説明

車両外板の取付構造

【課題】車両外板と当該車両外板と隣り合う他部材との間の隙間を小さく設定することができる車両外板の取付構造を得る。
【解決手段】フェンダ取付端部34の車両後方側の部位には、フロントフェンダパネル30の熱膨張方向(矢印B方向)へ向けて車両幅方向外側に傾斜した方向を長手方向とする第二長孔34Bが貫通形成されている。第二長孔34B内の鍔付カラー64の軸部64Aは、エプロンアッパメンバ40の上壁部44と共にボルト62の頭部62B及びウエルドナット66によって締め付けられている。これにより、フロントフェンダパネル30の熱膨張時には、エプロンアッパメンバ40の上壁部44に対するフェンダ取付端部34の相対変位が第二長孔34Bの長手方向に沿った方向で許容され、フロントフェンダパネル30の後端末側がフロントドアとの干渉を避けるように車両幅方向外側へ変位させられる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両外板を車体側構成部材に取り付ける車両外板の取付構造に関する。
【背景技術】
【0002】
フェンダパネル(車両外板)においては、そのドア側の端部がドアとの間に見切り部を形成すると共にドアの移動軌跡と干渉しないように配置された状態で車体側に取り付けられている(例えば、特許文献1参照)。ここで、このようなフェンダパネルは軽量化の観点から樹脂製とされている場合がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平2−7080号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、このような構成では、金属製の場合に比べて温度による伸び縮みが大きいので、熱膨張時を考慮してフェンダパネルとドアとの隙間を大きく設定する必要があり、見栄えが悪くなってしまう。
【0005】
本発明は、上記事実を考慮して、車両外板と当該車両外板と隣り合う他部材との間の隙間を小さく設定することができる車両外板の取付構造を得ることが目的である。
【課題を解決するための手段】
【0006】
請求項1に記載する本発明の車両外板の取付構造は、車両外板に形成されて車体側構成部材に取り付けられる端部を構成すると共に、前記車両外板の熱膨張方向へ向けて車両外側に傾斜した方向を長手方向とする長孔が貫通形成された取付端部と、前記長孔内に一部が配設され、前記車両外板の熱膨張時に前記車体側構成部材に対する前記取付端部の相対変位が前記長孔の長手方向に沿った方向で許容されるように、当該取付端部を当該車体側構成部材に連結する連結手段と、を有する。
【0007】
請求項1に記載する本発明の車両外板の取付構造によれば、車両外板に形成された取付端部には、車両外板の熱膨張方向へ向けて車両外側に傾斜した方向を長手方向とする長孔が貫通形成されており、この長孔内には、連結手段の一部が配設されている。
【0008】
ここで、連結手段によって取付端部が車体側構成部材に連結されており、車両外板の熱膨張時に車体側構成部材に対する取付端部の相対変位が長孔の長手方向に沿った方向で許容されるので、車両外板が熱膨張しても、車体外板を車両外側に変位させながら伸ばす分だけ、熱膨張方向への伸びが抑えられる。従って、車両外板の熱膨張時には、車両外板と隣り合う部材側への当該車両外板の伸び量が抑えられる。
【発明の効果】
【0009】
以上説明したように、本発明に係る請求項1に記載の車両外板の取付構造によれば、車両外板と当該車両外板と隣り合う他部材との間の隙間を小さく設定することができるという優れた効果を有する。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】本発明の一実施形態に係る車両用フェンダパネル取付構造が適用された車両の一部を示す側面図である。
【図2】図1の2−2線に沿った拡大断面図である。
【図3】図1の一点鎖線で囲んだ3線矢視部を一部分解した状態で示す半断面の斜視図である(フードは図示省略する。)。
【図4】図3の4−4線に沿った拡大断面図に相当する縦断面図である。
【図5】図1の一点鎖線で囲んだ5線矢視部を一部分解した状態で示す半断面の斜視図である(フードは図示省略する。)。
【図6】図1の一点鎖線で囲んだ6線矢視部を一部分解した状態で示す半断面の斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
(実施形態の構成)
本発明の一実施形態に係る車両外板の取付構造が適用された車両用フェンダパネル取付構造について図1〜図6を用いて説明する。なお、これらの図において適宜示される矢印FRは車両前方側を示しており、矢印UPは車両上方側を示しており、矢印INは車両幅方向内側を示している。
【0012】
図1には、本実施形態に係る車両用フェンダパネル取付構造12(図2等参照)が適用された車両(自動車)10の一部が側面図にて示されている。図1に示されるように、車体側部10Aにおける車両前後方向の前側にはフロントピラー14が配設されている。フロントピラー14は、略車両上下方向に延在しており、フロントドア開口部18における車両前後方向の前縁部を成している。
【0013】
また、車体側部10Aにおける車両前後方向の中間部にはセンタピラー16が配設されている。センタピラー16は、略車両上下方向に延在しており、フロントドア開口部18における車両前後方向の後縁部を成している。フロントピラー14とセンタピラー16との間には、フロントドア20(フロントサイドドア)が配設されている。
【0014】
図2には、図1の2−2線に沿った拡大断面図が示されている。図2に示されるように、フロントドア20は、ドア外板を構成するドアアウタパネル20Aとドア内板を構成するドアインナパネル20Bとを含んで構成されている。ドアインナパネル20Bの前端部は階段形状に形成されており、ドア閉止状態での面の方向が略車両幅方向とされたヒンジ取付部120Bを備えている。ヒンジ取付部120B(フロントドア20の一端側)は、ドアヒンジ部26を介してフロントピラー14の側壁部14A(車両幅方向外側の部位)に取り付けられており、これにより、フロントドア20は、ドアヒンジ部26の車両上下方向の軸26X回りに回動可能とされている。
【0015】
図1に示されるように、フロントドア20の車両前方側には、車両外板(車両外板部品)としてのフロントフェンダパネル30が車体前部側面に配置されている。このフロントフェンダパネル30は、意匠面を構成する外側縦壁部32を備えており、この外側縦壁部32は、前輪23の車両上方側に配置されている。
【0016】
フロントフェンダパネル30は、本実施形態では樹脂製とされている。ここで、樹脂製のフロントフェンダパネル30は、金属製のフロントフェンダパネルと比べて線膨張係数が高く、温度による伸び縮みも大きい。
【0017】
このフロントフェンダパネル30の熱膨張方向(熱伸び方向)は、所定の基準位置30Xよりも車両前方側の部位では略車両前方側へ向かう方向(矢印A方向)とされると共に基準位置30Xよりも車両後方側の部位では略車両後方側へ向かう方向(矢印B方向)とされており、また、所定の基準位置30Yよりも車両上方側の部位では略車両上方側へ向かう方向(矢印C方向)とされると共に基準位置30Yよりも車両下方側の部位では略車両下方側へ向かう方向(矢印D方向)とされている。
【0018】
図3には、フロントフェンダパネル30の上端側で図1の基準位置30Xよりも車両前方側となる図1の一点鎖線で囲んだ3線矢視部における半断面の斜視図が一部分解された状態で示され、また、図5には、フロントフェンダパネル30の上端側で図1の基準位置30Xよりも車両後方側(フロントドア20寄り)となる図1の一点鎖線で囲んだ5線矢視部における半断面の斜視図が一部分解された状態で示されている。
【0019】
これらの図に示されるように、フロントフェンダパネル30は、外側縦壁部32の上端部32Aから屈曲垂下された内側縦壁部33を備えている。内側縦壁部33の上端部と外側縦壁部32の上端部32Aとの境界部は、エンジンルーム28を開閉可能に覆う図1に示されるフード24との間に見切り部25を形成している。
【0020】
また、図3及び図5に示されるように、フロントフェンダパネル30は、内側縦壁部33の下端部からエンジンルーム28側へ水平に折り曲げられた取付端部としてのフェンダ取付端部34を備えている。すなわち、このフェンダ取付端部34は、フロントフェンダパネル30に形成される端部を構成しており、車体側構成部材としてのエプロンアッパメンバ40に取り付けられる部位とされている。
【0021】
エプロンアッパメンバ40は、フロントフェンダパネル30におけるフェンダ取付端部34の車両下方側に配設されており、車両前後方向に沿って延在された中空長尺状の車体骨格部材とされている。エプロンアッパメンバ40においてフロントフェンダパネル30のフェンダ取付端部34が取り付けられる上壁部44は、エプロンアッパメンバインナパネル42によって構成されている。このエプロンアッパメンバインナパネル42は、エプロンアッパメンバアウタパネル46と共にエプロンアッパメンバ40を構成しており、エプロンアッパメンバインナパネル42とエプロンアッパメンバアウタパネル46との重合された端末フランジ部同士がスポット溶接されることにより閉断面構造が形成されている。
【0022】
図3に示されるように、エプロンアッパメンバ40上のフェンダ取付端部34は、基準位置30X(図1参照)よりも車両前方側の部位に、第一長孔34Aが貫通形成されている。第一長孔34Aは、車両前後方向(フェンダ取付端部34の長手方向)、換言すれば、フロントフェンダパネル30の熱膨張方向(矢印A方向)に沿う方向を長手方向としている。
【0023】
図4には、図3の4−4線に沿った拡大断面図に相当するフェンダ締結部分の縦断面図が示されている。図3及び図4に示されるように、第一長孔34A内には、樹脂製の鍔付カラー54(広義には「軸部材」として把握される要素である。)の軸部54Aが挿通状態で配置されている。鍔付カラー54は、筒状の軸部54A、及びこの軸部54Aの軸線方向一端部から同軸的かつ一体に径方向外側へ延設された鍔部54Bを備えている。
【0024】
軸部54Aの外径は、第一長孔34Aの長手方向に直交する方向の幅よりも極僅かに短く設定されており、軸部54Aの軸長は、フロントフェンダパネル30のフェンダ取付端部34の板厚よりも極僅かに長く設定されている。また、軸部54Aの軸線方向他端部は、エプロンアッパメンバ40の上壁部44に当接されている。
【0025】
なお、図4では、鍔付カラー54の軸部54Aと第一長孔34Aの内面とが接した状態で図示されているが、軸部54Aと第一長孔34Aの内面とは、第一長孔34Aの長手方向に沿った方向(図4の紙面に垂直な方向)に相対移動可能となっている。また、図4では、鍔付カラー54の鍔部54Bがフロントフェンダパネル30のフェンダ取付端部34から極僅かに浮き上がった(離れた)状態で図示されているが、両者は接していてもよい。
【0026】
また、図3及び図4に示されるように、フェンダ取付端部34に接するエプロンアッパメンバ40の上壁部44には、第一長孔34Aと対向する位置の中央部にボルト挿通孔44Aが貫通形成されている。また、エプロンアッパメンバ40の上壁部44の下面(鍔付カラー54側と反対側の面)には、ボルト挿通孔44Aの外周部にウエルドナット56(広義には「締結具」として把握される要素である。)が予め固着されている。ウエルドナット56には、鍔付カラー54内及びボルト挿通孔44Aを車両上方側から貫通したボルト52(広義には「締結具」として把握される要素である。)の軸部52Aが螺合されている。これにより、ボルト52の頭部52Bとウエルドナット56との間で鍔付カラー54及びエプロンアッパメンバ40の上壁部44が挟まれて締め付けられている。なお、ボルト52及びウエルドナット56による締結力は、フロントフェンダパネル30のフェンダ取付端部34には及んでいない。
【0027】
上記のようにしてフロントフェンダパネル30のフェンダ取付端部34の車両前方側の部位がエプロンアッパメンバ40の上壁部44に連結された状態(取り付けられた状態)では、フェンダ取付端部34の車両前方側の部位は第一長孔34Aの開口範囲内の鍔付カラー54の軸部54Aに対して第一長孔34Aの長手方向へ相対移動可能とされている(スライド構造)。つまり、ボルト52、鍔付カラー54、及びウエルドナット56を用いた連結構造により、フロントフェンダパネル30の熱膨張時にエプロンアッパメンバ40の上壁部44に対するフェンダ取付端部34の車両前方側の部位の相対変位が第一長孔34Aの長手方向に沿った方向で許容されるように、フェンダ取付端部34の車両前方側の部位がエプロンアッパメンバ40の上壁部44に連結されている。
【0028】
また、図5に示されるように、フェンダ取付端部34は、基準位置30X(図1参照)よりも車両後方側(フロントドア20(図1参照)寄り)の部位においても、エプロンアッパメンバ40に連結されている。なお、この連結部分における縦断面図は、図4とほぼ同様の構成となるため、図示を省略する。また、フェンダ取付端部34にて図5に示される部位のエプロンアッパメンバ40への連結部分の構造は、第一長孔34A(図3等参照)に代えて長孔としての第二長孔34Bが形成されている点を除いて、図3及び図4で説明した連結部分の構造と実質的に同様であるが、以下具体的に説明する。
【0029】
図5に示されるように、フェンダ取付端部34は、基準位置30X(図1参照)よりも車両後方側の部位に第二長孔34Bが貫通形成されている。第二長孔34Bは、車両後方へ向けて車両幅方向外側に傾斜した方向、換言すれば、フロントフェンダパネル30の熱膨張方向(矢印B方向)へ向けて車両外側に傾斜した方向を長手方向としている。
【0030】
第二長孔34B内には、連結手段としての樹脂製の鍔付カラー64(広義には「軸部材」として把握される要素である。)の軸部64Aが挿通状態で配置されている。鍔付カラー64は、鍔付カラー54(図3参照)と同様の形状とされ、筒状の軸部64A、及びこの軸部64Aの軸線方向一端部から同軸的かつ一体に径方向外側へ延設された鍔部64Bを備えている。
【0031】
軸部64Aの外径は、第二長孔34Bの長手方向に直交する方向の幅よりも極僅かに干短く設定されており、軸部64Aの軸長は、フロントフェンダパネル30のフェンダ取付端部34の板厚よりも極僅かに長く設定されている。また、軸部64Aの軸線方向他端部は、エプロンアッパメンバ40の上壁部44に当接されている。さらに、軸部64Aと第二長孔34Bの内面とは、第二長孔34Bの長手方向に沿った方向に相対移動可能となっている。
【0032】
また、フェンダ取付端部34に接するエプロンアッパメンバ40の上壁部44には、第二長孔34Bと対向する位置の中央部にボルト挿通孔44Bが貫通形成されている。また、エプロンアッパメンバ40の上壁部44の下面には、ボルト挿通孔44Bの外周部に連結手段としてのウエルドナット66(広義には「締結具」として把握される要素である。)が予め固着されている。ウエルドナット66には、鍔付カラー64内及びボルト挿通孔44Bを車両上方側から貫通した連結手段としてのボルト62(広義には「締結具」として把握される要素である。)の軸部62Aが螺合されている。これにより、ボルト62の頭部62Bとウエルドナット66との間で鍔付カラー64及びエプロンアッパメンバ40の上壁部44が挟まれて締め付けられている。なお、ボルト62及びウエルドナット66による締結力は、フロントフェンダパネル30のフェンダ取付端部34には及んでいない。
【0033】
上記のようにしてフロントフェンダパネル30のフェンダ取付端部34の車両後方側の部位がエプロンアッパメンバ40の上壁部44に連結された状態(取り付けられた状態)では、フェンダ取付端部34の車両後方側の部位は第二長孔34Bの開口範囲内の鍔付カラー64の軸部64Aに対して第二長孔34Bの長手方向へ相対移動可能とされている(スライド構造)。つまり、ボルト62、鍔付カラー64、及びウエルドナット66を用いた連結構造により、フロントフェンダパネル30の熱膨張時にエプロンアッパメンバ40の上壁部44に対するフェンダ取付端部34の車両後方側の部位の相対変位が第二長孔34Bの長手方向に沿った方向で許容されるように、フェンダ取付端部34の車両後方側の部位がエプロンアッパメンバ40の上壁部44に連結されている。
【0034】
また、第二長孔34Bの長手方向は、フロントフェンダパネル30の線膨張係数、第二長孔34Bの基準位置30X(図1参照)からの距離、及び、フロントフェンダパネル30を車両幅方向外側へ変位させる(膨らませる)設定量に応じて設定している。
【0035】
一方、図6には、フロントフェンダパネル30の後端側(フロントドア20側)となる図1の一点鎖線で囲んだ6線矢視部における半断面の斜視図が一部分解された状態で示されている。図2及び図6に示されるように、フロントフェンダパネル30の後端側は、フロントドア20との見切り部22で外側縦壁部32の後端部から車両幅方向内側へ向けて車両前方側に傾斜するように曲げられた傾斜壁部35を備えている。
【0036】
傾斜壁部35が車両幅方向に対して傾斜しているのは、フロントドア20の移動軌跡との干渉を避けるためである。なお、図2では、組付け時のばらつき等によりフロントドア20が車両幅方向外側に最大にずれた場合の位置を模式的に二点鎖線で示すと共に、この場合の移動軌跡を二点鎖線20Xで示す。
【0037】
図2及び図6に示されるように、外側縦壁部32と傾斜壁部35との境界を成す後端屈曲部38は、フロントフェンダパネル30の最後端部を構成し、車両上下方向に延在する稜線を形成している。また、フロントフェンダパネル30の後端側は、傾斜壁部35の車両幅方向内側の端部から屈曲されて略車両幅方向内側に延設された取付端部としてのフェンダ取付端部36を備えている。
【0038】
フェンダ取付端部36は、フロントピラー14よりも車両幅方向外側に配置されており、車体側構成部材としてのブラケット48を介してフロントピラー14に取り付けられている。なお、本実施形態では、フェンダ取付端部36がブラケット48を介してフロントピラー14に取り付けられているが、ブラケット48を介さずにフェンダ取付端部36がフロントピラー14に取り付けられる他の構成でもよい。ブラケット48は、水平断面視で略L字形状の屈曲板状に形成されており、取付基部48Aを備えている。取付基部48Aは、フロントピラー14の側壁部14Aに面接触状態で溶接により一体的に取り付けられている。
【0039】
また、ブラケット48は、取付基部48Aの前端部から車両幅方向外側へ略直角に曲げられた延設部48Bを備えている。この延設部48Bの先端部には、フロントフェンダパネル30のフェンダ取付端部36が重ね合わせられている。
【0040】
図6に示されるように、フェンダ取付端部36には、長孔としての第三長孔36Aが貫通形成されている。第三長孔36Aは、車両下方へ向けて車両幅方向外側に傾斜した方向、換言すれば、フロントフェンダパネル30の熱膨張方向(矢印D方向)へ向けて車両外側に傾斜した方向を長手方向としている。
【0041】
第三長孔36A内には、連結手段としての樹脂製の鍔付カラー74(広義には「軸部材」として把握される要素である。)の軸部74Aが挿通状態で配置されている。鍔付カラー74は、鍔付カラー54、64(図3及び図5参照)と同様の形状とされ、筒状の軸部74A、及びこの軸部74Aの軸線方向一端部から同軸的かつ一体に径方向外側へ延設された鍔部74Bを備えている。
【0042】
軸部74Aの外径は、第三長孔36Aの長手方向に直交する方向の幅よりも極僅かに短く設定されており、軸部74Aの軸長は、フロントフェンダパネル30のフェンダ取付端部36の板厚よりも極僅かに長く設定されている。また、図2に示されるように、軸部74Aの軸線方向他端部は、ブラケット48の延設部48Bに当接されている。さらに、軸部74Aと第三長孔36Aの内面とは、第三長孔36Aの長手方向に沿った方向に相対移動可能となっている。なお、図2では、鍔付カラー74の鍔部74Bがフロントフェンダパネル30のフェンダ取付端部36から極僅かに離れた状態で図示されているが、両者は接していてもよい。
【0043】
また、図2及び図6に示されるように、フェンダ取付端部36に接するブラケット48の延設部48Bには、第三長孔36Aと対向する位置の中央部にボルト挿通孔148Bが貫通形成されている。また、ブラケット48の延設部48Bの前面(鍔付カラー74側と反対側の面)には、ボルト挿通孔148Bの外周部に連結手段としてのウエルドナット76(広義には「締結具」として把握される要素である。)が予め固着されている。ウエルドナット76には、鍔付カラー74内及びボルト挿通孔148Bを車両後方側から貫通した連結手段としてのボルト72(広義には「締結具」として把握される要素である。)の軸部72Aが螺合されている。これにより、図2に示されるように、ボルト72の頭部72Bとウエルドナット76との間で鍔付カラー74及びブラケット48の延設部48Bが挟まれて締め付けられている。なお、ボルト72及びウエルドナット76による締結力は、フロントフェンダパネル30のフェンダ取付端部36には及んでいない。
【0044】
上記のようにして、図2及び図6に示されるフロントフェンダパネル30のフェンダ取付端部36の所定部位がブラケット48の延設部48Bに連結された状態(取り付けられた状態)では、フェンダ取付端部36の当該部位は第三長孔36Aの開口範囲内の鍔付カラー74の軸部74Aに対して第三長孔36Aの長手方向へ相対移動可能とされている(スライド構造)。つまり、ボルト72、鍔付カラー74、及びウエルドナット76を用いた連結構造により、フロントフェンダパネル30の熱膨張時にブラケット48の延設部48Bに対するフェンダ取付端部36の所定部位(図2及び図6に示される部位)の相対変位が第三長孔36Aの長手方向に沿った方向で許容されるように、フェンダ取付端部36の当該部位がブラケット48の延設部48Bに連結されている。
【0045】
また、第三長孔36Aの長手方向は、フロントフェンダパネル30の線膨張係数、第三長孔36Aの基準位置30Y(図1参照)からの距離、及び、フロントフェンダパネル30(後端屈曲部38側)を車両幅方向外側へ変位させる(膨らませる)量に応じて設定している。
【0046】
(実施形態の作用・効果)
次に、上記実施形態の作用及び効果について説明する。
【0047】
フロントフェンダパネル30は、図3〜図5に示される上端側のフェンダ取付端部34がエプロンアッパメンバ40の上壁部44に取り付けられており、エプロンアッパメンバ40側に支持されている。
【0048】
図5に示されるように、このフェンダ取付端部34の車両後方側の部位には、フロントフェンダパネル30の熱膨張方向(矢印B方向)へ向けて車両幅方向外側に傾斜した方向を長手方向とする第二長孔34Bが貫通形成されている。この第二長孔34B内には、鍔付カラー64の軸部64A及びボルト62の軸部62Aの一部が配設されており、ボルト62の頭部62Bとウエルドナット66との間で鍔付カラー64及びエプロンアッパメンバ40の上壁部44が締め付けられている。
【0049】
このため、フロントフェンダパネル30の熱膨張時にエプロンアッパメンバ40の上壁部44に対するフェンダ取付端部34の相対変位が第二長孔34Bの長手方向に沿った方向で許容されるので、フロントフェンダパネル30が熱膨張してフロントドア20(図1参照)側へ延びようとしても、後端末側を車両幅方向外側へ膨らませるように変位させながら伸ばす分(逃がす分)だけ、後端末側の熱膨張方向(矢印B方向)への伸び量、すなわち、フロントドア20(図1参照)側への伸び量が抑えられる。従って、フロントフェンダパネル30の熱膨張時には、フロントフェンダパネル30のフロントドア20(図1参照)側への伸び量が抑えられる。
【0050】
なお、図3に示されるように、フェンダ取付端部34の車両前方側の部位においては、熱膨張方向(矢印A方向)が車両前方側へ向かう方向となっており、エプロンアッパメンバ40の上壁部44に対するフェンダ取付端部34のこの方向への相対変位が、第一長孔34Aに沿った方向の相対変位とされて許容されている。このため、この部位での熱膨張に起因したフロントフェンダパネル30のフロントドア20側(図1参照)への伸びも防止又は効果的に抑制されている。
【0051】
また、フロントフェンダパネル30は、図6に示される後端側のフェンダ取付端部36がフロントピラー14側でブラケット48の延設部48Bに取り付けられている。
【0052】
図6に示されるように、このフェンダ取付端部36には、フロントフェンダパネル30の熱膨張方向(矢印D方向)へ向けて車両幅方向外側に傾斜した方向を長手方向とする第三長孔36Aが貫通形成されている。図2に示されるように、この第三長孔36A内には、鍔付カラー74の軸部74A及びボルト72の軸部72Aの一部が配設されており、ボルト72の頭部72Bとウエルドナット76との間で鍔付カラー74及びブラケット48の延設部48Bが締め付けられている。
【0053】
このため、図6に示されるフロントフェンダパネル30の熱膨張時にブラケット48の延設部48Bに対するフェンダ取付端部36の相対変位が第三長孔36Aの長手方向に沿った方向で許容されるので、フロントフェンダパネル30が熱膨張すると、フロントフェンダパネル30の後端屈曲部38側は熱膨張方向(矢印D方向)への伸びが抑えられながら車両幅方向外側へ膨らんで変位する。図2では、後端屈曲部38の変位状態を二点鎖線で示している。
【0054】
このときの作用が前述したフロントフェンダパネル30の上端側(図5等参照)の連結構造による作用に加わることよって、フロントフェンダパネル30のフロントドア20側の部位(後端屈曲部38側)は、車両幅方向外側へより大きく膨らんで変位しようとする。このため、フロントフェンダパネル30のフロントドア20側への伸びは、車両幅方向外側への膨らみによって吸収されて効果的に抑えられる。従って、フロントフェンダパネル30とフロントドア20との見切り部22の隙間の初期設定を鋼製のフロントフェンダパネルの場合と比べてさほど大きくしなくても熱伸びに起因した両者の干渉を防止することができる。このため、前記干渉に起因する不具合(例えば、塗装剥がれ、傷、変形等)の発生が未然に防止される。
【0055】
なお、対比構造として、例えば、樹脂製のフロントフェンダパネル側に鋼鉄製のリテーナを設けて前記フロントフェンダパネルの熱伸びを押さえ込む構造も考えられるが、このような対比構造では、質量が増えてしまうという問題点がある。これに対して、本実施形態に係る車両用フェンダパネル取付構造では、このような問題点をも解消することができる。
【0056】
以上説明したように、本実施形態に係る車両用フェンダパネル取付構造によれば、フロントフェンダパネル30と当該フロントフェンダパネル30と隣り合うフロントドア20との間の隙間を小さく設定することができる。
【0057】
(実施形態の補足説明)
なお、上記実施形態では、車両外板がフロントフェンダパネル30である場合について説明したが、車両外板は、ドアやフード等のような他の車両外板であってもよい。
【0058】
また、上記実施形態では、連結手段として、鍔付カラー64、74の他にボルト62、72及びウエルドナット66、76を用いたが、例えば、ボルト62、72及びウエルドナット66、76に代えてウエルドボルト及びナットやリベット等の他の締結具を用いてもよい。
【0059】
さらに、上記実施形態では、連結手段として鍔付カラー64、74を使用しているが、例えば、段付きボルト等を用いることによって、鍔付カラー64、74を用いない構成にしてもよい。このように連結手段の構成としては、鍔付カラー64、74を用いた本実施形態の構成の他にも、同様の機能を有するものであれば種々の構成が含まれる。
【符号の説明】
【0060】
12 車両用フェンダパネル取付構造(車両外板の取付構造)
30 フロントフェンダパネル(車両外板)
34 フェンダ取付端部(取付端部)
34B 第二長孔(長孔)
36 フェンダ取付端部(取付端部)
36A 第三長孔(長孔)
40 エプロンアッパメンバ(車体側構成部材)
48 ブラケット(車体側構成部材)
62 ボルト(連結手段)
64 鍔付カラー(連結手段)
66 ウエルドナット(連結手段)
72 ボルト(連結手段)
74 鍔付カラー(連結手段)
76 ウエルドナット(連結手段)
B 熱膨張方向
D 熱膨張方向

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両外板に形成されて車体側構成部材に取り付けられる端部を構成すると共に、前記車両外板の熱膨張方向へ向けて車両外側に傾斜した方向を長手方向とする長孔が貫通形成された取付端部と、
前記長孔内に一部が配設され、前記車両外板の熱膨張時に前記車体側構成部材に対する前記取付端部の相対変位が前記長孔の長手方向に沿った方向で許容されるように、当該取付端部を当該車体側構成部材に連結する連結手段と、
を有する車両外板の取付構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2010−195093(P2010−195093A)
【公開日】平成22年9月9日(2010.9.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−39731(P2009−39731)
【出願日】平成21年2月23日(2009.2.23)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】