説明

車両シート用のロータリダンパ

【課題】背もたれ部の自重による回転力に影響されないで手動による背もたれ部の回転を軽快に行わせることができる車両シート用のロータリダンパを提供すること。
【解決手段】ロータリダンパ1は、収容体3と背もたれ部に連結されるている回転体7とから構成されている。収容体3の内周面2と回転体7の外周面4との間には粘性流体が収容されており、一方には大きな流動抵抗を生じ他方向には小さな流動抵抗を生じるようなベーン手段8を有しているとともに、弾性的回転力を付与する弾性手段14とを具備している。このため背もたれ部の自重に基づく急激な回転に適度の抵抗を与え、背もたれ部の激突を避けることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、粘性流体を収容する収容体の内部にベーンを有した回転体を回転自在に収容して、粘性流体により回転体の回転に対して制動を与え、これにより座部に回転自在に連結されて折り畳み自在とされた背もたれに適度な回転制動を与える車両シート用のロータリダンパに関する。
【背景技術】
【0002】
隙間を通過する粘性流体により、回転体の一方の回転に対しては大きな制動を与える一方、回転体の他方の回転に対しては小さな制動を与えるようにしたこの種の一方向ロータリダンパは、特許文献1等によって知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2005−188636号公報
【特許文献2】特開平9−42350号公報
【特許文献3】特開平9−329173号公報
【特許文献4】特開平8−109940号公報
【特許文献5】特開平8−296687号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
自動車用等の車両シートでは、折畳み回転位置に向かう方向の弾性的回転力が常時付加された背もたれ部を折畳み回転位置に配置する場合には、弾性的回転力に抗して背もたれ部を初期回転位置に保持するロック機構のロック解除を行って弾性的回転力により背もたれ部を折畳み回転位置に向って回転させるのであるが、斯かる弾性的回転力を折畳み回転位置まで背もたれ部に付加するようになっていると、仮に、ロータリダンパで背もたれ部の回転を制動するようになっていても、弾性的回転力と折畳み回転位置手前の背もたれ部の自重による回転力(回転モーメント)とにより折畳み回転位置で背もたれ部を停止させる停止部材に背もたれ部を激突させる虞れがある。
【0005】
本発明は、前記諸点に鑑みてなされたものであって、その目的とするところは、背もたれ部を折畳み回転位置に衝撃なしにもたらすことができる車両シート用のロータリダンパを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明による車両シート用のロータリダンパは、車両用シートの座部及び当該座部に初期回転位置と折畳み回転位置との間で回転できるように回転自在に連結された背もたれ部のうちの一方に固定されると共に円筒状の内周面を有した収容体と、この収容体の円筒状の内周面と当該内周面に同心の円筒状の外周面との間で粘性流体を収容する空間を形成するように収容体の内部に収容体に対して相対的に回転自在に配されていると共に車両用シートの座部及び背もたれ部のうちの他方に固定される回転体と、背もたれ部の初期回転位置から折畳み回転位置に向かう方向の収容体に対する回転体の一方の方向の相対的回転では、粘性流体に大きな流動抵抗を、背もたれ部の折畳み回転位置から初期回転位置に向かう方向の収容体に対する回転体の一方の方向の相対的回転に対して反対方向である他方の方向の相対的回転では、当該流動抵抗よりも小さな流動抵抗を夫々生じさせるべく、収容体の円筒状の内周面と回転体の円筒状の外周面との間の粘性流体を収容する空間に配されたベーン手段と、一端部で車両用シートの座部及び背もたれ部のうちの一方に連結される一方、他端部で車両用シートの座部及び背もたれ部のうちの他方に連結されると共に収容体に対する回転体の回転軸心を中心とした背もたれ部の座部に対する初期回転位置から初期回転位置と折畳み回転位置との間の所定回転位置まで背もたれ部に折畳み回転位置に向かう方向の弾性的回転力を付与する弾性手段とを具備している。
【0007】
本発明による車両シート用のロータリダンパによれば、弾性手段が収容体に対する回転体の回転軸心を中心とした背もたれ部の座部に対する初期回転位置から初期回転位置と折畳み回転位置との間の所定回転位置まで背もたれ部に折畳み回転位置に向かう方向の弾性的回転力を付与するようになっており、ベーン手段が背もたれ部の初期回転位置から折畳み回転位置に向かう方向の収容体に対する回転体の一方の方向の相対的回転では、粘性流体に大きな流動抵抗を、背もたれ部の折畳み回転位置から初期回転位置に向かう方向の収容体に対する回転体の一方の方向の相対的回転に対して反対方向である他方の方向の相対的回転では、当該流動抵抗よりも小さな流動抵抗を夫々生じさせるようになっているために、背もたれ部を初期回転位置から所定回転位置まで回転させる際には、弾性手段により背もたれ部を容易に回転させることができ、背もたれ部を所定回転位置から折畳み回転位置まで回転させる際には、背もたれ部の自重に基づく折畳み回転位置に向かうに連れて漸次増加する回転力により背もたれ部を折畳み回転位置まで回転させることができる一方、背もたれ部を手動により折畳み回転位置から所定回転位置まで回転させる際には、ベーン手段により生じる粘性流体の流動抵抗を低下させることができる結果、背もたれ部を手動により折畳み回転位置から所定回転位置まで容易に回転させることができ、背もたれ部を手動により所定回転位置から初期回転位置まで更に回転させる際には、低下した粘性流体の流動抵抗の下で、弾性手段に折畳み回転位置に向かう方向の弾性的回転力を蓄させることができると共に初期回転位置での停止部材等への激突を避けることができる。
【0008】
弾性手段は、好ましい例では、背もたれ部の座部に対する初期回転位置から所定回転位置までの折畳み回転位置に向かう方向の回転では、折畳み回転位置に向かう方向の弾性的回転力を背もたれ部に付与して粘性流体の流動抵抗に抗して座部に対して背もたれ部を回転させるようになっている一方、所定回転位置と折畳み回転位置との間の背もたれ部の座部に対する回転位置では、折畳み回転位置に向かう方向の弾性的回転力の背もたれ部への付与を解除するようになっている。
【0009】
斯かる弾性手段を具備した車両シート用のロータリダンパによれば、背もたれ部の折畳み回転位置での停止部材への激突を避けることができ、背もたれ部を折畳み回転位置に衝撃なしにもたらすことができる。
【0010】
好ましい例では、収容体は、当該収容体に対する回転体の回転軸心を中心とした背もたれ部の座部に対する所定回転位置から背もたれ部の座部に対する折畳み回転位置までに相当する範囲に亘って延びたスリット又は凹所を有しており、回転体は、車両用シートの座部及び背もたれ部のうちの他方に固着された回転軸を有しており、弾性手段は、収容体のスリット又は凹所に配されて収容体に係合する一端部と、回転体の回転軸に嵌合されて係合する他端部とを有している。
【0011】
弾性手段は、一端部で収容体及び回転体のうちの一方に連結されていると共に他端部で収容体及び回転体のうちの他方に連結されているコイルばねを具備していてもよい。
【0012】
本発明の他の好ましい例では、ベーン手段は、収容体の円筒状の内周面と回転体の円筒状の外周面との間の粘性流体を収容する空間を二室に区画すると共に回転体の外周面に一体的に形成された一対の弾性的可撓ベーンと、この一対の弾性的可撓ベーンにより区画された二室のうちの少なくとも一方の室を更に二室に区画すると共に収容体の内周面に一体的に形成された他の弾性的可撓ベーンとを有しており、一対の弾性的可撓ベーンの夫々は、一端部では回転体の外周面に連接すると共に収容体に対する回転体の一方の方向の相対的回転と反対方向に向かって凸となった湾曲状の凸面と、この凸面に対応して一端部では回転体の外周面に連接すると共に凸面に沿って延びている湾曲状の凹面とを具備しており、凸面は、その他端部側で、収容体に対する回転体の相対的回転の回転方向において対峙した一対の楔空間を収容体の内周面との間で形成する円弧状凸面となっており、この円弧状凸面は、収容体に対する回転体の相対的回転の回転方向において当該円弧状凸面を間にして隣接する二室のうちの一方の室に連通する一方の楔空間の径方向の幅が収容体に対する回転体の相対的回転の回転方向において当該円弧状凸面を間にして隣接する二室のうちの他方の室に連通する他方の楔空間に向かうに連れて徐々に狭くなるように、当該一方の楔空間の径方向の幅を決定していると共に収容体に対する回転体の相対的回転の回転方向において当該円弧状凸面を間にして隣接する二室のうちの他方の室に連通する他方の楔空間の径方向の幅が収容体に対する回転体の相対的回転の回転方向において当該円弧状凸面を間にして隣接する二室のうちの一方の室に連通する一方の楔空間に向かうに連れて徐々に狭くなるように、当該他方の楔空間の径方向の幅を決定しており、一対の楔空間を通過する粘性流体は、一対の弾性的可撓ベーンの夫々を弾性的に撓ませてその粘度によって一対の楔空間の径方向の幅を決定するようになっており、一対の弾性的可撓ベーンの夫々は、初期回転位置から所定回転位置を介する折畳み回転位置への背もたれ部の座部に対する回転において他方の室から一方の室に狭められた一対の楔空間を通って流れて当該狭められた一対の楔空間によって規定されると共に当該回転に対して抗する流動抵抗を粘性流体に発生させるようになっている一方、折畳み回転位置から所定回転位置を介する初期回転位置への背もたれ部の座部に対する回転において一方の室から他方の室に広げられた一対の楔空間を通って流れて当該広げられた一対の楔空間によって規定されると共に当該回転に対して抗する流動抵抗を粘性流体に発生させるようになっている。
【0013】
斯かる例による車両シート用のロータリダンパによれば、一対の弾性的可撓ベーンの夫々により分割されていると共に収容体に対する回転体の相対的回転の回転方向において隣接する二室において、収容体に対する回転体の一方の方向の相対的回転と逆の他方の方向の相対回転側に位置した一方の室を拡大すると共に収容体に対する回転体の一方の方向の相対的回転側の他方の室を縮小するように収容体に対して回転体が回転される場合には、一対の弾性的可撓ベーンの夫々の凹面に粘性流体の圧力が付与されるために、一対の弾性的可撓ベーンの夫々の他端部側が収容体の内周面に近づいて一対の楔空間を縮小するように一対の弾性的可撓ベーンの夫々が弾性変形される結果、粘性流体は縮小された一対の楔空間を通って他方の室から一方の室に流れて、この縮小された一対の楔空間を通過する粘性流体による大きな制動が回転体の回転に与えられる一方、一方の室を縮小すると共に他方の室を拡大するように収容体に対して回転体が回転される場合には、一対の弾性的可撓ベーンの夫々の湾曲状の凸面に粘性流体の圧力が付与されるために、一対の弾性的可撓ベーンの夫々の他端部側が収容体の内周面から離れて一対の楔空間を広げるように一対の弾性的可撓ベーンの夫々が弾性変形される結果、粘性流体は広げられた一対の楔空間を通って他方の室から一方の他方の室に流れて、この広げられた一対の楔空間を通過する粘性流体による小さな制動が回転体の回転に与えられて、一方向ダンパとして動作するようになっている。
【0014】
そして、本例では、温度上昇に伴って粘度が低下する粘性流体が回転体の回転において一対の楔空間を通過するために、例えば、低温下で常温(20℃)時よりも粘度が増加した粘性流体が一対の楔空間を通過する場合には、一対の楔空間での粘性流体の圧力増大により一対の弾性的可撓ベーンの夫々の他端部側が収容体の内周面から離れるように一対の弾性的可撓ベーンの夫々が弾性変形されて一対の楔空間が広げられる結果、粘性流体自体の粘度増加と一対の楔空間の拡大による流体流通抵抗の低下とにより、低温にも拘らず常温時の制動を維持できる一方、高温下で常温時よりも粘度が低下した粘性流体が一対の楔空間を通過する場合には、一対の楔空間での粘性流体の圧力減少により一対の弾性的可撓ベーンの夫々の他端部側が収容体の内周面に近づくように一対の弾性的可撓ベーンの夫々が弾性変形されて一対の楔空間が狭められる結果、粘性流体自体の粘度低下と一対の楔空間の縮小による流体流通抵抗の増大とにより、高温にも拘らず常温時の制動を維持できるようになり、而して、発生する制動に温度依存性がなく、高温でも低温でも変化のない制動を得ることができる。
【0015】
好ましい例では、凹面は、凸面の一端部から他端部にかけて徐々に当該凸面に近づくように凸面に沿って延びており、円弧状凸面は、円筒状内周面の曲率半径よりも小さな曲率半径を有している。
【0016】
本発明のロータリダンパでは、他の弾性的可撓ベーンは、収容体の内周面に一体的に形成された基部と、この基部に一体的に形成されていると共に回転体の外周面に対面した円弧状面を有した弾性的に可撓性の舌部とを有していてもよい。
【0017】
斯かる他の弾性的可撓ベーンの夫々においても、舌部は、収容体に対する回転体の相対的回転の回転方向において対峙した一対の楔空間を回転体の外周面との間で形成する円弧状凹面を有していてもよく、この円弧状凹面は、収容体に対する回転体の相対的回転の回転方向において当該円弧状凹面を間にして隣接する二室のうちの一方の室に連通する一方の楔空間の径方向の幅が当該隣接する二室のうちの他方の室に連通する他方の楔空間に向かうに連れて徐々に狭くなるように、当該一方の楔空間の径方向の幅を決定していると共に隣接する二室のうちの他方の室に連通する他方の楔空間の径方向の幅が当該隣接する二室のうちの一方の室に連通する一方の楔空間に向かうに連れて徐々に狭くなるように、当該他方の楔空間の径方向の幅を決定しており、一対の楔空間を通過する粘性流体は、他の弾性的可撓ベーンの夫々を弾性的に撓ませてその粘度によって一対の楔空間の径方向の幅を決定するようになっていてもよい。
【0018】
弾性手段は、一つの好ましい例では、回転体の中空部に回転体と同軸に配されている。
【0019】
本発明に係る粘性流体としては、シリコーンオイルを好ましい例として挙げることができるが、その他の粘性流体であってもよく、また、収容体は、金属製であってもよいが、軽量化、費用の削減等の理由により硬質の合成樹脂製であってもよく、回転体もまた、金属製であってもよいが、軽量化、費用の削減等の理由により硬質の合成樹脂製であってもよく、各弾性的可撓ベーンが一体形成されている回転体及び収容体は、各弾性的可撓ベーンに適度な弾性を付与することができる合成樹脂素材で形成されているのが好ましい。
【0020】
本発明では、収容体を背もたれ部に連結する一方、回転体を座部に連結して、背もたれ部の回転に応じて収容体を回転体に対して回転させてもよく、逆に、収容体を座部に連結する一方、回転体を背もたれ部に連結して、背もたれ部の回転に応じて回転体を収容体に対して回転させてもよく、また、背もたれ部への収容体又は回転体の連結は、直接的に又は回転軸、歯車等を介して間接的に行ってもよい。
【発明の効果】
【0021】
本発明によれば、背もたれ部を折畳み回転位置に衝撃なしにもたらすことができる車両シート用のロータリダンパを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】図1は本発明の好ましい一例の図2のI−I線矢視断面説明図である。
【図2】図2は図1に示す例の図4のII−II線矢視断面説明図である。
【図3】図3は図1に示す例の図4のIII−III線矢視断面説明図である。
【図4】図4は図1に示す例の正面図である。
【図5】図5は図1に示す例の背面図である。
【図6】図6は図1に示す例の斜視図である。
【図7】図7は図1に示す例の一部拡大説明図である。
【図8】図8は図1に示す例に回転軸を装着した説明図である。
【図9】図9は図8に示す回転軸の斜視図である。
【図10】図10は図1に示す例を車両シートに装着した例の説明図である。
【図11】図11は図1に示す例の動作説明図である。
【図12】図12は図1に示す例の動作説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
次に本発明の実施の形態を、図に示す好ましい例に基づいて更に詳細に説明する。なお、本発明はこれら例に何等限定されないのである。
【0024】
図1から図10において、本例の車両シート用のロータリダンパ1は、円筒状の内周面2を有した合成樹脂製の収容体3と、内周面2と当該内周面2に回転軸心Oに関して同心の円筒状の外周面4との間でシリコーンオイル等からなって温度上昇に伴って粘度が低下する粘性流体5を収容する空間6を形成するように収容体3の内部に収容体3に対して回転軸心Oを中心として相対的にR1及びR2方向に回転自在に配されている合成樹脂製の回転体7と、収容体3に対する回転体7の一方の方向の相対的回転、本例では収容体3に対する回転体7のR1方向の回転では、粘性流体5に大きな流動抵抗を、収容体3に対する回転体7の一方の方向の相対的回転に対して反対方向の他方の方向の相対的回転では、本例では収容体3に対する回転体7のR2方向の回転では、当該流動抵抗よりも小さな流動抵抗を夫々生じさせるべく、空間6に配されたベーン手段8と、一端部9で車両用シート10の座部11及び背もたれ部12のうちの一方、本例では座部11に連結される一方、他端部13で車両用シートの座部11及び背もたれ部12のうちの他方、本例では背もたれ部12に連結されると共に収容体3に対する回転体7の回転軸心Oを中心とした背もたれ部12の座部11に対する初期回転位置P0から初期回転位置P0と折畳み回転位置P2との間の所定回転位置P1まで背もたれ部12に折畳み回転位置P2に向かう方向であるR1方向の弾性的回転力を付与する弾性手段14とを具備している。
【0025】
座部11及び当該座部11に初期回転位置P0と折畳み回転位置P2との間で回転できるようにR1及びR2方向に回転自在に連結された背もたれ部12のうちの一方、本例では座部11に固定される収容体3は、円筒状の内周面2を有している筒部15と、筒部15の軸心方向であるA方向の一方の環状の端部16に径方向内方に向かって一体的に形成されていると共に貫通孔17を規定した内周面18を有した鍔部19と、筒部15のA方向の他方の環状の端部20に複数のねじ21により固着された蓋体22とを具備している。
【0026】
鍔部19は、A方向の一方の側面25で空間6のA方向の一方を規定しており、蓋体22は、中央に貫通孔31を有していると共にA方向の一方の側面32で内部2のA方向の他方を規定した楕円形の板体からなる蓋体本体33と、蓋体本体33の側面32に一体的にA方向に突出して形成された円環状の小径の突起34と、側面32に一体的にA方向に突出して且つ突起34と同心に形成されていると共に突起34よりも大径の突起35とを具備しており、筒部15のA方向の他方の環状の端部20に複数のねじ21により固着された蓋体本体33は、収容体3に対する回転体7の回転軸心Oを中心とした背もたれ部12の座部11に対する所定回転位置P1から背もたれ部12の座部11に対する折畳み回転位置P2までに相当する範囲に亘って延びたスリット又は凹所、本例では回転軸心Oを中心として円弧状に伸びたスリット36と、貫通孔37とを有しており、貫通孔37を通ったねじ38により座部11に固定されており、収容体3は、斯かる蓋体本体33を介して座部11に固定されている。
【0027】
内周面2との間で空間6を形成する外周面4と中空部41を規定する内周面42とを有すると共に座部11及び背もたれ部12のうちの他方、本例では背もたれ部12に固定される中空の回転体7は、軸方向Aの円環状の各端部43及び44で収容体3の鍔部19の内周面18と突起34の外周面とにR1及びR2方向に回転自在となるように支持されており、中空部41を規定する内周面42は、中空部41の軸方向Aの一方の開口端側に凹凸(セレーション)45を有しており、回転体7の斯かる凹凸45には回転軸51の一端部52側の凹凸(セレーション)53が嵌合しており、回転軸51は、その他端部側で座部11及び座部11にR1及びR2方向に回転自在に連結された背もたれ部12のうちの他方、本例では背もたれ部12に固着されており、回転軸51を介して、より詳細には、凹凸45及び凹凸45に嵌合する回転軸51の凹凸53を介して背もたれ部12に連結されている回転体7は、回転軸51のR1及びR2方向の回転、延いては背もたれ部12のR1及びR2方向の回転で同方向に回転されるようになって、こうして、回転体7は、背もたれ部12に固定されている。
【0028】
回転軸51は、凹凸53を外周面に有した一端部52側の大径部56と、凹凸53の部位で大径部56に形成された切り欠きとしての半円筒状の切り欠き(溝)57と、蓋体本体33の貫通孔31に挿通されて蓋体本体33にR1及びR2方向の摺動回転自在に支持されていると共に大径部56と一体な一端部52側の小径部58とを具備している。
【0029】
鍔部19の内周面18と回転体7の軸方向Aの端部43との間、筒体15の端部20と端部20に嵌合された突起35との間及び回転体7の軸方向Aの端部44と突起34との間の夫々には、空間6から収容体3及び回転体7外部への粘性流体5の漏出を防止するシールリング60が配されている。
【0030】
背もたれ部12の初期回転位置P0から折畳み回転位置P2に向かう方向であるR1方向の回転では、粘性流体5に大きな流動抵抗を、背もたれ部12の折畳み回転位置P2から初期回転位置P0に向かう方向であるR2方向の回転では、当該流動抵抗よりも小さな流動抵抗を夫々生じさせるベーン手段8は、収容体3の円筒状の内周面2と内周面2に同心の回転体7の円筒状の外周面4との間の粘性流体5を収容する収容体3の内部の円環状の空間6を二室61及び62に区画すると共に回転体7の外周面4に一体的に形成された一対の弾性的可撓ベーン63及び64と、一対の弾性的可撓ベーン63及び64により区画された二室61及び62のうちのすくなくとも一方の室、本例では二室61及び62の夫々を更に二室65及び66並びに67及び68に区画すると共に収容体3の内周面2に一体的に形成された他の弾性的可撓ベーンとしての一対の弾性的可撓ベーン69及び70とを有している。
【0031】
弾性的可撓ベーン63及び64並びに69及び70において、弾性的可撓ベーン63と弾性的可撓ベーン64と、そして、弾性的可撓ベーン69と弾性的可撓ベーン70とは、軸心Oに関して対称の形状をもって互いに同様に形成されているので、以下、弾性的可撓ベーン63及び弾性的可撓ベーン69を詳細に説明し、弾性的可撓ベーン64及び弾性的可撓ベーン70については、弾性的可撓ベーン63及び弾性的可撓ベーン69の符号と同一の符号をもって説明、図示する。
【0032】
室66と室67とを区画する弾性的可撓ベーン63は、一端部では回転体7の外周面4に連接すると共にR2方向に向かって凸となった湾曲状の凸面71と、凸面71に対応して一端部では回転体7の外周面4に連接すると共に凸面71の一端部から他端部にかけて徐々に当該凸面71に近づくように凸面71に沿って延びて凸面71の終端と共に終端している湾曲状の凹面72とを具備している。
【0033】
凸面71は、その他端部側で、収容体3に対する回転体7の相対的回転の回転方向RでもあるR1及びR2方向において対峙した一対の楔空間73及び74を筒部15の内周面2との間で形成すると共に内周面2の曲率半径よりも小さな曲率半径を有している円弧状凸面75となっており、円弧状凸面75は、室66に連通する一方の楔空間73の径方向であるB方向の幅が回転方向Rにおいて当該円弧状凸面75を間にして隣接する二室66及び67のうちの他方の室67に連通する他方の楔空間74に向かうに連れて徐々に狭くなるように、当該一方の楔空間73の径方向の幅を決定していると共に室67に連通する他方の楔空間74のB方向の幅が回転方向Rにおいて当該円弧状凸面75を間にして隣接する二室66及び67のうちの一方の室66に連通する楔空間73に向かうに連れて徐々に狭くなるように、当該他方の楔空間74のB方向の幅を決定しており、一対の楔空間73及び74を通過する粘性流体5は、弾性的可撓ベーン63を弾性的に撓ませてその粘度によって一対の楔空間73及び74のB方向の幅を決定するようになっている。
【0034】
凸面71及び凹面72を有すると共に外周面4から内周面2に向かって漸次減少する厚みをもった弾性的可撓ベーン63は、回転体7に連接された基部76と、円弧状凸面75を有する自由端部77とを有して円弧状に一体形成されている。
【0035】
一対の楔空間73及び74を通過する粘性流体5は、収容体3に対する回転体7のR1方向の回転において他方の室67から一方の室66に狭められた一対の楔空間73及び74を通って流れて当該狭められた一対の楔空間73及び74によって規定されると共に当該R1方向の回転に対して抗する大きな流動抵抗を発生するようになっている一方、収容体3に対する回転体7のR2方向の回転において一方の室66から他方の室67に広げられた一対の楔空間73及び74を通って流れて当該広げられた一対の楔空間73及び74によって規定されると共に当該R2方向の回転に対して抗する小さな流動抵抗を発生するようになっている。
【0036】
室65と室68とを区画する弾性的可撓ベーン64も弾性的可撓ベーン63と同様に形成されており、弾性的可撓ベーン64における一対の楔空間73及び74を通過する粘性流体5も、弾性的可撓ベーン64を弾性的に撓ませてその粘度によって一対の楔空間73及び74のB方向の幅を決定するようになっており、而して、弾性的可撓ベーン64における一対の楔空間73及び74を通過する粘性流体5は、収容体3に対する回転体7のR1方向の回転において他方の室65から一方の室68に狭められた一対の楔空間73及び74を通って流れて当該狭められた一対の楔空間73及び74によって規定されると共に当該R1方向の回転に対して抗する大きな流動抵抗を発生するようになっている一方、収容体3に対する回転体7のR2方向の回転において一方の室68から他方の室65に広げられた一対の楔空間73及び74を通って流れて当該広げられた一対の楔空間73及び74によって規定されると共に当該R2方向の回転に対して抗する小さな流動抵抗を発生するようになっている。
【0037】
而して、一対の弾性的可撓ベーン63及び64の夫々は、初期回転位置P0から所定回転位置P1を介する折畳み回転位置P2への背もたれ部12の座部11に対するR1方向の回転において他方の室67及び65の夫々から一方の室66及び68の夫々に狭められた一対の楔空間73及び74を通って流れて当該狭められた一対の楔空間73及び74によって規定されると共に当該R1方向の回転に対して抗する流動抵抗を粘性流体5に発生させるようになっている一方、折畳み回転位置P2から所定回転位置P1を介する初期回転位置P0への背もたれ部12の座部11に対するR2方向の回転において一方の室66及び68の夫々から他方の室67及び65の夫々に広げられた一対の楔空間73及び74を通って流れて当該広げられた一対の楔空間73及び74によって規定されると共に当該R2方向の回転に対して抗する流動抵抗を粘性流体5に発生させるようになっている。
【0038】
室61を弾性的可撓ベーン63及び64と協働して回転方向Rにおいて隣接する二室65及び66に区画する弾性的可撓ベーン69は、弾性的可撓ベーン63の凸面71と相補的な円弧状の凹面81を当該弾性的可撓ベーン63の凸面71に回転方向Rにおいて対面して有している一方、断面V若しくはU状の凹面82を弾性的可撓ベーン64の凹面72に回転方向Rにおいて対面して有している基部83と、基部83に一体的に形成されていると共に円弧状面84で回転体7の外周面4に対面した弾性的に可撓性の舌部85とを有しており、回転体7の外周面4と外周面4の曲率半径よりも大きな曲率半径を有した舌部85の円弧状面84との間には、一対の楔空間73及び74と同様の楔空間が形成されるようになっており、基部83からR2方向に一体的に延びた舌部85の円弧状面84において一対の楔空間73及び74と同様の楔空間を形成する弾性的可撓ベーン69は、弾性的可撓ベーン63と同様に、収容体3に対する回転体7のR1方向の相対的回転では、当該一対の楔空間を介する室65から室66への粘性流体5の流動に大きな抵抗をもって許容する一方、収容体3に対する回転体7のR2方向の相対的回転では、室66から室65への粘性流体5の流動に小さな抵抗をもって許容するようになっている。
【0039】
室62を弾性的可撓ベーン63及び64と協働して回転方向Rにおいて隣接する二室67及び68に区画する弾性的可撓ベーン70も、弾性的可撓ベーン69と同様に形成されており、回転体7の外周面4と舌部85の円弧状面84との間に一対の楔空間を形成する弾性的可撓ベーン70は、弾性的可撓ベーン69と同様に、R1方向の収容体3に対する回転体7の相対的回転では、当該一対の楔空間を介する室67から室68への粘性流体5の流動に大きな抵抗をもって許容する一方、R2方向の収容体3に対する回転体7の相対的回転では、室68から室67への粘性流体5の流動に小さな抵抗をもって許容するようになっている。
【0040】
弾性的可撓ベーン63及び64のA方向の一方の端面は、鍔部19の側面25にR1及びR2方向に滑り移動自在に密に接触しており、弾性的可撓ベーン63及び64のA方向の他方の端面も、蓋体本体33の側面32にR1及びR2方向に滑り移動自在に密に接触しており、基部83が筒部15の内周面2に一体的に形成された弾性的可撓ベーン69及び70の部位は、A方向の一方の端面で鍔部19の側面25に一体的に形成されており、基部83が突起35の内周面に一体的に形成された弾性的可撓ベーン69及び70の部位は、A方向の一方の端面88で、基部83が筒部15の内周面2に一体的に形成された弾性的可撓ベーン69及び70の部位のA方向の他方の端面89にぴったりと液密に接触しており、A方向の他方の端面で蓋体本体33の側面32に一体的に形成されている。
【0041】
弾性手段14は、一端部9がスリット36に配されて収容体3の蓋体本体33に係合すると共に他端部13が回転軸51の一端部52に形成された切り欠き57に挿入されて当該回転軸51の一端部52に嵌合されて係合する一方、一端部9及び他端部13の間で回転軸51の小径部58を囲繞して中空部41に配されたコイルばね91を具備しており、こうして、弾性手段14は、収容体3のスリット36に配されて収容体3に係合する一端部9と、車両用シート10の座部11及び背もたれ部12のうちの他方である背もたれ部12に固着された回転軸51に嵌合されて係合する他端部13とを有しており、コイルばね91は、一端部9で収容体3及び回転体7のうちの一方である収容体3に連結されていると共に他端部13で収容体3及び回転体7うちの他方である回転体7に回転軸51を介して連結されている。
【0042】
コイルばね91は、背もたれ部12が初期回転位置P0に回転される場合には、一端部9がスリット36の一端部92において底部93に接触して一端部9のR2方向の回転が阻止されて背もたれ部12をR1方向に回転させる最大の弾性的回転力としての捻り弾性力を蓄えるようになっており、背もたれ部12が所定回転位置P1に回転される場合には、背もたれ部12をR1方向に回転させる捻り弾性力を生じないようになり、背もたれ部12が所定回転位置P1から折畳み回転位置P2まで回転される場合には、一端部9が背もたれ部12の回転と共にスリット36の一端部92から他端部94までスリット36に案内されて移動されるようになっている。
【0043】
而して、コイルばね91は、背もたれ部12の座部11に対する初期回転位置P0から所定回転位置P1までの折畳み回転位置P2に向かうR1方向の回転では、一端部9がスリット36の一端部92の底部93に接触して蓄えられた捻り弾性力を他端部13及び回転軸51を介して背もたれ部12に付与して一対の楔空間73及び74を含む各対の楔空間を通過する粘性流体5の流動抵抗に抗して座部11に対して背もたれ部12をR1方向に回転させると共に背もたれ部12の所定回転位置P1への回転で予め蓄えられた捻り弾性力を全て消費する一方、背もたれ部12の座部11に対する所定回転位置P1から折畳み回転位置P2までの折畳み回転位置P2に向かうR1方向の回転では、一端部9がスリット36の一端部92における底部93から離れてスリット36の他端部94に向かってR1方向に移動すると共に折畳み回転位置P2に向かうR1方向の弾性的回転力の背もたれ部12への付与を解除して捻り弾性力の背もたれ部12への付与及び捻り弾性力の蓄えを行わないようになっており、背もたれ部12の座部11に対する折畳み回転位置P2から所定回転位置P1までの初期回転位置P0に向かうR2方向の回転では、一端部9がスリット36の他端部94から離れてスリット36の一端部92に向かってR2方向に移動して捻り弾性力の背もたれ部12への付与及び捻り弾性力の蓄えを行わないようになっており、背もたれ部12の座部11に対する所定回転位置P1から初期回転位置P0までの初期回転位置P0に向かうR2方向の回転では、一端部9がスリット36の一端部92において底部93に接触して一端部9と他端部13との間で捻られて捻り弾性力を蓄えると共に漸次増加するR1方向の弾性的な回転力の背もたれ部12への付与を開始するようになっている。
【0044】
自動車の車体95に取り付けられた座部11と座部11に回転自在に連結された背もたれ部12とを具備している車両用シート10においては、背もたれ部12は、自動車の前後方向に対して直交すると共に回転軸心Oを通る鉛直面96に対して所定角度α、例えばα=25°だけ後方に傾いた初期回転位置P0から鉛直面96に対して所定角度β、例えばβ=90°だけ前方に傾いた折畳み回転位置P2まで回転軸心Oを中心としてR1及びR2方向に回転自在に座部11に連結されており、初期回転位置P0では、図示しないロック解除自在なロック機構によりR1及びR2方向の回転を禁止されるようになっており、ロック機構のロック解除で、初期回転位置P0からγ=25°+δ(但し、δ=10°程度)だけR1方向に回転した所定回転位置P1までは、一対の楔空間73及び74を含む各対の楔空間を通過する比較的大きな粘性流体5の流動抵抗に抗してコイルばね91の捻り弾性力のR1方向の縮径弾性力によりR1方向に回転されるようになっており、所定回転位置P1から折畳み回転位置P2までは、一対の楔空間73及び74を含む各対の楔空間を通過する比較的大きな粘性流体5の流動抵抗に抗して背もたれ部12の自重及び場合により手動力の補助によりR1方向に回転するようになっている一方、折畳み回転位置P2から所定回転位置P1までは、背もたれ部12の自重に基づく漸次減少するR1方向の回転力及び一対の楔空間73及び74を含む各対の楔空間を通過する比較的小さな粘性流体5の流動抵抗に抗して手動によりR2方向に回転されるようになっており、所定回転位置P1から初期回転位置P0までは、一対の楔空間73及び74を含む各対の楔空間を通過する比較的小さな粘性流体5の流動抵抗と徐々に増加するコイルばね91のR1方向の縮径弾性力に抗して手動によりR2方向に回転されるようになっていると共にコイルばね91に捻り弾性力を蓄えさせるようになっている。
【0045】
一方向ロータリダンパとして機能する以上の車両シート用のロータリダンパ1では、図11に示す回転体7の回転位置(初期回転位置P0に相当)で、ロック機構のロック解除により背もたれ部12がコイルばね91の捻り弾性力の縮径弾性力の援助の下でR1方向に回転されて、室65及び67を縮小する一方、室66及び68を拡大するように収容体3に対して回転体7がR1方向に回転される際には、弾性的可撓ベーン63及び64の凹面72及び弾性的可撓ベーン69及び70の凹面82に粘性流体5の圧力が付与されるために、弾性的可撓ベーン63及び64の他端部側である自由端部77側が収容体3の内周面2に、弾性的可撓ベーン69及び70の舌部85側が回転体7の外周面4に夫々近づいて一対の楔空間73及び74を含む各対の楔空間を縮小するように弾性的可撓ベーン63及び64並びに弾性的可撓ベーン69及び70が弾性変形される結果、粘性流体5は縮小された一対の楔空間73及び74を含む各対の楔空間を通って室65及び67の夫々から室68及び66の夫々及び室66及び68の夫々に流れて、この縮小された楔空間73及び74を含む各対の楔空間を通過する粘性流体5の比較的大きな流動抵抗による大きな制動を回転体7のR1方向の回転に与えて背もたれ部12を同方向にゆっくりと所定回転位置P1を介して折畳み回転位置P2まで回転させる一方、図12に示す回転体7の回転位置(折畳み回転位置P2に相当)で、背もたれ部12が手動によりR2方向に回転されて、室65及び67を拡大する一方、室66及び68を縮小するように収容体3に対して回転体7がR2方向に回転される際には、弾性的可撓ベーン63及び64の各湾曲状の凸面71及び弾性的可撓ベーン69及び70の凹面81に粘性流体5の圧力が付与されるために、弾性的可撓ベーン63及び64の各自由端部77側が収容体3の内周面2から、弾性的可撓ベーン69及び70の舌部85が回転体7の外周面4から夫々離れて一対の楔空間73及び74を含む各対の楔空間を広げるように弾性的可撓ベーン63及び64並びに弾性的可撓ベーン69及び70が弾性変形される結果、粘性流体5は広げられた一対の楔空間73及び74を含む各対の楔空間を通って室66及び68の夫々から室67及び65の夫々及び室65及び67の夫々に流れて、この広げられた一対の楔空間73及び74を含む各対の楔空間通過する粘性流体5の比較的小さな流動抵抗による小さな制動が回転体7のR2方向の回転に与えられるために、背もたれ部12は、小さな手動力により初期回転位置P0まで回転されるようになっている。
【0046】
斯かるロータリダンパ1によれば、背もたれ部12を初期回転位置P0から所定回転位置P1まで回転させる際には、コイルばね91の補助により背もたれ部12を容易に回転さることができ、背もたれ部12を所定回転位置P1から折畳み回転位置P2まで回転させる際には、ベーン手段8により粘性流体5に大きな流動抵抗を生じさせることができる結果、背もたれ部12の自重に基づく折畳み回転位置P2に向かうに連れて漸次増加する回転力による急激な背もたれ部12の回転に適度の抵抗を与えることができて折畳み回転位置P2での背もたれ部12の激突を避けることができる一方、背もたれ部12を手動により折畳み回転位置P2から初期回転位置P0まで回転させる際には、ベーン手段8により生じる粘性流体の流動抵抗を低下させることができる結果、背もたれ部12を手動により折畳み回転位置P2から初期回転位置P0まで容易に回転させることができる。
【0047】
また、一方向ダンパとして機能するロータリダンパ1では、温度上昇に伴って粘度が低下する粘性流体5が回転体7のR1及びR2方向の回転において一対の楔空間73及び74を含む各対の楔空間を通過するようになっているために、例えば、低温下で常温時より粘度が増加した粘性流体5が楔空間73及び74を通過する場合には、楔空間73及び74での粘性流体5の圧力増大により弾性的可撓ベーン63の自由端部77側が収容体3の内周面2から常温時よりより離れるように弾性的可撓ベーン63が大きく弾性変形されて楔空間73及び74が常温時と比較して大きく広げられる結果、粘性流体5自体の粘度増加による流動抵抗の増大と楔空間73及び74の拡大による流動抵抗の低下とにより、低温にも拘らず常温時の制動を維持できる一方、高温下で常温時より粘度が低下した粘性流体5が楔空間73及び74を通過する場合には、楔空間73及び74での粘性流体の圧力減少により弾性的可撓ベーン63の自由端部77側が収容体3の内周面2に常温時より近づくように弾性的可撓ベーン63が小さく弾性変形されて楔空間73及び74が狭められる結果、粘性流体5自体の粘度低下による流動抵抗の減少と楔空間73及び74の縮小による流動抵抗の増大とにより、高温にも拘らず常温時の制動を維持できるようになり、而して、発生する制動に温度依存性がなく、高温でも低温でも変化のない制動を得ることができる結果、コイルばね91の捻り弾性力により背もたれ部12を折畳み回転位置P2に確実に回転させることができると共に小さな手動力により背もたれ部12を初期回転位置P0に戻し回転させることができる。
【0048】
以上のロータリダンパ1は、二対の弾性的可撓ベーン63及び64並び69及び70を有しているが、本発明のロータリダンパは、一対の弾性的可撓ベーン63及び64と弾性的可撓ベーン69又は70を有していてもよく、また、三対以上の弾性的可撓ベーンを有していてもよい。
【符号の説明】
【0049】
1 ロータリダンパ
2 内周面
3 収容体
4 外周面
6 空間
7 回転体
8 ベーン手段
9 一端部
10 車両用シート
11 座部
12 背もたれ部
13 他端部
14 弾性手段

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両用シートの座部及び当該座部に初期回転位置と折畳み回転位置との間で回転できるように回転自在に連結された背もたれ部のうちの一方に固定されると共に円筒状の内周面を有した収容体と、この収容体の円筒状の内周面と当該内周面に同心の円筒状の外周面との間で粘性流体を収容する空間を形成するように収容体の内部に収容体に対して相対的に回転自在に配されていると共に車両用シートの座部及び背もたれ部のうちの他方に固定される回転体と、背もたれ部の初期回転位置から折畳み回転位置に向かう方向の収容体に対する回転体の一方の方向の相対的回転では、粘性流体に大きな流動抵抗を、背もたれ部の折畳み回転位置から初期回転位置に向かう方向の収容体に対する回転体の一方の方向の相対的回転に対して反対方向である他方の方向の相対的回転では、当該流動抵抗よりも小さな流動抵抗を夫々生じさせるべく、収容体の円筒状の内周面と回転体の円筒状の外周面との間の粘性流体を収容する空間に配されたベーン手段と、一端部で車両用シートの座部及び背もたれ部のうちの一方に連結される一方、他端部で車両用シートの座部及び背もたれ部のうちの他方に連結されると共に収容体に対する回転体の回転軸心を中心とした背もたれ部の座部に対する初期回転位置から初期回転位置と折畳み回転位置との間の所定回転位置まで背もたれ部に折畳み回転位置に向かう方向の弾性的回転力を付与する弾性手段とを具備している車両シート用のロータリダンパ。
【請求項2】
弾性手段は、背もたれ部の座部に対する初期回転位置から所定回転位置までの折畳み回転位置に向かう方向の回転では、折畳み回転位置に向かう方向の弾性的回転力を背もたれ部に付与して粘性流体の流動抵抗に抗して座部に対して背もたれ部を回転させるようになっている一方、所定回転位置と折畳み回転位置との間の背もたれ部の座部に対する回転位置では、折畳み回転位置に向かう方向の弾性的回転力の背もたれ部への付与を解除するようになっている請求項1に記載の車両シート用のロータリダンパ。
【請求項3】
収容体は、当該収容体に対する回転体の回転軸心を中心とした背もたれ部の座部に対する所定回転位置から背もたれ部の座部に対する折畳み回転位置までに相当する範囲に亘って延びたスリット又は凹所を有しており、回転体は、車両用シートの座部及び背もたれ部のうちの他方に固着された回転軸を有しており、弾性手段は、収容体のスリット又は凹所に配されて収容体に係合する一端部と、回転体の回転軸に嵌合されて係合する他端部とを有している請求項1又は2に記載の車両シート用のロータリダンパ。
【請求項4】
弾性手段は、一端部で収容体及び回転体のうちの一方に連結されていると共に他端部で収容体及び回転体のうちの他方に連結されているコイルばねを具備している請求項1から3のいずれか一項に記載の車両シート用のロータリダンパ。
【請求項5】
ベーン手段は、収容体の円筒状の内周面と回転体の円筒状の外周面との間の粘性流体を収容する空間を二室に区画すると共に回転体の外周面に一体的に形成された一対の弾性的可撓ベーンと、この一対の弾性的可撓ベーンにより区画された二室のうちの少なくとも一方の室を更に二室に区画すると共に収容体の内周面に一体的に形成された他の弾性的可撓ベーンとを有しており、一対の弾性的可撓ベーンの夫々は、一端部では回転体の外周面に連接すると共に収容体に対する回転体の一方の方向の相対的回転と反対方向に向かって凸となった湾曲状の凸面と、この凸面に対応して一端部では回転体の外周面に連接すると共に凸面に沿って延びている湾曲状の凹面とを具備しており、凸面は、その他端部側で、収容体に対する回転体の相対的回転の回転方向において対峙した一対の楔空間を収容体の内周面との間で形成する円弧状凸面となっており、この円弧状凸面は、収容体に対する回転体の相対的回転の回転方向において当該円弧状凸面を間にして隣接する二室のうちの一方の室に連通する一方の楔空間の径方向の幅が収容体に対する回転体の相対的回転の回転方向において当該円弧状凸面を間にして隣接する二室のうちの他方の室に連通する他方の楔空間に向かうに連れて徐々に狭くなるように、当該一方の楔空間の径方向の幅を決定していると共に収容体に対する回転体の相対的回転の回転方向において当該円弧状凸面を間にして隣接する二室のうちの他方の室に連通する他方の楔空間の径方向の幅が収容体に対する回転体の相対的回転の回転方向において当該円弧状凸面を間にして隣接する二室のうちの一方の室に連通する一方の楔空間に向かうに連れて徐々に狭くなるように、当該他方の楔空間の径方向の幅を決定しており、一対の楔空間を通過する粘性流体は、一対の弾性的可撓ベーンの夫々を弾性的に撓ませてその粘度によって一対の楔空間の径方向の幅を決定するようになっており、一対の弾性的可撓ベーンの夫々は、初期回転位置から所定回転位置を介する折畳み回転位置への背もたれ部の座部に対する回転において他方の室から一方の室に狭められた一対の楔空間を通って流れて当該狭められた一対の楔空間によって規定されると共に当該回転に対して抗する流動抵抗を粘性流体に発生させるようになっている一方、折畳み回転位置から所定回転位置を介する初期回転位置への背もたれ部の座部に対する回転において一方の室から他方の室に広げられた一対の楔空間を通って流れて当該広げられた一対の楔空間によって規定されると共に当該回転に対して抗する流動抵抗を粘性流体に発生させるようになっている請求項1から4のいずれか一項に記載の車両シート用のロータリダンパ。
【請求項6】
凹面は、凸面の一端部から他端部にかけて徐々に当該凸面に近づくように凸面に沿って延びている請求項5に記載の車両シート用のロータリダンパ。
【請求項7】
円弧状凸面は、収容体の円筒状の内周面の曲率半径よりも小さな曲率半径を有している請求項5又は6に記載の車両シート用のロータリダンパ。
【請求項8】
他の弾性的可撓ベーンは、収容体の内周面に一体的に形成された基部と、この基部に一体的に形成されていると共に回転体の外周面に対面した円弧状面を有した弾性的に可撓性の舌部とを有している請求項5から7のいずれか一項に記載の車両シート用のロータリダンパ。
【請求項9】
弾性手段は、回転体の中空部に回転体と同軸に配されている請求項1から8のいずれか一項に記載の車両シート用のロータリダンパ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2011−33050(P2011−33050A)
【公開日】平成23年2月17日(2011.2.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−176922(P2009−176922)
【出願日】平成21年7月29日(2009.7.29)
【出願人】(000005326)本田技研工業株式会社 (23,863)
【出願人】(000103644)オイレス工業株式会社 (384)
【Fターム(参考)】