説明

車両用アウトサイドミラー装置

【課題】ミラー側電気機器が増加すると中空のシャフト中に挿通されるハーネスの本数も増加するという点にある。
【解決手段】ハーネスを車体側ハーネス5とミラー側ハーネス6とに分け、車体側ハーネス5の一方をシャフト2中に挿通して電動格納ユニット4の外に配線し、かつ、この車体側ハーネス5の他方を車体側電気機器に接続するようにし、また、ミラー側ハーネス6の一方をミラー側電気機器に接続し、このミラー側ハーネス6の他方と車体側ハーネス5の一方とを電動格納ユニット4内に配置されている配線分配基板7に接続する。この結果、中空のシャフト2中に挿通するハーネスの本数が車体側ハーネス5、すなわち、電源用のハーネス50とアース用のハーネス51と信号用のハーネス52との3本である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、ミラーアセンブリにミラー側電気機器が装備されている車両用アウトサイドミラー装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
この種の車両用アウトサイドミラー装置は、従来からある(たとえば、特許文献1、特許文献2)。以下、従来の車両用アウトサイドミラー装置について説明する。なお、括弧つきの符号は、特許文献1、特許文献2にそれぞれ対応する。この車両用アウトサイドミラー装置は、中空のシャフト(2)、(21)中にハーネス(12)、(4)が挿通されており、このハーネス(12)、(4)の一方がミラー側電気機器であるモータ(4)、(M)などに接続されており、かつ、このハーネス(12)、(4)の他方が車体側電気機器であるバッテリー(電源)やアースや操作スイッチ等に接続されているものである。
【0003】
ところが、前記の車両用アウトサイドミラー装置は、ミラー側電気機器と車体側電気機器とを接続するハーネス(12)、(4)が中空のシャフト(2)、(21)中に挿通されているものである。このために、前記の車両用アウトサイドミラー装置においては、ミラー側電気機器が、たとえば、ミラーアセンブリを使用位置と格納位置との間に回転させる電動格納用のモータ、ミラーユニットを上下左右に傾動させるパワーユニット用のモータ、ターンランプ、フットランプ、ミラーの曇り止め用のヒータ、防眩用のEC(エレクトロクロミック)ミラー、死角視認用のカメラ、カメラ用のランプ(赤外光ランプ)などと増加すると、中空のシャフト(2)、(21)中に挿通されるハーネス(12)、(4)の本数も増加するという課題がある。
【0004】
【特許文献1】特開平7−285380号公報
【特許文献2】特開2000−219085号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
この発明が解決しようとする問題点は、ミラー側電気機器が増加すると中空のシャフト中に挿通されるハーネスの本数も増加するという点にある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
この発明は、ハーネスを車体側ハーネスとミラー側ハーネスとに分け、車体側ハーネスの一方をシャフト中に挿通して取付ユニットの外に配線し、かつ、この車体側ハーネスの他方を車体側電気機器に接続するようにし、また、ミラー側ハーネスの一方をミラー側電気機器に接続し、このミラー側ハーネスの他方と車体側ハーネスの一方とを取付ユニット内に配置されている配線分配基板に接続する、ことを特徴とする。
【発明の効果】
【0007】
この発明の車両用アウトサイドミラー装置は、上記の手段により、中空のシャフト中に挿通するハーネスの本数が車体側ハーネスの本数となる。この車体側ハーネスの本数は、電源用のハーネスとアース用のハーネスと信号用のハーネスとを加えた少なくとも3本である。このために、この発明の車両用アウトサイドミラー装置は、ミラー側電気機器が増加しても、中空のシャフト中に挿通されるハーネスの本数が少なくとも3本と一定であるから、下記の効果を達成することができる。すなわち、少なくとも3本の車体側ハーネスを中空のシャフト中に挿通させて車体側電気機器(たとえば、バッテリー(電源)や車体(アース)やECU)に接続する配線や組み付けなどが容易である。また、中空のシャフトから車体側電気機器までの車体側ハーネスの本数が少なくとも3本と少ないので、軽量化が図られると共に製造コストを安価にすることができる。さらに、狭い中空のシャフト中に挿通する車体側ハーネスの本数が少なくとも3本、多くともたとえばカメラの3本のアナログ線が付加されて6本と限られているので、ミラー側電気機器の個数が増大して狭い中空のシャフト中に挿通するハーネスの本数が増大することがなく、その結果、ミラー側電気機器の個数の制限がなく、ミラー側電気機器の個数を増大させることができる。
【0008】
特に、この発明の車両用アウトサイドミラー装置は、取付ユニット内に配置されている配線分配基板に、シャフト中に挿通して取付ユニットの外に配線した車体側ハーネスの一方とミラー側ハーネスの他方とを接続するものであるから、配線分配基板を収納するケースやこのケースを取付ユニットに取り付ける部材などが不要となり、その分、部品点数が軽減して製造コストを安価にすることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
以下に、この発明にかかる車両用アウトサイドミラー装置の実施例を図面に基づいて詳細に説明する。なお、この実施例によりこの発明が限定されるものではない。
【実施例】
【0010】
以下、この実施例における車両用アウトサイドミラー装置の構成について説明する。図面において、符号「F」は、自動車(車両)の前方側(自動車の前進方向側)を示す。符号「B」は、自動車の後方側を示す。符号「U」は、ドライバー側から前方側を見た上側を示す。符号「D」は、ドライバー側から前方側を見た下側を示す。符号「L」は、ドライバー側から前方側を見た場合の左側を示す。符号「R」は、ドライバー側から前方側を見た場合の右側を示す。
【0011】
図において、符号1は、この実施例における車両用アウトサイドミラー装置であって、この例では自動車用の電動格納式のドアミラー装置(以下、ドアミラー1と称する)である。前記ドアミラー1は、自動車の左右のドアにそれぞれ装備されている。なお、この実施例のドアミラー1は、左のドアに装備されるドアミラーであって、右のドアに装備されるドアミラーは、この実施例のドアミラー1の構造とほぼ左右逆の構造となる。
【0012】
前記ドアミラー1は、シャフト2と、ミラーアセンブリ3と、取付ユニットとしての電動格納ユニット4と、車体側ハーネス5と、ミラー側ハーネス6と、配線分配基板7と、を備えるものである。
【0013】
前記シャフト2は、ベース20に固定されている。前記ベース20は、自動車のドアに固定される。
【0014】
前記電動格納ユニット4は、図1および図2に示すように、前記シャフト2に回転可能に取り付けられているものであって、ギアケース40と、ギアカバー41と、仕切板のプレート42と、を備える。前記ギアケース40と前記ギアカバー41とは、水密に組み付けられていて、内部には収納用の空間が形成されている。前記空間中には、前記プレート42と、電動格納用のモータ43と、前記モータ43と前記シャフト2との間に設けられている回転力伝達兼減速機構44およびクラッチ機構45と、前記モータ43と電気的に接続されており前記モータ43の駆動を制御する電動格納制御基板49とが収納されている。前記ギアカバー41には、円筒部46が前記シャフト2と連通するように設けられている。なお、前記円筒部46と前記シャフト2とは、別個の部材である。
【0015】
前記ミラーアセンブリ3は、前記シャフト2に前記電動格納ユニット4を介して回転可能に取り付けられている。すなわち、前記ミラーアセンブリ3は、前記電動格納ユニット4のモータ43の駆動により、使用位置と格納位置(使用位置に対して後方側の位置)との間を電動回転する。また、前記ミラーアセンブリ3は、前記電動格納ユニット4のクラッチ機構45のクラッチ作用により、緩衝のために、使用位置に対して前方側や後方側に回転する。さらに、前記ミラーアセンブリ3は、手動により、使用位置と格納位置と使用位置に対して前方側の位置に手動回転する。
【0016】
前記ミラーアセンブリ3は、図3および図4に示すように、ミラーハウジング(または、ミラーボディー、ミラーカバー)30を有する。前記ミラーハウジング30は、前方側の部分が閉塞され、かつ、後方側の部分が開口されている。前記ミラーハウジング30内には、パワーユニット31を介してミラーユニット32が上下左右に傾動可能に装備されている。また、前記ミラーハウジング30の閉塞部には、ターンランプ(サイドターンシグナルランプ)33、フットランプ34、死角視認用のカメラ(CCDカメラ)35、カメラ用のランプ(赤外光ランプ)36が設けられている。
【0017】
前記パワーユニット31は、モータ(図示せず)を収納するハウジング310を備える。前記ハウジング310には、ピボット機構311を介して前記ミラーユニット32が傾動可能に取り付けられている。前記モータと前記ミラーユニット32との間には、回転力伝達兼減速機構(図示せず)を介して左右方向用の進退ロッド312と上下用の進退ロッド(図示せず)とが設けられている。前記パワーユニット31のモータの駆動により、回転力伝達兼減速機構(図示せず)を介して左右方向用の進退ロッド312や上下用の進退ロッドが進退して、前記ミラーユニット32が前記パワーユニット31に対して上下左右に傾動する。
【0018】
前記ミラーユニット32は、反射面を有するミラーボディー320と、前記ミラーボディー320を保持するミラーホルダ321とを有するものである。前記ミラーホルダ321が前記パワーユニット31に取り付けられている。また、前記ミラーボディー320の反射面は、前記ミラーハウジング30の開口部に上下左右に傾動可能に位置する。さらに、前記ミラーボディー320には、曇り止め用のヒータ(図示せず)が設けられており、しかも、前記ミラーボディー320は、防眩用のECミラーである。
【0019】
前記車体側ハーネス5は、電源用のハーネス50と、アース用のハーネス51と、信号用のハーネス(LAN、CAN、LIN用のハーネス)52と、カメラ35用の3本のハーネス66(電源(+6V)用のハーネスと、アース用のハーネスと、映像信号用のハーネス)とからなる。前記車体側ハーネス5(50、51、52)、66の一方は、前記シャフト2および前記円筒部46中に挿通されて前記電動格納ユニット4の外に配線されていてコネクタ53に接続されている。また、前記車体側ハーネス5(50、51、52)、66の他方は、図示していない車体側電気機器のバッテリー(電源)や車体(アース)やECU(自動車搭載のコンピュータ)やカメラ用の電源およびアースおよびCPUに接続されている。
【0020】
前記ミラー側ハーネス6は、前記パワーユニット31のモータ用のハーネス61と、前記ターンランプ33用のハーネス62と、前記フットランプ34用のハーネス63と、前記ミラーのヒータ用のハーネス64と、前記ミラーの液晶用のハーネス65と、前記カメラ35用の前記3本のハーネス66(電源(+6V)用のハーネスと、アース用のハーネスと、映像信号用のハーネス)と、前記ランプ(赤外光ランプ)用のハーネス67とからなる。前記車体側ハーネス6(61、62、63、64、65、66、67)の一方は、前記ミラー側電気機器、すなわち、前記パワーユニット31のモータ、前記ターンランプ33、前記フットランプ34、前記ミラーのヒータ、前記ミラーの液晶、前記カメラ35、前記ランプ(赤外光ランプ)に接続されている。前記車体側ハーネス6(61、62、63、64、65、66、67)の他方は、コネクタ71に接続されている。
【0021】
前記配線分配基板7は、たとえば、SLIC(スレイブ・リンIC)に代表される電子基板であって、ECUから出力されるデジタル信号をミラー側電気機器用のアナログ信号に変換するものである。前記配線分配基板7は、前記電動格納ユニット4内に水密に収納されており、かつ、前記電動格納制御基板49に配置されている。前記配線分配基板7には、前記車体側ハーネス5の一方の車体側コネクタ53が着脱可能に接続する車体側コネクタ53と、前記ミラー側ハーネス6の他方のミラー側コネクタ71が着脱可能に接続するミラー側コネクタ71とが設けられている。なお、前記電動格納ユニット4には、前記車体側ハーネス5の一方の車体側コネクタ53と前記ミラー側ハーネス6の他方のミラー側コネクタ71とが前記電動格納ユニット4の前記車体側コネクタ53と前記ミラー側コネクタ71とに水密に接続する開口部47が設けられている。なお、図には、前記車体側ハーネス5の一方の車体側コネクタ53が前記車体側コネクタ53に水密に接続する開口部47のみが図示されている。
【0022】
図5に示すように、前記ミラー側ハーネス6の他方のミラー側コネクタ71は、前記電動格納ユニット4の開口部中に挿入して前記配線分配基板7のミラー側コネクタ71に水密に接続されている。また、前記車体側ハーネス5の一方の車体側コネクタ53は、前記電動格納ユニット4の開口部47中に挿入して前記配線分配基板7の車体側コネクタ53に水密に接続されている。
【0023】
この実施例における車両用アウトサイドミラー装置(ドアミラー1)は、以上のごとき構成からなり、以下、その作用効果について説明する。
【0024】
この実施例におけるドアミラー1は、中空のシャフト2中に挿通するハーネスの本数が車体側ハーネス5の本数となる。この車体側ハーネス5の本数は、電源用のハーネス50とアース用のハーネス51と信号用のハーネス52とカメラ35用の3本のハーネス66との合計6本である。このために、このドアミラー1は、ミラー側電気機器が増加しても、中空のシャフト2中に挿通されるハーネスの本数が6本であるから、この3本の車体側ハーネス5を中空のシャフト2中に挿通させて車体側電気機器(たとえば、バッテリー(電源)や車体(アース)もしくはECU)に接続する配線や組み付けなどが容易である。
【0025】
また、この実施例におけるドアミラー1は、中空のシャフト2から車体側電気機器までの車体側ハーネス5の本数が3本と少ないので、軽量化が図られると共に製造コストを安価にすることができる。
【0026】
さらに、この実施例におけるドアミラー1は、狭い中空のシャフト2中に挿通する車体側ハーネス5の本数が6本と限られているので、ミラー側電気機器の個数が増大して狭い中空のシャフト2中に挿通するハーネスの本数が増大することがなく、その結果、ミラー側電気機器の個数の制限がなく、ミラー側電気機器の個数を増大させることができる。
【0027】
さらにまた、この実施例におけるドアミラー1は、電動格納ユニット4内に配置されている配線分配基板7に、シャフト2中に挿通して電動格納ユニット4の外に配線した車体側ハーネス5の一方とミラー側ハーネス6の他方とを接続するものであるから、配線分配基板7を収納するケースやこのケースを電動格納ユニット4に取り付ける部材などが不要となり、その分、部品点数が軽減して製造コストを安価にすることができる。
【0028】
なお、上記の実施例においては、電動格納式のドアミラー装置について説明するものである。ところが、この発明においては、電動格納式のドアミラー装置以外の車両用アウトサイドミラー装置にも適用できる。たとえば、電動格納ユニット4の代わりにクラッチ機構を備える取付ユニットを使用して、ミラーアセンブリをシャフトに対して手動により使用位置と前方側の位置や後方側の位置との間を回転させる手動格納式のドアミラー装置、または、電動格納ユニット4の代わりに取り付けユニットを使用して、ミラーアセンブリがシャフトに対して固定的なドアミラー装置などにも適用できる。
【0029】
また、上記の実施例においては、死角視認用のカメラ35を使用するものであるが、この発明においては、カメラ35を使用しない車両用アウトサイドミラー装置であっても良い。この場合、車体側ハーネス5の本数は、電源用のハーネス50とアース用のハーネス51と信号用のハーネス52との合計3本となるので、効果がさらに向上される。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【図1】この発明にかかる車両用アウトサイドミラー装置の実施例を示す要部(電動格納ユニット、車体側ハーネス、ミラー側ハーネス、基板ケース)の斜視図である。
【図2】同じく、要部(電動格納ユニット、車体側ハーネス、ミラー側ハーネス、基板ケース)の断面図である。
【図3】同じく、電動格納式のドアミラーに使用した例を示す斜視図である。
【図4】同じく、図3におけるIV−IV線断面図である。
【図5】同じく、車体側ハーネスおよびミラー側ハーネスおよび電動格納ユニット内の配線分配基板の配線状態を示す説明図である。
【符号の説明】
【0031】
1 ドアミラー(車両用アウトサイドミラー装置)
2 シャフト
20 ベース
3 ミラーアセンブリ
30 ミラーハウジング
31 パワーユニット
310 ハウジング
311 ピボット機構
312 左右用の進退ロッド
32 ミラーユニット
320 ミラーボディー
321 ミラーホルダ
33 ターンランプ
34 フットランプ
35 カメラ
36 カメラ用のランプ
4 電動格納ユニット(取付ユニット)
40 ギアケース
41 ギアカバー
42 プレート
43 モータ
44 回転力伝達兼減速機構
45 クラッチ機構
46 円筒部
47 開口部
49 電動格納制御基板
5 車体側ハーネス
50 電源用のハーネス
51 アース用のハーネス
52 信号用のハーネス
53 車体側コネクタ
6 ミラー側ハーネス
61 パワーユニット31のモータ用のハーネス
62 ターンランプ33用のハーネス
63 フットランプ34用のハーネス
64 ミラーのヒータ用のハーネス
65 ミラーの液晶用のハーネス
66 カメラ35用のハーネス
67 カメラ35用のランプ用のハーネス
7 配線分配基板
71 ミラー側コネクタ
F 前方側
B 後方側
U 上側
D 下側
L 左側
R 右側

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ミラーアセンブリにミラー側電気機器が装備されている車両用アウトサイドミラー装置において、
前記車体に固定される中空のシャフトと、
前記シャフトに取付ユニットを介して取り付けられている前記ミラーアセンブリと、
一方が前記シャフト中に挿通されて前記取付ユニットの外に配線されており、他方が車体側電気機器に接続される車体側ハーネスと、
一方が前記ミラー側電気機器に接続されているミラー側ハーネスと、
前記取付ユニット内に配置されており、かつ、前記ミラー側ハーネスの他方と前記車体側ハーネスの一方とが接続されている配線分配基板と、
を備えることを特徴とする車両用アウトサイドミラー装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2006−248368(P2006−248368A)
【公開日】平成18年9月21日(2006.9.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−67311(P2005−67311)
【出願日】平成17年3月10日(2005.3.10)
【出願人】(000000136)市光工業株式会社 (774)
【Fターム(参考)】