説明

車両用のドリップシール

【課題】ドア開口部上縁のフランジに取付けられる押出成形部と端末の型成形部よりなり、車体のルーフから流れ落ちる水を受けるドリップシールにおいて、型成形部には、押出成形部との接続部分にフランジが差込まれる保持部が形成され、フランジとの間より保持部内に流入した潜り水が保持部端よりドリップ下のメインウェザストリップに滴下し、中空シール部とスライドドアのインナーパネルとの間より侵入することによる水洩れを防止する。
【解決手段】潜り水が滴下する保持部32端に潜り水がメインウェザストリップ1の基部1aに滴下するようにガイドする突起33を形成し、中空シール部1bとスライドドア4のインナーパネル4aとの間に流入しないようにする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、スライドドアが取付けられる車体側面のドア開口部の上縁に取付けられ、車体のルーフから流れ落ちる水を受けるドリップシールに関する。
【背景技術】
【0002】
車体側面にスライドドアを備えたワンボックスカーにおいては一般に、スライドドアにより開閉される車体側面のドア開口部の周縁にドア閉時にドア開口部周縁とスライドドアとの間をシールするメインウェザストリップが取付けられ、ドア開口部上縁には、メインウェザストリップの上側に車体のルーフから流れ落ちる雨水や洗浄水等の水を受けるドリップシールが取付けられている。図1における、1はドア開口部2の周縁に取付けられるメインウェザストリップ、3はドリップシール、4はスライドドアを示している。
【0003】
メインウェザストリップ1は、エンドレスで、図3〜図5に示すように、ドア開口部周縁のフランジ6に差込んで取付けられる略U形断面の基部1aと、該基部1aより突設され、ドア閉時にスライドドア4に弾接してシールする中空シール部1bよりなっている。前記基部1aには略U字状の金属製又は樹脂製による芯材5が埋設されてフランジ6への保持力を高めている。
【0004】
ドリップシール3は、全体がゴム、熱可塑性エラストマー又は樹脂製で、図1に示すように押出成形部3aと、該押出成形部3aの前端に接続される前側の型成形部3bと、押出成形部3aの後端に接続される後端末の型成形部3cよりなっている。
【0005】
図2は、ドリップシール3の前側部分の詳細を示すものであり、図3はドア開口部上縁のフランジ6に取付けられるメインウェザストリップ1及び前記フランジ6より上側のフランジ7に取付けられるドリップシール3の押出成形部3aの断面形状で、図1のD−D線断面を示している。図4はメインウェザストリップ1と、前記フランジ7に取付けられる前側の型成形部3bの図2におけるA−A線での断面形状、図5は同じくメインウェザストリップ1及び型成形部3bの図2におけるB−B線での断面形状を示すもので、ドリップシール3の押出成形部3aは図3に示すようにフランジ7に差込んで取付けられ、内側に保持リップ8a及び8bを備えた略U形断面のグリップ部8と、該グリップ部8の底壁部より断面略V形状に一体形成され、ドア閉時にはスライドドア4の上縁に弾接し、ルーフから流れ落ちる水を受ける水受けリップ9からなっている。なお、図2に示す三角印は、黒く塗り潰した部分の側が型成形部3b、非塗り潰し部分の側が押出成形部3aを示している。以下の図においても同様である。また図3に示す符号11は、グリップ部8底に充填され、フランジ端が差込まれる止水用のシーラーである。
【0006】
型成形部3bは図2及び図5に示すように、先端側部分3btと押出成形部3aとの接続部分3bjよりなり、先端側部分3btは、前記フランジ7に両面テープ13により接着されるフラットな断面平板状の取付部14と、該取付部14に一体形成され、前記水受けリップ9と同一断面の水受けリップ15よりなっている。
【0007】
押出成形部3aとの接続部分3bjは図2及び図4に示すように、押出成形部3aのグリップ部8に接続され、グリップ部8とは保持リップ8a及び8bを有しない以外は同一断面形状をなす保持部17と、該保持部17に一体形成され、押出成形部3aの水受リップ9及び前記型成形部3bの水受けリップ15と同一断面をなして前記水受けリップ9、15に接続される水受けリップ18よりなっている。
【0008】
ルーフから流れ落ちる水は、ドリップシール3の水受けリップ9、15、18で受けられ、該水受けリップ9、15、18に沿って水受けリップ前端から前方に放出されるが、ルーフから流れ落ちる水の一部は図3及び図4の点線の矢印で示すように、フランジ7と前記グリップ部8や保持部17との間に侵入する。グリップ部8では、車外側の保持リップ8bが止水機能を果し、保持リップ8bを潜り抜けるようなことがあってもシーラー11で止水されるが、保持部17ではグリップ部8が有するような保持リップ8bがなく、しかも保持リップがないためにシーラーが取付けられないことから、フランジ7との間より侵入した潜り水が保持部内に流入し易い。保持部内に流入した潜り水は、図2に示すように、保持部端からメインウェザストリップ上に滴り落ちるようになり、このメインウェザストリップ上に滴下した潜り水は、最悪の場合、該メインウェザストリップ1の中空シール部1bとスライドドア4のインナーパネル4aとの間より車内側に侵入して水洩れを生ずるおそれがある。
【0009】
下記特許文献1には、ドリップシールの端末と車体との間より侵入した水による水洩れ防止対策として、図6に示すようにメインウェザストリップ21の中空シール部22に堰状の突出部23を一体に突出形成し、ドリップシール24の端末と車体のアウターパネル25との間に侵入し、メインウェザストリップの型成形部21の中空シール部上に滴下した水が飛散し、中空シール部22とドアパネル26との間に流れ込むのを突出部23で遮って防止するようにしたものが開示されている。
【0010】
また下記特許文献2には、ドリップシールの端末から流出する水にドリップシールの下面側に廻り込んだり、左右への飛散を防ぐため、ドリップシールの端末にほぼ逆三角形の水切り部を形成し、水を所定位置に安定して落下させる提案もなされている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【特許文献1】特許第3672858号
【特許文献2】特許第4644591号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
特許文献1及び2に開示されるドリップシールはいずれも水受けリップを伝い、型成形部の水受けリップの端末から流出する水の排水経路について考慮したものであるが、本発明は、図2〜図5に示すドリップシールにおいて、ルーフから水受けリップ9、15、18に流入した水が型成形部3b、3cの水受けリップ端から流出するのとは別にフランジとグリップ部8、とりわけ保持部との間より保持部内に流入した潜り水が図2の保持部端から滴下する問題を解決しようとするものである。
【0013】
水受けリップ9、15、18に流入した水は、流量も多く、水受けリップ端より例えば特許文献2に記載されるもののように適正に排水させることが可能である。しかし保持部端から滴下する潜り水への対策はなされておらず、水の量は少ないながらも、保持部端からメインウェザストリップ上に滴下した水は、最悪の場合、前述するようにメインウェザストリップ1の中空シール1bとスライドドア4のインナーパネル4aとの間より車内側に侵入して水洩れを来たすおそれがある。
【0014】
本発明は、ドリップシール端末の型成形部が押出成形部との接続部分に、押出成形部のグリップ部に接続され、かつ該グリップ部と同様、ドア開口部上縁のフランジに差込まれる保持部を備えたドリップシールにおいて、保持部端から下側のメインウェザストリップ上に滴下する前述の潜り水による水洩れを防止することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0015】
請求項1に係る発明は、スライドドアが取付けられる車体側面のドア開口部の周縁にドア閉時にスライドドアとの間をシールするメインウェザストリップを設けると共に、該メインウェザストリップ上のドア開口部上縁に車体のルーフから流れ落ちる水を受けるドリップシールを設けた車両において、前記メインウェザストリップがドア開口部周縁に取付けられる基部と、該基部より突出形成され、ドア閉時にスライドドアに弾接してシールするシール部を有し、また前記ドリップシールが前記ドア開口部上縁のフランジに差込んで取付けられる略U形断面のグリップ部を備えた押出成形部と、該押出成形部と接続され、かつフランジ7の車外側側面にテープ接着される断面平板状の取付部を備え、ドリップシールの端末部を構成する型成形部よりなる車両の前記ドリップシールであって、前記型成形部は、前記断面平板状の取付部のほか、該取付部と一体形成され、前記押出成形部と接続される接続部分を有し、該接続部分は押出成形部のグリップ部に接続され、かつ前記フランジに差込まれる略U形断面の保持部を備え、該保持部端の前記取付部との境に、保持部内にフランジ先端にまで侵入した水を前記メインウェザストリップの基部に落下するようにガイドする突起を形成したことを特徴とする。
【0016】
請求項2に係る発明は、請求項1に係る発明において、前記型成形部は、保持部を備えた前記接続部分を有しないで、前記取付部が前記押出成形部のグリップ部に直接接続され、前記突起が前記取付部端のグリップ部との境に形成されることを特徴とする。
【発明の効果】
【0017】
請求項1に係る発明によると、押出成形部に接続される型成形部の保持部内に流入した潜り水は、保持部と取付部との境に設けた突起よりメインウェザストリップの基部に滴下するようになり、メインウェザストリップのシール部とスライドドアとの間に流入して、車内側に侵入することによる水洩れを防止することができる。
請求項2に係る発明によると、押出成形部のグリップ部内に流入した潜り水は、取付部端のグリップ部との境に設けた突起より同様にしてメインウェザストリップの基部に流下し、車内側へ侵入する水洩れを防ぐことができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】ドリップシールとメインウェザストリップを備えたワンボックスカーの側面図。
【図2】ドリップシールの前側部分の従来例の斜視図。
【図3】図1のD−D線におけるドリップシールの押出成形部の断面図。
【図4】図2のA−A線における型成形部の断面図。
【図5】同B−B線における型成形部及びメインウェザストリップの断面図。
【図6】ドリップシール及びメインウェザストリップの従来例の断面図。
【図7】本発明に係るドリップシールの前側部分の斜視図。
【図8】図7のC−C線における型成形部及びメインウェザストリップの断面図。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明の実施形態のドリップシールについて図面により説明する。図中、前述の図1〜図5に示すドリップシール3と同一構造部分には同一符号を付してある。なお、ドア開口部周縁に配置されるメインウェザストリップに関しては、前記メインウェザストリップ1と同じ構造となっており、図7及び図8に示すようにドア開口部周縁のフランジ6に差込んで取付けられる略U形断面の基部1aと、該基部1aより突設され、ドア閉時にスライドドア4に弾接してシールする中空シール部1bを有しているが、基部1aは例えばフラットな断面形状でドア開口部周縁にクリップにより止着されるようになっていてもよいし、両面テープにより接着されるようになっていてもよい。また中空シール部1bはリップ状のシール部であってもよい。
【0020】
ドリップシール31は前記ドリップシール3と同様、全体がゴム、熱可塑性エラストマー又は樹脂製で、図1に示されるように押出成形部3aと、該押出成形部3aの前後端に接続される前側の型成形部31b及び後側の型成形部3cよりなっている。ここで後側の型成形部3cは無くてもよい。
【0021】
図面において、図7はドリップシール31の前側部分の詳細を示すものであり、図8は図7のC−C線での断面を示すもので、図1のD−D線での押出成形部3aの断面形状及び図7のA−A線及びB−B線での型成形部31bの断面形状は、前述した図3、図4及び図5に示されるものと同じ形状であるため詳細な説明は省略する。
【0022】
押出成形部3aに接続される型成形部31bは、図2に示す前記型成形部3bと同様、先端側部分31btと押出成形部3aとの接続部分31bjよりなり、先端側部分31btは前記フランジ7に両面テープ13により接着されるフラットな断面平板状の取付部14と、該取付部14に一体形成され、前記水受けリップ9と同一断面の水受けリップ15よりなっている。また前記押出成形部3aとの接続部分31bjは押出成形部3aのグリップ部8に接続され、グリップ部8とは保持リップ8a及び8bを有しない以外は同一断面形状をなす保持部32と、該保持部32に一体形成され、押出成形部3aの水受リップ9及び前記型成形部3bの水受けリップ15と同一断面をなして前記水受けリップ9、15に接続される水受けリップ18よりなっている。
【0023】
本実施形態のドリップシール31の型成形部31bが図2及び図4に示す前述の型成形部3bと異なるのは、前記保持部32端の取付部14との境に突起33を形成した点である。この突起33は、前記保持部端の断面である図8に示すようにフランジ7の先端に対する位置から車内側に向けて突出し、かつ車内側側端部の下端が狙い位置へ鉛直方向に垂下した形態をなし、保持部32に流入した潜り水が保持部端から伝い落ちて、狙い位置であるドリップシール下のメインウェザストリップ1の基部1aに滴下するようにガイドする機能を果している。
【0024】
本実施形態のドリップシールの型成形部は以上のように、押出成形部への接続部分に形成される保持部32内にフランジ先端まで流入した潜り水は、保持部32と取付部14との境界、換言すれば略U形断面の保持部端から突起33に伝わってメインウェザストリップ1の基部1aに滴下し、中空シール部1bとスライドドア4のインナーパネル4aとの間に流入しないため、中空シール部1bとインナーパネル4aとの間に侵入することによる水洩れを防ぐことができる。
【0025】
本実施形態においては、型成形部31bを先端側部分31btと接続部分31bjの2つで構成しているが、断面U字状の接続部分31bjを存在させず、取付部が平板状である先端側部分31btが押出成形部3aと直接に接続されている形態でもよい。この場合は、先端側部分31btの取付部端であって、該取付部14と前記押出成形部3aのグリップ部8との境に突起33が設けられる。この接続部分には前記した両面テープ13が存在しないために侵入する水は接続部分の突起33より排水される。なお、本実施形態では示されていないが,押出成形部3aには金属製又は樹脂製による略U字状の芯材が、例えばメインウェザストリップ1の基部1aのように埋設されていてもよい。特に金属製の芯材を使用する場合は錆びの発生が危惧されるため、型成形部3bには接続部分3bjが該芯金の端部を覆うように設けられることが好ましい。
【0026】
本実施形態において、突起33は前側の型成形部3bの保持部端に形成されているが、後側の型成形部3cにおいても保持部端の取付部14との境、或いは取付部14端のグリップ部8との境に突起33が同様にして形成され、これにより前記と同様、潜り水がメインウェザストリップ1の中空シール部1bとインナーパネル4aとの間に侵入することによる水洩れを防ぐことができる。
【0027】
本実施形態のドリップシール31が適用される車両は図1に示される形態のワンボックスカーに限定されるものではなく、スライドドアを備えた車両一般に適用可能である。
【符号の説明】
【0028】
1・・メインウェザストリップ
1a・・基部
1b・・中空シール部
2・・ドア開口部
3、31・・ドリップシール
3a・・押出成形部
3b、3c・・型成形部
3bt、31bt・・先端側部分
3bj、31bj・・接続部分
4・・スライドドア
4a・・インナーパネル
6、7・・フランジ
8・・グリップ部
9、15、18・・水受けリップ
11・・シーラー
13・・両面テープ
14・・取付部
17、32・・保持部
33・・突起

【特許請求の範囲】
【請求項1】
スライドドア4が取付けられる車体側面のドア開口部2の周縁にドア閉時にスライドドア4との間をシールするメインウェザストリップ1を設けると共に、該メインウェザストリップ上のドア開口部上縁に車体のルーフから流れ落ちる水を受けるドリップシール31を設けた車両において、前記メインウェザストリップ1がドア開口部周縁に取付けられる基部1aと、該基部1aより突出形成され、ドア閉時にスライドドア4に弾接してシールするシール部1bを有し、また前記ドリップシール31が前記ドア開口部上縁のフランジ7に差込んで取付けられる略U形断面のグリップ部8を備えた押出成形部3aと、該押出成形部3aと接続され、かつフランジ7の車外側側面にテープ接着される断面平板状の取付部14を備え、ドリップシール31の端末部を構成する型成形部31bよりなる車両の前記ドリップシール31であって、前記型成形部には、前記断面平板状の取付部14のほか、該取付部14と一体形成され、前記押出成形部3aと接続される接続部分31bjを有し、該接続部分31bjは押出成形部3aのグリップ部8に接続され、かつ前記フランジ7に差込まれる略U形断面の保持部32を備え、該保持部32端の前記取付部14との境に、保持部内にフランジ先端まで侵入した水を前記メインウェザストリップ1の基部1aに落下するようにガイドする突起33を形成したことを特徴とするドリップシール。
【請求項2】
前記型成形部3bは、保持部32を備えた前記接続部分31bjを有しないで、前記取付部14が前記押出成形部3aのグリップ部8に直接接続され、前記突起33が前記取付部端のグリップ部8との境に形成されることを特徴とする請求項1記載のドリップシール。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2013−107610(P2013−107610A)
【公開日】平成25年6月6日(2013.6.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−256670(P2011−256670)
【出願日】平成23年11月24日(2011.11.24)
【出願人】(000196107)西川ゴム工業株式会社 (454)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】