説明

車両後部構造

【課題】車両がオフセットの後面衝突をした際の車体の変形を抑制することができる。
【解決手段】車両後部構造10では、車両がオフセットの後面衝突をすることで、左右何れか一側の後輪に車体前方側へ向いた衝撃荷重が入力されると、当該後輪に連結された一側のトレーリングアーム24が車体12に対して前方側へ相対移動し、リインフォースメント36の凹部38に嵌合する。これにより、一側のトレーリングアーム24が一側のリインフォースメント36に連結される。このリインフォースメント36は一側のリヤサイドメンバ14に結合されている。このため、上記後面衝突時の衝撃荷重によって一側のリヤサイドメンバ14が車体上方側へ変形しようとした際には、一側のリインフォースメント36及び一側のトレーリングアーム24を介して中間ビーム26に荷重が伝達され、中間ビーム26がトーションビームとして機能する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動車などの車両の後部構造に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、車両の後面衝突時に、車体後部に設けられたスペアタイヤ保持ユニットをリヤサスペンションに当接させ、リヤサスペンションから車体骨格部材へと荷重を伝達することで衝撃を吸収するようにした車両後部構造が知られている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2007−118864号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、車両がオフセットの後面衝突をした際には、車体後部の衝突側が反衝突側に比べて大きく変形し、車体が捩れる場合がある。このような車体の捩れ変形を抑制するための対策としては、例えば図6に示されるように、左右のリヤサイドメンバ100、102の間にクロスメンバ104を追加するなどして、車体側を補強することが一般的である。これにより、衝突側の車体の変形を抑制することができる。
【0005】
なお、図7(A)には、上記補強対策前の車体のオフセット後面衝突時の変形状態が示されており、図7(B)には、上記補強対策後の車体のオフセット後面衝突時の変形状態が示されている。図7(A)及び図7(B)に示されるように、補強対策後の車体では、衝突側のリヤサイドメンバ100の変形量を少なくすることができる。
【0006】
しかしながら、上述の如き補強対策を施した場合、車両の重量が増加するなどの問題が生じる。
【0007】
本発明は上記事実を考慮し、車両がオフセットの後面衝突をした際の車体の変形を抑制することができる車両後部構造を得ることを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
請求項1に記載の発明に係る車両後部構造は、車体と左右の後輪とを連結する左右一対のトレーリングアーム、及び、前記一対のトレーリングアームを車幅方向に連結する中間ビームを有するリヤサスペンションと、車体の左右のリヤサイドメンバに結合されて前記各リヤサイドメンバから車体下方側へ延出され、通常は前記各トレーリングアームに対して所定の間隙を隔てて配置されると共に、車両の後面衝突時の衝撃荷重によって前記各トレーリングアームが車体に対し前方側へ相対移動することで前記各トレーリングアームに連結される左右一対のリインフォースメントと、を備えたことを特徴としている。
【0009】
請求項1に記載の車両後部構造では、車両がオフセットの後面衝突をすることで、左右何れか一側の後輪に車体前方側へ向いた衝撃荷重が入力されると、当該後輪に連結された一側のトレーリングアームが当該後輪とともに車体に対して前方側へ相対移動する。これにより、一側のトレーリングアームが一側のリインフォースメントに連結される。このリインフォースメントは一側のリヤサイドメンバに結合されているため、当該リヤサイドメンバが一側のリインフォースメントを介して一側のトレーリングアームに連結される。このため、上記後面衝突の衝撃荷重によって一側のリヤサイドメンバが車体上方側へ変形しようとした際には、一側のリインフォースメント及び一側のトレーリングアームを介して中間ビームに荷重が伝達される。これにより、中間ビームがトーションビームとして機能し、一側のリヤサイドメンバの車体上方側への変形を抑制する。これにより、車体の変形(捩れ)を抑制することができる。
【発明の効果】
【0010】
以上説明したように、本発明に係る車両後部構造では、車両がオフセットの後面衝突をした際の車体の変形を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本発明の実施形態に係る車両後部構造を示す概略的な斜視図である。
【図2】図1に示される車両後部構造の部分的な構成を示す概略的な平面図である。
【図3】図1の3−3線断面図である。
【図4】トレーリングアームがリインフォースメントに連結された状態を説明するための図3に対応する断面図である。
【図5】図1に示される車両後部構造を図1とは異なる角度から見た斜視図である。
【図6】オフセットの後面衝突による車体変形を抑制するための従来の対策例を示す平面図である。
【図7】(A)は図6に示される対策が施されていない車体のオフセット後面衝突時の変形状態を示す側面図であり、(B)は図6に示される対策が施された車体のオフセット後面衝突時の変形状態を示す側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の実施形態について、図1〜図5を参照して説明する。なお、図中矢印FRは車体前方向を示し、矢印UPは車体上方向を示し、矢印LEは車体左方向を示し、矢印RIは車体右方向を示している。
【0013】
図1に示されるように、本実施形態に係る車両後部構造10では、車両後部の車幅方向両端下部近傍に、車体12の骨格を構成する左右一対のリヤサイドメンバ14が設けられている。各リヤサイドメンバ14は、その長手方向が略車体前後方向に沿う状態で配置されており、これらのリヤサイドメンバ14の間には、クロスメンバ16が設けられている。クロスメンバ16は、長手方向が車幅方向に沿う状態で配置されており、長手方向両端部が左右のリヤサイドメンバ14に結合されている。これにより、左右のリヤサイドメンバ14が車幅方向に連結されている。
【0014】
また、各リヤサイドメンバ14の前端側は、車体前方側へ向かうに従い車幅方向外側へ突出するように湾曲しており、各リヤサイドメンバ14の前端部の車幅方向外側には、左右一対のロッカ18が設けられている。これらのロッカ18は、車体の骨格を構成しており、長手方向が車体前後方向に沿う状態で配置されている。
【0015】
各リヤサイドメンバ14の前端部は、各ロッカ18の後端部における車幅方向内側壁部にそれぞれ結合されている。また、左右のリヤサイドメンバ14における前端部の下面側には、リヤサスペンション20を連結するためのサスペンションブラケット22がそれぞれ取付けられている。
【0016】
リヤサスペンション20は、左右一対のトレーリングアーム24を有している。これらのトレーリングアーム24は、長手方向が略車体前後方向に沿う状態で各リヤサイドメンバ14の車体下方側に配置されており、長手方向中間部が車幅方向内側へ向けて突出するように屈曲している。各トレーリングアーム24の前端部は、それぞれ左右のサスペンションブラケット22に回転可能に連結されている。
【0017】
各トレーリングアーム24の間には、中間ビーム26が設けられている。中間ビーム26は、長手方向が車幅方向に沿う状態で配置されており、長手方向両端部が左右のトレーリングアーム24の長手方向中間部に結合されている。これにより、左右のトレーリングアーム24が車幅方向に連結されている。
【0018】
各トレーリングアーム24の後端側には、車体後方側へ向かうに従い車幅方向外側へ突出するように湾曲した後方延出部24Aが設けられている(図2参照)。各後方延出部24Aの先端(各トレーリングアーム24の後端)には、それぞれハブキャリア30が結合されており、これらのハブキャリア30には、それぞれ後輪32(図2参照)が回転可能に取り付けられている。これにより、左右の後輪32がリヤサスペンション20を介して車体に連結されている。
【0019】
また、各後方延出部の先端(各トレーリングアーム24の後端)には、それぞれショックアブソーバ34の下端部が連結されている。これらのショックアブソーバ34は、上端部が車体12に連結されている。
【0020】
さらに、本実施形態では、各後方延出部24Aの車体前方側には、左右一対のリインフォースメント36が設けられている。なお、図1では車体左側のリインフォースメント36のみが図示されているが、車体右側も同様の構成になっている。
【0021】
各リインフォースメント36は、本実施形態では角柱状に形成されており、長手方向が車体上下方向に沿う状態で配置されている。各リインフォースメント36の上端部は、それぞれ左右のリヤサイドメンバ14に結合されており、各リインフォースメント36は、各リヤサイドメンバ14から車体下方側へ延出されている。
【0022】
図3に示されるように、各リインフォースメント36の下端部は、各後方延出部24Aの車体前方側に所定の間隙Lを隔てて配置されている。このため、車両走行時にリヤサスペンション20が車体上下方向へストロークしても各後方延出部24Aと各リインフォースメント36とが接触しないようになっている。
【0023】
また、各リインフォースメント36の下端部には、各後方延出部24Aとの対向部分(車体後方側の部分)に凹部38が形成されている。これらの凹部38は、本実施形態では、車幅方向から見た断面形状が車体後方側へ向けて開口した略半円形に形成されており、各後方延出部24Aが嵌合可能な大きさに形成されている。
【0024】
次に、本実施形態の作用及び効果について説明する。
【0025】
上記構成の車両後部構造10では、車両がオフセットの後面衝突をすることで、左右何れか一側の後輪32に車体前方側へ向いた衝撃荷重が入力されると、当該後輪32に連結されたトレーリングアーム24が当該後輪32とともに車体12に対して前方側へ相対移動し、リインフォースメント36に連結される。
【0026】
すなわち、例えば、図2に示されるように車体左側の後輪32に車体後方側から衝突物40(ここではバリア)が衝突すると(図2の矢印A参照)、当該後輪32に連結された左側のトレーリングアーム24が車体12に対して前方側へ相対移動する(図2の矢印B及び矢印C参照)。これにより、図4に示されるように、左側のトレーリングアーム24の後方延出部24Aが左側のリインフォースメント36の凹部38に嵌合し、左側のトレーリングアーム24が左側のリインフォースメント36に連結される。
【0027】
このリインフォースメント36は左側のリヤサイドメンバ14に結合されているため、当該リヤサイドメンバ14が左側のリインフォースメント36を介して左側のトレーリングアーム24に連結される。このため、上記後面衝突の衝撃荷重によって左側のリヤサイドメンバ14が車体上方側へ変形しようとすると(図5の矢印D参照)、左側のトレーリングアーム24には左側のリヤサイドメンバ14から図5の矢印E方向の入力が加わり、中間ビーム26が当該入力に抗する反力を付与する(図5の矢印F参照)。すなわち、中間ビーム26がトーションビームとして機能し、上記衝撃荷重を吸収するため、左側のリヤサイドメンバ14の車体上方側への変形が抑制される。これにより、車体12の捩れ変形を抑制することができる。
【0028】
以上説明したように、本発明に係る実施形態では、既存のサスペンション構造を利用することで、オフセット後面衝突時の衝撃を効率良く吸収することができるため、衝突側の車体12の変形を良好に抑制することができる。また、クロスメンバを追加して車体側を補強する対策に比べて車両の重量増加などを抑制することができるため、好適である。
【符号の説明】
【0029】
10 車両後部構造
12 車体
14 リヤサイドメンバ
20 リヤサスペンション
24 トレーリングアーム
26 中間ビーム
36 リインフォースメント

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車体と左右の後輪とを連結する左右一対のトレーリングアーム、及び、前記一対のトレーリングアームを車幅方向に連結する中間ビームを有するリヤサスペンションと、
車体の左右のリヤサイドメンバに結合されて前記各リヤサイドメンバから車体下方側へ延出され、通常は前記各トレーリングアームに対して所定の間隙を隔てて配置されると共に、車両の後面衝突時の衝撃荷重によって前記各トレーリングアームが車体に対し前方側へ相対移動することで前記各トレーリングアームに連結される左右一対のリインフォースメントと、
を備えた車両後部構造。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate


【公開番号】特開2010−167883(P2010−167883A)
【公開日】平成22年8月5日(2010.8.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−11755(P2009−11755)
【出願日】平成21年1月22日(2009.1.22)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】