説明

車両上部構造

【課題】
ルーフキャリアのボディ側取付部の強度向上が可能な車両上部構造を提供することである。
【解決手段】
車両上部構造であって、ルーフパネルの両側をL字フランジとし、該ルーフパネルの両側の該L字フランジに左右各アウタパネルのL字フランジを重ね合わせて車両前後方向に延びる溝を形成し、この溝内にキャリア台座を締結するボルト部を有するブラケットを備えている。このブラケットはルーフパネルのL字フランジに挟み込むU字断面を有している。そして、ブラケットをルーフパネルに3枚溶接するとともに、この溶接部を除く位置で、ルーフパネルと各アウタパネルを2枚溶接する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動車のルーフ上に設置してサーフボードやスキー用具、その他の荷物を運搬するためのルーフキャリアを取り付けるための車両上部構造に関する。
【背景技術】
【0002】
自動車のルーフ上に設置するルーフキャリアとしては、自動車のルーフ上の前後に横架バーを配設するとともに、これらの横架バーの両端部間に支持フレームを架設状態で連結してなるものが一般的に知られている。
【0003】
このようなルーフキャリアを自動車のルーフに装着する取付装置としては、従来から種々の構造のものが開発されているが、その多くは上端部にルーフキャリアの横架バーの端部を挿通させる筒部を備え、且つ該筒部に固定用ネジを装着してなる取付金具と、この取付金具を自動車のルーフの両側縁部に係止状態で固定させるための固定金具とから構成されている。
【0004】
しかし、このようなルーフキャリアの取付装置によれば、ルーフキャリアの設置作業に手間を要するばかりでなく、ルーフキャリアの取付が不安定となる恐れがあった。この問題を解決し、ルーフキャリアをワンタッチで自動車のルーフへ固定するルーフキャリアの取付装置が特開平10−157521号に開示されている。
【0005】
ルーフキャリアの他の従来の取付構造が図1に示されている。図1において、2はL字フランジ2aを両側(片側のみ図示)に有するルーフパネルであり、4はL字フランジ4aを有するアウタパネルであり、アウタパネル4はそのL字フランジ4aをルーフパネル2のL字フランジ2aに重ね合わせるようにして、ルーフパネル2の両側に配置されている。
【0006】
ルーフパネル2のL字フランジ2aとアウタパネル4のL字フランジ4aを重ね合わせて配置することにより、車両の前後方向に延びる溝6が画成されている。
【0007】
8はキャリア台座14を取り付けるためのブラケットであり、ボルト10が溶接によりブラケット8に固定されている。ブラケット8は2枚打ちスポット溶接12により、ルーフパネル2のL字フランジ2aに固定されている。サイドパネル4は、ルーフパネル2にスポット溶接されたブラケット8に干渉しない位置でルーフパネル2にスポット溶接されている。
【0008】
キャリア台座14は穴14aを有しており、この穴14a中でナット16をボルト10に螺合させることにより、キャリア台座14がブラケット8に取り付けられる。特に図示しないが、このキャリア台座14にルーフキャリアがボルトにより締結される。
【特許文献1】特開平10−157521号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
特許文献1に開示されたルーフキャリアの取付装置は、ルーフキャリアをワンタッチで確実且つ強固に自動車のルーフに固定できるとともに、ルーフキャリアの取付剛性を高めることができるが、この取付装置は自動車のボディ側の剛性を強化するものではない。
【0010】
また、図1に示されたような従来のルーフキャリアの取付構造では、キャリア台座取付用のブラケット8がルーフパネル2と2枚打ちスポット溶接されているため、スポット溶接部の強度が低いという問題がある。
【0011】
溶接強度を向上するため、裏からパッチ部材18を当てようとしても、図2に示すようにパッチ部材18落下防止のための専用治具20が必要となり、専用治具20がないとパッチ部材18をセットすることができない。
【0012】
本発明はこのような点に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、部品セット用の専用治具を必要とせず、ルーフキャリアのボディ側取付部の強度向上が可能な車両上部構造を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明によると、ルーフパネルの両側をL字フランジとし、該ルーフパネルの両側の前記L字フランジに左右各アウタパネルのL字フランジを重ね合わせて車両前後方向に延びる溝を形成し、該溝内にキャリア台座が締結されるブラケットを備え、該ブラケットは前記ルーフパネルのL字フランジに挟み込むU字断面を有し、前記ブラケットを前記ルーフパネルに3枚溶接するとともに、該溶接部を除く位置で、前記ルーフパネルと前記各アウタパネルを溶接した、ことを特徴とする車両上部構造が提供される。
【発明の効果】
【0014】
本発明の車両上部構造によると、ルーフキャリア取付部の強度向上が可能なため、ルーフキャリアに積載する許容積載重量を大幅にアップすることができる。更に、従来のようにパッチ部材落下防止のための専用治具を必要とすることなく、強度向上とともに組立性を向上できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
図3を参照すると、キャリア台座取付用のブラケット22が示されている。図3(A)はブラケット22の平面図、図3(B)は図3(A)のZ方向矢視図、図3(C)は図3(A)のA−A線断面図である。
【0016】
図3(C)に最もよく示されるように、ブラケット22はU字断面を有している。ブラケット22には2本のボルト24が各ボルト24の頭24aの外周を符号26で示すようにプロジェクション溶接することにより固定されている。23はボルトセット穴であり、25はルーフパネル2にブラケット22をスポット溶接するスポット溶接位置を示している。
【0017】
次に、図4A乃至図6を参照して、本発明実施形態に係る車両上部構造の組立方法について説明する。まず、図4に矢印28で示すようにブラケット22をルーフパネル2のL字フランジ2aを挟み込むように挿入する。ブラケット22をルーフパネル2のL字フランジ2aに挿入する様子の断面図が図5に示されている。
【0018】
次いで、図6の符号25で示すようにブラケット22を3点でルーフパネル2のL字フランジ2aに3枚スポット溶接をする。
【0019】
次いで、アウタパネル4のL字フランジ4aの一段と低くなった段差部5に、ルーフコンポーネント30のブラケット22が矢印32で示すようにはまり込むように、ルーフパネル2のL字フランジ2aとアウタパネル4のL字フランジ4aを重ね合わせる。
【0020】
この状態で、符号34a,34bで示すようにブラケット22の溶接位置25を除く位置で、ルーフパネル2とアウタパネル4を2枚スポット溶接する。
【0021】
組み立てられた状態の断面図が図7に示されている。図7で符号38,40はスポット溶接を示しており、U形状フランジ22でルーフパネル2のL字フランジ2aを挟み込むことにより、ブラケット22がL字フランジ2aに3枚スポット溶接される点が良く示されている。
【0022】
キャリア取付台座42の穴42a内にブラケット22のボルト24を挿入し、ナット44をボルト24に螺合することにより、車両前後方向に伸長したキャリア取付台座42がブラケット22に取り付けられる。
【0023】
図8に示すように、ルーフキャリア46の横架バー48を支持する一対の支持部材50をボルト52でキャリア取付台座42に固定することにより、ルーフキャリア46が車両のルーフパネル2上に取り付けられる。
【0024】
本実施形態の車両上部構造によれば、U形状ブラケット22をルーフパネル2のL字フランジ2aに3枚スポット溶接したことにより、ルーフキャリア46取付部の強度を向上することができ、ルーフキャリア46上に積載する許容積載重量を大幅にアップすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】従来のキャリア台座取付部の構造を示す断面図である。
【図2】従来技術の問題点を示す図である。
【図3】図3(A)はキャリア台座取付用ブラケットの平面図、図3(B)は図3(A)のZ方向矢視図、図3(C)は図3(A)のA−A線断面図である。
【図4】ブラケットをルーフパネルのL字フランジに挿入する状態を示す分解斜視図である。
【図5】ブラケットをルーフパネルのL字フランジに挿入する状態を示す断面図である。
【図6】ルーフコンポーネントのL字フランジとアウタパネルのL字フランジとを重ね合わせるように組み付ける状態を示す分解斜視図である。
【図7】キャリア取付台座を固定した状態の本発明実施形態に係る車両上部構造の断面図である。
【図8】ルーフキャリアを車両のルーフに搭載した状態の一部断面図である。
【符号の説明】
【0026】
2 ルーフパネル
2a L字フランジ
4 アウタパネル
4a L字フランジ
22 キャリア台座取付用ブラケット
24 ボルト
30 ルーフコンポーネント
42 キャリア台座
46 ルーフキャリア
48 横架バー

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ルーフパネルの両側をL字フランジとし、該ルーフパネルの両側の前記L字フランジに左右各アウタパネルのL字フランジを重ね合わせて車両前後方向に延びる溝を形成し、
該溝内にキャリア台座が締結されるブラケットを備え、
該ブラケットは前記ルーフパネルのL字フランジに挟み込むU字断面を有し、
前記ブラケットを前記ルーフパネルに3枚溶接するとともに、該溶接部を除く位置で、前記ルーフパネルと前記各アウタパネルを溶接した、
ことを特徴とする車両上部構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2006−219064(P2006−219064A)
【公開日】平成18年8月24日(2006.8.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−36012(P2005−36012)
【出願日】平成17年2月14日(2005.2.14)
【出願人】(000005326)本田技研工業株式会社 (23,863)
【Fターム(参考)】