説明

車両又はそれに関連する改善

車両は、前輪及び後輪と、客室と、エンジンと、を有し、エンジンは、客室の主要領域の完全な後方に配置され、冷却回路と、更に冷却回路に流体的に連通するラジエターとを有し、ラジエターは、前輪の中心の後方でかつエンジンの前方であって、車両の下側から車両の後面の出口まで延びる空気流路内に配置され、空気流路は、少なくともラジエターの周囲部分に流路配置されている。このように配置すると、エンジンの近くにラジエターを設置することができ、それにより、長い導管経路やそれらに関連する重量物を排除することができる。流路配置は、ラジエター面に高圧領域を発生させ、車両後面の出口は、車両後方の低圧領域に開放する。その結果、空気は流路に沿ってラジエターを通って引き込まれる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、車両又はそれに関連する改善に係り、特にミッドエンジン及びリアエンジンの車両の冷却に関する。
【背景技術】
【0002】
車両とその駆動系に対して、数多くの、そして多様なレイアウトが採用されてきた。主要な相違は、どの車輪が駆動されるかの選択や、車輪を駆動するエンジンとギアボックスの配置にある。
【0003】
最も普通のレイアウトは、エンジンが客室の前方に配置されるフロントエンジンである。しかしながら、パッケージや重量配分の理由から、ミッドエンジンレイアウト又はリアエンジンレイアウトが採用されることも知られている。VWビートルやポルシェ911に採用されるようなリアエンジンレイアウトは、後輪車軸上又はその後方にエンジンを配置する。ミッドエンジンレイアウトは、後輪車軸と客室との間にエンジンを配置するもので、例えば、ロータスエスプリ、ポルシェボクスターやカレラGT、フェラーリ430、ランボルギーニガラルド等のスポーツカーやスーパーカーにしばしば用いられる。
【0004】
どこに配置されようと、いずれの車両のエンジンも冷却されなければならない。フロントエンジン車両では、それは、ラジエターを車両前面のグリルの後方に配置することにより実現される。車両が前方に移動することで、冷たい空気がグリルとラジエターを通って流れる。一方、熱交換流体は、エンジンやラジエターを含む回路内をポンプにより循環される。したがって、流体はラジエターを通って流れる空気により冷却され、そして(今度は)流体が流れることを通してエンジンを冷却する。
【0005】
リアエンジンとミッドエンジンの車両は、典型的に、ラジエターへの及びラジエターからの導管がエンジンに到達するために必要に応じて延長された本質的に同じ配置を使用する。いくつかの初期のリアエンジンの車両(例えば、初期のビートルや911の変形)は、強制冷却の配置をまったく省き、代わりに、車両の屋根を超えてエンジンベイやエンジンブロック及び/又はシリンダーに造られた過冷却フィンへと流れる空気流が流路配置され、それにより、エンジンを空冷する。
【0006】
熱交換流体は通常水基材である(すなわち、腐食や凍結などを防止するための多様な添加剤を含む水)。しかしながら、熱交換流体として潤滑油を用いるポルシェ911(タイプ993)のように、他の流体が使用される場合もある。
【発明の概要】
【0007】
この発明は、ミッドエンジン及びリアエンジンの車両に関し、そのような車両のエンジンのための冷却配置の改善を図るものである。ギアボックスの配置や駆動輪の構成に関係なく、そのような車両のいずれにも採用可能である。しかしながら、この発明の利点は、特にリアエンジン、後輪駆動の構成によって補われる。
【0008】
したがって、この発明は、前輪及び後輪と、客室と、エンジンと、を有する車両であって、エンジンは、客室の主要領域の完全な後方に配置され、冷却回路と、更に冷却回路に流体的に連通するラジエターとを有し、ラジエターは、前輪の中心の後方でかつエンジンの前方であって、車両の下側から車両の後面上の出口まで延びる空気流路内に配置され、空気流路は、少なくともラジエターの周囲部分に流路配置されている、車両を提供する。
【0009】
このように配置すると、エンジンの近くにラジエターを設置することができ、それにより、長い導管経路やそれらに関連する重量物を排除することができる。更に、客室の前方に配置されるべきアイテムの領域も削減し、車両のパッケージや結果的にその全体デザインにおける大幅な柔軟性を許容する。しかしながら、それは、車両の前面にラジエターを配置する一般的な理由である、ラジエターを通過する充分な空気流も保証する。車両が空気中を移動するのに伴い、ラジエターの周辺領域の流路配置は、ラジエターの前面に高圧領域を生成する。加えて、車両の後面に出口を配置することは、車両の空気中の移動に伴って車両の後方に生成される低圧領域に開放することを意味する。したがって、この組合せは、空気流路に沿ってラジエターを通して空気を引き込む。
【0010】
空気流路は、部分的に又は完全に流路配置され、及び/又は、他のアイテムの間、例えば、客室の下側とエンジン上面との間に画定される。
【0011】
車両の後面は、都市型の自動車の場合のように直立していることが好ましい。これは、低圧領域や充分な空気流の保証にとって重要である。出口は、気圧差が充分となる位置に配置されるために、少なくとも出口の一部が後輪の中心の上方となる高さで後面上に配置されていることが好ましい。出口はグリルか、又はそれに類似するもので覆われてもよい。
【0012】
ラジエターに空気を通過させるために、ラジエターと連携するファンが具備されていてもよい。これは、車両が低速の際や停車の際の補助となる。
【0013】
冷却回路内に冷却流体を循環させるためのポンプがあることが好ましい。冷却流体は、理想的には水基材である。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明の態様は、添付された図面を参照しつつ実施例の形で説明される。ここで、図1は、本発明に係るリアエンジンの車両の長手方向の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
図1を参照すると、都市型コンパクト自動車の形態である車両10は、前輪12、後輪14、及び客室16を有する。客室16内には、運転者による車両の操縦を許容する操縦部20と共に、1又はそれ以上のフロントシート18が具備される。操縦部20は、ハンドルの形態で図示されるが、もちろん都市型自動車が従来より具備する、アクセル(燃料)、ブレーキ、及び、クラッチペダルやギアシャフト等の通常の操縦部セットを含む。クラッチペダルやギアシャフトは、必要に応じて他の変速操縦部に置き換えられてもよい。フロントシートの後方に1又はそれ以上のリアシート22があり、リアシート22の後方は荷室24である。これらの組合せにより、フロントシート18とリアシート22によって占められるスペースは客室16を画定する。この場合において、内部空間のフレキシビリティを最大化するために、荷室24は客室16に統合されているが、これに限られない。
【0016】
エンジン26は、リアシート22と荷室24の下方に具備される。エンジンは、ガソリンエンジン、ディーゼルエンジン、電気モータ、代替燃料エンジン、又は、これらの推進形態のいずれか(又は他の)組合せのように、冷却を要するいかなる形式でもよい。エンジンは、後輪14の間に配置され、変速部や駆動軸と連携し、後輪を直接駆動することができる。しかしながら、この発明は、他の形式の変速部を持つ車両に採用することができる。
【0017】
エンジン26のすぐ前方に、ラジエター28とそれに連携するファン20とがある。ラジエターは、エンジン26の近傍に位置しており、短いホース32を使用するだけでエンジンの冷却回路と接続可能である。車両の前方にラジエターを配置することが必要な場合のホースの長さ(及び、冷却流体の容量)と比較すると、ラジエターをこの位置に配置することで、かなりの重量低減となる。加えて、ラジエターに空気を導入するのに必要なフロントグリルは、通常、車両の抵抗係数に大きく影響する。このグリルを排除、又は、サイズを非常に小さくすることができる。それにより、抵抗が低減し、車両の走行効率が向上する。
【0018】
もちろん、ラジエターを通過する充分な空気流を保証することが必要である。したがって、図示された車両は、車両の下側にはラジエター28のすぐ前方に導入グリル34を有し、車両の後面42には車両のベースのすぐ上にある下部エッジ38から荷室のすぐ下にある上部エッジ40まで延び、後輪車軸の上方に位置する出口グリル36を有する。移動中の車両−特に、図1に図示されるように、直立型後面42を有するもの−の後方に生じる低圧領域(”ベース負圧”)に連通して、この出口グリル36が配置される。
【0019】
ラジエターを通って空気を流すための流路配置が具備されてもよい。これは、空気流の全長にわたって、又は、(好ましくは)ラジエターやファン周りだけに配置されてもよい。例えば、流路配置は、車両下部のスクープ状の突起からファンのすぐ後方位置まで延長されてもよい。車両の下側からラジエター28までの間の流路配置は、遮断されておらず、かつ、完全に密閉されて、空気流を直接にラジエター28の前方面に向けて導いてもよい。すなわち、ラジエターの前方面は空気流の経路に対して横向きである。ラジエターに至る領域における流路配置の横断面領域を拡大することにより、ラジエター28の前方面に、非常に高圧で均等に配分された正圧を実現することができる。車両後方の低圧領域44は、移動時に車両を通過した空気流によるスリップストリームによって生成される。矢印46で図示されるように、空気は車両の上方を流れ、その空気流が切り立った後面42を有する車両のリア側に到達した場合に、車両のすぐ後方の空間に乱気流48が生じる。同様に、車両の下方に空気流(矢印50)があり、その内の幾分かは上側に示すようにラジエターを通って流れるが(矢印52)、幾分か(矢印54)は車両の下方を流れ続け、車両後方の空間に乱流的に流れ込む。この車両後方の乱流領域は一般的には問題として見られる。低圧領域44は、車両の空気抵抗(矢印56)を増大させ、乱気流は、水や泥を跳ね上げて、(特に)エステートワゴン車やステーションワゴン車の後面を非常に汚す可能性がある。
【0020】
しかしながら、この発明においては、この低圧領域44が有益となる。導入グリル34と出口グリル36との間に、ラジエター28を通る空気流を引き起こす圧力差が提供され、必要な冷却が提供される。これは、車両が静止したり低速走行しているような場合や、エンジンが過負荷の場合には、車両の設計者がよく用いる方法で、当然ながらファン30によって補助される。しかしながら、ラジエターを通る空気流の大半は、このベース負圧効果の使用によって提供される。
【0021】
ラジエター28の前方面に生成された正圧は、車両10のリア側の低ベース負圧と組み合わさると、ベース負圧だけの場合や後面出口によって補助された吸引だけの場合よりも、ラジエターを通した圧力降下をはるかに大きく生じる。ラジエター28の前方面上の正圧と、車両10の後方面42上の負圧との組合せにより、ラジエターの空気流において高い性能が獲得される。
【0022】
このようにして、この発明は、ミッドエンジン車両や図示されたリアエンジン車両に用いられた場合に、多くの有効性を提供する。前方配置のラジエターに向けて導くための導管のかなりの重量は、導管に充填されるべき冷却流体の重量や導管に関連する種々のジョイント、固定具やアタッチメントの重量と共に排除される。これらのアイテムが無くなることに関連して費用も低減し、車両の組立てに必要な時間も減少する。実際、エンジン全体、ギアボックス及び冷却システムを、車両への搭載前に1つのユニットとして製造することが可能であり、製造効率の大幅な向上を提供する。
【0023】
加えて、前面グリルからの空気抵抗は無視することができ、抵抗係数の向上、つまり、車両の効率向上を提供する。この使用により、ラジエターは衝突や石などからの損傷に対して影響を受けにくくなる。エンジン上部にも空気流が生成され、エンジンベイの冷却を補助し、局所的な高温箇所の発生を防止する。
【0024】
もちろん、この発明の側面から逸脱せずに、上記に説明した態様に対する多種多様なバリエーションが生成されてもよいことは理解されよう。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
前輪及び後輪と、客室と、エンジンと、を有する車両であって、
前記エンジンは、前記客室の主要領域の完全な後方に配置され、冷却回路と、更に前記冷却回路に流体的に連通するラジエターとを有し、
前記ラジエターは、前輪の中心の後方でかつ前記エンジンの前方であって、前記車両の下側から前記車両の後面の出口まで延びる空気流路内に配置され、
前記空気流路は、少なくともラジエターの周囲部分に流路配置されている、車両。
【請求項2】
前記車両の前記後面は直立している、請求項1に記載の車両。
【請求項3】
前記出口は、少なくとも前記出口の一部が前記後輪の中心の上方となる高さで前記後面に配置されている、請求項1又は請求項2に記載の車両。
【請求項4】
前記出口は、グリルによって覆われている、請求項3に記載の車両。
【請求項5】
前記ラジエターに空気を通過させるために、前記ラジエターと連携するファンを更に有する、先行請求項のうちいずれか1項に記載の車両。
【請求項6】
前記冷却回路に冷却流体を循環させるためのポンプを更に有する、先行請求項のうちいずれか1項に記載の車両。
【請求項7】
前記冷却流体が、水基材である、先行請求項のうちいずれか1項に記載の車両。
【請求項8】
前記空気流路が、その長さにわたって流路配置されている、先行請求項のうちいずれか1項に記載の車両。
【請求項9】
前記空気流路が、前記ラジエターの前面に流路配置されている、先行請求項のうちいずれか1項に記載の車両。
【請求項10】
前記ラジエターの前記前面が、前記空気流路に対して横向きである、請求項9に記載の車両。
【請求項11】
前記流路配置は、前記車両の移動時に前記ラジエターの前記前面に正圧の領域を画定するように配置される、請求項9又は請求項10に記載の車両。
【請求項12】
前記正圧は、前記ラジエターの前記前面上に均等配分される、請求項11に記載の車両。
【請求項13】
前記流路配置は、遮断されておらず、かつ、完全に密閉されている、先行請求項のうちいずれか1項に記載の車両。
【請求項14】
実質的に、添付された図面を参照しつつここで説明された、及び/又は、添付された図面に図示された、車両。

【図1】
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【公表番号】特表2013−514231(P2013−514231A)
【公表日】平成25年4月25日(2013.4.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−543893(P2012−543893)
【出願日】平成22年12月17日(2010.12.17)
【国際出願番号】PCT/GB2010/002289
【国際公開番号】WO2011/073625
【国際公開日】平成23年6月23日(2011.6.23)
【出願人】(509257444)ゴードン・マレー・デザイン・リミテッド (5)
【Fターム(参考)】