説明

車両用エアガイド

【課題】車両が軽衝突を起こした場合でも再度の使用が可能な車両用エアガイドを提供する。
【解決手段】車両用エアガイド5は、バンパーフェイシア1の開口3からの走行風を取り込む筒状体7と、該筒状体7の車両後方側に配置されると共に、前記筒状体7を車両前後方向に沿ってスライド可能に嵌合した筒部25を有するエアガイド本体9と、を備えている。従って、車両が軽衝突を起こした場合に、筒状体7や筒部25が変形して走行風の通路を封鎖することがないため、スライドした筒状体7を元の位置に戻すことによってエアガイド5を再使用することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、熱交換器に走行風を送る車両用エアガイドに関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、エンジンルーム内の前端部に筒状のエアガイドを配設し、該エアガイドの後側にインタークーラを配置する車体構造が公知である(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
この特許文献1に記載されたエアガイドは、車両前端に設けたバンパーフェイシアの開口の後側に配置されており、車両が走行するときの走行風を前記開口を介してエアガイドに取り入れ、前記インタークーラに当てることによりインタークーラ内の空気を冷却している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平10−166969号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、前記特許文献1に記載のエアガイドは、単一の角筒部材から構成されているため、車両が軽衝突を起こすと、エアガイドが変形して通風路が封鎖されてしまい再度の使用ができないおそれがあった。
【0006】
そこで、本発明は、車両が軽衝突を起こした場合でも再使用が可能な車両用エアガイドを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明に係る車両用エアガイドは、車体部材に形成した開口の車両後方側に車両前後方向に沿って配置されており、車両走行時に熱交換器に走行風を送るものである。車両走行時に前記開口からの走行風を取り込む筒状体と、該筒状体の車両後方側に配置されると共に前記筒状体を車両前後方向に沿ってスライド可能に嵌合した筒部を有するエアガイド本体と、を備えている。
【発明の効果】
【0008】
本発明に係る車両用エアガイドによれば、筒状体に車両後方側へ所定荷重が入力された場合、筒状体は筒部内を車両後方に向けてスライド移動する。このように、車両が軽衝突を起こした場合に、筒状体や筒部が変形して走行風の通路を封鎖することがないため、スライド移動した筒状体を元の位置に戻すことによってエアガイドを再使用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】本発明の実施形態による車両前端の右側を前方から見た正面図である。
【図2】図1におけるインタークーラを示す正面図である。
【図3】本発明の実施形態による車両用エアガイドを示す斜視図である。
【図4】図3の分解斜視図である。
【図5】図1のA−A線による断面図である。
【図6】図1のB−B線による断面図である。
【図7】図6に相当する断面図であり、右斜め前方の衝突体から荷重が入力された状態を示している。
【図8】図7のC−C線による断面図である。
【図9】通常時における車両用エアガイドを示す斜視図である。
【図10】衝突後における車両用エアガイドを示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の実施形態を図面と共に詳述する。
【0011】
図1に示すように、車両前端には、車幅方向に沿って延在するバンパーフェイシア(車体部材)1が配設されている。このバンパーフェイシア1の左右両端には、横長の正面視矩形状に形成された開口3が設けられており、この開口3から走行風が導入される。また、前記開口3の背面側、即ち車両後方側には車両用エアガイド5が開口に対して対向配置されている。従って、前記開口3からの走行風は、エアガイド5に導入される。なお、図1は、車幅方向中央から車両右側のみを示しているが、車両左側についても対称の構造になっている。
【0012】
図2〜図5に示すように、車両用エアガイド5は、前方側に配置された筒状体7と、該筒状体7の後方側に配置されたエアガイド本体9とからなり、該エアガイド本体9に熱交換器であるインタークーラ11が収容配置されている。
【0013】
前記筒状体7は、略角筒状に形成されており、上側に配置された上壁面13と、該上壁面13の左右両端から下方に延在する左右一対の側壁面15,17と、該側壁面15,17の下端同士を車幅方向に連結する底壁面19と、から正面視矩形状に一体形成されている。上壁面13および底壁面19の前端13a,19aは、上から見ると緩やかに湾曲した弧状に形成されている。そして、車幅方向中央側に近い側壁面15の方が車幅方向右側の側壁面17よりも前後長さが長く形成されている。また、上壁面13には、左右両側に上方に突出する爪(係合部材)21,21が左右一対に形成されている。これらの爪21は、後述するエアガイド本体9の切欠部23に挿入して係止されている。
【0014】
前記エアガイド本体9は、前側に配設した筒部25と、該筒部25の後側に配設したインタークーラ収容部27とからなる。
【0015】
前記筒部25は、上面29、側面31および底面33からなる角筒状の部材であり、筒部25内に前記筒状体7がスライド可能に嵌合されている。また、前述したように、上面29における前記爪21に対応する部位に、小さな矩形状の切欠部23,23が開口されており、該切欠部23に前記筒状体7の爪21が係止されている。
【0016】
前記インタークーラ収容部27は、筒部25よりも大きく形成された筒状に形成されており、外周が周壁35によって囲まれている。従って、筒部25の上面29とインタークーラ収容部27の上側の周壁35には段差が形成されており、周壁35から下方に延在する前壁37には、左右一対にボルト穴39,39が穿設されている。
【0017】
また、インタークーラ収容部27に収容されるインタークーラ11は、図外の過給器からの圧縮された空気を冷却してエンジンの吸気マニホールドに送る熱交換器である。
【0018】
図4に示すように、インタークーラ11は、上下方向中央に配置された本体部41と、該本体部41の上側に配置された上側タンク43と、本体部41の下側に配置された下側タンク45と、から構成されている。上側タンク43には、過給器からの空気を導入する吸入口47が設けられ、上面に左右一対の取付部49,49が設けられている。下側タンク45には、排出部51が設けられている。この排出部51は、本体部41で冷却した空気をエンジンの吸気マニホールドに送る機能を有する。また、下側タンク45には、左右一対の取付部53,53が設けられている。インタークーラ11を前記インタークーラ収容部27に収容した状態でインタークーラ11の取付部53,53にボルト55を螺合させることによってインタークーラ11を取り付けている。
【0019】
次に、図6〜図10を用いて、車両用エアガイド5に対して衝突体57から荷重が入力された場合における変形挙動を説明する。
【0020】
図5,6,9に示すように、荷重入力前は、筒状体7がエアガイド本体9の筒部25に嵌合されており、爪21が切欠部23に係止されている。
【0021】
図7に示す衝突体57がバンパーフェイシア1の右端部に斜め前方から当たると、図8,10に示すように、筒状体7の爪21とエアガイド本体9の筒部25の切欠部23との係合が解除され、筒状体7が筒部25の内周側を車両後方にスライド移動する。ただし、図8に示すように、筒状体7の移動が終了した後でも、筒状体7がインタークーラ11に当たることがない。
【0022】
次いで、本実施形態による作用効果を説明する。
【0023】
(1)本実施形態による車両用エアガイド5は、車体部材(バンパーフェイシア1)に設けた開口3の車両後方側に前後方向に沿って配置され、熱交換器(インタークーラ11)に走行風を送るものである。
【0024】
車両用エアガイド5は、前記開口3からの走行風を取り込む筒状体7と、該筒状体7の車両後方側に配置されると共に、前記筒状体7を車両前後方向に沿ってスライド可能に嵌合した筒部25を有するエアガイド本体9と、を備えている。
【0025】
従って、筒状体7に車両後方側へ所定荷重が入力された場合、筒状体7は筒部25内を車両後方に向けてスライド移動する。このように、車両が軽衝突を起こした場合に、筒状体7や筒部25が変形して走行風の通路を封鎖することがないため、スライドした筒状体7を元の位置に戻すことによってエアガイド5を再使用することができる。また、筒状体7のスライド移動によって、前記所定荷重を効率的に吸収することができる。
【0026】
(2)前記筒状体7を前記筒部25に爪(係合部材)21を介して係合させると共に、前記筒状体7に車両後方側へ所定荷重が入力された場合に、前記係合が解除されて前記筒状体7が筒部25に対して車両後方に向けてスライド移動するように構成している。
【0027】
従って、筒状体7に所定荷重が入力されない通常状態では、筒状体7を筒部25に対して確実に保持させることができる。一方、筒状体7に所定荷重が入力された場合には、筒状体7を筒部25内をスライド移動させて、これらの筒状体7および筒部25が変形することを防止することができる。なお、筒状体7の筒部25に対する係合が解除された場合には、車両走行時に、筒状体7が筒部25の中で動いてカタカタ音がする。従って、筒状体7と筒部25との係合が解除されたことが容易に認知できる。
【0028】
(3)なお、前記車体部材は車両前端に設けられたバンパーフェイシア1であり、前記熱交換器はインタークーラ11であるため、車両が軽衝突を起こした場合でも、インタークーラ11の冷却機能が損なわれずに済む。
【符号の説明】
【0029】
1…バンパーフェイシア(車体部材)
3…開口
5…車両用エアガイド
7…筒状体
9…エアガイド本体
11…インタークーラ(熱交換器)
21…爪(係合部材)
25…筒部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車体部材に設けた開口の車両後方側に車両前後方向に沿って配置され、熱交換器に走行風を送る車両用エアガイドであって、
前記開口からの走行風を取り込む筒状体と、該筒状体の車両後方側に配置されると共に前記筒状体を前後方向にスライド移動可能に嵌合した筒部を有するエアガイド本体と、を備えたことを特徴とする車両用エアガイド。
【請求項2】
前記筒状体を前記筒部に係合部材を介して係合させると共に、前記筒状体に車両後方側へ所定荷重が入力された場合に、前記係合が解除されて前記筒状体が筒部に対して車両後方に向けてスライド移動するように構成したことを特徴とする請求項1に記載の車両用エアガイド。
【請求項3】
前記車体部材は車両前端に設けられたバンパーフェイシアであり、前記熱交換器はインタークーラであることを特徴とする請求項1または2に記載の車両用エアガイド。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2012−236504(P2012−236504A)
【公開日】平成24年12月6日(2012.12.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−106865(P2011−106865)
【出願日】平成23年5月12日(2011.5.12)
【出願人】(000003997)日産自動車株式会社 (16,386)
【Fターム(参考)】