説明

車両周辺監視装置

【課題】車両前方だけではなく車両周囲を撮像することができ、車両重量の増加、配線の複雑化を避けることができ、撮像手段を搭載するように車両設計していなくても、撮像手段を取付けることができる車両周辺監視装置を提供する。
【解決手段】ライセンスプレート取付け部2の下方に車両周囲を撮像する撮像手段4を備え、ライセンスプレート取付け部2の裏側にアクチュエータ7を備え、このアクチュエータ7と前記撮像手段4とを棒状部材8で連結し、アクチュエータ7を駆動することにより撮像手段4を水平方向に回動させる制御手段を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は車両周辺監視装置に係り、特に、発進時等に車両周辺の映像を表示することで運転者の視覚による確認を支援する車両周辺監視装置に関する。
【背景技術】
【0002】
車両には、運転者の視覚による周辺確認を支援する車両周辺監視装置を備えているものがある。車両周辺監視装置は、車体前端に前方に向けて撮像手段のカメラを取り付け、カメラが撮像した車両前方の映像を車室に設置した表示装置に表示することで、運転者に車両前方の道路状況の確認を支援するものがある。
【0003】
従来の車両周辺監視装置には、バンパ内部にカメラを格納した状態とバンパから突出した状態とに移動させる構造(特開2003−63309号公報)、フロントグリル内部に収まる格納位置とフロントグリル前方に突出する突出確認位置とにカメラをスライド可能な構造(特開2006−298350号公報)、車体の床下に取り付けた回動アームの先端に床下カメラを装着し、床下カメラを常時は床面近傍に格納し使用時には車体下方に移動する構造(特開平9−175272号公報)、車両後退時にハンドル操作に応じた撮像方向となるようにカメラを後方左右に回動させる構造(特開2004−274618号公報)、のものがある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2003−63309号公報
【特許文献2】特開2006−298350号公報
【特許文献3】特開平9−175272号公報
【特許文献4】特開2004−274618号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、車両周辺監視装置は、カメラが撮像した映像を車速が低速(例えば、10〜20km/h以下)の走行時に表示するものであり、中・高速走行時にはカメラの映像を表示しないにも関わらず、カメラのレンズはカバー等の保護の無い状態で前方を向いている。このため、レンズ部が前方を走行する車両による跳石や障害物により傷ついたり、泥・ほこり・油等により汚れることが多い。また、車高の高いRV車・4WD車や、トラック等では、動物や子供が車両下に入り込む事があり、運転開始時に車両下を確認する必要がある。さらに、カメラは映像の内容がいくつかのパターンで固定されており、運転者が本当に確認したい前方の映像が表示されない事がある。
【0006】
また、前記特許文献1及び特許文献2に記載される車両周辺監視装置は、カメラの取付け構造がバンパ内部にカメラを埋め込む構造(特許文献1)やフロントグリル内部にカメラを埋め込む構造(特許文献2)になっているため、特別な設計、準備が必要となる問題がある。さらに、特許文献3及び特許文献4に記載される車両周辺監視装置は、車両の床下を確認する構造(特許文献3)、車両後退時に後方を確認する構造(特許文献4)であるため、車両の特定方向しか監視できず、周囲を十分に監視することができない問題がある。
【0007】
この発明は、車両前方だけではなく車両周囲を撮像することができ、車両重量の増加、配線の複雑化を避けることができ、撮像手段を搭載するように車両設計していなくても、撮像手段を取付けることができる車両周辺監視装置を実現することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
この発明は、ライセンスプレート取付け部の下方に車両周囲を撮像する撮像手段を備え、ライセンスプレート取付け部の裏側にアクチュエータを備え、このアクチュエータと前記撮像手段とを棒状部材で連結し、前記アクチュエータを駆動することにより前記撮像手段を水平方向に回動させる制御手段を備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
この発明の車両周辺監視装置は、車両前端に配置した撮像手段を利用して、車両前方だけではなく車両周囲を撮像することができる。車両周囲の撮像に撮像手段の数を増やすことがないため、車両重量の増加、配線の複雑化を避けることができる。
この発明の車両周辺監視装置は、撮像手段を搭載するように車両設計していなくても、撮像手段を取付けることができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】図1(A)はカメラの前方撮像状態を示す側面図、図1(B)はカメラの後下方・格納状態を示す側面図である。(実施例)
【図2】図2は車両周辺監視装置のシステム構成図である。(実施例)
【図3】図3は車両周辺監視装置のフローチャートである。(実施例)
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、図面に基づいて、この発明の実施例を説明する。
【実施例】
【0012】
図1〜図3は、実施例を示すものである。図1において、1は車両のフロントバンパ、2はフロントバンパ1の前端から下方に突出するように取付けたライセンスプレート取付け部、3は車両周辺監視装置である。車両周辺監視装置3は、ライセンスプレート取付け部2の下方に車両周囲を撮像する撮像手段としてのカメラ4を備えている。カメラ4は、本体5の一端部に水平方向に指向する撮影用のレンズ6を有している。
また、車両周辺監視装置3は、前記カメラ4の上方であってライセンスプレート取付け部2の裏側にアクチュエータ7を備えている。アクチュエータ7は、モータ等からなり、駆動により回動する棒状部材8を有している。車両周辺監視装置3は、このアクチュエータ7とカメラ4の本体5とを上下方向に延びる棒状部材8で連結している。棒状部材8は、アクチュエータ7を駆動することにより回動され、カメラ4を水平方向に回動させる。
カメラ4は、アクチュエータ7による水平方向の回動で、図1(A)に示すように、ライセンスプレート取付け部2の下方においてレンズ6を前方に向けた前方撮像状態になり、一方、図1(B)に示すように、ライセンスプレート取付け部2下方においてレンズ6を後下方に向けた後下方・格納状態になる。
【0013】
車両周辺監視装置3は、図2に示すように、カメラ4を表示装置9に接続するとともに、カメラ4及びアクチュエータ7を制御手段10に接続している。制御手段10には、カメラスイッチ11とバッテリ12とレンジ位置検出手段13と車速検出手段14と操舵角検出手段15とウインカ状態検出手段16とを接続している。
カメラスイッチ11は、運転者の操作により前方自動_ON、後方_ON、OFFの信号を制御手段10に入力する。バッテリ12は、バッテリ電源とアクセサリ電源とを制御手段10に供給する。レンジ位置検出手段13は、変速機のレンジ位置(リバースレンジR、パーキングレンジP、ニュートラルレンジN、ドライブレンジD、2速レンジ2、1速レンジ1等)を検出して制御手段10に入力する。車速検出手段14は、車両の車速を検出して制御手段10に入力する。操舵角検出手段15は、車両の操舵ハンドルの操舵角を検出して制御手段10に入力する。ウインカ状態検出手段16は、車両のウインカの状態を検出して制御手段10に入力する。
【0014】
制御手段10は、バッテリ12のアクセサリ電源からカメラ4にカメラ電源を供給して車両周囲を撮像し、カメラスイッチ11、レンジ位置検出手段13、車速検出手段14、操舵角検出手段15、ウインカ状態検出手段16からの信号に基づきカメラ4が撮像する方向を設定し、駆動電源・回転指示信号をアクチュエータ7に供給して駆動することによりカメラ4を水平方向に回動させて前記設定された方向にレンズ6を向ける。
制御手段10は、レンジ位置検出手段13により検出されたレンジ位置が前進走行レンジ(ドライブレンジD、2速レンジ2、1速レンジ1等)で、かつ、車速検出手段14により検出された車速が予め設定された車速を越える時には、カメラ4のレンズ6が車両後方を向くようにアクチュエータ7を駆動してカメラ4を水平方向に回動させる。
また、制御手段10は、カメラスイッチ11からの信号に基づいて、カメラ4のレンズ6が車両後方を向くようにアクチュエータ7を駆動してカメラ4を水平方向に回動させ、車両下を撮像させる。
さらに、制御手段10は、操舵角検出手段15により検出された操舵角とウインカ状態検出手段16により検出されたウインカ状態との少なくとも一方に基づいて、車両前方を撮像するカメラ4をアクチュエータ7で水平方向に回動させ、運転者が確認を必要とする方向にレンズ6を向ける。
【0015】
次に作用を説明する。
車両周辺監視装置3は、図3に示すように、監視のプログラムがスタートすると(A01)、アクセサリ電源の電源状態がON(ACC_ON)であるかOFF(ACC_OFF)であるかを判断する(A02)。
この判断(A02)において、アクセサリ電源がON(ACC_ON)の場合は、操舵角検出手段15の検出する操舵角、ウインカ状態検出手段16の検出するウインカ状態を入力し(A03)、運転者の操作によりカメラスイッチ11の信号が前方自動_ON、後方_ON、OFFのいずれであるかを判断する(A04)。この判断(A04)において、カメラスイッチ11の信号が前方自動_ONの場合は、変速機のレンジ位置が前進走行レンジ(ドライブレンジD、2速レンジ2、1速レンジ1等)であるかを判断する(A05)。この判断(A05)において、変速機のレンジ位置が前進走行レンジである場合は、車速が設定値(設定車速)以下であるかを判断する(A06)。
この判断(A06)において、車速が設定値以下である場合は、アクチュエータ7の駆動により棒状部材8を回動させてカメラ4を水平方向に回動させ、操舵角およびウインカ状態から運転者が確認する必要のある方向(操舵方向、ウインカ操作方向)にカメラ4のレンズ6を向けて前方撮影状態(前方表示モード)にし(A07)、撮影した映像を表示装置9に表示する。
カメラ4の前方撮像状態において、アクセサリ電源の電源状態がON(ACC_ON)であるかOFF(ACC_OFF)であるかを判断する(A08)。この判断(A08)において、アクセサリ電源がON(ACC_ON)の場合は、判断(A04)に戻る。この判断(A08)において、アクセサリ電源がOFF(ACC_OFF)の場合は、プログラムをエンドにする(A09)。
【0016】
一方、前記判断(A02)において、アクセサリ電源の電源状態がOFF(ACC_OFF)の場合、前記判断(A04)において、カメラスイッチ11の信号がOFFの場合、前記判断(A05)において、変速機のレンジ位置が前進走行レンジ以外(リバースレンジRあるいはパーキングレンジP)の場合、前記判断(A06)において、車速が設定値を越えている場合は、アクチュエータ7の駆動により棒状部材8を回動させてカメラ4を回動させ、カメラ4のレンズ6を後方に向けて格納状態(格納モード)にし(A10)、前方からの跳石や障害物からレンズ6を守る。
その後、カメラ4の格納状態において、アクセサリ電源の電源状態がON(ACC_ON)であるかOFF(ACC_OFF)であるかを判断する(A08)。この判断(A08)において、アクセサリ電源がON(ACC_ON)の場合は、判断(A04)に戻る。この判断(A08)において、アクセサリ電源がOFF(ACC_OFF)の場合は、プログラムをエンドにする(A09)。
また、前記判断(A04)において、カメラスイッチ11の信号が後方_ONの場合は、アクチュエータ7の駆動により棒状部材8を回動させてカメラ4を回動させ、カメラ4のレンズ6を後方に向けて後方撮影状態(後方表示モード)にし(A10)、撮影した車両下の映像を表示装置9に表示する。
その後、カメラ4の後方撮影状態において、アクセサリ電源の電源状態がON(ACC_ON)であるかOFF(ACC_OFF)であるかを判断する(A08)。この判断(A08)において、アクセサリ電源がON(ACC_ON)の場合は、判断(A04)に戻る。この判断(A08)において、アクセサリ電源がOFF(ACC_OFF)の場合は、プログラムをエンドにする(A09)。
【0017】
このように、車両周辺監視装置3は、車両前端のライセンスプレート取付け部2の下方のカメラ4とライセンスプレート取付け部2の裏側のアクチュエータ7とを棒状部材8で連結し、アクチュエータを駆動することによりカメラ4を水平方向に回動させる制御手段10を備えていることで、車両前端に配置したカメラ4を利用して、車両前方だけではなく車両周囲を撮像することができる。車両周辺監視装置3は、車両周囲の撮像にカメラ4の数を増やすことがないため、車両重量の増加、配線の複雑化を避けることができる。また、車両周辺監視装置3は、カメラ4を搭載するように車両設計していなくても、カメラ4を取付けることができる。
車両周辺監視装置3は、制御手段10によって、レンジ位置検出手段13により検出されたレンジ位置が前進走行レンジで、かつ、車速検出手段14により検出された車速が予め設定された車速を越える時には、カメラ4のレンズ6が車両後方を向くようにアクチュエータ7を駆動してカメラ4を水平方向に回動させるので、運転者が前方画像を必要としない時にはカメラ4のレンズ6は車両進行方向を向かないため、カメラ4のレンズ面の傷、汚れを防ぐことができる。
また、車両周辺監視装置3は、制御手段10によって、カメラスイッチ11からの信号に基づいて、カメラ4のレンズ6が車両後方を向くようにアクチュエータ7を駆動してカメラ4を水平方向に回動させ、車両下を撮像させるので、車両発進前に運転者は車両下を確認することができる。
さらに、車両周辺監視装置3は、制御手段10によって、操舵角検出手段15により検出された操舵角とウインカ状態検出手段16により検出されたウインカ状態との少なくとも一方に基づいて、車両前方を撮像するカメラ4をアクチュエータ7で水平方向に回動させるので、操舵ハンドルの操舵角やウインカの状態から、運転者が確認を必要とする方向を撮像し、表示することができる。
なお、この車両周辺監視装置3は、後方撮影状態のカメラ4によって、車両下の動物・人だけではなく、後方から接近する車両や人の有無を確認する事も可能である。また、この車両周辺監視装置3は、車両下の確認時に、カメラスイッチ11の信号によりカメラ4の向きを制御することで、より細かい車両下の確認を行うことが可能である
【産業上の利用可能性】
【0018】
この発明は、車両前方だけではなく車両周囲を撮像することができ、車両重量の増加、配線の複雑化を避けることができ、また、カメラを搭載するように車両設計していなくてもカメラを取付けることができるものであり、車両前端にライセンスプレート取付け部を備えた車両に適用することができる。
【符号の説明】
【0019】
1 フロントバンパ
2 ライセンスプレート取付け部
3 車両周辺監視装置
4 カメラ
6 レンズ
7 アクチュエータ
8 棒状部材
9 表示装置
10 制御手段
11 カメラスイッチ
12 バッテリ
13 レンジ位置検出手段
14 車速検出手段
15 操舵角検出手段
16 ウインカ状態検出手段

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ライセンスプレート取付け部の下方に車両周囲を撮像する撮像手段を備え、
ライセンスプレート取付け部の裏側にアクチュエータを備え、
このアクチュエータと前記撮像手段とを棒状部材で連結し、
前記アクチュエータを駆動することにより前記撮像手段を水平方向に回動させる制御手段を備えることを特徴とする車両周辺監視装置。
【請求項2】
車両の変速機のレンジ位置を検出するレンジ位置検出手段と、
車速を検出する車速検出手段とを備え、
前記制御手段は、
前記レンジ位置検出手段により検出されたレンジ位置が前進走行レンジで、かつ、前記車速検出手段により検出された車速が予め設定された車速を越える時には、前記撮像手段のレンズが車両後方を向くように前記撮像手段を水平方向に回動させることを特徴とする請求項1に記載の車両周辺監視装置。
【請求項3】
運転者の操作を検出するスイッチを備え、
前記制御手段は、
前記スイッチからの信号に基づいて、
前記撮像手段のレンズが車両後方を向くように前記撮像手段を水平方向に回動させ、車両下を撮像させることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の車両周辺監視装置。
【請求項4】
操舵ハンドルの操舵角を検出する操舵角検出手段と、
ウインカの状態を検出するウインカ状態検出手段とを備え、
前記制御手段は、
前記操舵角検出手段により検出された操舵角とウインカ状態検出手段により検出されたウインカ状態との少なくとも一方に基づいて、
車両前方を撮像する前記撮像手段を水平方向に回動させることを特徴とする請求項1〜請求項3のいずれか一項に記載の車両周辺監視装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2012−35801(P2012−35801A)
【公開日】平成24年2月23日(2012.2.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−179373(P2010−179373)
【出願日】平成22年8月10日(2010.8.10)
【出願人】(000002082)スズキ株式会社 (3,196)
【Fターム(参考)】