説明

車両制御装置

【課題】車載カメラの撮影画像に基づいて自車両をエネルギ供給スポットのような所定の駐車位置に走行支援する際に、低コストで燃費よく走行支援できるようにする。
【解決手段】車載カメラ3の撮像画像を画像変換手段41により上面視画像に変換し、検索手段42により、上面視画像から路面の駐車位置の所定位置に印された円形パターンの目標位置マ一クをパターンマッチングにより少ない処理負担で探索し、探索した目標位置マークの位置に基づき自車両1から駐車位置までの距離および方向を精度よく算出し、算出した距離および方向に基づいて支援制御手段44により自車両1の駐車位置への走行の支援制御を行なう。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、車載カメラの撮影画像に基づいて自車両を所定の駐車位置に走行支援する車両制御装置に関し、詳しくは、燃費の向上及び低コスト化の実現に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、電気自動車などの車両(自動車)においては、時々に外部からの充電等のエネルギ供給が必要であり、そのため、充電スポットのようなエネルギ源の供給スポット等の駐車位置への自動運転や走行案内表示の走行支援を行なうことが望まれている。
【0003】
そして、車載カメラの撮影画像を用いた駐車位置への走行支援を行なうため、駐車位置付近の路面(平らな床面)に目標位置のマークを印しておき、それを走行中の自車両の車載カメラで撮影し、その撮影画像から自車両と目標位置の位置関係を特定してドライバに目標位置への駐車支援の案内表示を行なったり自動運転(自動操舵運転)することが提案されている(例えば、特許文献1(段落[0013]−[0027]、[0044]、図1−図3等)参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2008−174000号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1に記載の構成の場合、目標位置のマークは塗り分けられた4つの2等辺三角形を組み合わせた正方形の形状であり(特許文献1の段落[0015]、図3参照)、カメラの撮影画像から前記正方形の複数の特徴点を抽出して自車両の前記マークに対する相対的な位置や向きを特定し、特定した位置や向きに基づいて自車両を理想駐車位置に案内・誘導して走行支援する。
【0006】
この場合、時々刻々の撮影画像の前記マークをパターンマッチングの手法で検出して追跡するとすれば、前記マークの形状や向きを考慮して、撮影画像上で、例えば特徴パタ−ンを有する基準の正方形パターンを、上下や左右に平行移動するだけでなく、回転移動も組み合わて移動し、前記マークをその向きも考慮して検索しなければならず、処理が煩雑で処理負担が大きく、装置が高価になるだけでなく、時間がかかりその分燃費が低下する。しかも、撮影画像のパターンマッチングによる検索では、撮影カメラの撮影視線等によって画像が変形等するので、誤検索が生じ易く走行支援が不正確になって燃費が低下する可能性もある。
【0007】
本発明は、車載カメラの撮影画像に基づいて自車両を所定の駐車位置に走行支援する際に、低コストで燃費よく走行支援できるようにすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記した目的を達成するために、本発明の車両制御装置は、自車両を所定の駐車位置に走行支援する車両制御装置であって、自車両周辺を撮像する車載カメラと、前記車載カメラの撮像画像を上面視画像に変換する画像変換手段と、路面の前記駐車位置の所定位置に印された円形パターンの目標位置マ一クを前記上面視画像からパターンマッチングにより探索する探索手段と、前記探索手段が探索した前記目標位置マークの位置に基づき自車両から前記駐車位置までの距離および方向を算出する算出手段と、前記算出手段が算出した距離および方向に基づいて自車両の前記駐車位置への走行の支援制御を行なう支援制御手段とを備えたことを特徴としている(請求項1)。
【発明の効果】
【0009】
請求項1に記載の発明によれば、目標位置マークが路面(平らな床面)に印された円形パターンであり、画像変換手段により車載カメラの目標位置マークを含む撮像画像を上面視画像に変換すると、その目標位置マークは上面視画像上で円形パターンになる。そして、円形パターンは、前記従来の塗り分けられた正方形パターン等とは異なり、どの方向から見ても同じ円形の対称パターンであり、探索手段は、パターンマッチングにより、上面視画像上で、例えば基準の円形パターンを、回転移動を組み合わせることなく、上下左右に平行移動するだけの少ない処理負担で、目標位置マーク(円形パターン)を簡単に検索できる。しかも、探索した目標位置マークが上面視画像の所定の位置に移動して自車両が現在位置から駐車位置まで移動する距離および方向を、自車両と目標位置マークの相対的な向き等を考慮することなく簡単かつ正確に算出でき、算出手段が算出した移動の距離および方向に基づき、支援制御手段により自車両の駐車位置への自動運転や走行案内の支援制御を精度よく行なうことができる。
【0010】
すなわち、車載カメラの撮影画像に基づいて自車両をエネルギ供給スポットのような所定の駐車位置に走行支援する際に、目標位置マークは路面に印された円形パターンのマークであり、撮影画像を変換した上面視画像上で目標位置マークが円形パターンになるので、車載カメラの撮影画像に基づく目標位置マークの探索が、平行移動だけの簡単な処理で行なえ、処理負担が少なく、車両制御装置の低コスト化が可能である。また、パターンマッチングにより、目標位置マークが精度よく検出されるので、探索結果に基づく走行支援が短時間に正確に行なえ、燃費が向上する。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本発明の車両制御装置の一実施形態のブロック図である。
【図2】図1の車両制御装置を搭載した自車両の目標位置マ一クの撮影の説明図である。
【図3】(a)〜(d)はそれぞれ路面に印される目標位置マ一クの例の説明図である。
【図4】図1の車載カメラの撮影画像及びその上面視画像の一例の説明図である。
【図5】図1の車両制御装置の動作説明用のフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明の一実施形態について、図1〜図5を参照して説明する。
【0013】
図1は自車両1が備える本発明の車両制御装置2の一例の構成を示し、自車両1は、車両周囲の撮影画像として例えば1/30秒のフレーム周期で撮影した自車後方の撮影画像を出力する車載カメラ3が自車両1の後部の適当な高さの位置に搭載される。車載カメラ3はモノクロ又はカラーの単眼CCDカメラであり、具体的には自車両1の後部のリアウインドウより少し上の位置に取り付けられる既存のバックモニタ用のカメラである。
【0014】
4は走行支援ECUであり、予め設定された走行支援のプログラムをマイクロコンピュータが実行することにより、画像変換手段41、探索手段42、算出手段43、支援制御手段44を形成する。画像変換手段41は車載カメラ3の撮像画像を射影変換によって上面視画像に変換する。探索手段42は上面視画像から後述するように路面の駐車位置の所定位置(駐車位置付近)に印された円形パターンの目標位置マ一クをパターンマッチングにより探索する。算出手段43は探索手段42が探索した目標位置マークの上面視画像上の位置の所定の位置からのずれに基づき、自車両1の現在の位置から駐車位置9までの距離および方向を算出する。支援制御手段44は算出手段43が算出した距離および方向の情報を駐車位置9への走行の支援制御情報として自動運転制御ECU5に出力する。6は時々刻々の撮影画像や上面視画像等を書換え自在に保持する記憶部である。
【0015】
自車両1はいわゆる電気自動やハイブリッド車であり、例えば充電が必要になってドライバが充電駐車を指令すると、車載カメラ3の撮影画像に基づき駐車位置としての所定の充電スポットを探索し、探索結果にしたがって自動運転(自動操舵運転)で充電スポットに後退走行(後ろ向きに走行)して駐車し、本実施形態の場合、コイルの電磁結合により非接触でエネルギ源から自車両1の車載バッテリ(図示せず)を充電する。
【0016】
図2は車載カメラ3に撮影される路面7に印された目標位置マ一ク8及び、その近傍の給電側のコイルが埋設されている充電スポットの個所、すなわち駐車位置9を模式的に示し、目標位置マ一ク8が車載カメラ3の撮影画像上で所定位置に表示されるように自車両1を後退走行して駐車すると、自車両1の受電側のコイル(図示せず)が給電側のコイルの直上に位置して充電が行なえる。
【0017】
図3(a)〜(d)はそれぞれ路面7に印された目標位置マ一ク8の円形パターンの例を示し、(a)は一重円のパターン、(b)は二重円のパターン、(c)は三重円のパターン、(d)は中心部程濃くなるように階調を連続的又はステップ状に代えて形成されたパターンである。目標位置マ一ク8の円形パターンは、その他、色を代えた多重円のパターン等であってもよい。
【0018】
そして、例えばドライバの運転操作で自車両1が充電スポットに近づき、搭載カメラ3の撮影画像の周辺隅等に目標位置マ一ク8が写る状態になってから、例えばドライバが充電駐車をボタン操作等で指令することにより、走行支援ECU4が動作し、車載カメラ3の撮影画像は画像変換手段41により周知の射影変換によって上面視画像に変換されて記憶部6に一時記憶される。
【0019】
図4は車載カメラ3の撮影画像Pa及びそれを射影変換した上面視画像Pbの一例を示し、撮影画像Paにおいて目標位置マ一ク8が多少変形していたとしても、車載カメラ3の撮影条件を考慮した射影変換により、上面視画像Pbには目標マーク8が良好な円形パターンで含まれる。
【0020】
そして、新たな撮影画像が得られる毎に、検索手段42は最新の上面視画像Pbの円形パターンの目標位置マ一ク8をパターンマッチングにより探索する。このとき、目標位置マ一ク8は円形の対称なパターンであり、検索手段42は、例えば撮影倍率等を考慮して設定した基準の円形パターンを上面視画像Pb上で上下左右に平行移動することにより、回転移動を組み合わせることなく、少ない処理負担で簡単に、かつ、精度よく、目標位置マ一ク8を検索することができる。
【0021】
つぎに、算出手段43は、自車両1が駐車位置9に駐車したときに得られる上面視画像Pb上の目標位置マ一ク8の位置(目標位置)を所定の位置として予め記憶しており、時々刻々の目標位置マーク8を含む撮影画像Paの上面視画像Pbに前記目標位置を重ね、最も簡単には、目標位置マーク8と目標位置とを結ぶ直線路から、目標位置マーク8が前記目標位置に到達して自車両1が現在位置から駐車位置9まで移動する距離および方向を算出する。
【0022】
そして、支援制御手段44は、算出手段43が算出した距離及び方向を支援制御情報として自動運転制御ECU5に出力し、この自動運転制御ECU5の支援制御情報に基づく自動運転制御により、自車両1は後退走行で目標位置マーク8が前記目標位置に到達するように自動運転されてその位置に自車両1が駐車する。このとき、自車両1は正確に充電スポットの駐車位置9に駐車し、充電が開始される。
【0023】
図5は走行支援ECU4の上記処理のフローチャートであり、駐車支援が開始されると、搭載カメラ3の新たな撮影画像Paが得られる毎に撮影画像Paが上面視画像Pbに射影変換される(ステップS1)。そして、平行移動のパターンマッチングにより目標位置マーク8を検索し(ステップS2)、検索結果に基づき、目標位置マーク8が目標位置に到達して自車両1が現在位置から駐車位置9まで移動する距離および方向を算出し(ステップS3)、算出結果に基づき、目標位置マーク8が目標位置に到達するように自車両1を自動運転し(ステップS4)、目標位置マーク8が目標位置に到達するまではステップS5をNOで通過してステップS1に戻り、ステップS1から処理をくり返し、目標位置マーク8が目標位置に到達し、自車両1が充電スポットの駐車位置9に駐車すると、ステップS5をYESで通過して走行支援を終了する。
【0024】
したがって、前記実施形態の場合、車載カメラ3の撮影画像Paに基づいて自車両1をエネルギ供給スポットの駐車位置9に自動運転して駐車する走行支援を行なう際に、目標位置マーク8が路面7に印された円形パターンのマークであり、撮影画像Paを変換した上面視画像Pb上で目標位置マーク8が対称な円形パターンになるので、撮影画像Paに基づく目標位置マーク8の探索が、上面視画像Pb上で平行移動のパターン操作を行なうだけの負担が少なく簡単な処理で行なえ、前記平行移動に回転移動を組み合わせた複雑な処理は不要である。そのため、走行支援ECU4の処理負担が少なく、車両制御装置2の低コスト化が可能になる。また、上面視画像PB上の目標位置マーク8が円形パターンであり、パターンマッチングにより、目標位置マーク8が精度よく検出されるので、探索結果に基づく走行支援が短時間に正確に行なえ、燃費が向上する利点もある。
【0025】
そして、本発明は上記した実施形態に限定されるものではなく、その趣旨を逸脱しない限りにおいて上述したもの以外に種々の変更を行うことが可能であり、例えば、駐車位置9は充電スポット以外のエネルギ供給スポット(例えば、ガソリン車における給油スポット等)であってもよく、さらには、エネルギ供給スポットでなく、例えば駐車場の所定の駐車位置であってもよい。
【0026】
また、本発明の車載カメラは、自車両1の前部に搭載されて自車前方の撮影画像を出力するものであってもよく、この場合、自車両1は前進してエネルギ供給スポットの駐車位置9等に駐車するように自動運転される。
【0027】
さらに、支援制御手段44の走行支援は、自車両1の現在位置から駐車位置9までの移動の距離および方向の走行案内データ(地図データや音声案内データ)を形成し、この走行案内データを例えばナビゲーション装置の表示画面に表示したり、音声案内したりするものであってもよい。
【0028】
つぎに、路面7に印される目標位置マーク8は、図3(a)〜(d)の円形パターンと異なる円形パターンであってもよいのは勿論であり、その際、円形パターンはカラーパターンであってもよい。また、目標位置マーク8は車載カメラ3の撮影範囲等を考慮して駐車位置9から適当な距離の位置に設定すればよく、場合によっては駐車位置9に一致していてもよい。
【0029】
つぎに、走行支援ECU4の各手段41〜44の処理手順等はどのようであってもよい。
【0030】
そして、本発明は、種々のエネルギで駆動される種々の車両をエネルギ供給スポットのような所定の駐車位置に走行支援する車両制御装置に適用することができる。
【符号の説明】
【0031】
1 自車両
3 車載カメラ
7 路面
8 目標位置マーク
9 駐車位置
41 画像変換手段
42 検索手段
43 算出手段
44 支援制御手段
Pa 撮影画像
Pb 上面視画像

【特許請求の範囲】
【請求項1】
自車両を所定の駐車位置に走行支援する車両制御装置であって、
自車両周辺を撮像する車載カメラと、
前記車載カメラの撮像画像を上面視画像に変換する画像変換手段と、
路面の前記駐車位置の所定位置に印された円形パターンの目標位置マ一クを前記上面視画像からパターンマッチングにより探索する探索手段と、
前記探索手段が探索した前記目標位置マークの位置に基づき自車両から前記駐車位置までの距離および方向を算出する算出手段と、
前記算出手段が算出した距離および方向に基づいて前記駐車位置への走行の支援制御を行なう支援制御手段とを備えたことを特徴とする車両制御装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate


【公開番号】特開2012−76518(P2012−76518A)
【公開日】平成24年4月19日(2012.4.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−221569(P2010−221569)
【出願日】平成22年9月30日(2010.9.30)
【出願人】(000002967)ダイハツ工業株式会社 (2,560)
【Fターム(参考)】