説明

車両用シートの空調システム

【課題】単一の空調ユニットで空気を供給する構成では、バックボードなどの配置でコスト高となったり、シートクッションが大型化する。
【解決手段】弾性材から成形された略コの字形状の盛り上げ部18がシートクッションの後端上面12’に設けられ、左右および下方からシートバック下端面14’に密着されて、シートクッション下端面、シートクッション後端上面との接触面13の前方でシートバック、シートクッション間に遮蔽空間20を規定している。この遮蔽空間20にシートクッションの流路の流出口12a4、シートバックの流路の流入口12a1がそれぞれ開口されることにより、遮蔽空間を介してシートクッション、シートバックの流路12a、14aが連通される。遮蔽空間に面する部分でシートクッション、シートバックのトリムカバー12c、14cを略矩形に切り欠いてメッシュ地22−1、22−2を縫合している。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、シートクッション、シートバックのシートパッドに空気の流れる流路を設けた車両用シートの空調システムに関する。
【背景技術】
【0002】
温度調節された冷気や暖気などの温調空気を流して車内を全体的に冷房または暖房する空調システムが従来から広く採用されている。また、車両の走行に対応して外部の空気(外気)を車内に取り入れ、車内に流した後、車外に流出して車内の換気、通気を促す換気システムも知られており、換気システムも一種の空調システムと考えられている。
【0003】
周知のように、シートクッション、シートバックは、発泡成形材などからなる弾性に富んだシートパッドを通気性の良いトリムカバーで被覆してそれぞれ形成されている。
最近では、シートクッション、シートバックのシートパッドに空気の流れる流路(空気流路)を形成し、トリムカバーを通じて流出した空気を着座者の臀部、腿部、背中などに空気を流して良好な着座環境を確保する車両用シートの空調システム(空調装置)も知られている。
【0004】
シートクッション、シートバックのシートパッドの流路には、温度調節された冷気や暖気などの温調空気がカーエアコンから、または、換気のために車内に流れ込んだ空気(外気)が、空調ファンの駆動のもとで送り込まれており、一般的には、単一の空調ユニットでシートクッション、シートバックの双方に空気(温調空気、外気)を供給するように構成されている。
【0005】
たとえば、シートの外部に空調ダクトを配置し、シートクッション、シートバックの流路の流入口(吸い込み口)に空調ダクトの流出口(吹き出し口)を連結してカーエアコンからの温調空気が空調ダクトを介してシートクッション、シートバックの流路に供給される構成となっている(たとえば、特開2001−030731号公報、特開2009−120079号公報)。
単一の空調ユニットで温調空気を供給するこの構成では、空調ダクトの末端が2つに分岐されてシートクッション、シートバックの下面にそれぞれ延ばされ、分岐点に設けた空調ファンの駆動のもとで、カーエアコンからの温調空気がそれぞれの分岐ダクトを介してシートクッション、シートバックの流路に同時並行的に(パラレルに)供給されている。
【0006】
冷却手段、加熱手段などを内蔵した空調ユニットをシートクッション、シートバックにそれぞれ装着した空調システムも提案されている。たとえば、特開2010−036751号公報では、ペルチェ素子をシートパッドの流路に設け、空調ファンで流路に空気を送り込む構成が提案されている。この構成では、空調ファンによって吸気された空気流が、ペルチェ素子の順方向通電時には冷却されて、逆方向通電時には加熱されて、シートパッドの流路に供給される。シートクッション、シートバックにペルチェ素子、空調ファンなどからなる空調ユニットをそれぞれ装着した構成では、温度調節された冷気や暖気などの温調空気が自前で確保できて、良好な着座環境が得られ、カーエアコンから温調空気を供給する空調ダクトが不要となる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2001−030731号公報
【特許文献2】特開2009−120079号公報
【特許文献3】特開2010−036751号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
単一の空調ユニットで空気を供給する公知の構成では、空調ダクトの末端が2つに分岐されてシートクッション下面、シートバック下端面にそれぞれ延ばされており、シートバックのための分岐ダクトは、シートクッション、シートバックの連結点を跨いでシートバック下端面に延ばされる。
【0009】
フロントシートは勿論、多くのリヤシートにおいても、シートバックはリクライニング可能(揺動可能)となっており、特許文献1ではシートバックへの分岐ダクトの一部を蛇腹形状として、特許文献2では分岐ダクト自体を柔軟な管材から成形して、シートバックのリクライニングを確保している。
【0010】
シートバックの分岐ダクトの一部を蛇腹形状とした特許文献1の構成では、蛇腹部がシートクッション後方で露出するため、外観意匠が損なわれ、バックボードなどで蛇腹部を覆えばコスト高となる不具合がある。
分岐ダクトを柔軟な管材から成形した特許文献2の構成では、シートバックへの分岐ダクトがシートクッション内に配置されるため、外観意匠を損なうことはない。しかし、シートクッションの分岐ダクトもシートクッション内に配置されており、着座に良好な弾性をシートクッションが確保するために、シートクッションのシートパッドの厚みが増加されることから、シートクッション全体の大型化を伴うおそれがある。
【0011】
空調ユニットをシートクッション、シートバックにそれぞれ装着した特許文献3の構成では、空調ダクトそのものが不要となり、外観意匠上何ら問題はなく、リクライニングに対しても何ら問題なく対応できる。しかし、冷却手段、加熱手段などを内蔵した空調ユニットは高価であり、空調システムが安価に得られない。
【0012】
上記のように、単一の空調ユニットで空気を供給する公知の構成では、バックボードなどの配置でコスト高となったり、シートクッションの厚みが増加する不具合がある。
【0013】
本発明は、コスト高やシートクッションの厚みの増加を招くことなく、単一の空調ユニットでシートクッション、シートバックの流路に空気を供給できる車両用シートの空調システムの提供を目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0014】
請求項1に係る本発明によれば、シートクッション、シートバックのシートパッドに空気の流れる流路を形成した車両用シートの空調システムにおいて、シートバックがその下端面をシートクッション後端上面に接触して設けられることによって形成されるシートクッション下端面、シートクッション後端上面の接触面の前方に、略コの字形状の盛り上げ部によってシートバック、シートクッション間に遮蔽空間を規定し、この遮蔽空間にシートクッション、シートバックのシートパッドの流路をそれぞれ開口させて、遮蔽空間を介してシートクッション、シートバックの流路を連通している。
たとえば、略コの字形状の盛り上げ部は弾性材から成形され、シートクッション後端上面に設けられて左右および下方からシートバック下端面に密着して、または、シートバック下端面に設けられて左右および上方からシートクッション後端上面に密着して、シートバック、シートクッション間に遮蔽空間を規定している。
【発明の効果】
【0015】
請求項1に係る本発明では、シートバック、シートクッション間の遮蔽空間を介してシートクッション、シートバックの流路が連通しているため、空気は遮蔽空間を介してシートクッション、シートバックに連続して送り込まれ、単一の空調ユニットのもとでシートクッション、シートバックの流路に空気を供給できる。
空気がシートクッションの流路から遮蔽空間を介してシートバックの流路に送られ、シートバックに空気を供給する空調ダクトは不要となる。そのため、バックボードなどで空調ダクトを覆うこともないから、コスト高となることもない。
遮蔽空間を介してシートクッション、シートバックの流路が連通しているため、シートクッションの流路の流入口に空気を送り込めば足り、空調ダクトは不要となり、シートクッション内に配置されない。そのため、着座に良好な弾性をシートクッションが確保するためにシートパッドを厚く形成する必要もなく、シートクッションの小型化が十分に可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明の一実施例に係る空調システムの装着された車両用シートの概略縦断面図である。
【図2】シートバックの一部を破断した車両用シートの概略平面図を示す。
【図3】車両用シートの一部破断の斜視図を示し、図面の複雑化を避けるために、シートクッションのトリムカバーを除いている。
【図4】シートクッション、シートバックに形成された流路の変形例を示す。
【発明を実施するための形態】
【0017】
弾性材から成形された略コの字形状の盛り上げ部がシートクッションの後端上面に設けられ、左右および下方からシートバック下端面に密着されて、シートクッション下端面とシートクッション後端上面との接触面の前方でシートバック、シートクッション間に遮蔽空間を規定している。そして、この遮蔽空間にシートクッションの流路の流出口、シートバックの流路の流入口がそれぞれ開口されることにより、遮蔽空間を介してシートクッション、シートバックの流路が連通される。遮蔽空間に面する部分でシートクッション、シートバックのトリムカバーを略矩形に切り欠き、メッシュ素材をトリムカバーにそれぞれ縫合して切欠きを覆っている。
【実施例】
【0018】
以下、図面を参照しながら本発明の実施例を詳細に説明する。図1は本発明の一実施例に係る空調システムの装着された車両用シートの概略縦断面図を示す。図2はシートバックの一部を破断した車両用シートの概略平面図を示し、図面の複雑化を避けるために、シートクッションのトリムカバーを除いている。なお、シートの前後をFr、Rr、左右をL、Rで示す。
【0019】
図1、図2に示すように、車両用シート11は、シートクッション12と、シートクッションの後端に設けられたシートバック14とを有し、シートクッション、シートバックは、発泡成形材などからなる弾性に富んだシートパッド12p、14pを通気性の良いトリムカバー12c、14cで被覆してそれぞれ形成されている。シートクッション、シートバックのシートパッド12p、14pに流路12a、14aがそれぞれ形成され、空調システム(空調装置)10は空気をこれらの流路に連続的に供給するように構成されている。
【0020】
シートバック14は、その下端面14’がシートクッションの後端上面12’に押し付けられて接触した状態で公知のリクライニングユニット(図示しない)によってリクライニング可能(揺動可能)にシートクッション12に取り付けられている。シートバック下端面14’とシートクッション後端上面12’との接触によって、図2からよくわかるように、前後方向に幅Xで左右方向のほぼ全長にかけて、シートバック下端面、シートクッション後端上面間に接触面13が形成される。
【0021】
シートクッションのシートパッド12pに設けられた流路12aについて述べると、流路の流入口(吸い込み口)12a1がシートパッド下面に形成され、流路本体12a2が流入口から供給された空気を下方から上方に流すように流入口に連通してシートパッドに形成されている。流路本体12a2は分岐し、上方に延びてシートパッド上面の流出口(吹き出し口)12a3に連通し、空気をシートパッドの流路12aに供給するための空調ファン16が、流入口12a1に面してシートクッション下面のシートフレーム12fに設けられている。シートクッションの流路の流路本体12a2は後方にも延びてその末端は、シートクッション後端上面で開口して流出口12a4となっており、末端の流出口はシートパッド上面の流出口(吹き出し口)12a3よりも大径に形成されている。
【0022】
シートバックのシートパッド14pに設けられた流路14aの流入口(吸い込み口)14a1が、シートクッションの(末端の)流出口12a4に対向してほぼ同一の大きさでシートバック下端面に形成されている。流路本体14a2が流入口から供給された空気を下方から上方に流すように流入口14a1に連通してシートパッド14pに形成され、流路本体は分岐し、前方に延びてシートパッド表面の流出口14a3に連通している。
【0023】
図3は車両用シートの一部破断の斜視図を示し、上下方向から見て略コの字形状の盛り上げ部18がシートクッション後端上面12’に設けられている。この盛り上げ部18は、図1のリクライニングの最後傾位置においても、シートバック下端面、シートクッション後端上面間の接触面13の前方でシートバックの下端面14’に押圧される横断面形状に、たとえば、シートパッドと同様に発泡成形体などの弾性材から成形され、トリムカバーで覆ってシートクッション12に縫合される。
【0024】
シートクッションの後端上面の弾性材からなる盛り上げ部18が、略コの字形状に成形されて左右および下方からシートクッション後端上面に密着されることにより、盛り上げ部と、シートバックとシートクッションとの間の接触面13とによって、図1に示すように、シートクッション後端上面12’とシートバック下端面14’との間に外部から遮蔽された空間(遮蔽空間)20が規定される。
【0025】
この遮蔽空間20に面して、シートクッションの流路の流出口12a4はシートクッション後端上面12’に、シートバックの流路の流入口14a1はシートバック下端面14’にそれぞれ開口している。そのため、シートクッションの流路12a、シートバックの流路14aは、遮蔽空間20を介して連通される。
【0026】
シートクッション、シートバックのトリムカバー12c、14cは、通気性のよいシート材からなるため、空気をシートクッションの流路12aから遮蔽空間20を介してシートバックの流路14aに送り込むことはできる。しかし、実施例では、図3に加えて図1、図2に示すように、遮蔽空間20に面する部分でシートクッション後端上面12’、シートバック下端面14’をメッシュ地としている。すなわち、遮蔽空間20に面する部分でシートクッション、シートバックのトリムカバー12c、14cを略矩形に切り欠き、メッシュ素材22−1、22−2をたとえば縫合してトリムカバーの切欠きを覆っている。そして、シートクッションの流路の流出口12a4、シートバックの流路の流入口14a4はメッシュ地(メッシュ素材)22−1、22−2を介して遮蔽空間20に開口している。
【0027】
上記構成の空調システム10における空気の流れについて述べると、車内の空気、たとえば、カーエアコンから車内に送り込まれた温調空気や、換気のために車内に流れ込んだ空気(外気)が、シートクッション下面の空調ファン16を駆動させることによって、シートクッションの流入口12a1から流路12aに送り込まれる(流入される)。シートクッションの流入口12a1に送り込まれた空気(温調空気、外気)は、流路本体12a2を流れ、流路本体12a2に連通したシートパッド12pの上面の多数の流出口(吹き出し口)12a3からトリムカバー12cを通って流出し(吹き出され)、着座者の臀部、腿部などに送られてシートクッションでの良好な着座環境が確保される。
【0028】
シートクッションの流路12aに送り込まれた空気の一部は、シートクッションのシートパッド上面の流出口12a3から流出することなく、流路末端の流出口12a4からシートクッション側のメッシュ地22−1を通って遮蔽空間20に送り込まれる。たとえば、上面の流出口12a3からシートクッション上面に流出する空気と、末端の流出口12a4から遮蔽空間20に送り込まれる空気とがほぼ同量となるように、シートクッションの流路12aの形状、配列などが設定される。
【0029】
シートバックのシートパッド14pに形成された流路14aの流入口14a1が遮蔽空間20に開口しているため、シートクッションの流路末端の流出口12a4から遮蔽空間に送り込まれた空気は、シートバック側のメッシュ地22−2を通過してシートバックの流入口14a1から流路14に直ちに流入する。それから、空気は流路本体14a2を遡って流れ、シートパッド表面の流出口14a3からトリムカバー14cを通ってシート着座者の背面に流出して(吹き出されて)、シートバックでの良好な着座環境が得られる。
【0030】
シートクッション上の略コの字形状の盛り上げ部18と、シートバック、シートクッション間の接触面13とで遮蔽空間20が封止、遮蔽されているため、シートクッションの流出口12a4から遮蔽空間に送り込まれた空気は、遮蔽空間から漏出することなく、シートバックの流入口14a1に供給される。
【0031】
どんなに通気性の良いカバー部材からトリムカバーを形成しても、空気がトリムカバーを通過して流出する構成では、大量の空気を円滑に流すことは容易でない。
しかしながら、実施例では、遮蔽空間20に面する部分でシートクッション、シートバックのトリムカバー12c、14cを切り欠いてメッシュ地22−1、22−2を設けている。メッシュ地22−1、22−2は空気の流れをなんら妨げないから、空気はシートクッションの流路の流出口12a4からメッシュ地22−1、22−2を介してシートバックの流路の流入口14a1に円滑に流れ、シートクッションからシートバックに空気を大量かつ円滑に送り込むことができる。
【0032】
メッシュ地22−1、22−2は、シートクッション、シートバックのトリムカバー12c、14cに縫合されているため、前方への摩擦牽引力がトリムカバー12cに、上方への摩擦牽引力がトリムカバー14cにそれぞれ発生しても、メッシュ地が摩擦牽引力に抗してしわの発生が防止される。
【0033】
図1に示すように、略コの字形状の盛り上げ部18は、その先端が後方に傾斜し下方に空所を持つ横断面形状に弾性材から成形されている。そのため、図1のリクライニングの最後傾位置からシートバック14が前傾されたリクライニング位置においても、盛り上げ部18はシートバック14に押し付けられ変形して左右および下方からシートバック下端面14’に常に密着される。そのため、いずれのリクライニング位置においても遮蔽空間20の封止、遮蔽が維持され、空気は、漏出することなく遮蔽空間を介してシートクッションの流出口12a4からシートバックの流入口14a1に連続的に送り込まれる。
【0034】
シートバック、シートクッション間の遮蔽空間20を介してシートクッション、シートバックの流路12a、14aが連通されているため、シートクッションの流路の流入口12a1に送り込めば、空気はシートクッション、シートバックの流路に連続して送り込まれる。すなわち、シートバック14への空気はシートクッション12を経て供給され、シートクッション、シートバックへの空気の供給が単一の空調ユニットのもとで行える。
【0035】
空気がシートクッションの流路12aから遮蔽空間20を介してシートバックの流路14aに送られており、シートバックに空気を供給する空調ダクトが不要となるため、バックボードなどで空調ダクトを覆うこともなく、コスト高となることもない。
【0036】
遮蔽空間20を介してシートクッション、シートバックの流路12a、14aが連通されるため、シートクッションの流路の流入口12a1に送り込めば、空気はシートクッション、シートバックの流路に連続して送り込まれ、空調ダクトは不要となり、シートクッション内に配置されない。そのため、着座に良好な弾性をシートクッションが確保するためにシートパッドを厚く形成する必要もなく、シートクッションの小型化が十分に可能となる。
【0037】
通常、シートバック下端面はシートクッション後端上面に接触しているから、たとえば、シートバック下端面14’に押圧される略コの字形状の盛り上げ部18をシートクッション後端上面12’に設けるだけで、シートクッション、シートバック間に遮蔽空間20が規定できる。
【0038】
このように、シートクッション、シートバックへの空気の供給が単一の空調ユニットのもとで行え、シートバックへの空調ダクトが不要で、略コの字形状の盛り上げ部を設けるだけで空調システム10が構成できるため、構成が簡単化されてコスト高にならず、空調システムが安価に得られる。
【0039】
また、遮蔽空間20に面する部分でシートクッション、シートバックのトリムカバー12c、14cを切り欠いてメッシュ地22−1、22−2を設けているため、シートクッションからシートバックに空気を大量かつ円滑に送り込むことができる。
【0040】
略コの字形状の盛り上げ部18と、シートバック、シートクッション間の接触面13とによって、シートクッション、シートバック間に遮蔽空間20を規定すれば足り、盛り上げ部をシートクッション後端上面12’に設ける代わりに、シートバックの下端面14’に設けてもよい。
【0041】
すなわち、弾性材から成形された略コの字形状の盛り上げ部18をトリムカバーで覆って、シートバックの下端面14’でシートバックのトリムカバー14cを縫合してもよい。ここで、シートバックの下端面14’に設けられた略コの字形状の盛り上げ部18は、図1と同様の形状とされ、その先端が前方に傾斜して下方に延びてシートクッション下端上面に左右および上方から押圧、接触される。そして、最後傾位置からシートバック14が前傾されると、盛り上げ部18がシートクッションに押圧、変形されてシートクッションに常に密着されるため、いずれのリクライニング位置においても遮蔽空間20の封止、遮蔽が維持され、遮蔽空間からの空気の漏出が防止される。
【0042】
シートクッションのシートパッド12pに形成された流路12a、シートバックのシートパッド14pに形成された流路14aの形状、配列は一例であり、これに限定されない。図4は流路の変形例を示し、この変形例では、シートクッション、シートバックの流路はシートパッドの表層(表面)に設けられている点で図1〜図3の構成と異なり、それ以外は、図1〜図3の構成と違いはない。ここでは、異なる構成の部材を図1〜図3の対応する構成部材に100を加えて示す。
【0043】
たとえば、互いに平行で前後方向に延びたスリット状の分岐流路112a、114aがシートクッション、シートバックのシートパッド12p、14pの表層に形成される。トリムカバー12c、14cが通気性の良いカバー材から形成されているため、空気はシートパッドの表層の分岐流路112aを流れながら、トリムカバー12c、14cを通過してシートクッション12、シートバック14の表面に流出される(吹き出される)。
シートクッションの流路112aがシートクッション前端から後端にかけて形成されるため、空調ファン16はシートクッション前端下面でシートクッション下面のクッションフレーム12fに取り付けられる。
【0044】
この構成においても、空調ファン16の駆動のもとでシートクッションの流路112aに送り込まれた空気は、シートクッション上の略コの字形状の盛り上げ部18と、シートバック下端面、シートクッション後端上面の接触面13とによって規定された遮蔽空間20を介してシートクッションの流路112aからシートバックの流路114aに連続的に送り込まれる。
【0045】
上記のように、本発明によれば、空気はシートクッション、シートバックの流路に連続して送り込まれ、シートクッション、シートバックへの空気の供給が単一の空調ユニットのもとで行える。そして、シートバックに空気を供給する空調ダクトが不要となり、バックボードなどで空調ダクトを覆うこともないからコスト高とならず、空調ダクトをシートクッション内に配置する必要がないからシートクッションの小型化が十分に可能となる。
【0046】
上述した実施例は、この発明を説明するためのものであり、この発明を何等限定するものでなく、この発明の技術範囲内で変形、改造等の施されたものも全てこの発明に包含されることはいうまでもない。
【0047】
たとえば、実施例では、遮蔽空間20に面する部分でシートクッション、シートバックのトリムカバー12c、14cを略矩形に切り欠き、メッシュ素材22−1、22−2を縫合して切欠きを覆っている。しかし、シートクッションからシートバックへの空気の大量、かつ円滑な流れを確保する構成はこれに限定されず、メッシュ地の縫合以外の構成でもよい。たとえば、互いに平行な長手方向(シートクッションにおいては前後方向、シートバックにおいては上下方向)の小さな幅のスリット状の切欠きをシートクッション、シートバックのトリムカバー12c、14cに設けた構成としてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0048】
本発明は、車両用シートのフロントシートに適するとはいえ、セカンドシート、サードシートにも応用できる。また、リクライニング可能なシートに限定されず、リクライニングユニットの装着されていないシートにも本発明が応用できる。さらに、通常、自動車のシートに応用されるが、自動車以外の車両用シート、たとえば、電車、飛行機等のシートにも本発明を応用できる。
いずれにせよ、本発明は、シートクッション、シートバックのシートパッドに空気の流れる流路を設けたいわゆる空調シートに広範囲に応用できる。
【符号の説明】
【0049】
10 車両用シートの空調システム(空調装置)
11 車両用シート
12、14 シートクッション、シートバック
12’、14’ シートクッション後端上面、シートバック下端面
12a、112a、14a、114a 流路
12c、14c トリムカバー
12f シートフレーム
12p、14p シートパッド
12a4 シートクッションの流路の流出口(末端の流出口)
13 シートクッション下端面、シートクッション後端上面の接触面
14a1 シートバックの流路の流入口
16 空調ファン
20 シートクッション、シートクッション間の遮蔽空間
22−1、22−2 メッシュ地(メッシュ素材)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
シートクッション、シートバックのシートパッドに空気の流れる流路を形成した車両用シートの空調システムにおいて、
シートバックがその下端面をシートクッション後端上面に接触して設けられることによって形成されるシートクッション下端面、シートクッション後端上面の接触面の前方に、略コの字形状の盛り上げ部によってシートバック、シートクッション間に遮蔽空間を規定し、
この遮蔽空間にシートクッション、シートバックのシートパッドの流路をそれぞれ開口させて、遮蔽空間を介してシートクッション、シートバックの流路を連通させたことを特徴とする車両用シートの空調システム。
【請求項2】
略コの字形状の盛り上げ部が、弾性材から成形されてシートクッション後端上面に設けられ、左右および下方からシートバック下端面に密着してシートバック、シートクッション間に遮蔽空間を規定している請求項1記載の車両用シートの空調システム。
【請求項3】
略コの字形状の盛り上げ部が、弾性材から成形されてシートバック下端面に設けられて、左右および上方からシートクッション後端上面に密着してシートバック、シートクッション間に遮蔽空間を規定している請求項1記載の車両用シートの空調システム。
【請求項4】
シートクッション、シートバックのシートパッドを覆うトリムカバーは、遮蔽空間に開口する流路に面する部分においてメッシュ素材から形成されている請求項1〜3のいずれか記載の車両用シートの空調システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2012−1033(P2012−1033A)
【公開日】平成24年1月5日(2012.1.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−135714(P2010−135714)
【出願日】平成22年6月15日(2010.6.15)
【出願人】(000133098)株式会社タチエス (454)
【Fターム(参考)】