説明

車両用カウルトップ構造

【課題】フードの下方に隆起部を配置しても、フードに加わる荷重を吸収する車両用カウルトップ構造を提供する。
【解決手段】車両用カウルトップ構造11は、車室23の前ウインドガラス14のガラス下端34に連なり前方へ延びて、フード15の後端部54の内面に達している。後端部54の内面56近傍で上方へ隆起した隆起部21と、隆起部21に連なり前方へ延ばした後上支持部37と、後上支持部37の下方のダッシュボードアッパ61の受け部62に支持されている前下支持部42と、前下支持部42及び後上支持部37に連なって後端部54の内面56にフードリヤーシール部材67を介して当接し、且つ、フード15の外方から加わる荷重の荷重入力方向に対して車両12の前方へ傾斜させた縦壁部41と、を備えている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車室の前ウインドガラスとフロントボデーとの間に設けられている車両用カウルトップ構造に関するものである。
【背景技術】
【0002】
車両用カウルトップ構造には、フロントボデーに取付けられたフードの後方と前ウインドガラスとの間に、断面が概略逆U字形状の隆起部を設けたものがある。この隆起部はフードの上面に高さが一致して前壁の下端からフードの下方に入り込んでいる。そして、この隆起部の天部に外方から荷重が、例えば、接触した人間によって加わると、隆起部がつぶれて衝撃を吸収する。その際、隆起部に設けた薄肉部から変形して、衝撃を吸収することで、歩行者を保護している(例えば、特許文献1参照。)。
【特許文献1】特開2006−327450号公報(第8頁、図9)
【0003】
しかし、特許文献1の車両用カウルトップ構造では、フードの後方に隆起部を露出させて形成する必要があり、デザインなどの条件によっては、採用できないという問題がある。
例えば、フードで隆起部を覆うデザインの場合、荷重はフードの下面から隆起部に伝わるので、隆起部が変形し難く、衝撃を吸収し難いという問題がある。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、フードの下方に隆起部を配置しても、フードに加わる荷重を吸収する車両用カウルトップ構造を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
請求項1に係る発明は、車室の前ウインドガラスのガラス下端に連なり前方へ延びて、フロントボデーに開閉自在に取付けられたフードの後端部の内面に達し、フロントボデーと車室を隔絶しているダッシュボードのダッシュボードアッパに支持されている車両用カウルトップ構造において、前ウインドガラスのガラス下端に連なり、後端部の内面近傍で上方へ隆起した隆起部と、隆起部に連なり前方へ延ばした後上支持部と、後上支持部の下方のダッシュボードアッパの受け部に支持されている前下支持部と、前下支持部及び後上支持部に連なって後端部の内面にシール部材を介して当接し、且つ、フードの外方から加わる荷重の荷重入力方向に対して車両の前方へ傾斜させた縦壁部と、を備えていることを特徴とする。
【0006】
請求項2に係る発明は、縦壁部と前下支持部の間に連なる第1屈曲部、縦壁部と後上支持部の間に連なる第2屈曲部、後上支持部と隆起部の間に連なる第3屈曲部は、肉厚を薄くした肉盗み部が形成されていることを特徴とする。
【0007】
請求項3に係る発明では、縦壁部は、ダッシュボードアッパの受け部より車両の後方に設けられていることを特徴とする。
【0008】
請求項4に係る発明では、前下支持部は、ダッシュボードアッパの受け部のダッシュボードアッパ前端末部に支持している合わせ部に連ねて車両の前方へ突出させたカウルトップ前端返し部を備えていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
請求項1に係る発明では、車両用カウルトップ構造は、前ウインドガラスのガラス下端に連なり、フードの後端部の内面近傍で上方へ隆起した隆起部と、隆起部に連なり前方へ延ばした後上支持部と、後上支持部の下方のダッシュボードアッパの受け部に支持されている前下支持部と、前下支持部及び後上支持部に連なって後端部の内面にシール部材を介して当接し、且つ、フードの外方から加わる荷重の荷重入力方向に対して車両の前方へ傾斜させた縦壁部と、を備えているので、縦壁部にフードの外方から加わる荷重の分力が車両の前方へ向かって発生する。この分力によって縦壁部は車両の前方へ倒れて、変形し、衝撃を吸収することができるという利点がある。
【0010】
請求項2に係る発明では、縦壁部と前下支持部の間に連なる第1屈曲部、縦壁部と後上支持部の間に連なる第2屈曲部、後上支持部と隆起部の間に連なる第3屈曲部は、肉厚を薄くした肉盗み部が形成されているので、縦壁部の高さが低くて、縦壁部が座屈など変形し難くても、各屈曲部に設けた肉盗み部が所望の荷重で変形を始める。従って、縦壁部を所望の荷重で前方へ倒すことができる。
【0011】
請求項3に係る発明では、縦壁部は、ダッシュボードアッパの受け部より車両の後方に設けられているので、受け部より車両の後方に張り出している前下支持部はより変形しやすくなる。従って、縦壁部をより確実に前方へ倒すことができる。
【0012】
請求項4に係る発明では、前下支持部は、ダッシュボードアッパの受け部のダッシュボードアッパ前端末部に支持している合わせ部に連ねて車両の前方へ突出させたカウルトップ前端返し部を備えているので、縦壁部が前方へ倒れて変形するときに、ダッシュボードアッパの受け部と前下支持部との干渉を防止することができ、縦壁部の変形をよりスムーズに行うことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
本発明を実施するための最良の形態を添付図に基づいて以下に説明する。
図1は、本発明の車両用カウルトップ構造を採用した車両前部の斜視図である。
車両用カウルトップ構造11は、車両12の車両前部13に採用され、前ウインドガラス14とフード15の間に配置され、雨水を受けて導く機能や換気のための機能を有する。また、フード15の下方に隆起部21を配置している。具体的には後述する。
【0014】
車両12は、車体22の中央の車室23と、フロントボデー24と、フロントボデー24に形成されエンジン26(図2参照)などの機器を配置しているエンジンルーム27と、エンジンルーム27をカバーするためにフロントボデー24に開閉自在に取付けられているフード15と、前ウインドガラス14上の雨水を払拭するワイパー装置31と、エンジンルーム27と車室23とを仕切るダッシュボード32(図4参照)と、を備え、ダッシュボード32に車両用カウルトップ構造11が取付けられている。
【0015】
図2は、本発明の車両用カウルトップ構造の斜視図である。
図3は、本発明の車両用カウルトップ構造及び縦壁部の斜視図である。
図4は、図1の4−4線断面図である。図1を併用して説明する。
【0016】
車両用カウルトップ構造11は、前ウインドガラス14のガラス下端34に当接しているガラス支持部36と、ガラス支持部36に連なる隆起部21と、隆起部21に連なる後上支持部37と、後上支持部37に連なる縦壁部41と、縦壁部41に連なる前下支持部42と、を備える。そして、前下支持部42と縦壁部41を接続するリブ43がそれぞれの面に直交させて、所望の間隔で取付けられている。このリブ43によって、前下支持部42及び縦壁部41の補強を図り、振動防止を含め強度を高めることができる。
【0017】
ガラス支持部36は、図4のダッシュボード32のダッシュボードロア45の上部に接続しているウインドシールドロア46とで前ウインドガラス14のガラス下端34を挟んで支持している。47はガラスシール材である。また、ワイパー装置31の駆動部51を配置するワイパー取付け部52を有し、隆起部21が一体に形成されている。
【0018】
隆起部21は、フード15の後端部54の下方に設けられ、天部55がフード15の内面56に向けて形成され、天部55に連なる前側部57が立設されている。
【0019】
前下支持部42は、ダッシュボード32のダッシュボードロア45の上部に接続されて車両12の前方(矢印a1の方向)へ延びるダッシュボードアッパ61の受け部62のダッシュボードアッパ前端末部63にアッパシール材65を介して取付けられている。66はダッシュボードアッパ61のアッパ補強部材である。
【0020】
縦壁部41は、図1のフード15とのシール性を図るシール部材であるところのフードリヤーシール部材67を取付けるためのシール取付壁であり、フードリヤーシール部材67を嵌合するシール縁71を有し、フード15の外方から(矢印a2の方向)加わる荷重Fの荷重入力方向(矢印a2の方向)に対して角度αだけ前方へ傾斜させた部位である。
角度αは、5°以上である。なお、αの最大値は、フード15の内面56を形成しているフードスチフナー72の形状など条件により、任意である。
【0021】
「荷重入力方向(矢印a2の方向)」とは、図4に示した車両12の側面視で、車両12を水平にし、水平線73に対して50°の角度である。
【0022】
フード15は、外層をなすフードスキン75と、フードスキン75の内側に取付けられて内層をなすフードスチフナー72と、フードスチフナー72に形成した平坦面76と、平坦面76に設けたシート面77と、を備えている。
【0023】
図5は、図4の5部詳細図である。図2〜図4を併用して説明する。
縦壁部41は、具体的には、フード15の平坦面76に設けたシート面77にフードリヤーシール部材67を密着させ、ダッシュボードアッパ61の受け部62又は受け壁81より車両12の後方(矢印a3の方向)へ距離Eだけ離して設けられている。言い換えると、ダッシュボードアッパ61の受け部62より前下支持部42を距離Eだけ長くして差を設けている。Hは縦壁部の高さ(長さ)である。
距離Eは、2×t以上で、最大値は任意である。tはカウルトップ構造11(縦壁部41)の肉厚である。
【0024】
前下支持部42は、具体的には、ダッシュボードアッパ61の受け部62のダッシュボードアッパ前端末部63に支持した合わせ部83より車両12の前方へ突出したカウルトップ前端返し部84を、受け部62に対して斜めに(角度θ)離して形成している。
【0025】
後上支持部37は、隆起部21の前側部57に連ねて形成され、且つ、外気取り入れ口86(図2参照)が形成されている。
【0026】
カウルトップ構造11は、詳しくは、縦壁部41と前下支持部42の間に連なる第1屈曲部91、縦壁部41と後上支持部37の間に連なる第2屈曲部92、後上支持部37と隆起部21の間に連なる第3屈曲部93は、カウルトップ構造11の肉厚tより肉厚を薄くした肉盗み部94が形成されている。
【0027】
図6は、本発明の車両用カウルトップ構造の内側を示す斜視図である。図2、図5を併用して説明する。
ガラス支持部36には、ウインドシールドロア46に接続するクリップ96が、複数形成されている。
前下支持部42の合わせ部83には、ダッシュボードアッパ61に掛止するくわえ込み爪97が、複数形成され、両端101にダッシュボードアッパ61に締結する締結孔部102(図2参照)が形成されている。
【0028】
次に、本発明の車両用カウルトップ構造の作用を説明する。
図7は、本発明の車両用カウルトップ構造の衝撃吸収の機構を説明する図である。
【0029】
車両12が、前方の対象物104に接触すると、対象物104は倒れてフード15上に落下(矢印a2の方向)して衝撃を受ける。すなわち、対象物104はフード15の外方からフード15に荷重Fを加える。
【0030】
図8は、図7の続きを説明する図である。
荷重Fがフード15に矢印a2のように加わると、フード15の平坦面76から縦壁部41に伝わり、縦壁部41は二点鎖線で示すように、前方へ変形して倒れ始める。
【0031】
図9は、図8の続きを説明する図である。図4、図5、図8を併用して説明する。
縦壁部41は、変形し、同時に前下支持部42及び後上支持部37も変形することで、衝撃を吸収する。具体的には、フード15の内側の平坦面76をフードリヤーシール部材67が密着するシート面77としたことで、縦壁部41が前方へ変形する際に、フードリヤーシール部材67やシール縁71がフード15のフードスチフナー72に干渉しない。従って、より確実に衝撃を吸収することができる。
【0032】
また、縦壁部41は、フード15の外方から(矢印a2の方向)加わる荷重Fの荷重入力方向(矢印a2の方向)に対して角度αだけ前方へ傾斜しているので、角度αによって、分力F1、分力F2が発生し、分力F2によって縦壁部41は、車両12の前方方向に倒れる。つまり、縦壁部41を変形しやすくすることができる。
【0033】
さらに、カウルトップ構造11は、第1屈曲部91、第2屈曲部92、第3屈曲部93に肉盗み部94をカウルトップ構造11の肉厚tより肉厚を薄くして形成しているので、縦壁部41に荷重が加わったときに、肉盗み部94から変形し始める。従って、縦壁部41、前下支持部42、後上支持部37を変形しやすくすることができる。
【0034】
その上、縦壁部41は、ダッシュボードアッパ61の受け部62又は受け壁81より車両12の後方(矢印a3の方向)へ距離Eだけ離して設けられているので、変形がさらに進行した場合に、前下支持部42を変形(矢印a4の方向)しやすくすることができる。
【0035】
しかも、前下支持部42は、ダッシュボードアッパ61の受け部62のダッシュボードアッパ前端末部63との合わせ部83に連ねて車両12の前方へ突出させたカウルトップ前端返し部84を備えているので、縦壁部41が前述のごとく倒れる際に、ダッシュボードアッパ61の受け部62にカウルトップ前端返し部84が干渉しない。従って、カウルトップ構造11の変形はより容易になり、フード15に加わる荷重をより確実に吸収することができる。
【0036】
図10は、吸収荷重と変形量との関係を実施例(本発明)と比較例(従来)とで比較したグラフであり、横軸を変形量とし、縦軸を吸収荷重としたものである。図9を併用して説明する。
破線は、比較例であり、例えば、特許文献1の断面が概略逆U字形状の隆起部をフードの下方に配置した構成である。
実線は、実施例である。
実施例の本発明の車両用カウルトップ構造11は、衝突初期Aから衝撃を吸収することができる。
【産業上の利用可能性】
【0037】
本発明の車両用カウルトップ構造は、車両に好適である。
【図面の簡単な説明】
【0038】
【図1】本発明の車両用カウルトップ構造を採用した車両前部の斜視図である。
【図2】本発明の車両用カウルトップ構造の斜視図である。
【図3】本発明の車両用カウルトップ構造及び縦壁部の斜視図である。
【図4】図1の4−4線断面図である。
【図5】図4の5部詳細図である。
【図6】本発明の車両用カウルトップ構造の内側を示す斜視図である。
【図7】本発明の車両用カウルトップ構造の衝撃吸収の機構を説明する図である。
【図8】図7の続きを説明する図である。
【図9】図8の続きを説明する図である。
【図10】吸収荷重と変形量との関係を実施例(本発明)と比較例(従来)とで比較したグラフである。
【符号の説明】
【0039】
11…車両用カウルトップ構造、12…車両、14…前ウインドガラス、15…フード、21…隆起部、23…車室、24…フロントボデー、32…ダッシュボード、34…ガラス下端、37…後上支持部、41…縦壁部、42…前下支持部、54…後端部、56…フードの内面、61…ダッシュボードアッパ、62…ダッシュボードアッパの受け部、63…ダッシュボードアッパ前端末部、67…シール部材(フードリヤーシール部材)、83…合わせ部、84…カウルトップ前端返し部、91…第1屈曲部、92…第2屈曲部、93…第3屈曲部、94…肉盗み部。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車室の前ウインドガラスのガラス下端に連なり前方へ延びて、フロントボデーに開閉自在に取付けられたフードの後端部の内面に達し、フロントボデーと車室を隔絶しているダッシュボードのダッシュボードアッパに支持されている車両用カウルトップ構造において、
前記前ウインドガラスのガラス下端に連なり、前記後端部の内面近傍で上方へ隆起した隆起部と、該隆起部に連なり前方へ延ばした後上支持部と、該後上支持部の下方の前記ダッシュボードアッパの受け部に支持されている前下支持部と、該前下支持部及び前記後上支持部に連なって前記後端部の内面にシール部材を介して当接し、且つ、前記フードの外方から加わる荷重の荷重入力方向に対して車両の前方へ傾斜させた縦壁部と、を備えていることを特徴とする車両用カウルトップ構造。
【請求項2】
前記縦壁部と前記前下支持部の間に連なる第1屈曲部、前記縦壁部と前記後上支持部の間に連なる第2屈曲部、前記後上支持部と前記隆起部の間に連なる第3屈曲部は、肉厚を薄くした肉盗み部が形成されていることを特徴とする請求項1記載の車両用カウルトップ構造。
【請求項3】
前記縦壁部は、前記ダッシュボードアッパの受け部より車両の後方に設けられていることを特徴とする請求項1又は請求項2記載の車両用カウルトップ構造。
【請求項4】
前記前下支持部は、ダッシュボードアッパの前記受け部のダッシュボードアッパ前端末部に支持している合わせ部に連ねて車両の前方へ突出させたカウルトップ前端返し部を備えていることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の車両用カウルトップ構造。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate


【公開番号】特開2009−274622(P2009−274622A)
【公開日】平成21年11月26日(2009.11.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−128669(P2008−128669)
【出願日】平成20年5月15日(2008.5.15)
【出願人】(000005326)本田技研工業株式会社 (23,863)
【Fターム(参考)】