車両企画支援システム
【課題】 画面上に車両モデルを表示して車両の企画を支援する車両企画支援システムにおいて、走行シミュレーションで車両モデルをより正確に評価する。
【解決手段】 企画した車両モデルを立体画像として評価用モニタ装置に表示するシミュレーション手段は、高速走行シミュレーション時に、仮想空間の背景画像が、道路230近傍にオブジェクトが表示されていないオブジェクトレス背景画像である場合に、オブジェクトレス背景画像に、遠方部分ほど間隔を狭くしたグリッド画像232を追加表示することによって、背景画像の距離感及び速度感を強める補正を行う。
【解決手段】 企画した車両モデルを立体画像として評価用モニタ装置に表示するシミュレーション手段は、高速走行シミュレーション時に、仮想空間の背景画像が、道路230近傍にオブジェクトが表示されていないオブジェクトレス背景画像である場合に、オブジェクトレス背景画像に、遠方部分ほど間隔を狭くしたグリッド画像232を追加表示することによって、背景画像の距離感及び速度感を強める補正を行う。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、コンピュータを利用した車両企画支援システムに係り、より詳細には、画面上に表示された仮想空間内での走行シミュレーションにおいて車両モデルをより正確に評価するための車両企画支援システムに係る。
【背景技術】
【0002】
新型車両の開発においては、先ず、車両企画として、車両のコンセプト(車両全体としての商品性)を踏まえて車両のパッケージング等が検討される。従来の車両企画における企画車両の評価は、企画車両の概要を表す多数の図面に基づいて行われていた。このため、企画車両の一部分を変更すると、多くの図面を書き直さなければならなかった。また、クレーモデルやモックアップモデル、更に試作車の製作には、多大なコストと時間がかかる。このため、クレーモデル等を作り直すような試行錯誤を何度も繰り返すことは困難であった。
【0003】
そこで、本出願人は、車両企画をより効率的且つ効果的に行うために、車両企画支援プログラムを提案している(例えば、特許文献1)。かかる車両企画支援プログラムをコンピュータにより実行する車両企画支援システムによれば、画面上に車両の外形や車室内空間等に関する複数の車両モデルを変形可能に表示して車両企画を支援することができる。
【0004】
【特許文献1】特開2004−042747号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
車両企画支援システムにおける企画段階では、企画した車両モデルについて種々の評価が行われる。かかる評価においては、車両モデルを、実物大の大きさで表示して、仮想空間内を走行させ、運転者からの視認性や、運転者の受ける圧迫感等といった視界に関する評価も行われる。車両モデルを仮想空間内で走行させる際には、車両モデルのフロントガラス越しに、例えば、市街地の電柱や郵便ポスト、更には通行人等の仮想空間の背景画像が合成されて表示される。
【0006】
ところで、一般に、視認性や圧迫感は、車両の走行速度や、カーブ等の操舵条件等によって変化する。このため、車両モデルの走行シミュレーションにおいては、市街地を走行する場合の評価だけでなく、高速道路や、山岳有料道路等を走行する場合の評価も行われる。
【0007】
しかし、仮想空間内の高速道路や山岳有料道路等の背景画像においては、通常、道路脇に郵便ポスト等のオブジェクトが存在せず、また、自動車専用道路であるので通行人もいない。一方、現実の車両の運転者が感じる走行時の速度感覚は、運転者が周囲の郵便ポスト等の既知のオブジェクトの見かけの大きさの変化や移動速度を認識することによって得られる要素が大きい。
【0008】
このため、高速道路のように周囲に郵便ポスト等のオブジェクトの少ない背景画像を表示して、走行時の車両モデルを評価しようとすると、立体映像であっても背景画像について十分な距離感覚や速度感覚が得られない場合があり、その場合、車両モデルの走行時の正確な評価を行うことが困難であった。すなわち、仮想空間の背景画像として、現実の風景を忠実に再現しただけでは、車両モデルの評価を正確に行う上で不十分な場合がある。
一方、多数のオブジェクトが含まれる市街地の背景画像の中を車両モデルに高速走行させることも不自然であり、却って正確な評価を妨げてしまう。
【0009】
そこで、本発明は、画面上に車両モデルを表示して車両の企画を支援する車両企画支援システムにおいて、走行シミュレーションで車両モデルをより正確に評価するための車両企画支援システムを提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記の目的を達成するため、本発明の車両企画支援システムは、画面上に車両モデルを表示して車両の企画を支援する車両企画支援システムであって、車両データ及び仮想空間データを格納したデータベースサーバと、データベースサーバに格納された上記車両データを利用して、企画しようとする車両の車両モデルを構築するモデル構築手段と、モデル構築手段によって構築された車両モデルを立体画像として評価用モニタ装置に表示するシミュレーション手段とを有し、シミュレーション手段は、車両モデルとして、当該車両モデルの運転席から前方を見た車室内画像を表示し、且つ、運転席から見た前方視界として、仮想空間データに基づく仮想空間の背景画像を重ねて表示する画像合成手段と、評価用モニタ装置に表示する背景画像を上記データベースサーバから選択する背景画像選択手段と、背景画像選択手段によって選択された背景画像が、道路近傍にオブジェクトが表示されていないオブジェクトレス背景画像である場合に、オブジェクトレス背景画像の距離感及び/又は速度感を強める補正を行う背景画像補正手段と、を有することを特徴としている。
【0011】
このように構成された本発明の車両企画支援システムによれば、背景画像補正手段によりオブジェクトレス背景画像の距離感や速度感を強める補正を行うので、評価者により現実的な速度感覚を与えることができ、走行時のシミュレーションにおける車両モデルのより正確な評価を可能にする。
【0012】
また、本発明において好ましくは、背景画像補正手段は、オブジェクトレス背景画像に、遠方部分ほど間隔を狭くしたグリッド画像を追加表示する。このように、グリッド画像を追加表示することにより、オブジェクトレス背景画像の距離感を強めることができる。
【0013】
また、本発明において好ましくは、背景画像補正手段は、オブジェクトレス背景画像に、色を遠方部分ほど薄く、近い部分ほど濃くした空の画像を追加表示する。このように、遠方部分ほど薄く、近い部分ほど濃くした空の背景画像を表示することにより、オブジェクトレス背景画像の距離感を強めることができる。
【0014】
また、本発明において好ましくは、背景画像補正手段は、オブジェクトレス背景画像に、色を遠方部分ほど薄く、近い部分ほど濃くした建物群の画像を、道路に沿って追加表示する。このように、遠方部分ほど薄く、近い部分ほど濃くした建物群の画像を追加表示することにより、オブジェクトレス背景画像の距離感を強めることができる。
【0015】
また、本発明において好ましくは、背景画像補正手段は、オブジェクトレス背景画像に、遠方部分ほど移動速度の遅いオブジェクトを道路に沿って追加表示し、車両モデルの走行速度が速くなるほど、オブジェクトの移動速度の遅い領域を狭くする。これにより、走行シミュレーションにおいて速度感覚を強めることができる。
【0016】
また、本発明において好ましくは、シミュレーション手段は、車室内画像の奥行き感を強める補正を行う車室内画像補正手段を更に有する。このように、車室内画像補正手段によって、車室内画像の奥行き感を強めることができ、走行シミュレーションにおいて、車室内で運転者が感じる圧迫感や操作性感をより正確に評価することができる。
【0017】
また、本発明において好ましくは、車室内画像補正手段は、車室内画像に、車両モデルの車室内の表面の形状に従うグリッド画像を追加表示する。
このように車室内画像に、グリッド画像を追加表示すれば、車室内の形状が明らかとなり、走行時の圧迫感をより正確に評価することができる。
【0018】
また、本発明において好ましくは、車室内画像補正手段は、車室内画像において、明るさを運転者に近い部分ほど暗くする。このように、運転者に近い部分ほど暗くし、遠い部分ほど明るくすれば、車室内の距離感覚を強めることができ、走行時の圧迫感をより正確に評価することができる。
【発明の効果】
【0019】
このように、本発明によれば、画面上に車両モデルを表示して車両の企画を支援する車両企画支援システムにおいて、走行シミュレーションで車両モデルをより正確に評価することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
以下、添付の図面を参照して、本発明の車両企画支援システムの実施形態を説明する。
(1.システム全体)
まず、図1を参照して、実施形態における車両企画支援システムの概要を説明する。図1は、本実施形態の車両企画支援システムの基本構成を示すブロック図である。
本実施形態による車両企画支援システム1は、画面上に車両モデルを表示して車両の企画を支援する車両企画支援システムであって、コンピュータ2と、データベースサーバ4と、評価用モニタ6とから構成されている。
【0021】
(1.(1)コンピュータ)
このコンピュータ2は、CPU8、ROM10、RAM12,記憶部14、入力部16、表示部18、画像処理部20、及び通信部22を有し、これらは互いにシステムバスを介して接続されている。
【0022】
入力部16は、命令やデータ等を外部から入力するキーボードや、マウス等である。
ROM10には、コンピュータ2を起動させるブートプログラム等が格納されている。
記憶部14は、ハードディスクドライブ等の記憶装置である。この記憶部14は、企画支援プログラム格納部を有し、そこにモデル構築部の機能、及びシミュレーション部の機能をそれぞれ実現するための企画支援プログラム30(図2参照)が格納されている。
【0023】
RAM12は、車両企画支援システム上で実行される企画支援プログラム30や各種のデータを一時的に記憶するためのプログラム領域や、データの書込みや読出しを行うためのデータ領域を有する。
CPU8は、中央演算装置であり、一般的なコンピュータの演算処理に加え、企画支援プログラム30(図2参照)による処理を実行する。
【0024】
画像処理部20は、CPU8からの指令に基づいて表示させようとするデータを演算処理して、表示部18又は評価用モニタ装置6に表示させる。
表示部18は、液晶ディスプレイ等であり、画像処理部20で演算処理された車両モデルやデータを表示する。
通信部22は、無線又は有線の通信回線を介して、データベースサーバ4、評価用モニタ装置6及び他のコンピュータ(図示せず。)との間で情報を送受信するものである。
【0025】
(1.(2)データベース)
次に、図2を参照して、データベースサーバ4について説明する。
データベースサーバ4には、図2に示すように、種々の車両データや仮想空間データがそれぞれ格納された種々のデータベースが含まれている。
【0026】
これらのデータベースのうち、基準データベース60、外観データベース62、外観パーツデータベース64、内装データベース66及び内装パーツデータベース68には、それぞれ、車両モデルのテンプレートとなる「車両データ」が格納されている。「車両データ」は、車両に関する寸法や角度の諸元値をパラメータ(変数)として、車両の形状や乗員姿勢等を規定したデータである。
【0027】
基準データベース60には、車両モデルのうちの後述する基準モデルのテンプレートとなる、主要寸法データ、乗員データ及びアンダーボディデータの車両データが格納されている。
【0028】
外観データベース62には、車両モデルのうちの後述する外観モデルのテンプレートとなる、外観データであるエクステリアデータの車両データが格納されている。
【0029】
外観パーツデータベース64には、車両モデルのうちの後述する外観パーツモデルのテンプレートとなる、ドアデータ及びガラスデータの車両データが格納されている。
【0030】
内装データベース66には、車両モデルのうちの後述する内装モデルのテンプレートとなる、上部インテリアデータ及び下部インテリアデータの車両データが格納されている。
【0031】
内装パーツデータベース68には、車両モデルのうちの後述する内装パーツモデルのテンプレートとなる、インパネデータ、コンソールデータ及びシートデータの車両データが格納されている。
【0032】
さらに、これらの各データベース60〜68の車両データには、それぞれ、後述するモーフィング画面表示プログラムによる処理を実行する際に、諸元どうしを関連づけて、車両の各部分の形状や配置の整合性を保つためのルールデータが含まれる。
【0033】
また、データベースサーバ4のベンチマーク車両データベース70には、既存車種の各部の寸法や角度等の諸元値のデータが車種ごとに格納されている。これらのデータは、企画車両の形状や各部の配置を変更するベースとなるベース車両や、企画車両の比較対照となるベンチマーク車両のデータとして使用される。
【0034】
また、データベースサーバ4の規制値データベース72には、レギュレーション上、又は車両設計上の制約値に関するデータが格納されている。これらのデータは、例えば、国内外の衝突安全基準で定められたバンパ高さ等の具体的な数値や、車両企画の段階に応じて許容することができる範囲を各諸元(ルーフ高さ等の諸元項目)に対して規定した規定値で構成されている。
【0035】
また、データベースサーバ4の仮想空間データベース74には、車両モデルを評価用モニタ装置6でシミュレーション表示する際に仮想空間の背景画像を構成するための仮想空間データが格納されている。この仮想空間データには、建築物、道路、交差点、信号、歩行者、他の車両等のオブジェクトのデータが含まれる。また、仮想空間の背景画像には、例えば、市街地の背景画像や、高速道路の背景画像、及び山岳有料道路の背景画像等、種々の道路の背景画像が含まれる。
【0036】
(1.(3)評価用モニタ)
次に、図3を参照して、評価用モニタ装置6について説明する。
図3に示すように、評価用モニタ装置6は、プロジェクタ24と、平面スクリーン26とを備えている。プロジェクタ24は、画像処理部20で演算処理された情報に基づいて、車両モデルを平面スクリーン26に後方から投影する。そして、平面スクリーン26の前方に位置する車両企画者(企画車両の評価や、車両企画支援システムの操作等を行う者)が、それらの車両モデルを表示する画面28を見ることができるようになっている。これにより、評価用モニタ装置6により、試作車を製作しなくても、車両企画者が企画車両の検討や評価を行うことができる。
【0037】
(2.企画支援プログラム)
次に、企画支援プログラム30、及び、企画支援システムにおける企画支援プログラムによる処理の流れの概要について説明する。
図3に示すように、企画支援プログラム30には、データベースサーバ4に格納された車両データを利用して、企画しようとする車両の車両モデルを構築するためのモデル構想プログラム32と、モデル構築手段によって構築された車両モデルを立体画像として評価用モニタ装置6に表示するシミュレーションプログラム34とが含まれている。
【0038】
本実施形態では、コンピュータ2でモデル構想プログラム32による処理を実行して車両モデルを構築する。ここでは、上記車両モデルとして、上記評価用モニタ手段に表示して企画車両の各部のレイアウトによって定まるパッケージング等に関する検討、評価を行う。図4に車両モデルに含まれる各モデルを示す。
さらに、コンピュータ2でシミュレーションプログラム34による処理を実行して、車両モデルを表示して、企画車両の評価を行う。
【0039】
(2.1モデル構想プログラム)
まず、企画支援プログラム30のうちのモデル構想プログラム32、及び、そのプログラムの処理をコンピュータ2により実行することによる車両企画支援について説明する。
図3に示すように、モデル構想プログラム32には、諸元値入力プログラム(諸元値入力画面表示プログラム)36、車両モデルデータ生成プログラム38、及びモーフィング画面表示プログラム40が含まれている。
また、シミュレーションプログラム34には、シミュレーション画像表示プログラム44が含まれている。
【0040】
(2.1(1)諸元値入力プログラム)
まず、構想モデルプログラムのうち、諸元値入力プログラム36について説明する。
諸元値入力プログラム36は、車両企画者の入力等に基づいて「諸元値データ」を生成するためのプログラムである。ここで、「諸元値データ」とは、企画車両の車型や車両寸法を決定する寸法等の諸元値等をいう。また、車型とは、スポーツ、セダン、トラックなどの車両のタイプをいう。
そして、諸元値入力プログラム36により入力された諸元値を利用して、以下に説明する車両モデルデータ生成プログラムにより、車両モデルのための車両モデルデータが生成される。
【0041】
(2.1(2)車両モデルデータ生成プログラム)
次に、モデル構成プログラムのうち、車両モデルデータ生成プログラム38について説明する。
車両モデルデータ生成プログラム38は、諸元入力プログラム36によって入力された諸元値データ、及びデータベースサーバ4に格納されている車両データに基づいて、企画車両の「車両モデルデータ」を生成するためのプログラムである。車両モデルデータは、例えば、データベースサーバ4からテンプレートとして読み出した車両データに諸元値データを代入して生成され、例えば、3次元座標データの集合により構成される。そして、この車両モデルデータにより、企画車両の形態としての「車両モデル」の表示が可能となる。
【0042】
車両モデルデータ生成プログラム38には、図3に示すように、基準モデルデータ生成プログラム46、外観モデルデータ生成プログラム48、外観パーツモデルデータ生成プログラム50、内装モデルデータ生成プログラム52及び内装パーツモデルデータ生成プログラム54が含まれる。これらのプログラムによる処理を実行することにより、企画車両の車両モデルのための車両モデルデータが生成される。
【0043】
(2.1(2)(a)基準モデル生成プログラム)
基準モデルデータ生成プログラム46による処理を実行することにより、データベースサーバ4に格納されている基準データベース60に基づいて、基準モデル80のための基準モデルデータが生成される。基準モデル80は、企画車両における乗員配置等のパッケージングや企画車両の基本的な諸元値を規定するモデルである。
【0044】
基準モデル80には、図4に示すように、主要寸法モデル82、乗員モデル84及びアンダーボディモデル86が含まれる。基準モデル80のうち、これらの個々のモデル82、84及び86により、或いは、これらのモデル82、84及び86を組み合わせた基準モデル80により、乗員配置等のパッケージングや車両の基本的な諸元値を検討、評価することができる。
【0045】
ここで、図5(a)に、主要寸法モデル82の表示例を示す。主要寸法モデル82は、車両の外枠82a、グランド(地面に相当)82b、車輪82c等に関するモデルであり、車両の外枠の寸法、ホイールベースの長さ、車輪の寸法等の諸元値で規定される。
【0046】
次に、図5(b)に乗員モデル84の表示例を示す。乗員モデル84は、乗員マネキン84a、ステアリング84b、ペダル84c及び視界条件84d等に関するモデルである。
【0047】
乗員マネキン84aは、乗員配置や姿勢を検討するためのものであり、国内外の基準に準じた一定の形状及び寸法を有している。この乗員マネキン84aは、乗員配置及び姿勢を特定するための種々の寸法や角度の諸元で規定される。この諸元には、例えば、ヒップポイントに対する頭頂やかかとの位置、最前列を2列目の乗員間の距離等が含まれる。なお、ここで寸法には、各部分間の相対距離も含まれる。
【0048】
ステアリング84b及びペダル84cは、それらの乗員に対する配置を検討するためのものであり、それらの形状及び寸法は一定である。ステアリング84b及びペダル84cは、例えば、それらのヒップポイント又はかかとに対する相対距離や角度の諸元で規定される。視界条件84dは、アイポイントから車両の前後両方に上下に拡がる角度等の諸元で規定される。
【0049】
次に、図5(c)にアンダーボディモデルの表示例を示す。アンダーボディモデル86は、ダッシュパネル86a、フロアパネル86b及びサイドシル86c等の車体の下部構造に関するモデルである。このアンダーボディモデル86は、ダッシュパネル86a及びフロアパネル86bを構成する数枚のパネルのそれぞれの寸法や角度、サイドシル86cの寸法等の諸元値で規定される。
【0050】
(2.1(2)(b)外観モデルデータ生成プログラム)
また、外観モデルデータ生成プログラム52による処理を実行することにより、データベースサーバ4に格納されている外観データベース62に基づいて、外観モデル90のための外観モデルデータが生成される。外観モデル90は、企画車両の外観イメージ等を規定するモデルである。外観モデル90には、図4に示すように、エクステリアモデル92が含まれる。
【0051】
外観モデル90により、企画車両の外観イメージ等を検討することができる。さらに、外観モデル90を基準モデル80と組み合わせることにより、車両の弧住空間等のパッケージングをより詳細に検討することができる。
【0052】
ここで、図6(a)にエクステリアモデル92の表示例を示す。エクステリアモデル92は、バンパ及びボンネットを含む車両の外板に関するモデルである。エクステリアモデル92は、車両の外形に関する種々の寸法や角度の諸元値で規定される。諸元値には、例えば、ホイールベース、フロントオーバーハング、リアオーバーハング、カウルポイントの位置、ルーフトップ高さ、ピラー部の傾斜角度等が含まれる。
【0053】
(2.1(2)(c)外観パーツモデルデータ生成プログラム)
また、外観パーツモデルデータ生成プログラム100による処理を実行することにより、データベースサーバ4に格納されている外観パーツデータベース64に基づいて、外観パーツモデル100のための外観パーツモデルデータが生成される。外観パーツモデル100は、企画車両の外観の一部を構成するドアやウインドウガラスの形状や配置を個別に規定するモデルである。外観パーツモデル100には、図4に示すように、ドアモデル102及びガラスモデル104が含まれている。
【0054】
ここで、図7(a)〜図7(c)に、ドアモデル102の表示例を示す。ドアモデル102は、前後ドアの開口フランジ102a、前後サイドドアの外板及びサッシュ102b、及び、リフトゲートの外板及びサッシュ102cに関するモデルである。また、図7(b)〜図7(d)に、ガラスモデル104の表示例を示す。ガラスモデル104は、フロントウインドウ、フロントクォータウインドウ、サイドウインドウ、リアクォータウインドウ及びリアウインドウの各ガラスに関するモデルである。これらのモデルは、それぞれの形状及び配置に関する種々の寸法や角度の諸元値で規定される。
【0055】
これらドアモデル102及びガラスモデル104により、外観の一部を構成するドアやウインドウガラスの形状や配置を個別に検討することができる。さらに、外観パーツモデル100を外観モデル90と組み合わせることにより、車両の外観イメージ等をより詳細に検討することができる。
【0056】
(2.1(2)(d)内装モデルデータ生成プログラム)
また、内装モデルデータ生成プログラム52による処理を実行することにより、データベースサーバ4に格納されている内装データベース66に基づいて、内装モデル110のための内装モデルデータが生成される。内装モデル110は、企画車両の内装を構成するトリムやトップシーリング等の形状及び配置に関する種々の寸法や角度を規定するモデルである。内装モデル110には、図4に示すように、上部インテリアモデル112及び下部インテリアモデル114が含まれる。
【0057】
ここで、図8(a)に内装モデル110の表示例を示す。内装モデル110は、上部インテリアモデル112は、ピラートリム112a及びトップシーリング(ルーフヘッダ、ルーフレール及びルーフのトリム)112bに関するモデルである。
さらに、図8(b)に下部インテリアモデル112の表示例を示す。下部インテリアモデル114は、前後ドア及びリフトゲートのトリム114a、カウルサイドトリム114b、Bピラー下部トリム114c、リアサイドトリム114d及びスカッフプレート114eに関するモデルである。
【0058】
(2.1(2)(e)内装パーツモデルデータ生成プログラム)
また、内装パーツモデルデータ生成プログラム54による処理を実施することにより、データベースサーバ4に格納されている内装パーツデータベース68に基づいて、内装パーツモデル120のための内装パーツモデルデータが生成される。内装パーツモデル120は、企画車両の内装の一部を構成するインパネやコンソールやとシートの配置や形状に関する種々の数値や角度を規定するモデルである。
【0059】
内装パーツモデル120には、図4に示すように、インパネモデル122、コンソールモデル124及びシートモデル126が含まれている。インパネモデル122及びコンソールモデル124は、それらの配置に関する寸法や角度の諸元の諸元値データで規定される。また、シートモデル126は、シート配置、シート幅、ヘッドレス上下位置、シートバック角度等に関する寸法(距離)や角度の諸元の諸元値データで規定される。
【0060】
ここで、図9にこれらモデルの表示例を示す。インパネモデル122、コンソールモデル124及びシートモデル126は、ダッシュボード等を含むインパネ、このインパネと連続しているコンソール及び複数のシートに関するモデルである。これらのモデルは、それらの車室内における配置を検討するためのものであり、一定の形状を有している。
【0061】
上述した車両モデルデータ生成プログラム38による処理を実施するに当たっては、個々のモデルデータ生成プログラム46〜54により、各車両モデル互いに独立に生成し、それぞれ検討することができる。例えば、主要寸法モデル82により、車両の全体の大きさを、また、乗員モデル84により、車両の内部空間を、さらに、エクステリアモデル92により、車両の外観イメージを、それぞれ別個に検討することができる。
次いで、図10に示すように、これらのモデルを重ね合わせて表示することにより、互いの干渉状態等を視覚的に確認することができる。
【0062】
図10に示す例では、乗員モデル84の乗員の頭が動く範囲を示す空間エリアの一部分(図中の斜線部分)が、外観モデルのルーフから飛び出してしまっている。そこで、車両企画者は、このような干渉状態を解消するために、乗員モデルのヒップポイントを下げたり、外観モデルのルーフの高さを上げたりといった調整をして、各車両モデルを再検討することができる。
そのような車両モデルの調整は、以下に説明するモーフィング画面表示プログラムにより容易に行うことができる。
【0063】
(2.1(3)モーフィング画面表示プログラム)
次に、モデル構想プログラムのうち、モーフィング画面表示プログラムについて説明する。
モーフィング画面表示プログラムは、車両モデルデータ生成プログラム38により生成されたモデルデータに基づいて、表示部18の画面上に車両モデルを表示し、且つ、その車両モデルを表示しながら変形させるためのプログラムである。モーフィング画面表示プログラムには、図3に示すように、3次元モーフィング画面表示プログラム58と、2次元モーフィング画面表示プログラム56とが含まれている。
【0064】
(2.1(3)(a)3次元モーフィング画面表示プログラム)
コンピュータで3次元モーフィング画面表示プログラム58による処理を実行することにより、3次元モーフィング画面が表示される。
ここで、図11及び図12に、3次元モーフィング画面の表示例を示す。図11に示すように、3次元モーフィング画面では、車両モデルを任意の視点から見た3次元的な形状を、その視点に合わせて遠近感が出るよう表示することができる。また、図10に示したように、外観モデル90や乗員モデル84等の個々の車両モデルを任意に組み合わせて表示してもよいし、個々の車両モデルを別個に表示してもよい。
【0065】
また、図12に示すように、3次元モーフィング画面では、車両モデルの車幅方向に断面に沿って、乗員モデル84、内装モデル112,114、内装パーツモデル122,126の車室内の様子を表示させることもできる。
【0066】
そして、図11に示す3次元モーフィング画面では、表示した車両モデルを、図中丸印で示す、各部分の寸法や角度の起点となる諸元ポイントをマウスでドラッグすることにより、各部分の形状及び配置の変更をすることができるようになっている。変更後の諸元値は、自動的に形成され、諸元値データに反映される。
なお、図11では、「A」で示すような一部分の諸元ポイントだけを表示している。
【0067】
この3次元モーフィング画面で表示さえる車両モデルは、3次元形状を表示するため全ての諸元値が反映され、且つ、変形された場合に形状及び配置の整合性を保つために、諸元どうしを関連づけるルールデータが全て組み込まれて表示される。このため、任意の諸元ポイントをマウスでドラッグすると、その諸元ポイントを起点する寸法や角度が変更されると共に、ルール付けされた関連するその他の寸法や角度が全て連動して変更される。その結果、車両モデルを、各部分の形状や配置の整合性を保ちつつ変形させることができる。
【0068】
例えば、外形を表すエクステリアモデル92では、ルーフ長さを変更すると、そのルーフとのつながりを保つように、ピラー部の角度も連動して変更され、連動して変更され、さらに、内装を表す上部インテリアモデル112のトップシーリング(天井内張り)の長さも合わせて変更される。このようなルールデータは、ミニバンやセダンといった車型ごとに異なるように設定される。例えば、ルーフの前縁を後方に移動させた場合、ミニバンでは、フロントピラーの角度を保ったままボンネットが後方に延び、一方、スポーツタイプでは、フロントピラーの傾斜角度が小さくなるようになっている。
【0069】
このように、3次元モーフィング画面では、車両企画者は、車両形状の全体的なイメージを容易に掴むことができ、車両モデルの3次元的なイメージを見ながら、感覚的に車両形状を様々に変形させて、車両を企画することができる。
【0070】
(2.1(3)(b)2次元モーフィング画面表示プログラム)
また、コンピュータで2次元モーフィング画面表示プログラムによる処理を実行することにより、2次元モーフィング画面が表示される。2次元モーフィング画面では、車両を側面、平面又は正面から見た所定の断面、及び主要な形状に関する諸元値のみを選択的に組み込んだ車両モデル(2次元車両モデル)が表示される。
【0071】
ここで、図13に、2次元モーフィング画面の表示例を示す。図13の(a)〜(c)は、それぞれ、2次元モーフィング画面の、側面図表示、平面図表示、及び正面図表示の一例である。
これらの2次元モーフィング画面では、車両モデルは、所定の断面及び主要な形状が直線や曲線で表示される(モーフィング形状表示)。例えば、図13(a)では、側面図表におけるモーフィング形状表示として、車両中間面の断面上に表れるルーフやカウル等の形状、及び側面形状を特徴付けるベルトライン形状等の主要な形状が太線で表示されている。
【0072】
さらに、モーフィング形状表示される形状に関する諸元値について、諸元項目、諸元値及びそれらを規定する寸法線が表示される(諸元値表示)。例えば、図13(a)では、諸元項目として、「Wheel base」、「***」等が表示され、また、諸元値として「2400」、「・・・」等が表示されている。
【0073】
このように、2次元モーフィング画面では、車両企画者は、寸法線を表示して、寸法や角度の諸元値を直接数値入力して変更することもでき、また、形状を変更する際に、どの諸元をドラッグすれば良いかを容易に判断することができる。また、車両形状の全体的なイメージを容易に掴むことができ、車両モデルの3次元的なイメージを見ながら、感覚的に車両形状を様々に変形させて、車両を企画することができる。
【0074】
(2.2シミュレーション画像表示プログラム)
次に、図3に示す企画支援プログラム30のうち、シミュレーションプログラム34について説明する。シミュレーションプログラム34は、車両モデルデータに基づいて、車両モデルを評価用モニタ装置6に立体表示させるためのプログラムである。
【0075】
図14に、シミュレーションプログラム34に対応する機能ブロック図を示す。この機能ブロック図では、コンピュータ2においてシミュレーションプログラム34による処理を実行する機能をシミュレーション部220として表し、モデル構想プログラム30による処理を実行する機能をモデル構築部210として表す。
【0076】
シミュレーション部220は、図14図に示すように、評価用モニタ装置6に表示する背景画像を構成する仮想空間データをデータベースサーバ4の仮想空間データベース74から選択する背景画像選択部222と、背景画像選択部221によって選択された仮想空間データにより構成される背景画像が、道路近傍にオブジェクトが表示されていないオブジェクトレス背景画像である場合に、オブジェクトレス背景画像の距離感及び/又は速度感を強める補正を行う背景画像補正部224と、車両モデルの運転席から前方を見た車室内画像と、上記運転席から見た前方視界としての背景画像とを合成して、評価モニタ装置6に表示させる画像合成表示部226と、を有する。
【0077】
また、シミュレーション部220は、モデル構築部210で生成された車両モデルデータにより構成される車室内画像の距離感及び/又は速度感を強める補正を行う車室内画像補正部228も有する。
【0078】
なお、図3に示すシミュレーション画像表示プログラム44による機能は、図14の画像合成表示部226に対応する。そして、シミュレーション画像表示プログラム44により、仮想空間データベース74から選択した仮想空間における、運転者の視点(アイポイントEP)から見た映像や、車両の外側の所定の視点から見た車両モデルの走行状態等の映像を表示させることができる。
【0079】
ここで、図15(a)に、シミュレーション画像表示プログラムにより、評価用モニタ装置に表示される画像の一例として、車両モデルが仮想空間内の市街地の道路上を走行する様子を運転者の視点から見た画像を示す。このような画像により、車両企画者は、運転席からの視認性、運転者の感じる圧迫感等の視界に関する評価や、背景画像と合わせた車両の外観等の評価を行う。
なお、評価用モニタ装置6では立体映像が表示されるが、図15をはじめとするシミュレーション画像を示す図面では、通常の平面画像として示す。
【0080】
ところで、高速道路や山岳有料道路等の背景画像においては、図15の(b)に示すように、通常、車両モデルのフロントガラス越しに見える背景画像として、道路230だけのオブジェクトレス背景画像が表示される。オブジェクトレス背景画像では、道路脇に信号機等のオブジェクトが存在しない。このため、立体映像であっても背景画像が平面的に見え、背景画像について十分な距離感覚や速度感覚や開放感が認識しにくい。その結果、特に高速走行時の視認性や圧迫感について、複数の評価者の間で評価に大きなばらつきが生じて、正確な評価が困難となる。一方、高速走行時の評価にあたって、多くのオブジェクトを含む市街地の背景画像を使用したのでは、評価者が違和感を感じ、却って正確な評価が困難となる。
【0081】
そこで、本実施形態では、図16に示すように、道路230だけのオブジェクトレス背景画像に、遠方部分ほど間隔を狭くしたグリッド画像232を追加表示している。このように、グリッド画像232を追加表示することにより、オブジェクトレス背景画像の距離感を強めることができる。
【0082】
次に、図17に、別のシミュレーション画像の表示例を示す。図17に示す表示例では、道路230のオブジェクトレス背景画像に、色を遠方部分ほど薄く、近い部分ほど濃くした空の画像を追加表示する。このように、空の色の濃淡を距離に応じて強調して表示することにより、オブジェクトレス背景画像の距離感を強めることができる。
【0083】
次に、図18に、別のシミュレーション画像の表示例を示す。図18に示す表示例では、オブジェクトレス背景画像に、遠方部分ほど薄く、近い部分ほど濃くした建物群234a〜cの画像を道路に沿って追加表示する。このように、距離に応じて濃淡を付けた建物群の画像を追加表示することにより、オブジェクトレス背景画像の距離感を強めることができる。
【0084】
次に、図19に、別のシミュレーション画像の表示例を示す。図19に示す表示例では、オブジェクトレス背景画像に、遠方部分ほど移動速度の遅いオブジェクト236a及び236bを道路に沿って追加表示し、車両モデルの走行速度が速くなるほど、オブジェクトの移動速度の遅い領域を狭くする。
【0085】
具体的には、図19に示すように、道路に沿って立木のオブジェクト236a及びbがそれぞれ表示されている。立木のオブジェクト236a及びbは、視界の中央付近、例えば、E1で示す破線の内側領域では、ほとんど静止して表示されている。これに対して、視界の周辺部へ行くほど、立木オブジェクトの矢印方向への移動速度が速くなる。例えば、破線E2上に表示されている立木オブジェクト236bの移動速度は、破線E1上に表示されている立木オブジェクト236aの移動速度よりも速い。また、立木オブジェクト236bが、より外側の破線E3上を通過するときの移動速度は、破線E2上を通過するときの移動速度よりも速い。
【0086】
さらに、車速を上げた場合には、立木オブジェクト236a及びbの移動速度そのものが速くなるだけでなく、オブジェクトのゆっくり移動させる範囲、例えば、破線E1の内側の範囲が狭くなる。
このようにオブジェクトレス背景画像を補正することにより、走行シミュレーションにおいて速度感覚を強めることができる。
【0087】
また、本実施形態では、シミュレーション部220は、図14に示すように、車室内画像補正部228を更に有する。車室内画像補正部228によって、車室内画像の奥行き感を強めることにより、走行シミュレーションにおいて、運転者が車室内で感じる圧迫感や操作性感をより正確に評価することができる。
【0088】
次に、図20に、車室内画像補正部228により、車室内画像に、車両モデルの車室内の表面の形状に従うグリッド画像238を追加表示して、車室内画像の奥行き感を強める補正を行った表示例を示す。このように車室内画像に、グリッドを追加表示すれば、車室内の形状が明らかとなり、走行時の圧迫感をより正確に評価することができる。
【0089】
次に、図21に、車室内画像を補正した別のシミュレーション画像の表示例を示す。
図21に示す表示例では、車室内画像の明るさを、運転者に近い部分ほど暗くする。具体的には、車室内画像の天井部分の明るさを、手前に来るほど暗くなるように表示する。このように、運転者に近い部分ほど暗くすることにより、車室内の圧迫感を強めることができ、走行時の圧迫感をより正確に評価することができる。
【0090】
このように、オブジェクトレス背景画像にを表示して企画車両を評価する場合においても、表現形態は非現実的なものであるが、グリッド画面等を追加表示したり、表示濃度や明るさを変えて背景画像や車室内画像を補正することにより、企画車両の評価に必要な距離感や、奥行き感に伴う圧迫感、操作性感を評価者に正確に評価し、また、評価者間で評価にばらつきが生じることを抑制することができる。
【0091】
上述した各実施形態においては、本発明を特定の条件で構成した例について説明したが、本発明は種々の変更及び組み合わせを行うことができ、これに限定されるものではない。
また、本発明において、手段とは、必ずしも物理的手段を意味するものではなく、各手段の機能が、ソフトウエアによって実現される場合も包含する。また、一つの物理的手段の機能が二以上の物理的手段により実現されてもよいし、二以上の物理的手段の機能が一つの物理的手段により実現されてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0092】
【図1】本発明の実施形態における車両企画支援システムの基本構成を示すブロック図である。
【図2】実施形態における車両企画支援システムの企画支援プログラムの構成、データベースの構成及びデータの概念的な流れを示す図である。
【図3】実施形態における車両企画支援システムの評価用モニタ装置の基本構成を示す斜視図である。
【図4】実施形態における車両モデルに含まれる各モデルを説明するための図である。
【図5】(a)は、基準モデルの主要寸法モデルの一例を示す図であり、(b)は、基準モデルの乗員モデルの一例を示す図であり、(c)は、基準モデルのアンダーボディーモデルの一例を示す図である。
【図6】外観モデルのエクステリアモデルの一例を示す図である。
【図7】外観パーツモデルのドアモデル(a〜c)及びガラスモデル(d)の一例を示す図である。
【図8】(a)は、内装モデルの上部インテリアモデルの一例を示す図であり、(b)は、内装モデルの下部インテリアモデルの一例を示す図である。
【図9】内装パーツモデルのインパネモデル、コンソールモデル及びシートモデルの一例を示す図である。
【図10】乗員モデル、外観モデル及び内装モデルを組み合わせた車両モデルの一例を示す図である。
【図11】車両モデルを表示する3次元モーフィング画面の一例である。
【図12】車両モデルの車室内を表示する3次元モーフィング画面の一例である。
【図13】(a)は、車両モデルを表示する2次元モーフィング画面の側面図表示の一例であり、(b)は、その平面図表示の一例であり、(c)は、その正面図表示の一例である。
【図14】シミュレーションプログラム34に対応する機能ブロック図である。
【図15】(a)は、仮想空間内で車両モデルが市街地の道路上を走行する様子を運転種の視点から見たシミュレーション画像を示す図であり、(b)は、高速道路上を走行する場合のシミュレーション画像を示す図である。
【図16】背景画像を補正したシミュレーション画像の一例である。
【図17】背景画像を補正したシミュレーション画像の一例である。
【図18】背景画像を補正したシミュレーション画像の一例である。
【図19】背景画像を補正したシミュレーション画像の一例である。
【図20】車室内画像を補正したシミュレーション画像の一例である。
【図21】車室内画像を補正したシミュレーション画像の一例である。
【符号の説明】
【0093】
1 車両企画支援システム
2 コンピュータ
4 データベースサーバ
6 評価用モニタ装置
30 企画支援プログラム
32 モデル構想プログラム
34 シミュレーションプログラム
36 諸元値入力プログラム
38 車両モデルデータ生成プログラム
40 モーフィング画面表示プログラム
210 モデル構築部
220 シミュレーション部
222 背景画像選択部
224 背景画像補正部
226 画像合成表示部
228 車室内画像補正部
【技術分野】
【0001】
本発明は、コンピュータを利用した車両企画支援システムに係り、より詳細には、画面上に表示された仮想空間内での走行シミュレーションにおいて車両モデルをより正確に評価するための車両企画支援システムに係る。
【背景技術】
【0002】
新型車両の開発においては、先ず、車両企画として、車両のコンセプト(車両全体としての商品性)を踏まえて車両のパッケージング等が検討される。従来の車両企画における企画車両の評価は、企画車両の概要を表す多数の図面に基づいて行われていた。このため、企画車両の一部分を変更すると、多くの図面を書き直さなければならなかった。また、クレーモデルやモックアップモデル、更に試作車の製作には、多大なコストと時間がかかる。このため、クレーモデル等を作り直すような試行錯誤を何度も繰り返すことは困難であった。
【0003】
そこで、本出願人は、車両企画をより効率的且つ効果的に行うために、車両企画支援プログラムを提案している(例えば、特許文献1)。かかる車両企画支援プログラムをコンピュータにより実行する車両企画支援システムによれば、画面上に車両の外形や車室内空間等に関する複数の車両モデルを変形可能に表示して車両企画を支援することができる。
【0004】
【特許文献1】特開2004−042747号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
車両企画支援システムにおける企画段階では、企画した車両モデルについて種々の評価が行われる。かかる評価においては、車両モデルを、実物大の大きさで表示して、仮想空間内を走行させ、運転者からの視認性や、運転者の受ける圧迫感等といった視界に関する評価も行われる。車両モデルを仮想空間内で走行させる際には、車両モデルのフロントガラス越しに、例えば、市街地の電柱や郵便ポスト、更には通行人等の仮想空間の背景画像が合成されて表示される。
【0006】
ところで、一般に、視認性や圧迫感は、車両の走行速度や、カーブ等の操舵条件等によって変化する。このため、車両モデルの走行シミュレーションにおいては、市街地を走行する場合の評価だけでなく、高速道路や、山岳有料道路等を走行する場合の評価も行われる。
【0007】
しかし、仮想空間内の高速道路や山岳有料道路等の背景画像においては、通常、道路脇に郵便ポスト等のオブジェクトが存在せず、また、自動車専用道路であるので通行人もいない。一方、現実の車両の運転者が感じる走行時の速度感覚は、運転者が周囲の郵便ポスト等の既知のオブジェクトの見かけの大きさの変化や移動速度を認識することによって得られる要素が大きい。
【0008】
このため、高速道路のように周囲に郵便ポスト等のオブジェクトの少ない背景画像を表示して、走行時の車両モデルを評価しようとすると、立体映像であっても背景画像について十分な距離感覚や速度感覚が得られない場合があり、その場合、車両モデルの走行時の正確な評価を行うことが困難であった。すなわち、仮想空間の背景画像として、現実の風景を忠実に再現しただけでは、車両モデルの評価を正確に行う上で不十分な場合がある。
一方、多数のオブジェクトが含まれる市街地の背景画像の中を車両モデルに高速走行させることも不自然であり、却って正確な評価を妨げてしまう。
【0009】
そこで、本発明は、画面上に車両モデルを表示して車両の企画を支援する車両企画支援システムにおいて、走行シミュレーションで車両モデルをより正確に評価するための車両企画支援システムを提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記の目的を達成するため、本発明の車両企画支援システムは、画面上に車両モデルを表示して車両の企画を支援する車両企画支援システムであって、車両データ及び仮想空間データを格納したデータベースサーバと、データベースサーバに格納された上記車両データを利用して、企画しようとする車両の車両モデルを構築するモデル構築手段と、モデル構築手段によって構築された車両モデルを立体画像として評価用モニタ装置に表示するシミュレーション手段とを有し、シミュレーション手段は、車両モデルとして、当該車両モデルの運転席から前方を見た車室内画像を表示し、且つ、運転席から見た前方視界として、仮想空間データに基づく仮想空間の背景画像を重ねて表示する画像合成手段と、評価用モニタ装置に表示する背景画像を上記データベースサーバから選択する背景画像選択手段と、背景画像選択手段によって選択された背景画像が、道路近傍にオブジェクトが表示されていないオブジェクトレス背景画像である場合に、オブジェクトレス背景画像の距離感及び/又は速度感を強める補正を行う背景画像補正手段と、を有することを特徴としている。
【0011】
このように構成された本発明の車両企画支援システムによれば、背景画像補正手段によりオブジェクトレス背景画像の距離感や速度感を強める補正を行うので、評価者により現実的な速度感覚を与えることができ、走行時のシミュレーションにおける車両モデルのより正確な評価を可能にする。
【0012】
また、本発明において好ましくは、背景画像補正手段は、オブジェクトレス背景画像に、遠方部分ほど間隔を狭くしたグリッド画像を追加表示する。このように、グリッド画像を追加表示することにより、オブジェクトレス背景画像の距離感を強めることができる。
【0013】
また、本発明において好ましくは、背景画像補正手段は、オブジェクトレス背景画像に、色を遠方部分ほど薄く、近い部分ほど濃くした空の画像を追加表示する。このように、遠方部分ほど薄く、近い部分ほど濃くした空の背景画像を表示することにより、オブジェクトレス背景画像の距離感を強めることができる。
【0014】
また、本発明において好ましくは、背景画像補正手段は、オブジェクトレス背景画像に、色を遠方部分ほど薄く、近い部分ほど濃くした建物群の画像を、道路に沿って追加表示する。このように、遠方部分ほど薄く、近い部分ほど濃くした建物群の画像を追加表示することにより、オブジェクトレス背景画像の距離感を強めることができる。
【0015】
また、本発明において好ましくは、背景画像補正手段は、オブジェクトレス背景画像に、遠方部分ほど移動速度の遅いオブジェクトを道路に沿って追加表示し、車両モデルの走行速度が速くなるほど、オブジェクトの移動速度の遅い領域を狭くする。これにより、走行シミュレーションにおいて速度感覚を強めることができる。
【0016】
また、本発明において好ましくは、シミュレーション手段は、車室内画像の奥行き感を強める補正を行う車室内画像補正手段を更に有する。このように、車室内画像補正手段によって、車室内画像の奥行き感を強めることができ、走行シミュレーションにおいて、車室内で運転者が感じる圧迫感や操作性感をより正確に評価することができる。
【0017】
また、本発明において好ましくは、車室内画像補正手段は、車室内画像に、車両モデルの車室内の表面の形状に従うグリッド画像を追加表示する。
このように車室内画像に、グリッド画像を追加表示すれば、車室内の形状が明らかとなり、走行時の圧迫感をより正確に評価することができる。
【0018】
また、本発明において好ましくは、車室内画像補正手段は、車室内画像において、明るさを運転者に近い部分ほど暗くする。このように、運転者に近い部分ほど暗くし、遠い部分ほど明るくすれば、車室内の距離感覚を強めることができ、走行時の圧迫感をより正確に評価することができる。
【発明の効果】
【0019】
このように、本発明によれば、画面上に車両モデルを表示して車両の企画を支援する車両企画支援システムにおいて、走行シミュレーションで車両モデルをより正確に評価することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
以下、添付の図面を参照して、本発明の車両企画支援システムの実施形態を説明する。
(1.システム全体)
まず、図1を参照して、実施形態における車両企画支援システムの概要を説明する。図1は、本実施形態の車両企画支援システムの基本構成を示すブロック図である。
本実施形態による車両企画支援システム1は、画面上に車両モデルを表示して車両の企画を支援する車両企画支援システムであって、コンピュータ2と、データベースサーバ4と、評価用モニタ6とから構成されている。
【0021】
(1.(1)コンピュータ)
このコンピュータ2は、CPU8、ROM10、RAM12,記憶部14、入力部16、表示部18、画像処理部20、及び通信部22を有し、これらは互いにシステムバスを介して接続されている。
【0022】
入力部16は、命令やデータ等を外部から入力するキーボードや、マウス等である。
ROM10には、コンピュータ2を起動させるブートプログラム等が格納されている。
記憶部14は、ハードディスクドライブ等の記憶装置である。この記憶部14は、企画支援プログラム格納部を有し、そこにモデル構築部の機能、及びシミュレーション部の機能をそれぞれ実現するための企画支援プログラム30(図2参照)が格納されている。
【0023】
RAM12は、車両企画支援システム上で実行される企画支援プログラム30や各種のデータを一時的に記憶するためのプログラム領域や、データの書込みや読出しを行うためのデータ領域を有する。
CPU8は、中央演算装置であり、一般的なコンピュータの演算処理に加え、企画支援プログラム30(図2参照)による処理を実行する。
【0024】
画像処理部20は、CPU8からの指令に基づいて表示させようとするデータを演算処理して、表示部18又は評価用モニタ装置6に表示させる。
表示部18は、液晶ディスプレイ等であり、画像処理部20で演算処理された車両モデルやデータを表示する。
通信部22は、無線又は有線の通信回線を介して、データベースサーバ4、評価用モニタ装置6及び他のコンピュータ(図示せず。)との間で情報を送受信するものである。
【0025】
(1.(2)データベース)
次に、図2を参照して、データベースサーバ4について説明する。
データベースサーバ4には、図2に示すように、種々の車両データや仮想空間データがそれぞれ格納された種々のデータベースが含まれている。
【0026】
これらのデータベースのうち、基準データベース60、外観データベース62、外観パーツデータベース64、内装データベース66及び内装パーツデータベース68には、それぞれ、車両モデルのテンプレートとなる「車両データ」が格納されている。「車両データ」は、車両に関する寸法や角度の諸元値をパラメータ(変数)として、車両の形状や乗員姿勢等を規定したデータである。
【0027】
基準データベース60には、車両モデルのうちの後述する基準モデルのテンプレートとなる、主要寸法データ、乗員データ及びアンダーボディデータの車両データが格納されている。
【0028】
外観データベース62には、車両モデルのうちの後述する外観モデルのテンプレートとなる、外観データであるエクステリアデータの車両データが格納されている。
【0029】
外観パーツデータベース64には、車両モデルのうちの後述する外観パーツモデルのテンプレートとなる、ドアデータ及びガラスデータの車両データが格納されている。
【0030】
内装データベース66には、車両モデルのうちの後述する内装モデルのテンプレートとなる、上部インテリアデータ及び下部インテリアデータの車両データが格納されている。
【0031】
内装パーツデータベース68には、車両モデルのうちの後述する内装パーツモデルのテンプレートとなる、インパネデータ、コンソールデータ及びシートデータの車両データが格納されている。
【0032】
さらに、これらの各データベース60〜68の車両データには、それぞれ、後述するモーフィング画面表示プログラムによる処理を実行する際に、諸元どうしを関連づけて、車両の各部分の形状や配置の整合性を保つためのルールデータが含まれる。
【0033】
また、データベースサーバ4のベンチマーク車両データベース70には、既存車種の各部の寸法や角度等の諸元値のデータが車種ごとに格納されている。これらのデータは、企画車両の形状や各部の配置を変更するベースとなるベース車両や、企画車両の比較対照となるベンチマーク車両のデータとして使用される。
【0034】
また、データベースサーバ4の規制値データベース72には、レギュレーション上、又は車両設計上の制約値に関するデータが格納されている。これらのデータは、例えば、国内外の衝突安全基準で定められたバンパ高さ等の具体的な数値や、車両企画の段階に応じて許容することができる範囲を各諸元(ルーフ高さ等の諸元項目)に対して規定した規定値で構成されている。
【0035】
また、データベースサーバ4の仮想空間データベース74には、車両モデルを評価用モニタ装置6でシミュレーション表示する際に仮想空間の背景画像を構成するための仮想空間データが格納されている。この仮想空間データには、建築物、道路、交差点、信号、歩行者、他の車両等のオブジェクトのデータが含まれる。また、仮想空間の背景画像には、例えば、市街地の背景画像や、高速道路の背景画像、及び山岳有料道路の背景画像等、種々の道路の背景画像が含まれる。
【0036】
(1.(3)評価用モニタ)
次に、図3を参照して、評価用モニタ装置6について説明する。
図3に示すように、評価用モニタ装置6は、プロジェクタ24と、平面スクリーン26とを備えている。プロジェクタ24は、画像処理部20で演算処理された情報に基づいて、車両モデルを平面スクリーン26に後方から投影する。そして、平面スクリーン26の前方に位置する車両企画者(企画車両の評価や、車両企画支援システムの操作等を行う者)が、それらの車両モデルを表示する画面28を見ることができるようになっている。これにより、評価用モニタ装置6により、試作車を製作しなくても、車両企画者が企画車両の検討や評価を行うことができる。
【0037】
(2.企画支援プログラム)
次に、企画支援プログラム30、及び、企画支援システムにおける企画支援プログラムによる処理の流れの概要について説明する。
図3に示すように、企画支援プログラム30には、データベースサーバ4に格納された車両データを利用して、企画しようとする車両の車両モデルを構築するためのモデル構想プログラム32と、モデル構築手段によって構築された車両モデルを立体画像として評価用モニタ装置6に表示するシミュレーションプログラム34とが含まれている。
【0038】
本実施形態では、コンピュータ2でモデル構想プログラム32による処理を実行して車両モデルを構築する。ここでは、上記車両モデルとして、上記評価用モニタ手段に表示して企画車両の各部のレイアウトによって定まるパッケージング等に関する検討、評価を行う。図4に車両モデルに含まれる各モデルを示す。
さらに、コンピュータ2でシミュレーションプログラム34による処理を実行して、車両モデルを表示して、企画車両の評価を行う。
【0039】
(2.1モデル構想プログラム)
まず、企画支援プログラム30のうちのモデル構想プログラム32、及び、そのプログラムの処理をコンピュータ2により実行することによる車両企画支援について説明する。
図3に示すように、モデル構想プログラム32には、諸元値入力プログラム(諸元値入力画面表示プログラム)36、車両モデルデータ生成プログラム38、及びモーフィング画面表示プログラム40が含まれている。
また、シミュレーションプログラム34には、シミュレーション画像表示プログラム44が含まれている。
【0040】
(2.1(1)諸元値入力プログラム)
まず、構想モデルプログラムのうち、諸元値入力プログラム36について説明する。
諸元値入力プログラム36は、車両企画者の入力等に基づいて「諸元値データ」を生成するためのプログラムである。ここで、「諸元値データ」とは、企画車両の車型や車両寸法を決定する寸法等の諸元値等をいう。また、車型とは、スポーツ、セダン、トラックなどの車両のタイプをいう。
そして、諸元値入力プログラム36により入力された諸元値を利用して、以下に説明する車両モデルデータ生成プログラムにより、車両モデルのための車両モデルデータが生成される。
【0041】
(2.1(2)車両モデルデータ生成プログラム)
次に、モデル構成プログラムのうち、車両モデルデータ生成プログラム38について説明する。
車両モデルデータ生成プログラム38は、諸元入力プログラム36によって入力された諸元値データ、及びデータベースサーバ4に格納されている車両データに基づいて、企画車両の「車両モデルデータ」を生成するためのプログラムである。車両モデルデータは、例えば、データベースサーバ4からテンプレートとして読み出した車両データに諸元値データを代入して生成され、例えば、3次元座標データの集合により構成される。そして、この車両モデルデータにより、企画車両の形態としての「車両モデル」の表示が可能となる。
【0042】
車両モデルデータ生成プログラム38には、図3に示すように、基準モデルデータ生成プログラム46、外観モデルデータ生成プログラム48、外観パーツモデルデータ生成プログラム50、内装モデルデータ生成プログラム52及び内装パーツモデルデータ生成プログラム54が含まれる。これらのプログラムによる処理を実行することにより、企画車両の車両モデルのための車両モデルデータが生成される。
【0043】
(2.1(2)(a)基準モデル生成プログラム)
基準モデルデータ生成プログラム46による処理を実行することにより、データベースサーバ4に格納されている基準データベース60に基づいて、基準モデル80のための基準モデルデータが生成される。基準モデル80は、企画車両における乗員配置等のパッケージングや企画車両の基本的な諸元値を規定するモデルである。
【0044】
基準モデル80には、図4に示すように、主要寸法モデル82、乗員モデル84及びアンダーボディモデル86が含まれる。基準モデル80のうち、これらの個々のモデル82、84及び86により、或いは、これらのモデル82、84及び86を組み合わせた基準モデル80により、乗員配置等のパッケージングや車両の基本的な諸元値を検討、評価することができる。
【0045】
ここで、図5(a)に、主要寸法モデル82の表示例を示す。主要寸法モデル82は、車両の外枠82a、グランド(地面に相当)82b、車輪82c等に関するモデルであり、車両の外枠の寸法、ホイールベースの長さ、車輪の寸法等の諸元値で規定される。
【0046】
次に、図5(b)に乗員モデル84の表示例を示す。乗員モデル84は、乗員マネキン84a、ステアリング84b、ペダル84c及び視界条件84d等に関するモデルである。
【0047】
乗員マネキン84aは、乗員配置や姿勢を検討するためのものであり、国内外の基準に準じた一定の形状及び寸法を有している。この乗員マネキン84aは、乗員配置及び姿勢を特定するための種々の寸法や角度の諸元で規定される。この諸元には、例えば、ヒップポイントに対する頭頂やかかとの位置、最前列を2列目の乗員間の距離等が含まれる。なお、ここで寸法には、各部分間の相対距離も含まれる。
【0048】
ステアリング84b及びペダル84cは、それらの乗員に対する配置を検討するためのものであり、それらの形状及び寸法は一定である。ステアリング84b及びペダル84cは、例えば、それらのヒップポイント又はかかとに対する相対距離や角度の諸元で規定される。視界条件84dは、アイポイントから車両の前後両方に上下に拡がる角度等の諸元で規定される。
【0049】
次に、図5(c)にアンダーボディモデルの表示例を示す。アンダーボディモデル86は、ダッシュパネル86a、フロアパネル86b及びサイドシル86c等の車体の下部構造に関するモデルである。このアンダーボディモデル86は、ダッシュパネル86a及びフロアパネル86bを構成する数枚のパネルのそれぞれの寸法や角度、サイドシル86cの寸法等の諸元値で規定される。
【0050】
(2.1(2)(b)外観モデルデータ生成プログラム)
また、外観モデルデータ生成プログラム52による処理を実行することにより、データベースサーバ4に格納されている外観データベース62に基づいて、外観モデル90のための外観モデルデータが生成される。外観モデル90は、企画車両の外観イメージ等を規定するモデルである。外観モデル90には、図4に示すように、エクステリアモデル92が含まれる。
【0051】
外観モデル90により、企画車両の外観イメージ等を検討することができる。さらに、外観モデル90を基準モデル80と組み合わせることにより、車両の弧住空間等のパッケージングをより詳細に検討することができる。
【0052】
ここで、図6(a)にエクステリアモデル92の表示例を示す。エクステリアモデル92は、バンパ及びボンネットを含む車両の外板に関するモデルである。エクステリアモデル92は、車両の外形に関する種々の寸法や角度の諸元値で規定される。諸元値には、例えば、ホイールベース、フロントオーバーハング、リアオーバーハング、カウルポイントの位置、ルーフトップ高さ、ピラー部の傾斜角度等が含まれる。
【0053】
(2.1(2)(c)外観パーツモデルデータ生成プログラム)
また、外観パーツモデルデータ生成プログラム100による処理を実行することにより、データベースサーバ4に格納されている外観パーツデータベース64に基づいて、外観パーツモデル100のための外観パーツモデルデータが生成される。外観パーツモデル100は、企画車両の外観の一部を構成するドアやウインドウガラスの形状や配置を個別に規定するモデルである。外観パーツモデル100には、図4に示すように、ドアモデル102及びガラスモデル104が含まれている。
【0054】
ここで、図7(a)〜図7(c)に、ドアモデル102の表示例を示す。ドアモデル102は、前後ドアの開口フランジ102a、前後サイドドアの外板及びサッシュ102b、及び、リフトゲートの外板及びサッシュ102cに関するモデルである。また、図7(b)〜図7(d)に、ガラスモデル104の表示例を示す。ガラスモデル104は、フロントウインドウ、フロントクォータウインドウ、サイドウインドウ、リアクォータウインドウ及びリアウインドウの各ガラスに関するモデルである。これらのモデルは、それぞれの形状及び配置に関する種々の寸法や角度の諸元値で規定される。
【0055】
これらドアモデル102及びガラスモデル104により、外観の一部を構成するドアやウインドウガラスの形状や配置を個別に検討することができる。さらに、外観パーツモデル100を外観モデル90と組み合わせることにより、車両の外観イメージ等をより詳細に検討することができる。
【0056】
(2.1(2)(d)内装モデルデータ生成プログラム)
また、内装モデルデータ生成プログラム52による処理を実行することにより、データベースサーバ4に格納されている内装データベース66に基づいて、内装モデル110のための内装モデルデータが生成される。内装モデル110は、企画車両の内装を構成するトリムやトップシーリング等の形状及び配置に関する種々の寸法や角度を規定するモデルである。内装モデル110には、図4に示すように、上部インテリアモデル112及び下部インテリアモデル114が含まれる。
【0057】
ここで、図8(a)に内装モデル110の表示例を示す。内装モデル110は、上部インテリアモデル112は、ピラートリム112a及びトップシーリング(ルーフヘッダ、ルーフレール及びルーフのトリム)112bに関するモデルである。
さらに、図8(b)に下部インテリアモデル112の表示例を示す。下部インテリアモデル114は、前後ドア及びリフトゲートのトリム114a、カウルサイドトリム114b、Bピラー下部トリム114c、リアサイドトリム114d及びスカッフプレート114eに関するモデルである。
【0058】
(2.1(2)(e)内装パーツモデルデータ生成プログラム)
また、内装パーツモデルデータ生成プログラム54による処理を実施することにより、データベースサーバ4に格納されている内装パーツデータベース68に基づいて、内装パーツモデル120のための内装パーツモデルデータが生成される。内装パーツモデル120は、企画車両の内装の一部を構成するインパネやコンソールやとシートの配置や形状に関する種々の数値や角度を規定するモデルである。
【0059】
内装パーツモデル120には、図4に示すように、インパネモデル122、コンソールモデル124及びシートモデル126が含まれている。インパネモデル122及びコンソールモデル124は、それらの配置に関する寸法や角度の諸元の諸元値データで規定される。また、シートモデル126は、シート配置、シート幅、ヘッドレス上下位置、シートバック角度等に関する寸法(距離)や角度の諸元の諸元値データで規定される。
【0060】
ここで、図9にこれらモデルの表示例を示す。インパネモデル122、コンソールモデル124及びシートモデル126は、ダッシュボード等を含むインパネ、このインパネと連続しているコンソール及び複数のシートに関するモデルである。これらのモデルは、それらの車室内における配置を検討するためのものであり、一定の形状を有している。
【0061】
上述した車両モデルデータ生成プログラム38による処理を実施するに当たっては、個々のモデルデータ生成プログラム46〜54により、各車両モデル互いに独立に生成し、それぞれ検討することができる。例えば、主要寸法モデル82により、車両の全体の大きさを、また、乗員モデル84により、車両の内部空間を、さらに、エクステリアモデル92により、車両の外観イメージを、それぞれ別個に検討することができる。
次いで、図10に示すように、これらのモデルを重ね合わせて表示することにより、互いの干渉状態等を視覚的に確認することができる。
【0062】
図10に示す例では、乗員モデル84の乗員の頭が動く範囲を示す空間エリアの一部分(図中の斜線部分)が、外観モデルのルーフから飛び出してしまっている。そこで、車両企画者は、このような干渉状態を解消するために、乗員モデルのヒップポイントを下げたり、外観モデルのルーフの高さを上げたりといった調整をして、各車両モデルを再検討することができる。
そのような車両モデルの調整は、以下に説明するモーフィング画面表示プログラムにより容易に行うことができる。
【0063】
(2.1(3)モーフィング画面表示プログラム)
次に、モデル構想プログラムのうち、モーフィング画面表示プログラムについて説明する。
モーフィング画面表示プログラムは、車両モデルデータ生成プログラム38により生成されたモデルデータに基づいて、表示部18の画面上に車両モデルを表示し、且つ、その車両モデルを表示しながら変形させるためのプログラムである。モーフィング画面表示プログラムには、図3に示すように、3次元モーフィング画面表示プログラム58と、2次元モーフィング画面表示プログラム56とが含まれている。
【0064】
(2.1(3)(a)3次元モーフィング画面表示プログラム)
コンピュータで3次元モーフィング画面表示プログラム58による処理を実行することにより、3次元モーフィング画面が表示される。
ここで、図11及び図12に、3次元モーフィング画面の表示例を示す。図11に示すように、3次元モーフィング画面では、車両モデルを任意の視点から見た3次元的な形状を、その視点に合わせて遠近感が出るよう表示することができる。また、図10に示したように、外観モデル90や乗員モデル84等の個々の車両モデルを任意に組み合わせて表示してもよいし、個々の車両モデルを別個に表示してもよい。
【0065】
また、図12に示すように、3次元モーフィング画面では、車両モデルの車幅方向に断面に沿って、乗員モデル84、内装モデル112,114、内装パーツモデル122,126の車室内の様子を表示させることもできる。
【0066】
そして、図11に示す3次元モーフィング画面では、表示した車両モデルを、図中丸印で示す、各部分の寸法や角度の起点となる諸元ポイントをマウスでドラッグすることにより、各部分の形状及び配置の変更をすることができるようになっている。変更後の諸元値は、自動的に形成され、諸元値データに反映される。
なお、図11では、「A」で示すような一部分の諸元ポイントだけを表示している。
【0067】
この3次元モーフィング画面で表示さえる車両モデルは、3次元形状を表示するため全ての諸元値が反映され、且つ、変形された場合に形状及び配置の整合性を保つために、諸元どうしを関連づけるルールデータが全て組み込まれて表示される。このため、任意の諸元ポイントをマウスでドラッグすると、その諸元ポイントを起点する寸法や角度が変更されると共に、ルール付けされた関連するその他の寸法や角度が全て連動して変更される。その結果、車両モデルを、各部分の形状や配置の整合性を保ちつつ変形させることができる。
【0068】
例えば、外形を表すエクステリアモデル92では、ルーフ長さを変更すると、そのルーフとのつながりを保つように、ピラー部の角度も連動して変更され、連動して変更され、さらに、内装を表す上部インテリアモデル112のトップシーリング(天井内張り)の長さも合わせて変更される。このようなルールデータは、ミニバンやセダンといった車型ごとに異なるように設定される。例えば、ルーフの前縁を後方に移動させた場合、ミニバンでは、フロントピラーの角度を保ったままボンネットが後方に延び、一方、スポーツタイプでは、フロントピラーの傾斜角度が小さくなるようになっている。
【0069】
このように、3次元モーフィング画面では、車両企画者は、車両形状の全体的なイメージを容易に掴むことができ、車両モデルの3次元的なイメージを見ながら、感覚的に車両形状を様々に変形させて、車両を企画することができる。
【0070】
(2.1(3)(b)2次元モーフィング画面表示プログラム)
また、コンピュータで2次元モーフィング画面表示プログラムによる処理を実行することにより、2次元モーフィング画面が表示される。2次元モーフィング画面では、車両を側面、平面又は正面から見た所定の断面、及び主要な形状に関する諸元値のみを選択的に組み込んだ車両モデル(2次元車両モデル)が表示される。
【0071】
ここで、図13に、2次元モーフィング画面の表示例を示す。図13の(a)〜(c)は、それぞれ、2次元モーフィング画面の、側面図表示、平面図表示、及び正面図表示の一例である。
これらの2次元モーフィング画面では、車両モデルは、所定の断面及び主要な形状が直線や曲線で表示される(モーフィング形状表示)。例えば、図13(a)では、側面図表におけるモーフィング形状表示として、車両中間面の断面上に表れるルーフやカウル等の形状、及び側面形状を特徴付けるベルトライン形状等の主要な形状が太線で表示されている。
【0072】
さらに、モーフィング形状表示される形状に関する諸元値について、諸元項目、諸元値及びそれらを規定する寸法線が表示される(諸元値表示)。例えば、図13(a)では、諸元項目として、「Wheel base」、「***」等が表示され、また、諸元値として「2400」、「・・・」等が表示されている。
【0073】
このように、2次元モーフィング画面では、車両企画者は、寸法線を表示して、寸法や角度の諸元値を直接数値入力して変更することもでき、また、形状を変更する際に、どの諸元をドラッグすれば良いかを容易に判断することができる。また、車両形状の全体的なイメージを容易に掴むことができ、車両モデルの3次元的なイメージを見ながら、感覚的に車両形状を様々に変形させて、車両を企画することができる。
【0074】
(2.2シミュレーション画像表示プログラム)
次に、図3に示す企画支援プログラム30のうち、シミュレーションプログラム34について説明する。シミュレーションプログラム34は、車両モデルデータに基づいて、車両モデルを評価用モニタ装置6に立体表示させるためのプログラムである。
【0075】
図14に、シミュレーションプログラム34に対応する機能ブロック図を示す。この機能ブロック図では、コンピュータ2においてシミュレーションプログラム34による処理を実行する機能をシミュレーション部220として表し、モデル構想プログラム30による処理を実行する機能をモデル構築部210として表す。
【0076】
シミュレーション部220は、図14図に示すように、評価用モニタ装置6に表示する背景画像を構成する仮想空間データをデータベースサーバ4の仮想空間データベース74から選択する背景画像選択部222と、背景画像選択部221によって選択された仮想空間データにより構成される背景画像が、道路近傍にオブジェクトが表示されていないオブジェクトレス背景画像である場合に、オブジェクトレス背景画像の距離感及び/又は速度感を強める補正を行う背景画像補正部224と、車両モデルの運転席から前方を見た車室内画像と、上記運転席から見た前方視界としての背景画像とを合成して、評価モニタ装置6に表示させる画像合成表示部226と、を有する。
【0077】
また、シミュレーション部220は、モデル構築部210で生成された車両モデルデータにより構成される車室内画像の距離感及び/又は速度感を強める補正を行う車室内画像補正部228も有する。
【0078】
なお、図3に示すシミュレーション画像表示プログラム44による機能は、図14の画像合成表示部226に対応する。そして、シミュレーション画像表示プログラム44により、仮想空間データベース74から選択した仮想空間における、運転者の視点(アイポイントEP)から見た映像や、車両の外側の所定の視点から見た車両モデルの走行状態等の映像を表示させることができる。
【0079】
ここで、図15(a)に、シミュレーション画像表示プログラムにより、評価用モニタ装置に表示される画像の一例として、車両モデルが仮想空間内の市街地の道路上を走行する様子を運転者の視点から見た画像を示す。このような画像により、車両企画者は、運転席からの視認性、運転者の感じる圧迫感等の視界に関する評価や、背景画像と合わせた車両の外観等の評価を行う。
なお、評価用モニタ装置6では立体映像が表示されるが、図15をはじめとするシミュレーション画像を示す図面では、通常の平面画像として示す。
【0080】
ところで、高速道路や山岳有料道路等の背景画像においては、図15の(b)に示すように、通常、車両モデルのフロントガラス越しに見える背景画像として、道路230だけのオブジェクトレス背景画像が表示される。オブジェクトレス背景画像では、道路脇に信号機等のオブジェクトが存在しない。このため、立体映像であっても背景画像が平面的に見え、背景画像について十分な距離感覚や速度感覚や開放感が認識しにくい。その結果、特に高速走行時の視認性や圧迫感について、複数の評価者の間で評価に大きなばらつきが生じて、正確な評価が困難となる。一方、高速走行時の評価にあたって、多くのオブジェクトを含む市街地の背景画像を使用したのでは、評価者が違和感を感じ、却って正確な評価が困難となる。
【0081】
そこで、本実施形態では、図16に示すように、道路230だけのオブジェクトレス背景画像に、遠方部分ほど間隔を狭くしたグリッド画像232を追加表示している。このように、グリッド画像232を追加表示することにより、オブジェクトレス背景画像の距離感を強めることができる。
【0082】
次に、図17に、別のシミュレーション画像の表示例を示す。図17に示す表示例では、道路230のオブジェクトレス背景画像に、色を遠方部分ほど薄く、近い部分ほど濃くした空の画像を追加表示する。このように、空の色の濃淡を距離に応じて強調して表示することにより、オブジェクトレス背景画像の距離感を強めることができる。
【0083】
次に、図18に、別のシミュレーション画像の表示例を示す。図18に示す表示例では、オブジェクトレス背景画像に、遠方部分ほど薄く、近い部分ほど濃くした建物群234a〜cの画像を道路に沿って追加表示する。このように、距離に応じて濃淡を付けた建物群の画像を追加表示することにより、オブジェクトレス背景画像の距離感を強めることができる。
【0084】
次に、図19に、別のシミュレーション画像の表示例を示す。図19に示す表示例では、オブジェクトレス背景画像に、遠方部分ほど移動速度の遅いオブジェクト236a及び236bを道路に沿って追加表示し、車両モデルの走行速度が速くなるほど、オブジェクトの移動速度の遅い領域を狭くする。
【0085】
具体的には、図19に示すように、道路に沿って立木のオブジェクト236a及びbがそれぞれ表示されている。立木のオブジェクト236a及びbは、視界の中央付近、例えば、E1で示す破線の内側領域では、ほとんど静止して表示されている。これに対して、視界の周辺部へ行くほど、立木オブジェクトの矢印方向への移動速度が速くなる。例えば、破線E2上に表示されている立木オブジェクト236bの移動速度は、破線E1上に表示されている立木オブジェクト236aの移動速度よりも速い。また、立木オブジェクト236bが、より外側の破線E3上を通過するときの移動速度は、破線E2上を通過するときの移動速度よりも速い。
【0086】
さらに、車速を上げた場合には、立木オブジェクト236a及びbの移動速度そのものが速くなるだけでなく、オブジェクトのゆっくり移動させる範囲、例えば、破線E1の内側の範囲が狭くなる。
このようにオブジェクトレス背景画像を補正することにより、走行シミュレーションにおいて速度感覚を強めることができる。
【0087】
また、本実施形態では、シミュレーション部220は、図14に示すように、車室内画像補正部228を更に有する。車室内画像補正部228によって、車室内画像の奥行き感を強めることにより、走行シミュレーションにおいて、運転者が車室内で感じる圧迫感や操作性感をより正確に評価することができる。
【0088】
次に、図20に、車室内画像補正部228により、車室内画像に、車両モデルの車室内の表面の形状に従うグリッド画像238を追加表示して、車室内画像の奥行き感を強める補正を行った表示例を示す。このように車室内画像に、グリッドを追加表示すれば、車室内の形状が明らかとなり、走行時の圧迫感をより正確に評価することができる。
【0089】
次に、図21に、車室内画像を補正した別のシミュレーション画像の表示例を示す。
図21に示す表示例では、車室内画像の明るさを、運転者に近い部分ほど暗くする。具体的には、車室内画像の天井部分の明るさを、手前に来るほど暗くなるように表示する。このように、運転者に近い部分ほど暗くすることにより、車室内の圧迫感を強めることができ、走行時の圧迫感をより正確に評価することができる。
【0090】
このように、オブジェクトレス背景画像にを表示して企画車両を評価する場合においても、表現形態は非現実的なものであるが、グリッド画面等を追加表示したり、表示濃度や明るさを変えて背景画像や車室内画像を補正することにより、企画車両の評価に必要な距離感や、奥行き感に伴う圧迫感、操作性感を評価者に正確に評価し、また、評価者間で評価にばらつきが生じることを抑制することができる。
【0091】
上述した各実施形態においては、本発明を特定の条件で構成した例について説明したが、本発明は種々の変更及び組み合わせを行うことができ、これに限定されるものではない。
また、本発明において、手段とは、必ずしも物理的手段を意味するものではなく、各手段の機能が、ソフトウエアによって実現される場合も包含する。また、一つの物理的手段の機能が二以上の物理的手段により実現されてもよいし、二以上の物理的手段の機能が一つの物理的手段により実現されてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0092】
【図1】本発明の実施形態における車両企画支援システムの基本構成を示すブロック図である。
【図2】実施形態における車両企画支援システムの企画支援プログラムの構成、データベースの構成及びデータの概念的な流れを示す図である。
【図3】実施形態における車両企画支援システムの評価用モニタ装置の基本構成を示す斜視図である。
【図4】実施形態における車両モデルに含まれる各モデルを説明するための図である。
【図5】(a)は、基準モデルの主要寸法モデルの一例を示す図であり、(b)は、基準モデルの乗員モデルの一例を示す図であり、(c)は、基準モデルのアンダーボディーモデルの一例を示す図である。
【図6】外観モデルのエクステリアモデルの一例を示す図である。
【図7】外観パーツモデルのドアモデル(a〜c)及びガラスモデル(d)の一例を示す図である。
【図8】(a)は、内装モデルの上部インテリアモデルの一例を示す図であり、(b)は、内装モデルの下部インテリアモデルの一例を示す図である。
【図9】内装パーツモデルのインパネモデル、コンソールモデル及びシートモデルの一例を示す図である。
【図10】乗員モデル、外観モデル及び内装モデルを組み合わせた車両モデルの一例を示す図である。
【図11】車両モデルを表示する3次元モーフィング画面の一例である。
【図12】車両モデルの車室内を表示する3次元モーフィング画面の一例である。
【図13】(a)は、車両モデルを表示する2次元モーフィング画面の側面図表示の一例であり、(b)は、その平面図表示の一例であり、(c)は、その正面図表示の一例である。
【図14】シミュレーションプログラム34に対応する機能ブロック図である。
【図15】(a)は、仮想空間内で車両モデルが市街地の道路上を走行する様子を運転種の視点から見たシミュレーション画像を示す図であり、(b)は、高速道路上を走行する場合のシミュレーション画像を示す図である。
【図16】背景画像を補正したシミュレーション画像の一例である。
【図17】背景画像を補正したシミュレーション画像の一例である。
【図18】背景画像を補正したシミュレーション画像の一例である。
【図19】背景画像を補正したシミュレーション画像の一例である。
【図20】車室内画像を補正したシミュレーション画像の一例である。
【図21】車室内画像を補正したシミュレーション画像の一例である。
【符号の説明】
【0093】
1 車両企画支援システム
2 コンピュータ
4 データベースサーバ
6 評価用モニタ装置
30 企画支援プログラム
32 モデル構想プログラム
34 シミュレーションプログラム
36 諸元値入力プログラム
38 車両モデルデータ生成プログラム
40 モーフィング画面表示プログラム
210 モデル構築部
220 シミュレーション部
222 背景画像選択部
224 背景画像補正部
226 画像合成表示部
228 車室内画像補正部
【特許請求の範囲】
【請求項1】
画面上に車両モデルを表示して車両の企画を支援する車両企画支援システムであって、
車両データ及び仮想空間データを格納したデータベースサーバと、
上記データベースサーバに格納された上記車両データを利用して、企画しようとする車両の車両モデルを構築するモデル構築手段と、
上記モデル構築手段によって構築された車両モデルを立体画像として評価用モニタ装置に表示するシミュレーション手段と、
を有し、
上記シミュレーション手段は、
上記評価用モニタ装置に表示する背景画像を構成する仮想空間データを上記データベースサーバから選択する背景画像選択手段と、
上記背景画像選択手段によって選択された仮想空間データにより構成される背景画像が、道路近傍にオブジェクトが表示されていないオブジェクトレス背景画像である場合に、上記オブジェクトレス背景画像の距離感及び/又は速度感を強める補正を行う背景画像補正手段と、
車両モデルの運転席から前方を見た車室内画像と、上記運転席から見た前方視界としての背景画像とを合成して表示する画像合成手段と、を有する
ことを特徴とする車両企画支援システム。
【請求項2】
上記背景画像補正手段は、上記オブジェクトレス背景画像に、遠方部分ほど間隔を狭くしたグリッド画像を追加表示する請求項1記載の車両企画支援システム。
【請求項3】
上記背景画像補正手段は、上記オブジェクトレス背景画像に、色を遠方部分ほど薄く、近い部分ほど濃くした空の画像を追加表示する請求項1又は2記載の車両企画支援システム。
【請求項4】
上記背景画像補正手段は、上記オブジェクトレス背景画像に、色を遠方部分ほど薄く、近い部分ほど濃くした建物群画像を、道路に沿って追加表示する請求項1乃至3の何れか一項に記載の車両企画支援システム。
【請求項5】
上記背景画像補正手段は、上記オブジェクトレス背景画像に、遠方部分ほど移動速度の遅いオブジェクトを、道路に沿って追加表示し、車両モデルの走行速度が速くなるほど、上記オブジェクトの移動速度の遅い領域を狭くする請求項1乃至4の何れか一項に記載の車両企画支援システム。
【請求項6】
上記シミュレーション手段は、上記車室内画像の奥行き感を強める補正を行う車室内画像補正手段を更に有する請求項1乃至5記載の車両企画支援システム。
【請求項7】
上記車室内画像補正手段は、上記車室内画像に、車両モデルの車室内の表面の形状に従うグリッド画像を追加表示する請求項6記載の車両企画支援システム。
【請求項8】
上記車室内画像補正手段は、上記車室内画像において、明るさを運転者に近い部分ほど暗くする請求項6又は7記載の車両企画支援システム。
【請求項1】
画面上に車両モデルを表示して車両の企画を支援する車両企画支援システムであって、
車両データ及び仮想空間データを格納したデータベースサーバと、
上記データベースサーバに格納された上記車両データを利用して、企画しようとする車両の車両モデルを構築するモデル構築手段と、
上記モデル構築手段によって構築された車両モデルを立体画像として評価用モニタ装置に表示するシミュレーション手段と、
を有し、
上記シミュレーション手段は、
上記評価用モニタ装置に表示する背景画像を構成する仮想空間データを上記データベースサーバから選択する背景画像選択手段と、
上記背景画像選択手段によって選択された仮想空間データにより構成される背景画像が、道路近傍にオブジェクトが表示されていないオブジェクトレス背景画像である場合に、上記オブジェクトレス背景画像の距離感及び/又は速度感を強める補正を行う背景画像補正手段と、
車両モデルの運転席から前方を見た車室内画像と、上記運転席から見た前方視界としての背景画像とを合成して表示する画像合成手段と、を有する
ことを特徴とする車両企画支援システム。
【請求項2】
上記背景画像補正手段は、上記オブジェクトレス背景画像に、遠方部分ほど間隔を狭くしたグリッド画像を追加表示する請求項1記載の車両企画支援システム。
【請求項3】
上記背景画像補正手段は、上記オブジェクトレス背景画像に、色を遠方部分ほど薄く、近い部分ほど濃くした空の画像を追加表示する請求項1又は2記載の車両企画支援システム。
【請求項4】
上記背景画像補正手段は、上記オブジェクトレス背景画像に、色を遠方部分ほど薄く、近い部分ほど濃くした建物群画像を、道路に沿って追加表示する請求項1乃至3の何れか一項に記載の車両企画支援システム。
【請求項5】
上記背景画像補正手段は、上記オブジェクトレス背景画像に、遠方部分ほど移動速度の遅いオブジェクトを、道路に沿って追加表示し、車両モデルの走行速度が速くなるほど、上記オブジェクトの移動速度の遅い領域を狭くする請求項1乃至4の何れか一項に記載の車両企画支援システム。
【請求項6】
上記シミュレーション手段は、上記車室内画像の奥行き感を強める補正を行う車室内画像補正手段を更に有する請求項1乃至5記載の車両企画支援システム。
【請求項7】
上記車室内画像補正手段は、上記車室内画像に、車両モデルの車室内の表面の形状に従うグリッド画像を追加表示する請求項6記載の車両企画支援システム。
【請求項8】
上記車室内画像補正手段は、上記車室内画像において、明るさを運転者に近い部分ほど暗くする請求項6又は7記載の車両企画支援システム。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【公開番号】特開2006−277369(P2006−277369A)
【公開日】平成18年10月12日(2006.10.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−95873(P2005−95873)
【出願日】平成17年3月29日(2005.3.29)
【出願人】(000003137)マツダ株式会社 (6,115)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成18年10月12日(2006.10.12)
【国際特許分類】
【出願日】平成17年3月29日(2005.3.29)
【出願人】(000003137)マツダ株式会社 (6,115)
【Fターム(参考)】
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