車両用エアバッグのインフレータ構造
【課題】ボルト付きのリテーナを廃止して車両用エアバッグを組み立てることが可能であって、重量を軽減することができると共に、エアバッグクッションを車両側固定部位に健全かつ強固に固定することが可能で、当該エアバッグクッションの構造簡素化、生産性向上、並びにコスト低減を達成でき、エコロジーや省資源化に資する車両用エアバッグのインフレータ構造を提供する。
【解決手段】外殻がプレッシャーベッセル３で形成され、ボルト挿通孔５ａが形成されたエアバッグクッション５内部に全体が収容されるディスク形状のインフレータ本体１と、プレッシャーベッセルの底面３ａに直接一体的に接合され、ボルト挿通孔からエアバッグクッション外方へ突出されて車両側固定部位８に締結される取付用ボルト４とを備えた。
【解決手段】外殻がプレッシャーベッセル３で形成され、ボルト挿通孔５ａが形成されたエアバッグクッション５内部に全体が収容されるディスク形状のインフレータ本体１と、プレッシャーベッセルの底面３ａに直接一体的に接合され、ボルト挿通孔からエアバッグクッション外方へ突出されて車両側固定部位８に締結される取付用ボルト４とを備えた。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【０００１】
本発明は、ボルト付きのリテーナを廃止して車両用エアバッグを組み立てることが可能であって、重量を軽減することができると共に、エアバッグクッションを車両側固定部位に健全かつ強固に固定することが可能で、当該エアバッグクッションの構造簡素化、生産性向上、並びにコスト低減を達成でき、エコロジーや省資源化に資する車両用エアバッグのインフレータ構造に関する。
【背景技術】
【０００２】
車両用エアバッグとして、例えば特許文献１が知られている。特許文献１の「エアバッグ装置」は、エアバッグ本体とインフレータとを有するエアバッグモジュールを、取付具を介してリインフォースメントに取り付けたエアバッグ装置であって、前記取付具は、前記エアバッグモジュールの収容ケースと、前記エアバッグモジュール及び前記収容ケースを支持して固定する脚部を有したブラケットと、前記収容ケースの底部から突出した突出部材とを備えている。また、前記ブラケットの前記脚部は傾斜部を有し、前記突出部材は、前記収容ケースが衝撃を受けて前記ブラケットを変形させるときに、前記脚部の前記傾斜部を押圧して前記ブラケットの変形を補助するように構成されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【０００３】
【特許文献１】特開２００８−１１０７３７号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【０００４】
特許文献１では、インフレータは取付用のフランジを有している。フランジは、エアバッグ本体内部に収容される枠体状のリテーナのボルトを利用して、当該リテーナ、エアバッグ本体、エアバッグを収容する収容ケース、並びにブラケットに、ナットで結合する。車両側固定部位であるリインフォースメントに固定部を設け、この固定部にブラケットを介して、インフレータやエアバッグ本体等を固定する。
【０００５】
インフレータは、リテーナに取り囲まれる上半球部がエアバッグ本体内部に収容されると共に、下半球部が、エアバッグ本体及び収容ケースの開口部から突出して、それらの外部に露出される。
【０００６】
インフレータは、火薬の急速な燃焼によりインフレータガスを発生する。インフレータは、急速燃焼作用で衝撃を発生する。従って、インフレータは、リインフォースメントに強固に支持固定する必要がある。インフレータをリインフォースメントで強固に支持固定するため、インフレータのフランジに通したリテーナのボルトで、リインフォースメント側との結合を確保していた。このため、特許文献１の構造では、ボルト付きのリテーナが必須であった。ボルト付きのリテーナが必要なため、重量が重くなるという課題があった。
【０００７】
エアバッグ本体には、インフレータの下半球部が露出する大きな開口部が形成されている。リテーナは、インフレータのフランジ及びエアバッグ本体の開口部周辺を収容ケース側へ押さえ込んで、当該開口部を補強する。しかし、リテーナは、開口部の外周縁を環状に押さえ込む程度であり、押さえ込み面積が狭く、エアバッグ本体の開口部周辺を十分に補強することはできなかった。また、リテーナは、インフレータを取り囲む枠体状であるため、強度不足であり、インフレータでの急速燃焼作用による衝撃やエアバッグ本体の膨張圧力で、容易に変形してしまう。
【０００８】
要するに、リテーナによる開口部周辺の補強は、エアバッグ本体を押さえ込む面積が狭く、かつ簡単に変形してしまうために、十分ではなかった。このため、エアバッグ本体の開口部周りの補強を強化するために、開口部周りに多数の布片を重ね合わせて縫合するなど、エアバッグ本体自体で開口部周辺を堅牢に補強する必要があった。この補強のために、エアバッグ本体の構造が複雑化し、エアバッグ本体の製造に手間がかかり、製品のコストアップを招いていた。
【０００９】
本発明は上記従来の課題に鑑みて創案されたものであって、ボルト付きのリテーナを廃止して車両用エアバッグを組み立てることが可能であって、重量を軽減することができると共に、エアバッグクッションを車両側固定部位に健全かつ強固に固定することが可能で、当該エアバッグクッションの構造簡素化、生産性向上、並びにコスト低減を達成でき、エコロジーや省資源化に資する車両用エアバッグのインフレータ構造を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【００１０】
本発明にかかる車両用エアバッグのインフレータ構造は、外殻がプレッシャーベッセルで形成され、ボルト挿通孔が形成されたエアバッグクッション内部に全体が収容されるディスク形状のインフレータ本体と、該プレッシャーベッセルの底面に直接一体的に接合され、該ボルト挿通孔から該エアバッグクッション外方へ突出されて車両側固定部位に締結される取付用ボルトとを備えたことを特徴とする。
【００１１】
該プレッシャーベッセルの該底面は、該車両側固定部位への締結で該取付用ボルトに発生するテンションにより、該エアバッグクッションを該車両側固定部位に押圧して固定することが好ましい。
【００１２】
該取付用ボルトを、該エアバッグクッションを収容するハウジングを介して該車両側固定部位に締結することで、インフレータ本体を該車両側固定部位に固定することが望ましい。
【００１３】
該取付用ボルトは２本備えられ、各取付用ボルトの接合位置は、該プレッシャーベッセルの該底面において、これら取付用ボルトの中心線を結ぶ直線が当該底面の中心を通過するように設定されることが好ましい。
【００１４】
助手席用エアバッグの場合、該取付用ボルトの中心線を結ぶ直線が、車両の左右方向に設定されることが望ましい。運転席用エアバッグの場合、該取付用ボルトの中心線を結ぶ直線が、車両の前後方向に設定されることが好ましい。
【００１５】
該取付用ボルトは３本以上備えられ、各取付用ボルトの接合位置は、該プレッシャーベッセルの該底面において、該インフレータ本体の外形輪郭に沿う周方向にこれら取付用ボルトの中心線を結んで描かれる多角形の重心が当該底面の中心に合致するように設定されることが望ましい。
【００１６】
該取付用ボルトは、該プレッシャーベッセルの該底面において、車両前方側の設置数が車両後方側の設置数を下回らないことが好ましい。
【発明の効果】
【００１７】
本発明にかかる車両用エアバッグのインフレータ構造にあっては、ボルト付きのリテーナを廃止して車両用エアバッグを組み立てることができ、重量を軽減することができると共に、エアバッグクッションを車両側固定部位に健全かつ強固に固定することができ、当該エアバッグクッションの構造簡素化、生産性向上、並びにコスト低減を達成できて、エコロジーや省資源化に資することができる。
【図面の簡単な説明】
【００１８】
【図１】本発明に係る車両用エアバッグのインフレータ構造の好適な実施形態を示す側断面図である。
【図２】図１のインフレータ本体及び取付用ボルトの接合状態を説明する説明図である。
【図３】本発明に係る車両用エアバッグのインフレータ構造に適用されるインフレータ本体及び取付用ボルトの接合状態の変形例を説明する説明図である。
【図４】本発明に係る車両用エアバッグのインフレータ構造の設置状態の変形例を説明する説明図である。
【発明を実施するための形態】
【００１９】
以下に、本発明にかかる車両用エアバッグのインフレータ構造の好適な実施形態を、添付図面を参照して詳細に説明する。図１及び図２に示すように、インフレータガスを噴出するインフレータ本体１は、平面外形輪郭が円形状もしくは多角形状で、高さが低いディスク形状に形成される。インフレータ本体１の周側面には、周方向に沿って、複数のガス噴出孔２が横向きに形成される。
【００２０】
インフレータ本体１の内部には、インフレータガスを発生させる際に急速燃焼される火薬が充填されている。インフレータ本体１の外殻は、従来周知のように、火薬の燃焼作用による圧力やそれによって発生するインフレータガスの圧力で破壊・飛散することのない、相当の強度で形成されている。すなわち、インフレータ本体１の外殻は、肉厚な金属材料により、プレッシャーベッセル（耐圧容器）３として形成されている。
【００２１】
プレッシャーベッセル３を備えたインフレータ本体１は、全体がインフレータガスで展開膨張するエアバッグクッション５内部に収容される。エアバッグクッション５は、従来周知のように、ファブリック製で、袋状に形成されている。インフレータ本体１は、袋状のエアバッグクッション５に内蔵される。
【００２２】
インフレータ本体１のプレッシャーベッセル３は、底面３ａが平坦面で形成される。プレッシャーベッセル３の底面３ａには直接、取付用ボルト４が溶接などにより、一体的に接合される。取付用ボルト４は、一端がプレッシャーベッセル３の底面３ａに接合され、当該底面３ａから下方へ向かって突出される。取付用ボルト４は、インフレータ本体１の平面外形輪郭内に納まる配置で設けられる。図示例にあっては、取付用ボルト４は、２本並設されているが、取付用ボルト４の本数は２本に限られない。
【００２３】
取付用ボルト４が２本の場合、各取付用ボルト４のボルト軸方向の中心線Ａは、プレッシャーベッセル３の底面３ａに向かう。プレッシャーベッセル３の底面３ａにおいて、これら２本の取付用ボルト４の中心線Ａが底面３ａと交わる位置（以下、「交点位置」という）を結ぶ直線Ｂが、当該プレッシャーベッセル３の底面３ａの中心Ｃを通過するように、取付用ボルト４の接合位置が設定される。交点位置を結ぶ直線Ｂは、助手席用エアバッグの場合には、車両の左右方向（車両の幅方向）に設定され、運転席用エアバッグの場合には、車両の前後方向（車両の長さ方向）に設定される。
【００２４】
エアバッグクッション５には、内部に収容したインフレータ本体１に接合した２つの取付用ボルト４をエアバッグクッション５外方へ突出させるために、２つのボルト挿通孔５ａが形成される。これらボルト挿通孔５ａは、取付用ボルト４を挿通し得るように、当該取付用ボルト４の外径よりも僅かに大きな孔径で形成される。エアバッグクッション５には、唯一の欠損部となるボルト挿通孔５ａを補強する補強構造が備えられる。
【００２５】
補強構造としては例えば、取付用ボルト４を通すためのボルト通し孔６ａを有する一枚から数枚の補強布６を、エアバッグクッション５のボルト挿通孔５ａ周辺に、ボルト通し孔６ａをボルト挿通孔５ａに合わせて、縫合などにより接合する。補強布６は、各取付用ボルト４それぞれに１セットずつで、２セット用いてもよいし、あるいは２本の取付用ボルト４両方に亘る大きな外形寸法で形成して、１セットで用いるようにしてもよい。
【００２６】
インフレータ本体１を内蔵したエアバッグクッション５は、上方開口部７ａを有するボックス状のハウジング７に収容される。ハウジング７の平坦な底面７ｂには、エアバッグクッション５から突出する取付用ボルト４の貫通孔７ｃが形成され、この貫通孔７ｃに取付用ボルト４が貫通される。この際、エアバッグクッション５を介して、プレッシャーベッセル３の底面３ａがハウジング７の底面７ｂに押し当てられる。
【００２７】
ハウジング７は、必要に応じてブラケットなどを介して、クロスビームなどの車両側固定部位８に搭載される。車両側固定部位８には、取付用ボルト４を挿通するボルト孔（図示せず）が形成され、このボルト孔に取付用ボルト４が挿通される。ボルト孔に挿通された取付用ボルト４には、ナット９が螺合される。取付用ボルト４にナット９を螺合することにより、車両側固定部位８に、ブラケット等を介して、ハウジング７が締結固定され、またハウジング７に収容したエアバッグクッション５が、内部のインフレータ本体１と共に、締結固定される。
【００２８】
取付用ボルト４を、ハウジング７にナット９で締結することにより、インフレータ本体１をハウジング７に固定するようにしてもよい。この場合、ハウジング７は別途、ブラケットなどを介して車両側固定部位８に固定支持される。
【００２９】
いずれにしても、取付用ボルト４による締結作用で、インフレータ本体１を車両側固定部位８もしくはハウジング７に固定する。この締結作用によって取付用ボルト４に発生するテンションＴによって、プレッシャーベッセル３の底面３ａは、エアバッグクッション５を車両側固定部位８やハウジング７の底面７ｂに押圧して固定する。
【００３０】
次に、本実施形態に係る車両用エアバッグのインフレータ構造の作用について説明する。インフレータ構造自体は、プレッシャーベッセル３の底面３ａに取付用ボルト４を直接一体的に接合することで得られる。
【００３１】
車両への組み付けについて説明すると、まず、補強布６をボルト挿通孔５ａ周辺に接合したエアバッグクッション５内部に、インフレータ本体１を収容し、取付用ボルト４をボルト挿通孔５ａからエアバッグクッション５外方へ突出させる。次いで、プレッシャーベッセル３の底面３ａをハウジング７の底面７ｂに押し当てるようにして、エアバッグクッション５をハウジング７内に収容し、取付用ボルト４をボルト貫通孔７ｃから突出させる。これにより、エアバッグモジュールが構成される。
【００３２】
その後、車両側固定部位８のボルト孔に取付用ボルト４を挿通し、取付用ボルト４にナット９を螺合することで、車両側固定部位８にエアバッグモジュールを締結する。
【００３３】
取付用ボルト４にナット９を螺合して、当該取付用ボルト４を車両側固定部位８やハウジング７に締結すると、取付用ボルト４にテンションＴが発生する。このテンションＴにより、プレッシャーベッセル３の底面３ａは、車両側固定部位８及びハウジング７に向かって牽引されることとなり、エアバッグクッション５を車両側固定部位８等に押圧して固定する。
【００３４】
エアバッグクッション５が展開膨張する際、すなわちインフレータ本体１内部の火薬の急速燃焼によりインフレータガスが発生する際、プレッシャーベッセル３は、これら燃焼作用による圧力及びインフレータガス圧力に対して、剛強な耐圧容器として機能する。剛強なプレッシャーベッセル３と、プレッシャーベッセル３に直接一体的に接合された取付用ボルト４と、取付用ボルト４と締結された車両側固定部位８とは、背景技術のように変形しやすいボルト付きリテーナによる取付構造と異なり、一体性が高く剛強な構造であるので、これら急速燃焼に伴う圧力等や膨張展開するエアバッグクッション５の膨張圧力に対して、高い強度で確実に抵抗する。
【００３５】
詳細には、取付用ボルト４は、プレッシャーベッセル３の底面３ａに接合されて、ボルト付きリテーナのボルト間隔よりも、明らかに狭い間隔で配置されるので、車両側固定部位８に対する取付強度を増大することができる。プレッシャーベッセル３の底面３ａが車両側固定部位８側に押し当てられるので、環状のリテーナを押し当てる場合よりも、インフレータ本体１の車両側固定部位８への押さえ込み面積を拡張することができる。
【００３６】
このように、インフレータ本体１に直接一体的に接合した取付用ボルト４で、当該インフレータ本体１と車両側固定部位８とを締結することにより、剛強な耐圧容器を備えるインフレータ本体１自体が変形し難いことに加えて、取付強度を増大できると共に、押さえ込み面積を拡張することができ、インフレータ本体１の設置箇所周辺の歪みや変形を押さえることができて、燃焼作用に伴う圧力やガス圧力、膨張圧力を確実かつ十分に受け止めることができる。
【００３７】
同時に、エアバッグクッション５を車両側固定部位８やハウジング７に押さえ込む面積も拡張することができる。エアバッグクッション５を、プレッシャーベッセル３の底面３ａで車両側固定部位８等に広範囲に押圧して固定することができるので、エアバッグクッション５自体の補強も軽減することができる。
【００３８】
さらに、エアバッグクッション５の欠損部はボルト挿通孔５ａ程度なので、背景技術のようにインフレータの下半球部を露出する開口部を設ける場合と異なり、エアバッグクッション５自体の強度も増強することができる。このようにエアバッグクッション５の強度を増大できるので、ボルト挿通孔５ａ周辺については、一枚から数枚の補強布６を重ねる程度で十分な補強を確保することができる。
【００３９】
以上により、エアバッグクッション５の展開膨張性能を適正に確保することができ、適切な乗員保護性能を保証することができる。さらに、ボルト付きリテーナを廃止することができるため、軽量化を達成することができる。
【００４０】
以上説明した本実施形態に係る車両用エアバッグのインフレータ構造にあっては、外殻がプレッシャーベッセル３で形成されるディスク形状のインフレータ本体１の底面３ａに、直接一体的に取付用ボルト４を接合したので、ボルト付きのリテーナを廃止して車両用エアバッグを組み立てることができ、重量を軽減することができる。また、取付用ボルト４を有するインフレータ本体１全体をエアバッグクッション５内部に収容して、取付用ボルト４により、インフレータ本体１と共にエアバッグクッション５を車両側固定部位８に締結するようにしたので、エアバッグクッション５を車両側固定部位８に健全かつ強固に固定することができ、当該エアバッグクッション５の補強構造を簡素化して、生産性向上及びコスト低減を達成でき、エコロジーや省資源化に資することができる。
【００４１】
また、取付用ボルト４の中心線（交点位置）Ａを結ぶ直線Ｂが、プレッシャーベッセル３の底面３ａの中心Ｃを通過するように、取付用ボルト４の取付位置を設定したので、プレッシャーベッセル３の底面３ａに対し、取付用ボルト４を均等にバランスよく配置することができる。この配置により、急速燃焼による圧力やガス圧力を、車両側固定部位８に均等に分散して伝達することができ、ガス噴き出し時に、ディスク形状のインフレータ本体１が傾いてしまうなどの事態を防止できて、適切にエアバッグクッション５を展開膨張させることができる。
【００４２】
助手席用エアバッグの場合、上記直線Ｂを車両の左右方向に設定したので、エアバッグクッション５の展開膨張方向を確実に車両後方に向けることができ、エアバッグクッション５の作動安定性を向上できる。
【００４３】
運転席用エアバッグの場合、上記直線Ｂを車両の前後方向に設定したので、エアバッグクッション５の展開膨張方向を確実に運転者に向けることができ、エアバッグクッション５の作動安定性を向上できる。
【００４４】
図３には、上記実施形態の変形例が示されている。プレッシャーベッセル３の底面３ａに取付用ボルト４を３本以上、複数設ける場合である。上記実施形態と同様、各取付用ボルト４のボルト軸方向の中心線Ａは、プレッシャーベッセル３の底面３ａに向かう。
【００４５】
本変形例では、プレッシャーベッセル３の底面３ａにおいて、インフレータ本体１（当該底面３ａ）の外形輪郭に沿う周方向、図示例にあっては円周方向に、複数本の取付用ボルト４の交点位置を結んで描かれる多角形の重心Ｇが、底面３ａの中心Ｃに合致するように、取付用ボルト４の取付位置が設定される。
【００４６】
これにより、取付用ボルト４が３本以上の場合であっても、プレッシャーベッセル３の底面３ａに対し、取付用ボルト４を均等にバランスよく配置することができる。従って、上記実施形態と同様に、適切にエアバッグクッション５を展開膨張させることができる。
【００４７】
取付用ボルト４を３本以上とした場合は、図４のインストルメントパネルＰ内部の様子で示すように、車両前後方向において、取付用ボルト４は、プレッシャーベッセル３の底面３ａにおいて、車両前方側の設置数が車両後方側の設置数を下回らないようにすることが好ましい。このようにすれば、インフレータ本体１を、車両後方へ向けて強固に固定することができ、エアバッグクッション５の展開膨張方向を確実に車両後方に向けることができて、エアバッグクッション５の作動安定性を向上できる。
【００４８】
以上に述べた車両用エアバッグのインフレータ構造は、本発明の好ましい例であって、これ以外の実施形態例も、各種の方法で実施または遂行できる。特に、本願明細書中に限定される主旨の記載がない限り、この発明は、添付図面に示した詳細な部品の形状、大きさおよび構成配置等に制約されるものではない。また、本願明細書中に用いられた表現および用語は、説明を目的としたもので、特に限定される主旨の記載がない限り、それに限定されるものではない。
【符号の説明】
【００４９】
１ ディスク形状のインフレータ本体
３ プレッシャーベッセル
３ａ プレッシャーベッセルの底面
４ 取付用ボルト
５ エアバッグクッション
５ａ ボルト挿通孔
７ ハウジング
８ 車両側固定部位
Ａ 取付用ボルトの中心線
Ｂ 取付用ボルトの中心線を結ぶ直線
Ｃ プレッシャーベッセル底面の中心
Ｇ 取付用ボルトの中心線を結んで描かれる多角形の重心
Ｔ テンション
【技術分野】
【０００１】
本発明は、ボルト付きのリテーナを廃止して車両用エアバッグを組み立てることが可能であって、重量を軽減することができると共に、エアバッグクッションを車両側固定部位に健全かつ強固に固定することが可能で、当該エアバッグクッションの構造簡素化、生産性向上、並びにコスト低減を達成でき、エコロジーや省資源化に資する車両用エアバッグのインフレータ構造に関する。
【背景技術】
【０００２】
車両用エアバッグとして、例えば特許文献１が知られている。特許文献１の「エアバッグ装置」は、エアバッグ本体とインフレータとを有するエアバッグモジュールを、取付具を介してリインフォースメントに取り付けたエアバッグ装置であって、前記取付具は、前記エアバッグモジュールの収容ケースと、前記エアバッグモジュール及び前記収容ケースを支持して固定する脚部を有したブラケットと、前記収容ケースの底部から突出した突出部材とを備えている。また、前記ブラケットの前記脚部は傾斜部を有し、前記突出部材は、前記収容ケースが衝撃を受けて前記ブラケットを変形させるときに、前記脚部の前記傾斜部を押圧して前記ブラケットの変形を補助するように構成されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【０００３】
【特許文献１】特開２００８−１１０７３７号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【０００４】
特許文献１では、インフレータは取付用のフランジを有している。フランジは、エアバッグ本体内部に収容される枠体状のリテーナのボルトを利用して、当該リテーナ、エアバッグ本体、エアバッグを収容する収容ケース、並びにブラケットに、ナットで結合する。車両側固定部位であるリインフォースメントに固定部を設け、この固定部にブラケットを介して、インフレータやエアバッグ本体等を固定する。
【０００５】
インフレータは、リテーナに取り囲まれる上半球部がエアバッグ本体内部に収容されると共に、下半球部が、エアバッグ本体及び収容ケースの開口部から突出して、それらの外部に露出される。
【０００６】
インフレータは、火薬の急速な燃焼によりインフレータガスを発生する。インフレータは、急速燃焼作用で衝撃を発生する。従って、インフレータは、リインフォースメントに強固に支持固定する必要がある。インフレータをリインフォースメントで強固に支持固定するため、インフレータのフランジに通したリテーナのボルトで、リインフォースメント側との結合を確保していた。このため、特許文献１の構造では、ボルト付きのリテーナが必須であった。ボルト付きのリテーナが必要なため、重量が重くなるという課題があった。
【０００７】
エアバッグ本体には、インフレータの下半球部が露出する大きな開口部が形成されている。リテーナは、インフレータのフランジ及びエアバッグ本体の開口部周辺を収容ケース側へ押さえ込んで、当該開口部を補強する。しかし、リテーナは、開口部の外周縁を環状に押さえ込む程度であり、押さえ込み面積が狭く、エアバッグ本体の開口部周辺を十分に補強することはできなかった。また、リテーナは、インフレータを取り囲む枠体状であるため、強度不足であり、インフレータでの急速燃焼作用による衝撃やエアバッグ本体の膨張圧力で、容易に変形してしまう。
【０００８】
要するに、リテーナによる開口部周辺の補強は、エアバッグ本体を押さえ込む面積が狭く、かつ簡単に変形してしまうために、十分ではなかった。このため、エアバッグ本体の開口部周りの補強を強化するために、開口部周りに多数の布片を重ね合わせて縫合するなど、エアバッグ本体自体で開口部周辺を堅牢に補強する必要があった。この補強のために、エアバッグ本体の構造が複雑化し、エアバッグ本体の製造に手間がかかり、製品のコストアップを招いていた。
【０００９】
本発明は上記従来の課題に鑑みて創案されたものであって、ボルト付きのリテーナを廃止して車両用エアバッグを組み立てることが可能であって、重量を軽減することができると共に、エアバッグクッションを車両側固定部位に健全かつ強固に固定することが可能で、当該エアバッグクッションの構造簡素化、生産性向上、並びにコスト低減を達成でき、エコロジーや省資源化に資する車両用エアバッグのインフレータ構造を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【００１０】
本発明にかかる車両用エアバッグのインフレータ構造は、外殻がプレッシャーベッセルで形成され、ボルト挿通孔が形成されたエアバッグクッション内部に全体が収容されるディスク形状のインフレータ本体と、該プレッシャーベッセルの底面に直接一体的に接合され、該ボルト挿通孔から該エアバッグクッション外方へ突出されて車両側固定部位に締結される取付用ボルトとを備えたことを特徴とする。
【００１１】
該プレッシャーベッセルの該底面は、該車両側固定部位への締結で該取付用ボルトに発生するテンションにより、該エアバッグクッションを該車両側固定部位に押圧して固定することが好ましい。
【００１２】
該取付用ボルトを、該エアバッグクッションを収容するハウジングを介して該車両側固定部位に締結することで、インフレータ本体を該車両側固定部位に固定することが望ましい。
【００１３】
該取付用ボルトは２本備えられ、各取付用ボルトの接合位置は、該プレッシャーベッセルの該底面において、これら取付用ボルトの中心線を結ぶ直線が当該底面の中心を通過するように設定されることが好ましい。
【００１４】
助手席用エアバッグの場合、該取付用ボルトの中心線を結ぶ直線が、車両の左右方向に設定されることが望ましい。運転席用エアバッグの場合、該取付用ボルトの中心線を結ぶ直線が、車両の前後方向に設定されることが好ましい。
【００１５】
該取付用ボルトは３本以上備えられ、各取付用ボルトの接合位置は、該プレッシャーベッセルの該底面において、該インフレータ本体の外形輪郭に沿う周方向にこれら取付用ボルトの中心線を結んで描かれる多角形の重心が当該底面の中心に合致するように設定されることが望ましい。
【００１６】
該取付用ボルトは、該プレッシャーベッセルの該底面において、車両前方側の設置数が車両後方側の設置数を下回らないことが好ましい。
【発明の効果】
【００１７】
本発明にかかる車両用エアバッグのインフレータ構造にあっては、ボルト付きのリテーナを廃止して車両用エアバッグを組み立てることができ、重量を軽減することができると共に、エアバッグクッションを車両側固定部位に健全かつ強固に固定することができ、当該エアバッグクッションの構造簡素化、生産性向上、並びにコスト低減を達成できて、エコロジーや省資源化に資することができる。
【図面の簡単な説明】
【００１８】
【図１】本発明に係る車両用エアバッグのインフレータ構造の好適な実施形態を示す側断面図である。
【図２】図１のインフレータ本体及び取付用ボルトの接合状態を説明する説明図である。
【図３】本発明に係る車両用エアバッグのインフレータ構造に適用されるインフレータ本体及び取付用ボルトの接合状態の変形例を説明する説明図である。
【図４】本発明に係る車両用エアバッグのインフレータ構造の設置状態の変形例を説明する説明図である。
【発明を実施するための形態】
【００１９】
以下に、本発明にかかる車両用エアバッグのインフレータ構造の好適な実施形態を、添付図面を参照して詳細に説明する。図１及び図２に示すように、インフレータガスを噴出するインフレータ本体１は、平面外形輪郭が円形状もしくは多角形状で、高さが低いディスク形状に形成される。インフレータ本体１の周側面には、周方向に沿って、複数のガス噴出孔２が横向きに形成される。
【００２０】
インフレータ本体１の内部には、インフレータガスを発生させる際に急速燃焼される火薬が充填されている。インフレータ本体１の外殻は、従来周知のように、火薬の燃焼作用による圧力やそれによって発生するインフレータガスの圧力で破壊・飛散することのない、相当の強度で形成されている。すなわち、インフレータ本体１の外殻は、肉厚な金属材料により、プレッシャーベッセル（耐圧容器）３として形成されている。
【００２１】
プレッシャーベッセル３を備えたインフレータ本体１は、全体がインフレータガスで展開膨張するエアバッグクッション５内部に収容される。エアバッグクッション５は、従来周知のように、ファブリック製で、袋状に形成されている。インフレータ本体１は、袋状のエアバッグクッション５に内蔵される。
【００２２】
インフレータ本体１のプレッシャーベッセル３は、底面３ａが平坦面で形成される。プレッシャーベッセル３の底面３ａには直接、取付用ボルト４が溶接などにより、一体的に接合される。取付用ボルト４は、一端がプレッシャーベッセル３の底面３ａに接合され、当該底面３ａから下方へ向かって突出される。取付用ボルト４は、インフレータ本体１の平面外形輪郭内に納まる配置で設けられる。図示例にあっては、取付用ボルト４は、２本並設されているが、取付用ボルト４の本数は２本に限られない。
【００２３】
取付用ボルト４が２本の場合、各取付用ボルト４のボルト軸方向の中心線Ａは、プレッシャーベッセル３の底面３ａに向かう。プレッシャーベッセル３の底面３ａにおいて、これら２本の取付用ボルト４の中心線Ａが底面３ａと交わる位置（以下、「交点位置」という）を結ぶ直線Ｂが、当該プレッシャーベッセル３の底面３ａの中心Ｃを通過するように、取付用ボルト４の接合位置が設定される。交点位置を結ぶ直線Ｂは、助手席用エアバッグの場合には、車両の左右方向（車両の幅方向）に設定され、運転席用エアバッグの場合には、車両の前後方向（車両の長さ方向）に設定される。
【００２４】
エアバッグクッション５には、内部に収容したインフレータ本体１に接合した２つの取付用ボルト４をエアバッグクッション５外方へ突出させるために、２つのボルト挿通孔５ａが形成される。これらボルト挿通孔５ａは、取付用ボルト４を挿通し得るように、当該取付用ボルト４の外径よりも僅かに大きな孔径で形成される。エアバッグクッション５には、唯一の欠損部となるボルト挿通孔５ａを補強する補強構造が備えられる。
【００２５】
補強構造としては例えば、取付用ボルト４を通すためのボルト通し孔６ａを有する一枚から数枚の補強布６を、エアバッグクッション５のボルト挿通孔５ａ周辺に、ボルト通し孔６ａをボルト挿通孔５ａに合わせて、縫合などにより接合する。補強布６は、各取付用ボルト４それぞれに１セットずつで、２セット用いてもよいし、あるいは２本の取付用ボルト４両方に亘る大きな外形寸法で形成して、１セットで用いるようにしてもよい。
【００２６】
インフレータ本体１を内蔵したエアバッグクッション５は、上方開口部７ａを有するボックス状のハウジング７に収容される。ハウジング７の平坦な底面７ｂには、エアバッグクッション５から突出する取付用ボルト４の貫通孔７ｃが形成され、この貫通孔７ｃに取付用ボルト４が貫通される。この際、エアバッグクッション５を介して、プレッシャーベッセル３の底面３ａがハウジング７の底面７ｂに押し当てられる。
【００２７】
ハウジング７は、必要に応じてブラケットなどを介して、クロスビームなどの車両側固定部位８に搭載される。車両側固定部位８には、取付用ボルト４を挿通するボルト孔（図示せず）が形成され、このボルト孔に取付用ボルト４が挿通される。ボルト孔に挿通された取付用ボルト４には、ナット９が螺合される。取付用ボルト４にナット９を螺合することにより、車両側固定部位８に、ブラケット等を介して、ハウジング７が締結固定され、またハウジング７に収容したエアバッグクッション５が、内部のインフレータ本体１と共に、締結固定される。
【００２８】
取付用ボルト４を、ハウジング７にナット９で締結することにより、インフレータ本体１をハウジング７に固定するようにしてもよい。この場合、ハウジング７は別途、ブラケットなどを介して車両側固定部位８に固定支持される。
【００２９】
いずれにしても、取付用ボルト４による締結作用で、インフレータ本体１を車両側固定部位８もしくはハウジング７に固定する。この締結作用によって取付用ボルト４に発生するテンションＴによって、プレッシャーベッセル３の底面３ａは、エアバッグクッション５を車両側固定部位８やハウジング７の底面７ｂに押圧して固定する。
【００３０】
次に、本実施形態に係る車両用エアバッグのインフレータ構造の作用について説明する。インフレータ構造自体は、プレッシャーベッセル３の底面３ａに取付用ボルト４を直接一体的に接合することで得られる。
【００３１】
車両への組み付けについて説明すると、まず、補強布６をボルト挿通孔５ａ周辺に接合したエアバッグクッション５内部に、インフレータ本体１を収容し、取付用ボルト４をボルト挿通孔５ａからエアバッグクッション５外方へ突出させる。次いで、プレッシャーベッセル３の底面３ａをハウジング７の底面７ｂに押し当てるようにして、エアバッグクッション５をハウジング７内に収容し、取付用ボルト４をボルト貫通孔７ｃから突出させる。これにより、エアバッグモジュールが構成される。
【００３２】
その後、車両側固定部位８のボルト孔に取付用ボルト４を挿通し、取付用ボルト４にナット９を螺合することで、車両側固定部位８にエアバッグモジュールを締結する。
【００３３】
取付用ボルト４にナット９を螺合して、当該取付用ボルト４を車両側固定部位８やハウジング７に締結すると、取付用ボルト４にテンションＴが発生する。このテンションＴにより、プレッシャーベッセル３の底面３ａは、車両側固定部位８及びハウジング７に向かって牽引されることとなり、エアバッグクッション５を車両側固定部位８等に押圧して固定する。
【００３４】
エアバッグクッション５が展開膨張する際、すなわちインフレータ本体１内部の火薬の急速燃焼によりインフレータガスが発生する際、プレッシャーベッセル３は、これら燃焼作用による圧力及びインフレータガス圧力に対して、剛強な耐圧容器として機能する。剛強なプレッシャーベッセル３と、プレッシャーベッセル３に直接一体的に接合された取付用ボルト４と、取付用ボルト４と締結された車両側固定部位８とは、背景技術のように変形しやすいボルト付きリテーナによる取付構造と異なり、一体性が高く剛強な構造であるので、これら急速燃焼に伴う圧力等や膨張展開するエアバッグクッション５の膨張圧力に対して、高い強度で確実に抵抗する。
【００３５】
詳細には、取付用ボルト４は、プレッシャーベッセル３の底面３ａに接合されて、ボルト付きリテーナのボルト間隔よりも、明らかに狭い間隔で配置されるので、車両側固定部位８に対する取付強度を増大することができる。プレッシャーベッセル３の底面３ａが車両側固定部位８側に押し当てられるので、環状のリテーナを押し当てる場合よりも、インフレータ本体１の車両側固定部位８への押さえ込み面積を拡張することができる。
【００３６】
このように、インフレータ本体１に直接一体的に接合した取付用ボルト４で、当該インフレータ本体１と車両側固定部位８とを締結することにより、剛強な耐圧容器を備えるインフレータ本体１自体が変形し難いことに加えて、取付強度を増大できると共に、押さえ込み面積を拡張することができ、インフレータ本体１の設置箇所周辺の歪みや変形を押さえることができて、燃焼作用に伴う圧力やガス圧力、膨張圧力を確実かつ十分に受け止めることができる。
【００３７】
同時に、エアバッグクッション５を車両側固定部位８やハウジング７に押さえ込む面積も拡張することができる。エアバッグクッション５を、プレッシャーベッセル３の底面３ａで車両側固定部位８等に広範囲に押圧して固定することができるので、エアバッグクッション５自体の補強も軽減することができる。
【００３８】
さらに、エアバッグクッション５の欠損部はボルト挿通孔５ａ程度なので、背景技術のようにインフレータの下半球部を露出する開口部を設ける場合と異なり、エアバッグクッション５自体の強度も増強することができる。このようにエアバッグクッション５の強度を増大できるので、ボルト挿通孔５ａ周辺については、一枚から数枚の補強布６を重ねる程度で十分な補強を確保することができる。
【００３９】
以上により、エアバッグクッション５の展開膨張性能を適正に確保することができ、適切な乗員保護性能を保証することができる。さらに、ボルト付きリテーナを廃止することができるため、軽量化を達成することができる。
【００４０】
以上説明した本実施形態に係る車両用エアバッグのインフレータ構造にあっては、外殻がプレッシャーベッセル３で形成されるディスク形状のインフレータ本体１の底面３ａに、直接一体的に取付用ボルト４を接合したので、ボルト付きのリテーナを廃止して車両用エアバッグを組み立てることができ、重量を軽減することができる。また、取付用ボルト４を有するインフレータ本体１全体をエアバッグクッション５内部に収容して、取付用ボルト４により、インフレータ本体１と共にエアバッグクッション５を車両側固定部位８に締結するようにしたので、エアバッグクッション５を車両側固定部位８に健全かつ強固に固定することができ、当該エアバッグクッション５の補強構造を簡素化して、生産性向上及びコスト低減を達成でき、エコロジーや省資源化に資することができる。
【００４１】
また、取付用ボルト４の中心線（交点位置）Ａを結ぶ直線Ｂが、プレッシャーベッセル３の底面３ａの中心Ｃを通過するように、取付用ボルト４の取付位置を設定したので、プレッシャーベッセル３の底面３ａに対し、取付用ボルト４を均等にバランスよく配置することができる。この配置により、急速燃焼による圧力やガス圧力を、車両側固定部位８に均等に分散して伝達することができ、ガス噴き出し時に、ディスク形状のインフレータ本体１が傾いてしまうなどの事態を防止できて、適切にエアバッグクッション５を展開膨張させることができる。
【００４２】
助手席用エアバッグの場合、上記直線Ｂを車両の左右方向に設定したので、エアバッグクッション５の展開膨張方向を確実に車両後方に向けることができ、エアバッグクッション５の作動安定性を向上できる。
【００４３】
運転席用エアバッグの場合、上記直線Ｂを車両の前後方向に設定したので、エアバッグクッション５の展開膨張方向を確実に運転者に向けることができ、エアバッグクッション５の作動安定性を向上できる。
【００４４】
図３には、上記実施形態の変形例が示されている。プレッシャーベッセル３の底面３ａに取付用ボルト４を３本以上、複数設ける場合である。上記実施形態と同様、各取付用ボルト４のボルト軸方向の中心線Ａは、プレッシャーベッセル３の底面３ａに向かう。
【００４５】
本変形例では、プレッシャーベッセル３の底面３ａにおいて、インフレータ本体１（当該底面３ａ）の外形輪郭に沿う周方向、図示例にあっては円周方向に、複数本の取付用ボルト４の交点位置を結んで描かれる多角形の重心Ｇが、底面３ａの中心Ｃに合致するように、取付用ボルト４の取付位置が設定される。
【００４６】
これにより、取付用ボルト４が３本以上の場合であっても、プレッシャーベッセル３の底面３ａに対し、取付用ボルト４を均等にバランスよく配置することができる。従って、上記実施形態と同様に、適切にエアバッグクッション５を展開膨張させることができる。
【００４７】
取付用ボルト４を３本以上とした場合は、図４のインストルメントパネルＰ内部の様子で示すように、車両前後方向において、取付用ボルト４は、プレッシャーベッセル３の底面３ａにおいて、車両前方側の設置数が車両後方側の設置数を下回らないようにすることが好ましい。このようにすれば、インフレータ本体１を、車両後方へ向けて強固に固定することができ、エアバッグクッション５の展開膨張方向を確実に車両後方に向けることができて、エアバッグクッション５の作動安定性を向上できる。
【００４８】
以上に述べた車両用エアバッグのインフレータ構造は、本発明の好ましい例であって、これ以外の実施形態例も、各種の方法で実施または遂行できる。特に、本願明細書中に限定される主旨の記載がない限り、この発明は、添付図面に示した詳細な部品の形状、大きさおよび構成配置等に制約されるものではない。また、本願明細書中に用いられた表現および用語は、説明を目的としたもので、特に限定される主旨の記載がない限り、それに限定されるものではない。
【符号の説明】
【００４９】
１ ディスク形状のインフレータ本体
３ プレッシャーベッセル
３ａ プレッシャーベッセルの底面
４ 取付用ボルト
５ エアバッグクッション
５ａ ボルト挿通孔
７ ハウジング
８ 車両側固定部位
Ａ 取付用ボルトの中心線
Ｂ 取付用ボルトの中心線を結ぶ直線
Ｃ プレッシャーベッセル底面の中心
Ｇ 取付用ボルトの中心線を結んで描かれる多角形の重心
Ｔ テンション
【特許請求の範囲】
【請求項１】
外殻がプレッシャーベッセルで形成され、ボルト挿通孔が形成されたエアバッグクッション内部に全体が収容されるディスク形状のインフレータ本体と、
該プレッシャーベッセルの底面に直接一体的に接合され、該ボルト挿通孔から該エアバッグクッション外方へ突出されて車両側固定部位に締結される取付用ボルトとを備えたことを特徴とする車両用エアバッグのインフレータ構造。
【請求項２】
該プレッシャーベッセルの該底面は、該車両側固定部位への締結で該取付用ボルトに発生するテンションにより、該エアバッグクッションを該車両側固定部位に押圧して固定することを特徴とする請求項１に記載の車両用エアバッグのインフレータ構造。
【請求項３】
該取付用ボルトを、該エアバッグクッションを収容するハウジングを介して該車両側固定部位に締結することで、インフレータ本体を該車両側固定部位に固定することを特徴とする請求項１又は２に記載の車両用エアバッグのインフレータ構造。
【請求項４】
該取付用ボルトは２本備えられ、各取付用ボルトの接合位置は、該プレッシャーベッセルの該底面において、これら取付用ボルトの中心線を結ぶ直線が当該底面の中心を通過するように設定されることを特徴とする請求項１〜３いずれかの項に記載の車両用エアバッグのインフレータ構造。
【請求項５】
助手席用エアバッグの場合、該取付用ボルトの中心線を結ぶ直線が、車両の左右方向に設定されることを特徴とする請求項１〜４いずれかの項に記載の車両用エアバッグのインフレータ構造。
【請求項６】
運転席用エアバッグの場合、該取付用ボルトの中心線を結ぶ直線が、車両の前後方向に設定されることを特徴とする請求項１〜４いずれかの項に記載の車両用エアバッグのインフレータ構造。
【請求項７】
該取付用ボルトは３本以上備えられ、各取付用ボルトの接合位置は、該プレッシャーベッセルの該底面において、該インフレータ本体の外形輪郭に沿う周方向にこれら取付用ボルトの中心線を結んで描かれる多角形の重心が当該底面の中心に合致するように設定されることを特徴とする請求項１〜３いずれかの項に記載の車両用エアバッグのインフレータ構造。
【請求項８】
該取付用ボルトは、該プレッシャーベッセルの該底面において、車両前方側の設置数が車両後方側の設置数を下回らないことを特徴とする請求項７に記載の車両用エアバッグのインフレータ構造。
【請求項１】
外殻がプレッシャーベッセルで形成され、ボルト挿通孔が形成されたエアバッグクッション内部に全体が収容されるディスク形状のインフレータ本体と、
該プレッシャーベッセルの底面に直接一体的に接合され、該ボルト挿通孔から該エアバッグクッション外方へ突出されて車両側固定部位に締結される取付用ボルトとを備えたことを特徴とする車両用エアバッグのインフレータ構造。
【請求項２】
該プレッシャーベッセルの該底面は、該車両側固定部位への締結で該取付用ボルトに発生するテンションにより、該エアバッグクッションを該車両側固定部位に押圧して固定することを特徴とする請求項１に記載の車両用エアバッグのインフレータ構造。
【請求項３】
該取付用ボルトを、該エアバッグクッションを収容するハウジングを介して該車両側固定部位に締結することで、インフレータ本体を該車両側固定部位に固定することを特徴とする請求項１又は２に記載の車両用エアバッグのインフレータ構造。
【請求項４】
該取付用ボルトは２本備えられ、各取付用ボルトの接合位置は、該プレッシャーベッセルの該底面において、これら取付用ボルトの中心線を結ぶ直線が当該底面の中心を通過するように設定されることを特徴とする請求項１〜３いずれかの項に記載の車両用エアバッグのインフレータ構造。
【請求項５】
助手席用エアバッグの場合、該取付用ボルトの中心線を結ぶ直線が、車両の左右方向に設定されることを特徴とする請求項１〜４いずれかの項に記載の車両用エアバッグのインフレータ構造。
【請求項６】
運転席用エアバッグの場合、該取付用ボルトの中心線を結ぶ直線が、車両の前後方向に設定されることを特徴とする請求項１〜４いずれかの項に記載の車両用エアバッグのインフレータ構造。
【請求項７】
該取付用ボルトは３本以上備えられ、各取付用ボルトの接合位置は、該プレッシャーベッセルの該底面において、該インフレータ本体の外形輪郭に沿う周方向にこれら取付用ボルトの中心線を結んで描かれる多角形の重心が当該底面の中心に合致するように設定されることを特徴とする請求項１〜３いずれかの項に記載の車両用エアバッグのインフレータ構造。
【請求項８】
該取付用ボルトは、該プレッシャーベッセルの該底面において、車両前方側の設置数が車両後方側の設置数を下回らないことを特徴とする請求項７に記載の車両用エアバッグのインフレータ構造。
【図１】
【図２】
【図３】
【図４】
【図２】
【図３】
【図４】
【公開番号】特開２０１１−１３６６０７（Ｐ２０１１−１３６６０７Ａ）
【公開日】平成２３年７月１４日（２０１１．７．１４）
【国際特許分類】
【出願番号】特願２００９−２９６２９９（Ｐ２００９−２９６２９９）
【出願日】平成２１年１２月２５日（２００９．１２．２５）
【出願人】（５０３３５８０９７）オートリブ ディベロップメント エービー (402)
【復代理人】
【識別番号】１０００９４０４２
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 知
【Ｆターム（参考）】
【公開日】平成２３年７月１４日（２０１１．７．１４）
【国際特許分類】
【出願日】平成２１年１２月２５日（２００９．１２．２５）
【出願人】（５０３３５８０９７）オートリブ ディベロップメント エービー (402)
【復代理人】
【識別番号】１０００９４０４２
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 知
【Ｆターム（参考）】
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