説明

車両用ウインドパネル

【課題】樹脂材からなるパネル本体を備えた車両用ウインドパネルにおいて、線条層を目立たなくして見栄えを向上させる。
【解決手段】パネル本体7に形成された透光性を有する窓部11に、銀粉末を主成分としかつバインダーとして熱硬化性樹脂を含むペーストを塗布することにより線条層13b,13cを形成する。線条層13b,13cの幅を0.05mm以上0.1mm以下に設定する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両に形成された窓用開口部に該開口部を閉塞するように取り付けられる車両用ウインドパネルに関するものである。
【背景技術】
【0002】
特許文献1では、銀粉末を主成分とするペーストをウインドガラスに焼き付けて導電性の線条層を形成している。
【0003】
また、特許文献2では、車両を軽量化するために、無機ガラスの代わりに樹脂材からなるウインドパネルを採用し、このウインドパネルに、銀粉末を混入した樹脂ペーストを印刷することにより導電性の線条層を形成している。
【特許文献1】特開2003−338218号公報
【特許文献2】特開2002−160519号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記特許文献1では、V、Mn、Fe、Co等の金属およびそれらの酸化物を上記ペーストに添加することで、導電性の線条層を車外側から見え難くするために線条層の暗色化を図っている。
【0005】
しかしながら、上記特許文献2のように樹脂材からなるウインドパネルを採用した場合、金属及びその酸化物を添加したペーストを印刷等の塗布手段により塗布して線条層を積層する際、該ペーストは300℃〜800℃のような高い温度でなければ塗布できないため、無機ガラスに比べて軟化温度が低いアクリル樹脂、ポリカーボネート樹脂等の熱可塑性樹脂材からなるウインドパネルの表面が溶けて当該ペーストを塗布できず、線条層を該ウインドパネルに形成することができない。したがって、樹脂材からなるウインドパネルでは、特許文献1のような暗色化対策を図ることができず、線条層が車外側から見えるようになってウインドパネルの見栄えが悪くなる。
【0006】
本発明は、かかる点に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、樹脂材からなるパネル本体を備えた車両用ウインドパネルにおいて、導電性の線条層を目立たなくして見栄えを向上させることにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記の目的を達成するため、本発明は、線条層の幅を該線条層が目立たない程度に狭く設定したことを特徴とする。
【0008】
具体的には、本発明は、車両に形成された窓用開口部に該開口部を閉塞するように取り付けられる車両用ウインドパネルを対象とし、次のような解決手段を講じた。
【0009】
すなわち、請求項1に記載の発明は、樹脂材からなる板状パネル本体を備え、該パネル本体には透光性を有する窓部が一体に形成され、該窓部の車内側面には、銀粉末を主成分としかつバインダーとして熱硬化性樹脂を含むペーストが塗布されることにより導電性の線条層が形成され、該線条層は幅が0.05mm以上0.1mm以下に設定されていることを特徴とする。
【0010】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の車両用ウインドパネルにおいて、上記線条層は複数条形成された防曇用熱線であり、該線条層間のピッチが2.0mm以上5.0mm以下になるように設定されていることを特徴とする。
【0011】
請求項3に記載の発明は、請求項1又は2に記載の車両用ウインドパネルにおいて、上記線条層の厚さは25μm以上50μm以下に設定されていることを特徴とする。
【0012】
請求項4に記載の発明は、請求項1に記載の車両用ウインドパネルにおいて、上記線条層はアンテナであることを特徴とする。
【発明の効果】
【0013】
請求項1に係る発明によれば、線条層の幅が0.05mm以上に設定されているので、ペーストの塗布による線条層の形成が容易である。また、線条層の幅が0.1mm以下に設定されているので、線条層が目立たず、車両用ウインドパネルの見栄えが向上する。そして、この線条層は、防曇用熱線及びアンテナとして使用することができる。
【0014】
また、請求項1に係る発明によれば、線条層を、銀粉末を主成分としかつバインダーとして熱硬化性樹脂を含むペースト、即ち上記特許文献1のようなV、Mn、Fe、Co等の金属およびそれらの酸化物が添加されていないペーストを積層して形成するようにしたため、ペーストの塗布温度を、ペーストを無機ガラスに積層する際に設定する300℃〜800℃のような高温度ではなく120℃〜130℃のような低温度に設定して、樹脂材からなるパネル本体に線条層を高精度かつ容易に形成することができる。
【0015】
請求項2に係る発明によれば、線条層間のピッチが2.0mm以上に設定されているので、窓部の視界の悪化が抑制されるとともに、線条層が目立たず、車両用ウインドパネルの見栄えの悪化が防止される。また、線条層の幅が0.05mm以上に設定され、かつ線条層間のピッチが5.0mm以下に設定されているので、十分な発熱により車両用ウインドパネルにおける窓部の曇りが十分防止される。
【0016】
請求項3に係る発明によれば、線条層の厚さが25μm以上に設定されているので、導電性能が確保され、線条層が防曇用熱線である場合には、十分な発熱により車両用ウインドパネルにおける窓部の曇りが十分防止される。また、線条層の厚さが50μm以下に設定されているので線条層が剥離しにくい。
【0017】
請求項4に係る発明によれば、線条層の幅が0.05mm以上0.1mm以下に設定されているので、車両用ウインドパネルの見栄えを悪化させることなく、ペーストの塗布によって車両に搭載されたラジオ、テレビ等のアンテナの機能を有する線条層を容易に形成できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
以下、本発明の実施形態について図面に基づいて説明する。
【0019】
図1は、車両1の後部を示す。同図に示すように、車両1の後部には、略矩形状の窓用開口部3が形成され、該開口部3には、該開口部3を閉塞するように略矩形板状の車両用ウインドパネル5が取り付けられている。
【0020】
図2は、車室内側から見たウインドパネル5を示す。ウインドパネル5は、アクリル樹脂、ポリカーボネート、ポリアリレート等の熱可塑性樹脂材からなる透光性を有する略矩形板状パネル本体7を備えている。該パネル本体7の車内側面の外周縁には、ウインドパネル5の上記開口部3周辺、即ち下記窓部11周辺が車外側から見えないように黒色等の非透光性塗料が全周に亘って塗布されることにより隠蔽層9が形成されている。そして、該隠蔽層9で囲まれるパネル本体7の内側部分に透光性を有する窓部11が一体に形成されている。
【0021】
そして、車幅方向両側の隠蔽層9の車内側面には、バスバーの役割を果たす導電層13aが上下方向に帯状に延びるように積層されている。また、図3及び図4にも示すように、該窓部11の車内側面には、複数条の導電性の線条層13bが、車幅方向両側で上記導電層13aに接続するように略平行に車幅方向に延びている。これらの線条層13bは、防曇用熱線の役割を果たすものである。これら導電層13a及び線条層13bは、窓部11の車内側面に銀粉末を主成分としかつバインダーとして熱硬化性樹脂を含むペーストを同時に印刷等の塗布手段により塗布することにより積層して形成される。塗布されるペーストは、銀粉末60〜85重量%、ジプロピレングリコールメチルエーテル20〜30重量%、ビスA型エポキシ樹脂1〜10重量%を基本構成とする。そして、ペーストの塗布温度は、120℃〜130℃に設定される。
【0022】
上記線条層13bの幅は0.05mm以上0.1mm以下に設定されて、該線条層13b間のピッチは2.0mm以上5.0mm以下に設定されている。また、線条層13bの厚さは25μm以上50μm以下に設定されている。
【0023】
また、窓部11の上記線条層13bより上側の車内側面には、該線条層13bと同じ幅を有する1本の導電性の線条層13cが、折れ曲がって中程が上下方向に離間して3重に重なるように形成されている。この線条層13cの車内側から見て左側の端部は、左側の隠蔽層9上に連続している一方、該線条層13cの右側の端部は窓部11の中程に位置している。この線条層13cは、車両に搭載されたラジオ、テレビ等のアンテナの役割を果たすものである。
【0024】
上記線条層13b,13cの幅を0.05mm以上0.1mm以下に設定しているのは、0.05mm未満では、ペーストの塗布が困難になったり、線条層13cの発熱量が小さくなって窓部11の曇りが十分防止(除去)されなくなる一方、0.1mmを超えると、線条層13b,13cが目立ってウインドパネル5の見栄えが悪化するからである。
【0025】
また、線条層13b間のピッチを2.0mm以上5.0mm以下に設定しているのは、2.0mm未満では、各線条層13bが互いに接近し過ぎて窓部11の視界が悪化する一方、5.0mmを超えると、窓部11の曇りが十分防止されなくなるからである。
【0026】
また、線条層13bの厚さを25μm以上50μm以下に設定しているのは、25μm未満では、導電性能が確保されなくなり、該線条層13bによってウインドパネル5の曇りが十分防止されなくなる一方、50μmを超えると、線条層13bが剥離するおそれがあるからである。
【0027】
そして、アンテナとして使用する線条層13cは、幅が防曇用熱線として使用する上記線条層13bの幅と同じ0.05mm以上0.1mm以下に設定されることにより電波の受信ができるためアンテナとして十分機能でき、さらにアンテナの種類に応じてその厚さ、電気抵抗値、長さ等を任意に設定することができる。要は、本発明によると、アンテナ用線条層13cが車外側から見え難くなって、ウインドパネル5の見栄えが良好になる。
【0028】
上記のように、本実施形態によれば、線条層13b,13c及び導電層13aを、銀粉末を主成分としかつバインダーとして熱硬化性樹脂を含むペースト、即ち上記特許文献1のようなV、Mn、Fe、Co等の金属およびそれらの酸化物が添加されていないペーストを印刷等の塗布手段により積層して形成するようにしたため、無機ガラスに積層する際に設定される塗布温度を300℃〜800℃のような高温度にすることなく、120℃〜130℃のような低温度で熱可塑性樹脂材からなるパネル本体7に線条層13b,13c及び導電層13aを高精度かつ容易に形成することができる。
【0029】
また、線条層13b,13cの幅が0.05mm以上0.1mm以下に設定されているので、線条層13b,13cが目立たず、ウインドパネル5の見栄えが向上するとともにペーストの塗布による線条層13b,13cの成形が容易になり、線条層13bにおいては十分な発熱により窓部11の曇りが十分防止され、線条層13cにおいては電波の受信ができるためアンテナとして使用することができる。
【0030】
また、線条層13b間のピッチが2.0mm以上5.0mm以下に設定されているので、視界の悪化が抑制されるとともに、線条層13bが目立たず、ウインドパネル5の見栄えの悪化が防止され、かつ十分な発熱により窓部11の曇りが十分防止される。
【0031】
また、線条層13bの厚さが25μm以上50μm以下に設定されているので、導電性能が確保され、十分な発熱により窓部11の曇りが十分防止されるとともに、線条層13bが剥離しにくい。
【0032】
なお、本実施形態では、車両用ウインドパネルとして車両1後部のウインドパネル5を示したが、上記熱可塑性樹脂材からなるサイドウインドやサンルーフにも適用できる。
【0033】
また、本実施形態では、セダンタイプの車両1後部のウインドパネル5を示したが、本発明は、車両1の後部荷室を開閉するバックドアにも適用できる。この場合、バックドアはインナパネルとアウタパネルとで構成され、ウインドパネルが上記熱可塑性樹脂材からなるアウタパネルを構成し、該アウタパネルの中程に窓部が形成されるように周縁隠蔽層を形成(塗装)する。
【産業上の利用可能性】
【0034】
本発明は、例えば、車両に形成された窓用開口部に該開口部を閉塞するように取り付けられる車両用ウインドパネルとして有用である。
【図面の簡単な説明】
【0035】
【図1】本発明の実施形態に係る車両用ウインドパネルが取り付けられた車両の後部を示す斜視図である。
【図2】図1のウインドパネルを車室内側から見た図である。
【図3】図2のA部拡大図である。
【図4】ウインドパネルの断面図で、(a)は、図3のB−B線における断面図、(b)は、図3のC−C線における断面図である。
【符号の説明】
【0036】
1 車両
3 開口部
5 ウインドパネル
7 パネル本体
11 窓部
13b,13c 線条層

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両に形成された窓用開口部に該開口部を閉塞するように取り付けられる車両用ウインドパネルであって、
樹脂材からなる板状パネル本体を備え、該パネル本体には透光性を有する窓部が一体に形成され、該窓部の車内側面には、銀粉末を主成分としかつバインダーとして熱硬化性樹脂を含むペーストが塗布されることにより導電性の線条層が形成され、該線条層は幅が0.05mm以上0.1mm以下に設定されていることを特徴とする車両用ウインドパネル。
【請求項2】
請求項1に記載の車両用ウインドパネルにおいて、
上記線条層は複数条形成された防曇用熱線であり、該線条層間のピッチが2.0mm以上5.0mm以下になるように設定されていることを特徴とする車両用ウインドパネル。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の車両用ウインドパネルにおいて、
上記線条層の厚さは25μm以上50μm以下に設定されていることを特徴とする車両用ウインドパネル。
【請求項4】
請求項1に記載の車両用ウインドパネルにおいて、
上記線条層はアンテナであることを特徴とする車両用ウインドパネル。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate


【公開番号】特開2010−234868(P2010−234868A)
【公開日】平成22年10月21日(2010.10.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−82772(P2009−82772)
【出願日】平成21年3月30日(2009.3.30)
【出願人】(390026538)ダイキョーニシカワ株式会社 (492)
【Fターム(参考)】