説明

車両制御装置

【課題】ユーザの意図を十分に反映した燃費向上に関する制御を実行することができる車両制御装置を提供すること。
【解決手段】本発明による車両制御装置1は、燃費を重視する制御を選択する選択手段5aと、発電機4により蓄電池を充電する充電制御を行う充電制御手段3aと、エアコンのブロアモータの風量aが所定値A以上である場合に充電制御を禁止する禁止手段3bと、選択手段5aにより燃費を重視する制御が選択された場合に、禁止手段3bによる充電制御の禁止を解除する解除手段3cを備えることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、乗用車、トラック、バス等の車両に適用して好適な車両制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
通常、車両においては、車室内の室温と湿度を適度に調節して運転者の快適性を確保するために、カーエアコンが設置されている。カーエアコンは家庭用のエアコンと同様に、室外熱交換器と室内熱交換器を含み、室内熱交換器のフィンに対してブロアモータにより室外又は室内の空気を送り込んで冷却又は加熱して、冷却又は加熱された空気を室内に送り込むことにより室温の調節を行っている。
【0003】
また、特許文献1においては、近年においては車両の低燃費化の要請が高くなっているため、ユーザが車両を低燃費で走行させようとする意思がある場合には、燃費が悪化する制御であるこもり音低減制御を行わないことが記載されている。
【特許文献1】特開2008−120177号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上述したような技術を含む従来技術においては、カーエアコンのブロアモータの風量が所定値以上の場合に、ブロアモータの風音が変化することを回避するために、蓄電池を発電機により充電する充電制御を禁止することが行われてことがあるが、ブロアモータの風音変化が一律に全てのユーザに対して不都合であるとの考慮に基づいて、充電制御を禁止しているために、燃費向上を最優先にしたいユーザが車両を使用している場合においては、ユーザの意図に反して燃費向上制御である充電制御が禁止されてしまい、ユーザの意図を十分に反映した燃費向上に関する制御が実行されないという問題があった。
【0005】
本発明は、上記問題に鑑み、ユーザの意図を十分に反映した燃費向上に関する制御を実行することができる車両制御装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記の問題を解決するため、本発明に係る車両制御装置は、
燃費を重視する制御を選択する選択手段と、
発電機により蓄電池を充電する充電制御を行う充電制御手段と、
エアコンのブロアモータの風量が所定値以上である場合に前記充電制御を禁止する禁止手段と、
前記選択手段により前記燃費を重視する制御が選択された場合に、前記禁止手段による前記充電制御の禁止を解除する解除手段を、
備えることを特徴とする。
【0007】
なお、前記選択手段は例えば車両の室内のフロントパネルや、ステアイングホイール、センターコンソール等のユーザが操作しやすい位置に配置されたエコスイッチにより構成することができる。同様に、前記禁止手段はエアコンを制御するエアコンECU(Electronic Control Unit)により構成することができ、前記解除手段は前記発電機を制御する制御ECUにより構成することができる。
【0008】
本発明の車両制御装置によれば、ユーザの操作に基づいて前記選択手段により前記燃費を重視する制御が選択された場合には、前記解除手段により前記禁止手段による前記充電制御の禁止を解除することとしているので、ユーザの意図を十分に反映した上で、前記燃費を重視する制御である前記充電制御を前記充電制御手段により実行させることができる。
【0009】
ここで前記車両制御装置において、
前記解除手段による前記解除が実行された場合に、前記ブロアモータの風量の変化に伴わせてオーディオの音量を変更する変更手段を備えること、
が好ましい。
【0010】
これによれば、ユーザの操作に基づいて前記選択手段により前記燃費を重視する制御が選択された場合に、前記解除手段により前記禁止手段による前記充電制御の禁止を解除することとして、前記ブロアモータの風量が所定値以上であるような場合においても前記充電制御が禁止されずに、前記充電制御により前記蓄電池の電圧が高くなって、前記ブロアモータの風音がより大きくなる場合において、前記オーディオの音量を前記ブロアモータの風量に伴わせて前記変更手段により変更することができる。なお、前記変更手段はオーディオシステムの含むマイクロコンピュータにより構成される。
【0011】
つまり、前記ブロアモータの風量が増大した場合には、前記オーディオの音量をそれに伴わせて大きくするように、前記変更手段が前記音量を増加する方向に変更し、前記ブロアモータの風量が減少した場合には、前記オーディオの音量をそれに伴わせて小さくするように、前記変更手段が前記音量を減少するように変更することとすることができる。
【0012】
これにより、前記燃費向上を最優先したいユーザが車両を使用している場合に、その意思を反映させて、前記ブロアモータの風量が前記所定値以上となる場合において、前記充電制御の禁止を解除した場合において、前記ブロアモータの風音が大きくなっても、前記オーディオのそれに伴わせて音量を大きくするので、ユーザが前記オーディオの音声を聞き取りにくくなると言う不都合を発生することを予め防止することができる。つまり、ユーザにとって常にオーディオの音声を聞き取りやすい状況を実現して、より快適な車室内空間を実現することができる。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、ユーザの意図を十分に反映した燃費向上に関する制御を実行することができる車両制御装置を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
以下、本発明を実施するための最良の形態について、添付図面を参照しながら説明する。
【実施例】
【0015】
図1は、本発明に係る車両制御装置の一実施形態を示すブロック図である。
【0016】
図1に示すように車両制御装置1は、エアコンECU2と、制御ECU3と、発電機4と、エコスイッチ5と、オーディオシステム6と、から構成される。エアコンECU2と制御ECU3とオーディオシステム6の含むマイクロコンピュータとはCAN(Controller Area Network)等の通信規格により接続される。
【0017】
エアコンECU2は例えばCPU、ROM、RAMおよびそれらを接続するデータバスと入出力インターフェースから構成され、ROMに格納されたプログラムに従い、CPUが所定の処理を行うものであって、図示しないエアコンのブロアモータの風量aを検出する検出手段2aと、検出した風量aが所定値A以上である場合に充電制御禁止信号を制御ECU3に対して出力する禁止信号出力手段2bを構成するものである。
【0018】
制御ECU3は例えばCPU、ROM、RAMおよびそれらを接続するデータバスと入出力インターフェースから構成され、ROMに格納されたプログラムに従い、CPUが所定の処理を行うものであって、発電機4により図示しない蓄電池を充電する充電制御を実行する充電制御手段3aと、図示しないエアコンのブロアモータの風量aが所定値A以上である場合に、エアコンECU2の禁止信号出力手段2bから送信される充電制御禁止信号を受信して、充電制御を禁止する禁止手段3bを構成する。
【0019】
エコスイッチ5は、ユーザが燃費を重視する制御である充電制御を選択する選択手段5aを構成し、ユーザが充電制御を選択する場合にはエコスイッチ5をオンとするものとし、エコスイッチ5は制御ECU3に接続されており、エコスイッチ5がユーザによりオンとされた場合にはオン出力が制御ECU3に出力される。
【0020】
制御ECU3は、選択手段5aすなわちエコスイッチ5のオン出力を検出した場合に、ユーザにより燃費を重視する制御が選択されており、ユーザが燃費を重視する制御を優先する意思を有しているとみなして、禁止手段3bによる充電制御の禁止を解除する解除手段3cをも構成する。
【0021】
オーディオシステム6は、ラジオ番組等を受信するチューナと、CD等の音楽媒体を再生するプレイヤーと、チューナ又はプレイヤーの出力を増幅してスピーカに出力するアンプと、アンプにより音声の音量が調節されるスピーカと、これらを統括的に制御するマイクロコンピュータを含んで構成され、マイクロコンピュータは、例えばCPU、ROM、RAMおよびそれらを接続するデータバスと入出力インターフェースから構成され、ROMに格納されたプログラムに従い、CPUが所定の処理を行うものであって、制御ECU3の解除手段3cによる充電制御の禁止を解除することが実行された場合に、エアコンECU2の検出手段2aからブロアモータの風量aを取得して、ブロアモータの風量aの変化に伴わせて、オーディオシステム6のアンプのスピーカに対する出力を変更して、スピーカの発生する音量を変更する変更手段6aを構成する。
【0022】
以下、本実施例の車両制御装置1の制御内容を、フローチャートとマップを用いて説明する。図2は、本発明による車両制御装置1の制御内容を示すフローチャートである。また、図3は、本発明による車両制御装置1の制御に用いるマップである。
【0023】
図2に示すステップS1において、エアコンECU2の検出手段2aは、図示しないエアコンのブロアモータの風量aをブロアモータのコイルに通電される電流値から検出し、ステップS2において、エアコンECU2の禁止信号出力手段2bは、検出手段2aにより検出された風量aが所定値A以上であるか否かを判定し、風量a≧所定値Aであって肯定である場合に充電制御禁止信号をオンとして制御ECU3に対してCANを介して出力する。これとともに、図2のステップS2において、制御ECU3の禁止手段3bは、エアコンECU2の禁止信号出力手段2bから送信される充電制御禁止信号を受信する。
【0024】
図2のステップS3において、制御ECU3の解除手段3cは、エコスイッチ5すなわち選択手段5aがオンであるか否かを判定し、肯定と判定する場合においては、ステップS4にすすんで、充電制御の禁止手段3bによる禁止を解除して、制御ECU3の充電制御手段3aにより発電機4の発電電圧可変制御を実行して、通常通りの充電制御を作動させるとともに、ステップS5にすすんで、オーディオシステム6の含むマイクロコンピュータすなわち変更手段6aは、ブロアモータの風量aを含む情報をエアコンECU2の検出手段2aから取得し、アンプ及びスピーカを制御して、図3に示すようなマップに基づいて、ブロアモータの風量aの増加に伴わせてスピーカの発生する音量の初期値からの補正量を例えば二次関数的に増加させる。
【0025】
ステップS3において、制御ECU3の解除手段3cが、エコスイッチ5すなわち選択手段5aがオンとされておらず否定と判定する場合には、ステップS6にすすんで、制御ECU3の禁止手段3bは充電制御を禁止して、制御ECU3の充電制御手段3aは発電機4の発電電圧を一定とする発電電圧一定制御を実行する。
【0026】
以上述べた制御内容により実現される本実施例の車両制御装置1によれば、以下のような作用効果を得ることができる。すなわち、ユーザの操作に基づいてエコスイッチ5すなわち選択手段5aにより燃費を重視する制御である充電制御が選択された場合には、制御ECU3の構成する解除手段3cにより、禁止手段3bによる充電制御の禁止を解除することとしているので、ユーザの意図を十分に反映した上で、制御ECU3の充電制御手段3aにより燃費を重視する制御である充電制御を実行させることができる。
【0027】
さらに、本実施例の車両制御装置1においては、解除手段3cによる解除が実行された場合に、オーディオシステム6の含むマクロコンピュータすなわち変更手段6aが、ブロアモータの風量aの変化に伴わせてオーディオシステム6のスピーカの発生する音量を変更することとしているので、さらに以下のような作用効果を得ることができる。
【0028】
つまり、ユーザの操作に基づいてエコスイッチ5により燃費を重視する制御が選択された場合に、制御ECU3の解除手段3cにより禁止手段3bによる充電制御の禁止を解除することとすると、ブロアモータの風量aが所定値A以上であるような場合においても充電制御が禁止されずに、充電制御により図示しない蓄電池の電圧が高くなって、ブロアモータの風音がより大きくなることとなる。
【0029】
このような場合においても、オーディオシステム6の発生する音量をブロアモータの風量aに伴わせて、オーディオシステム6の変更手段6aにより変更することができるので、ブロアモータの風量aが増大した場合には、スピーカの音量をそれに伴わせて大きくすることとするように、変更手段6aが音量を増加するようにアンプ及びスピーカを制御し、ブロアモータの風量aが減少した場合には、スピーカの音量をそれに伴わせて小さくするように、変更手段6aが音量を減少するようにアンプ及びスピーカを制御することができる。
【0030】
この音量を風量aに伴わせて変更する制御により、燃費向上を最優先したいユーザが車両を使用している場合においてもその意思を十分に反映させることができる。すなわち、ブロアモータの風量aが所定値A以上となる場合において、充電制御の禁止を解除した場合においても、蓄電池の電圧の増加に伴いブロアモータの風音が大きくなっても、オーディオシステム6の発生する音量もそれに伴わせて大きくすることとするので、ユーザがオーディオシステム6の音声を聞き取りにくくなると言う不都合を発生することを回避することができ、ユーザにとって常にオーディオシステム6の音声を聞き取りやすい状態を実現することができる。
【0031】
以上本発明の好ましい実施例について詳細に説明したが、本発明は上述した実施例に制限されることなく、本発明の範囲を逸脱することなく、上述した実施例に種々の変形および置換を加えることができる。
【0032】
例えば、図3に示したマップは二次曲線状のものとしたが、直線状とすることもでき、その他の曲線を使用することもできる。
【産業上の利用可能性】
【0033】
本発明は、車両室内を快適に保つ技術に関するものであって、新たな構成要素を追加することなく、比較的軽微なロジックの変更により、ユーザの意図を十分に反映した燃費向上に関する制御を実行することができる車両制御装置を提供することができるので、乗用車、トラック、バス等の様々な車両に適用して有益なものである。
【図面の簡単な説明】
【0034】
【図1】本発明に係る車両制御装置の一実施形態を示すブロック図である。
【図2】本発明に係る車両制御装置の一実施形態の制御内容を示すフローチャートである。
【図3】本発明に係る車両制御装置の一実施形態の制御内容を示すマップである。
【符号の説明】
【0035】
1 車両制御装置
2 エアコンECU
2a 検出手段
2b 禁止信号出力手段
3 制御ECU
3a 充電制御手段
3b 禁止手段
3c 解除手段
4 発電機
5 エコスイッチ
5a 選択手段
6 オーディオシステム
6a 変更手段

【特許請求の範囲】
【請求項1】
燃費を重視する制御を選択する選択手段と、発電機により蓄電池を充電する充電制御を行う充電制御手段と、エアコンのブロアモータの風量が所定値以上である場合に前記充電制御を禁止する禁止手段と、前記選択手段により前記燃費を重視する制御が選択された場合に、前記禁止手段による前記充電制御の禁止を解除する解除手段を備えることを特徴とする車両制御装置。
【請求項2】
前記解除手段による前記解除が実行された場合に、前記ブロアモータの風量の変化に伴わせてオーディオの音量を変更する変更手段を備えることを特徴とする請求項1に記載の車両制御装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2010−119218(P2010−119218A)
【公開日】平成22年5月27日(2010.5.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−290837(P2008−290837)
【出願日】平成20年11月13日(2008.11.13)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】