説明

車両用キーレスエントリ装置

【課題】ドアハンドルに組み込まれたスイッチが活動化された後、ドアの解錠に要する時間が最適に短縮されるよう設計されたキーレスエントリ装置を提供する。
【解決手段】車両用キーレスエントリ装置において、車両へのアクセス許可手続きが検証されると直ちに解錠/施錠アクチュエータ13への給電を制御し、前記スイッチを能動状態に切り替えるように車両用キーレスエントリ装置が設計されており、中央処理ユニット2は車両へのアクセス許可手続きが検証されると直ちに解錠/施錠アクチュエータへの給電を制御するようにプログラムされており、スイッチ8−11は解錠/施錠アクチュエータに給電する回路6に電気的に統合されており、該スイッチが受動状態のときには前記給電回路を開状態に維持し、該スイッチが能動状態のときには前記給電回路を閉状態に維持するように構成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両の少なくとも1つのドアを解錠するように設計された車両用キーレスエントリ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
キーレスエントリ装置は通常、携帯リモートコントロールユニットと、車両内に設置された中央処理ユニットと、送信手段とから構成されている。ここで、送信手段の一方は前記車両内に配置されており、他方は前記コントロールユニット内に組み込まれており、車両へのアクセスを許可する手続きを実現するために、中央処理ユニットとコントロールユニットの間に対話を確立するよう設計されている。
【0003】
現在の一般的なキーレスエントリ装置はさらにドアハンドルに埋め込むように設計されたスイッチを有しており、このスイッチはユーザが前記ハンドルに近づくと受動状態から能動状態へと切り替わり、この活動化の後すぐに、ユーザが携帯するコントロールユニットを識別する手続きが開始され、ドアが解錠される。
【0004】
これらのキーレスエントリ装置の欠点の1つは、ハンドルが完全に作動される前にドアが解錠されなければならないことであり、そうでなければ、このドアの閉扉機構は施錠されたままとなり、このドアの開扉が妨げられるということである。
【0005】
特に、この必要性のために、スイッチをハンドルに組み込むに際して、例えば容量センサのような反応性の高い近接センサの使用が必要とされる。しかし、これらのセンサはコストが比較的高いというだけでなく、雨、氷、地面、または環境磁場などのような環境条件に対して比較的過敏でもある。
【0006】
さらに、現在の近接センサの性能にも拘わらず、識別動作と解錠動作の実行に当てられる時間が不十分であることが多々あり、その結果、ドアはハンドルの最初の操作のあいだ解錠されないことがある(この現象は「ウォール効果」として知られている)。その場合、ドアを開けるために再度ハンドルを操作する必要がある。この種の現象は一般にユーザにはあまり認識されていない。
【0007】
「ウォール効果」に関連した欠点を克服するために、ある発展形態では、キーレスエントリ装置は、カバレッジ領域と呼ばれる車両周囲の所定の広さの領域に入るとすぐに、すなわち、ユーザがハンドルに触れるかまたは接近する前に、コントロールユニットの識別を行うことができるように設計されている。
【0008】
それに応じて、これらキーレスエントリ装置は、コントロールユニットにより識別可能な所定の起動コードから成るプリアンブルを含んだデータフレームの、車両内に設置された中央処理ユニットによる周期的送信を制御する識別手続きを実行するようにプログラムされている。この識別の後、前記コントロールユニットは待機状態から能動状態へと替わり、中央処理ユニットとの対話の確立が可能となる。
このコンセプトに従えば、識別手続きはハンドルに組み込まれたスイッチを活動化する前に行われるので、その結果、この活動化は解錠手続きのみを制御し、もはや識別手続きを制御することはない。
しかし、依然として、これらの施錠手続きに要する時間、すなわち、キーレスエントリ装置の中央処理ユニットによる情報の処理、車両内に設置された多重ネットワークへの情報の送信、車室を管理する汎用中央処理ユニットによる情報の処理、およびアクチュエータの実際の動作時間は長いままである。
【0009】
こうした理由から、ならびに、「ウォール効果」からの保護のために、内在的な欠点があるにも拘わらず、特にコストと過敏性という欠点があるにも拘わらず、現在のすべての車両が近接センサを装備している。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明はこの欠点を克服することを狙いとしており、ドアハンドルに組み込まれたスイッチが活動化された後、ドアの解錠に要する時間が最適に短縮されるよう設計されたキーレスエントリ装置を提供することを主な課題としている。このようなキーレスエントリ装置では、ユーザが手を触れることで活動化することのできる簡単なスイッチを前記ハンドルに取り付けても、「ウォール効果」の発生する危険性はなく、もはや高価な近接検出器を必要としない。
【0011】
これに応じて、本発明は前記車両の少なくとも1つのドアを解錠する車両用キーレスエントリ装置であって、ハンドルと解錠/施錠アクチュエータと該アクチュエータに給電する回路とを備えた形式のものを提供することを狙いとしている。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記課題は、車両の少なくとも1つのドアを解錠するように設計された車両用キーレスエントリ装置であって、車両はハンドルと、解錠/施錠アクチュエータと、該アクチュエータに給電する回路を備えており、前記キーレスエントリ装置は、
・携帯リモートコントロールユニット、
・車両内に設置された中央処理ユニット、
・一方は車両内に配置されており、他方はコントロールユニット内に組み込まれており、また車両へのアクセス許可手続きを実現するために、中央処理ユニットとコントロールユニットの間に対話を確立するように設計された送信手段、
・ユーザがハンドルに近づくと受動状態から能動状態へと切り替わるように設計された、ドアハンドルに埋め込まれたスイッチ
を有してなる形式の車両用キーレスエントリ装置において、前記キーレスエントリ装置は、車両へのアクセス許可手続きが検証されると直ちに解錠/施錠アクチュエータへの給電を制御し、スイッチを能動状態に切り替えるように設計されており、中央処理ユニットは車両へのアクセス許可手続きが検証されると直ちに解錠/施錠アクチュエータへの給電を制御するようにプログラムされており、前記スイッチは解錠/施錠アクチュエータに給電する回路に電気的に統合されており、該スイッチが受動状態のときには前記給電回路を開状態に維持し、該スイッチが能動状態のときには前記給電回路を閉状態に維持するように構成することにより解決される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
前記キーレスエントリ装置は、
・携帯リモートコントロールユニット、
・車両内に設置された中央処理ユニット、
・一方は前記車両内に配置されており、他方は前記コントロールユニット内に組み込まれており、車両アクセス許可手続きを実現するために、中央処理ユニットとコントロールユニットの間に対話を確立するよう設計された送信手段、
・ユーザが前記ハンドルに近づくと受動状態から能動状態へと切り替わるように設計された、ドアハンドルに埋め込まれたスイッチを有しており、
前記キーレスエントリ装置は、車両アクセス許可手続きが検証された後、解錠/施錠アクチュエータへの給電を制御し、スイッチを能動状態に切り替えるように設計されている。
【0014】
本発明によれば、キーレスエントリ装置は下記の特徴を有する:
・中央処理ユニットは車両アクセス許可手続きが検証されると直ちに解錠/施錠アクチュエータへの給電を制御するようにプログラムされている。
・スイッチは解錠/施錠アクチュエータに給電する回路に電気的に統合されており、スイッチが受動状態のときには前記給電回路は開状態を維持し、能動状態のときには前記給電回路は閉状態を維持する。
【0015】
したがって、本発明の原理はコントロールユニットの識別後直ちに解錠/施錠アクチュエータへの給電を制御し、ドアハンドルに組み込まれたスイッチの活動化の間に、このアクチュエータの実際の動作を開始させることである。なお、ドアハンドルはこの目的のために前記アクチュエータに給電する回路へ電気的に接続されている。
【0016】
この原理によれば、ドアハンドルに組み込まれたスイッチの活動化後ドアの解錠に要する時間が最適に短縮される。というのも、この時間は単にアクチュエータが解錠を実行するのに要する時間であるに過ぎないからである。
【0017】
実際、この時間は実質的にスイッチの反応性とは無関係なので、ユーザが手を触れることでアクティブにすることのできる簡単なスイッチをハンドルに備え付けても、「ウォール効果」の発生する危険性はない。
・現在の近接センサのコストよりも格段にコストが低い。
・環境条件に対する感度が非常に低く、非常に良好な動作信頼性を保証する。
【0018】
本発明の1つの有利な実施形態によれば、解錠/施錠アクチュエータに給電する回路はスイッチと前記解錠/施錠アクチュエータとの間に接続されたリレーを含んでいる。
このようなリレーの主な利点はスイッチを電気的に保護することである。さらに、このリレーは、この解錠動作をアクチュエータが実行するのに要する時間が経過する前に、ユーザがハンドルを放してしまっても、完全な解錠を保証することができる。
【0019】
本発明の別の有利な実施形態によれば、解錠/施錠アクチュエータに給電する回路は2つの入力端子と1つの出力端子を備えたフリップフロップを含んでおり、
・第1の入力端子には、中央処理ユニットが送信した制御信号が供給され、
・第2の入力端子はスイッチと直列接続されており、
・出力端子は解錠/施錠アクチュエータに接続されている。
【0020】
さらに、中央処理ユニットは、一方では、スイッチが能動状態に切り替わる間に閉信号を受信し、他方では、閉信号の受信に続く所定の期間の後にフリップフロップに宛てた再初期化信号を送出することができるように、有利には解錠/施錠アクチュエータに給電する回路に接続されている。
【0021】
これらの構成によれば、アクチュエータに電力を供給する時間を管理すること、特に、(氷等が存在する)如何なる条件においても解錠を可能にする最短の給電時間を保証することが可能である。
【0022】
本発明の他の特徴、目的、および利点は、以下の詳細な説明と、本発明の有利な実施形態を非限定的な実施例として示す添付図面とから明らかとなる。この添付図面において、図1は機能ブロック図として示された本発明によるキーレスエントリ装置を備えた車両の概略的な平面図である。
【実施例】
【0023】
図1に示されている発明は「キーレスエントリ装置」として従来より知られている装置を意図している。この種の「キーレスエントリ装置」は車両Vへのアクセスを可能にするよう設計されており、また、そうするとことが適切ならば、一般に「電子バッジ」と呼ばれる携帯リモートコントロールユニット1の識別の結果として、車両をスタートアップさせる。
まず、この電子バッジ1は1aのようなアンテナに接続された低周波(LP)受信器と高周波(RF)送信器とが組み込まれた中央処理ユニットを有している。
【0024】
この電子バッジ1とは別に、キーレスエントリ装置は、図1に示されているように、車両に取り付けられた下記の要素を有している:
・キーレス処理ユニットと呼ばれる専用の中央処理ユニット2、これは車両Vに取り付けられており、特に低周波(LF)送信器と高周波(RF)受信器を備えている、
・3のような送信アンテナ、これは車両Vの周りにこのアンテナとキーレス処理ユニット2の低周波(LF)送信器とにより広さの定められるカバレッジ領域を画定する、
・各ドアのハンドルPに組み込まれたスイッチ8−11、したがって図1に示されている4ドア車両Vには4つのスイッチが存在する。
【0025】
加えて、このキーレスエントリ装置のキーレス処理ユニット2は、多重ネットワーク5を介して、車室コンピュータと呼ばれる車室管理用の汎用中央処理ユニット4に接続されており、車室コンピュータは、本発明のコンテキストでは、特に、車両Vのドアのうちの1つの解錠/施錠モータ13に給電する回路6を制御するように設計されている。
【0026】
本発明によれば、この給電回路6の内部には並列接続された4つのスイッチ8−11が電気的に統合されているが、この給電回路6はまた2つの入力端子D,Cと1つの出力端子Qを備えたD型フリップフロップを含んでいる:
・第1の入力端子Dは車室コンピュータ4が送信した制御信号を受信するためのものであり、
・第2のクロック入力端子Cはスイッチ8−11に直列接続されており、
・出力端子Qは解錠/施錠モータ13への給電のためにリレー12に接続されている。
【0027】
さらに、キーレス処理ユニット2は、一方では、スイッチ8−11のうちの1つが閉じるとすぐに閉信号Iを受信し、他方では、閉信号の受信に続く所定の期間の後にフリップフロップ7宛ての再初期化信号Rを送出することができるように、給電回路6に接続されている。
【0028】
このキーレスエントリ装置の原理によれば、先ず第1に、キーレス処理ユニット2は、車両Vへのアクセス許可手続きが検証されるとすぐに、車室コンピュータ4によるフリップフロップ7の入力端子Dの状態を変更する信号の送信を制御するようにプログラムされている。
【0029】
さらに、その後、ユーザによるハンドルPの操作によって車両Vを開ける意図が確認されると、スイッチ8−11のうちの1つが閉じ、フリップフロップ7の第2の入力端子Cの状態が変化し、その結果として出力端子Qの状態が変化し、リレー12とモータ13への給電が生じる。
【0030】
この閉成はさらに時間遅延を開始させる閉信号Iのキーレス処理ユニット2に宛てた送信を制御する。車室コンピュータはこの時間遅延後にフリップフロップ7を再初期化する信号Rを送出する。
【0031】
本発明によれば、ドアハンドルに組み込まれたスイッチ8−11のうちの1つが活動化した後にドアの解錠に要する時間が最適に短縮される。というのも、この時間は単にモータ13が解錠を実行するのに要する時間であるに過ぎないからである。
【0032】
例として、本発明の方法に従ってこの解錠を行うのに要する平均時間はおよそ60msであるが、その一方で、現在のところ、必要とされる最短時間は150msほどである。
【図面の簡単な説明】
【0033】
【図1】機能ブロック図として示された本発明によるキーレスエントリ装置を備えた車両を概略的に示す。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両(V)の少なくとも1つのドアを解錠するように設計された車両用キーレスエントリ装置であって、
車両はハンドル(P)と、解錠/施錠アクチュエータ(13)と、該アクチュエータに給電する回路(6)を備えており、
前記キーレスエントリ装置は、
・携帯リモートコントロールユニット(1)、
・車両内に設置された中央処理ユニット(2)、
・一方は車両内に配置されており、他方はコントロールユニット(1)内に組み込まれており、また車両(V)へのアクセス許可手続きを実現するために、中央処理ユニット(2)とコントロールユニット(1)の間に対話を確立するように設計された送信手段(1a,3)、
・ユーザがハンドル(P)に近づくと受動状態から能動状態へと切り替わるように設計された、ドアハンドル(P)に埋め込まれたスイッチ(8−11)
を有してなる形式の車両用キーレスエントリ装置において、
前記キーレスエントリ装置は、車両(V)へのアクセス許可手続きが検証されると直ちに解錠/施錠アクチュエータ(13)への給電を制御し、前記スイッチ(8−11)を能動状態に切り替えるように設計されており、
中央処理ユニット(2)は車両(V)へのアクセス許可手続きが検証されると直ちに解錠/施錠アクチュエータ(13)への給電を制御するようにプログラムされており、
前記スイッチ(8−11)は解錠/施錠アクチュエータ(13)に給電する回路(6)に電気的に統合されており、該スイッチが受動状態のときには前記給電回路(6)を開状態に維持し、該スイッチが能動状態のときには前記給電回路(6)を閉状態に維持する、ことを特徴とする車両用キーレスエントリ装置。
【請求項2】
解錠/施錠アクチュエータ(13)に給電する回路(6)は前記スイッチ(8−11)と前記解錠/施錠アクチュエータ(13)との間に接続されたリレー(12)を有している、請求項1記載のキーレスエントリ装置。
【請求項3】
解錠/施錠アクチュエータに給電する回路(6)は2つの入力端子(D,C)と1つの出力端子(Q)を備えたフリップフロップ(7)を有しており、・第1の入力端子(D)には、中央処理ユニット(2)が送信した制御信号が供給され、・第2の入力端子(C)は前記スイッチ(8−11)と直列接続されており、・出力端子(Q)は解錠/施錠アクチュエータ(13)に接続されている、請求項1および2記載のキーレスエントリ装置。
【請求項4】
中央処理ユニット(2)は解錠/施錠アクチュエータに給電する回路(6)に接続されており、一方では、前記スイッチ(8−11)が能動状態に切り替わる間に閉信号(I)を受信し、他方では、閉信号の受信に続く所定の期間の後にフリップフロップ(7)に宛てた再初期化信号(R)を送出する、請求項3記載のキーレスエントリ装置。

【図1】
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【公開番号】特開2008−184894(P2008−184894A)
【公開日】平成20年8月14日(2008.8.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−17629(P2008−17629)
【出願日】平成20年1月29日(2008.1.29)
【出願人】(508030017)コンティネンタル オートモーティヴ フランス (2)
【氏名又は名称原語表記】CONTINENTAL AUTOMOTIVE FRANCE
【住所又は居所原語表記】1, Avenue Paul Ourliac, F−31036 Toulouse, France
【Fターム(参考)】