説明

車両制御装置

【課題】広範囲なインフラの構築を不要とし、システムの規模増大を回避する一方、路面上金属構造物の上を通過するときに生じ易い走行が不安定になる状態に事前に対応できるようにした車両制御装置を提供する。
【解決手段】データベース化された路面上金属構造物についてのスリップポイント情報を自車両の現在位置情報をもとに取得し、自車両が路面上金属構造物の位置に接近し、加速走行あるいは旋回走行している状況で自車両前方に路面上金属構造物を検出すると、自車両が路面上金属構造物の上を通過する以前にエンジントルク制御あるいはスロットル制御とブレーキ制御を行い、自車両の加速度を制御し、自車両が路面上金属構造物の上を通過するときのスリップ現象やスピン現象の発生を抑制する制御を行い、スリップやスピンなどの不安定な状態になるのを防止する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、走行中の車両が例えばスリップやスピンなどの不安定な状態になるのを防止する車両制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
自動車は、ゴム製のタイヤ表面と路面との間の摩擦により走行が可能になる。一方、路面表面の摩擦係数μは路面表面を構成する材質、路面表面の水分量、温度などにより変化する。このような微妙に摩擦係数が変化する路面を車両が走行する場合、それまでの摩擦係数よりも小さい摩擦係数の路面、例えば通常のアスファルト路面から表面の水が凍結した凍結路面に変わると、駆動輪が空転し、車両の走行が不安定な状態になる。特に、車両が加速あるいは減速中であったり、旋回している状態では、スリップやスピンなどが生じて車両の不安定な状態は顕著になる。
このため、走行中の車両が不安定な状態になるのを回避するため、走行している路面上の摩擦係数μを滑り易さの情報として各車両で検出し、前記検出した滑り易さの情報と前記各車両の位置情報とを収集し、道路の路面情報を作成し、前記作成した道路の路面情報を他の車両に対し配信し、前記他の車両では道路の路面情報を受信し、前記受信した道路の路面情報をもとにスリップやスピンなどの走行が不安定な状態になるのを回避し、自車両の運転制御の性能を向上させるものがある(特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2002−8198号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
したがって、従来の車両制御装置においては、各車両で検出した道路の路面情報を収集し作成し、さらに前記作成した道路の路面情報を他の車両に対し配信するシステムが必要となるなど、広範囲なインフラの構築が必要となり、システムの規模が増大する課題があった。
また、マンホールなどの施設や、特に高速道路などのコンクリート路面に多くみられる道路のジョイント部などの金属により構成されている路面上金属構造物の上を走行する場合、スリップやスピンなどの走行が不安定な状態になり易いが、このような道路の路面上金属構造物を含む滑りやすい路面を走行するときの走行が不安定になる状態に対し対応できない課題があった。
【0005】
本発明は、このような事情に鑑みてなされたものであり、広範囲なインフラの構築を不要とし、システムの規模増大を回避する一方、路面上金属構造物の上を通過するときに生じ易い走行が不安定になる状態に事前に対応できるようにした車両制御装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
請求項1に記載の発明は、マンホールおよび道路のジョイント部を含む路面上金属構造物についてのスリップポイント情報を記憶したデータベースと、自車両の現在位置情報をもとに、前記データベースからスリップポイント情報を取得するスリップポイント情報取得手段と、前記自車両の加速走行および旋回走行を含む自車両情報を検出する自車両情報検出手段と、前記自車両前方の前記路面上金属構造物を検出する路面上金属構造物検出手段と、前記スリップポイント情報取得手段によりスリップポイント情報が取得され、前記取得されたスリップポイント情報の路面上金属構造物に前記自車両が接近し、前記自車両情報検出手段により前記自車両情報の加速走行あるいは旋回走行が検出され、前記路面上金属構造物検出手段により前記路面上金属構造物が検出されると、前記自車両が前記路面上金属構造物の上を通過する以前に前記自車両の加速度を制御し、前記自車両が前記路面上金属構造物の上を通過するときに走行が不安定な状態となる現象の発生を抑制する制御を行う制御手段とを備えたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0007】
請求項1記載の発明によれば、マンホールおよび道路のジョイント部を含む路面上金属構造物についてのスリップポイント情報をデータベースに記憶し、自車両の現在位置情報をもとに、前記データベースからスリップポイント情報をスリップポイント情報取得手段により取得し、前記自車両の加速走行および旋回走行を含む自車両情報を自車両情報検出手段により検出し、前記自車両前方の前記路面上金属構造物を路面上金属構造物検出手段により検出し、前記スリップポイント情報取得手段によりスリップポイント情報が取得され、前記取得されたスリップポイント情報の路面上金属構造物に前記自車両が接近し、前記自車両情報検出手段により前記自車両情報の加速走行あるいは旋回走行が検出され、前記路面上金属構造物検出手段により前記路面上金属構造物が検出されると、前記自車両が前記路面上金属構造物の上を通過する以前に前記自車両の加速度を制御し、前記自車両が前記路面上金属構造物の上を通過するときに走行が不安定な状態となる現象の発生を抑制する制御を制御手段が行うように構成したので、道路上の設備や他の車両との通信システムなどの広範囲なインフラの構築を不要とし、システムの規模増大を回避でき、前記スリップポイント情報を取得することで路面上金属構造物の上を通過するときに生じ易い走行が不安定になる状態に事前に対応できる車両制御装置を提供できる効果がある。
【0008】
請求項2記載の発明によれば、スリップポイント情報は、路面上金属構造物についての識別情報、前記路面上金属構造物が設けられている道路情報、前記路面上金属構造物についての位置情報、前記路面上金属構造物の路面に対する平面的な配置関係を示す配置図を含むように構成したので、前記識別情報、道路情報、位置情報、配置図を含むスリップポイント情報を取得することで路面上金属構造物の上を通過するときに生じ易い走行が不安定になる状態に事前に対応できる車両制御装置を提供できる効果がある。
【0009】
請求項3記載の発明によれば、路面上金属構造物検出手段は、自車両の前方を撮像するカメラが出力する映像信号に対し画像処理を行い、前記自車両前方の路面上の路面上金属構造物を検出し、あるいは所定波長の電波をレーダ装置から前記自車両前方の路面上に照射したとき前方の路面上から反射されてくる反射波をもとに前記自車両前方の路面上の路面上金属構造物を検出するように構成したので、道路上の設備や他の車両との通信システムなどの広範囲なインフラの構築を不要とし、システムの規模増大を回避でき、路面上金属構造物の上を通過するときに生じ易い走行が不安定になる状態に事前に対応できる車両制御装置を提供できる効果がある。
【0010】
請求項4記載の発明によれば、スリップポイント情報取得手段によりスリップポイント情報が取得されず、自車両情報検出手段により自車両情報の加速走行あるいは旋回走行が検出され、路面上金属構造物検出手段により路面上金属構造物が検出されると、制御手段は、前記路面上金属構造物の上を通過する以前に前記自車両の加速度を制御し、前記自車両が前記路面上金属構造物の上を通過するときに走行が不安定な状態となる現象の発生を抑制する制御を行うように構成したので、スリップポイント情報が取得されない場合であっても、道路上の設備や他の車両との通信システムなどの広範囲なインフラの構築を不要とし、システムの規模増大を回避でき、路面上金属構造物の上を通過するときに生じ易い走行が不安定になる状態に事前に対応できる車両制御装置を提供できる効果がある。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本発明の実施の形態である車両制御装置の構成を示すブロック図である。
【図2】本発明の実施の形態の車両制御装置においてカメラにより撮像した画像から判定されたマンホールである路面上金属構造物を示す説明図である。
【図3】本発明の実施の形態の車両制御装置においてカメラにより撮像した画像から判定された道路のジョイント部である路面上金属構造物を示す説明図である。
【図4】本発明の実施の形態の車両制御装置の動作を示すフローチャートである。
【図5】本発明の実施の形態の車両制御装置のデータベース化されたスリップポイント情報を示す説明図である。
【図6】本発明の実施の形態の車両制御装置のデータベース化されたスリップポイントの配置図を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の実施の形態について説明する。図1は、本発明の実施の形態である車両制御装置の構成を示すブロック図である。
この実施の形態の車両制御装置は、加速度センサ1(自車両情報検出手段)、ナビゲーション装置(スリップポイント情報取得手段)2、カメラ(路面上金属構造物検出手段)3、レーダ装置(路面上金属構造物検出手段)4および雨量センサ5と、路面上金属構造物判定手段6,7と、スリップ判定装置(制御手段)8、スリップ抑制制御装置(制御手段)9、データベース21を備えている。
加速度センサ1は、自車両の走行速度の変化である加速度と、自車両が旋回しているときの横方向の旋回加速度とを検出する。
ナビゲーション装置2は、複数のGPS衛星から受信したGPS信号をもとに自車両の現在位置を判定する現在位置判定手段と、マンホールおよび道路のジョイント部を含む路面上の金属製の構造物(以下、路面上金属構造物という)の位置や路面に対する配置関係を示すスリップポイント情報および道路地図を表示するための地図情報が格納されたデータベース21とを少なくとも備えている。スリップポイント情報は、スリップポイントの識別情報(識別ID)と、スリップポイントが存在している道路を特定する道路情報(例えば、道路情報として中央高速道)と、スリップポイントの位置を示す緯度、経度情報(例えば、中央高速道の調布インター付近に存在しているスリップポイントの位置を示す緯度、経度情報)、路面に対する平面的な配置関係を示す路面位置情報(例えば、中央高速道の調布インター付近に存在しているスリップポイントの路面に対する平面的な配置関係を示す配置図)を含む。
【0013】
図5は、データベース21のスリップポイント情報の説明図であり、スリップポイントの識別情報と、スリップポイントが存在している道路を示す道路情報と、スリップポイントの位置を示す緯度、経度情報と、スリップポイントの路面に対する平面的な配置関係を示す配置図とがそれぞれ関係付けられてデータベース化されている。また、スリップポイント情報は地図情報と関係付けられている。
図6は、路面上のスリップポイントの一例を示す配置図である。図6において符号201は道路のジョイントであるスリップポイントを示す。
【0014】
図1に戻り、カメラ3は、通常の可視領域の光を媒介として自車両の路面上前方を撮像する車載カメラであり、例えばフロントガラスの上縁部中央付近の運転室内に取り付けられ、運転室の上方から自車両前方の路面上を撮像する。なお、このカメラ3は自車両前方の路面上を撮像するときに遠方からは判別しにくい対象物を拡大できるズーム機能を備えている。
レーダ装置4は、例えばマイクロ波、ミリ波あるいはレーザ波を自車両前方の路面上に照射し、このとき前方の路面上から反射されてくる反射波の特性、前方の路面上の反射特性から自車両前方の路面上に存在するマンホール、道路のジョイント部を含む路面上金属構造物を検知する。
雨量センサ5は、例えばフロントガラスの上縁部中央付近の運転室内に取り付けられ、フロントガラスに降りかかる雨滴の量を検出し雨量を計測する。
路面上金属構造物判定手段6は、自車両前方の路面上を撮像するカメラ3が出力する映像信号に対し画像処理を行い、自車両前方の路面上の画像に対しエッジ検出、パターン認識などの処理を行うことで自車両前方の路面上の路面上金属構造物を識別し、その路面上金属構造物の識別結果を出力する。
路面上金属構造物判定手段7は、自車両前方の路面上にマイクロ波、ミリ波あるいはレーザ波を照射したときに前記路面上から反射されてくる反射波から路面上金属構造物固有の特性を検出することで自車両前方の路面上の路面上金属構造物を識別し、その路面上金属構造物の識別結果を出力する。
スリップ判定装置8は、加速度センサ1から出力される自車両情報である自車両の走行速度変化、旋回加速度、ナビゲーション装置から出力される自車両の現在位置に対応する
路面上金属構造物の道路上の位置や路面に対する配置関係を示すスリップポイント情報、路面上金属構造物判定手段6から出力されるカメラ3により撮像された画像に対する路面上金属構造物の識別結果、路面上金属構造物判定手段7から出力される自車両前方の路面上から反射されてくる反射波から得られる路面上金属構造物の識別結果、さらには雨量センサ5により検出された雨量をもとに、自車両が路面上金属構造物上を通過する際にスリップ現象やスピン現象(走行が不安定な状態となる現象)が発生する可能性を判定する。
スリップ抑制制御装置9は、自車両が路面上金属構造物上を通過する際のスリップ現象やスピン現象の発生する可能性に応じてスリップ現象やスピン現象(走行が不安定な状態となる現象)の発生を抑制する制御を強めたりあるいは弱めたりする。このスリップ抑制制御装置9の制御は、例えばスロットル制御部10に対するスロットル開度を調整する制御、エンジンECU11に対するエンジン出力を調整する制御、あるいはブレーキ制御部12に対する制動力の制御を含む。
なお、これらスリップ判定装置8およびスリップ抑制制御装置9は、車両制御装置の機能を実現する車両制御ECUであるマイクロコンピュータにより構成されている。
【0015】
次に、この実施の形態の車間制御装置の動作について図4に示すフローチャートを参照して説明する。
自車両は例えば高速道路を所定の速度で走行中であり、必要に応じて走行速度の加減速運転あるいは旋回運転を行う。
ナビゲーション装置2は、複数のGPS衛星から出力されているGPS信号をGPS受信機で受信し、現在位置判定手段により自車両の現在位置情報を判定し取得する。続いて、前記取得した自車両の現在位置情報と自車両の走行方向とをもとにマンホールおよび道路のジョイント部を含む路面上金属構造物の道路上の位置や路面に対する配置関係を示すスリップポイント情報と地図情報とをデータベース21から読み出す。このとき自車両の現在位置を中心に例えば半径1Km以内に存在するスリップポイントについてのスリップポイント情報がデータベース21から検索されて読み出される。
【0016】
この結果、データベース21から読み出されたスリップポイントについてのスリップポイント情報と、自車両の現在位置に応じた地図情報をもとに、ナビゲーション装置2は、自車両の運転席のモニタ画面に自車両の現在位置と、その現在位置を含む道路地図を表示する。また、道路地図上には自車両の現在位置を中心に半径1Km以内に存在するスリップポイントが表示される。このときナビゲーション装置2は自車両の現在位置情報とスリップポイント情報とをスリップ判定装置8へ出力する。この結果、スリップ判定装置8は、自車両の現在位置情報を取得する(ステップS1)。スリップ判定装置8は、ナビゲーション装置2からスリップポイント情報を取得したか判定しており(ステップS2)、この結果、スリップポイント情報が得られると、続けて、スリップポイントと自車両との距離が例えば20m未満という基準値をもとに、スリップポイントへ自車両が接近しているかを自車両の現在位置とスリップポイントの位置情報とから判定する(ステップS3)。この結果、スリップポイントと自車両との距離が例えば20m未満になると、スリップ判定装置8はスリップポイントへ自車両が接近していると判定し、続いてこのときの加速度センサ1の出力と走行速度の変化から自車両が加速状態にあるか判定する(ステップS4)。この結果、自車両が加速していると判定すると、さらに自車両前方をカメラ3により撮像したときの映像信号に対する路面上金属構造物判定手段6による判定結果、あるいはレーダ装置4の出力から得られた路面上金属構造物判定手段7の識別結果をもとにスリップ判定装置8は、自車両の前方に路面上金属構造物を検出したか判定を行う(ステップS6)。
【0017】
図2は、自車両前方をカメラ3により撮像した画像から判定されたマンホールである路面上金属構造物を示す説明図である。図2において符号101はマンホールである路面上金属構造物を示す。
図3は、自車両前方をカメラ3により撮像した画像から判定された道路のジョイント部である路面上金属構造物を示す説明図である。図3において符号102は道路のジョイント部である路面上金属構造物を示す。
【0018】
そして、スリップ判定装置8は、自車両が加速しながら路面上金属構造物上を通過する際のスリップ現象やスピン現象の発生する可能性を判定する。そしてさらに、スリップ抑制制御装置9を介してスリップ現象やスピン現象の発生する可能性に応じてスリップ現象やスピン現象の発生を抑制する制御を強めたりあるいは弱めたりする。つまり、スリップポイント情報が示す位置を中心とする一定の距離範囲、あるいは一定の走行時間範囲、エンジントルク制御あるいはスロットル制御とブレーキ制御を行い、自車両の加速度を制御する(ステップS7)。
一方、ステップS4において自車両が一定速度で走行しており、加速していないと判定すると、ステップS5へ進む。ステップS5では、自車両が旋回走行しているか判定を行う。この旋回走行は、車両が急カーブの道路路面を道なりに走行している場合に旋回により生じる横加速度を加速度センサ1により検出することで自車両が旋回走行しているか判定を行う。自車両が旋回中であると、このとき自車両前方をカメラ3により撮像したときの映像信号に対する路面上金属構造物判定手段6による判定結果、あるいはレーダ装置4の出力から得られた路面上金属構造物判定手段7の識別結果をもとにスリップ判定装置8は、自車両の前方に路面上金属構造物を検出したか判定を行う(ステップS6)。
そして、スリップ判定装置8は、自車両が旋回走行しながら路面上金属構造物上を通過する際のスリップ現象やスピン現象の発生する可能性を判定する。
そして、スリップ抑制制御装置9を介して前記判定されたスリップ現象やスピン現象の発生する可能性に応じてスリップ現象やスピン現象の発生を抑制する制御を行う(ステップS7)。
一方、ステップS5において自車両が旋回走行していないと判定すると、自車両は一定速度でほぼ直線的に走行している場合である。このときのスリップ現象やスピン現象の発生する可能性は、加速あるいは減速した状態で路面上金属構造物上を通過する際のスリップ現象やスピン現象の発生する可能性に比べて小さい値となる。したがって、スリップ現象やスピン現象の発生する可能性はなく安全運転であると判定し、このフローチャートをぬける。
【0019】
なお、ステップS2においてナビゲーション装置2からスリップポイント情報を取得できない場合、ステップS2からステップS4へ進み、自車両の加速走行あるいは旋回走行を判定する。そして、自車両が加速走行あるいは旋回走行していると判定し、さらにカメラ3あるいはレーダ装置4により路面上金属構造物を自車両前方に検出すると、自車両が
路面上金属構造物の上を通過する以前に続くステップS7においてエンジントルク制御あるいはスロットル制御とブレーキ制御を行い、自車両の加速度を制御し、スリップ現象やスピン現象の発生を抑制する制御を行う。
【0020】
なお、スリップ抑制制御装置9を介してスリップ現象やスピン現象の発生を抑制する制御を強めたりあるいは弱めたりする場合、これら制御を強めたりあるいは弱めたりする度合いを雨量センサ5により検知した雨量に応じて全体的に強める方向へシフトさせるように制御してもよい。
【0021】
以上、説明したように、この実施の形態によれば、データベース化された路面上金属構造物についてのスリップポイント情報を自車両の現在位置情報をもとに取得し、自車両が路面上金属構造物の位置に接近し、加速走行あるいは旋回走行している状況で自車両前方に路面上金属構造物を検出すると、自車両が路面上金属構造物の上を通過する以前にエンジントルク制御あるいはスロットル制御とブレーキ制御を行い、自車両の加速度を制御し、自車両が路面上金属構造物の上を通過するときのスリップ現象やスピン現象の発生を抑制する制御を行い、スリップやスピンなどの不安定な状態になるのを防止する。したがって、道路上の設備や他の車両との通信システムなどの広範囲なインフラの構築を不要とし、システムの規模増大を回避でき、前記スリップポイント情報を取得することで路面上金属構造物の上を通過するときに生じ易い走行が不安定になる状態に事前に対応できる車両制御装置を提供できる効果がある。
【0022】
また、この実施の形態によれば、路面上金属構造物についてのスリップポイント情報を取得できない場合であっても、自車両が加速走行あるいは旋回走行している状況で自車両前方に路面上金属構造物を検出すると、自車両が路面上金属構造物の上を通過する以前にエンジントルク制御あるいはスロットル制御とブレーキ制御を行い、自車両の加速度を制御し、自車両が路面上金属構造物の上を通過するときのスリップ現象やスピン現象の発生を抑制する制御を行い、スリップやスピンなどの不安定な状態になるのを防止する。したがって、道路上の設備や他の車両との通信システムなどの広範囲なインフラの構築を不要とし、システムの規模増大を回避でき、路面上金属構造物の上を通過するときに生じ易い走行が不安定になる状態に事前に対応できる車両制御装置を提供できる効果がある。
【符号の説明】
【0023】
1……加速度センサ(自車両情報検出手段)、2……ナビゲーション装置(スリップポイント情報取得手段)、3……カメラ(路面上金属構造物検出手段)、4……レーダ装置
(路面上金属構造物検出手段)、6,7……路面上金属構造物判定手段、8……スリップ判定装置(制御手段)、9……スリップ抑制制御装置(制御手段)、21……データベース。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
マンホールおよび道路のジョイント部を含む路面上金属構造物についてのスリップポイント情報を記憶したデータベースと、
自車両の現在位置情報をもとに、前記データベースからスリップポイント情報を取得するスリップポイント情報取得手段と、
前記自車両の加速走行および旋回走行を含む自車両情報を検出する自車両情報検出手段と、
前記自車両前方の前記路面上金属構造物を検出する路面上金属構造物検出手段と、
前記スリップポイント情報取得手段によりスリップポイント情報が取得され、前記取得されたスリップポイント情報の路面上金属構造物に前記自車両が接近し、前記自車両情報検出手段により前記自車両情報の加速走行あるいは旋回走行が検出され、前記路面上金属構造物検出手段により前記路面上金属構造物が検出されると、前記自車両が前記路面上金属構造物の上を通過する以前に前記自車両の加速度を制御し、前記自車両が前記路面上金属構造物の上を通過するときに走行が不安定な状態となる現象の発生を抑制する制御を行う制御手段と、
を備えたことを特徴とする車両制御装置。
【請求項2】
前記スリップポイント情報は、前記路面上金属構造物についての識別情報、前記路面上金属構造物が設けられている道路情報、前記路面上金属構造物についての位置情報、前記路面上金属構造物の路面に対する平面的な配置関係を示す配置図を含むことを特徴とする請求項1記載の車両制御装置。
【請求項3】
前記路面上金属構造物検出手段は、前記自車両の前方を撮像するカメラが出力する映像信号に対し画像処理を行い、自車両前方の路面上の路面上金属構造物を検出し、あるいは所定波長の電波をレーダ装置から前記自車両前方の路面上に照射したとき前方の路面上から反射されてくる反射波をもとに自車両前方の路面上の路面上金属構造物を検出することを特徴とする請求項1または2記載の車両制御装置。
【請求項4】
前記制御手段は、
前記スリップポイント情報取得手段によりスリップポイント情報が取得されず、前記自車両情報検出手段により前記自車両情報の加速走行あるいは旋回走行が検出され、前記路面上金属構造物検出手段により前記路面上金属構造物が検出されると、前記自車両が前記路面上金属構造物の上を通過する以前に前記自車両の加速度を制御し、前記自車両が前記路面上金属構造物の上を通過するときに走行が不安定な状態となる現象の発生を抑制する制御を行うことを特徴とする請求項1乃至3に何れか1項記載の車両制御装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2013−20293(P2013−20293A)
【公開日】平成25年1月31日(2013.1.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−150672(P2011−150672)
【出願日】平成23年7月7日(2011.7.7)
【出願人】(000006286)三菱自動車工業株式会社 (2,892)
【Fターム(参考)】