このシールゴム36により、下側外筒金具10の筒状部11と中間筒金具31の中間筒状部311との間に水が侵入することを防止できる。特に、車両上下方向に圧縮力が作用するため、高いシール性能を発揮できる。
【0036】
中間筒上端ゴム37は、屈曲部312の上端の周方向全周に亘って加硫接着されている。この中間筒上端ゴム37は、本体ゴム弾性体33とシールゴム36とを架橋する役目を有しており、本体ゴム弾性体33およびシールゴム36と一体加硫成形されている。この中間筒上端ゴム37は、図2(a)(b)に示すように、厚肉部37aと、薄肉部37bとからなる。厚肉部37aは、薄肉部37bに比べて、車両上下方向のゴム厚が厚く形成されている。特に、薄肉部37bは、ゴムバリ程度の非常に薄いゴム厚であり、車両上下方向の弾性力をほとんど発揮しない程度のゴム厚である。つまり、薄肉部37bが形成されている部分は、実質的に、中間筒金具31の屈曲部312の上端が露出していると同様である。
【0037】
そして、厚肉部37aおよび薄肉部37bは、交互に等間隔に3箇所ずつ形成されている。具体的には、厚肉部37aおよび薄肉部37bが、交互に、周方向に60度毎に形成されている。ここで、薄肉部37bは、中間筒金具31を下側外筒金具10の筒状部11に圧入する際に、圧入治具を当接させて、中間筒金具31を押圧する部位である。このように、圧入治具を当接させる部位を、実質的に中間筒金具31が露出している状態の部位とすることで、中間筒金具31の下側外筒金具10に対する軸方向の位置決めを高精度にすることができる。さらに、薄肉部37bを等間隔に3箇所形成することで、中間筒金具31の軸中心がずれないように、圧入治具により中間筒金具31を押圧することができる。つまり、安定して高精度に中間筒金具を下側外筒金具10に圧入できる。
【0038】
一方、厚肉部37aは、本体ゴム弾性体33とシールゴム36とを確実に架橋するためである。すなわち、厚肉部37aにより、本体ゴム弾性体33とシールゴム36とが一体加硫成形を行うことが可能となる。
【0039】
ここで、下側外筒金具10と、上側外筒金具20と、内装一体品30の製造方法について説明する。まず、内装一体品30を一体化成形する(内装一体化工程)。続いて、下側外筒金具10と内装一体品30とを一体固定する。具体的には、下側外筒金具10の筒状部11に、フランジ部12側から、内装一体品30の中間筒金具31を圧入する(圧入工程)。このとき、圧入治具は、中間筒上端ゴム37の薄肉部37bに当接させて車両下方へ押圧する。
【0040】
そして、圧入工程は、シールゴム36が下側外筒金具10のフランジ部12の湾曲部121に当接し、さらに圧縮されている状態、すなわち、シールゴム36が屈曲部312と湾曲部121とに挟圧される状態となるまで継続する。つまり、シールゴム36がシール性能を発揮できる状態となることを視認しながら、中間筒金具31を下側外筒金具10の筒状部11に圧入する。
【0041】
続いて、上側外筒金具20を下側外筒金具10に溶接により固定する(上側外筒固定工程)。具体的には、上側外筒金具20のフランジ部22を、下側外筒金具10のフランジ部12の平板部122の上面に溶接により固定する。このようにアッパーサポートを製造するため、シールゴム36によるシール性能が確実に発揮できることを視認できる。
【0042】
<第二実施形態>
次に、第二実施形態の内装一体品130について、図3を参照して説明する。図3は、第二実施形態における内装一体品130の軸方向断面図、すなわち第一実施形態における図2(b)に相当する図である。ここで、第二実施形態の内装一体品130において、シールゴム136の他の構成は、上記第一実施形態の内装一体品30と同一であるので、図3において同一符号を付して説明を省略する。
シールゴム136は、屈曲部312の外周端面、屈曲部312の湾曲する下面、および、中間筒状部311の外周面の上端部の周方向全周に、加硫接着されている。つまり、シールゴム136は、屈曲部312の外周端面、屈曲部312の湾曲する下面、および、中間筒状部311の外周面の上端部から、径方向外方に向かって突出するように形成されている。詳細には、シールゴム136の下面は、車両上方に向かって湾曲しながら拡径するように形成されている。このシールゴム136の下面は、下側外筒金具10のフランジ部12の湾曲部122に対応する形状に形成されている。ここで、「対応する」とは、両者が完全に転写された形状のみではなく、車両上下方向に所定の圧縮力をかけた場合に両者の面全体が接触し得る程度に一致している状態を含む意味である。
【0043】
さらに、シールゴム136の外周面は、車両下方に向かって拡径するように傾斜している。このシールゴム136の最大外径は、下側外筒金具10のフランジ部12の平板部122の内径よりも小さくされている。
【0044】
そして、このシールゴム36は、中間筒金具31が下側外筒金具10の筒状部11に圧入されることに伴い、下側外筒金具10のフランジ部12の湾曲部121と中間筒金具31の屈曲部312との間に挟圧される。このとき、中間筒状部311の外周面と湾曲部122との間に隙間が形成されないような状態となる。つまり、シールゴム136と下側外筒金具10との接触面積を増大することができる。さらに、中間筒状部311が下側外筒金具10の筒状部11に圧入されることに伴いシールゴム136が圧縮される圧縮力が、ほぼ均一に近づけることができる。このように、接触面積の増大および圧縮力が均一になることで、シールゴム136によるシール性能をより向上できる。
【0045】
<その他>
上記実施形態において、中間筒上端ゴム37は、厚肉部37aと薄肉部37bとを有するとしたが、これに限られるものではない。この他に、薄肉部37bの部分にゴムを有しない状態、すなわち、中間筒金具31の屈曲部312の上端が露出する露出部を有するようにすることもできる。この場合も、実質的に、上記実施形態と同様の効果を奏する。なお、この場合、厚肉部37aは、本発明の被覆部に相当する。また、上記実施形態において、薄肉部37bとした部分は、その全てがゴムにより成形されている必要はなく、その一部において屈曲部312が露出していてもよい。つまり、薄肉部37bと露出部とが両者存在するようにしてもよい。
【0046】
また、厚肉部37aおよび薄肉部37bは、3個ずつであって、等間隔に形成したがこれに限られるものではない。厚肉部37aと薄肉部37bのそれぞれによる目的を達成することができれば、例えば、1個ずつでもよいし、2個でも、さらには4個以上でもよい。さらに、等間隔でなくても、例えば、厚肉部37aの角度が薄肉部37bの角度より大きくしてもよい。ただし、圧入する際に、中間筒金具31の軸中心がずれないようにするためには、厚肉部37a(被覆部)の最大角度を180度以下とするとよい。なお、上記実施形態においては、厚肉部37aの最大角度が60度であるので、中間筒金具311の軸中心のずれは確実に抑制できる。
【図面の簡単な説明】
【0047】
【図1】アッパーサポートを示す図である。
【図2】第一実施形態におけるアッパーサポートの内装一体品を示す図である。
【図3】第二実施形態におけるアッパーサポートの内装一体品を示す図である。
【符号の説明】
【0048】
10:下側外筒金具、
11:筒状部、 12:フランジ部、 13:ストッパ部、
121:湾曲部、 122:平板部、 122a:ボルト挿通孔、
20:上側外筒金具、
21:テーパ部、 22:フランジ部、 22a:ボルト挿通孔、 23:ストッパ部、
30、130:内装一体品、
31:中間筒金具、 311:中間筒状部、 312:屈曲部、
32:内筒金具、 321:小径筒状部、 322:大径筒状部、
33:本体ゴム弾性体、 34:上側ストッパゴム、 35:下側ストッパゴム、
36、136:シールゴム、
37:中間筒上端ゴム、 37a:厚肉部、 37b:薄肉部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
筒状部、および、前記筒状部の上端から径方向外方に延在し且つ車両ボディに固定されるフランジ部を備える下側外筒金具と、
前記下側外筒金具の前記フランジ部の上面側に重ね合わさるように前記フランジ部に固定される上側外筒金具と、
前記下側外筒金具の前記筒状部の内周面に圧入される中間筒状部、および、前記中間筒状部の上端から径方向外方に屈曲された屈曲部を備える中間筒金具と、
前記中間筒金具の前記中間筒状部の径方向内方に離隔して配置され、車両サスペンションにおけるショックアブソーバのピストンロッドに固定される内筒金具と、
前記中間筒金具の前記中間筒状部の内周面と前記内筒金具の外周面とを弾性連結する本体ゴム弾性体と、
少なくとも前記中間筒金具の前記屈曲部に固着され、前記中間筒金具の前記中間筒状部が前記下側外筒金具の前記筒状部に圧入されることに伴い前記下側外筒金具と前記中間筒金具の前記屈曲部との間に挟圧されるシールゴムと、
を備えることを特徴とする車両サスペンション用アッパーサポート。
【請求項2】
前記中間筒金具の前記屈曲部の上端に、外部に露出している露出部を有する請求項1に記載の車両サスペンション用アッパーサポート。
【請求項3】
前記中間筒金具の前記屈曲部の上端に、前記本体ゴム弾性体および前記シールゴムと一体成形されるゴムで被覆されている被覆部を有する請求項2に記載の車両サスペンション用アッパーサポート。
【請求項4】
前記露出部および前記被覆部は、それぞれ複数である請求項3に記載の車両サスペンション用アッパーサポート。
【請求項5】
前記被覆部の最大角度は、180度以下である請求項4に記載の車両サスペンション用アッパーサポート。
【請求項6】
前記中間筒金具の前記屈曲部の上端に、前記本体ゴム弾性体および前記シールゴムと一体成形されるゴムからなり、周方向に向かって厚肉部と薄肉部とを有する請求項1に記載の車両サスペンション用アッパーサポート。
【請求項7】
前記厚肉部および前記薄肉部は、それぞれ複数である請求項6に記載の車両サスペンション用アッパーサポート。
【請求項8】
前記厚肉部の最大角度は、180度以下である請求項7に記載の車両サスペンション用アッパーサポート。
【請求項9】
前記下側外筒金具の前記フランジ部は、前記下側外筒金具の前記筒状部の上端から上方に向かって湾曲しながら拡径する湾曲部、および、前記湾曲部から径方向外方に延在する平板部を備え、
前記シールゴムの下面は、前記湾曲部に対応する湾曲形状からなる請求項1〜8の何れか一項に記載の車両サスペンション用アッパーサポート。
【請求項10】
車両サスペンション用アッパーサポートの製造方法であって、
前記車両サスペンション用アッパーサポートは、
筒状部、および、前記筒状部の上端から径方向外方に延在し且つ車両ボディに固定されるフランジ部を備える下側外筒金具と、
前記下側外筒金具の前記フランジ部の上面側に重ね合わさるように前記フランジ部に固定される上側外筒金具と、
前記下側外筒金具の前記筒状部の内周面に圧入される中間筒状部、および、前記中間筒状部の上端から径方向外方に屈曲された屈曲部を備える中間筒金具と、
前記中間筒金具の前記中間筒状部の径方向内方に離隔して配置され、車両サスペンションにおけるショックアブソーバのピストンロッドに固定される内筒金具と、
前記中間筒金具の前記中間筒状部の内周面と前記内筒金具の外周面とを弾性連結する本体ゴム弾性体と、
少なくとも前記中間筒金具の前記屈曲部に固着され、前記中間筒金具の前記中間筒状部が前記下側外筒金具の前記筒状部に圧入されることに伴い前記下側外筒金具と前記中間筒金具の前記屈曲部との間に挟圧されるシールゴムと、
を備え、
前記中間筒金具、前記内筒金具、前記本体ゴム弾性体、および、前記シールゴムを一体化して一体品を成形する一体化工程と、
前記シールゴムが前記下側外筒金具と前記中間筒金具の前記屈曲部との間に挟圧されるように、前記一体化工程により成形された前記一体品のうち前記中間筒金具の前記中間筒状部を前記下側外筒金具の前記筒状部に圧入する圧入工程と、
前記圧入工程の後に、前記上側外筒金具を前記下側外筒金具の前記フランジ部に固定する上側外筒固定工程と、
を備えることを特徴とする車両サスペンション用アッパーサポートの製造方法。
【請求項11】
前記中間筒金具の前記屈曲部の上端に、外部に露出している露出部を有し、あるいは、前記本体ゴム弾性体および前記シールゴムと一体成形されるゴムからなり、厚肉部と薄肉部とを有し、
前記圧入工程は、圧入治具により前記露出部または前記薄肉部を押圧して行う請求項10に記載の車両サスペンション用アッパーサポートの製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2008−221897(P2008−221897A)
【公開日】平成20年9月25日(2008.9.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−59094(P2007−59094)
【出願日】平成19年3月8日(2007.3.8)
【出願人】(000219602)東海ゴム工業株式会社 (1,983)
【Fターム(参考)】