説明

車両制御システムおよび車両制御方法

【課題】従来技術のディーゼル電気機関車では、回生終了と同時にエンジンが低回転の時に高負荷をとることになり、排気及び燃費の悪化が起こり、最悪の場合エンジン出力が負荷についていかずエンジンストールしてしまう可能性がある。
【解決手段】エンジンと、前記エンジンにより駆動される発電機と、前記発電機の出力する交流電力を直流電力へ変換するコンバータと、車両を加速させるモータと、前記直流電力を変換して交流電力を生成して前記モータを駆動するインバータと、前記直流電力が供給される補機を備え、ブレーキ時に前記モータの回生電力を前記補機に供給する列車制御システムにおいて、前記回生電力が前記補機の消費電力を下回る前に、予めエンジン回転数を上昇させておくことを特徴とする列車制御システムを提供する。これにより、排気及び燃費の悪化が起きない。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、エンジンの出力を電力に変換して、駆動用モータに交流電力を供給する車両制御システムに関する。
【背景技術】
【0002】
蓄電装置を搭載した電車において、ブレーキノッチ投入時にインバータで電力を回生し、回生した電力を補機に供給し、補機への電力供給の過不足分を蓄電装置で調整し、回生終了時に、補機への電力供給元をインバータから架線に切り替える特許文献1に示す制御技術がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2009−72003号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
さて、環境意識の高まりからディーゼルエンジンの排ガスについても規制が厳しくなりつつある。ディーゼルエンジンの排ガス浄化技術として、EGR(排気ガス再循環)やDPF(ディーゼルパーティキュレータフィルター),高圧多段噴射のような技術が開発されてきている。しかし、EGRガスの還流遅れや過給圧の遅れなどを考えると、煤の発生を抑えるためには、エンジンが低回転の時に高負荷をとることは極力避ける必要がある。
【0005】
ここで、特許文献1の技術を、エンジンと、エンジンに連結させた発電機と、発電機による発電電力を直流に変換するコンバータと、直流から交流(or交流から直流)に電力を変換するインバータと、車両駆動用モータと、直流ラインに接続された補機と、を備えたディーゼルエレクトリックの車両に適用することを考える。ブレーキノッチ投入時にモータ及びインバータで電力を回生し、回生した電力を補機に供給し、補機への電力供給過不足分を発電機及びコンバータで調整する。回生終了時には、駆動用モータから発電機へ電力供給元を切り替える。エンジンには、回生終了時に発電機に補機の負荷がかかることになる。すなわち、エンジンが低回転の時に高負荷をとることになり、排気及び燃費の悪化が起こり、最悪の場合エンジン出力が負荷についていかずエンジンストールしてしまう可能性がある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記課題を解決するため本発明の望ましい態様の一つは、車両のブレーキ動作開始後であって、モータから発生する回生電力が補機の消費電力を下回る時刻より前に、予めエンジン回転数を上昇させることである。
【発明の効果】
【0007】
本発明により、エンジンの負荷が上がる前にエンジン回転数を上げることで、エンジンの排気悪化及びエンジンストールを防ぐことができる。すなわち、補機出力の供給元を駆動用モータから発電機へスムーズに切り替えることができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】第1の実施形態における列車制御システムの構成。
【図2】第1の実施形態におけるブロック図。
【図3】第1の実施形態におけるエンジン負荷予測部のフローチャート。
【図4】第1の実施形態における列車制御システムの効果。
【図5】第1の実施形態におけるエンジン出力の軌跡。
【図6】第1の実施形態における動作モード表示装置と動作モード切り替え装置。
【図7】第2の実施形態におけるエンジン負荷予測部のフローチャート。
【図8】第2の実施形態における列車制御システムの効果。
【図9】第3の実施形態における列車制御システム。
【図10】第3の実施形態におけるブロック図。
【図11】第3の実施形態におけるエンジン負荷予測部のフローチャート。
【図12】第3の実施形態におけるノッチの予測方法。
【図13】第3の実施形態における列車制御システムの効果。
【図14】第4の実施形態におけるブロック図。
【図15】第4の実施形態における目標走行速度パターン。
【図16】第5の実施形態における列車制御システム。
【図17】第5の実施形態におけるブロック図。
【発明を実施するための形態】
【0009】
(第1の実施形態)
図1は本発明の第1の実施形態のディーゼル電気機関車1に搭載された列車制御システム2の構成である。列車制御システム2は、車両を駆動するモータ14と、モータ14駆動用の交流電力を生成するインバータ12と、発電機9の発生する交流電力からインバータに入力する直流電力を生成するコンバータ10と、交流電力を発電してコンバータに交流電力を出力する発電機9と、発電機9を駆動するディーゼルエンジン8と、直流ラインの余剰な電力を消費するブレーキ抵抗器21及び該ブレーキ抵抗器への電流量を制御するブレーキチョッパ20と、空調や照明等の補機22と、インバータ12を制御するインバータ制御装置13と、ディーゼルエンジン8を制御するエンジン制御装置7と、各制御装置に指令を出す列車制御装置6と、運転士のノッチ操作を検出するマスターコントローラ3と、車両の速度を検出する速度検出装置4と、列車制御装置6の動作モードを切り替える動作モード切り替え装置15と、列車制御装置6の動作モードを表示する動作モード表示装置16から構成されている。なお、モータ14及びインバータ12は駆動力を発生するだけでなく、回生電力を発生させることにより回生ブレーキとしても利用される。
【0010】
列車制御装置6は、マスターコントローラ3からノッチ指令を、速度検出装置4から車両速度を受信し、電圧計24で直流電圧を検出し、電流計23で補機への供給電流を検出する。なお、速度検出装置4は、例えば各車輪に取り付けられた車輪回転角度センサから各車輪17の速度を求め、各車輪から求めた速度の平均値を車両速度として生成する。但し、速度の求め方はこれに限定されず、車両の速度可能な方法であれば置き換え可能である。
【0011】
詳細は後述するが列車制御装置6は、前記ノッチ指令,前記車両速度に基づき、エンジン回転数指令,コンバータ10のPWMパルス,インバータ電流指令を求める。なお、複数車両が連結される列車分野でのエンジンは、大出力のディーゼルエンジン8が一般に用いられるが、ガソリンエンジン等の他の内燃機関でもよい。発電機9としては、3相交流発電機9(誘導発電機又は同期発電機)が一般的である。コンバータ10は、整流器やPWMコンバータ10で構成される。モータ14としては、3相交流モータ14(誘導モータ14または同期モータ14)が一般的である。
【0012】
本実施例では、列車制御システム2がすべて一つの車両に搭載されている電気機関車を例に説明したが、本発明はこれに限定するものではなく、例えば、電力を発電する機能を有する車両(エンジン8,発電機9,コンバータ10を搭載)と、該電力で車両を加速させる複数の車両(インバータ12,モータ14を搭載)に機能を分割してもよい。
【0013】
まず、力行時の動作について説明する。マスターコントローラにノッチが投入されると、列車制御装置6はそれに応じたエンジン回転数指令及びインバータ電流指令を出力する。エンジン制御装置7は、前記エンジン回転数指令に基づきエンジン回転数を制御する。なお、エンジン制御装置7は排気悪化を防ぐためにエンジン回転数が急増しないように、エンジン回転数に速度の制約を設けている。エンジンで発生した動力で、発電機9を駆動し3相の交流電力が出力される。列車制御装置6は、コンバータ10へ出力するPWMパルスを調整して発電機9で出力される3相交流電力を直流電力に変換し、直流部が所望の電圧になるように直流電圧を制御する。前記直流電力は補機22及びインバータ12に供給される。インバータ制御装置13は、前記インバータ電流指令に基づきインバータ12を制御してモータ14に電力を供給する。駆動されたモータ14により車輪17に動力が伝わり車両が加速する。
【0014】
続いて、ブレーキ時の動作について説明する。マスターコントローラ3でブレーキのノッチ指令が投入されると、列車制御装置6は当該ブレーキノッチ指令に応じたインバータ電流指令を算出する。インバータ制御装置13は、前記インバータ電流指令に基づきモータ14で回生した3相交流電力を直流電力に変換する。前記直流電力は補機22に供給される。前記補機22の出力がモータ14から供給される電力(以下、回生電力)より大きい場合、発電機9及びコンバータ10からその不足分を供給する。一方、補機22の出力が回生電力より小さい場合、電力が余剰となり、直流電圧が増加するため、列車制御装置6は直流電圧の上昇を電圧計24により検知し、ブレーキチョッパ20の通流率を上げて、ブレーキ抵抗器21で余剰電力を消費させ、直流部の過電圧を防ぐ。ブレーキのノッチ指令がオフされる等で回生が終了すると、補機への電力供給元が、モータ14から発電機9に切り替わる。
【0015】
詳細は後述するが、動作モード切り替え装置15の入力が列車制御装置6に入力され、列車制御装置6のエンジン制御モードが切り替えできるようになっている。また、詳細は後述するが、動作モード表示装置16は、列車制御装置6から入力されたエンジン制御モードに応じてランプを点灯させることで、運転士にエンジン制御モードを明示することができる。
【0016】
続いて、実施例1におけるブロック図を図2に示す。インバータ電流指令演算部31は、前記車両速度と前記ノッチ指令に基づき、力行又は回生のインバータ電流指令を演算する。前記インバータ電流指令はインバータ制御装置13に入力される。コンバータ制御部は、直流部電圧指令に基づき、コンバータ10にPWMパルスを出力する。一般的に、直流部の電圧は一定に保たれるように制御されている。例えば、直流部電圧指令は1500Vと設定されており、コンバータ制御部は直流部の電圧を1500Vに保つように必要に応じて発電機9を制御する。エンジン回転数指令演算部33は、コンバータ制御部で演算したコンバータ出力に基づきエンジン回転数指令を求める。なお、エンジン回転数指令は、エンジンの燃費,排気などを考慮して適切に算出されることが望ましい。前記エンジン回転数指令は、後述するエンジン負荷予測値によりエンジン回転数補正部34で補正される。以上のようにエンジン回転数補正部34で補正されたエンジン回転数指令がエンジン制御装置7に入力される。なお、エンジン回転数指令,コンバータへのPWMパルス,インバータ電流指令の生成方法は必ずしも前記である必要はなく、ノッチ入力に対して必要な電力を発電し車両が加速できれば、他の手段に置き換え可能である。
【0017】
続いて、図3を用いてエンジン負荷予測部35について説明する。エンジン負荷予測部35は、S51にて、ブレーキのノッチ指令が入力されているかどうかを判断し、ブレーキのノッチ指令が入力されている場合にはS52に、入力されていない場合にはエンドに進む。次に、S52にて、検出された前記直流電圧と前記補機電流より、回生終了時のエンジン負荷を予測する。具体的には、補機電流と直流部電圧の積により、現在の補機での消費電力を生成し、当該消費電力を回生終了時のエンジン負荷と予測する。なお、エンジン負荷の予測は前記直流電圧と前記補機電流から求めているがこれに限定されず、エンジン負荷の予測可能な方法であれば置き換え可能である。
【0018】
ここでエンジンの特性について述べる。エンジン8は、エンジン回転数が低い状態で急激に大きな負荷を取ろうとすると排気や燃費が悪化してしまう。さらに、エンジン8は、エンジン回転数に対応して出力できる電力の最大値が決まっており、エンジン回転数が低いときには大きなエンジン出力を発生させることができず、負荷がエンジンの最大出力を超えてしまうと、エンジンがストールしてしまう可能性がある。また、エンジン回転数を急激に増加させると排気が悪化するため、エンジン回転数の増加速度に制約が設けられる場合がある。そのため、エンジンが低回転数の状況で急激に大きな出力を出そうとした場合には、排気や燃費が悪化してしまうという課題があり、さらに、エンジン回転数の増加速度を上記制約に従ってゆっくり増加させると共に、エンジン負荷がエンジン回転数に対応した最大出力を超えないようにする必要があるため、補機などで必要とされる電力を発電機(エンジン)から速やかに供給することができないという課題がある。
【0019】
前記課題を解決するため、エンジン回転数補正部34は、前記エンジン負荷予測値に基づき、エンジン負荷が増加する時刻より前にエンジン回転数を増加させる。エンジン回転数指令を補正する補正量は、前記エンジン負荷の予測値をエンジン負荷予測部から受け取ったときに、燃費及び排気が最適となるエンジン回転数を求め、それに向けてエンジン回転数指令を補正する。つまり、生成したエンジン回転数指令に対応する燃費及び排気が最適となるエンジン負荷よりも、回生終了時のエンジンの負荷が大きいと予測された時にはそれに見合った高いエンジン回転数へエンジン回転数指令が補正される。エンジン回転数を補正するタイミングは、前記エンジン負荷の予測値と現エンジン回転数における燃費及び排気が悪化しないエンジン出力を比較して決める。具体的には、前記エンジン負荷の予測値が前記エンジン出力を超えており、燃費及び排気が悪化すると判断した場合に、エンジン回転数を増加させる。なお、ブレーキのノッチ指令が入力されると同時にエンジン回転数を増加させても良いが、エンジン負荷が上昇するまでの間(補機出力が回生電力を超えるまでの間)エンジン回転数を高い回転数に保つことになり燃費の観点からはあまり好ましくない。そこで、エンジン回転数を上げるタイミングは、ブレーキノッチを入れたタイミングから所定時間遅らせて増加させるなどの工夫をするとよい。例えば、ブレーキのノッチ指令が入力されて(オン)からオフするまでの平均的な時間をあらかじめ計測しておき、該平均時間後に所望のエンジン回転数に上昇するようにエンジン回転数の増加を開始するなどの方法がある。但し、エンジン回転数を上げるタイミングはこれに限定されず、ブレーキのノッチ指令が入力されてから(車両のブレーキ動作が開始されてから)回生終了まで(ブレーキのノッチ指令がオフするまで)の間で自由に設定してよい。
【0020】
以上説明した実施例1の効果について図4を用いて説明する。運転士が時刻t0でブレーキ2[N]のノッチ指令を入力し、時刻t1で0[N]にノッチ指令を切り替えている。時刻0秒から時刻t0の間では、発電機により補機へ電力が供給されている。時刻t0のブレーキ2[N]のノッチ指令の入力により、補機への電力供給元が発電機からモータへ切り替わっている。時刻t0以降は発電機から補機へ電力を供給する必要がないため、エンジンのエンジン回転数は、アイドリング回転数となる。図4では速度が比較的高く、引っ張り特性が定出力領域のため、モータの回生電力は速度によらず一定値である。補機出力で消費される以外の余剰な回生電力は、前記ブレーキ抵抗器により消費されている。
【0021】
公知技術(破線)では、時刻t1のノッチ指令0[N]投入(ブレーキノッチ指令をオフ)により、モータの出力低下に合わせて発電機の出力(∝エンジン出力)が増加している。それと同時にエンジン回転数は、アイドリング回転数から速度制約に従ってゆっくり増加している。すなわち、公知技術(破線)では、図5のように、回生終了と同時に、エンジンが低回転速度(アイドリング回転数)の状態で急激に大きな負荷を発生させる必要があり、エンジン回転数を急増させるため排気及び燃費が悪化してしまう。補機出力がもっと大きい場合(図示しない)は、エンジン負荷がエンジン最大出力を超えてエンジンストールが発生してしまう可能性もある。
【0022】
続いて、本発明の実施例1の動作について図4を用いて一点破線で説明する。時刻t0において、エンジン負荷予測部35は、回生終了後のエンジン負荷を予測する。エンジン回転数補正部は、前記エンジン負荷の予測値が現エンジン回転数における燃費及び排気が悪化しないエンジン出力を超えると判断し、ブレーキのノッチ指令投入から所定時間後(ts秒)にエンジン回転数を増加させている。言い換えると、エンジン負荷予測部35で予測されたエンジン負荷が増加する時刻よりも前、すなわち回生電力が補機の消費電力を下回る時刻よりも前に、予めエンジン回転数を増加させている。時刻t1にブレーキノッチ指令がオフされ、モータの出力低下に合わせて発電機の出力が増加している。以上の第1の実施形態の列車制御システム2により、エンジン負荷増加前すなわち回生電力が補機の消費電力を下回る前にエンジン回転数を増加させることができるので、図5に示すようにエンジン回転速度が低回転である場合に、エンジン回転速度を急増させずにすみ、排気及び燃費の悪化と、エンジンストールを防ぐことができる。すなわち、補機出力の供給元をモータから発電機へスムーズに切り替えることができる。なお、以上のようなエンジン負荷増加前にエンジン回転数を増加させるモードをエンジン準備モードと呼ぶ。
【0023】
次に、動作モード表示装置16及び動作モード切り替え装置15の一例を図6に示す。上述した通り本発明は、運転士のノッチ操作と独立してエンジン回転数を増加させることになる。一般的な列車制御システム2は、ノッチ操作とエンジン回転数は連動して動くため、本システムの動作が運転士にシステム異常と認識され、不安感を与える可能性がある。そこで、システムが正常な判断でエンジン回転数を増加させるということを運転士に伝えて安心感を与えるため、動作モード表示装置16は、図6に示すようにエンジン準備モードを運転士に明示する。但し、動作モード表示装置16は前記に限定するものではなく、例えば音声などで運転士に知らせてもよい。また、列車制御装置6がエンジン負荷の上昇を予測できないシーンにおいて、運転士が自由にエンジン準備モードによりエンジンの排気及び燃費悪化を防止できるようにするため、図6に示すような動作モード切り替え装置15を設ける。
【0024】
(第2の実施形態)
続いて、第2の実施形態について、第1の実施形態と相違のある部分を中心に説明する。下記に説明しない部分は、第1の実施形態と同様の構成であるものとする。第2の実施例は、特に車両の速度低下に伴い回生電力が減少した場合に有効な発明である。
【0025】
エンジン負荷予測部35には、ノッチ指令,車両速度,直流電圧,補機電流,エンジン回転数が入力される。つまり、本実施形態では、ノッチ指令,直流電圧,補機電流が入力される実施例1のエンジン負荷予測部35に、さらに車両速度の情報を入力する構成となっている。
【0026】
エンジン負荷予測部35のフローチャートを図7に示す。まず、S71にて、ブレーキノッチ指令がONされているかどうかを判断し、ONされている場合はS72に、ONされていない場合はエンドに進む。
【0027】
S72では、(1)式より所定時間Δt秒後の車両速度ν1[m/s]を算出する。但し、α[m/s2]は加速度、ν0[m/s]は現在の車両速度である。
【0028】
ν1=ν0+αΔt …(1)
加速度は車両速度を不完全微分して求める。なお、所定時間Δt秒後の車両速度ν1の算出方法は、前記に限定する必要はなく現在の速度と同じ(加速も減速もしない)としてもよく、他の方法でもよい。
【0029】
次に、S73で、前記Δt秒後の車両速度及び引っ張り特性より、Δt秒後の回生電力を推定する。なお、ここではブレーキノッチ指令はΔt秒後も現在と同じと仮定している。続いて、S74で、補機電流と直流電圧の積よりΔt秒後の補機出力を予測する。次に、S75で、前記Δt秒後の回生電力及び前記Δt秒後の補機出力に基づいて、その偏差よりΔt秒後のエンジン負荷の上昇を予測する。以上の処理により、エンジン負荷予測部35は、回生時の速度低下に伴うエンジン負荷の出力増加を予測できる。このエンジン負荷の予測値に基づき、エンジン回転数補正部34が実施例1と同様の方法でエンジン回転数指令を補正する。
【0030】
第2の実施例における効果を、図8を用いて説明する。運転士が時刻t0でブレーキノッチ指令3[N]、時刻t2でノッチ指令0[N]にノッチを切り替えている。時刻0秒から時刻t0の間では、実施例1と同様に発電機により補機へ電力が供給されている。時刻t0のブレーキノッチ指令3[N]投入により、補機への電力供給元が発電機からモータへ切り替わっている。図8では速度が低く引っ張り特性が定トルク領域のため、モータの回生電力は車両の速度低下と共に減少する。補機出力で消費される以外の余剰な回生電力は、ブレーキ抵抗器21により消費されている。時刻t1でモータの回生電力が補機出力よりも小さくなると、電力が足りなくなるので、それを補うためにコンバータにより発電機から電力を供給している。
【0031】
公知技術(破線)では、時刻t1で、発電機電力(∝エンジン出力)が増加すると同時に、エンジン回転数が速度制約に従ってゆっくり増加している。すなわち、モータ回生電力が補機で消費される電力よりも低下すると同時に、エンジンの回転数が低回転数の状態で急激に大きなエンジン負荷をとることになり、エンジンの排気及び燃費が悪化してしまう(図5の実施例1の公知例の軌跡よりも若干下の軌跡を描く)。補機出力がもっと大きい場合(図示しない)は、エンジン負荷がエンジンの最大出力を超えてエンジンストールが発生してしまう可能性もある。
【0032】
続いて、本発明の実施例2の動作について図8を用いて一点破線で説明する。時刻tsで、エンジン負荷予測部35がエンジン負荷を予測し、エンジン回転数補正部が、エンジン負荷の予測値が現エンジン回転数における燃費及び排気が悪化しないエンジン出力を超えると判断し、エンジン回転数を増加させる。言い換えると、エンジン負荷予測部35で予測されたエンジン負荷が増加する時刻よりも前、すなわち回生電力が補機の消費電力を下回る時刻t1よりも前に、予めエンジン回転数を増加させている。そして、回生電力が補機の消費電力を下回る時刻t1にモータ回生電力の出力低下に合わせて発電機の出力が増加している。
【0033】
以上の第2の実施形態の列車制御システム2により、エンジン負荷が増加する時刻よりも前、すなわち回生電力が補機の消費電力を下回る時刻よりも前に予めエンジン回転数を増加させることができるので、車両の速度低下により回生電力が低下する場合に対しても、エンジン回転数が低回転状態でエンジン出力を急増させずにすみ、排気及び燃費の悪化と、エンジンストールを防ぐことができる。すなわち、補機出力の供給元をモータから発電機へスムーズに切り替えることができる。
【0034】
(第3の実施形態)
続いて、第3の実施形態について、第1の実施形態と相違のある部分を中心に説明する。第3の実施例は、路線データ(制限速度等)に基づきブレーキのノッチ指令を予測し、ブレーキのノッチ指令をオフした時のエンジン負荷の上昇を予測し、エンジン負荷の予測値に基づいてエンジン回転数を補正する。第3の実施例は、路線区間毎に定められている制限速度の切り替わりに応じて運転士がノッチ指令を変更するような状況において特に有効である。
【0035】
図9に第3の実施例の列車制御システムを示す。列車制御装置6に路線データベース5より制限速度データが入力されている。この制限速度データは、例えば路線の所定区間(カーブ区間,分岐区間など)において予め設定された制限速度である。それ以外は第1の実施形態と同様の構成であるため、説明を省略する。
【0036】
第3の実施形態におけるブロック図を図10に示す。エンジン負荷予測部35に、制限速度データ,車両速度,ノッチ指令,補機電流,直流電圧,前記エンジン回転数が入力されている。それ以外は第1の実施形態と同様の構成であるため、説明を省略する。
【0037】
続いて、第3の実施形態におけるエンジン負荷予測部のフローチャートを図11に示す。S111は、第1の実施形態と同様の判断のため、説明を省略する。S112で、エンジン負荷予測部35は、前述の(1)式よりΔt秒後の車両速度ν1[m/s]を、(2)式よりΔt秒後の自車位置χ1[m]を求める。但し、χ0[m]は現在の自車位置、ν[m/s]は車両速度である。
【0038】
χ1=χ0+νΔt …(2)
前記現在の自車位置は、前記車両速度を積分して推定する。自車位置の算出方法は、前記に限定する必要はなくGPS等で求めてもよい。S113では、エンジン負荷予測部35は、前記Δt秒後の自車位置χ1[m]と前記制限速度データより、Δt秒後の制限速度を予測する。
【0039】
次に、S114では、エンジン負荷予測部35は、前記Δt秒後の前記制限速度及び前記Δt秒後の車両速度に基づき、図12のマップからΔt秒後のノッチ指令を予測する。図12のマップを簡単に説明すると、制限速度に対して車両速度が大きいすなわち速度超過している時に、より高いブレーキノッチ指令が選択されるようになっている。また、図12の横軸([制限速度−車両速度])が同じ速度でも車両速度が高速の方が車両速度が低速に比べて小さいブレーキノッチ指令が選択される。この理由は、車両速度が高速時の方が車両速度が低速時に比べて走行抵抗が大きく、減速度が大きいためである。
【0040】
続いて、S115で、エンジン負荷予測部35は、Δt秒後のノッチ指令とΔt秒後の車両速度に基づき、引っ張り特性からΔt秒後の回生電力を予測する。次に、S116で、第1の実施例と同様の方法で、Δt秒後の補機電力を推定する。最後に、S117で、エンジン負荷予測部は、第2の実施例と同様の方法でΔt秒後のエンジン負荷を予測する。エンジン回転数補正部34は、前記エンジン負荷の予測値に基づき、第2の実施例と同様の方法で、エンジン回転数指令を補正する。
【0041】
第3の実施例における効果を、図13を用いて説明する。路線区間に設定された制限速度に合わせて運転士がブレーキ3[N],ブレーキ2[N],ブレーキ1[N],ブレーキ0[N]の順にノッチ指令を切り替えている。時刻0秒から時刻t0の間では、実施例1と同様に発電機により補機へ電力が供給されている。時刻t0のブレーキ3[N]投入により、補機への電力供給元が発電機からモータへ切り替わっている。車両の速度が高く引っ張り特性は定出力領域のため、モータの回生電力は速度によらず一定で、ブレーキ3[N],ブレーキ2[N],ブレーキ1[N]のノッチ指令の切り替えに応じてモータにより回生電力が発生している。補機出力で消費される以外の余剰な回生電力は、前記ブレーキ抵抗器21により消費されている。時刻tsで、エンジン負荷予測部35は、図11に示すように自車位置,自車速度及び制限速度データからΔt秒後(ここでは時刻t1秒)のノッチ指令を予測し、予測したノッチ指令に基づきエンジン負荷の上昇を予測する。エンジン回転数補正部34は、前記エンジン負荷の予測値が現エンジン回転数における燃費及び排気が悪化しないエンジン出力を超えると判断し、エンジン回転数を増加させる。言い換えると、エンジン負荷予測部35で予測されたエンジン負荷が増加する時刻よりも前、すなわちモータ回生電力が補機の消費電力を下回る時刻よりも前に、予めエンジン回転数を増加させている。時刻t1にモータ回生電力の低下に合わせて発電機の出力が増加している。以上の第3の実施形態の列車制御システム2により、エンジン負荷が増加すると予測された時刻よりも前、すなわちモータ回生電力が補機の消費電力を下回る時刻よりも前にエンジン回転数を増加させることができるので、低回転でエンジン出力を急増させずにすみ、排気及び燃費の悪化と、エンジンストールを防ぐことができる。すなわち、補機出力の供給元をモータから発電機へスムーズに切り替えることができる。
【0042】
(第4の実施形態)
続いて、第4の実施形態について、第3の実施形態と相違のある部分を中心に説明する。第3の実施形態と重複する部分は説明を省略する。第4の実施例は、ATO(Automatic Train Operation)が適用されている列車が対象となる。第4の実施形態における列車制御システム2の構成は、図9の路線データベース5を、図14に示す目標走行速度パターンデータベース18に置き換えた構成である。ここで、目標走行速度パターンデータベース18の格納する目標走行速度パターンを図15に示す。目標走行速度パターンは、車両位置(横軸)に対する目標走行速度(縦軸)を示した走行パターンであり、例えば、カーブ区間や勾配に起因する制限速度やA駅−B駅間を定時で走行するための速度を考慮して予め定められた速度パターンである。
【0043】
第4の実施形態におけるブロック図を図14に示す。マスターコントローラ3は、ATOモードであることを列車制御装置6に入力する。ノッチ決定部36は、ATOのノッチ操作を決める役割を担う。ノッチ決定部36は、実施例3と同様に現在の車両速度を積分して現在の車両位置を推定し、前記目標走行速度パターンデータと前記現在車両位置から、目標速度を求める。次に、ノッチ決定部36は、前記目標速度と前記車両速度からノッチ指令を決める。なお、ノッチの決定方法は前記に限定する必要はなく、例えば路線の制限速度,勾配などの路線情報の情報も利用して決定されてもよく、他のATOの方式に従ってもよい。第4の実施形態において、上述したノッチ指令の作成方法と、エンジン負荷予測部35以外は第3の実施形態におけるブロック図と同じため説明を省略する。
【0044】
第4の実施形態におけるエンジン負荷予測部35には、前記目標走行速度パターン及び前記車両速度,前記補機電流,前記直流電圧,前記エンジン回転数が入力される。エンジン負荷予測部35は、まず、実施例3のS112と同様の処理で所定時間Δt秒後の自車位置χ1[m]を算出する。次に、前記目標走行速度パターンと前記Δt秒後の自車位置より、Δt秒後の目標速度を推定する。前記Δt秒後の目標速度から前記ノッチ決定部36と同様の処理により、Δt秒後のノッチ指令を予測する。以降の処理は、第3の実施形態と同様にS115〜S117の処理で、Δt秒後のエンジン負荷を予測する。以上で予測したエンジン負荷予測値に基づき、第3の実施例と同様の方法で、エンジン回転数補正部34は、必要に応じてエンジン負荷増加前にエンジン回転数指令を補正し、エンジン回転数を増加させる。
【0045】
第4の実施形態における効果は、ATOによりノッチが決定される以外は、第3の実施形態の効果と同様のため詳細説明を省略する。以上の第4の実施形態の列車制御システム2により、エンジン負荷が増加する時刻より前、すなわちモータ回生電力が補機の消費電力を下回る時刻より前にエンジン回転数を予め増加させることができるので、エンジンの回転数が低回転の状態でエンジン出力を急増させずにすみ、排気及び燃費の悪化と、エンジンストールを防ぐことができる。すなわち、補機出力の供給元をモータから発電機へスムーズに切り替えることができる。
【0046】
(第5の実施形態)
続いて、第5の実施形態について、第3の実施形態と相違のある部分を中心に説明する。第5の実施例は、運転士に適切なノッチをガイダンスする運転士ガイダンス装置が適用されている列車が対象となる。
【0047】
図16は本発明の第5の実施形態による列車制御システム2の構成図である。第5の実施形態は、第3の実施形態と比較して、運転士のノッチ操作をガイダンスする運転士ガイダンス装置19および目標走行速度パターンデータベース18を有する点で相違する。また、第3の実施形態と共通する部分については、説明を省略する。運転士ガイダンス装置19は、目標走行速度パターン及び車両速度に基づき、マスターコントローラ3へノッチガイダンスを出力する。目標走行速度パターンデータベース18には、図15に示すような車両位置(横軸)に対する目標走行速度(縦軸)を示した駅間の目標速度パターンが格納されている。
【0048】
図17を用いて、第5の実施形態のブロック図を説明する。運転士ガイダンス装置19は、まず、現在の車両速度を積分して現在の車両位置を推定し、前記目標走行速度パターンと現在の車両位置から、目標速度を生成する。次に、運転士ガイダンス装置19は、前記目標速度と現在の車両速度から運転士へ教示するノッチガイダンスを決める。なお、ノッチガイダンスの決定方法は上記した方法に限定する必要はなく、例えば路線の制限速度,勾配などの路線情報の情報も利用して決定されてもよい。以上により、運転士ガイダンス装置19は、目標走行速度パターン及び車両速度に基づき、マスターコントローラ3へノッチガイダンスを決定する。ノッチガイダンスの決定方法とエンジン負荷予測部35での処理以外の構成は第3の実施形態と同様のため説明を省略する。
【0049】
第5の実施形態におけるエンジン負荷予測部35には、前記目標走行速度パターン及び前記車両速度,前記補機電流,前記直流電圧,前記エンジン回転数が入力される。エンジン負荷予測部35は、まず,実施例3のS112と同様の処理で所定時間Δt秒後の自車位置χ1[m]を算出する。次に、前記目標走行速度パターンと前記Δt秒後の自車位置より、Δt秒後の目標速度を推定する。前記Δt秒後の目標速度から運転士ガイダンス装置19と同様の処理により、Δt秒後のノッチ指令を予測する。以降の処理は、第3の実施形態と同様にS115〜S117の処理で、Δt秒後のエンジン負荷を予測する。以上で予測したエンジン負荷予測値に基づき、第3の実施例と同様の方法で、エンジン回転数補正部34は、必要に応じてエンジン負荷増加前にエンジン回転数指令を補正し、エンジン回転数を増加させる。
【0050】
第5の実施形態の効果は、ノッチガイダンスに基づいて運転士がノッチを決定する以外は、第3の実施形態の効果と同様のため詳細説明を省略する。以上の第5の実施形態の列車制御システム2により、エンジン負荷が増加する時刻より前、すなわちモータ回生電力が補機の消費電力を下回る時刻より前に、エンジン回転数を増加させることができるので、低回転でエンジン出力を急増させずにすみ、排気及び燃費の悪化と、エンジンストールを防ぐことができる。すなわち、補機出力の供給元をモータから発電機へスムーズに切り替えることができる。
【0051】
以上の第1〜5に示す実施形態を示したが、本発明の趣旨から逸脱しない範囲で、同等の手段や方法に置き換えることは可能である。
【0052】
以上の各実施例において、エンジン回転数を上げるタイミングは、ブレーキのノッチ指令が入力されてから(車両のブレーキ動作が開始されてから)、モータ回生電力が補機の消費電力を下回る時刻より前までの間であれば、本発明の効果は発生する。
【0053】
また、上記の各実施例においては、エンジンの回転速度をモータ回生電力が補機の消費電力を下回る時刻より前に予め上昇させることを説明したが、ここでエンジン回転数の上昇とは、エンジン回転数をアイドリング回転数から上昇させること、およびエンジン停止状態(回転数0)からエンジンを起動させることも含む。
【符号の説明】
【0054】
1 ディーゼル電気機関車
2 列車制御システム
3 マスターコントローラ
4 速度検出装置
5 路線データベース
6 列車制御装置
7 エンジン制御装置
8 ディーゼルエンジン
9 発電機
10 コンバータ
11 コンバータ制御装置
12 インバータ
13 インバータ制御装置
14 モータ
15 動作モード切り替え装置
16 動作モード表示装置
17 車輪
18 目標走行速度パターンデータベース
19 運転士ガイダンス装置
20 ブレーキチョッパ
21 ブレーキ抵抗器
22 補機
23 電流計
24 電圧計
31 インバータ電流指令演算部
33 エンジン回転数指令演算部
34 エンジン回転数補正部
35 エンジン負荷予測部
36 ノッチ決定部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
エンジンと、前記エンジンにより駆動される交流発電機と、前記交流発電機の出力する交流電力を直流電力へ変換するコンバータと、車両を加速させるモータと、前記直流電力を変換して交流電力を生成して前記モータを駆動するインバータと、前記直流電力が供給される補機を備え、
前記車両のブレーキ動作時に前記モータから発生する回生電力を前記補機に供給可能な車両制御システムにおいて、
前記車両のブレーキ動作開始後であって、前記モータから発生する回生電力が前記補機の消費電力を下回る時刻より前に、予めエンジン回転数を上昇させることを特徴とする車両制御システム。
【請求項2】
請求項1の列車制御システムにおいて、
エンジン回転数は、エンジンのアイドリング時回転数よりも高い回転数へ上昇させることを特徴とする車両制御システム。
【請求項3】
請求項1または請求項2の車両制御システムにおいて、
前記補機の消費電力が前記回生電力を上回り、前記エンジンの負荷が増加することを予測するエンジン負荷予測部と、
前記エンジン負荷予測部が、将来の前記エンジン負荷の増加を予測した場合に、前記エンジン負荷の上昇が生じる前に、前記エンジンの回転数を増加させるエンジン制御装置と、
を有することを特徴とする車両制御システム。
【請求項4】
請求項1または請求項2の車両制御システムにおいて、
前記補機の消費電流を検出する電流検出手段と、
前記直流電力の電圧を検出する電圧検出手段と、を備え、
予め上昇させるエンジン回転数は、少なくとも前記補機の消費電流および前記直流電力の電圧に基づき決定されることを特徴とする車両制御システム。
【請求項5】
請求項3に記載の車両制御システムであって、
前記車両の将来の走行速度を予測する速度予測手段を備え、
前記エンジン負荷予測部は、前記走行速度の予測値に基づいて、前記補機の消費電力が前記回生電力を上回り、前記エンジンの負荷が増加することを予測することを特徴とする車両制御システム。
【請求項6】
請求項3に記載の車両制御システムであって、
前記車両の現在の走行位置を検出する位置検出手段と、前記車両の将来の走行速度を予測する速度予測手段と、前記補機の将来の消費電力を予測する補機電力予測手段と、備え、
前記エンジン負荷予測部は、車両位置に対する制限速度情報と前記車両の走行速度の予測値に基づいて将来のノッチを予測し、前記ノッチの予測値と前記補機電力予測値に基づき、前記エンジンの負荷上昇を予測することを特徴とする車両制御システム。
【請求項7】
請求項3に記載の車両制御システムであって、
前記車両の走行位置を検出する位置検出手段と、前記車両の将来の走行速度を予測する速度予測手段と、前記補機の将来の消費電力を予測する補機電力予測手段と、
車両位置に対応した目標速度に、車両の走行速度が追従するようにノッチを決定するノッチ決定部と、を有し、
前記エンジン負荷予測部は、車両位置に対応した目標速度と前記車両の走行速度の予測値に基づいて将来のノッチを予測し、該ノッチの予測値と前記補機電力予測値に基づき前記エンジンの負荷上昇を予測することを特徴とする車両制御システム。
【請求項8】
請求項3に記載の車両制御システムであって、
前記エンジン制御装置は、エンジン負荷予測部で予測したエンジン負荷に対応するエンジン回転数となるようにエンジンの回転数を上昇させることを特徴とする車両制御システム。
【請求項9】
請求項3に記載の車両制御システムであって、
前記車両の走行位置を検出する位置検出手段と、
前記車両の走行位置に対応した目標速度情報に基づいたノッチを生成し、生成した前記ノッチを前記車両の運転手へガイダンスする運転士ガイダンス装置と、を有し、
前記エンジン負荷予測部は、前記運転士ガイダンス装置のノッチガイダンスを予測し、該ノッチガイダンスの予測値に基づき前記エンジンの負荷上昇を予測することを特徴とする車両制御システム。
【請求項10】
請求項1乃至請求項9のいずれかに記載の車両制御システムであって、
前記エンジン負荷予測部で予測された前記エンジンの負荷上昇が生じる前にエンジン回転数を増加させる場合に、前記運転手に対し前記エンジン回転数を増加させることを通知する動作モード表示装置を有することを特徴とする車両制御システム。
【請求項11】
請求項1乃至請求項10のいずれかに記載の車両制御システムであって、
前記エンジン負荷予測部で予測された前記エンジンの負荷上昇が生じる前にエンジン回転数を増加させる動作モードと、エンジン回転数をノッチ指令に応じて制御する動作モードと、を切替える切り替え装置を有することを特徴とする車両制御システム。
【請求項12】
請求項1乃至請求項11に記載の車両制御システムを備える鉄道車両。
【請求項13】
エンジンと、前記エンジンにより駆動される発電機と、前記発電機の出力する交流電力を直流電力へ変換するコンバータと、車両を加速させるモータと、前記直流電力を変換して交流電力を生成して前記モータを駆動するインバータと、前記直流電力が供給される補機と、を備え、
前記車両のブレーキ動作時に前記モータから発生する回生電力を前記補機に供給可能な車両の車両制御方法において、
将来の前記エンジンの負荷上昇を予測するステップと、
前記車両のブレーキ動作開始後であって、前記エンジンの予測された負荷上昇が生じる時刻よりも前に、予めエンジン回転数を増加させるステップと、を備えることを特徴とする車両制御方法。
【請求項14】
請求項13の列車制御方法において、
予めエンジン回転数を増加させるステップでは、エンジン回転数をエンジンのアイドリング時回転数よりも高い回転数へ増加させることを特徴とする車両制御システム。
【請求項15】
請求項13または請求項14に記載の車両制御方法において、
予め増加させるエンジン回転数は、少なくとも前記補機の消費電流および前記直流電力の電圧に基づき決定されることを特徴とする車両制御方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【公開番号】特開2012−184687(P2012−184687A)
【公開日】平成24年9月27日(2012.9.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−47074(P2011−47074)
【出願日】平成23年3月4日(2011.3.4)
【出願人】(000005108)株式会社日立製作所 (27,607)
【Fターム(参考)】